JP2777844B2 - 30r(h)相−ポリタイポイドサイアロンおよびその合成方法 - Google Patents

30r(h)相−ポリタイポイドサイアロンおよびその合成方法

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JP2777844B2 JP1278091A JP1278091A JP2777844B2 JP 2777844 B2 JP2777844 B2 JP 2777844B2 JP 1278091 A JP1278091 A JP 1278091A JP 1278091 A JP1278091 A JP 1278091A JP 2777844 B2 JP2777844 B2 JP 2777844B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱、耐摩耗材料及び
光導波路などの光学素子材料、SAW 素子材料などの電子
素子材料として有用なサイアロン、特に30R(H)相
−ポリタイポイドサイアロンに関し、さらにプラズマC
VD法を使用してこのサイアロンを合成する方法に関す
る。
【0002】〔従来の技術ならびに発明が解決しようと
する課題〕最近はセラミック材料の種々の開発がなされ
ているが、今後各種用途が考えられるものとして(Si
−Al−O−N)の組成をもつサイアロン(Sialons )
が挙げられる。サイアロンはその耐熱性、耐摩耗性を利
用して工具や構造材料としての用途が想定されている。
一方、AlN−ポリタイポイドサイアロンは圧電素子や
光学素子として有用なものであると考えられているが、
その実態は未だ理論研究段階である。図7はサイアロン
の状態図であり、これは1976年のJURNAL OF MATERIALS
SCIENCE 11において、K.H.JACKが発表したものであ
る。サイアロンはSi,Al,O,Nの各原子から構成
されているものであり、その出発物質としては、図7に
示すようにアルミナ(Al23 ),窒化アルミニウム
(AlN),窒化ケイ素(Si34 ),石英(Si2
2 )が考えられる。図7に示す状態図において、黒塗
りの部分に化学両論組成があり、結晶性のサイアロンが
存在している。状態図において化学両論組成のある箇所
によって、O′相,β′相などに区別される。また、2
7R,21R,12H,15Rなどで示されている各相
はAlN−ポリタイポイドサイアロン(AlN−Polyty
pe)と呼ばれている。図7に示す各相のサイアロンにつ
いては、β′相などのサイアロンが燒結によって合成さ
れたという報告があるものの、薄膜合成が実現されたと
いう報告はない。
【0003】本発明の発明者は、プラズマCVD(Chem
ical Vapor Deposition)法を用いてサイアロンの低温
合成を試みた。ここで、サイアロン(Si−Al−O−
N)を合成するために使用する原料気体としてどのよう
なものを使用すべきかが問題となる。まず、アルミニウ
ム(Al)の供給であるが、アルミニウム原子を含む気
体としてCVD法に使用できるものとしては、塩化アル
ミニウム(AlCl3 )やトリメチルアルミニウム(A
l(CH32 )が考えられる。しかしながら、塩化ア
ルミニウムは昇華性の物質であり、安定供給が難しく、
また膜中に塩素(Cl)が不純物として混入しやすい欠
点がある。一方、トリメチルアルミニウムは融点が低く
低温にて比較的高い蒸気圧が得られるが、高価でありま
た空気と爆発的に反応する性質を有しているため取扱い
にくい。さらにプラズマCVD法などの低温合成では膜
中に炭素が混入するため不適である。また、窒素原子、
酸素原子ならびにシリコン原子の供給源としてどのよう
な気体を使用すべきかも問題になる。
【0004】本発明は以上のような課題を解決するため
に研究した成果により成しとげられたものであり、プラ
ズマCVD法を用いて、比較的低温にてサイアロン、特
に30R(H)相−ポリタイポイドサイアロンの析出に
成功し、本発明は、この30R(H)相−ポリタイポイ
ドサイアロンならびにその合成方法を提供することを目
的としている。
【0005】〔課題を解決するための手段ならびに作
用〕 本発明は、金属原子(M)と非金属原子(X)との比率
(M/X)が0.87であり、少なくとも0.267〜
0.268nmおよび0.154〜0.155nmの2
つの格子面間隔を有する六方晶系構造の、アルミニウ
ム、シリコン、酸素、窒素の各原子から成る30R
(H)相−ポリタイポイドサイアロンである。また、上
記サイアロンを合成するための、アルミニウムのハロゲ
