JPH06293593A - プラズマCVDによる合成方法およびこの方法により合成されたエピタキシャルAlN - Google Patents

プラズマCVDによる合成方法およびこの方法により合成されたエピタキシャルAlN

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JPH06293593A
JPH06293593A JP10611093A JP10611093A JPH06293593A JP H06293593 A JPH06293593 A JP H06293593A JP 10611093 A JP10611093 A JP 10611093A JP 10611093 A JP10611093 A JP 10611093A JP H06293593 A JPH06293593 A JP H06293593A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 プラズマCVDによる合成方法において、広
い範囲にて組成の安定した物質を合成できるようにす
る。 【構成】 反応室AにAlBr3とN2の各気体を供給し
て混合気体とする。マイクロ波発振器により反応室Aに
マイクロ波を与え、基板周囲の混合ガスをプラズマ化す
る。このとき、電磁石21と22により基板3付近に磁
界を与える。この磁界により基板3付近のプラズマが活
性化し、広い範囲にわたってイオンとエレクトロンが活
性化し、NのイオンとAlとが結び付きやすくなる。そ
の結果、基板3の表面全域にエピタキシャルAlN膜を
合成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はプラズマCVDにより例
えばAlN(窒化アルミニウム)を合成する方法に関
し、特に反応室内の基板付近に磁界を与えてプラズマを
活性化させる合成方法、およびこの合成方法により得ら
れるエピタキシャルAlNに関する。
【0002】
【従来の技術】AlN(窒化アルミニウム)は、電気抵
抗の高い安定した絶縁材料などとして注目されている
が、さらにその光学的特性も着目されている。本発明の
発明者らは、プラズマCVDを使用した合成方法により
Si基板表面にAlNを析出することに成功し、これに
ついて特願平2−103620号(特開平3−4797
1号公報)として特許出願している。このプラズマCV
Dによる合成方法では、基板温度が400℃よりもやや
高い程度の比較的低温にてAlN膜を析出させることが
できた。図11は、上記の方法によりSi基板上に合成
されたAlN膜の走査型電子顕微鏡写真である。図11
の写真で解るように、合成されたAlN膜は多結晶であ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記方法によ
り合成されたAlN膜は絶縁材料などとしては有効であ
るが、光学素子として使用するには問題がある。すなわ
ち上記AlNは、多結晶であるため、光導波路として使
用した場合に、導波する光が結晶粒界により散乱し、光
量が減衰する。したがって、光導波路などとして使用す
るAlN膜は、単結晶またはエピタキシャルであること
が必須である。従来、エピタキシャルAlN膜の合成例
として、有機金属材料を原料とした化学気相成長方法
(MOCVD)によるものが報告されている。これは、
筒状の炉の中に基板を設置して加熱し、炉内にトリメチ
ルアルミニウム((CH33Al)とアンモニア(NH
3)ガスを流し、基板表面にAlNを生成するものであ
る。
【0004】しかしながらこの方法では、基板温度が1
400〜1600℃と非常に高くなる欠点がある。また
堆積速度も遅い。さらに合成されたエピタキシャルAl
N膜の表面平滑性が悪く、例えば光導波路として使用し
た場合に、内部を導波する光が膜の表面で散乱しやすく
なる。またトリメチルアルミニウムは、空気と爆発的に
反応する性質を有しているため、取り扱いが非常に困難
である。このように、従来の方法において低い合成温度
で平滑性のあるエピタキシャルAlNを合成できず、ま
た堆積速度を速くできないことの原因のひとつとして、
反応部において供給された気体が充分に活性化されてい
ないことが挙げられる。
