JPH06293938A - 撚り線加工性の優れた高強度極細鋼線およびその製造方法 - Google Patents
撚り線加工性の優れた高強度極細鋼線およびその製造方法Info
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- JPH06293938A JPH06293938A JP10487893A JP10487893A JPH06293938A JP H06293938 A JPH06293938 A JP H06293938A JP 10487893 A JP10487893 A JP 10487893A JP 10487893 A JP10487893 A JP 10487893A JP H06293938 A JPH06293938 A JP H06293938A
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Abstract
組織のフェライトの一部を再結晶化させることにより、
高強度で且つ撚り線加工性の優れた極細鋼線およびその
製造方法を提供する。 【構成】 C:0.8〜1.1%、Si :0.2〜2.
0%、Mn :0.2〜0.6 %、Cr :0.1〜1.0
%、Al :0.005%以下を含み、その他必要に応じ
てNi 、V、Mo を1種または2種以上含有し残部は不
可避的不純物からなり、且つブラスめっき層を有する鋼
線の線径が0.1〜0.4mmで引張強さ4000MPa 以
上であって、さらに伸線加工されたパーライト組織中の
フェライト総面積に対して5〜60%のフェライトが再
結晶していることを特徴とする撚り線加工性に優れた高
強度極細鋼線およびその製造方法。
Description
ド、スチールベルトコード等の素線として使用され、ブ
ラスめっき層を有する線径が0.1〜0.4mmで且つ引
張強さが4000MPa 以上である撚り線加工性の優れた
高強度極細鋼線およびその製造方法に関するものであ
る。
どのために極細鋼線に対する高強度化の要求は一段と高
まっている。従来、自動車タイヤ、産業用各種ベルト類
などの補強用に使用されている極細鋼線は、高炭素鋼の
熱間圧延線材から中間伸線、パテンティング処理を繰り
返し所定の線径にした後、最終パテンティング処理を行
い、伸線加工性およびゴムとの接着性を向上させるめっ
き処理を施し所定の線径まで湿式伸線加工することによ
り製造される。例えばスチールタイヤコードは上記のよ
うに製造される素線を最終的にダブルツイスタなどの撚
り線機を用いて撚り線加工することによって製造され
る。
の高強度化を図るためには、最終パテンティング処理後
の素線強度を上げるか、最終の伸線加工歪を増加させる
必要がある。ところが、極細鋼線の高強度化を図るため
に最終パテンティング処理後の素線強度ないしは伸線加
工歪を増加させると、伸線加工後の撚り線加工工程で断
線が頻発し、生産性が極めて悪化する。このため、例え
ば SWRS82Aを用いた線径が0.3mmφの鋼線では撚り線
加工が可能な引張強さとして3400MPa が限界であ
り、これ以上の高強度の極細鋼線の製造は工業的には困
難であった。
鋼線の撚り線加工性を向上させる従来の知見として、例
えば特開昭60−204865号、特開昭63−240
46号、特公平3−23674号の各公報にはそれぞれ
C、Si 、Mn 、Cr 等の化学成分を規制することによ
り撚り線加工工程での断線回数の少ない極細線用高炭素
線材が提案されている。しかしそれらの実施例からもわ
かるように鋼線の引張強さは最大でも3500〜360
0MPa であり、極細鋼線の高強度化には限界があった。
状に鑑みなされたものであって、伸線加工によって線径
0.1〜0.4mmで引張強さが4000MPa 以上の高強
度極細鋼線を製造する際に生じる撚り線加工工程での断
線回数の増加を防止し、撚り線加工性の優れた高強度極
細鋼線を実現する鋼線およびその製造方法を提供するこ
とを目的とするものである。
ず高強度極細鋼線の撚り線加工時に多発する断線の破面
形態を詳細に解析した。撚り線加工ではねじり応力、引
張応力、曲げ応力が鋼線にかかる。この結果、鋼線を高