ン化物と、窒素原子を含む気体と、酸素原子を含む気体
と、さらにシリコン原子を含む気体とを混合し、これら
の混合気体をマイクロ波により放電させてプラズマ化
し、基板表面にサイアロンの膜を析出させることを特徴
とする合成方法、さらに、好ましくは、アルミニウムの
ハロゲン化物として臭化アルミニウムを用い、酸素原子
を含む気体として笑気ガスを、シリコン原子を含む気体
としてランガスを使用した合成方法である。
【0006】本発明では、混合気体を放電させプラズマ
化するためにマイクロ波(例えば周波数が2.45GHz)
を使用し、これにより比較的低温にてポリタイポイドサ
イアロンを合成することに成功した。これはプラズマ中
における励起が、物質の比誘電率と誘電体損失角に関係
することに着目したことによる。例えば、ソースとして
臭化アルミニウム(AlBr3)が使用され、これと窒素
ガス(N2 )ならびに笑気ガス(N2 O)およびシラン
ガス(SiH4 )が混合されて、この気体がマイクロ波
によって放電されてプラズマ化されると、AlとBr 、
NとH、AlとN、SiとO、AlとO、AlとBr と
Hなどの組合わせの分子状ラジカルが存在するようにな
る。さらにマイクロ波によって励起されると、比誘電率
ならびに誘電体損失角とがマイクロ波の影響を受け、上
記組合わせの分子状ラジカルが共振状態となり、各々の
元素ごとに分かれた原子状ラジカルとなる。そしてこれ
が基板表面にて反応しサイアロン(Si−Al−O−
N)の薄膜が形成される。このように本発明では、アル
ミニウム源として臭化アルミニウムを使用し、また窒素
源として笑気ガスを使用し、さらにシリコン源としてシ
ランガスを使用することにより、プラズマCVD法にて
サイアロンの膜を合成することに成功した。
【0007】
【実施例】以下本発明の実施例を説明する。図1は本発
明による合成方法に使用するプラズマCVD装置の構造
を示す断面図である。図1において、符号1は石英管な
どによって形成された反応管であり、その内部が反応室
Aとなっている。符号2はマイクロ波プラズマ発生装置
である。2aはマイクロ波発振器であり、この実施例で
は、サイクロトロンにより2.45GHz のマイクロ波が発
振される。2bは導波管、2cは整合器、2dは反射板
である。シリコン(Si )などの基板3は、反応室A内
にて支持部材4上に設置される。支持部材4は、その上
端にホルダl4aが設けられ、このホルダ4aに前記基
板3が設置される。ホルダ4aは、窒化シリコン(Si3
4 )などによって形成されている。ホルダ4aの支持
部4bは石英管ならびに金属管により構成されており、
その内部に赤外線放射温度計の検出ヘッドが収納されて
いる。この検出ヘッドは光ファイバ5を介して検出回路
部(図示せず)に接続されている。上記検出ヘッドから
発せられる赤外線は石英管内を通過し、ホルダ4a内に
て基板3に照射される。よって反応室A内のプラズマの
影響を受けることなく、基板3の温度測定が正確に行わ
れるようになる。
【0008】反応室Aの上端にはガス供給ノズル6が配
置されている。このガス供給ノズル6は多重管であり、
この実施例の場合には三重管となっている。ソース供給
部には、恒温室11が設けられている。この恒温室11
内はサーモスタットにより常に一定の温度に保たれる。
恒温室11の内部にはバブラー12が配置されている。
このバブラー12内にアルミニウム原子を含む反応性ガ
ス源として臭化アルミニウム(AlBr3)が充填されて
いる。また13は導入ガスとして使用される水素ガス
(H2 )のボンベである。また符号14は窒素原子なら
びにシリコン原子の供給源を示している。シリコン原子
の供給源としてはシランガス(SiH4 )が使用され
る。このシランガスは爆発性を有しているものであるた
め予め窒素ガス(N2 )にて希釈されたものが使用され
る(図1ではSiH4 −N2 で示している)。この希釈
度合であるが、(N2 )がほぼ90%で(SiH4 )がほ
ぼ10%である。なお希釈のためのガスとしては窒素ガス
が最適であるが、他にキノセン,クリプトン,水素,ア
ルゴンなどの各ガスを使用することも可能である。また
希釈されたシランガス(SiH4 −N2 )と共に窒素源
として窒素ガス(N2 )が同じ経路にて供給される。符
号15は酸素原子を供給するための笑気ガス(N2 O)
のボンベである。符号16はアルゴンガス(Ar )を供
給するためのボンベである。符号17a〜17dはそれ
ぞれ流量調節器で、18a〜18dはバルブである。
【0009】前記ガス供給ノズル6は三重管であるが、
笑気ガス(N2 O)は中心の管6aから反応室A内に供