【0005】本発明は上記従来の課題を解決するもので
あり、反応部での気体の活性化を促進できるようにし、
例えば高い平滑性を有するエピタキシャルAlNなどを
低温にて高い堆積速度にて合成できるようにしたプラズ
マCVDによる合成方法を提供することを第1の目的と
している。また上記合成方法によりエピタキシャルAl
Nを得ることを第2の目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によるプラズマC
VDによる合成方法は、金属原子を有する気体を含む複
数種の気体を、減圧された反応室内に供給して混合さ
せ、この反応室内に設置された基板付近に磁界を与えな
がら、混合気体をマイクロ波により放電させてプラズマ
化し、基板表面に金属を含む膜を析出させることを特徴
としている。
【0007】上記手段において、供給する気体を、アル
ミニウムのハロゲン化物と、窒素原子を含む例えば窒素
ガスとすることにより、基板表面にAlN膜を析出させ
ることが可能である。ここで、アルミニウムのハロゲン
化物としては臭化アルミニウムが挙げられる。
【0008】上記の合成方法によりエピタキシャルAl
Nを得ることができる。
【0009】
【作用】本発明では、混合気体を放電させプラズマ化す
るためにマイクロ波(例えば周波数が2.45GHzを
使用している。マイクロ波により混合気体をプラズマ化
すると、混合気体内の物質が、比誘電率と誘電体損失角
に関係して分極励起され、電離、活性化される。さらに
このプラズマは磁界を与えると、電子が励振されてより
活性なプラズマが得られる。よって基板付近の磁界を適
正に選ぶことにより、基板の広い範囲において均一な膜
が高い堆積速度により合成できることになる。
【0010】例えば供給する気体として臭化アルミニウ
ムアルミ(AlBr3)と窒素ガス(N2)を使用し、こ
れをプラズマ化すると、AlBr3が分解して、AlB
rやAlになり、AlとBr 、AlとN、AlとBrと
などの組合わせの分子状のラジカル及びイオンが存在す
るようになる。これらの分子状ラジカルやイオンの一部
はマイクロ波によってさらに分解が促進されて原子状の
ラジカルやイオンになる。一般に窒素原子Nは金属と結
び付きにくいが、N2が励起されて、N2(+イオン)に
なるとAlラジカルと結び付きやすくなる。すなわち、
Al原子はプラズマ力で活性化されると最外殻にある電
子を発散しやすくなるため、この発散した電子に導かれ
てN2(+イオン)とAlラジカルが高いエネルギーで
結び付き共有結合率の高いAlN膜が合成できる。Al
N膜の生成に関係しているこれらのラジカルやイオン
は、プラズマに印加された磁界によって励振された高密
度電子によってその解離効率がさらに高まり、より高い
比率の共有結合性AlN膜が得られる。本発明の発明者
らは、上記の合成方法により、平滑性に優れたエピタキ
シャルAlNを高い堆積速度で合成することに成功し
た。
【0011】ただし、上記の合成方法は、エピタキシャ
ルAlN膜の合成にのみ適しているのではなく、供給す
る気体の種類により各種の膜や物質を合成できる。特に
基板付近に磁界を与えることにより、プラズマが広い範
囲において活性化されるため、広い面積にてより結合エ
ネルギーの高い安定した構造の膜や物質を合成できる。
この合成例としては、上記臭化アルミニウムと窒素ガス
に加え、酸素原子を有する気体として笑気ガス(N
2O)を供給することにより、酸窒化アルミニウム(A
l−O−N)を安定して合成でき、またさらにケイ素原
子を有する気体としてシランガス(SiH4)を供給す
ることにより、サイアロン(Si−Al−O−N)を合
成することも可能である。またより活性なプラズマ中で
合成が進行することから、合成された膜や物質はより高
い結合エネルギーを有しており、上記に例を挙げたもの
以外の種々の共有結合性の物質の合成が可能であり、例
えば種々の構造多形を有するダイアモンドの合成や立方
晶BNの合成などにも適している。
【0012】
【実施例】以下、本発明について図面を参照して説明す
る。図1は本発明による合成方法に使用するプラズマC
VD装置の構造を示す断面図である。図1において、符
号1は石英管などによって形成された反応管であり、そ
