JPH06330285A - 銀系無機抗菌性薄膜の作製方法及び銀系無機抗菌材 - Google Patents

銀系無機抗菌性薄膜の作製方法及び銀系無機抗菌材

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JPH06330285A
JPH06330285A JP13942793A JP13942793A JPH06330285A JP H06330285 A JPH06330285 A JP H06330285A JP 13942793 A JP13942793 A JP 13942793A JP 13942793 A JP13942793 A JP 13942793A JP H06330285 A JPH06330285 A JP H06330285A
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silver
silverbased
thin film
antimicrobial
antibacterial
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Application number
JP13942793A
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English (en)
Inventor
Hiroki Koma
寛紀 高麗
Toshio Nonomura
俊夫 野々村
Koji Masaki
孝二 正木
Hideki Kato
秀樹 加藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toagosei Co Ltd
Tokushima Prefecture
Original Assignee
Toagosei Co Ltd
Tokushima Prefecture
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 少量の存在で安定した抗菌効果を発揮し、持
続性が高く、且つ基材(素材)の特性を損なうことがな
い銀系無機抗菌性薄膜の作製方法及びこの薄膜を利用し
た銀系無機抗菌材を提供する。 【構成】 銀系無機抗菌剤(以下に示す銀含有リン酸ジ
ルコニウム塩、銀含有ゼオライト、銀含有アパタイト
等)又は該銀系無機抗菌剤を構成することとなる原料化
合物をターゲットにして、高周波スパッタリング法(高
周波出力は200〜500W)により、所定の基材(ナ
イロン、繊維強化ナイロン等の樹脂等)表面上に銀系無
機抗菌性薄膜を形成させて、抗菌性に優れた銀系無機抗
菌材を製造する。 Aga b Zrc (PO4 d ・nH2 O(M;Na、
H、NH4 等)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、極少量の存在で安定し
た抗菌効果を発揮する銀系無機抗菌性薄膜の作製方法及
びこの薄膜を利用した銀系無機抗菌材に関する。本発明
は、種々生活用部材として用いられる製品、例えば、各
種樹脂成型品(食器、マット、風呂桶、水貯蔵タンク
等)、セラミックス成型品、金属成形品及び不織布等に
利用される。
【0002】
【従来の技術】近年、銀等の抗菌性を有する金属を含有
する無機系の抗菌剤が、数多く提案され、繊維製品、樹
脂成型品等に利用されている。これら繊維製品、樹脂成
型製品、セラミックス製品等への抗菌性の付与は予め抗
菌剤と高分子材料等とを混合した組成物を成型する方法
(練り込み法)或いは成型後、無機系抗菌剤を含む塗料
組成物を塗布する方法が採られている。
【0003】一方、無機系抗菌剤は銀イオン、銅イオン
等の抗菌性を有する金属イオンが各種の無機系基材(例
えば、ゼオライト、アパタイト、活性炭、ガラス等)に
イオン結合、吸着等の作用で担持されている。従って、
この無機系抗菌剤は担持されたイオンの溶出が困難のた
め、この無機系抗菌剤は有機系抗菌剤と比較して安全性
が高い。しかし、抗菌性の発揮には抗菌剤と菌との接触
が大きな影響を与えるため、応用製品となる抗菌材にお
いては、例えば、高分子成型製品の材料表面に抗菌剤が
表出された状態で存在することが必要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記練り込み
