JPH0628991Y2 - 収穫機の車速制御装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は収穫機の車速制御装置、詳しくは作業装置に
おける負荷検出器の検出結果に基づいて走行変速機を増
速制御又は減速制御するようにした収穫機の車速制御装
置に関する。

（従来の技術） 従来この種収穫機の車速制御装置は、例えば特公昭５７
−６８８２号公報に開示されているごとく、脱穀装置の
扱胴を一定回転数に設定して、この脱穀装置に負荷検出
器を設けると共に、該負荷検出器を走行装置の変速機に
連動連結して、前記脱穀装置の負荷が所定値以上に増大
したとき、前記負荷検出器からの検出信号で前記走行変
速機を低速側に変速して、車速を低速となすことによ
り、前記脱穀装置への穀稈供給量を減少させて、該脱穀
装置の負荷増大を解消するごとくなし、また該脱穀装置
の負荷が所定値以下に減少したときには、前記負荷検出
器からの検出信号で前記走行変速機を高速側に変速し
て、車速を高速となすことにより、前記脱穀装置への穀
稈供給量を増大させるごとくしている。

（考案が解決しようとする問題点） ところで以上のごとき運転制御装置では、前記脱穀装置
の扱胴が一定回転数に設定されており、換言すれば前記
扱胴の回転数が、刈取るべき対象物の種類とは無関係に
一定回転数に設定され、斯かる状態下で前記走行変速機
による車速の変速操作で前記脱穀装置への穀稈供給量を
調節することにより、該脱穀装置の負荷変動に対応させ
ているのであり、従って次のごとき問題があったのであ
る。

即ち、前記収穫機により麦を刈取る場合、稲を刈取る場
合に比べて脱粒性が良いことから、同じ脱穀負荷に対し
ては前記脱穀装置の扱胴を稲の場合より高速回転させる
ことができるし、また前記稲を刈取るときには、同じ脱
穀負荷に対しては麦を刈取る場合に比べて前記扱胴を低
速回転させないと脱穀負荷が過剰になるのである。所
が、前記従来の車速制御装置では、前記扱胴の回転数を
刈取対象物の種類とは無関係に一定回転数に設定し記脱
穀装置の負荷変動により前記車速を変速して、前記脱穀
装置の負荷に対応させるようにしているため、前記麦を
刈取る場合稲を刈取る場合に対し扱胴の回転を高速にで
きるにも拘わらず、稲の場合に合わせて扱胴の回転を設
定しているため、麦の場合の刈取作業能率を向上できな
い問題があった。

本考案は以上のごとき問題に鑑みて考案したもので、そ
の目的は、走行変速機を増速制御又は減速制御する作業
装置における作業負荷の基準値を刈取対象物の種類に応
じて変更可能となし、この変更状態で前記作業装置の負
荷変動に対応して前記車速を変速可能となすことによ
り、前記稲や麦を刈取る場合の適用性に優れた収穫機の
車速制御装置を提供することにある。

（問題点を解決するための手段） 本考案にかかる収穫機の車速制御装置は、作業装置
（３）における負荷検出器（８）の検出結果に基づいて
走行変速機を増速制御又は減速制御するようにした収穫
機の車速制御装置において、前記変速機を増速制御又は
減速制御する作業負荷の基準値を、刈取対象物の種類に
応じて異なる値に設定する複数の設定器（１１）（１
２）と、刈取対象物の種類に応じて前記設定器（１１）
（１２）の一つを選択し、前記基準値を基にして前記刈
取対象物の種類に応じた車速制御を行う選択器（１３）
とを備えていることを特徴とするものである。

（作用） しかして前記収穫機による収穫作業時に、例えば稲より
も脱粒性のよい麦を刈取る場合には、先ず、前記選択器
（１３）により車速制御を行う脱穀負荷の基準値が、稲
の場合よりも大きい、つまり脱穀装置（３）の脱穀回転
数からみると稲の場合よりも低い、麦用の設定器を選択
するのである。こうして脱穀負荷の減少に伴い脱穀装置
（３）の扱胴回転数が高まると、麦の場合は稲の場合よ
りも低い扱胴回転数つまりより多くの脱穀負荷がかかっ
た状態で、車速を増速して高速域に調節できるのであ
る。一方、前記脱穀負荷の増大に伴い脱穀装置（３）の
扱胴回転数が落ちてくると、麦の場合は稲の場合よりも
低い扱胴回転数つまりより多くの脱穀負荷がかかった状
態で始めて車速を減速して低速域に調節し、低速域での
運転頻度を少なくできるのである。この結果、麦を刈取
る場合、車速を稲の場合の車速に比べて総じて高速にで
き、単位時間あたりの脱穀装置（３）への穀稈の搬送量
を多くすることができ、麦の場合の刈取作業能率を稲の
場合に比べて向上できるのである。