の内部が反応室Aとなっている。符号2はマイクロ波プ
ラズマ発生装置である。2aはマイクロ波発振器であ
り、この実施例では、サイクロトロンにより2.45G
Hzのマイクロ波が発振される。2bは導波管、2cは
整合器、2dは反射板である。基板3は、反応室A内に
て支持部材4上に設置される。
【0013】この実施例では、基板3としてサファイヤ
基板を使用している。図5は基板3となるサファイヤC
面の原子配列と、合成するエピタキシャルAlNのC面
の原子配列とを示している。符号3で示しているのがサ
ファイヤであり、塗りつぶしにて示している丸は酸素原
子である。点線と白丸とで示しているのが合成しようと
するエピタキシャルAlNであり白丸は窒素原子または
アルミニウム原子を示している。本実施例にて合成する
AlNは6回対称の結晶すなわち六方晶系の単一方向性
結晶である。そのため図5に示すように、サファイヤの
C面とAlNのC面との格子のマッチングがよいことが
わかり、そのミスマッチ率は約5%程度にすぎない。
【0014】前記支持部材4は、その上端にホルダ4a
が設けられ、このホルダ4aに前記基板3が設置され
る。ホルダ4aは、窒化シリコン(Si34)などによ
って形成されている。ホルダ4aの支持部4bは石英管
ならびに金属管により構成されており、その内部に赤外
線放射温度計の検出ヘッドが収納されている。この検出
ヘッドは光ファイバ5を介して検出回路部(図示せず)
に接続されている。上記検出ヘッドから発せられる赤外
線は石英管内を通過し、ホルダ4a内にて基板3に照射
される。よって反応室A内のプラズマの影響を受けるこ
となく、基板3の温度測定が正確に行われるようにな
る。反応室Aの上端にはガス供給ノズル6が配置されて
いる。このガス供給ノズル6は多重管であり、この実施
例の場合には三重管となっている。
【0015】本実施例においてエピタキシャルAlNの
合成に際しては、図1にて実線で示す経路にて供給され
るソースが使用される。恒温室11内はサーモスタット
により常に一定の温度に保たれる。恒温室11の内部に
はバブラ12が配置されている。このバブラ12内にア
ルミニウム原子を含む反応性ガス源として臭化アルミニ
ウム(AlBr3)が充填されている。また13は導入ガ
スとして使用される水素ガス(H2)のボンベである。
また符号14は窒素原子を供給するための窒素ガス(N
2)のボンベである。さらに16はプラズマを活性化す
るためのアルゴンガス(Ar)のボンベである。
【0016】符号17a,17b,17dは上記3種類
の気体の供給経路に設けられた流量調節器で、18a,
18b,18dはバルブである。前記ガス供給ノズル6
は6aないし6cで示す管が同心円状に配置された三重
管であるが、窒素ガス(N2)は中間の管6bから、臭
化アルミニウム(AlBr3)は外側の管6cからそれぞ
れ反応室Aへ供給される。このように各気体を別々の経
路にて反応室Aへ供給することにより、管内にて各ガス
が混合されるのを防止でき、またプラズマにより管内壁
に合成物が析出されるのを防止できる。
【0017】またアルゴンガス(Ar)は前記ガス供給
ノズル6とは別の経路にて反応室Aの上方(図では左上
方)から供給される。これはアルゴンガスを反応室A内
のプラズマ発生領域の外側から供給するためである。プ
ラズマ中にその外部からアルゴンガスを供給することに
より、プラズマ中における中性粒子、イオン、エレクト
ロンなどへの解離が促進されるようになる。しかも同軸
線路型マイクロ波プラズマCVDの場合、プラズマが磁
界の影響を受けやすく、反応室の管壁部分で磁界が強
く、反応させる基板が設置されている中心部では弱くな
ってプラズマの領域が不均一となるが、アルゴンガスを
プラズマ域外から供給することにより、プラズマ域が拡
大するようになる。またアルゴンガスなどのような単原
子分子の場合には、プラズマ中にて分解されると再結合
しにくく、また再結合する場合であっても周囲のエネル
ギーを奪うことがなく、安定して分解を継続する。
【0018】よって、これが一種の着火源になってプラ
ズマ域が拡大されるものと予測される。これは従来のプ
ラズマCVDにおいて真空度を高くしたのと同じ状態で
あり、しかも真空圧を単純に上げた場合のようなデメリ
