JPH06322439A - 高合金工具鋼の軟化焼鈍方法 - Google Patents

高合金工具鋼の軟化焼鈍方法

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JPH06322439A
JPH06322439A JP5105499A JP10549993A JPH06322439A JP H06322439 A JPH06322439 A JP H06322439A JP 5105499 A JP5105499 A JP 5105499A JP 10549993 A JP10549993 A JP 10549993A JP H06322439 A JPH06322439 A JP H06322439A
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信秀 川口
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Cr を15〜21wt%、Cを 7≦Cr %/C%−
0.2V%≦11の比率で含み、更に、 3.5wt%以下のV、
(W+ 2Mo )≧ 8%のWおよびMo の内の1種または
2種以上を含んでなる高合金工具鋼を、少なくとも Hv3
00以下であって、その後の切削加工が容易な Hv280以下
の硬さまで軟化焼鈍する。 【構成】 970℃〜1190℃の範囲内の温度に加熱した
後、60℃/Hr以下の冷却速度で 650℃以下の温度まで徐
冷する。 【効果】 加熱過程で2次炭化物を確実に基地に溶け込
ませ、1次炭化物の融合粗大化を進行させると共に、徐
冷過程で2次炭化物の析出を抑えてパーライト変態を完
了させ、所期の硬さまで軟化させることができ、しか
も、その加熱過程において、特性を損なうオーステナイ
ト結晶粒の粗大化や炭化物の溶融が起こることを防止で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高合金工具鋼の軟化焼
鈍方法に関し、詳細には、高い耐摩耗性および靭性を得
るためにC、Cr およびV、Mo等の含有量を高めた高
合金工具鋼の軟化焼鈍方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、冷間加工用の金型や冷間圧延
用のロール等にCr 系の合金工具鋼が広く使用されてい
るが、近年、種々の素材の加工に際して高精度、低コス
ト化が要求される一方で、被加工材の高硬度化、加工速
度の高速化等によって工具の使用条件が一層過酷なもの
となっている。そのため、従前の合金工具鋼(例えば、
JIS;SKD11 等)よりも耐摩耗性および靭性に優れるもの
が求められていた。
【0003】そして、その要請に対応するため、C、C
r およびV、Mo等の含有量を増加させて、耐摩耗性お
よび靭性を改善した高合金工具鋼が提案(特開昭58-213
86号公報)され、かつ実用に供されている。この提案
(特開昭58-21386号公報)の高合金工具鋼は、粉末冶金
法により製造され、Cr を15〜21wt%、Cを 7≦Cr %
/C%− 0.2V%≦11の比率で含み、更に、 3.5wt%以
下のV、(W+ 2Mo )≧ 8%のWおよびMo の内の1
種または2種以上を含んでなり、所定の焼入処理を施す
ことで、従前の冷間用の合金工具鋼である JIS;SKD11等
に比べて格段に優れる耐摩耗性および靭性が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記提
案(特開昭58-21386号公報)においては、Cr %と焼な
まし硬さとの相関については説明されているものの、そ
の軟化焼鈍の条件については一切触れられてない。そこ
で、これら高合金工具鋼を、例えば、Cr 系の合金工具
鋼であるJIS;SKD11 に適用される「 830℃〜 880℃の温
度に加熱した後に徐冷」の焼鈍条件を準用して軟化を図
ると、この条件では Hv300以下の硬さまで軟化できず、
その後の切削加工が非常に困難なものとなる。このた
め、これら高合金工具鋼を、少なくとも Hv300以下であ
って、その後の切削加工が容易な Hv280以下まで軟化で
きる焼鈍条件が求められていた。
【0005】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたもので、高い耐摩耗性および靭性を得るためにC、