法或いは塗布法にて製造されたものでは、製品に含まれ
る全ての抗菌剤が表面に存在しているわけではなく、抗
菌機能に寄与するのは材料表面に表出した状態で存在す
る一部の抗菌剤に過ぎない。従って充分な抗菌作用を有
しないとともに、経済的にも大きな損失になっている。
更に、この抗菌作用を向上させるために、多くの抗菌剤
を使用すると、樹脂素材の特性が著しく損なわれるとと
もに、高価となる。一方、塗布法で製造された製品にあ
っては、抗菌剤の剥離や脱落等の問題がある。
【0005】本発明は、上記問題点を解決するものであ
り、少量の存在で安定した抗菌効果を発揮し、持続性が
高く、且つ基材(素材)の特性を損なうことがない銀系
無機抗菌性薄膜の作製方法及びこの薄膜を利用した銀系
無機抗菌材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、銀系無機抗菌剤
をターゲットとして、これを高周波プラズマでスパッタ
リングさせ、樹脂成形品等の表面に無機系抗菌剤の薄膜
を形成させることで、この欠点が解消されることを見出
して、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】本発明の銀系無機抗菌性薄膜の作製方法
は、銀系無機抗菌剤又は該銀系無機抗菌剤を構成するこ
ととなる原料化合物をターゲットにして高周波スパッタ
リング法により所定の基材表面上に銀系無機抗菌性薄膜
を形成させることを特徴とする。この高周波スパッタリ
ング法においてスパッタリング条件は常法に従えば良い
が、好ましい高周波出力は200〜500Wであり、上
記基材は、後述するように各種の素材例えば樹脂である
ものとすることができる。本発明の銀系無機抗菌材は、
上記方法により製造されるものであり、基材と、銀系無
機抗菌剤をターゲットにして高周波スパッタリング法に
より上記基材表面上に形成された銀系無機抗菌性薄膜
と、からなることを特徴とする。
【0008】本発明で使用される「銀系無機抗菌剤」
(即ち、ターゲット材料)としては、銀含有リン酸ジル
コニウム、銀含有リン酸チタニウム、銀含有リン酸錫、
銀含有ゼオライト(アルミノシリケート)、銀含有アパ
タイト、銀含有硝子、銀含有シリカ、銀含有チタニア、
銀含有アルミナ、銀含有ジルコニア、銀含有粘土鉱物等
を用いることができる。
【0009】この銀系無機抗菌剤は、通常、以下のよう
にして、所定の無機イオン交換体に銀を担持させて製造
される。 銀イオンを担持させる無機イオン交換体 本発明に用いる無機イオン交換体は、陽イオン型或いは
両性イオン型が好ましく、銀イオンを0.1wt%以上
担持できるものが更に好ましい。好ましい無機イオン交
換体の例としては、水酸化物又は含水酸化物である、ア
ンチモン酸、酸化ニオブ、酸化タンタル、含水酸化チタ
ン、含水酸化鉄(III )、含水酸化マンガン、酸化アル
ミニウム、含水酸化バナジウム、含水酸化ジルコニウ
ム、含水酸化スズ、シリカゲル等があり、多価金属の酸
性塩である、リン酸ジルコニウム(層状)、リン酸ジル
コニウム(網目状)、リン酸チタン(層状)、リン酸チ
タン(網目状)、リンアンチモン酸、タングステン酸チ
タン、アンチモン酸チタン、アンチモン酸タンタル、タ
ングステン酸スズ、トリポリリン酸クロム等があり、ヘ
テロポリ酸塩である、モリブドリン酸アンモニウム、リ
ンタングステン酸ナトリウム等があり、及び合成アルミ
ノ珪酸塩(ゼオライト)等がある。
【0010】特に好ましい無機イオン交換体として以下
の一般式〔1〕で表される燐酸四価金属塩がある。 Ab c (PO4 d ・nH2 O 〔1〕 (Aはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、
水素イオンまたはアンモニウムイオンから選ばれる少な
くとも1種のイオンであり、Mは4価金属(特に好まし
くはZr)であり、nは0≦n≦6を満たす数であり、
b、c及びdは、いずれも正数であり、mをAの価数と
すると、bはb=1/m又はb=2/mであり、c及び
dはb=1の時、c=2、d=3であり、b=2/mの
時、c=1、d=2である。)
【0011】上記一般式〔1〕で示される化合物は、b
=1/mの時、c=2、d=3の各係数を有する、アモ