（実施例） 以下本考案にかかる収穫機の車速制御装置を図面の実施
例によって説明する。

第５図は収穫機の一例としてコンバインを示しており、
このコンバインは、機体（１）の下部にクローラ式走行
装置（２）を設け、かつ上部位置に、扱胴（３１）と選
別装置（３２）及びフィードチェン(33)などを備えた脱
穀装置（３）を搭載すると共に、前記機体（１）の前方
位置に、刈刃（４１）と穀稈引起し枠（４２）及び前記
脱穀装置（３）のフィードチェン(33)への穀稈搬送装置
（４３）などを備えた刈取装置（４）を設ける一方、該
刈取装置（４）の側部位置に操向コラム（５）を設けて
いる。

前記走行装置（２）には、前記機体（１）上に搭載した
エンジン（Ｅ）に連動連結する走行変速機（６）を設
け、該変速機（６）を前記操向コラム（５）上に立設し
た走行変速レバー（６１）の揺動で操作することによ
り、車速を複数段階にわたって変速操作可能としてお
り、前記走行変速レバー（６１）の揺動操作は、後述す
るシフトモータ（６２）によって行うのである。

また前記脱穀装置（３）の扱胴（３１）と前記エンジン
（Ｅ）との動力伝達系には、脱穀変速機（７）を設け、
該変速機（７）を前記操向コラム（５）上に立設した脱
穀変速レバー（７１）の揺動で操作することにより、前
記扱胴（３１）の回転数を複数段階にわたって変速可能
としており、前記脱穀変速レバー（７１）の揺動操作
は、後述するシフトモータ（７２）によって行う。

前記脱穀変速機（７）は、第４図に示したごとく、可動
割りプーリから成る駆動プーリ（７３）と、従動プーリ
（７４）と、これら各プーリ（７３）（７４）間に掛回
された伝動ベルト（７５）と、該伝動ベルト（７５）の
中間部位に支持アーム（７６）を介して揺動可能に支持
されたテンションプーリ（７７）とから成り、前記支持
アーム（７６）を前記脱穀変速レバー（７１）に操作ワ
イヤ（７８）を介して連結し、この脱穀変速レバー（７
１）の揺動操作で、前記テンションプーリ（７７）の前
記伝動ベルト（７５）に対するテンションを調節するこ
とにより、前記駆動プーリ（７３）の有効径を変更し
て、該駆動プーリ（７３）から前記従動プーリ（７４）
に至る動力、つまり前記エンジン（Ｅ）から前記扱胴
（３１）に至る動力を変速するごとくしている。

また前記脱穀変速レバー（７１）の長さ方向中間部位
に、外周に前記レバー（７１）に係合する螺旋杆（７９
ａ）を設けた回転軸（７９）を回転可能に支持すると共
に、該回転軸（７９）の軸端を前記シフトモータ（７
２）に連結して、このシフトモータ（７２）に伴う前記
回転軸（７９）の回転駆動により、前記螺旋杆（７９
ａ）を介して前記脱穀変速レバー（７１）を揺動させ、
前記扱胴（３１）の回転速度を自動的に変速するごとく
なすのである。

そして前記脱穀装置（作業装置）（３）における扱胴
（３１）の扱胴軸に、該扱胴（３１）による脱穀負荷を
検出する負荷検出器（８）を取付け、この検出器（８）
による検出結果に基づいて前記走行変速機（６）を作動
させ、前記脱穀装置（３）の負荷増大により、前記走行
装置（２）による車速を減速し、かつ前記脱穀装置
（３）の負荷減少により、前記車速を増速させるごとく
制御する制御装置（９）を設けると共に、前記変速機
（６）を増速制御又は減速制御する作業負荷の基準値、
換言すれば扱胴（３１）の回転数を、刈取対象物の種類
つまり稲と麦とで別々に異なる値に設定する設定器（１
１）（１２）を設ける一方、該各設定器（１１）（１
２）の一つを選択し、前記基準値を基にして前記刈取対
象物の種類に応じた車速制御を行う選択器（１３）を設
けるようにしたのである。

具体的には、第１図に示すごとく、制御装置（９）の入
力ポートに、前記運転制御装置を自動制御する自動スイ
ッチ（ＳＷ１）と、前記脱穀装置（３）を駆動する脱穀
スイッチ（ＳＷ２）と、前記刈取装置（４）を駆動する
刈取スイッチ（ＳＷ３）と、前記負荷検出器（８）と、
前記走行変速機（６）の走行変速レバー（６１）による
前記走行装置（２）の変速段位を検出するポテンショメ
ータ利用の検出センサー（１０）と、前記稲及び麦用設
定器（１１）（１２）とをそれぞれ接続するのである。

