JPH06336634A - 表面被覆サーメット - Google Patents

表面被覆サーメット

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Publication number
JPH06336634A
JPH06336634A JP5129547A JP12954793A JPH06336634A JP H06336634 A JPH06336634 A JP H06336634A JP 5129547 A JP5129547 A JP 5129547A JP 12954793 A JP12954793 A JP 12954793A JP H06336634 A JPH06336634 A JP H06336634A
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JP
Japan
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cermet
hard phase
particles
cutting
grain size
Prior art date
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Pending
Application number
JP5129547A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Ohata
浩志 大畑
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Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
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Publication date
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  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】切削速度が200m/minを超える高速切削
に際しても、耐摩耗性,耐欠損性,耐熱衝撃性を大きく
向上することができるとともに、湿式切削に際して必要
な耐熱衝撃性も大幅に向上することができるサーメット
を提供する。 【構成】硬質相粒子と結合相とからなるサーメットであ
って、表層部における硬質相粒子の平均結晶粒径が内部
の平均結晶粒径よりも大きく、かつ、表層部に2μm以
上の粒径を有する硬質相粒子が少なくとも20%存在す
るとともに、内部における硬質相粒子の平均結晶粒径が
3μm以下であるサーメットの表面に、単層または2層
以上からなる表面被覆層を形成するとともに、この表面
被覆層を周期律表第4a族元素およびAlの炭化物,窒
化物,炭窒化物,酸化物の少なくとも一種から構成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱衝撃性,耐摩耗
性,靱性に優れた表面被覆サーメットに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、切削用焼結体として、周期律表第
4a,5a,6a族元素の複炭窒化物からなる硬質相
と、鉄族金属からなる結合相によって構成されるサーメ
ットが用いられるようになった。
【0003】かかるサーメットとしては、これまでTi
Cを主成分とするTiC基サーメットが主流であった
が、古くから工具材料として用いられていた超硬合金に
比較して耐欠損性が劣るために、この系に窒化物を添加
することにより靱性を改善したいわゆるTiCN基サー
メットが提案された。
【0004】このTiCN基サーメットの典型例として
特公昭56−51201号が挙げられ、ここでは、(T
i,W,Ta,Mo)CNからなる硬質相と、Ni,C
oからなる結合相とから構成されるサーメットが開示さ
れ、硬質相がTiや窒素に富む芯部と、W、Ta、Mo
および炭素に富む周辺部とから構成された有芯構造を呈
することが述べられている。また、この先行技術によれ
ば、硬質相形成成分としてMoやMo2 Cは、有芯構造
の周辺部に存在して硬質相の結合相との濡れ性を改善す
ることから硬質相における必須成分とされている。ま
た、TaCはサーメットの耐酸化性を改善するとともに
切削工具としてのクレータ摩耗の進行を抑制する効果を
