JPH06287683A - 溶接軟化部の耐硫化物応力割れ性に優れた高強度uoeラインパイプ - Google Patents
溶接軟化部の耐硫化物応力割れ性に優れた高強度uoeラインパイプInfo
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- JPH06287683A JPH06287683A JP7477793A JP7477793A JPH06287683A JP H06287683 A JPH06287683 A JP H06287683A JP 7477793 A JP7477793 A JP 7477793A JP 7477793 A JP7477793 A JP 7477793A JP H06287683 A JPH06287683 A JP H06287683A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は高強度UOEラインパイプにおい
て、溶接軟化部の耐硫化物応力割れ抵抗が高い、成分、
Caの添加条件、酸化物の群幅の条件を与える。 【構成】 主要成分として、C,Si,Mn,P,S,
Nb,Al,Ca,Tiを含有し、V,Ni,Cu,C
r,Moの一種または二種以上を含有するAPIグレー
ドX60からX70のラインパイプに関して、成分範囲
を限定するとともに、硫化物の形態制御に必要なCaを
添加し、かつ、硫化物応力割れの発生起点となる群状に
存在するCaO,Al2 O3 またはこれらを主体とする
複合酸化物の群の幅を制限し、軟化部でも耐硫化物応力
割れ性を得る。 【効果】 本発明により、湿潤硫化水素環境において優
れた溶接部の耐硫化物応力割れ性を有する、APIグレ
ードX60からX70のラインパイプが得られる。
て、溶接軟化部の耐硫化物応力割れ抵抗が高い、成分、
Caの添加条件、酸化物の群幅の条件を与える。 【構成】 主要成分として、C,Si,Mn,P,S,
Nb,Al,Ca,Tiを含有し、V,Ni,Cu,C
r,Moの一種または二種以上を含有するAPIグレー
ドX60からX70のラインパイプに関して、成分範囲
を限定するとともに、硫化物の形態制御に必要なCaを
添加し、かつ、硫化物応力割れの発生起点となる群状に
存在するCaO,Al2 O3 またはこれらを主体とする
複合酸化物の群の幅を制限し、軟化部でも耐硫化物応力
割れ性を得る。 【効果】 本発明により、湿潤硫化水素環境において優
れた溶接部の耐硫化物応力割れ性を有する、APIグレ
ードX60からX70のラインパイプが得られる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、湿潤な硫化水素環境に
おいて優れた溶接部の耐硫化物応力割れ性を有する、A
PIグレードX60からX70のラインパイプに関する
ものである。
おいて優れた溶接部の耐硫化物応力割れ性を有する、A
PIグレードX60からX70のラインパイプに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年生産される石油、天然ガス中に硫化
水素を含む場合が非常に多くなっているため、これらの
石油、天然ガスを輸送するラインパイプは海水等の水が
共存した硫化水素環境(サワー環境)に曝される可能性
が高くなっている。サワー環境中では、鋼表面の腐食に
よる鋼中への水素の侵入が硫化水素の触媒作用により促
進される。一方、操業中のラインパイプには内部を通過
する流体の圧力により周方向の応力、即ちフープ応力が
作用する。
水素を含む場合が非常に多くなっているため、これらの
石油、天然ガスを輸送するラインパイプは海水等の水が
共存した硫化水素環境(サワー環境)に曝される可能性
が高くなっている。サワー環境中では、鋼表面の腐食に
よる鋼中への水素の侵入が硫化水素の触媒作用により促
進される。一方、操業中のラインパイプには内部を通過
する流体の圧力により周方向の応力、即ちフープ応力が
作用する。
【0003】このような環境条件のもとで生じるライン
パイプの破壊原因として硫化物応力割れが知られてい
る。特に溶接部の硬度の高い部分で生じる硫化物応力割
れが多く経験されてきた。そこで、硫化物応力割れの防
止方法としては、溶接部の最高硬さを規制することが一
般的となっており、通常はビッカース硬度で248以下
とするように求められることが多い。この要求に対応す
るために、鋼管製造メーカーは鋼管材の炭素等量を下
げ、それによる強度低下を補うために制御圧延、加速冷
却からなる加工熱処理法、いわゆるTMCPにより素材
を製造している。TMCP技術の導入は、溶接部の硬化