また前記各設定器（１１）（１２）の入力側には、該各
設定器（１１）（１２）を選択する選択器（１３）を接
続するのであり、この選択器（１３）は互いに連動する
２つの稲及び麦用切換スイッチ（ＳＷ４）（ＳＷ５）か
ら成り、この各スイッチ（ＳＷ４）（ＳＷ５）を切換え
ることにより、前記各設定器（１１）（１２）を選択的
に作動させるごとくなすのである。

更に前記制御装置（９）の出力ポートには、前記自動ス
イッチ（ＳＷ１）と脱穀スイッチ（ＳＷ２）及び刈取ス
イッチ（ＳＷ３）のオン動作で、点灯されるランプ（Ｌ
１）（Ｌ２）（Ｌ３）をそれぞれ接続すると共に、前記
出力ポートには、前記走行変速機（６）の走行変速レバ
ー（６１）を所定の変速段位に揺動操作する前記シフト
モータ（６２）と、前記脱穀変速機（７）を所定の変速
位置に揺動操作する前記シフトモータ（７２）とを接続
する。

そして前記脱穀装置（３）の負荷を前記負荷検出器
（８）により検出し、該検出器（８）から出力信号とし
て前記制御装置（９）に入力させ、この制御装置（９）
において、前記負荷検出器（８）からの出力信号と前記
走行検出センサー（１０）からの検出信号とを比較し
て、この検出センサー（１０）からの検出信号に対して
前記負荷検出器（８）による検出値が増大されたとき、
つまり前記脱穀装置（３）の脱穀負荷が増大されたと
き、前記制御装置（９）から出力信号を出力して、前記
走行用シフトモータ（６２）を回転制御し、前記走行変
速レバー（６１）を揺動操作して、前記走行装置（２）
による車速を自動的に減速させるごとくなし、また前記
走行検出センサー（１０）からの検出信号に対して前記
負荷検出器（８）による検出値が減少されたとき、つま
り前記脱穀装置（３）の脱穀負荷が減少されたとき、前
記制御装置（９）から出力信号を出力して、前記走行用
シフトモータ（６２）を回転制御し、前記走行変速レバ
ー（６１）を揺動操作して、前記車速を自動的に増速さ
せるごとくなすのである。

またコンバインの刈取脱穀作業時で、刈取るべき穀稈が
麦である場合には、前記選択器（１３）を形成する稲用
切換スイッチ（ＳＷ４）のオン動作で前記麦用設定器
（１２）を作動させて、前記脱穀装置（３）の負荷が減
少し、この負荷減少に対応して車速の増速操作を行なう
時に、前記脱穀装置（３）の扱胴（３１）の回転数が稲
の場合に対し低い回転数、つまり高い負荷で車速を増速
して高速域に制御するのであり、また、脱穀負荷が増加
し、この負荷増加に対応して車速を減速する場合には、
前記扱胴（３１）の回転数が稲の場合に対し低い回転
数、つまり高い負荷になってから車速を減速して低速域
に制御するのである。

即ち、前記扱胴（３１）の回転数に対する車速の前記各
設定器（１１）（１２）による制御は、例えば次表に示
すごとく行うのである。

即ち、前記走行変速機（６）のシフトモータ（６２）に
より車速をシフトアップして、変速域を増速ゾーンとす
る場合、稲を刈取るときには、前記扱胴（３１）の回転
数を５００ｒｐｍ以上となし、かつ麦を刈取るときに
は、前記扱胴（３１）の回転数を４９５ｒｐｍ以上とな
し、また前記変速域を標準ゾーンとする場合、稲を刈取
るときには、前記扱胴（３１）の回転数を４６０〜５０
０ｒｐｍの範囲となし、かつ麦を刈取るときには、前記
扱胴（３１）の回転数を４５５〜４９５ｒｐｍの範囲と
なすのである。

更に前記シフトモータ（６２）により車速をシフトダウ
ンして、変速域を減速ゾーンとする場合で、稲を刈取る
ときには、前記扱胴（３１）の回転数を４２０〜４６０
ｒｐｍの範囲となし、かつ麦を刈取るときには、前記扱
胴（３１）の回転数を４１５〜４５５ｒｐｍの範囲とな
し、また前記車速のシフト位置が中立位置にあって、前
記変速域を停止ゾーンにする場合、稲を刈取るときに
は、前記扱胴（３１）の回転数を４２０ｒｐｍ以下とな
し、かつ麦を刈取るときには、前記扱胴（３１）の回転
数を４１５ｒｐｍ以下となすのである。