有することから実用性の点から必須の成分とされてい
る。
【0005】また、硬質相を形成する炭素(C)および
窒素(N)はサーメットの靱性および硬度を決定する大
きな要因であり、最近では窒素を多量に含有させること
により、サーメットの靱性を高めようとする試みがなさ
れている。
【0006】ところが、最近に至り上記のTiCN基サ
ーメットに対してその表面部の組織を変えることにより
耐摩耗性や靱性をさらに高めようといった改良が成され
ている。例えば特公昭59−14534号では、焼成時
に液相出現温度以下でN2 を炉内に導入することによっ
て焼結体表面に靱性に富む軟化層を形成することが、ま
た特開昭59−17176号では焼成をCoを含む還元
雰囲気内で行うことにより内部より高硬度の層を形成す
ることが提案されている。
【0007】しかしなから、これらの先行技術は、いず
れも硬度あるいは靱性のどちらかのみ検討するにとどま
っていた。そこで、本出願人は特開平2−15139号
において焼結時に窒素の導入の時期を制御することによ
って焼結体表面に高硬度,高靱性の改質層を形成したT
iCN基サーメットを提案した。
【0008】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、特開
平2−15139号に開示されたサーメットは、切削速
度が100〜200m/minの中速の切削において優
れた耐摩耗性,耐欠損性を示すが、切削速度が200m
/minを超える高速切削に際しては、耐摩耗性,耐欠
損性,耐熱衝撃性が劣化することが明らかになった。特
に、湿式切削に際して必要な耐熱衝撃性が低く、刃先に
クラックが伸展する等の不具合が発生する虞があった。
これは従来のサーメットでは止むを得ない事と考えられ
ていた。
【0009】
【問題点を解決するための手段】近年、サーメットから
なる母材表面に特性向上のため表面被覆層を形成するこ
とが行われているが、本発明者は、サーメットには通常
結合金属が10〜20重量%含有されているため、表面
被覆層は主として硬質相粒子に付着しており、従って、
この硬質相粒子が切削中も確実に母材中に支持されてい
なければ、いかなる表面被覆層も本来の性能を発揮でき
ないことを見出した。また、本発明者は、上記の問題点
に対して検討を行った結果、表層部に一定以上の粒径を
有する粒子が所定の割合以上存在し、内部における粒子
の平均結晶粒径が所定以下であり、かつ表層部における
粒子の平均結晶粒径が内部の平均結晶粒径よりも大きい
と、或いは硬質相粒子の少なくとも10%が多面体であ
ると耐熱衝撃性等を改善でき、しかも表面に単層または
2層以上の所定材料からなる表面被覆層を形成すること
により、高速切削においても、耐摩耗性,耐欠損性,耐
熱衝撃性が大きく向上することができることを知見し、
本発明に至った。
【0010】即ち、本発明の表面被覆サーメットは、硬
質相粒子と結合相とからなり、表層部における前記硬質
相粒子の平均結晶粒径が内部の平均結晶粒径よりも大き
く、かつ、前記表層部に2μm以上の粒径を有する前記
硬質相粒子が少なくとも20%存在するとともに、前記
内部における前記硬質相粒子の平均結晶粒径が3μm以
下であるサーメットの表面に、周期律表第4a族元素お
よびAlの炭化物,窒化物,炭窒化物,酸化物の少なく
とも一種の1層または2層以上からなる表面被覆層を形
成したものである。
【0011】また、本発明の表面被覆サーメットは、周
期律表第4a,5a,6a族元素のうち少なくともT
i、WおよびNbを必須成分として含有する硬質相粒子
と、鉄族金属からなる結合相とから構成され、前記硬質
相粒子の少なくとも10%が多面体であるサーメットの
表面に、周期律表第4a族元素およびAlの炭化物,窒
化物,炭窒化物,酸化物の少なくとも一種の1層または
2層以上からなる表面被覆層を形成したものである。
【0012】以下、本発明を詳述する。母材のサーメッ
トにおいて、表層部に2μm以上の粒径を有する硬質相
粒子が少なくとも20%存在するとしたのは、粒成長し
た粒子が表層部で増加することにより、それぞれの硬質
相粒子と結合金属の接触面積が増加し、結合層と硬質相
粒子の結合を強固とし、焼結体に発生するクラックの伸
展を抑制するためである。そして、これにより、硬質相
粒子の脱落が抑制され、工具の摩耗が抑制され、耐熱衝
撃性が要求される湿式切削加工工具として最適になる。
2μm以上の粒径を有する硬質相粒子が少なくとも20
%存在する表層部は、表面から500μm 以内、特に、
表面から50μmであることが望ましい。このようにす