Cr およびV、Mo等の含有量を高めた高合金工具鋼
を、切削加工の容易な硬さまで軟化することのできる高
合金工具鋼の軟化焼鈍方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は以下の構成とされている。すなわち、本
発明の高合金工具鋼の軟化焼鈍方法は、Cr を15〜21wt
%、Cを7≦Cr %/C%− 0.2V%≦11の比率で含
み、更に、V 3.5wt%以下、(W+2Mo )8wt %以下
の1種または2種以上を含んでなる高合金工具鋼を焼鈍
するに際して、 970℃〜1190℃の範囲内の温度に加熱し
た後、60℃/Hr以下の冷却速度で 650℃以下の温度まで
徐冷することを特徴とする。
【0007】
【作用】基地および炭窒化物中に存在して焼入性を改善
するCと、高硬度の炭化物を形成するCr の含有量を高
め、更に、2次硬化による熱処理硬さを増加させるV、
WおよびMo を含有する含む高合金鋼では、その製造過
程において晶出または析出した1次炭化物および2次炭
化物が多く存在し、また、それら炭化物は晶出または析
出状態のままでは非常に高い硬度を有する。従って、前
記高合金工具鋼を軟化させるには、その軟化焼鈍の過程
で、微細な2次炭化物を基地に溶け込ませ、1次炭化物
の融合粗大化を進行させて、基地を2次炭化物の少ない
フエライト組織にする必要があるが、 970℃未満の温度
の加熱では、2次炭化物の基地への溶け込みと1次炭化
物の融合粗大化が殆ど起こらないため軟化効果は得られ
ず、焼なまし硬度が高くなる。一方、加熱温度が1190℃
を超えると、オーステナイト結晶粒の粗大化が起こり、
当該高合金工具鋼がもつ靭性等の特性が損なわれる。ま
た、1200℃を超える温度域では、炭化物が溶融し始め
て、基地との界面において空孔を形成するため、その特
性が大きく損なわれ、特に粉末冶金材では溶解材と同様
な脆いものとなり、その本質的な特性を失するものとな
る。従って、加熱温度を 970℃〜1190℃の範囲内の温度
とすることで、2次炭化物を確実に基地に溶け込ませ、
1次炭化物の融合粗大化を進行させる一方で、特性を損
なうオーステナイト結晶粒の粗大化や炭化物の溶融が起
こることを防げる。
【0008】また、当該高合金工具鋼を 970℃〜1190℃
の温度に加熱した後、60℃/Hrを超える冷却速度で冷却
すると、〔図2〕のグラフに示すように、その硬さが H
v300を超えるものとなる。これは、60℃/Hrを超える高
冷却速度で冷却すると、加熱温度下では基地に溶け込ん
でいた2次炭化物が、冷却過程で再析出して、その量が
多くなり、基地の硬さが高くなるためである。また、加
熱温度下ではオーステナイト組織であったものが、パー
ライト変態域を短時間で通過、ないしは切らずに通過し
てベイナイト変態やマルテンサイト変態を起こすためで
あると考察され、またこのことは、冷却後の組織観察で
も確認されている。一方、60℃/Hr以下の冷却速度で徐
冷してパーライト変態を起こさせた場合でも、その徐冷
を 650℃より高い温度で終了させると、パーライト変態
の未完了部分が残るため、その部分がベイナイト変態等
を起こして硬化するが、 650℃以下では、パーライト変
態が完全に終了するため硬化しない。従って、加熱後に
60℃/Hr以下の冷却速度で650 ℃以下の温度まで徐冷す
ることで、その徐冷過程で析出する2次炭化物の量を低
減させると共に、その徐冷過程でパーライト変態を完了
させて、硬化を伴うベイナイト変態やマルテンサイト変
態が起こることを防げる。なお、60℃/Hr以下の冷却速
度では軟化が飽和する傾向にあるので、実用上において
は10℃〜60℃/Hrの範囲が望ましい。
【0009】ここで、本発明方法では、前記高合金工具
鋼を 970℃〜1190℃の範囲内の温度に加熱した後、60℃
/Hr以下の冷却速度で650 ℃以下の温度まで徐冷するの
で、その加熱過程で2次炭化物を確実に基地に溶け込ま
せ、1次炭化物の融合粗大化を進行させると共に、徐冷
過程で2次炭化物の析出を抑えてパーライト変態を完了
させ、所期の硬さまで軟化させることができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。ま
ず、ガスアトマイズ法によって、3種類の組成の粉末を
