JPH0629022B2 - 車体に原動機を取付けた直角カルダン方式による動力伝達機構を装備した自然振子式鉄道車両 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、鉄道車両の曲線通過速度の向上を可能とする
ものである。

（従来の技術） 列車が曲線通過速度を向上する場合、線路のカント不足
によって、乗客に対して乗り心地が悪化する遠心力が作
用するのを防止するため、我国では既に３８１系特急形
電車が遠心力によって車体傾斜を行い、自然にバランス
させる自然振子方式による車体傾斜方式を採用し、所期
の効果を得ている。この車両の場合には、動力伝達方式
は台車の中に主電動機が組み込まれた平行カルダン方式
を採用しており、主電動機の駆動用トルクの反トルクに
よって、強制車体傾斜の発生する機構ではない。

一方我国の気動車の殆どが車両の床下にディーゼル機関
を装備し、推進軸を介して車端側の台車に組み込まれた
車輪に直角に動力を伝達する直角カルダン方式を採用し
ており、この場合にデイーゼル機関の出力軸心の方向が
車両の長手方向に向けて装備されるため、デイーゼル機
関によって発生する駆動用トルクの反トルクにより、車
体が強制的に傾斜し、自然振子式の車体傾斜の構成が出
来なかった。

この例として、かってガスタービンを動力として試作さ
れた３両編成の３９１形自然振子気動車も、付随車であ
る前後２両のみを振子させたが、中央に配置されたガス
タービン搭載の動力車は非振子であって、この結果、そ
の他の要因も含めて所期の目的を達成出来ず現在に至る
まで実用化されていない。

しかるに非電化区間の鉄道の高速化の必要性は喫緊の課
題となってきており、このため自然振子式の車体傾斜を
可能とする高速気動車の技術開発が要望されていた。

（発明が解決しようとする課題） 本発明は、このような現況にかんがみ、車体側に原動機
を装備し、直角カルダン方式による動力伝達方式を有す
る気動車等によっても、原動機の動力伝達時の反トルク
による強制車体傾斜を無くし、自然振子方式による車体
傾斜を可能なように構成させるもので、これにより、自
然振子式の車体傾斜を可能とする気動車等の高速車両の
開発を可能とするものである。

（課題を解決するための手段） 上記した目的を達成するために、本発明は、車体両端の
台車上に自然振子式車体傾斜装置を介し支持された車体
と、前記車体の中央部に、出力軸の軸心方向を車体の長
手方向にして配設した原動機と、前記原動機に車体両端
の台車方向に先端を向けて設けた一対の出力軸と、前記
出力軸に接続された一対の推進軸と、前記原動機側に設
けた前記一対の出力軸の回転力を同一として、それぞれ
の出力軸が逆方向に回転する機構と、それぞれ逆方向に
回転する前記一対の推進軸の回転を、前記前後の台車に
組み込まれた車軸の回転方向を同一にして直角に動力を
伝達する減速機を介して車輪に伝達することを特徴とす
る。

（作用） 車体の中央部に設けた原動機に台車方向に先端を向けて
設けた一対の出力軸の回転力を同一にして、回転方向を
逆方向に制御して一対の推進軸に伝達し、車両の両端の
台車に組み込まれた車軸を減速機を介して同一方向に回
転させるので、一対の出力軸が同一出力で回転する時
に、車体に生ずる反トルクが相互に打ち消され、反トル
クにより車体を強制的に傾斜させる作用がなくなるの
で、自然振子作用による車体傾斜が円滑になる。

（実施例） 以下本発明を第１図から第５図に示す実施例に従って説
明する。

第１図は２軸ボギー車で台車の内側のみを動軸とする２
原動機方式の場合である。原動機４は一般には内燃機関
であるが、電動機でも構成可能である。この例では出力
がほぼ等しい２台の原動機４を車両の中寄りに向かい合
わせに配置して常時同一出力で制御し、それぞれ推進軸
３を回転方向５及びその逆方向６に回転させる。動力は
減速機２を介して動輪１へ伝達される。

第２図は同上の場合の１原動機方式である。車両のほぼ
中央に配置した１台の原動機４からは車両の前後方向に
出力軸を出し、それぞれ推進軸３を回転させる。以下第
１図と同様である。

第３図及び第４図は原動機４が２台及び１台の場合で、
推進軸をそれぞれ方向５及び逆方向６に回転した場合で
も、減速機２の中の傘歯車の配置を図のように大歯車を
原動機側から見てそれぞれ反対向きに取りつけることに
より、車両は方向９のように一方向に進むことが出来
る。

（発明の効果） 本発明による効果は、気動車等の鉄道車両において、車
体に設けた内燃機関等の原動機を有する直角カルダン方
式動力伝達機構を有する車両によっても、カーブを高速
で走行する際の、乗客の乗り心地改善を図るための自然
振子作用を用いた振子式車両の構成を可能とするもので
あって、この発明のよって、この種の動力伝達機構を有
する車両の、曲線通過速度の向上を可能とするものであ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第５図は本発明の実施例を示し、第１図、第２
図は原動機の配置例と推進軸の回転方向との関係、第３
図、第４図は推進軸、減速機内の歯車の配列と車両の進
行方向との関係を示す図である。第５図は自然振子車両
の説明をする参考図である。 １……車輪、２……減速機、３……推進軸、４……原動
機、 ５……推進軸の回転方向、６……推進軸の回転方向、 ７……車両の進行方向、８……振子回転中心、 ９……車体傾斜角、１０……枕ばね、 １１……ころ、１２……振子はり、 １３……台車、１４……車体。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 徹 東京都新宿区西新宿１丁目７番２号 富士 重工業株式会社内 審査官 小菅 一弘

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】車体両端の台車上に自然振子式車体傾斜装
   置を介して支持された車体と、前記車体の中央部に、出
   力軸の軸心方向を車体の長手方向にして配設した１又は
   ２台の原動機と、前記原動機に車体両端の台車方向に先
   端を向けて設けた一対の出力軸と、前記出力軸に接続さ
   れた一対の推進軸と、前記原動機側に設けた前記一対の
   出力軸の回転力を同一として、それぞれの出力軸が逆方
   向に回転する機構と、それぞれ逆方向に回転する前記一
   対の推進軸の回転を、前記前後の台車に組み込まれた車
   軸の回転方向を同一にして直角に動力を伝達する減速機
   を介して車輪に伝達することを特徴とする車体に原動機
   を取付けた直角カルダン式動力伝達機構を装備した自然
   振子式鉄道車両。