給される。また窒素ガスにて希釈されたシランガス(S
iH4 −N2 )と窒素ガス(N2 )は中間の管6bか
ら、水素ガスによって導入される臭化アルミニウム(以
下AlBr3/H2 で表わす)はさらに外側の管6cから
それぞれ反応室Aへ供給される。このように各ガスを三
重管を用いて別々の経路にて反応室Aへ供給することに
より、管内にて各ガスが混合されるのを防止しまたプラ
ズマにより管内壁に合成物が析出されるのが防止され
る。
【0010】またアルゴンガス(Ar )は前記ガス供給
ノズル6とは別の経路にて反応室Aの上方(図では左上
方)から供給される。これはアルゴンガスを反応室A内
のプラズマ発生領域の外側から供給するためである。プ
ラズマ中にその外部からアルゴンガスを供給することに
より、プラズマ中における中性粒子、イオン、電子など
への解離が促進されるようになる。しかも同軸線路型マ
イクロ波プラズマCVDの場合、プラズマが電界の影響
を受けやすく、反応室の管壁部分で電界が強く、反応さ
せる基板が設置されている中心部では弱くなってプラズ
マの領域が不均一となりやすいが、アルゴンガスをプラ
ズマ域外から供給することにより、プラズマ域が拡大す
るようになる。またアルゴンガスなどのような単原子分
子の場合には、プラズマ中にて分解されると再結合しに
くく、また再結合する場合であっても周囲のエネルギー
を奪うことがなく、安定して分解を継続する。よって、
これが一種の着火源になってプラズマ域が拡大されるも
のと予測される。これは従来のプラズマCVDにおいて
真空度を高くしたのと同じ状態であり、しかも真空圧を
単純に上げた場合のようなデメリット、例えばエレクト
ロンの密度が上がり成膜速度が低下するような不都合が
生じるのを避けることができるようになる。このような
プラズマ域の拡大とラジカル解離率の向上により、安定
した合成ができ、また成膜速度も速まることになる。た
だし、アルゴンガスをプラズマ域外から供給することが
必要であり、仮にアルゴンガスをノズルからプラズマ中
にて基板に直接吹きかけたりすると、逆にスパッタ状態
となり成膜速度が低下することになる。
【0011】また符号21は反応室A内を真空圧にする
ための排気管であり、メカニカルブースタポンプおよび
ロータリポンプが接続されている。なお、実施例の装置
では、基板3の表面位置をマイクロ波の通路中心よりl
1だけ高くし、ガス供給ノズル6の下端位置を基板表面
よりもl2 だけ高くして、l1 とl2 を共に40mmに設定
している。これは反応室A内ではプラズマ発生領域の中
心から外れた上部または下部が最も合成が促進されやす
く、しかもプラズマの下部に基板を設置した場合には、
ガス供給ノズル6の噴出口がプラズマ領域中となり、管
内で反応が生じ、管内面に合成物が析出してしまうから
である。
【0012】「合成例」 上記CVD装置を使用して合成を行なう際の条件は以下
の表1の通りである。
【表1】
【0013】上記条件において、まず最初に各ガスの流
量を以下の値に設定して合成を行なった。各ガスの供給
流量は以下の表2に示す通りである。
【表2】
【0014】上記各ガスの供給流量は、結晶性のサイア
ロンの合成をめざしたものであり、図7に示す状態図に
おいて、27R相などで示すAlN−ポリタイポイドの
サイアロンの合成を目標として各ガスの流量を設定し
た。すなわち結晶性のサイアロンを得るために、余分な
酸素,窒素,シリコンの各原子が混入するのを防止し、
各原子が最適に結合して結晶度を高めることができるよ
う、それぞれのガスの流量を設定した。特に笑気ガス
(N2 O)の流量を0.15sccmと比較的少量にしたのは、
AlN−ポリタイポイドのサイアロンの合成をめざすた
めのものであり、酸素量を抑え、図7の状態図において
(イ) で示す付近を出発点としてシリコンの量を選び、2
7R相などのAlN−ポリタイポイドのサイアロンの合
成を実現することにした。本発明では、AlN−ポリタ
イポイドのサイアロンを合成するために、上記(イ) を出
発点としてシリコンの量を調節し27R相などの化学両
論組成に移行させる。この点は後述するが、ここではひ
とまず表2に示すように(SiH4 −N2 )の供給流量
を12sccmに固定して実際の合成を行なってみた。この合
成の結果、基板3の表面に析出した物質を分析した結果
を以下に示す。
【0015】図2は、上記基板3の表面に合成された膜
をオージェ電子分光分析法により分析した結果を示して
いる。図2はスパッタリングを10(min )行なった際に
放出される物質を分光分析したものである。横軸はオー