ット、例えば電子の密度が上がり成膜速度が低下するよ
うな不都合が生じるのを避けることができるようにな
る。このようなプラズマ域の拡大とラジカル解離率の向
上により、安定した合成ができ、また成膜速度も速まる
ことになる。ただし、アルゴンガスをプラズマ域外から
供給することが必要であり、仮にアルゴンガスなどをノ
ズルからプラズマ中にて基板に直接吹きかけたりする
と、逆にスパッタ状態となり成膜速度が低下することに
なる。
【0019】また、上記反応管1の外周の上下2ヶ所
に、反応管1を囲む形状のリング状の電磁石21と22
が設けられている。この電磁石21と22により反応室
A内に磁界が与えられる。電磁石21と22は基板3の
付近に所定の磁界が与えられるように配置したものであ
り、電磁石21と22への通電量を調整することによ
り、基板3付近での磁界の強さが調整される。エピタキ
シャルAlN膜を合成するために、本実施例では、磁界
の強さを0.1(tesla)に設定するようにし、実際の
基板3付近での磁界強度を0.0785(tesla)に設
定した。符号23は反応室A内を真空圧にするための排
気管であり、ターボ分子ポンプ,メカニカルブースタポ
ンプ及びロータリポンプが接続されている。
【0020】なお、実施例の装置では、基板3の表面位
置をマイクロ波の通路中心よりL1だけ高くし、ガス供
給ノズル6の下端位置を基板表面よりもL2 だけ高くし
て、L1 とL2 を共に40mmに設定している。これは
反応室A内ではプラズマ発生領域の中心から外れた上部
または下部が最も合成が促進されやすく、しかもプラズ
マの下部に基板を設置した場合には、ガス供給ノズル6
の噴出口がプラズマ領域中となり、管内で反応が生じ、
管内面に合成物が析出してしまうからである。
【0021】次に、図1に示すCVD装置を使用して、
エピタキシャルAlNの合成に成功した際の合成例を示
す。表1は、ソースおよびその他の条件を示したもので
ある。
【0022】
【表1】
【0023】また各気体の流量は以下の表2で示す通り
である。
【0024】
【表2】
【0025】上記条件によりサファイヤ(C面カット)
基板3の表面に合成された膜の走査型電子顕微鏡写真を
図10に示す。従来の方法により合成された図11の写
真に示されるものと比較してわかるように、上記条件に
より生成された膜は、膜断面に粒界がみられず、単結晶
に近い膜が合成されていることが解る。
【0026】次に、図12(A)は上記条件により合成
された膜(図10に示すもの)の透過型電子顕微鏡(T
EM)写真であり、同図(B)は制限視野電子線回折パ
ターン(SADパターン)の写真である。図13は比較
のためのもので、従来のプラズマCVD法により合成さ
れた図11に示す写真の膜に関するものであり、同図
(A)は透過型電子顕微鏡写真であり、(B)は制限視
野電子線回折パターンのX線写真である。前記条件によ
り合成された膜の図12(A)に示すTEM写真では、
図13(A)に示したものと異なり、粒界が明瞭に現れ
ておらず、エピタキシャルな膜である可能性が高くなっ
ている。また図13(B)のSADパターンでは、多結
晶の膜であり、それぞれの結晶の方向性が異なるために
リングパターンで現れているが、前記条件で合成された
膜では、図12(B)で示すように、スポットパターン
からなり、単一方向に配向した膜であることが解る。
【0027】次に、図2は前記条件により合成されたA
lN膜のX線回折(XRD)パターンである。このXR
Dパターンは、X線の散乱状態を示すものであり、横軸
がX線ビームの入射角度(2θ)であり、縦軸がディテ
クタのカウント値(CPS)である。図2から、AlN
のC面の格子間隔に相当する回折ピークが支配的である
ことが解る。その他の回折ピークは基板であるサファイ
ヤのものである。さらに図3は、上記のAlN(00
2)のX線回折におけるロッキングカーブを示してい
る。このロッキングカーブにおけるピーク波形の半値幅
Δは非常に小さくなり結晶配向性が高いことが解る。こ
の半値幅は、上記(002)配向のAlN膜の配向性が
エピタキシャル膜の配向性と同等であることを意味して
いる。
【0028】図14ないし図17は、前記条件により合
成されたAlN膜をAlN結晶のC軸を中心として回転