強度化していくと伸線方向に沿って亀裂(デラミネーシ
ョン)が発生しやすくなり、このため撚り線加工工程に
おいて断線が頻発することが明らかとなった。そこでデ
ラミネーションの発生に及ぼす鋼線の化学成分、最終パ
テンティング処理後の引張強さ、伸線加工歪等の影響に
ついて解析し、デラミネーションが発生しにくい極細鋼
線の高強度化手段について種々検討した。
ティング処理後の引張強さが高い化学成分系の選択、
伸線加工硬化率の高い化学成分系の選択、および伸線
加工歪の増加があるが、パテンティング処理後の引張強
さが高く伸線加工硬化率が高い化学成分系を最適に選択
する高強度化手段がデラミネーションの発生、即ち撚り
線加工工程での断線の抑制に対して最も有効であること
がわかった。しかし化学成分系だけでは撚り線加工性の
優れた極細鋼線の高強度化には限界があることがわかっ
た。例えば、パテンティング処理後の引張強さが高く伸
線加工硬化率が高い成分系を用いても、極細鋼線の強度
が3900MPa を越えるようになるとデラミネーション
が発生しやすくなり撚り線加工における断線回数が急激
に増加する。
ミネーションの発生を抑制する手段について検討を重ね
た。この結果、極細鋼線において伸線加工されたパーラ
イト組織中のフェライトの一部を再結晶化させると引張
強さが4000MPa を越えてもデラミネーションの発生
が抑えられ、高強度の極細鋼線の撚り線加工性が大幅に
向上することを発見した。即ち、伸線加工ままの極細鋼
線よりもパーライト組織中の一部のフェライトが再結晶
化している極細鋼線の撚り線加工性は大幅に高くなると
いう全く新たな知見を見い出したのである。さらに詳細
に述べると、鋼線材をパテンティング処理により均一な
パーライト組織にした後、伸線加工を行うと伸線加工前
にパーライトの層状結晶の方向がランダムであっても、
組織は伸線方向にフェライトとセメンタイトが伸ばされ
た繊維状組織となる。この際、フェライト中には高密度
の転位が導入される。従来方法で製造されているスティ
ールコード等の極細鋼線の組織は、上記のようなセメン
タイトと高密度の転位が導入されているフェライトから
構成されている。このような高密度の転位を含むフェラ
イトの一部を転位密度を非常に少ない再結晶フェライト
に組織制御することが、高強度極細鋼線の撚り線加工性
の向上に対して非常に有効な手段となることを明らかに
したのである。極細鋼線の引張強さが高くなると極細鋼
線表面に発生するマクロ的な残留引張応力が著しく増加
することは知られているが、極細鋼線の円周方向並びに
長手方向のよりミクロ的な残留応力の不均一性も増加す
るものと考えられる。高強度極細鋼線にフェライト再結
晶を導入するとデラミネーションの発生が抑制される理
由は、ミクロ的な残留応力分布の不均一性を低減させる
ためと推定している。
晶フェライトを導入する手段について種々検討を重ねた
結果、伸線加工後、300℃以上の温度で12000≧
T×(20+log t ) ≧11000 なる関係を満足する
ような条件で加熱処理することが、高強度で且つ撚り線
加工性の優れた極細鋼線の製造に極めて有効な方法であ
ることを明らかにした。
ンティング処理後の引張強さ、伸線加工歪を最適に選択
するとともに、伸線加工した後、極細鋼線に適正な加熱
処理を行えば、デラミネーションの発生を抑制すること
が可能となり、撚り線加工性の優れた線径0.1〜0.
4mmで強度が4000MPa 以上である高強度極細鋼線を
製造できるという結論に達し、本発明をなしたものであ
る。
のであって、その要旨とするところは、(1) 重量%で
C: 0.8〜1.1 %、 Si : 0.2〜2.0 %、 Mn :
0.2〜0.6 %、Cr : 0.1〜1.0 %、 Al : 0.005%
以下、残部はFe および不可避的不純物からなり、且つ
ブラスめっき層を有する鋼線の線径が0.1〜0.4mm
で引張強さ4000MPa 以上であって、さらに伸線加工
されたパーライト組織中のフェライト総面積に対して5
〜60%のフェライトが再結晶していることを特徴とす
る撚り線加工性の優れた高強度極細鋼線、(2) 重量%で
Ni : 0.1〜1.0 %、 V:0.05〜0.5 %、 Mo :0.