ルファスまたは空間群R3Cに属する結晶性化合物であ
り、各構成イオンが3次元網目構造を作る化合物を表
し、b=2/mの時、c=1、d=2の各係数を有す
る、アモルファス又は各構成イオンが層状構造を作る結
晶性化合物を表す。本発明に用いるリン酸四価金属塩と
しては、日光に暴露した時の変色が少ないことから、b
=1/mを満たし、c及びdはc=2、d=3の各係数
を有する3次元網目構造を有する結晶性化合物が望まし
い。
【0012】上記一般式〔1〕で表されるリン酸四価金
属塩は、公知の焼成法或いは湿式法により容易に合成し
て得られる化合物であり、本発明においては、均一且つ
微細な粒度を有するリン酸四価金属塩を容易に得ること
ができ、これに銀イオンを担持させれば、均一且つ微細
な粒度を有する抗菌剤を容易に得ることができるため、
湿式法により合成した化合物を用いることが好ましい。
湿式法による合成方法として従来より知られている方法
はいずれも実施可能であり、常圧下又は加圧下の湿式法
及び水熱法等を用いることができる。
【0013】銀イオンの担持 無機イオン交換体に銀イオンを担持する方法には、特に
制限はないが、好ましい方法として、イオン交換反応に
よる方法がある。即ち、適当な濃度の銀イオンを含有す
る水溶液に、無機イオン交換体を浸漬することにより、
銀イオンを担持することができる。銀イオンの担持量
は、無機イオン交換体を浸漬する水溶液における銀イオ
ンの濃度、その水溶液に浸漬する時間又は浸漬温度等を
調整することより、必要とする特性及び使用条件等に応
じて、適宜調整することができる。
【0014】各種銀系無機抗菌剤の具体例 (イ)銀含有燐酸ジルコニウム塩 リン酸四価金属塩に銀イオンを担持させた化合物のう
ち、特に好ましいのは、銀リン酸ジルコニウムであり、
下記一般式〔2〕で表される。 Aga b Zrc (PO4 d ・nH2 O 〔2〕 Aはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、水
素イオン、アンモニウムイオンから選ばれる少なくとも
1種のイオン(m価とする)であり、(a+mb)は1
又は2であり、a+mbが1であるとき、c=2、d=
3(最も好ましい例)、a+mbが2であるとき、c=
1、d=2となる。
【0015】防かび、抗菌性及び防藻性を発揮させるに
は、一般式〔2〕におけるaの値(銀量)は大きい方が
よいが、aの値が0. 001以上であれば、充分に防か
び、抗菌性及び防藻性を発揮させることができる。しか
し、aの値が0. 01未満であると、防かび、抗菌性及
び防藻性を長時間発揮させることが困難となる恐れがあ
ることと、経済性を考慮すると、aの値を0. 01以上
0. 5以下の値とすることが好ましい。
【0016】上記一般式〔2〕で表される具体的化合物
としては以下のものがある。 Ag0.01Li0.99Zr2 (PO4 3 Ag0.05Na0.95Zr2 (PO4 3 Ag0.200.80Zr2 (PO4 3 Ag0.01Li1.99Zr(PO4 2 Ag0.05Na1.95Zr(PO4 2 Ag0.201.80Zr(PO4 2 Ag0.005 Li0.505 0.49Zr2 (PO4 3 ・1.
1H2 0 Ag0.01(NH4 0.590.40Zr2 (PO4 3
1.2H2 O Ag0.050.95Zr2 (PO4 3 ・1.5H2 O Ag0.05Na0.500.45Zr2 (PO4 3 ・1.1H
2 O Ag0.05Na0.600.110.24Zr2 (PO4 3
1.2H2 O Ag0.05Ca0.100.75Zr2 (PO4 3 ・1.2H
2 O Ag0.10Na0.500.40Zr2 (PO4 3 ・1.1H
2 O Ag0.20Na0.300.50Zr2 (PO4 3 ・1.1H
2
【0017】上記の抗菌性銀含有リン酸ジルコニウム塩
は、熱及び光の暴露に対して安定であり、500℃、場
合によっては、800〜1000℃での加熱後であつて
も構造及び組成が変化せず、紫外線の照射によっても何
等変色を起こさない。また、酸性溶液中でも骨格構造の
変化がみられない。従って、各種成型加工物を得る際の
加工及び保存、さらには従来の抗菌剤のように、使用時
において、加熱温度あるいは遮光条件等の制約を受ける
ことがない。
