JPH06333611A - 亜鉛−臭素電池の集電電極取出構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 集電電極用集電メッシュの取付強度及び設計
上での自由度を大きくし、且つ集電電極自体の平面性の
低下を防止して液密性を高めた亜鉛−臭素電池の集電電
極取出構造を提供することを目的とする。 【構成】 所定の面積を有する銅板に光硬化性樹脂を塗
布して、写真蝕刻法により焼き付けたメッシュパターン
以外の部位の銅板をエッチングによって除去した集電メ
ッシュ６と、該集電メッシュ６とカーボンプラスチック
電極１５ａ，１５ｂ，１５ｃを積層してヒートプレス手
段により一体成形した電極部１９とを具備し、該電極部
１９を端子片取出用スリット１４が形成されたシート状
絶縁枠材１６の孔部１７内の適宜部位で局部的に溶着し
た亜鉛−臭素電池の集電電極取出構造にしてある。集電
メッシュ６の中心部に端子片溶着部２０ａを形成して、
この端子片溶着部に端子片６ａを溶着もしくは螺子止め
等によって固着する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は電解液循環型積層二次電
池、特に亜鉛−臭素電池の構成部材である集電電極の取
出構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】亜鉛−臭素電池は正極活物質に臭素、負
極活物質に亜鉛を用いた２次電池であり、この電池は例
えば電力の昼と夜のアンバランスを解決させるために、
電力需要が少ない夜間に電力を貯蔵して、昼間に放出さ
せるため等に使用される。

【０００３】充電時に正極電極側で発生した臭素は、電
解液に添加した臭素錯化剤と反応し、オイル状の沈殿物
となって貯蔵タンクへ戻され、放電時はポンプで単電池
内へ送り込まれ還元される。電解液の成分はＺｎＢｒ₂
水溶液と、抵抗を下げるためのＮＨ₄Ｃｌ等の塩と、負
極亜鉛側のデンドライトを防止し、均一な電着を促進さ
せるためのＰｂ，Ｓｎ，４級アンモニウム塩類と、臭素
錯化剤とである。正極電極と負極電極の間にはセパレー
タを介挿してあり、正極電極で発生した臭素が負極電極
へ拡散して亜鉛と反応することによる自己放電を防止し
ている。

【０００４】この亜鉛−臭素電池の化学反応は、

【０００５】

【化１】 充電時……正極：２Ｂｒ^-→Ｂｒ₂＋２ｅ^-，負極：Ｚｎ
⁺⁺＋２ｅ^-→Ｚｎ 放電時……正極：２Ｂｒ^-←Ｂｒ₂＋２ｅ^-，負極：Ｚｎ
⁺⁺＋２ｅ^-←Ｚｎ で表される。

【０００６】この亜鉛−臭素電池は、主に電極をバイポ
ーラ型とし、複数個の単電池（単セル）を電気的に直列
に積層した電池本体と、電解液貯蔵槽と、これらの間に
電解液を循環させるポンプおよび配管系とで構成されて
いる。

【０００７】図３は上記亜鉛−臭素電池を構成する電池
本体の一例を示す分解斜視図であり、矩形平板状のバイ
ポーラ型中間電極１の電極部１ａの外周に絶縁性の枠体
１ｂが配置され、同様に矩形平板状のセパレータ板２
は、セパレータ３の外周に枠体２ａが形成されている。
そして上記中間電極１にセパレータ板２及び必要に応じ
てパッキン４，スペーサメッシュ５を重ねて単セルを構
成し、この単セルを複数個積層して電池本体が構成され
ている。

【０００８】積層された電池本体の両端部には、集電メ
ッシュ６を有する集電電極７と、一対の締付端板８と、
その内側に位置する押さえ用の積層端板９とが配置され
ている。そして両締付端板８，８間に図示しないボルト
を通して、このボルトを締め付けることにより、一体的
に積層固定された電池本体が構成される。

【０００９】上記のように構成された電池本体の各単セ
ル内には、各中間電極１及びセパレータ板２の枠体２ａ
の上下２箇所の隅角部に形成した正極マニホールド１０
と、負極マニホールド１１より、セパレータ板２の枠体
２ａに設けられたチャンネル１２及びマイクロチャンネ
ル１３を介して電解液が夫々流入排出する。

【００１０】このように構成された亜鉛−臭素電池は、
５０ＫＷ級電池における電池効率として約８０％、総合
エネルギー効率として約７０％が確認されている。

【００１１】上記の集電電極７は、図４，図５に示した
ようにシート状絶縁枠材１６に形成された孔部１７内に
カーボンプラスチック電極１５を組み込み、図外の金型
を利用して所定の温度と圧力条件下でのヒートプレス手
段に基づいて一体化して製造される。このヒートプレス
の条件として、例えば１５０℃，５５ｋｇ／ｃｍ²が採
用される。

