JPH06294011A - 滅菌布帛用ポリエステルマルチフィラメントおよびその製造法 - Google Patents

滅菌布帛用ポリエステルマルチフィラメントおよびその製造法

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JPH06294011A
JPH06294011A JP8067693A JP8067693A JPH06294011A JP H06294011 A JPH06294011 A JP H06294011A JP 8067693 A JP8067693 A JP 8067693A JP 8067693 A JP8067693 A JP 8067693A JP H06294011 A JPH06294011 A JP H06294011A
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JP
Japan
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polyester
multifilament
tetraisopropyldiphenylcarbodiimide
ton
less
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JP8067693A
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English (en)
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Kunio Minamisono
邦夫 南園
Motoyoshi Suzuki
東義 鈴木
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐加水分解性に優れ、過酷な滅菌処理に耐え
ることができ、しかも分散染料に対する染着率が高く、
濃染効果を有する単糸繊度が5デニール以下のポリエス
テルマルチフィラメントを提供する。 【構成】 カルボキシル末端基濃度が30eq/トン以
下のポリエステルに、2,6,2′,6′―テトライソ
プロピルジフェニルカルボジイミドを0.05〜5重量
%添加して均一に混合し、しかる後、溶融紡糸すること
により、単糸繊度が5デニール以下であり、カルボキシ
ル末端基濃度が10eq/トン以下である滅菌布帛用ポ
リエステルマルチフィラメントが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、滅菌布帛用のポリエス
テルマルチフィラメントおよびその製造法に関し、より
詳細には、医療用または衣料用に用いられ、オートクレ
ーブまたはスチーム等による高温滅菌の繰り返しに耐
え、しかも分散染料に対する染着率が高く、濃染効果を
有する単糸繊度が5デニール以下のポリエステルマルチ
フィラメントおよびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、病院等においては、布帛(衣服
等)に対し、相対湿度100%、115℃で25分間程
度の滅菌処理が施されていたが、近年、耐熱性細菌の問
題から、相対湿度100%、134℃で25分間の処理
を50〜70回も繰り返すという過酷な滅菌処理が要求
されるようになってきた。
【0003】単糸繊度が比較的小さい衣料用ポリエステ
ルマルチフィラメントでは、これまで、120℃〜13
5℃の温度範囲で1時間程度の染色処理に耐えられれば
十分であり、それ以上の耐加水分解性は要求されず、専
ら、染色性、制電制、吸水性、吸湿性、防汚性などを改
善、高機能化する研究が行なわれてきた。まして、相対
湿度100%、134℃で25分間の処理を50〜70
回もの多数回繰り返すような過酷な滅菌処理に耐えられ
る衣料用高性能ポリエステルマルチフィラメントの研究
は、全く行なわれていなかった。
【0004】一方、ドライキャンバス、タイヤコード等
に用いられる単糸繊度の大きい工業用ポリエステルフィ
ラメントでは、耐加水分解性を改善する検討が種々行な