05〜0.3 %の1種または2種以上を含有する (1)記載の
撚り線加工性の優れた高強度極細鋼線、(3) 重量%で
C: 0.8〜1.1 %、 Si : 0.2〜2.0 %、 Mn :
0.2〜0.6 %、Cr : 0.1〜1.0 %、 Al : 0.005%
以下、残部はFe および不可避的不純物からなる鋼線材
をパテンティング処理することにより引張強さを145
0〜1650MPa にした後ブラスめっきを行い、真歪で
3.7〜4.5の条件で線径0.1〜0.4mmに伸線加
工を行った後、300℃以上の加熱温度で12000≧
T×(20+log t ) ≧11000 なる関係(T: 絶対
温度で表示される加熱温度、t: 加熱時間)を満足する
ように加熱処理することを特徴とする撚り線加工性の優
れた高強度極細鋼線の製造方法、(4) 重量%でNi :
0.1〜1.0 %、 V:0.05〜0.5 %、 Mo :0.05〜0.3
%の1種または2種以上を含有する (3)記載の撚り線
加工性の優れた高強度極細鋼線の製造方法、に関するも
のである。
明において撚り線加工性の優れた高強度極細鋼線とは、
引張強さ4000MPa 以上の極細鋼線の撚り線加工工程
において極細鋼線の重量1000kg当たりの断線回数が
5回以下であることを意味している。断線回数が5回を
越えれば生産性が低下するため、撚り線加工性の優れた
高強度極細鋼線とは言えない。
で且つパテンティング処理後の引張強さを1450〜1
650MPa にし、伸線加工、加熱処理によって最終的に
撚り線加工が良好な4000MPa 以上の高強度極細鋼線
を得るための鋼の成分限定理由について述べる。C :Cはパテンティング処理後の引張強さの増加および
伸線加工硬化率を高める効果があり、より少ない伸線加
工歪で極細鋼線の引張強さを高めることができる。この
結果、撚り線加工が良好な4000MPa 以上の高強度極
細鋼線の製造が可能となる。0.8%未満では合金元素
を添加してもパテンティング処理後の引張強さとして1
450MPa 以上を得ることが困難で伸線加工硬化率も小
さいため最終的に極細鋼線の引張強さとして目的とする
4000MPa 以上の強度が得られず、また伸線加工歪を
増加させて4000MPa 以上にしても撚り線加工性が劣
化する。一方1.1%を越えるとパテンティング処理時
に初析セメンタイトがオーステナイト粒界に析出して伸
線加工性が劣化し伸線加工工程あるいは撚り線加工工程
で断線が頻発するため0.8〜1.1%の範囲に限定し
た。
強化させるためと鋼の脱酸のために有効であり、更に伸
線加工後、加熱処理を行う際の強度低下の抑制に極めて
有効な元素である。0.2%未満では上記の効果が期待
できず、一方2.0%を越えると伸線加工性に対して有
害な硬質のSiO2 系介在物が発生しやすくなるため、
0.2〜2.0%の範囲に制限した。
るばかりでなく、鋼の焼入性を向上させパテンティング
処理後の引張強さを高めるために有効な元素であるが、
0.2%未満では上記の効果が得られず、一方0.6%
を越えると上記の効果が飽和しさらにパテンティング処
理時のパーライト変態を完了させるための処理時間が長
くなりすぎて生産性が低下するため、0.2〜0.6%
の範囲に限定した。
隔を微細化しパテンティング処理後の引張強さを高める
とともに特に伸線加工硬化率を向上させる有効な元素で
あり、高強度極細鋼線の撚り線加工性を向上させるため
に必須の元素である。0.1%未満では前記作用の効果
が少なく、一方1.0%を越えるとパテンティング処理
時のパーライト変態終了時間が長くなり生産性が低下す
るため、0.1〜1.0%の範囲に限定した。
の介在物の中で最も硬質なAl2O3系介在物が生成しや
すくなり、伸線加工あるいは撚り線加工の際の断線原因
となるため、0.005%以下に制限した。本発明によ
る撚り線加工性に優れた高強度極細鋼線においては、上
記の元素に加えて、更にNi : 0.1〜1.0%、V:
0.05〜0.5%、およびMo :0.05〜0.3%
の範囲で1種または2種以上を含有することができる。
生成するパーライトを伸線加工性の良好なものにし、更
に高強度極細鋼線の撚り線加工性を向上させる効果があ
るが、0.1%未満では上記の効果が得られず、1.0
%を越えても添加量に見合うだけの効果が少ないためこ
れを上限とした。V :Vはパーライトのセメンタイト間隔を微細化しパテ
ンティング処理後の引張強さを高めるとともに、伸線加
