JPH06303973A - 新規界面活性剤被覆酵素とその製法 - Google Patents

新規界面活性剤被覆酵素とその製法

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JPH06303973A
JPH06303973A JP11242593A JP11242593A JPH06303973A JP H06303973 A JPH06303973 A JP H06303973A JP 11242593 A JP11242593 A JP 11242593A JP 11242593 A JP11242593 A JP 11242593A JP H06303973 A JPH06303973 A JP H06303973A
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雅宏 後藤
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弘志 洲村
Hikotada Tsuboi
彦忠 坪井
Shigemitsu Nagao
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 酵素修飾、固定化、カプセル化などの複雑
で高度な技術を使用せず、簡単な方法で、かつ、あらゆ
る酵素が有機溶媒中で使用可能となるような技術を提供
する。 【構成】 逆相エマルションを形成しうる界面活性剤が
97.9〜70.0重量%、酵素が0.1〜10.0重
量%、必須成分として水を2.0〜10.0重量%、そ
して/または無機、有機塩類よりなる、水不溶性有機溶
媒中にても高活性を有する界面活性剤被覆酵素組成物。
酵素を溶解した水溶液と、水不溶性有機溶媒を、逆相エ
マルションを形成しうる界面活性剤の存在下に乳化し、
その乳化物を乾燥することを特徴とする、水不溶性有機
溶媒中にても高活性を有する、界面活性剤被覆酵素組成
物の調製法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医薬品工業、食品工
業、農水産業分野、化粧品工業、有機化学工業分野など
において有用な有機系化学薬品、例えば、アルコール
類、カルボン酸類、エステル類、ペプチド類を製造する
際に有用な、水不溶性有機溶媒中でも高い触媒作用を発
現する新規な調製酵素を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】酵素の反応特異性を応用して、生理活性
物質や化成品等の有機化合物を製造する試みは古くから
行われていた。
【0003】しかしながら、一般的に酵素は水溶液に可
溶であり、かつpH調製された水溶液にてのみ安定に存
在しうるものである。
【0004】それ故、酵素の触媒作用を有機合成反応に
応用するには、該反応は水溶液中で行うのが好ましく、
もし有機溶媒中にて行った場合、有機溶媒と酵素の相互
作用により酵素自身の高次構造が壊れてしまい、触媒と
しての能力を急速に失ってしまう(失活)のがほとんど
である。
【0005】酵素の触媒作用を有機合成反応に応用する
場合、基質および反応物が水溶性である場合には、比較
的問題は少ない。
【0006】しかしながら有機合成に於いては、基質が
有機溶媒にしか溶解せず、有機溶媒中でしか反応ができ
ない場合がほとんどであり、あえて酵素をそのままの形
で有機溶媒中にて使用すると、非常に高価な酵素がたち
まちに失活したり、全く触媒作用を示さないのがほとん
どである。
【0007】上記問題を克服し、有機溶媒中にて酵素を
利用する試みは以前から行われており、その手段として
は酵素修飾、固定化、カプセル化等が知られている。
【0008】しかし、これらの技術は非常に手間のかか
る高度な難しいものであり、また全ての酵素がそれらの
方法で修飾、固定化できるわけではない。
【0009】またそれらの方法により酵素を有機溶媒中
にても安定に存在しえるよう修飾できたとしても、酵素
本来の活性が著しく低下してしまう可能性も非常に高
い。
【0010】有機溶媒中にて酵素を使用する試みの一つ
に、油脂分子により表面を保護した酵素を使用するとい
う発明が、特開昭64―80282に述べられている。
【0011】該発明は、pH緩衝水溶液酵素を溶解し、
それに脂質を直接、分散させることによって、粉末状の
酵素―脂質複合体を形成せしめるものである。
【0012】凍結乾燥等により乾燥させた粉末状の本複
合体は有機溶媒中でも酵素活性を示し、その反応触媒作
用を発揮するものである。
【0013】しかしながら、酵素を溶解した緩衝液に直
接脂質を加えることによって形成される酵素―脂質複合
体は、酵素表面と脂質間の水素結合等の化学的、物理的
分子間力を応用して形成されるだけに、分子間力の弱く
て複合体が形成されにくい種類の酵素では、本方法は適
用できない。
【0014】例えば、アミド化反応等に有用なα―キモ
トリプシンは本方法によっては該複合体を形成させるこ
とはできなかった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記発明により、酵素
―脂質複合体を形成させるという簡単な方法で、有機溶
媒中にても酵素活性を発現させることができるようにな
った。
【0016】しかしながら、本方法では、脂質と複合体
を形成しうる酵素のみに使用が限定され、すべての酵素
を有機溶媒中で使用できるようにするという点から見る
と、まだまだ不十分である。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは酵素修飾、
固定化、カプセル化などの複雑で高度な技術を使用せ
ず、簡単な方法で、かつ、あらゆる酵素が有機溶媒中で
使用可能となるような技術を見いだすべく鋭意検討を行
った結果、ここに上記要求を満足させる新規な発明を見
いだすに至った。
【0018】すなわち、本発明は、逆相エマルションを
形成しうる界面活性剤が97.9〜70.0重量%、酵
素が0.1〜10.0重量%、必須成分として水を2.