させたときの高速反射電子線回折(RHEED)による
パターンを示している。C軸を中心としたときの回転角
度をψとすると、図14はψ=0度、図15はψ=20
度、図16はψ=30度、図17はψ=60度の条件で
の回折パターンである。図14から図17にかけてのR
HEEDパターンを見ると、いずれもスポットパターン
を示している。さらにAlNのC軸に対して60度の回
転間隔で同一のスポットパターンが現れることが解る。
このことはAlNのC面が、6回対称性の結晶、すなわ
ち六方晶系の単一方向性結晶であることを意味してい
る。よって合成されたAlN膜は、エピタキシャルであ
ることが予測できる。なお図14から図17にかけての
AlN〔1010〕などは、結晶に対してどの方向から
電子線が入っているかを示しているものである。
【0029】ここまでの解析により、合成されたAlN
膜は、粒界がなく、またAlNの各結晶軸に対して単一
配向性のエピタキシャルな膜であることを充分に予測で
きる結果となっている。しかしながら合成された膜が部
分的にエピタキシャルであることも考えられる。そこ
で、3軸型回転式のX線回折を用いて、合成されたAl
N膜の広範囲の3次元的な結晶配向性について調べた。
その結果を図4に示す。
【0030】図2におけるXRDパターンでは、合成さ
れたAlN膜のC軸が基板の表面に対して垂直に配向し
ていることが明らかである。そこで基板を水平軸に対し
て回転させ、AlN(1011)のポールフィギュアを
測定した。その結果は、図4に示すように、6箇所にボ
ールポイントが得られた。仮に合成された膜の広い範囲
において、様々な配向の結晶が存在する場合には、例え
ば検出出力がリングパターンとなって現れる。ところが
図4における測定結果を見ると、6箇所にのみボールポ
イントが現れており、広い範囲に渡って三次元的に単一
配向性の結晶構造となっていることが解る。
【0031】図4のポールフィギュアによると、合成さ
れた膜は広い範囲でエピタキシャルAlNであることが
解った。またTEM及びSEMによる観察結果から単結
晶に近いものであることが解った。また図10の走査型
電子顕微鏡写真からも解るように、合成されたAlN膜
は表面の平滑性が非常に高いものであることが解る。
【0032】以上の分析から、図1に示すCVD装置に
おいて合成された膜はシングルクリスタルに近いエピタ
キシャルAlNであり、表面の平滑性の優れたものとな
る。このAlNは、内部に粒界が存在しないため、光導
電性に優れたものとなり、光導波路として有効に使用で
きる。また表面は平滑である。さらに結晶が三次元的に
配向していることから、光スイッチとして有効に使用で
きるとともに、SHG素子として紫外線領域のレーザー
光を取り出すことも可能である。また、図1にて点線で
供給経路を示しているように、上記臭化アルミニウムと
窒素ガスに加え、酸素原子を有する気体として笑気ガス
(N2O)を供給することにより、酸窒化アルミニウム
(Al−O−N)を安定して合成できる。
【0033】さらにこれに加えシランガス(SiH4
を、窒素ガス(N2)を導入ガスとして供給することに
より、サイアロン(Si−Al−O−N)を合成するこ
とも可能である。特に前記電磁石21と22により基板
付近に磁界を与えることにより、広い範囲にて安定した
種々の膜を合成できる。そこで、図6ないし図9は、図
1に示すCVD装置を使用し、電磁石21と22で磁界
を与えあるいは磁界を与えずに、合成できる膜の応用例
について説明する。
【0034】図6は例えばガラスレンズをプレス成形す
るための金型を示している。この金型は、超硬材料によ
る型本体31と、この型本体31の成形凹部表面に形成
された保護膜32とから成る。この保護膜32が要求さ
れる条件を上げると以下の通りである。 ガラスとの濡れ性が低いこと、 耐酸化性に優れること、 膜表面(プレス面)が平滑であること、 高温における硬度が高いこと、 型本体31の材料である超硬との密着性がよいこと、 熱伝導率が高いこと、
【0035】ここでAlNは、熱伝導率が高く、また熱
線膨張係数が4.8×10-6であるため、超硬材料とも
密着性がよい。しかしながらAlNは、硬度が低く、ま