【0018】(ロ)銀含有ゼオライト ゼオライトに銀イオンを担持したものであり、具体例と
して以下のものがある。 0.04Ag2O・0.9Na2O ・ Al2O3 ・1.9SiO2 ・2.2H2O 0.04Ag2O・0.02(NH4)2O・0.8Na2O ・ Al2O3 ・1.9SiO2 ・2.7
H2O
【0019】(ハ)銀含有アパタイト ハイドロキシアパタイトに銀イオンを担持したものであ
り、具体例として以下のものがある。 Ag0.16Ca9.92(PO4 6 (OH)2
【0020】上記薄膜を形成する対象である「基材」の
材料、形状、大きさ等は特に限定されない。その材料と
しては、樹脂材料(ナイロン、ABS、PP、PE、P
ET、エポキシ、フェノール、PPS、PEEK等)、
セラミックス材料〔粘土系セラミックス、ニューセラミ
ックス(アルミナ、シリカ、ジルコニア、SiC、Si
3 4 等)〕、金属材料(SUS、Fe、Al、Cu
等)等を用いることができる。また、その形状として
も、板状、シート状、フィルム状等を問わないし、ま
た、表面に凹凸があるもの、多孔質体等であってもよ
い。更に樹脂の場合熱可塑性又は熱硬化性のいずれでも
よい。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。本実施例で用いたスパッタリング装置としては、日
本真空技術株式会社製の高周波ハイレートスパッタ装置
「SH−250H−T06」を使用した。この概略図を
図1に示す。 (1)銀系無機抗菌性薄膜の作製 銀系無機抗菌剤(ターゲットともいう。)を、上記スパ
ッタリング装置を用いて、以下の表1に示すスパッタリ
ング条件にてスパッタリングを行って、銀系無機抗菌性
薄膜を作製し、銀系無機抗菌材を製造した。この銀系無
機抗菌剤としては、銀含有燐酸ジルコニウム塩の1種で
ある「ノバロン」〔商品名、東亜合成化学工業(株)
製〕を用い、これは、比重が3.0g/m3 、かさ比重
が0.25、粒径が0.1μm〜0.5μmのさいころ
状の非常に微細な白色粉末である。耐熱性としては、1
000℃まで安定な粉体である。
【0022】厚さ5mm、3インチφのSiO2 に、
2.8インチφ、1mmの溝加工を行い、その部分にこ
の抗菌剤を均一且つ平滑にセットし、スパッタリングを
行った。基板には、表1に示すナイロン66(未強
化)、ポリアクリロニトリル炭素繊維強化ナイロン6
6、及びチタン酸カリウムウィスカー強化ナイロン6
6(合計3種類)を用いた。スパッタリングを行う前処
理として、高周波出力100Wで1分間、基板のエッチ
ングを行った。スパッタリングは、高周波出力を300
W及び200Wとし、基板を25r.p.mで20分間
回転して行った。
【0023】
【表1】 表1 のスパッタリング条件 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− スパッタ前圧力 6×10-5〜8×10-5 Torr スパッタ圧力 4×10-3〜6×10-3 Torr 高周波出力 200W、300W スパッタガス アルゴン ガス流量 15 sccm 基板 ナイロン66 炭素繊維(30重量%)強化ナイロン66 チタン酸カリウムウィスカー(30重量%)強化ナイロ ン66 基板回転 25 r.p.m 基板大きさ 50mm×50mm×3mm ターゲット大きさ 3インチφ×5mm −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0024】(2)作製された薄膜の分析 まず、X線光電子分光法(ESCA)により薄膜表面を
分析した。この測定装置はアルバック・ファイ株式会社
製「ESCA5600」を用いた。図2に、使用したス
パッタリング前のターゲットのESCAワイドスペクト
ルを示した。また、図3に、高周波出力300W、25
r.p.mで20分間、ナイロン66の基板上にターゲ
ットをスパッタリングして生成された膜のワイドスペク
トルを示した。
【0025】ターゲットには、Ag2 O、ZrO2 、P
2 5 及びNa2 Oが含まれており、そして図3及び図
2ともに同じ結合エネルギー位置にこれらのピークが認
められる。従って、定性的には、ナイロン66表面にタ
ーゲットの銀系無機抗菌剤が成膜されていることを示し
ている。また、図3と図2の比較では、C1s、O1s