0〜10.0重量%、そして/または、塩類よりなる、
水不溶性有機溶媒中にても高活性を有する界面活性剤被
覆酵素組成物に関するものである。
【0019】本発明による界面活性剤被覆酵素は、特開
昭64―80282に開示されている酵素―脂質複合体
とは異なり、界面活性剤分子によって形成される膜、ま
たは網の中に、酵素、水、その他塩を封じ込めたもので
ある。
【0020】このものは水不溶性有機溶媒中に容易に分
散され、そして該溶媒中にても高活性な触媒作用を示
す。
【0021】それ故、本発明の界面活性剤被覆酵素を用
いれば、水不溶性有機溶媒にしか溶解しない基質であっ
ても、エステル化、加水分解、アミド化、酸化還元反応
等を有機溶媒中にて行うことが可能となった。
【0022】また反応後は反応液を冷却するという簡単
な操作にて析出して来る該被覆酵素を濾別することより
容易に回収でき、かつ失活することなく、何回でも再使
用可能である。
【0023】さらに本発明は、酵素を溶解したpH緩衝
液と、水不溶性有機溶媒を、逆相エマルションを形成し
うる界面活性剤の存在化に乳化し、その乳化物を乾燥す
ることを特徴とする、水不溶性有機溶媒中にても高活性
を有する界面活性剤被覆酵素の調製法に関するものであ
る。
【0024】本発明に使用できる酵素としては、まず加
水分解酵素が挙げられる。加水分解酵素であるエステラ
ーゼとしては動物、微生物由来のリパーゼが、ペプチド
やアミド基をを加水分解するペプチダーゼやアミダーゼ
としては、ペプシン、α―キモトリプシン、サーモライ
シン、プロメリン、アミノペプチダーゼ、アルギナー
ゼ、ウレアーゼ、ペニシリナーゼなどが代表的なものと
して挙げられる。
【0025】また糖に作用するグルコシダーゼとしては
α―およびβ―グルコシダーゼ、α―およびβ―アミラ
ーゼのようなオリゴサッカラーゼ、ポリサッカラーゼな
どが挙げられる。
【0026】他にはステレオイソメラーゼ、ストラクチ
ュアルイソメラーゼなどの異性化酵素、トランスアミナ
ーゼ、トランスグルコシダーゼなどの転移酵素や酸化還
元酵素、脱水素酵素等が挙げられる。
【0027】これらの酵素は、酵素自身の安定性を考慮
したpH緩衝液に0.05〜50g/lの濃度で溶解し
使用する。
【0028】また本発明に使用される界面活性剤は、ソ
ルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレングリコ
ールアルキルエステル、ポリオキシエチレングリコール
アルキルエーテル、およびジアルキルグルタメートグル
コンアミドなどのような水酸基やエチレングリコール骨
格を有する非イオン性界面活性剤であり、Griffi
nのHLBで10以下のものを使用するが、特に2本の
アルキル基を有する界面活性剤が好ましい。
【0029】また使用酵素の静電気的な特性、および酵
素の安定性を考慮し、必要に応じてアルキルスルフォン
酸、ジアルキルスルフォコハク酸、ジアルキルリン酸や
それらの塩のようなアニオン系界面活性剤、アルキル、
およびジアルキルアンモニウム塩のようなカチオン系の
界面活性剤、またホスファチジルコリン、ホスファチジ
ルセリンのような両性界面活性剤を混合しても構わな
い。
【0030】界面活性剤は、水不溶性の有機溶媒、すな
わちヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンのよ
うな飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンの
ような芳香族炭化水素類、他、鉱油、クロロホルム、ジ
クロルメタンなどの単独、または混合溶媒に、0.01
〜20重量%の濃度で溶解して使用する。
【0031】酵素を溶解した緩衝液10部に対し、界面
活性剤を溶解した水不溶性有機溶媒相を5〜500部の
割合で混合し、メカニカルスターラー、マグネチックス
ターラー、ホモミキサー等による攪拌装置を用い、必要
に応じて超音波照射等を行うことによって、逆相(油中
水型、W/O型)エマルションを調製する。
【0032】このエマルションを真空、または常圧下に
乾燥することにより不要な水、有機溶媒は除去され、界
面活性剤、酵素、少量の水、塩、また水不溶性有機溶媒
よりなる、界面活性剤被覆酵素が調製される。
【0033】界面活性剤被覆酵素中の酵素の重量比率と
しては0.1〜10重量%であり、0.1より低いと反
応に使用した際に十分な反応速度が得られず、また10
重量%以上になると酵素の失活等が見られる。
【0034】また界面活性剤の重量比率は70.0〜9