防止の他、金属組織制御により鋼管母材の耐硫化物応力
割れ性を向上した。
パイプの破壊原因として硫化物応力割れが知られてい
る。特に溶接部の硬度の高い部分で生じる硫化物応力割
れが多く経験されてきた。そこで、硫化物応力割れの防
止方法としては、溶接部の最高硬さを規制することが一
般的となっており、通常はビッカース硬度で248以下
とするように求められることが多い。この要求に対応す
るために、鋼管製造メーカーは鋼管材の炭素等量を下
げ、それによる強度低下を補うために制御圧延、加速冷
却からなる加工熱処理法、いわゆるTMCPにより素材
を製造している。TMCP技術の導入は、溶接部の硬化
防止の他、金属組織制御により鋼管母材の耐硫化物応力
割れ性を向上した。
【0004】しかし、TMCP鋼では、低炭素等量故に
必然的に溶接熱影響部(HAZ)に母材よりも強度の低
い軟化領域が生じる。特に溶接入熱の大きいUOE鋼管
では、軟化度が大きい。ラインパイプの耐硫化物応力割
れ性を評価する手法として、NACE規格TM0177
−90があるが、この場合、負荷応力の設定基準は母材
の強度に基づいて決定されるため、軟化部を含むTMC
P鋼では応力条件が厳しくなる軟化部で優先的に割れが
生じることが知られている。また、最近英国を中心とし
て、ラインパイプの耐硫化物応力割れ性評価試験として
実管で試験を行う試験法、通称CAPCIS試験が規格
化されようとしている。CAPCIS試験ではHAZ軟
化部を含めて評価される上、評価手段として超音波探傷
が採られるため軟化部に生じた微小な内部割れも問題視
され得るという厳しいものである。
必然的に溶接熱影響部(HAZ)に母材よりも強度の低
い軟化領域が生じる。特に溶接入熱の大きいUOE鋼管
では、軟化度が大きい。ラインパイプの耐硫化物応力割
れ性を評価する手法として、NACE規格TM0177
−90があるが、この場合、負荷応力の設定基準は母材
の強度に基づいて決定されるため、軟化部を含むTMC
P鋼では応力条件が厳しくなる軟化部で優先的に割れが
生じることが知られている。また、最近英国を中心とし
て、ラインパイプの耐硫化物応力割れ性評価試験として
実管で試験を行う試験法、通称CAPCIS試験が規格
化されようとしている。CAPCIS試験ではHAZ軟
化部を含めて評価される上、評価手段として超音波探傷
が採られるため軟化部に生じた微小な内部割れも問題視
され得るという厳しいものである。
【0005】この軟化部の硫化物応力割れを防止する方
法として、従来より直接軟化を防止する次のような対策
が開示されている。 (1)窒化物等の析出硬化によりHAZの強度低下を防
止する方法(例えば、特開昭62−284043号公報
参照)。 (2)溶接後溶接部を熱処理して軟化を改善する方法
(例えば、特開平4−168220号公報参照)。 これらの手段は、単に軟化防止という意味では有効であ
るが、実際にラインパイプの製造に適用するには次のよ
うな欠点がある。
法として、従来より直接軟化を防止する次のような対策
が開示されている。 (1)窒化物等の析出硬化によりHAZの強度低下を防
止する方法(例えば、特開昭62−284043号公報
参照)。 (2)溶接後溶接部を熱処理して軟化を改善する方法
(例えば、特開平4−168220号公報参照)。 これらの手段は、単に軟化防止という意味では有効であ
るが、実際にラインパイプの製造に適用するには次のよ
うな欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記(1)のように析
出硬化を利用した場合、確かに軟化の程度は軽減される
が、軟化部を皆無にするまでには至らない。また、析出
元素としてVの窒化物を利用するのでラインパイプにお
いて重要な特性の1つである溶接部の破壊靭性を低下さ
せることになる。また、上記(2)の方法は確かに軟化
防止の手段ではあるが、UOE鋼管の製造に適用するた
めには大型の熱処理手段を必要とする上に、生産性を阻
害しコスト増となるため現実的な方法とは言えない。
出硬化を利用した場合、確かに軟化の程度は軽減される
が、軟化部を皆無にするまでには至らない。また、析出
元素としてVの窒化物を利用するのでラインパイプにお
いて重要な特性の1つである溶接部の破壊靭性を低下さ
せることになる。また、上記(2)の方法は確かに軟化
防止の手段ではあるが、UOE鋼管の製造に適用するた
めには大型の熱処理手段を必要とする上に、生産性を阻
害しコスト増となるため現実的な方法とは言えない。
【0007】以上のように溶接部の耐硫化物応力割れ性
を得るための方法として、軟化を改善することは手段が