のピークが異なっており、そのため炭素及び酸素との結
合状態が異なるものが存在すると考えられる。尚、図3
からは、図2に見られないようなSi2s、Si2p、
更にF1sのピークが認められたが、このSiピークは
ターゲットにするとき使用したSiO2 から起因するも
のと考えられ、更に、F1sピークは、この前に行った
ポリテトラフルオロエチレンのスパッタリング時の汚染
の影響と考えられる。
【0026】次に、ナロースペクトルにより、O1sの
状態分析を行い、スパッタリング前の結果を図4に、ス
パッタリング後の結果を図5に示した。O1sの結合状
態は、ともに531.4eVにあるMe−Oに起因する
結合エネルギーと、533.1eVにあるC−Oの結合
エネルギーから合成されていることが確認された。しか
しながら、そのカウント数が大きく異なり、スパッタリ
ング前の531.4eVピークが84.2%、スパッタ
リング後の同ピークが55.5%という結果が得られ
た。従って、スパッタリングすることにより、多くのM
e−Oの結合状態が切れて、C−O結合になり、成膜時
にはMe−O結合が少なくなっていることが認められ
た。そして、更に、Zr3d、Ag3、Na1sについ
て、ナロースペクトルによる分析を行った結果(図示せ
ず。)、スパッタリングの前後でほとんど変化は認めら
れなかった。
【0027】図2及び3の結果を含めて、以上の結果に
よれば、樹脂基材表面に銀リン酸ジルコニウム塩による
薄膜が形成されており、しかもこの銀リン酸ジルコニウ
ム塩は基材のナイロン表面に何らかの化学結合をもって
形成されているものと考えられる。図6は、イオンエッ
チングを行いながら、深さ方向にZr1s、C1sのナ
ロースペクトルを分析した結果を示した。この結果か
ら、高周波出力300W、25r.p.mで20分間ス
パッタリングすることにより、銀系抗菌剤を約3000
オングストロームの厚さに成膜できたことが確認され
た。
【0028】(3)高周波出力と基板温度との関係 上記スパッタリング条件において高周波出力を100、
300及び500Wと変化させた場合の基板の種類によ
る基板温度変化を図7〜9に示す。図7は上記に示す
ナイロン66、図8は上記炭素繊維(15重量%)強化
ナイロン66、図9は上記炭素繊維(30重量%)強化
ナイロン66を用いた場合の結果を示す。
【0029】これらの結果によれば、いずれの基板にお
いても高周波出力の増加に伴いスパッタリング時間とと
もに基板温度の上昇が認められた。また、温度上昇の傾
向及び到達温度についても、3種類の基板には顕著な差
は認められなかった。従って、基板温度はマトリックス
樹脂基板が同じであれば、補強材である炭素繊維の含有
量に関係なく高周波出力とスパッタリング時間に影響さ
れることが明らかになった。
【0030】また、高周波出力100Wでは、10分間
のスパッタリングを行っても基板温度は100℃以下で
あった。また、500Wでは約4分までは急に上昇を起
こすが、それ以上では緩やかになり約230℃で飽和す
る傾向が認められた。また10分間加熱しても、特に基
板を冷却しなくても230℃を越えることはなかった。
この230℃はナイロンの融点の255℃以下であるの
で、少なくとも500W以下の出力で且つスパッタリン
グ時間が10分までであれば、基板に損傷を起こすこと
なく安心してスパッタリングを行うことができることが
確認された。
【0031】(4)抗菌試験 以下に示す供試菌を用いて、以下のようにして抗菌性の
試験を行った。また、サンプルとしては、上記(1)に
より作製された薄膜(表1に示す、及びの3種
類)を有する銀系無機抗菌材を用いた。 供試菌 本実施例で用いた銀系無機抗菌剤(ターゲット)の最小
殺菌濃度(MBC)が30μg/ml以下である、Kleb
siella pneumoniae ATCC 4352 、Pseudomonasaeruginos
a IF0 3080 、Esherchia coli K12 W3110を用いた。菌
体は、普通ブイヨン培地で、37℃、18時間前培養を
行い、OD(光学密度)660 =0.001になるように
無菌水で調整した。この普通ブイヨン培地は、牛乳エキ
ス;5.0g 、ペプトン; 10.0 g 、塩化ナトリウム;5.0
g 、精製水; 1000 ml、終末pH; 7.0〜7.2 であ
る。