7.9重量%であり、70.0重量%より低いと粉末状
になりにくく、そして酵素の失活等が見られる。また9
7.9%以上では触媒作用は示すものの、反応使用時の
効率が低い。
【0035】本界面活性剤被覆酵素の含水率は、酵素―
脂質複合体とは異なり、ある程度水が残っている状態、
すなわち含水率が2.0〜10.0%になるまで乾燥さ
れるのが好ましい。
【0036】酵素―脂質複合体とは異なり、含水率が
2.0%未満では酵素の触媒活性が低下してしまい、ま
た10%を越えると、反応の際、その水により反応が阻
害されてしまう。
【0037】また本方法では酵素を安定化させるためp
H緩衝液を使用するが、酵素によっては使用しなくても
構わない。
【0038】またエマルションの安定化のため、また触
媒作用を制御するための添加剤、例えば、窒素、イオ
ウ、リン元素などを含む有機化合物、有機酸、有機塩
基、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ほ
か金属の塩をふくんでいても問題はない。
【0039】本発明の特徴としては以下の事が挙げられ
る。すなわち、酵素水溶液と界面活性剤を溶解した水不
溶性有磯溶媒相とにより逆相エマルションを調製し、そ
れを乾燥する本方法では、あらゆる種類の酵素を界面活
性剤被覆酵素として調製できる点にある。
【0040】また使用した酵素はあますところなく本被
覆酵素に変換できることも特徴として挙げられる。
【0041】本発明の方法による界面活性剤被覆酵素
は、例えば、次のようにして使用することが可能であ
る。
【0042】すなわち、反応基質を溶解した水不溶性有
機溶媒に本界面活性剤を必要量添加し、10〜60℃の
温度で攪拌または放置することによって、反応を完結さ
せる。
【0043】この際、反応を促進させるため、また酵素
の回収を容易にするために親水性有機溶媒、例えばメチ
ルアルコール、エチルアルコール、イソプロピレンアル
コール、アセトンなどを、酵素活性を失活させない程度
の量を添加しても構わない。
【0044】そして反応後は、冷却することにより析出
してくる界面活性剤被覆酵素を濾別し、次の反応に再使
用する。
【0045】母液には酵素反応による生成物が含まれ、
通常の分離操作によって生成物は単離される。
【0046】実際の使用に当たり、使用される水不溶性
有機溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタン、シク
ロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの飽和、不飽和、
芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタ
ノールなどのエステル系、アルコール系溶媒、ジクロロ
メタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素な
どのハロゲン系溶媒、鉱油などが使用可能である。
【0047】また、これらの混合溶媒、また酵素が失活
しない程度の量のアセトン、アルコール、ジメチルホル
ムアミドなどの水溶性有機溶媒も添加することが可能で
ある。
【0048】
【実施例1】pH7.0のリン酸緩衝溶液にリパーゼを
1.0g/l(Pseudomonas sp.起源)
の濃度で溶解した水溶液10mlと、非イオン性界面活
性剤2C18Δ9 GEを0.01mol/lの濃度で溶解
したイソオクタン溶液90mlを混合した後、ホモジナ
イザーで高速攪拌(8000rpm)してエマルション
を作成し、そのままシャーレ内に広げて室温にて4日間
放置乾燥させた。その結果、白色固体状を呈する新規界
面活性剤被覆酵素を0.785g得た。
【0049】このものの含水率は、カールフィッシャー
滴定装置により4.37%であることを確認した。
【0050】また本方法によれば、調製に使用したリパ
ーゼは界面活性剤被覆リパーゼとして回収されたことに
なる。
【0051】
【化1】
【0052】
【実施例2】pH7.0のリン酸緩衝溶液にα―キモト
リプシン(EC3.4.21.1)を1.0g/lの濃
度で溶解した水溶液10mlと、非イオン性界面活性剤
2C18Δ9 GEを0.01mol/lの濃度で溶解した
イソオクタン溶液90mlを混合した後、ホモジナイザ
ーで高速攪拌(8000rpm)してエマルションを作
成し、そのまま3枚のシャーレ内に広げて室温にて各2
日、4日、8日間放置乾燥させた。
【0053】その結果、白色固体状を呈する新規界面活
性剤被覆酵素を、各0.778g、0.764g、0.