ジェ効果による放出電子の強度(eV)を示している。この
図のスペクトルに示す通り、基板表面に、AlとOとN
とSiから成る物質が析出されていることが解る。なお
(Ar)のスペクトルは分析中の不純物と考えられ、析
出された物質の純度が高いものであることが解る。また
図3は、合成された膜の組成がその各層において不変な
ものであるか否かについて調べたものである。すなわち
膜の表面から所定時間スパッタリングし、スパッタされ
た物質の発光状態を前記オージェ電子分光分析法により
分析したものである。図3において、横軸はスパッタリ
ング時間を示しており、60(min )にて約1μm 程度掘
り込まれる。また縦軸はオージェ電子スペクトルの強度
(図2のスペクトルのピークツーピーク値)を測定した
ものである。この図3に示す通り、合成された膜はその
膜の厚さ方向に対してその組成が均一であることが解
る。
【0016】次に、図7において、(イ)で示す位置を出
発点として化学両論組成に移行させることを目的とし
て、窒素ガスにより希釈されたシランガス(Si H4
2 )の供給流量を変化させ、合成された物質の組成が
どのように変化するかを調べた。図4はその結果を示し
ている。これは横軸に(Si H4 −N2 )の供給流量を
示し、縦軸に各原子の成分比(%)を示したものであ
る。この成分比は波長分散分析法によって求めたもので
ある。この図においてシリコン原子は白丸、アルミニウ
ム原子は黒丸、窒素原子は三角、酸素原子は四角で示し
ている。この図では、(Si H4 −N2 )の供給流量を
約2.0sccm から約50sccmの間で変化させ、他のガスの流
量を前記の表−2で示した流量に固定した合成結果につ
いて示している。この図に示すように(Si H4−N
2 )の供給流量を徐々に増やして行くと、シリコン原子
の組成配分が増加することがわかる。またアルミニウム
原子はやや減少し、窒素原子と酸素原子はほぼ一定であ
る。
【0017】前述のように、図2と図3から、本実施例
の合成方法により、安定したSi,Al,O,Nの組成
をもつ物質が析出していることが解り、さらに図4か
ら、(Si H4 −N2 )の供給流量を変化させることに
よってシリコン原子の組成配分比が増加することが解
る。よって(Si H4 −N2)の供給流量を変化させる
ことにより、図7の状態図において、(イ) を出発点と
し、AlNポリタイポイドのサイアロンに移行できる可
能性があることが解る。
【0018】そこで、次に、(Si H4 −N2 )の流量
を変えることによりどのような組成の物質が析出するの
かを赤外分光分析法(IR)によって測定した。図5は
その測定結果を示している。同図において、横軸は波長
(cm- 1: カイザー)を示している。この測定は、物質が
特定の波長の光を吸収することに基づいてなされるもの
である。この波長の吸収は物質の結合状態によって固有
であり、(Al−N)の結合では 650カイザー付近の波
長の光が吸収される。(Si−N)の結合では950カイ
ザー付近で、(Si−O−Si)では1070カイザー付近
に光の吸収が現われる。a)〜e)は、それぞれ(Si H4
−N2 )の供給流量を変化させた場合(その他のガス流
量は表−2の通りに固定)に析出される物質について分
析を行なった結果を曲線によって示している。(Si H
4 −N2 )の供給流量は、a)が 0sccm,b)は 3sccm,c)
は 6sccm,d)は12sccm,e)は30sccmである。
【0019】図5において、a)の曲線では(Al−N)
の結合により650 カイザー付近の光の吸収が大きく現わ
れており、この条件では窒化アルミニウム(AlN)が
合成されていることが解る。次にb), c)では(Si H4
−N2 )の供給流量を徐々に増やしているため(Al−
N)の結合以外に、(Si−N)の結合により950 カイ
ザー付近の光の吸収が現われている。すなわちb),c)の
条件では窒化アルミ(AlN)に(Si−N)の結合が
付加された物質が合成されていることが解る。また、こ
のc)で示す合成条件付近から(Si−O−Si)の結合
により1070カイザー付近の光の吸収が現われてくる。次
にd)の条件で合成した場合、(Al−N)の結合による
特有の光の吸収が(ロ) の部分に現われ、また(Si−
N)の結合による特有な光の吸収が(ハ) の部分に現わ
れ、さらに(Si−O−Si)の結合により1070カイザ
ー付近の光の吸収が(ニ) の部分にかなり大きく現われ
る。さらに(Si H4 −N2 )の供給流量を増やし、e)
の条件になるとd)とは異なる結果が現われている。