準備し、それらの粉末をカプセルに充填して脱気・密封
し、これをHIP処理(1100℃,1000atm,5Hrの処理)し
て、3種の高合金工具鋼からなり、それぞれが直径 300
mm、長さ1000mmの鋼塊を製造した。次いで、これら鋼塊
それぞれを、1000℃の温度に加熱して所定寸法のビレッ
トに鍛造成形すると共に、各ビレットから厚さ50mm、幅
150mm、長さ 200mmの供試材を複数個採取した。これら
の3種の高合金工具鋼の含有成分は〔表1〕に示すとお
りである。
【0011】
【表1】
【0012】なお、上表中には記載を省略したが、これ
ら高合金工具鋼は、不可避的成分として、Si 0.35以
下、Mn 0.45以下、P 0.020以下、S 0.010以下、Ni
0.10以下の数値にてそれぞれwt%で含み、かつ、その残
部にFe を含んでいる。
【0013】これら高合金工具鋼からの各供試材を、 9
70℃〜1190℃/3Hr で加熱した後、10℃〜60℃/Hrの冷
却速度で 650℃以下まで徐冷し、その後に放冷の処理条
件で軟化焼鈍した。また、比較のために、冷却は上記と
同条件とし、各鋼種について加熱温度を 870℃とし、A
鋼種では更に加えて900 ℃および 940℃とする条件で焼
鈍した。なお、加熱時の保持時間は 1Hr/in.を基準に設
定し、各例共に 3Hr保持とした。各例の焼鈍条件および
焼なまし硬さを〔表2〕に示し、また、A鋼種での加熱
温度と焼なまし硬さの関係を〔図1〕のグラフに整理し
て示す。
【0014】
【表2】
【0015】〔表2〕に示すように、比較例のものは、
焼なまし硬さが Hv300以上であったのに対して、本発明
例のものは、全て目標とする Hv280以下の硬さであっ
た。一方、同一冷却条件下では、〔図1〕のグラフに明
らかなように、軟化効果は加熱温度に大きく影響されて
おり、これら例より、加熱温度を 970℃〜1190℃として
2次炭化物を確実に基地に溶け込ませ、1次炭化物の融
合粗大化を進行させる一方で、60℃/Hr以下の冷却速度
で 650℃以下まで徐冷して2次炭化物の再析出と変態硬
化を防いで軟化をはかる本発明方法の優れた効果を確認
することができた。なお、〔図1〕のグラフ中の△印で
プロットした曲線は比較例、○印でプロットした曲線は
本発明例のものをそれぞれ示す。
【0016】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の軟化焼鈍
方法によれば、高い耐摩耗性および靭性を得るために
C、Cr およびV、Mo等の含有量を高めた高合金工具
鋼を、切削加工の容易な硬さまで軟化することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の軟化焼鈍に関わる加熱温度と
焼なまし硬さとの関係を示すグラフである。
【図2】本発明の軟化焼鈍に関わる冷却速度と焼なまし
硬さとの関係を示すグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr を15〜21wt%、Cを 7≦Cr %/C
    %− 0.2V%≦11の比率で含み、更に、V 3.5wt%以
    下、(W+ 2Mo )8wt %以下の1種または2種以上を
    含んでなる高合金工具鋼を焼鈍するに際して、 970℃〜
    1190℃の範囲内の温度に加熱した後、60℃/Hr以下の冷
    却速度で 650℃以下の温度まで徐冷することを特徴とす
    る高合金工具鋼の軟化焼鈍方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012246558A (ja) * 2011-05-30 2012-12-13 Daido Steel Co Ltd 窒化処理装置及び断面硬さ分布予測システム
CN110614288A (zh) * 2019-09-30 2019-12-27 内蒙古北方重工业集团有限公司 含Cr、Mo合金耐热钢大型挤压厚壁制坯件的缓冷方法
CN112458256A (zh) * 2020-11-02 2021-03-09 抚顺特殊钢股份有限公司 一种1.2746即45NiCrMoV或4CrNi4MoV模具钢退火工艺

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