【００１２】カーボンプラスチック電極１５は、ポリエ
チレンにバインダーとして導電性を付与するためのカー
ボンブラック及びグラファイトを混合して成形した部材
であり、臭素に対する耐腐食性を有している。通常ポリ
エチレン：カーボンブラック：グラファイト＝６：１：
３（重量比）で混合したものを成形して用いている。更
に正極側では臭素の反応過電圧を低減させるために、電
極表面にカーボンクロスを熱圧着法により貼着してい
る。

【００１３】６はカーボンプラスチック電極１５中に一
体に組み込まれた真ちゅう製の集電メッシュであり、該
集電メッシュ６から導出された電力取出用の端子片６ａ
は、絶縁枠材１６に形成されたスリット１４を通って外
方に導き出され、図外の集電ブスバーに連結されてい
る。この端子片６ａの集電メッシュ６に対する溶着強度
を大きく保つため、該端子片６ａは短冊状の幅広部材と
して構成されている。図中の矢印Ａは電池本体における
背面側を、矢印Ｂは接液側を夫々示している。

【００１４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながらこのよう
な従来の亜鉛−臭素電池に用いられている集電電極７の
場合、カーボンプラスチック電極１５とシート状絶縁枠
材１６の溶着強度が十分に得られず、更にカーボンプラ
スチック電極１５の剥離とか、材質の相違に基づく熱収
縮率とか線膨張係数の差に起因して集電電極７自体の平
面性が低下することがある上、集電メッシュ６自体の設
計上での自由度が低く、端子片６ａの溶着強度を充分に
高めることが困難であるという課題があった。

【００１５】即ち、前記シート状の絶縁枠材１６は、通
常ポリエチレン樹脂にタルクを混合したものが用いられ
ており、純粋のポリエチレン樹脂に比して破断時の「伸
び」は小さく、更にカーボンプラスチック電極１５は、
導電性を高めるために前記したようにポリエチレン：カ
ーボンブラック：グラファイト＝６：１：３（重量比）
で混合したものを用いているが、体積比ではポリエチレ
ンが１０〜２０％にすぎず、ほとんどがカーボンブラッ
ク及びカーボングラファイトであるため、絶縁枠材１６
との溶着性が悪い上、電極自体が固くてもろいという性
質があって外力による機械歪に対する追従性に欠け、ク
ラックとが破断が生じ易い要因ともなっている。

【００１６】又、集電電極７の集電メッシュ６から導出
されている端子片６ａの溶着強度を大きく保つため、該
端子片６ａを短冊状の幅広部材として構成しているた
め、集電メッシュ６に対する大きな溶着代を要するとと
もにスリット１４の幅員を広くとる必要があり、液密性
が低下し易いという問題点がある。

【００１７】他方で集電電極７の平面性が低下すると、
前記の図３で説明したように、電池本体を構成する締付
端板間８，８をボルトを用いて締め付けた際に、集電電
極７の界面から液漏れが生じ易くなり、蓄えられた電力
の損失が生じてしまうという難点が発生する。この液漏
れをなくすためにボルトによる締付力を強力にすると、
界面に集中する応力によって構成部材にクラックが生じ
易くなるという問題点がある。

【００１８】上記の対策として、通常ボルトに皿ばねを
取り付けて荷重変化を最小限にする手段が用いられてい
るが、温度変化に基づく膨張変位を吸収することが出来
ないため、締付圧の上昇によりクリープによる時間遅れ
を伴った破断が生じる惧れがあり、クラック防止対策と
して必ずしも充分であるとは言えないという問題が残っ
ている。

【００１９】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので
あり、集電メッシュに対する端子片の溶着強度を高める
とともに、該集電メッシュ自体の設計上での自由度を大
きくすることができる上、絶縁枠材に対するカーボンプ
ラスチック電極の剥離とか材質の相違に基づく集電電極
自体の平面性の低下を防止して、該平面性の低下に起因
する電解液の液洩れ等の特性不良を誘発する原因をなく
した亜鉛−臭素電池の集電電極取出構造を提供すること
を目的とするものである。

