JPH0633321B2 - 水溶性キトサンの製造方法 - Google Patents

水溶性キトサンの製造方法

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JPH0633321B2 JP19193388A JP19193388A JPH0633321B2 JP H0633321 B2 JPH0633321 B2 JP H0633321B2 JP 19193388 A JP19193388 A JP 19193388A JP 19193388 A JP19193388 A JP 19193388A JP H0633321 B2 JPH0633321 B2 JP H0633321B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、キチン質より精製されたキトサンを酸化し
て製造する水溶性キトサンの製造方法に関する。
〔従来の技術〕
周知のように、節足動物の殻、軟体動物の外殻、菌類の
細胞壁等の主要な構成成分であるキチン質は、通常、キ
チン(β−ポリ−N−アセチル−Dグルコサミン)及び
キチンのN−脱アセチル化物であるキトサン(β−ポリ
−D−グルコサミン)の混合物を総称するものである。
キチン質は、生体内では糖蛋白質として存在しており、
アルカリで蛋白質を除いてキチン質を取り出し、工業的
には前記したN−脱アセチル化によってキトサンの純度
を高めて原料とし、農業、工業、医薬品業等の各分野
で、例えば、液晶、廃水処理剤、蛋白質回収剤、植物細
胞の活性化剤、餌料、化粧品、手術用糸、免疫活性化剤
等の原料として利用されている。このキトサンは、キチ
ンと同様に水に不溶であるため、上記したような製品の
原料として利用される際には、水溶性にしたものが用い
られる。キトサンを水溶性にするには、従来より塩素ガ
スによる分子分割方法や過酸化水素による酸化分割方
法、アルカリ性低分子キトサン製法、キチナーゼ等の酵
素を利用した低分子キトサンの製法がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記した従来の水溶性キトサンの各製造
方法は、夫々に問題点を有し、塩素ガスによる分子分割
方法においては製造工程に危険性の高いガスを使用しな
ければならず、過酸化水素による方法においては高濃度
の過酸化水素が貯蔵時に分解し易く、アルカリ性低分子
キトサン製法においては生成した水溶性キトサンがアル
カリ性を呈するので原料として扱い難く、酵素を利用し
た製法では、製造原価が高くなって実用的でないという
問題点がある。
〔課題を解決するための手段〕
この発明者は、上記事情に鑑み、製造に関して取り扱い
が比較的安全で生産コストが低く、中性で低分子の水溶
性キトサンの製造について鋭意研究を続けてきた。その
結果、酢酸を酸化促進基剤として用い、過酢酸によって
キトサンを酸化した場合に、水溶性キトサンが簡便に製
造されることを知見し、この発明に到達したものであ
る。即ち、この発明は、キトサンを酢酸に溶解した後、
過酢酸と反応させることを特徴とする水溶性キトサンの
製造方法にかかるものであり、更には、キトサンを溶解
した酢酸と、過酢酸中に含まれる酢酸の総和が、前記キ
トサン1に対して重量比15〜18である前記水溶性キ
トサンの製造方法であり、又、過酢酸のキトサンに対す
る反応時間を制限することにより、キトサンを分子量
1,500〜30,000に分割する前記水溶性キトサ
ンの製造方法である。
この発明の特徴は、キトサンを酢酸に溶解した後、過酢
酸と反応させることにある。前記した塩素ガスを使用す
るキトサンの酸化方法によると、キトサンに加水して5
0℃前後に保ちながら、塩素ガスを吹き込むことによ
り、塩化水素がキトサンを酸化する。この場合、過塩素
酸などの過酸が加えられることはない。
この発明に原材料として用いられるキトサンは、キチン
質を濃アルカリ溶液を加えて加熱又はカリ融解をして脱
アセチル化し、精製したものであって、前記した脱アセ
チル化が不充分なためにキチンが任意の割合で含有され
たものでもよい。
この発明に用いられる過酢酸は、所定量の濃酢酸(氷酢
酸)と共に硫酸、過酸化水素を混和したものである。
この発明において、キトサンを予め溶解させる酸化促進
基剤として用いられる酢酸は、液相として弱酸を呈する
限りにおいて、その濃度を限らず用いることができる。
しかしながら、キトサンを酸化する前記過酢酸中にも所
定量の酢酸が混和されているため、所定量のキトサンと
反応する酢酸の量は、酸化促進基剤としての酢酸と過酢
酸中の酢酸量を加えた総和になる。この酢酸の総和はキ