【0020】上記の結果から、(Si H4 −N2 )の供
給流量を6から12sccmとし他のガスの供給流量を表−2
に示す値に固定して合成すると、Al,N,Si,Oが
互いに結合していることが予測できる。
【0021】図6は、上記条件a),b),c),d),e)のう
ち特にa),b),c)の条件で合成された物質について、X
線回折法により測定した結果を示している。このX線回
折法では、原子がある規則的な配向となっているとX線
を照射したときに、ある角度にて大きなX線の吸収が現
われる。この吸収角度は材料(物質)において固有であ
り、その吸収が現われた角度を基にJCPDS(Joint
committee on powderdiffraction standards )カード
によりその物質を知ることができる。
【0022】図6では、X線の吸収が現われていること
を示すピーク部分に四角、白丸、黒丸の表示を付してい
るが、X線の吸収角度により四角は基板のシリコン(S
i)を示し、白丸は窒化アルミニウム(AlN)を示
し、黒丸は未知の物質すなわちJCPDSカードによっ
ても知ることができない物質を示している。図6におい
て、a)ではX線の吸収角度により、AlN(002)な
らびに(004)のピークが現われており、c軸配向の
窒化アルミニウム(AlN)が合成されていることが解
る。またa)の右側に現れているSi(400)のピーク
は基板であるシリコンによるものである。b)ではa)に現
われていたAlN(002)のピーク強度が減少し、黒
丸で示す未知の物質によるピークが現われ始める。さら
に(Si H4 −N2 )のガス供給流量を増やした場合の
c)では、AlN(002)のピークがなくなり、黒丸で
示す未知の物質のピーク強度が増加する。
【0023】次に、以下の表3は未知物質の格子面間隔
(Interolanar spacing,d)を示している。表中の格子面
間隔dの(obs)は前記未知物質の実測値である。
【表3】
【0024】ポリタイポイドサイアロンは、AlNに対
するSi、0の置換量によって異なる8H、15R、1
2H、21R、24H、27R、33R、39Rおよび
2Hδの9相が報告されている。これらの相の金属原子
(M)と非金属原子(X)との比率(M/X)はそれぞ
れ8Hで0.80、15Rで0.83、12Hで0.8
6、21Rで0.88、24Hで0.92、27Rで
0.90、33Rで0.92、39Rで0.93および
2Hδで0.90である。未知物質のM/Xは0.87
である。そこでこの未知物質のM/Xの組成に近い既知
の相と、本実施例で得られた未知物質のメインピークの
格子面間隔d(obs)を比較した。その結果、未知物質の
メインピークの格子面間隔の実測値d(obs)のうちのd
=0.2676nm、とd=0.1545nm(表3を
参照)の値は、27R相のメインピークである(h,
k,l)が(0,0,27)ならびに(1,1,0)の
ピークにおける格子面間隔dに近い。しかし、27R相
の格子定数では、未知物質において実測されたdの値の
すべてを説明することはできなかった。またこの未知物
質のそれぞれのdはこれまで報告されているサイアロン
のいずれのdとも一致しなかった。
【0025】また表3中の格子面間隔において、(cal)
は格子面間隔の理論計算値を示している。また表の右欄
の強度(Intensity)は図10に示したX線回折法(図6
に示した測定値の元になるもの)により得られた各ピー
クの強度を示しており、wは弱い検出強度、vwは非常
に弱い検出強度、vvwはさらに弱い検出強度、sは強
い検出強度、vsは非常に強い検出強度を示している。
本実施例で得られた未知物質は、六方晶系構造であると
予測される。
【0026】そこで未知物質のdについて、a軸方向の
原子間距離がa=0.3091nmで、c軸方向の原子
間距離がc=8.0326nmのユニットセルを有する
六方晶としての指数付けを試みた。表−3のd(cal)は
その計算値を示している。その結果、計算値の格子間距
離d(cal)と実測値の格子間距離d(obs)が非常によく一
致した。以上のことから未知物質は、ポリタイポイドサ
イアロン30R(ロンボヘドラル)または30H(ヘキ
サゴナル)の相であることが明らかになった。
【0027】さらに、未知物質の微細組織についてTE
Mを用いて観察した。その結果を図10(a)に示す。
未知物質からなる膜は、粒径20nm程度の微小粒で構
成されており、部分的に、ファイバー状の連続した組織
もみられる。また図10(b)の制限視野回折パターン
から、d=0.446、0.236、0.171、0.