【００２０】

【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために、矩形平板状の中間電極にセパレータ板を重
ねて単セルを形成し、この単セルを複数個積層して電池
本体を構成するとともに、該電池本体の両端部に、一対
の集電電極と締付端板を配置し、両締付端板間をボルト
締めすることによって一体的に積層固定するようにした
亜鉛−臭素電池の集電電極において、所定の面積を有す
る銅板に光硬化性樹脂を塗布して、写真蝕刻法により焼
き付けたメッシュパターン以外の部位の銅板をエッチン
グによって除去した集電メッシュと、該集電メッシュと
カーボンプラスチック電極を積層してヒートプレス手段
により一体成形した電極部とを具備し、該電極部を端子
片取出用スリットが形成されたシート状絶縁枠材の孔部
内の適宜部位で局部的に溶着した亜鉛−臭素電池の集電
電極取出構造にしてある。

【００２１】前記集電メッシュの中心部に端子片溶着部
を形成して、この端子片溶着部に端子片を溶着もしくは
螺子止め等によって固着してあり、更に前記局部的溶着
手段として、振動溶着法もしくは誘導加熱法を用いてい
る。

【００２２】

【作用】かかる集電電極取出構造によれば、集電メッシ
ュを銅板上でのメッシュパターンの焼き付けと、溶媒を
用いたエッチング手段を用いて製作しているので、集電
メッシュ自体の設計上での自由度が増大するとともに端
子片の溶着強度が高められる。

【００２３】又、熱膨張率の異なる電極部とシート状絶
縁枠材とが実質的に別体となっているため、熱収縮等に
起因する集電電極の変形とか平面性の低下現象が防止さ
れ、このような平面性の低下による電解液の液漏れと
か、過度なボルト締め付けに基づくクラックの発生及び
電極部と絶縁枠材の破断が生じないという作用が得られ
る。

【００２４】

【実施例】以下図面を参照しながら本発明にかかる亜鉛
−臭素電池の集電電極取出構造の具体的な実施例を、前
記図５に示した構成部分と同一の構成部分に同一の符号
を付して詳述する。

【００２５】図１は本発明にかかる集電電極の具体的な
構造を示す分解断面図である。図中の１５ａ，１５ｂ，
１５ｃはカーボンプラスチック電極であり、このカーボ
ンプラスチック電極１５ｂ，１５ｃ間に本実施例を適用
したエッチング法に基づいて製作した集電メッシュ６が
配置されている。

【００２６】そして上記カーボンプラスチック電極１５
ｃの背面側Ａにシート状の絶縁枠材１６が配置されてい
る。上記集電メッシュ６から取り出された端子片６ａ
は、カーボンプラスチック電極１５ｃと絶縁枠材１６に
開口されたスリット１４を通過して該絶縁枠材１６の外
方にまで導かれている。

【００２７】上記の集電メッシュ６の製造方法を以下に
説明する。即ち、所定の面積を有する銅板に光硬化性樹
脂を塗布し、公知の写真蝕刻法により銅板上に図２に示
すメッシュパターン２０を焼き付け、該メッシュパター
ン２０の塗布されていない部位の銅板をフッ素系の溶媒
を用いてエッチングを行う。２０ａはメッシュパターン
２０の中心部に配置された端子片溶着部である。

【００２８】このようなエッチング手段によって得られ
たメッシュパターン２０の形状を有するメッシュの端子
片溶着部２０ａに、前記端子片６ａを溶着もしくは螺子
止め等によって本実施例にかかる集電メッシュ６が得ら
れる。

【００２９】以下に集電電極７の製作順序を説明する
と、先ず電極部１９を製作するために図外の金型を利用
してカーボンプラスチック電極１５ａ，１５ｂ，集電メ
ッシュ６及びカーボンプラスチック電極１５ｃを積層し
て、ヒートプレス手段、例えば１５０℃〜１８０℃，プ
レス圧力５５ｋｇ／ｃｍ²の条件で一体的に成形して電
極部１９を組み付ける。

【００３０】次に得られた電極部１９をシート状絶縁枠
材１６の孔部１７内に挿入し、端子片６ａをスリット１
４内に挿通した状態を保って、この電極部１９を孔部１
７内の適宜部位で局部的に溶着することによって本実施
例にかかる集電電極７が得られる。局部的に溶着する方
法には、周知の振動溶着法とか誘導加熱法が用いられ
る。

【００３１】そして得られた集電電極７を電池本体に組
み付ける場合には、前記図３に示す一対の積層端板９の
外側に位置する締付端板８，８間に通した図示しないボ
ルトを締め付けることにより、電極部１９とシート状絶
縁枠材１６とが液密下にシールされ、電解液に対する密
閉性が良好に保持される。