トサン1に対して重量比15〜18が最適である。この
範囲より酢酸量が少量ではキトサンの酸化が十分に行わ
れず、又、上限以上では分子量1,500〜30,00
0の低分子量の水溶性キトサンが生成されずに、分子量
1,500未満のオリゴ糖となる割合が高くなることか
ら好ましくない。従って、キトサンの酸化促進基剤とし
て用いられる酢酸溶液の濃度と量は、過酢酸中に混和さ
れた濃酢酸との総和が前記重量比の範囲で略一定となる
よう規定される。
この発明の反応条件は特に限定的でなく、反応系が液相
を保持する条件であれば公知の条件を採用できる。一般
には、キトサンと過酢酸の酸化温度は、50℃〜60℃
において好適であり、この状態での反応時間は24時間
以内に終了する。
〔作用〕
この発明において、キトサンを予め酢酸溶液に溶解する
のは、キトサンが水には不溶であるが、弱酸に溶ける性
質を利用して、酢酸溶液中に適当に分散させ、後に加え
られる過酢酸による酸化を均等に早く行わせる為であ
る。キトサンは、過酢酸によって酸化されることによ
り、分子内の結合状態が変化して水溶性となるが、又、
縮重合していたキトサン分子が分割されて、分子量が低
下する。このようにして、多糖類であって分子量30,
000以上の高分子で水に不溶のキトサンから、分子量
1,500〜30,000の低分子且つ、水溶性のキト
サンが製造される。
〔実施例〕
以下、この発明の実施例を示すが、この発明はこれに限
定されるものではない。
20%の酢酸35mlに対して、キチン質より精製した精
製純度任意のキトサン1gを加え、撹拌速度を低速にし
て撹拌機で15分間撹拌する。これによって、キトサン
と酢酸の混合物は酸素の気泡を抱き、ゲルとなる。次
に、濃硫酸10mlを含む過酢酸を、硫酸0.11mlと過
酸化水素40mlと共に別途調製する。この過酢酸50ml
を前記したゲルに加えて約10分間放置して安定させ
る。溶解したキトサンを容器ごと50〜60℃の温水に
浸漬し、保温しながら溶液中の酸素の気泡を自然放出さ
せる。0.5〜24時間の所定時間放置後、ゲル状のキ
トサンの粘性が低下した後、約10分間撹拌して更に酸
素を放出させ、水酸化ナトリウム等の任意のアルカリを
用いて溶液を中和する。次に、エチルアルコールを適量
加え、水溶性のキトサンが水分を失って白色沈澱し、上
部が僅かに透明化したところで20分間安定させる。こ
のような沈澱物を含む溶液を遠心分離機に収容して、1
0,000回転で20分間回転させて、水溶性キトサン
を分離する。更に、70%前後から順次、高濃度のエチ
ルアルコールに前記水溶性キトサンを浸漬して、乾燥を
行う。又、水溶性キトサンに不純物が混入している場合
には、浄水にこれを溶解した後、亜硫酸等によって漂白
還元を行い、再度、エチルアルコールで沈澱させた後、
前記したと同様にして遠心分離及び乾燥を繰り返す。
上記した実施例の結果、1gのキトサンより0.75g
の乾燥した白色粉末状の水溶性キトサンが製造され、更
に複数回の実験により、水溶性キトサンの平均回収率
は、重量比で70〜77%に達した。又、キトサンの過
酢酸との反応時間を制限すると、3時間の反応で分子量
30,000の水溶性キトサンが得られ、同様にして2
4時間反応させると、分子量1,500以下のオリゴ糖
を生成することが確認された。
〔発明の効果〕
以上の説明からも明らかなように、この発明の水溶性キ
トサンの製造方法によると、有毒な塩素ガスをしないの
で、製造に関して取り扱いが比較的安全であり、不安定
な過酸化水素を低濃度にして使用するので過酸化水素の
貯蔵性の問題が解決され、水溶性キトサンの製造後の残
渣も中性であるため廃棄物も低公害であり、簡単な製造
工程で生産コストも低く、所望の分子量を有する水溶性
のキトサンを製造できるという利点がある。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】キトサンを酢酸に溶解した後、過酢酸と反
    応させることを特徴とする水溶性キトサンの製造方法。
  2. 【請求項2】キトサンを溶解する酢酸と、過酢酸中に含
    まれる酢酸の総和が、前記キトサン1に対して重量比1
    5〜18である請求項1記載の水溶性キトサンの製造方
    法。
  3. 【請求項3】過酢酸のキトサンに対する反応時間を制限
    することにより、キトサンを分子量1,500〜30,
    000に分割する請求項1記載の水溶性キトサンの製造
    方法。
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