工後の加熱処理時の強度低下を抑制させる有効な元素で
ある。この効果は0.05%未満では不十分であり、一
方0.5%を越えると効果が飽和するため0.05〜
0.5%の範囲に限定した。
ンタイト間隔を微細化しパテンティング処理後の引張強
さを高めるとともに、伸線加工後の加熱処理時の強度低
下を抑制させる有効な元素であるが、0.05%未満で
は前記作用の効果が不十分であり、一方0.3%を越え
ると効果が飽和するため0.05〜0.3%の範囲に制
限した。
15%以下、S:0.015%以下、N:0.005%
以下が望ましい範囲である。次にパテンティング処理後
の引張強さの限定理由について述べる。パテンティング
処理後の引張強さはできるだけ高いほうが、伸線加工歪
が少ない条件で高強度の極細鋼線が製造でき、この結果
撚り線加工性が向上する。しかし前述の成分範囲で低温
パテンティング処理を行い引張強さが1650MPa を越
えると、伸線加工性の劣化したパーライトあるいは伸線
加工性に有害なベイナイトが発生しやすくなり、伸線加
工、撚り線加工において断線が多発するようになる。一
方パテンティング処理を高温で行い引張強さを1450
MPa 未満にすると目的とする4000MPa 以上の高強度
の極細鋼線が得られないか、あるいは引張強さを400
0MPa 以上にするために非常に高い伸線加工歪を必要と
するため撚り線加工性が劣化する。従ってパテンティン
グ処理後の引張強さを1450〜1650MPa に限定し
た。本発明の成分範囲内であれば、オーステナイト化処
理後のパテンティング処理温度が560〜630℃の範
囲で1450〜1650MPaの引張強さを得ることがで
きる。
処理後の引張強さが1450〜1650MPa の鋼線を用
いて線径が0.1〜0.4mmの極細鋼線の引張強さを4
000MPa 以上にするためには真歪(真歪=2×ln(D
/d)、D:パテンティング処理時の線径、d:最終線
径)で3.7以上の伸線加工歪が必要であり、一方真歪
で4.5を越える伸線加工を行うと延性が低下し伸線加
工あるいは撚り線加工工程で断線が多発するため、伸線
加工歪を真歪で3.7〜4.5の範囲に限定した。
0MPa 以上の極細鋼線の撚り線加工性の向上に対して最
も重要な点である伸線加工されたパーライト組織中のフ
ェライト総面積に対するフェライト再結晶率(再結晶し
たフェライト面積/フェライト総面積)の限定理由につ
いて述べる。図1に撚り線加工工程において重量100
0kg当たりの断線回数に及ぼすフェライト再結晶率の影
響の一例を示す。フェライト再結晶率の測定は、透過型
電子顕微鏡、電気抵抗測定、等の方法で容易に求めるこ
とができる。本発明では、フェライト再結晶率を透過型
電子顕微鏡を用いて測定している。同図から明らかなご
とく、撚り線加工工程での断線回数は、従来鋼線である
伸線加工ままの状態、即ち、フェライト再結晶率が
「0」では非常に高いことがわかる。これに対してフェ
ライト再結晶率が増加するほど断線回数が低下する。こ
こで、フェライト再結晶率が5%未満では、1000kg
当たりの断線回数を5回以下にすることが困難であるた
めフェライト再結晶率の下限を5%にした。一方、フェ
ライト再結晶率が60%を越えると引張強さが低下し、
目的とする4000MPa 以上の引張強さが得られないた
めに上限を60%に限定した。
鏡写真の一例を示す。同図から明らかなように、本発明
の極細鋼線では、転位密度の非常に少ない再結晶フェラ
イトが含まれており、再結晶フェライトの導入により引
張強さが4000MPa を越えても撚り線加工での断線回
数が非常に少なく極めて効率的なスティールコード製造
が可能となる。
晶させる方法の限定理由を述べる。フェライト再結晶率
は、加熱温度と加熱時間によって変化し、加熱温度が高
いほど、また加熱時間が長いほど増加する。加熱温度と
加熱時間で定義される加熱パラメーター:T×(20+
log t ) が11000 〜12000の範囲であれば、伸
線加工歪が3.7以上の条件で製造した極細鋼線のフェ
ライト再結晶率を5〜60%にすることが可能である。
ここで、Tは絶対温度、tは時間(hr)である。図3
にT×(20+log t ) とフェライト再結晶率の関係の
一例を示す。同図から明らかなごとく、T×(20+lo
g t ) が11000 以下であればフェライト再結晶率を
5%以上にすることが困難であり、一方12000を越