われており、その代表的なものとして、種々のエポキシ
化合物を添加し、ポリエステルフィラメントのカルボキ
シル末端基濃度を低下させる方法がよく知られている。
例えばフェニルグリシジルエーテル(特開昭44−27
911号公報)、N―グリシジルフタルイミド(特開昭
54−6051号公報)等の使用が報告されている。し
かしながら、エポキシ化合物は、重合または溶融紡糸工
程でこれらの剤を添加しても、新たに生じるアルコール
基のゲル化によりフィラメントの伸度が低下し、さらに
は、末端基停止剤としての反応性が劣るため、各種開環
触媒、例えばトリフェニルホスフィン等の各種リン化合
物やヨウ化カリウムなどをあらかじめ加える必要があ
り、その結果、重合度が低下し、ポリエステルの耐加水
分解性の向上も不十分なものとなるという問題があっ
た。
【0005】添加剤のポリエステルフィラメントへの悪
影響をできるだけ少なくし、カルボキシル末端基濃度を
減少させる方法として、ジフェニルカーボネート、ポリ
エチレンオキザレート、又は炭酸エステル等を重合時に
添加する方法も提案されている。しかし、重合中にフェ
ノール等のアルコ−ル体が発生することにより、分離と
回収が困難となり問題があった。エチレンカーボネート
等の環状エステルに関しては、エポキシ剤と同様の開環
触媒が必要となり末端封鎖剤としての活性がとぼしかっ
た。
【0006】また、一つ以上のオキサゾリン環を分子骨
格に持つカルボキシル末端基停止剤を用いることも知ら
れている。この方法は、単糸繊度の大きいモノフィラメ
ントには有効であるが、単糸繊度が5デニール以下のマ
ルチフィラメント又はカルボキシル末端5eq/ton以下の
フィラメントにおいては、剤の悪影響が原因で期待する
耐加水分解性効果が得られないばかりか、紡糸におい
て、添加剤の熱分解、発煙による着色が著しく、商品価
値が低下して、衣料用として実用化するに至っていな
い。
【0007】さらに、カルボジイミド化合物をポリエス
テル中に添加することにより耐加水分解性を向上させる
方法も知られている。例えば、モノまたはビスカルボジ
イミド化合物あるいはポリカルボジイミド化合物を添加
し、短時間で混練紡糸して未反応カルボジイミド剤を含
有しないフィラメントを成形させる方法(特開昭50−
95517号公報)、分子内に3個以上のカルボジイミ
ド基を含有するカルボジイミド化合物を添加する方法
(特公昭38−15220号公報)があり、更には特定
のカルボジイミド化合物を未反応の状態で特定量残存さ
せたポリエステルモノフィラメント(特公平1−156
04号公報)、特定量のリンを含むポリエステルに特定
のカルボジイミド化合物を添加する方法(特公平1−4
6607号公報)などが提案されている。しかしなが
ら、これらの方法は、単糸繊度の大きい(即ち、表面積
の小さい)モノフィラメントでは有効な手段であるが、
単糸繊度の小さい(即ち、表面積の大きい)マルチフィ
ラメントにおいては、熱水処理に際し、固有粘度の低
下、強度の劣化、著しい着色が生じ、さらには染着率向
上の効果も見られない。
【0008】また、特公平3−47326号公報には、
カルボキシル末端基濃度が30eq/トンを越え47e
q/トン以下であるポリエステルチップを用いて、10
00デニール/192フィラメントの単糸繊度が大きい
ポリエステルフィラメントを製造することが記載されて
いるが、この方法によっても未反応のカルボジイミド化
合物を無くすことは困難で、未反応物の存在による障害
は解決されない。しかも、この方法では、より優れた耐
加水分解性を発揮するに必要な10eq/トン未満のカ
ルボキシル末端基濃度を達成することができない。さら
に、この方法において、一般のカルボジイミド化合物を
用いた場合、得られるポリエステルマルチフィラメント
は黄色に着色し、衣料用としては使用しがたいものとな
ってしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、単糸繊度
の大きい(表面積の小さい)工業用ポリエステルフィラ
メントの耐加水分解性を改善する公知技術を、単糸繊度