753gを得た。
【0054】各々のものの含水率は、カールフィッシャ
ー滴定装置により6.32%、4.34%、2.96%
であることを確認した。
【0055】
【比較例1】リパーゼ(Pseudomonas s
p.起源)1gをpH7のリン酸緩衝液500mlに溶
解し、それに界面活性剤2C18Δ9 GE4.13gを溶
解し、超音波を20分間照射した。
【0056】そして水溶液中に析出した粉末を遠心分離
器により分離し、真空乾燥した結果、含水率0.79%
の白色粉末状のリパーゼ―脂質複合体0.926gを得
ることができた。
【0057】複合体中のリパーゼ重量%は20.6%で
あり使用リパーゼに対するリパーゼ回収率は19.8%
であった。
【0058】
【比較例2】実施例1にて調製した界面活性剤被覆リパ
ーゼ0.305gを、さらにデシケーター中にて一昼
夜、真空乾燥し、0.293gの乾燥物を得た。
【0059】乾燥の結果、含水率は4.37%から0.
79%に低下し、比較例1と同等の含水率まで低下し
た。
【0060】
【比較例3】α―キモトリプシンを1g/lの濃度でp
H7.0のリン酸緩衝液に溶解した水溶液500ml
に、界面活性剤2C18Δ9 GEを4.13gを分散さ
せ、超音波を20分間照射した。
【0061】しかしながら溶液が薄く濁った程度であり
遠心分離器により分離しようとしたが、粉末状のα―キ
モトリプシン―脂質複合体を得ることができなかった。
【0062】
【実施例3】ラウリン酸とベンジルアルコールを各10
mmol/lの濃度でイソオクタンに溶解した溶液10
mlに、実施例1にて調製した界面活性剤被覆リパーゼ
をリパーゼ純分0.5g/lの濃度に調製したイソオク
タン溶液10mlを添加し、30℃の恒温槽で24時間
振とうした。
【0063】ガスクロマトグラフィーにてラウリン酸ベ
ンジルを定量した結果、エステル化反応収率は98.7
%であった。
【0064】
【比較例4】比較例1、2にて調製された酵素―脂質複
合体、および界面活性剤被覆リパーゼをリパーゼ純分
0.5g/lの濃度に調製した各イソオクタン溶液10
mlに、ラウリン酸とベンジルアルコールを各10mm
ol/lの濃度で溶解した溶液10mlを各々に添加
し、30℃の恒温槽で2時間振とうした。
【0065】ガスクロマトグラフィーにてラウリン酸ベ
ンジルを定量した結果、エステル化反応収率は比較例1
調製の酵素―脂質複合体では78.0%、含水率を比較
例1と同程度まで下げた比較例2による再乾燥界面活性
剤被覆酵素にては27.5%であった。
【0066】このことから、本発明による界面活性剤被
覆酵素を真空乾燥し、比較例1にて調製した酵素―脂質
複合体並に含水率を下げると、触媒活性が低下してしま
う事から、本発明の界面活性剤被覆酵素には水が必須成
分であることが確認された。
【0067】
【実施例4】ラウリン酸とオクチルアルコールを各10
mmol/lの濃度でイソオクタンに溶解した溶液10
mlに、実施例1にて調製した界面活性剤被覆リパーゼ
をリパーゼ純分0.5g/lの濃度に調製したイソオク
タン溶液10mlを添加し、30℃の恒温槽で24時間
振とうした。