ることにより、さらに、刃先における耐熱衝撃性等の性
能が向上する。
【0013】ここで、2μm以上としたのは、2μm 未
満であれば、切削中での粒子の脱落が増加し、工具の耐
摩耗性が低下するからである。
【0014】厚さ500μm以下の表層部には、特に3
〜10μm の粒径を有する粒子が20%以上存在するこ
とが好ましい。これは、粒径が大きくなれば、切削中の
硬質相粒子の脱落が少なくなり、その結果として切削工
具の耐摩耗性が改善されるからである。
【0015】また、少なくとも20%存在するとしたの
は、20%未満では粒子の脱落が大きく、耐摩耗性が改
善されないからである。特に70%以上存在することが
好ましい。尚、この割合は一定体積中に存在する粒子の
個数で示しており、20%とは、一定体積中に存在する
粒子全数に対する2μm 以上の粒子数の割合が20%で
あることを示す。
【0016】また、内部における硬質相粒子の平均結晶
粒径を3μm以下としたのは、3μmより大きいと強度
が低下し、切削中の工具材料の欠損や大破に繋がるから
である。内部は、耐熱衝撃性よりも、硬度,靱性が要求
されており、3μmより大きいと硬度,靱性が低下する
ためと思われる。内部における硬質相粒子の平均結晶粒
径は、特に2μm 以下とすることが望ましい。
【0017】さらに、表層部における粒子の平均結晶粒
径を内部の平均結晶粒径よりも大きくしたのは、耐摩耗
性改善のために特に重要な表層部の粒子結合を強固に
し、耐摩耗性を改善するからである。
【0018】また、本発明の母材は、基本的に硬質相と
結合相から構成されるものであるが、硬質相粒子の少な
くとも10%が多面体である。このような硬質相粒子は
平均結晶粒径を2μm以上、特に2.5〜3.5μmと
することにより得られ易く、このような平均結晶粒径が
2μm以上である硬質相粒子は、高い焼成温度(150
0℃以上、特に1600〜1700℃)で焼成し、粒成
長を促進させることにより形成され、特定の組成範囲、
焼成温度により更に助長することができる。例えば、1
600〜1700℃の焼成では、1気圧以下のN2 ガス
または2000気圧までのArガス加圧または減圧雰囲
気とすることにより、本発明のサーメットからなる母材
が得られる。
【0019】ここで、硬質相粒子の少なくとも10%を
多面体としたのは、高い焼成温度(1500℃以上)で
焼成した場合、粒成長に伴い(平均結晶粒径2μm以
上)、図4に示すように硬質相粒子同士の接触率が低く
なり、本来の結晶型(NaCl型)の粒子形状(多面
体)を有するようになり、硬質相粒子自身と結合相との
接触面積が増加し、粒子界面の結合力が高くなる。そう
することによって、硬質相粒子の脱粒が抑制され、工具
の摩耗が改善でき、また、クラック伸展が抑制され、耐
欠損性が改善できるからである。そして、このようなサ
ーメットからなる母材は、特に耐衝撃性,耐熱亀裂性に
優れているので、湿式切削工具として使用されることが
望ましい。一方、多面体が10%未満だと硬質相粒子と
結合相金属の接触面積が小さいため、硬質相粒子をしと
結合相との界面結合力が弱く、硬質相粒子の脱粒、クラ
ック伸展が容易に進行し、工具摩耗の増大、耐欠損性の
低下が生じ易くなるからである。尚、多面体が10%と
は、所定体積当たりの全粒子数に対する多面体粒子数が
10%であるということを示す。
【0020】そして、その母材の成分は、周期律表第4
a,5a,6a族元素のうち少なくともTi,Wおよび
Nbを含有する硬質相と、鉄族金属からなる結合相から
構成され、全体組成から前記鉄族金属および不可避不純
物を除いた他の成分組成中、Ti,Nb,W,C,Nを
〔(Ti)a(Nb)b(W)c〕〔(C)u(N)
v〕zと表した時、a+b+c=1、0.50≦a≦
0.95、0.05≦b+c≦0.50、0.40≦b
/b+c≦0.95、0.40≦v≦0.95、0.8
0≦z≦1.0、u+v=1を満足し、かつ、c/a+
cで表される比率が内部から表面にかけて大きくなるこ
とが望ましい。また、母材中に含有されるMo量が0.
5重量%以下であることが望ましい。
【0021】サーメットの全体組成における鉄族金属を
除く他の成分組成中、Ti,Nb,W,C,Nを前述の
範囲になるように設定した理由について説明する。
【0022】先ず、硬質相を形成する主成分であるTi
は、焼結体内におよそTiCNとして存在し、その量は
サーメットの強度や硬度を決定する大きな要因であり、
このTi量(a)が前記式において0.5より小さいと