の小さい(表面積の大きい)衣料用マルチフィラメント
に適用しても、満足な結果が得られない。
【0010】その理由は、単糸繊度の小さい衣料用マル
チフィラメントは、表面積が著しく大きいため、熱水処
理でフィラメントの受ける固有粘度低下、強度劣化が、
単糸繊度が大きくて表面積の小さい工業用フィラメント
に比べて極めて大きいことにある。特に、工業用フィラ
メントでは、着色はあまり大きな問題とはならないが、
衣料用フィラメントでは、着色が有ることは致命的であ
り、絶対に避けなければならない。
【0011】通常、一般に使用されている工業用ポリエ
ステルモノフィラメントは、約3000デニール/1フ
ィラメントであり、これに対して衣料用ポリエステルマ
ルチフィラメントは30デニール/12フィラメント〜
300デニール/72フィラメント近傍が一般的であ
り、例えば75デニール/24フィラメント程度が標準
的である。3000デニール/1フィラメントと75デ
ニール/24フィラメントの両者の単位重量あたりのフ
ィラメント比表面積は1:31の比率になり、衣料用マ
ルチフィラメントが工業用モノフィラメントに対して極
めて異なる構造であることが示唆される。
【0012】さらに、前記従来技術では、分散染料に対
する染着率を向上させ、濃染効果を高めることができな
い。
【0013】従って、本発明の目的は、耐加水分解性に
優れ、過酷な滅菌処理に耐えることができ、しかも分散
染料に対する染着率が高く、濃染効果を有する単糸繊度
が5デニール以下のポリエステルマルチフィラメントお
よびその製造法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成するために各種のモノ、ジおよびポリカルボジイ
ミド化合物を検討した。その結果、検討した多数のカル
ボジイミド化合物のなかで、2,6,2′,6′―テト
ライソプロピルジフェニルカルボジイミドを用いた場合
は、マルチフィラメント中のカルボキシル末端基濃度を
10eq/トン以下まで下げることが可能であり、耐加
水分解性に優れ、過酷な滅菌処理に耐えることができ、
しかも分散染料に対する染着率が高く、濃染効果を有す
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】即ち、本発明は、(1)単糸繊度が5デニ
ール以下であり、末端基停止剤として2,6,2′,
6′―テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドを
添加することにより、カルボキシル末端基濃度を10e
q/トン以下としたことを特徴とする滅菌布帛用ポリエ
ステルマルチフィラメント、および(2)カルボキシル
末端基濃度が30eq/トン以下のポリエステル(好ま
しくは、100メッシュ以下に粉砕)に、2,6,
2′,6′―テトライソプロピルジフェニルカルボジイ
ミドを0.05〜5重量%添加して均一に混合し、しか
る後、溶融紡糸することを特徴とする滅菌布帛用ポリエ
ステルマルチフィラメントの製造法である。
【0016】本発明におけるポリエステルマルチフィラ
メントは、例えば、分子鎖中にエチレンテレフタレート
繰り返し単位を90モル%以上、好ましくは95モル%
以上含むポリエステルで構成される。かかるポリエステ
ルとしては、ポリエチレンテレフタレートが好適である
が、10モル%以下、好ましくは5モル%以下の他の共
重合成分を含んでもよい。このような共重合成分として
は、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ア
ジピン酸、オキシ安息香酸、ジエチレングリコール、プ
ロピレングリコール、トリメリット酸、ペンタエリスリ
トール等があげられる。また、かかるポリエステルは、
安定剤、着色剤等の添加剤を必要に応じて含んでいても
よい。
【0017】本発明のポリエステルマルチフィラメント
は、2,6,2′,6′―テトライソプロピルジフェニ
ルカルボジイミドを添加することにより、カルボキシル
末端基濃度を10eq/トン以下とすることが必要であ