123(nm)のリングパターンがみられた。これらの
dも表3の計算値d(cal)とほぼ一致している。
【0028】またこの新たに合成できた30R(H)相
−ポリタイポイドサイアロンの性質を測定したのが図8
と図9である。図8は横軸に温度を縦軸に熱拡散率を示
したものである。白丸で示しているのが今回合成された
30R(H)相−ポリタイポイドサイアロンで、この図
から解るように、今回合成された30R(H)相−ポリ
タイポイドサイアロンは熱拡散率がβ´サイアロンと比
較して高いことが解る。図9はビッカース硬度を示して
いる。横軸は(SiH4−N2)の供給流量を徐々に増加
させたときのSiの濃度を示している。この図9におい
て、黒丸で示しているのが本発明による方法で合成され
た30R(H)相−ポリタイポイドサイアロンである。
この30R(H)相ポリタイドサイアロンはAlNより
高硬度でサイアロンとほぼ同等の硬度であることが解
る。以上のことから30R(H)相ポリタイポイドサイ
アロンはサイアロンより熱伝導率が高く高硬度の材料で
あることが明確である。なお、各ガスの流量は上記にお
いてその一例を示したものであり、ガス供給流量が他の
組合せであっても30R(H)相−ポリタイポイドサイ
アロン以外のサイアロンの合成をすることは可能であ
る。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、高熱伝導
性と高硬度の30R(H)相−ポリタイポイドサイアロ
ンを得ることができる。またプラズマCVD法により例
えば上記のサイアロンを合成できる。このサイアロンの
合成により、工具や耐熱構造材料は基よりポリタイポイ
ドのサイアロンを利用した圧電素子や光学素子などの機
能性材料の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による合成方法に使用するプラズマCV
D装置の構造を示す断面図。
【図2】合成された物質の成分の分析を示す線図。
【図3】同じく、合成された物質の成分の分析を示す線
図。
【図4】シランガスの供給流量を変化させたときの各原
子の成分比の変化を示す線図。
【図5】シランガスの供給流量を変化させたときの結晶
状態を示す解析図。
【図6】同じく、シランガスの供給流量を変化させたと
きの結晶状態を示す解析図。
【図7】サイアロンの状態図。
【図8】合成されたサイアロンの熱拡散率を示す線図。
【図9】合成されたサイアロンのマイクロビッカース硬
度を示す線図。
【図10】(a)は析出されたサイアロン膜の結晶の構造を示す透
過型電子顕微鏡写真、 (b)は格子面間隔を示すX線写真。
【符号の説明】
1 反応管 A 反応室 3 基板 6ガス供給ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平井 敏雄 宮城県仙台市泉区高森3丁目4番地の91 (72)発明者 佐々木 眞 宮城県仙台市若林区南小泉3丁目1番3 号 (56)参考文献 特開 昭62−65911(JP,A) 特開 昭59−146916(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01B 21/082 C23C 16/30

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属原子(M)と非金属原子(X)との
    比率(M/X)が0.87であり、少なくとも0.26
    7〜0.268nmおよび0.154〜0.155nm
    の2つの格子面間隔を有する六方晶系構造の、アルミニ
    ウム、シリコン、酸素、窒素の各原子から成る30R
    (H)相−ポリタイポイドサイアロン。
  2. 【請求項2】 アルミニウムのハロゲン化物と、窒素原
    子を含む気体と、酸素原子を含む気体と、さらにシリコ
    ン原子を含む気体とを混合し、これらの混合気体をマイ
    クロ波により放電させてプラズマ化し、基板表面に請求
    項1記載の30R(H)相−ポリタイポイドサイアロン
    の膜を析出させる合成方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウムのハロゲン化物は臭化アル
    ミニウムであり、酸素原子を含む気体が笑気ガスであり
    且つ、シリコン原子を含む気体がシランガスである請求
    項2記載の合成方法。
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