サーメット工具の特徴である耐摩耗性、金属に対する親
和性が不十分となり、0.95を越えると耐欠損性が低
下することとなる。なお、Ti量(a)は0.70≦a
≦0.90であることが特に望ましい。
【0023】サーメットにおいて、Tiと同様に必須の
成分とされるWはWCとして硬質相の結合相との濡れ性
を改善するとともに靱性を高める作用をなすために必須
の成分であるが、硬質相が(Ti,W)CNから構成さ
れる場合は、耐摩耗性,耐酸化性,耐欠損性等の特性が
実用的レベルに達していないという問題がある。そこ
で、硬質相を強化し諸特性を向上することを目的として
MoやTa等の炭化物が必須の成分としてこれまで使用
されたが、前述した通りMo2 C自体、硬質相主成分で
あるTiCやTiCNに比較して特性が劣るために逆に
サーメットの特性を劣化させてしまうという傾向にある
ことがわかった。特にこの傾向は湿式切削時に顕著であ
った。
【0024】そこで、Mo2 Cに代わる成分として検討
を行ったところ、Nbの炭化物がMo2 Cに比較してそ
れ自体優れた特性を有すること等に起因してサーメット
の特性、特に耐熱性を大きく改善でき、湿式切削時の耐
摩耗性,耐欠損性を向上できることがわかった。よっ
て、WとNbとの合量(b+c)が0.05より少ない
と耐欠損性が不十分となり、0.5より大きいと耐摩耗
性が劣るとともに被削材との反応性が高くなる傾向にあ
る。なお、(b+c)値は 0.10≦b+c≦0.3
0であることが特に望ましい。また、W,Nbの合量
(b+c)に対するNb量(b)の割合(b/b+c)
が前記式において0.40より小さいと耐摩耗性、耐酸
化性に劣り、逆に0.95より大きいと耐欠損性が低下
する。
【0025】一方、窒素および炭素の量はサーメットの
硬度および靱性を決定する要因として非常に重要であ
り、特に窒素の量が増加するに従い、靱性が向上する傾
向にあるが、窒素の量が過多になると焼成時の窒化物の
分解によるガスが焼結体のボイド中に残留するという問
題が生じる。よって前記式において窒素量(v)が0.
40より小さいと、靱性が低下し耐欠損性が不十分とな
り、0.95を越えると焼結体内にボイドが発生し信頼
性に欠けるようになる。
【0026】また、窒素,炭素量のTi,W,Nbの合
量に対する比率(z)が0.8より小さいと焼結性が劣
化しボイドが残留し、1.0より大きいと遊離炭素が発
生するために強度低下を引き起こす結果となる。望まし
くは0.85≦z≦1.0である。
【0027】本発明において結合相を形成する鉄族金属
としては、Niおよび/またはCoが挙げられ、望まし
くはNiとCoから構成され、特にCo/Ni+Coの
モル比が0.5〜0.9であることが耐摩耗性向上の点
からよい。
【0028】また、この鉄族金属は系中において3〜4
0重量%、特に5〜30重量%の割合で存在することが
望ましい。そして、このような鉄族金属を内部〜表層部
と増加することにより、サーメット中の硬質相粒子が粒
成長し易くなり、上記のような粒度勾配が生じ易くな
る。
【0029】また、母材明のサーメットは、図1に示す
ように表面から内部にかけて組成勾配を有することを大
きな特徴とし、具体的には、Wが内部よりも表面部に富
むという特異的な性質を有する。また、Tiは、Wとは
逆に表層部より内部が若干富む傾向にある。よってTi
量(a)とW量(c)との原子比(c/a+c)は表面
から内部にかけて大きくなる組成勾配を有する。具体的
には、表層部と中心部の(c/a+c)値の比率が1.
1以上であることが望ましい。また、硬質相形成成分で
あるNbもWとほぼ同様な傾向にあり、結合相を形成す
る鉄族金属は内部に比較して表面近傍は乏しくなるが、
ごく表面部分に析出した鉄族金属層を形成する場合もあ
る。
【0030】このような組成勾配により特性的には、図
2および図3に示すように表面付近、特に表面から50
0μm以下の表層部に内部よりも高硬度、高靱性な改質
層が形成され、これによりサーメットの耐摩耗性、耐欠
損性を飛躍的に向上することができる。
【0031】さらに、本発明において使用されるサーメ
ットがすぐれた特性を有する他の要因として、硬質相は
TiおよびN2 に富む芯部と、この芯部の回りにWやN
bおよび炭素に富む周辺部から構成される有芯構造を呈
する点がある。この有芯構造によれば、特に周辺部形成
部分として従来から用いられたMoに替わりTaやNb
を用いることにより周辺部の特性を改善することができ
る。
【0032】しかし、上記サーメットでは、表面の高硬