【0032】菌懸濁液 OD値の調整された菌懸濁液を、生理食塩水を用いて1
0倍希釈系列により希釈し、10〜104 まで菌液の濃
度調整を行い、最終希釈段階で、標準寒天培地を用いて
菌数が105 cells/mlとなるよう調整した。これを試験
菌懸濁液として使用した。この標準寒天培地は、酵母エ
キス;2.5 g 、ペプトン;5.0 g 、ぶどう糖;1.0 g 、
寒天; 15.0 g 、精製水; 1000 ml、終末pH; 6.8〜
7.2 である。
【0033】試料の調整方法及び抗菌試験 スパッタリング処理された基板及び未処理の基板、それ
ぞれについて、3層フィルム内に封入して、OD660
0.001に調整された菌懸濁液を20mlずつ移し
た。この3層フィルムは、10cm×12cmの大きさ
を有する三菱ガス株式会社製のものであり、第1層には
ポリエチレン層(40μ)、第2層にはエチレン−ビニ
ルアルコールランダム共重合体層(17μ)、第3層に
は2軸延伸ポリプロピレン層(20μ)が用いられ、酸
素透過度が0.3〜4.0 cc/m2・atm.24hrs 、水蒸気
透過度が4g/m2・atm.24hrs の特性をもつものである。
【0034】また、フィルムに菌懸濁液だけ入ったもの
も準備して20mlずつ移した。これらの菌懸濁液の入
ったフィルムは、少量の空気を入れた後、切り口をヒー
トシールして封印した。尚、この菌懸濁液だけ入ったも
のは、それぞれの菌を培養したときのコントロールとし
た。上記3つの試料を37℃で18時間振とう培養し
た。振とう培養後、フィルムを開封して、それぞれのフ
ィルムから菌懸濁液を取り出し、生理食塩水を用いて1
0倍希釈系列により希釈を行った。10〜104 まで菌
液の濃度調整を行い、マイクロピペッターで標準寒天培
地に移植し37℃、18時間インキュベーター内にて静
置培養した。
【0035】生菌数の測定 生菌数の菌数計測は、標準寒天培地で37℃、18時間
静置培養後、生育したコロニー数を計測し、その希釈倍
率を乗じて試料中の生菌数を算出した。生菌数の測定
は、次のそれぞれについて行い、試料番号は、次の通り
とした。 試料番号 A:菌懸濁液を濃度調整後に標準寒天培地に移植しイン
キュベーター内にて37℃、18時間静置培養したもの
(初発菌数) B:菌懸濁液のみを、3層フィルム内に入れ37℃、1
8時間振とう培養後インキュベーター内にて37℃、1
8時間静置培養したもの(コントロール) C:未処理の基板をそれぞれ3層フィルム内に入れBと
同様に処置したもの D:スパッタリング処理した基板をそれぞれ3層フィル
ム内に入れBと同様に処置したもの
【0036】抗菌試験の結果 これらの結果を図10〜17に示す。図10〜12は、
各基板表面上に300Wにて成膜したものを用い、且つ
菌体としてKlebsiella pneumoniae AT CC 4352を用いた
ものである。図13〜15には、同様に300Wにて成
膜したものを用い、且つ菌体としPseudomonas aruginos
a IF0 3080を用いたものである。図16〜17には、上
記各基板及びの表面上に200Wにて成膜したもの
を用い、且つ菌体としEsherchia coli K12 W3110を用い
たものである。図10〜15に示すように、300Wに
て成膜した場合は、3種の薄膜付抗菌材全てについて生
菌数が零であることから、極めて優れた殺菌効果が認め
られた。また、図16〜17に示すように、200Wに
て成膜した場合は、300Wの場合と比べるとやや悪い
殺菌効果であるものの、比較例(試料番号C)と比べる
と優れた効果を示している。
【0037】尚、本発明においては、前記具体的実施例
に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範
囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、
上記実施例では銀系無機抗菌剤そのものをターゲットと
したが、この原料化合物(例えば、銀含有リン酸ジルコ
ニウム塩の場合、Ag(又はAg2 O)、Na2 O、Z
rO2 及びZrP2 7 等)をターゲットとして用いて
もよい。また、銀系無機抗菌性薄膜は、薄膜表面の10
0%が抗菌剤で被覆される必要性はなく、その一部表面
に形成されていてもよい。
【0038】