【００３２】従って本実施例によれば、カーボンプラス
チック電極１５ａ，１５ｂ，１５ｃ及び集電メッシュ６
を主体とする電極部１９と、絶縁枠材１６とが実質的に
別体として構成されており、ボルトの締付力によって両
者のシール性を保持したことが大きな特徴となってい
る。

【００３３】かかる集電電極７によれば、集電メッシュ
６を写真蝕刻法による銅板上でのメッシュパターン２０
の焼き付けと、溶媒を用いたエッチング手段を用いて製
作しているので、設計上での自由度が増大するとともに
端子片６ａの溶着強度が高められる。特に該端子片６ａ
として短冊状の幅広部材を使用しなくても良いため、絶
縁枠材１６に開口したスリット１４の幅員を格別大きく
する必要がなくなり、液密性を高めることができる。

【００３４】又、熱膨張率の異なる電極部１９と絶縁枠
材１６とが実質的に別体となっているため、熱収縮等に
起因する集電電極７の変形とか平面性の低下現象が防止
され、このような平面性の低下による電解液の液漏れと
か、過度なボルト締め付けに基づくクラックの発生及び
電極部と絶縁枠材の破断が生じないという作用が得られ
る。

【００３５】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にか
かる亜鉛−臭素電池の集電電極取出構造によれば、銅板
上でのメッシュパターンの焼き付けと、溶媒を用いたエ
ッチング手段を用いて集電メッシュを製作しているの
で、集電メッシュ自体の設計上での自由度が増大すると
ともに、この集電メッシュから導出されている端子片を
幅広部材にしなくても溶着強度を大きく保つことが可能
であり、且つ端子片の集電メッシュに対する溶着代は小
さくても良いという利点がある。

【００３６】又、熱膨張率の異なる電極部とシート状絶
縁枠材とが実質的に別体となっているため、該カーボン
プラスチック電極の剥離とか、材質の相違に基づく熱収
縮率及び線膨張係数の差に起因する集電電極自体の平面
性の低下現象が防止され、このような平面性の低下によ
る電解液の液漏れとか、過度なボルト締め付けに基づく
クラックの発生及び電極部と絶縁枠材の破断が生じない
という効果が得られる。 従って本発明によれば、集電
メッシュに対する端子片の溶着強度を高めるとともに、
該集電メッシュ自体の設計上での自由度が大きくなり、
しかもシート状絶縁枠材に対する集電電極自体の平面性
の低下を防止して、電解液の液洩れ等の特性不良を誘発
する原因をなくした亜鉛−臭素電池の集電電極取出構造
を提供することが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる集電電極取出構造の具体的な実
施例を示す要部分解断面図。

【図２】図１の構成要素である集電メッシュのパターン
例を示す平面図。

【図３】亜鉛−臭素電池の電池本体を示す要部分解斜視
図。

【図４】従来の集電電極の構造例を示す平面図。

【図５】従来の集電電極の構造例を示す要部断面図。

【符号の説明】

６…集電メッシュ ６ａ…端子片 ７…集電電極 １５ａ，１５ｂ，１５ｃ…カーボンプラスチック電極 １６…絶縁枠材 １７…孔部 １９…電極部 ２０…メッシュパターン ２０ａ…端子片溶着部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 矩形平板状の中間電極にセパレータ板を
   重ねて単セルを形成し、この単セルを複数個積層して電
   池本体を構成するとともに、該電池本体の両端部に、一
   対の集電電極と締付端板を配置し、両締付端板間をボル
   ト締めすることによって一体的に積層固定するようにし
   た亜鉛−臭素電池の集電電極において、 所定の面積を有する銅板に光硬化性樹脂を塗布して、写
   真蝕刻法により焼き付けたメッシュパターン以外の部位
   の銅板をエッチングによって除去した集電メッシュと、
   該集電メッシュとカーボンプラスチック電極を積層して
   ヒートプレス手段により一体成形した電極部とを具備
   し、該電極部を端子片取出用スリットが形成されたシー
   ト状絶縁枠材の孔部内の適宜部位で局部的に溶着したこ
   とを特徴とする亜鉛−臭素電池の集電電極取出構造。
2. 【請求項２】 前記集電メッシュの中心部に端子片溶着
   部を形成して、この端子片溶着部に端子片を溶着もしく
   は螺子止め等によって固着した請求項１記載の亜鉛−臭
   素電池の集電電極取出構造。
3. 【請求項３】 前記局部的溶着手段として、振動溶着法
   もしくは誘導加熱法を用いた請求項１，２記載の亜鉛−
   臭素電池の集電電極取出構造。