えるとフェライト再結晶率が60%を越える。従って、
伸線加工後の加熱条件をT×(20+log t ) の式で定
義される加熱パラメーターにおいて上限を12000と
し、下限を11000 とした。また、加熱温度が300
℃未満では、加熱パラメーターを上記の範囲にするため
に時間がかかりすぎて生産性が低下するために、加熱温
度の下限を300℃に限定した。なお、加熱温度の上限
は特に限定しないものの、500℃を越えると加熱雰囲
気の条件によってブラスめっきが酸化しやすくなり、例
えばゴムとの密着性が低下するため、好ましい加熱温度
の上限は500℃以下である。
層とは、重量%で Cu : 50〜75%、 Zn : 25〜50% 残部は不可避的不純物よりなるめっきである。ブラスめ
っきは伸線加工性を向上させるためとゴムとの接着性向
上のために、パテンティング処理後にめっき処理を行う
ものである。めっき厚さは1〜3μm が好ましい範囲で
ある。本発明ではブラスめっき層を有する高強度極細鋼
線を対象としているが、撚り線加工性の向上効果はCu
、Sn 、Ni 、Zn 等のめっき層あるいはこれらの合
金めっき層を有する極細鋼線でも効果が発揮でき、なん
ら制限を受けるものではない。
体的に説明する。 実施例1 表1に供試材の化学組成を示す。
5mmにし、一次伸線加工、一次パテンティング処理、二
次伸線加工を行った。その後、最終パテンティング処理
(オーステナイト化温度950℃、鉛浴温度560〜6
30℃)、引き続きブラスめっき処理を行い、伸線速度
600m/分の条件で湿式伸線加工を行った。表2に極
細鋼線の引張強さおよび撚り線加工時の断線回数に及ぼ
すフェライト再結晶率の影響を示す。
機を用いて2本撚りで試験を行い、1000kg当たりの
断線回数で撚り線加工性を評価した。表2の試験 No.
3、4、7、10、11が本発明例で、その他は比較例
である。同表に見られるように本発明例はいずれも引張
強さが4000MPa 以上の極細鋼線の撚り線加工におい
ての断線回数が極めて少なく優れた撚り線加工性を有し
ている。これに対して、比較例である No.1、6、9は
いずれも従来の極細鋼線であり、再結晶したフェライト
相を含まないものである。この結果、撚り線加工時の断
線回数が極めて多くなっている。さらに比較例である N
o.2、5、8はフェライト再結晶率が不適切であるため
に、撚り線加工性が大幅に改善されていないか、あるい
は引張強さが本発明で目的とする4000MPa に達して
いない例である。即ち、 No.2、8は、フェライト再結
晶率が5%未満であるために撚り線加工時の断線回数が
いずれも5回を越えている。また No.5は、断線回数は
少ないもののフェライト再結晶率が60%を越えている
ため極細鋼線の引張強さが目的とする4000MPa に達
していない。 実施例2 表1に示す供試材を用いて、極細鋼線の引張強さに及ぼ
すパテンティング処理後の引張強さ、伸線条件および伸
線加工後の加熱条件の影響を表3および表4に示す。
3および表4に併記する。パテンティングの熱処理条
件、伸線条件、撚り線加工性の評価方法は実施例1で述
べた方法と同一である。表3および表4の試験 No.1
5、16、19、20、22、24、25、27、28
が本発明例で、その他は比較例である。同表に見られる
ように本発明例はいずれも極細鋼線の引張強さが目標と
する4000MPa 以上になっており、また撚り線加工時
の断線回数も少なく、撚り線加工性の優れた高強度極細
鋼線の製造が実現されている。
として SWRS82A、 No.13は SWRS92Aを用いた結果であ
る。 No.12はC含有量が少ないためにパテンティング
処理後の引張強さが低く、 No.13はパテンティング処
理後の引張強さは高いもののCr が含有されていないた
めに伸線加工硬化率が低く、いずれも目的とする400
0MPa 以上の引張強さに達していない。 No.30はパテ
ンティング処理後の引張強さが1550MPa と高いもの
の伸線加工歪が低すぎるために極細鋼線の引張強さが4
000MPa 未満となっている。比較例である No.14、
17、18、26は極細鋼線の引張強さが4000MPa
以上得られたが、伸線加工後の加熱条件が適正でないた
めに撚り線加工性が改善されなかった例である。即ち、
No.18は従来の製造方法であり、加熱処理を行わなか
ったために撚り線加工時の断線回数が多い。また、 No.