【発明の効果】以上のように、本発明の作製方法によれ
ば、基板材料の特性や外観を損なわずに、極少量の存在
で安定した抗菌効果を発揮し、且つ持続性が高く、更に
防黴及び防藻効果をも有する銀系無機抗菌性薄膜を作製
でき、ひいてはこのような特性を有する銀系無機抗菌材
を製造できる。特に、黴に対する効果も充分に期待され
る。また、高濃度の抗菌性を表面のみに存在させること
ができるので、抗菌力を効率的に発揮させることがで
き、しかも成膜する対象の基材は限定されないので、成
形品表面上のみならず、フィルム、不織布等の表面上に
も容易に成膜でき、大変有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いたスパッタリング装置の説明図で
ある。
【図2】スパッタリング前のターゲットのESCA分析
の結果を示すグラフである。
【図3】スパッタリング後の成膜表面のESCA分析の
結果を示すグラフである。
【図4】スパッタリング前のターゲットのO1sのES
CA分析の結果を示すグラフである。
【図5】スパッタリング後の成膜表面のO1sのESC
A分析の結果を示すグラフである。
【図6】実施例においてスパッタリング後の成膜表面を
イオンエッチングによる深さ方向にESCA分析(Zr
1s及びC1sのナロースペクトル)した結果を示すグ
ラフである。
【図7】ナイロン66を基板して高周波出力と基板温度
との関係を示すグラフである。
【図8】炭素繊維(15重量%)強化ナイロン66を基
板して高周波出力と基板温度との関係を示すグラフであ
る。
【図9】炭素繊維(30重量%)強化ナイロン66を基
板して高周波出力と基板温度との関係を示すグラフであ
る。
【図10】高周波出力300Wにてナイロン66基板に
成膜した場合のK.pneumoniaeに対する抗菌効果を示すグ
ラフである。
【図11】高周波出力300Wにて炭素繊維強化ナイロ
ン66基板に成膜した場合のK.pneumoniaeに対する抗菌
効果を示すグラフである。
【図12】高周波出力300Wにてチタン酸カリウムウ
イスカー強化ナイロン66基板に成膜した場合のK.pneu
moniaeに対する抗菌効果を示すグラフである。
【図13】高周波出力300Wにてナイロン66基板に
成膜した場合のP.aeruginosaに対する抗菌効果を示すグ
ラフである。
【図14】高周波出力300Wにて炭素繊維強化ナイロ
ン66基板に成膜した場合のP.aeruginosaに対する抗菌
効果を示すグラフである。
【図15】高周波出力300Wにてチタン酸カリウムウ
イスカー強化ナイロン66基板に成膜した場合のP.aeru
ginosaに対する抗菌効果を示すグラフである。
【図16】高周波出力200Wにてナイロン66基板に
成膜した場合のE.coliに対する抗菌効果を示すグラフで
ある。
【図17】高周波出力200Wにて炭素繊維強化ナイロ
ン66基板に成膜した場合のE.coliに対する抗菌効果を
示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 正木 孝二 徳島県徳島市雑賀町西開11番地の2 徳島 県立工業技術センター内 (72)発明者 加藤 秀樹 愛知県名古屋市港区船見町1番地の1 東 亞合成化学工業株式会社名古屋総合研究所 内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銀系無機抗菌剤又は該銀系無機抗菌剤を
    構成することとなる原料化合物をターゲットにして高周
    波スパッタリング法により所定の基材表面上に銀系無機
    抗菌性薄膜を形成させることを特徴とする銀系無機抗菌
    性薄膜の作製方法。
  2. 【請求項2】 基材と、銀系無機抗菌剤又は該銀系無機
    抗菌剤を構成することとなる原料化合物をターゲットに
    して高周波スパッタリング法により上記基材表面上に形
    成された銀系無機抗菌性薄膜と、からなることを特徴と
    する銀系無機抗菌材。
JP13942793A 1993-05-17 1993-05-17 銀系無機抗菌性薄膜の作製方法及び銀系無機抗菌材 Pending JPH06330285A (ja)

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