前記稲及び麦の刈取作業時には、前記刈取装置（４）の
刈取速度と前記車速とを、第３図に示すごとく制御する
ことも可能である。この第４図は縦軸に刈取速度を、か
つ横軸に車速をとった制御グラフを示しており、該制御
グラフから明らかなごとく、前記車速に対する刈取速度
の減少比を、前記稲の刈取時に比べて麦の刈取時が小と
なるように制御するのである。即ち、前記麦は稲に比べ
て刈取時に折れ易いのであるが、前記のごとく車速に対
する刈取速度の減少比を小となすことにより、前記麦の
刈取時の切損を少なくすることができるのである。

次に以上のごとく構成された車速制御装置による制御態
様を、第２図のフローチャートに基づいて説明する。

先ず、前記自動スイッチ（ＳＷ１）と脱穀スイッチ（Ｓ
Ｗ２）と刈取スイッチ（ＳＷ３）とのオン動作により、
前記制御装置（９）で前記負荷検出器（８）で検出され
た前記脱穀装置（３）の負荷が読み込まれ、この負荷が
所定値以上であるか否かが判断され、イェスの場合つま
り前記負荷が増大されているとき、前記走行変速機
（６）により車速が減速側に変速され、この後刈取対象
物の種類が稲であるか麦であるかが判断され、稲である
場合には前記選択器（１３）の稲用切換スイッチ（ＳＷ
４）がオン動作され、前記稲用設定器（１１）が作動さ
れて、前記脱穀装置（３）における扱胴（３１）の回転
が稲用制御態様で自動制御される。

また前記刈取対象物の種類が麦である場合には、前記選
択器（１３）の麦用切換スイッチ（ＳＷ５）がオン動作
され、前記麦用設定器（１２）が作動されて、前記扱胴
（３１）の回転が麦用制御態様で自動制御される。

以上のフローチャートには、前記脱穀装置（３）の負荷
が増大されたとき、前記車速を減速側に変速する場合に
ついてのみ記載しているが、前記負荷が減少されたとき
には、前記場合と同様にして前記車速を増速側に変速さ
せ、またこの車速の変速に対応して前記扱胴（３１）の
回転制御を行うようになすものとする。

（考案の効果） 以上説明したごとく本考案にかかる収穫機の車速制御装
置では、前記走行変速機を増速制御又は減速制御する作
業負荷の基準値を、刈取対象物の種類に応じて異なる値
に設定する複数の設定器（１１）（１２）と、刈取対象
物の種類に応じて前記設定器（１１）（１２）の一つを
選択し、前記基準値を基にして前記刈り取り対象物の種
類に応じた車速制御を行う選択器（１３）とを備えるこ
とにより、収穫機による収穫作業時に、例えば稲よりも
脱粒性のよい麦を刈取る場合には、先ず、前記選択器
（１３）により車速制御を行う脱穀負荷の基準値が、稲
の場合よりも大きい、つまり脱穀装置（３）の脱穀回転
数からみると稲の場合よりも低い、麦用の設定器を選択
するのである。こうして脱穀負荷の減少に伴い脱穀装置
（３）の扱胴回転数が高まると、麦の場合は稲の場合よ
りも低い扱胴回転数つまりより多くの脱穀負荷がかかっ
た状態で、車速を増速して高速域に調節できるのであ
る。一方、前記脱穀負荷の増大に伴い脱穀装置（３）の
扱胴回転数が落ちてくると、麦の場合は稲の場合よりも
低い扱胴回転数つまりより多くの脱穀負荷がかかった状
態で始めて車速を減速して低速域に調節し、低速域での
運転頻度を少なくできるのである。この結果、麦を刈取
る場合、車速を稲の場合の車速に比べて総じて高速にで
き、単位時間あたりの脱穀装置（３）への穀稈の搬送量
を多くすることができ、麦の場合の刈取作業能率を稲の
場合に比べて向上できるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案にかかる収穫機の車速制御装置を示すブ
ロック図、第２図は同車速制御装置によるフローチャー
ト図、第３図は他の実施例として車速と刈取速度との関
係を説明する制御グラフ、第４図は脱穀変速機の一部切
欠側面図、第５図は収穫機例として示すコンバインの一
部切欠側面図である。 （３）……脱穀装置（作業装置） （６）……走行変速機 （８）……負荷検出器 （１１）……設定器 （１２）……設定器 （１３）……選択器

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】作業装置（３）における負荷検出器（８）
   の検出結果に基づいて走行変速機を増速制御又は減速制
   御するようにした収穫機の車速制御装置において、前記
   変速機を増速制御又は減速制御する作業負荷の基準値
   を、刈取対象物の種類に応じて異なる値に設定する複数
   の設定器（１１）（１２）と、刈取対象物の種類に応じ
   て前記設定器（１１）（１２）の一つを選択し、前記基
   準値を基にして前記刈取対象物の種類に応じた車速制御
   を行う選択器（１３）とを備えていることを特徴とする
   収穫機の車速制御装置。