度,高靱性化が達成されるが、さらに耐摩耗性の点から
は、母材の高靱性を維持しつつ、高硬度化することが望
ましい。そこで、本発明によれば、上記サーメットから
なる母材の表面に単層または2層以上からなる表面被覆
層が形成され、この表面被覆層は周期律表第4a族元素
およびAlの炭化物,窒化物,炭窒化物,酸化物の少な
くとも一種から構成されている。
【0033】表面被覆層の厚さは0.1〜10μmであ
ることが望ましい。これは、0.1μm以下であると母
材から剥離し易い、また、耐摩耗性が十分でないからで
あり、10μmよりも多いと硬質層本来の脆性が現れ、
欠損するようになるからである。硬質層の厚さを、特に
0.2〜5μmが好ましく、さらには0.2〜0.4μ
mが好ましい。尚、表面被覆層は母材側にTiN,Ti
CN,TiAlN等の窒素含有層を形成することによ
り、母材からの炭素の拡散による母材の特性変化を防止
することができる。また、周期律表第4a族元素として
は、Ti,Zr,Hfがある。
【0034】上記のサーメットからなる母材を製造する
ための方法としては、例えば、先ず前述したTi,W,
Nbの炭化物,窒化物,炭窒化物の粉末および鉄族金属
粉末を最終焼結体が上述した割合になるように秤量混合
した後に、プレス成形,押し出し成形,射出成形等の周
知の成形手段で成形し、この後、焼成する。本発明では
特に鉄族金属を多めに混合した。
【0035】焼成では、前述したような組成の勾配およ
び有芯構造が形成されるように焼成条件を調整すること
が必要である。具体的には、これを真空中、窒素中の雰
囲気あるいは還元性雰囲気中で1400〜1600℃の
温度で焼成するが、まず、昇温過程において、添加され
た鉄族金属による液相が出現する温度までを10-1to
rr程度の真空雰囲気とし、液相出現温度以上において
圧力を10-3torr以下の高真空雰囲気に急激に変更
する。
【0036】このように真空度を変化して成形体の表面
に存在する窒化物を急激に分解することにより表面付近
には炭素に富む相が形成される。それにより硬質相形成
成分のうち炭素と結合し易いW等が表面部に移動する。
また、表面付近の金属成分は内部に移行するかまたは焼
結体表面部に滲み出し、場合により揮散する。
【0037】このような成分の移動は通常の焼成におい
ても生じるが、本発明によれば、上記のような操作によ
って通常の条件では得られない特異的な組織構造を形成
することができるのである。
【0038】一方、硬質相粒子の少なくとも10%を多
面体とするためには、例えば、成形体を0.5torr
以下の真空炉内で1400〜1700℃の温度で加熱す
るが、この時所定の時期に1〜30torrの圧力の窒
素ガスを導入することによって成形体中に含まれる窒化
物の熱分解を抑制し、これにより焼結体中のポア,ボイ
ドの発生を防止するとともに、粒成長を促進することが
できる。
【0039】本発明によれば、特に、この窒素ガス導入
時期が重要で液相出現温度以上、特に対理論密度比が初
期の5%以上緻密化した段階で導入する。5%以上緻密
化した段階とは、液相出現温度以上で硬質相粒子表面に
は液相により被膜が形成される。この被膜形成後に窒素
ガスを導入することにより、成形体中に存在する空隙に
窒素ガスが残留し、結果的に粒成長を促進させるためで
ある。窒素ガスは炉内の温度が最高焼結温度に達した後
は、圧力を先に設定した圧力に維持するか、それ以下に
維持する。好ましくは、再び真空に戻すか、徐々に圧力
を降下させて焼成を続ける。これは焼結体表面部に微粒
で金属量の多い軟質相が生成され、表面部の硬度が低下
してしまうためである。
【0040】尚、導入する窒素ガス圧力を1〜30to
rrに限定した理由は1torr未満では窒化物に対す
る分解抑制効果が得られず、30torrを越えると焼
結性が低下するためである。また、焼成温度を1400
〜1700℃と高い温度に設定することによりNaCl
型結晶性が向上し、これによりNaCl型自体が有する
結晶形態である多面体形状を呈するようになる。
【0041】また、本発明によれば、上記製造方法にお
いて用いるTi化合物系原料粉末としては、TiC,T
iCN,TiN等が挙げられるが、TiN粉末を多量に
用いると最終焼結体中にTiN相として残存することが
あるが、このTiN相は、それ自体金属との濡れ性が非
常に悪いことからTiN相と結合相との界面が破壊の起
点となり易くなるためサーメットの機械的特性および信
頼性を低下させてしまう。よって、多量のTiNの替わ