り、好ましくは8eq/トン以下、より好ましくは5e
q/トン以下である。カルボキシル末端基濃度が10e
q/トンを越える場合は、十分な耐加水分解性が得られ
ず、過酷な滅菌処理に耐えることのできるマルチフィラ
メントが得られない。
【0018】また、カルボキシル末端基濃度を10eq
/トン以下とするには、2,6,2′,6′―テトライ
ソプロピルジフェニルカルボジイミドを添加することが
必要であり、他の末端基停止剤を用いたのでは、単糸繊
度が5デニール以下のポリエステルマルチフィラメント
において、十分な耐加水分解性が得られず、固有粘度低
下、強度劣化、着色が生じ、さらには分散染料に対する
染着率向上が認められない。
【0019】本発明のポリエステルマルチフィラメント
を製造するには、カルボキシル末端基濃度が30eq/
トン以下のポリエステルに対して、0.05〜5重量
%、好ましくは0.1〜3重量%の2,6,2′,6′
―テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドを添加
して、均一に混合した後、常法により溶融紡糸する。添
加量が少なすぎると、本発明の目的が達成されず、逆に
多すぎると、着色したり、フィラメントの物性が低下し
たりする傾向が認められるようになる。
【0020】2,6,2′,6′―テトライソプロピル
ジフェニルカルボジイミドを添加した場合は、未反応剤
が存在しても、熱水処理において固有粘度低下、強度劣
化、着色が起こらず、むしろ剤が残存することでカルボ
キシル末端基濃度の更なる増加を防ぎ、耐加水分解性の
向上に特異的な効果を示すという意外な結果も得られ
る。さらに驚くべきことには、上記量の2,6,2′,
6′―テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドを
紡糸の際にマルチフィラメントに含有させることによっ
て、100℃での分散染料を用いた染色において染着率
がきわめて向上し、また130℃でも分散染料に対する
染着率が向上する。このことは、全く予想することので
きない意外なことである。
【0021】カルボジイミド剤とカルボキシル末端基ま
たはアルコール末端基との反応性を向上させるために、
また、ポリエステルマルチフィラメントの物性を安定さ
せるために、リン化合物を重合触媒と同時に添加するこ
とも有効である。
【0022】また、2,6,2′,6′―テトライソプ
ロピルジフェニルカルボジイミドを酸化ゲルマニウム重
合触媒によるポリエステルチップに添加する前処理とし
て、ポリエステルチップを60℃〜130℃の熱水によ
り1時間〜6時間洗浄しておくと、紡糸後のポリエステ
ルマルチフィラメントの性能が飛躍的に向上するので好
ましい。この熱水洗浄によって、チップ中の酸化ゲルマ
ニウム重合触媒の失活、オリゴマーの除去、エステル再
分配反応の防止が可能となり、更に有効な結果が得られ
る。
【0023】2,6,2′,6′―テトライソプロピル
ジフェニルカルボジイミドは、溶融紡糸時に添加する
際、ポリエステルと十分に溶融混合する必要がある。
2,6,2′,6′―テトライソプロピルジフェニルカ
ルボジイミドがカルボキシル末端基またはアルコール末
端基と反応するのに必要な時間を考慮すると、2〜10
分間、溶融混合状態に保たれることが望ましい。このよ
うな方法の具体例としては、ポリエステルチップをエク
ストルーダーで溶融紡糸し、エクストルーダのチップ供
給口に2,6,2′,6′―テトライソプロピルジフェ
ニルカルボジイミドを計量しながら連続的に添加する方
法が挙げられる。また、2,6,2′,6′―テトライ
ソプロピルジフェニルカルボジイミドを塩化メチレン、
アセトンなどの有機溶剤に溶解してポリエステルチップ
に付着させ、有機溶媒を留去させた後、エクストルーダ
ーで溶融紡糸するか、あるいはそのチップを一旦高温乾
燥後、エクストルーダーで溶融紡糸を行うことも可能で
ある。
【0024】さらに、ポリエステルと2,6,2′,
6′―テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドと
の混合をより均一にするためには、ポリエステルを、紡
糸前あるいは固相重合前にあらかじめ100メッシュ以
下、さらに好ましくは50メッシュ以下に粉砕して粒径
を揃えておくのが好ましい。ポリエステルを100メッ
シュ以下に粉砕することで、2,6,2′,6′―テト
ライソプロピルジフェニルカルボジイミドの添加効果を
格段に向上させることが可能となる。例えば、得られた
マルチフィラメントのカルボキシル末端基濃度を5eq
/トン以下、さらには2eq/トン以下にまで下げるこ
とが可能となり、耐加水分解性を大幅に改善することが
できる。さらに、溶融紡糸におけるポリエステルの固有
粘度低下を著しく抑制することができ、場合によっては
溶融紡糸で用いたポリエステルチップの固有粘度より
も、得られたマルチフィラメントの固有粘度の方が高く
なることさえある。
【0025】これらの方法は、必要であればスタティッ
クミキサー等を用いた混練法を併用してもよい。また、
ポリエステルをチップ化せずに、重合に引き続き連続し
て紡糸を行う直接紡糸法を採用する場合は、重合完結後
から計量ポンプで計量吐出するまでの間で2,6,
2′,6′―テトライソプロピルジフェニルカルボジイ
ミドを添加してもよいが、耐加水分解性向上の効果はあ
まり大きくない。
【0026】溶融紡糸は、常法に従いエクストルーダー
紡糸により行なえばよく、紡糸時のポリエステル溶融温
度は250℃から320℃の範囲が適当であり、カルボ
ジイミドの熱分解、副反応を防止し、安定な紡糸性を確
保するためには、270℃〜290℃とするのが望まし
い。
【0027】紡糸孔より押し出されたポリエステルは、
冷却固化し、油剤を付与した後、未延伸糸として一旦巻
取り、そのあと延伸するか、あるいは一旦巻取ることな
く、連続して延伸を行い、単糸繊度5デニール以下のポ
リエステルマルチフィラメントを得る。
【0028】本発明の製造法によれば、未反応のカルボ
ジイミド化合物の存在にもかかわらず、紡糸、延伸中で
の断糸が、添加剤を加えなかった場合と同じように少な
く、全く問題なく製造することが可能である。また得ら
れたポリエステルマルチフィラメントは、熱分解等によ
る着色がなく、カルボキシル末端基濃度が10eq/ト
ン以下と低く、耐加水分解性に優れ、しかも分散染料に
対する染着率が高い。
【0029】本発明のポリエステルマルチフィラメント
は、滅菌のための過酷な熱水処理を繰り返し必要とする
ポリエステル布帛に使用される。
【0030】
【作用】他の末端基停止剤に比べて、この2,6,
2′,6′―テトライソプロピルジフェニルカルボジイ
ミドを添加した場合のみが、未反応の剤が残存している
にもかかわらず、耐加水分解性の向上に特異的な効果を
示す理由は明らかでないが、分子中の4つのイソプロピ
ル基が沸点を高め、剤の昇華を防ぐと共に、立体効果で
剤同士のカップリング反応または熱分解を阻止し、ポリ
エステルのカルボキシル末端基濃度を選択的に封鎖する
ことを可能にしているものと推定される。
【0031】また、2,6,2′,6′―テトライソプ
ロピルジフェニルカルボジイミドの添加によって、分散
染料を用いた染色における染着率が向上することは、全
く意外なことであり、その理由は不明である。
【0032】
【実施例】以下実施例をもって本発明を詳細に説明す
る。なお、実施例における数値は以下の方法により測定
した。 (1)強度、伸度 引張試験機を使用して、糸長25cm、引張速度20c
m/分、温度20℃、湿度65%の条件で測定する。 (2)耐加水分解性テスト ポリエステルマルチフィラメントサンプルを円筒編みし
て、相対湿度100%、130℃で、35時間、オート
クレーブ中で熱水処理する。未処理のサンプルの強度を
S+1、処理後のサンプルの強度をS+2として、下記
式により強度保持率(%)を求める。
【0033】 強度保持率(%)=(S+2/S+1)×100 (3)カルボキシル末端基濃度の定量 常法により、ポリエステルサンプル0.1gをベンジル
アルコールに溶解し、0.02mol/lのNaOH水
溶液で滴定して、以下の式からカルボキシル基濃度を算
出する。
【0034】