た耐酸化性においても劣っている。これに対しサイアロ
ン(Si−Al−O−N)は、耐酸化性に優れ、熱伝導
率が高く、硬度も高く、しかもガラスとの濡れ性も低
い。そこで、図1に示すCVD装置と同等の装置を用
い、基板3として型本体31を設置し、プラズマCVD
法により最適な保護膜32を形成できるようにした。そ
の方法は、まず最初に図1にて実線で示すように、反応
室にAlBr3/H2と、N2とArを供給して、プラズ
マCVD法により型本体31の表面にAlN膜を合成す
る。このAlN膜は超硬に対して密着性がよい。
【0036】AlN膜が所定の厚さにて合成された後
に、N2の供給経路に徐々にシランガス(SiH4)を加
えてその流量を増加させていき、さらに点線で示す経路
にて三重管6の中心の管6aに笑気ガス(N2O)を供
給しその流量を増加させていく。これにより型本体31
の凹部に形成されたAlNの表面に積層されていく膜中
のO原子とSi原子が含まれる率が徐々に増加してい
く。そして最終的に保護膜32の表面がサイアロン(S
i−Al−O−N)になる。このように超硬の型本体3
1に密着する部分は密着性のよいAlNで、表面(プレ
ス面)が硬度の優れたサイアロンとなった保護膜32が
形成される。
【0037】ここで、図1に示す電磁石21と22に通
電して、合成域に磁界を与えることにより、AlNおよ
びこれからサイアロンになるまでの膜が広い範囲にて均
一に合成される。特にガラスレンズのプレス用金型で
は、プレス面のRが小さく、通常は均一な膜が形成しず
らいが、前記の磁界を与えることにより、Rの小さいプ
レス面に広い範囲に渡って均一な膜が形成できるように
なる。また磁界を与えての合成では表面の平滑性がよく
なるため、保護膜32に表面のサイアロンは平滑な面を
有し、プレス金型として適したものとなる。
【0038】また金型としてはガラスプレス用に限られ
ず、ダイキャストなどの金型としても有用である。また
上記のようにAlN層から徐々にOとSiを増加して最
終的にサイアロンの表面を有する膜は、金型以外にも実
施できる。AlNの熱線膨張係数はガリウムヒ素などの
熱線膨張係数に近く、これらに対しての密着性がよい。
しかも表面のサイアロンは硬度、耐摩耗性、熱伝導率に
おいて優れるため、例えば図7に示すように平面的に膜
を合成し、ガリウムヒ素などの基板33に合成された膜
32をサーマルヘッドの加熱ヘッド部として使用しても
よい。
【0039】次に、図1に示すCVD装置により、ソー
スとAlBr3、SiH4/N2、N2O、およびArを供
給し、合成条件を所定に設定することにより非晶質のサ
イアロン(Si−Al−O−N)を合成することができ
る。図8は、この非晶質のサイアロンを光導波路のクラ
ッド層として使用したものである。図8に示す光導波装
置は、Si基板41の表面にSiO2などのバッファ層
42が形成され、その表面に非晶質のサイアロンのクラ
ッド層43が形成されている。またこの実施例では、ク
ラッド層43を挟むSiNまたはSi−O−Nまたは結
晶性サイアロンなどのコア層44が形成されている。そ
して表面にはSiO2などの保護層45が形成されてい
る。
【0040】クラッド層43の両側にコア層44を形成
することにより、全体の面積を広くでき、さらにその上
に重ねて光導波路を形成できるようになる。ここで非晶
質のサイアロンをクラッド層43として使用すると、こ
れを導波する光が粒界にて散乱することがなく、光導波
効率を高めることができる。図9は横軸に酸素(O)原
子と窒素(N)原子の含有率の比率と屈折率nの変化と
の関係を示している。
【0041】図9に示すように、非晶質のサイアロンで
はOとNの比を変えることにより、屈折率nが大きく変
化する。よって図1のCVD装置において、窒素ガスN
2と笑気ガス(N2O)との供給流量の比をコントロール
することにより、クラッド層としての屈折率nを自由に
広い範囲にて選択できる。またサイアロンの場合に内部
応力がSiとAlの金属原子どうしの比率により変化す
る。よってAlBr3とSiH4の供給流量の比を変える
ことにより、内部応力を任意に設定できる。このように
屈折率は酸素原子と窒素原子の比により、内部応力はS
iとAlの金属原子の比により、それぞれ独立して決め