りにTiCやTiCN粉末を用いて、TiN相が形成さ
れないように考慮すべきである。
【0042】また、各原料粉末を成形焼成する前に固溶
体処理を行うことも可能であるが、固溶体処理を行うと
前述した有芯構造が形成されにくくなるために望ましく
は行わない方が良い。
【0043】本発明によれば、上記(Ti,W,Nb)
(C,N)、鉄族金属からなる系に対して特性を改善す
る目的でさらにZr,Hf,CrおよびV等の炭化物,
窒化物,炭窒化物等を添加し、前述した式において、T
iあるいはNbの一部を置換することにより特性の改善
を図ることができ、特にNbの一部をVで置換すること
によりNbの作用効果をさらに助長し、特にサーメット
の高速切削時の耐摩耗性を大きく向上することができ
る。この時のNb/Vの原子比は1〜10、特に2〜6
であることが望ましい。
【0044】そして、本発明では、サーメットからなる
母材の表面に、周知の化学的蒸着法(CVD)あるいは
物理的蒸着法(PVD)により厚さ0.1〜10μmの
単層または2層以上の周期律表第4a族元素およびAl
の炭化物,窒化物,炭窒化物,酸化物の少なくとも一種
からなる硬質層が形成される。
【0045】
【作用】本発明の表面被覆サーメットでは、優れた特性
の母材表面の粒子に、周期律表第4a族元素およびAl
の炭化物,窒化物,炭窒化物,酸化物の単層または2層
以上の表面被覆層が強固に支持され、耐摩耗性を向上す
ることができるとともに、焼成時や加工時に母材表面に
生成するマイクロポアやマイクロクラックを覆うこと
で、これらを起点とする破壊を防止することが可能とな
る。
【0046】以下、本発明を次の実施例で説明する。
【0047】
【実施例】
実施例1 原料粉末として平均粒径が1〜1.5μm のTiC,T
iCN,WC,NbC,VC,Ni,Coの各粉末を用
いて最終焼結体の組成が表1の割合に成るように秤量混
合した後、1.5ton/cm2 の圧力でCNMG12
0408用のチップ形状にプレス成形し、1500℃の
温度で真空雰囲気において1時間焼成した。この時、試
料については液相出現温度(1350℃)まで10-1
orrの圧力とし、液相出現温度以上では10-3tor
rの圧力に保持し焼成した。
【0048】得られた焼結体に対して、表面から500
μmまでの表層部に2μm以上の粒径を有する粒子が存
在する割合を、試料表面をポリッシングした後、SEM
(走査型電子顕微鏡)と画像処理装置により表面におけ
る一定面積当たりの粒子割合を求め、これから一定体積
当たり粒子割合に換算して求め、内部における粒子の平
均結晶粒径および表層部における粒子の平均結晶粒径
を、試料表面をポリッシングした後、SEM(走査型電
子顕微鏡)と画像処理装置により求めた。また、焼結体
に対してJISR1601に従い3点曲げ抗折強度、ビ
ッカース硬度及びビッカース硬度用ダイヤモンド圧子を
用いて荷重20kgで圧痕法にり破壊靱性を測定した。
【0049】各試料についてXMA分析により内部と表
面部のTiとWの濃度を求め、焼結体の中心部および表
面部の(c/a+c)をそれぞれI1 ,I2 とし、I1
/I2 の比率を求めた。尚、試料No,2についてはT
i,W,Nbの焼結体の深さに対する組成分布を調べ、
図1に示した。
【0050】さらにビッカース硬度計を用いて焼結体の
表層部と内部との特性の差の有無について調べ、図2お
よび図3に示した。
【0051】次に、この焼結体を所定形状に加工した
後、物理的蒸着法(PVD)により所定の膜厚の表面被
覆層を形成し、得られた各試料を用いて下記に示す切削
条件で湿式摩耗試験を行い、切削後のフランク摩耗量
を、また、欠損試験を行い、非欠損コーナー数を調べ
た。湿式摩耗試験は、水溶性切削油を5リットル/mi
nで供給しながら行った。測定結果を表2に示す。尚、
試料No,13,14は表面被覆層を形成しない試料であ
る。
【0052】(摩耗試験) 被削材 SCM435 切削速度 300m/min 切り込み 2mm 送り 0.3mm/rev 切削時間 10min (欠損試験) 被削材 SCM435(4本溝入り) 切削速度 100m/min 切り込み 2mm 送り 0.3mm/rev 切削時間 1min
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】表1及び表2によれば、本発明の表面被覆
サーメットは、本発明の範囲外の試料よりも摩耗量が小
さく、また、耐欠損性においても優れている。このよう
に本発明の試料は耐摩耗性及び耐欠損性を同時に向上す