【数1】
【0035】A:アルカリ消費量 ml B:ブランク ml f:ファクター (4)染料の染着テスト 得られたマルチフィラメントサンプルの円筒編みを、ス
クアロール#400(0.5g/リットル)、炭酸二ナ
トリウム(0.5g/リットル)を用いて、80℃で2
0分間精錬後、青色の分散染料(Suk Navy B
lue S−2GL)0.8g/リットル、ディスパー
レVG0.5g/リットル、酢酸0.3g/リットルで
浴比1:50にて、100℃および130℃でそれぞれ
1時間染色を行う。染料の染着率は、染色残液の吸光度
を分光光度計で測定して算出する。 (5)ポリマーの固有粘度 35℃のオルソクロルフェノール溶液で測定した値から
算出する。
【0036】
【実施例1】ジメチルテレフタレート100mol%に
対して、90mol%のエチレングリコールとエステル
交換触媒として21mmol%の酢酸マンガンを添加
後、常圧下130℃から230℃で、30分かけてメチ
ルアルコールを留去させた。次いで、リン酸を20mm
ol%加え、常圧下235℃で、20分かけて余分なエ
チレングリコールを留去させた後、得られたモノマーを
減圧下で235℃から285℃にて重合を行い(重合触
媒として三酸化アンチモンを使用)、固有粘度0.6
4、カルボキシル末端基濃度26.5のポリエチレンテ
レフタレートチップ(4mm×4mm×2mmの直方
体)を得た。
【0037】このポリエチレンテレフタレートチップ
に、1.00重量%の2,6,2′,6′―テトライソ
プロピルジフェニルカルボジイミドを加えて乾燥させた
後、エクストルーダーを用いて、溶融温度290℃、ポ
リマー滞留時間約5分間で溶融紡糸を行い、その後、油
剤を付着させて巻取り、延伸後、固有粘度0.61、カ
ルボキシル末端基濃度9.5eq/トンのマルチフィラ
メント(75デニール/24フィラメント)を得た。こ
のマルチフィラメントについて、100℃と130℃に
おける染着テストおよび相対湿度100%、130℃で
の35時間の耐加水分解性テストを行なった。その結果
は表2に示す通りであった。
【0038】
【比較例1】実施例1において、2,6,2′,6′―
テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドを添加せ
ず、その他の条件は実施例1と同じにしてマルチフィラ
メントを得た。得られたマルチフィラメントの固有粘度
およびカルボキシル末端基濃度は表1に、また、染着テ
ストおよび耐加水分解性テストの結果は表2に示す通り
であった。
【0039】
【実施例2〜6、比較例2、3】実施例1で得たポリエ
ステルチップを、真空下、僅かな窒素気流の下で、22
0℃、15時間の固相重合を行い、固有粘度0.79、
カルボキシル末端基濃度24.2eq/トンのチップを
得た。この固相重合ポリエステルチップに対する2,
6,2′,6′―テトライソプロピルジフェニルカルボ
ジイミドの添加量を表1に示すように変更し、実施例1
と同様の方法でマルチフィラメントを製造した。結果
は、表1および表2に示す通りであった。
【0040】
【実施例7】ポリエステルチップを40メッシュに粉砕
して、2,6,2′,6′―テトライソプロピルジフェ
ニルカルボジイミドを添加した以外は、実施例4と同じ
条件でマルチフィラメントを製造した。
【0041】結果は、表1および表2に示す通りであっ
た。
【0042】
【実施例8】重合温度を10℃低い275℃に設定した
以外は、実施例2と同様の方法で重合を行い、更に、得
られたチップを固相重合した結果、カルボキシル末端基
濃度12.5eq/トン、固有粘度0.75のポリエス
テルチップが得られた。これに、2,6,2′,6′―
テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドをチップ
に対して1.00重量%添加し、実施例2と同様の方法
で紡糸、延伸を行い、固有粘度が0.68、カルボキシ
ル末端基濃度が4.6eq/トンのマルチフィラメント
を得た。このマルチフィラメントの染着テストおよび耐