ることができるため、光導波装置全体の応力緩和とクラ
ッド層43の屈折率とを自由度を広くして決めることが
できる。
【0042】これに対し、従来光導波路材料として一般
に用いられているSi−O−Nは、図9に示すように、
酸素原子と窒素原子の比率を変えたとしても、屈折率n
の変動が小さく、よって屈折率の選択幅が広くなってい
る。またSi−O−Nでは酸素原子と窒素原子との比を
変えると内部応力が変動するため、屈折率と応力とを別
々にコントロールすることはできなかった。この点から
図8に示すように、非晶質のサイアロンを光導波路のク
ラッド層として使用することにより、従来にない優れた
光導波装置を構成できる。
【0043】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明で
は、基板付近の合成域において磁界を与えることにより
プラズマを活性化させることができ、広い範囲に渡って
均一な組成の物質の合成が可能になる。
【0044】請求項2および3記載の発明では、エピタ
キシャルAlNの合成が可能になる。
【0045】請求項4に記載した、上記方法により合成
されるエピタキシャルAlNは、シングルクリスタルに
近い単結晶ライクであり、また表面が平滑であるため、
光導波路などとしての使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による合成方法に使用されるCVD装置
の構成図、
【図2】図1の装置にて合成されたAlNのXRDパタ
ーンを示す線図、
【図3】図1の装置にて合成されたAlNのロッキング
カーブを示す線図、
【図4】図1の装置にて合成されたAlNのポールフィ
ギュアを示す線図、
【図5】図1の装置において合成されたAlNとサファ
イヤ基板の原子配列を示す模式図、
【図6】金型のプレス面に保護膜を合成した例を示す断
面図、
【図7】サーマルヘッドなどの層を合成した例を示す断
面図、
【図8】非晶質サイアロンによるクラッド層を有する光
導波装置の断面図、
【図9】非晶質サイアロンなどの屈折率の変化を示す線
図、
【図10】図1の装置にて合成されたAlN膜の結晶構
造を示す走査型電子顕微鏡写真、
【図11】従来例にて合成されたAlN膜の結晶構造を
示す走査型電子顕微鏡写真、
【図12】(A)は図1の装置により合成されたAlN
膜の結晶構造を示す透過型電子顕微鏡写真、(B)は制
限視野電子線回折パターンを示すX線写真、
【図13】(A)は従来例により合成されたAlN膜の
結晶構造を示す透過型電子顕微鏡写真、(B)は制限視
野電子線回折パターンを示すX線写真、
【図14】高速反射電子線回折によるRHEEDパター
ンを示すX線写真、
【図15】高速反射電子線回折によるRHEEDパター
ンを示すX線写真、
【図16】高速反射電子線回折によるRHEEDパター
ンを示すX線写真、
【図17】高速反射電子線回折によるRHEEDパター
ンを示すX線写真、
【符号の説明】
1 反応管 A 反応室 2 マイクロ波発振器 3 基板 4 支持部材 6 供給管 21,22 電磁石

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属原子を有する気体を含む複数種の気
    体を、減圧された反応室内に供給して混合させ、この反
    応室内に設置された基板付近に磁界を与えながら、混合
    気体をマイクロ波により放電させてプラズマ化し、基板
    表面に金属を含む層を析出させることを特徴とするプラ
    ズマCVDによる合成方法。
  2. 【請求項2】 アルミニウムのハロゲン化物と、窒素原
    子を含む気体を供給し、基板表面にAlN層を析出させ
    る請求項1記載のプラズマCVDによる合成方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウムのハロゲン化物は臭化アル
    ミニウムである請求項2記載のプラズマCVDによる合
    成方法。
  4. 【請求項4】 請求項2または請求項3記載の合成方法
    により基板表面に積層されたエピタキシャルAlN。
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