ることができる。
【0056】実施例2 原料粉末として平均粒径が1〜1.5μm のTiC,T
iCN,WC,NbC,VC,Ni,Coの各粉末を用
いて最終焼結体の組成が表3の割合に成るように秤量混
合した後、1.5ton/cm2 の圧力でCNMG12
0408用のチップ形状にプレス成形し、これらの成形
体を真空雰囲気において1600〜1700℃の焼成温
度で1時間焼成した。図4はこのようにして得られたサ
ーメットの拡大図を示しており、図5は従来のサーメッ
トの拡大図を示している。得られた焼結体について、実
施例1と同様に抗折強度,ビッカース硬度,破壊靱性を
測定した。また、得られた各試料を3μmのダイヤモン
ドペーストで鏡面研磨し、その表面をエッチングした
後、走査型電子顕微鏡に観察することにより、平均結晶
粒径および多面体を有する硬質相粒子の割合をFull
manの式を用いて割り出した。
【0057】次に、この焼結体を所定形状に加工した
後、物理的蒸着法(PVD)により所定の膜厚の表面被
覆層を形成し、このようにして得られた各試料を用いて
下記に示す切削条件で湿式摩耗試験を行い、切削後のフ
ランク摩耗量を、また、欠損試験を行い、非欠損コーナ
ー数を調べた。湿式摩耗試験は、水溶性切削油を5リッ
トル/minで供給しながら行った。測定結果を表4に
示す。
【0058】(摩耗試験) 被削材 SCM435 切削速度 260m/min 切り込み 2mm 送り 0.3mm/rev 切削時間 10min (欠損試験) 被削材 SCM435(4本溝入り) 切削速度 110m/min 切り込み 2mm 送り 0.3mm/rev 切削時間 1min
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】表3及び表4によれば、本発明の表面被覆
サーメットは、本発明の範囲外の試料よりも摩耗量が小
さく、また、耐欠損性においても優れている。このよう
に本発明の試料は耐摩耗性及び耐欠損性を同時に向上す
ることができる。
【0062】
【発明の効果】以上、詳述した通り、本発明の表面被覆
サーメットでは、切削速度が200m/minを超える
高速切削に際しても、耐摩耗性,耐欠損性,耐熱衝撃性
を大きく向上することができるとともに、湿式切削に際
して必要な耐熱衝撃性も大幅に向上することができ、湿
式切削時に刃先にクラックが伸展する等の不具合が発生
することを確実に防止することができる。よって、工具
として用いた場合に適用可能な切削条件を拡大するとと
もに、工具の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】サーメットのTi,W,Nbの各元素の焼結体
の深さに対する組成分布を示すグラフである。
【図2】実施例の試料における硬度の焼結体深さに対す
る変化を示すグラフである。
【図3】実施例の試料における靱性の焼結体深さに対す
る変化を示すグラフである。
【図4】本発明の表面被覆サーメットの母材を研削後エ
ッチングした表面を走査型電子顕微鏡にて観察した50
00倍の説明図である。
【図5】従来のTiCN基サーメットの5000倍の説
明図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硬質相粒子と結合相とからなり、表層部に
    おける前記硬質相粒子の平均結晶粒径が内部の平均結晶
    粒径よりも大きく、かつ、前記表層部に2μm以上の粒
    径を有する前記硬質相粒子が少なくとも20%存在する
    とともに、前記内部における前記硬質相粒子の平均結晶
    粒径が3μm以下であるサーメットの表面に、周期律表
    第4a族元素およびAlの炭化物,窒化物,炭窒化物,
    酸化物の少なくとも一種の1層または2層以上からなる
    表面被覆層を形成したことを特徴とする表面被覆サーメ
    ット。
  2. 【請求項2】周期律表第4a,5a,6a族元素のうち
    少なくともTi、WおよびNbを必須成分として含有す
    る硬質相粒子と、鉄族金属からなる結合相とから構成さ
    れ、前記硬質相粒子の少なくとも10%が多面体である
    サーメットの表面に、周期律表第4a族元素およびAl
    の炭化物,窒化物,炭窒化物,酸化物の少なくとも一種
    の1層または2層以上からなる表面被覆層を形成したこ
    とを特徴とする表面被覆サーメット。
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