【0068】ガスクロマトグラフィーにてラウリン酸オ
クチルを定量した結果、エステル化反応収率は93.2
%であった。
【0069】
【実施例5】ラウリン酸とオレイルアルコールを各10
mmol/lの濃度でイソオクタンに溶解した溶液10
mlに、実施例1にて調製した界面活性剤被覆リパーゼ
をリパーゼ純分0.5g/lの濃度に調製したイソオク
タン溶液10mlを添加し、30℃の恒温槽で24時間
振とうした。
【0070】ガスクロマトグラフイーにてラウリン酸オ
レイルを定量した結果、エステル化反応収率は96.8
%であった。
【0071】
【実施例6】2―フェニルプロピオン酸とn―オクチル
アミンをイソオクタンに各10mmol/lの濃度にて
溶解した。また実施例2にて4日間乾燥して調整した界
面活性剤被覆α―キモトリプシンを酵素純分0.5g/
lの濃度でイソオクタンに溶解した。
【0072】それぞれのイソオクタン溶液を4mlづつ
の等量で混合した後に、30℃恒温槽にて振とうした。
【0073】所定の時間にサンプリングし、反応率はF
IDを検出器としたキャピラリーガスクロマトグラフィ
ーにより反応生成物であるN―n―オクチル―2―フェ
ニルプロピオンアミドの量にて決定した。
【0074】各時間毎の反応率Xaは図1に示したが、
1時間で0.5程度になり、その後50時間経遇しても
0.5〜0.6の反応率を示した。
【0075】UV測定を行うと、α―キモトリプシン由
来の吸収も見られる事から、酵素は失活していないこと
が確認された。
【0076】これは酵素の立体選択性のため2―フェニ
ルプロピオン酸のDまたはL体のみが優先的に反応した
ものと推定され、反応は上記条件で1時間も行えば十分
であることが確認された。
【0077】
【比較例5】2―フェニルプロピオン酸とn―オクチル
アミンをイソオクタンに各5mmol/lの濃度にて溶
解した。
【0078】その溶液8mlに対し粉末状のα―キモト
リプシンを0.25gをそのまま添加し、30℃恒温槽
にて振とうした。
【0079】所定の時間にサンプリングし、反応率はF
IDを検出器としたキャピラリーガスクロマトグラフィ
ーにより反応生成物であるN―n―オクチル―2―フェ
ニルプロピオンアミドの量にて決定した。各時間毎の反
応率は図1に示したが、エステル化はほとんど進行しな
かった。
【0080】
【実施例7】実施例2にて乾燥日時を変えて調製された
各界面活性剤被覆α―キモトリプシンを用い、乾燥時間
による反応性の違いを検討した。
【0081】(R)―2―フェニルプロピオン酸、また
はS体の2―フェニルプロピオン酸とn―オクチルアミ
ンを各10mmol/m3の濃度で溶解したイソオクタ
ン溶液を4mlと、それに各界面活性剤被覆α―キモト
リプシンを酵素純分で0.5g/lの濃度で溶解したイ
ソオクタン溶液を4ml混合し、30℃恒温槽に1時間
放置した。
【0082】実施例1と同様に生成物を測定し、結果は
図2に示した。結果を見ると、いずれもS体の反応率が
R体よりも高く、ある程度、酵素の立体選択性が発現さ
れていることを確認された。
【0083】
【実施例8】α―キモトリプシン(EC3.4.21.