加水分解性テストの結果は、表2に示す通りであった。
【0043】
【実施例9】ポリエステルチップを粉砕機で40メッシ
ュに粉砕して、2,6,2′,6′―テトライソプロピ
ルジフェニルカルボジイミドを添加した以外は、実施例
8と同様の方法でマルチフィラメントの製造を行い、固
有粘度が0.76、カルボキシル末端基濃度が1.8e
q/トンのマルチフィラメントを得た。このマルチフィ
ラメントの染着テストおよび耐加水分解性テストの結果
は、表2に示す通りであった。
【0044】
【比較例4】2,6,2′,6′―テトライソプロピル
ジフェニルカルボジイミドに代えて、2,6,2′,
6′―テトラメチルジフェニルカルボジイミドを添加し
た以外は、実施例4と同様にしてマルチフィラメントを
製造したところ、溶融紡糸時の発煙、着色が著しく、満
足なフィラメントが得られなかった。
【0045】
【比較例5】2,6,2′,6′―テトライソプロピル
ジフェニルカルボジイミドに代えて、ジシクロヘキシル
ジフェニルカルボジイミドを添加した以外は、実施例4
と同様にしてマルチフィラメントを製造したところ、溶
融紡糸時の発煙、着色が著しく、満足なフィラメントが
得られなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】表1および表2の結果から明らかなよう
に、2,6,2′,6′―テトライソプロピルジフェニ
ルカルボジイミドを0.05〜5重量%添加して得た、
カルボキシル末端基濃度が10eq/トン以下のポリエ
ステルマルチフィラメント(実施例1〜9)は、単糸繊
度が5デニール以下であっても、耐加水分解性に優れ、
分散染料に対する染着率も高かった。特に、ポリエステ
ルを100メッシュ以下に粉砕して、2,6,2′,
6′―テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドを
添加しを添加する(実施例7、9)と、カルボキシル末
端基濃度を一段と低くすることができ、耐加水分解性を
より一層改善することができる。
【0049】これに対して、2,6,2′,6′―テト
ライソプロピルジフェニルカルボジイミドを添加しない
場合(比較例1、2)および添加量が少ない場合(比較
例3)は、耐加水分解性、分散染料に対する染着性が改
善されなかった。
【0050】また、2,6,2′,6′―テトライソプ
ロピルジフェニルカルボジイミド以外のカルボジイミド
化合物を使用した場合(比較例4、5)は、溶融紡糸時
に発煙、着色が生じ、実用に供し得るマルチフィラメン
トは得られなかった。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、耐加水分解性に優れ、
過酷な滅菌処理に耐えることができ、しかも分散染料に
対する染着率が高く、濃染効果を有する単糸繊度が5デ
ニール以下のポリエステルマルチフィラメントが得られ
る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単糸繊度が5デニール以下であり、末端
    基停止剤として2,6,2′,6′―テトライソプロピ
    ルジフェニルカルボジイミドを添加することにより、カ
    ルボキシル末端基濃度を10eq/トン以下としたこと
    を特徴とする滅菌布帛用ポリエステルマルチフィラメン
    ト。
  2. 【請求項2】 カルボキシル末端基濃度が30eq/ト
    ン以下のポリエステルに、2,6,2′,6′―テトラ
    イソプロピルジフェニルカルボジイミドを0.05〜5
    重量%添加して均一に混合し、しかる後、溶融紡糸する
    ことを特徴とする滅菌布帛用ポリエステルマルチフィラ
    メントの製造法。
  3. 【請求項3】 100メッシュ以下に粉砕したポリエス
    テルに、2,6,2′,6′―テトライソプロピルジフ
    ェニルカルボジイミドを添加する請求項2記載の滅菌布
    帛用ポリエステルマルチフィラメントの製造法。
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