14、17、26はT×(20+log t ) の値がいずれ
も11000未満であるために、フェライト再結晶率が
5%未満となり、断線回数の改善がなされていない。更
に比較例である No.23、29は撚り線加工性は良好で
あるものの、T×(20+log t ) が12000を越え
ているためにフェライト再結晶率が60%を越える値と
なり、この結果、引張強さが4000MPa 未満になって
いる。また、比較例である No.21は、伸線加工歪を大
きく取りすぎたために、伸線加工中に断線が多発した例
である。
発明は化学成分、パテンティング処理後の引張強さ、伸
線加工歪を最適に選択するとともに、極細鋼線に再結晶
したフェライトを新たに導入し、このフェライト再結晶
率を最適に選択することにより、線径0.1〜0.4mm
の極細鋼線の引張強さが4000MPa 以上で且つ撚り線
加工性が優れた高強度の極細鋼線の製造を可能にしたも
のであり、産業上の効果は極めて顕著なものがある。
の断線回数の関係について解析した一例を示す図であ
る。
電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
t ) の影響について解析した一例を示す図である。
電子顕微鏡による金属組織写真の一例を示す図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で C: 0.8〜1.1 %、 Si : 0.2〜2.0 %、 Mn :
0.2〜0.6 %、 Cr : 0.1〜1.0 %、 Al : 0.005%以下、 残部はFe および不可避的不純物からなり、且つブラス
めっき層を有する鋼線の線径が0.1〜0.4mmで引張
強さ4000MPa 以上であって、さらに伸線加工された
パーライト組織中のフェライト総面積に対して5〜60
%のフェライトが再結晶していることを特徴とする撚り
線加工性の優れた高強度極細鋼線。 - 【請求項2】 重量%で Ni : 0.1〜1.0 %、 V:0.05〜0.5 %、 Mo :0.
05〜0.3 % の1種または2種以上を含有する請求項1記載の撚り線
加工性の優れた高強度極細鋼線。 - 【請求項3】 重量%で C: 0.8〜1.1 %、 Si : 0.2〜2.0 %、 Mn :
0.2〜0.6 %、 Cr : 0.1〜1.0 %、 Al : 0.005%以下、 残部はFe および不可避的不純物からなる鋼線材をパテ
ンティング処理することにより引張強さを1450〜1
650MPa にした後ブラスめっきを行い、真歪で3.7
〜4.5の条件で線径0.1〜0.4mmに伸線加工を行
った後、300℃以上の加熱温度で12000≧T×
(20+log t ) ≧11000 なる関係(T: 絶対温度
で表示される加熱温度、t: 加熱時間)を満足するよう
に加熱処理することを特徴とする撚り線加工性の優れた
高強度極細鋼線の製造方法。 - 【請求項4】 重量%で Ni : 0.1〜1.0 %、 V:0.05〜0.5 %、 Mo :0.
05〜0.3 % の1種または2種以上を含有する請求項3記載の撚り線
加工性の優れた高強度極細鋼線の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10487893A JP3283332B2 (ja) | 1993-04-08 | 1993-04-08 | 撚り線加工性の優れた高強度極細鋼線およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10487893A JP3283332B2 (ja) | 1993-04-08 | 1993-04-08 | 撚り線加工性の優れた高強度極細鋼線およびその製造方法 |
Publications (2)
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