1)をリン酸緩衝液(pH7)に1g/lの濃度で溶解
した水相10mlと、非イオン性界面活性剤2C18Δ9
GEを0.005、0.01、0.015mol/lの
3種類の濃度で溶解した各イソオクタン溶液90mlを
ホモジナイザーで高速攪拌(8000rpm)してエマ
ルションを作成し、各々シャーレ内に広げて室温にて4
日間放置し乾燥させた。
【0084】その結果、白色固体状の界面活性剤被覆酵
素各0.396g、0.764g、1.519gを得
た。
【0085】各々のものの含水率はカールフイッシャー
滴定装置により4.13%、4.34%、4.44%で
あることを確認した。
【0086】
【実施例9】実施例8にて調製されたα―キモトリプシ
ンに対する界面活性剤量の異なる界面活性剤被覆酵素を
使用し、界面活性剤量の影響を実施例7と同様な方法で
調査した。
【0087】結果は図3に示したが、界面活性剤被覆酵
素作成の際、界面活性剤濃度の高い方が反応の立体選択
性が向上することが確認された。
【0088】
【実施例10】実施例2と同様な手法により界面活性剤
の種々濃度のイソオクタン溶液を調製し、界面活性剤と
α―キモトリプシン(分子量25600)のmol比の
異なる界面活性剤被覆α―キモトリプシンを調製した。
【0089】そして(R)、(S)―2―フェニルプロ
ピオン酸とn―オクチルアミンとの反応に使用した際
の、界面活性剤とα―キモトリプシンのmol比の影響
について調べた。
【0090】反応時の界面活性剤とα―キモトリプシン
のmol比による影響について調べた。
【0091】(R)―2―フェニルプロピオン酸、また
は(S)―2―フェニルプロピオン酸とn―オクチルア
ミンを各10mmol/m3の濃度で溶解したイソオク
タン溶液を4mlと、それに各界面活性剤被覆α―キモ
トリプシンを酵素純分で0.5g/lの濃度で溶解した
イソオクタン溶液を4ml混合し、30℃恒温槽に1時
間放置した。実施例1と同様に生成物を測定し、結果は
図4に示した。
【0092】結果を見ると、Csurf/Cenzの比
が高いほど選択性が高い。
【0093】
【実施例11】実施例2にて、4日間室温にて乾燥する
ことによって調製された界面活性剤被覆α―キモトリプ
シンを用い、反応をスケールアップし、界面活性剤被覆
酵素の回収実験を行った。
【0094】(R)―2―フェニルプロピオン酸とn―
オクチルアミンをイソオクタンに各10mmol/lの
濃度にて溶解した。その溶液40mlに対し実施例2に
て4日間乾燥することによって作成した界面活性剤被覆
α―キモトリプシンを0.764g(反応液中酵素純分
0.25g/l)を添加し、30℃恒温槽にて2時間振
とうした。反応収率はキャピラリーガスクロマトグラフ
イーにより94.8%であることが確認された。
【0095】反応液を0℃に冷却し一晩放置したとこ
ろ、白色固体状の界面活性剤被覆酵素が析出したので、
常圧にて濾過をおこなった。
【0096】濾過された固体は常温放置にて乾燥した結
果0.755gであり、含水率5.33%であった。
【0097】UVを使用し界面α―キモトリプシン含量
を調べたところ、α―キモトリプシンとしては95%が
回収されたことが明かとなった。
【0098】
【実施例12】実施例11にて回収された界面活性剤被
覆α―キモトリプシンを実施例7と同様な操作により
(R)―2―フェニルプロピオン酸とn―オクチルアミ
ンのアミド化反応を行った。
【0099】その結果、反応時間2時間で反応収率9
6.7%であることを確認した。
【0100】
【発明の効果】本発明は使用する酵素を限定する事な
く、すべての酵素を失活させる事なく有機溶媒中で使用
することを可能ならしめた画期的なものであり、医薬、
農薬、化成品の合成の分野において多大の貫献をするも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸素粉末法と界面活性剤被覆酵素法の反応率の
経時変化を示す説明図。
【図2】反応率に及ぼす界面活性剤被覆酵素の乾燥日数
の影響(室温で保存)を示す説明図。
【図3】反応率に及ぼす仕込みの界面活性剤濃度の影響
を示す説明図。
【図4】反応率に及ぼすエマルション作成時の界面活性
剤と酵素の濃度比の影響を示す説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坪井 彦忠 千葉県茂原市東郷1900番地 三井サイアナ ミッド株式会社内 (72)発明者 長尾 繁光 千葉県茂原市東郷1900番地 三井サイアナ ミッド株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 逆相エマルションを形成しうる界面活性
    剤が97.9〜70.0重量%、酵素が0.1〜10.
    0重量%、必須成分として水を2.0〜10.0重量
    %、そして/または無機、有機塩類よりなる、水不溶性
    有機溶媒中にても高活性を有する界面活性剤被覆酵素組
    成物。
  2. 【請求項2】 酵素を溶解した水溶液と、水不溶性有機
    溶媒を、逆相エマルションを形成しうる界面活性剤の存
    在下に乳化し、その乳化物を乾燥することを特徴とす
    る、水不溶性有機溶媒中にても高活性を有する、界面活
    性剤被覆酵素組成物の調製法。
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