少なく、とり得たとしても工業的に有利な手段とはなら
ない。従って、HAZ軟化の存在を前提として、軟化物
の耐硫化物応力割れ性を確保することが溶接部の耐硫化
物応力割れ性に優れた高強度UOEラインパイプを製造
するにあたっての課題となる。
を得るための方法として、軟化を改善することは手段が
少なく、とり得たとしても工業的に有利な手段とはなら
ない。従って、HAZ軟化の存在を前提として、軟化物
の耐硫化物応力割れ性を確保することが溶接部の耐硫化
物応力割れ性に優れた高強度UOEラインパイプを製造
するにあたっての課題となる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
有利に解決するもので、硫化物の形態制御に必要なCa
を添加し、かつ、硫化物応力割れの発生起点となる酸化
物の群の幅を制限し、軟化部でも耐硫化物応力割れ性を
得るというものである。即ち、本発明の要旨とするとこ
ろは、重量%で、C :0.03〜0.09%、Si:
0.1〜0.6%、Mn:1.1〜1.5%、P :
0.015%以下、S :0.0010%以下、Nb:
0.010〜0.050%、Al:0.005〜0.0
3%、Ca:0.002〜0.004%、Ti:0.0
05〜0.025%を含有し、または、これに加えてさ
らに、V :0.01〜0.1%、Ni:0.1〜1.
0%、Cu:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0
%、Mo:0.1〜0.5%の一種または二種以上を含
有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、かつ下記の
(1)式を満足し、かつ群状に存在するCaO,Al2
O3 またはこれらを主体とする複合酸化物の群の幅が2
00μm以下であることを特徴とする溶接軟化部の耐硫
化物応力割れ性に優れた高強度UOEラインパイプにあ
る。
有利に解決するもので、硫化物の形態制御に必要なCa
を添加し、かつ、硫化物応力割れの発生起点となる酸化
物の群の幅を制限し、軟化部でも耐硫化物応力割れ性を
得るというものである。即ち、本発明の要旨とするとこ
ろは、重量%で、C :0.03〜0.09%、Si:
0.1〜0.6%、Mn:1.1〜1.5%、P :
0.015%以下、S :0.0010%以下、Nb:
0.010〜0.050%、Al:0.005〜0.0
3%、Ca:0.002〜0.004%、Ti:0.0
05〜0.025%を含有し、または、これに加えてさ
らに、V :0.01〜0.1%、Ni:0.1〜1.
0%、Cu:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0
%、Mo:0.1〜0.5%の一種または二種以上を含
有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、かつ下記の
(1)式を満足し、かつ群状に存在するCaO,Al2
O3 またはこれらを主体とする複合酸化物の群の幅が2
00μm以下であることを特徴とする溶接軟化部の耐硫
化物応力割れ性に優れた高強度UOEラインパイプにあ
る。
【数3】
【0009】
【作用】本発明者らは、溶接軟化部に生じる硫化物応力
割れの破面を観察して割れの発生起点を観察した。実機
で製造したX60からX70グレードの種々のUOEラ
インパイプについて溶接部から溶接線に垂直に厚さ、
幅、長さが10×100×400の試験片を作製した。
この短冊状試験片を引張治具に取り付け、NACE規格
TM0177−90methodAに従う試験を行った。負荷
応力は規格最小降伏応力の72%とした。720時間の
試験後、試験体部分を周波数25MHz の超音波で探傷
し、割れ位置を決定した後、割れ部分を切り出し、液体
窒素中で破面を現出した。
割れの破面を観察して割れの発生起点を観察した。実機
で製造したX60からX70グレードの種々のUOEラ
インパイプについて溶接部から溶接線に垂直に厚さ、
幅、長さが10×100×400の試験片を作製した。
この短冊状試験片を引張治具に取り付け、NACE規格
TM0177−90methodAに従う試験を行った。負荷
応力は規格最小降伏応力の72%とした。720時間の
試験後、試験体部分を周波数25MHz の超音波で探傷
し、割れ位置を決定した後、割れ部分を切り出し、液体
窒素中で破面を現出した。
【0010】その結果、Caによる硫化物の形態制御が
十分に行われていない場合、比較的大きな割れが生じ、
割れは伸長したMnSを起点とすることが判明した。そ
こで、本発明者は軟化部の硫化物応力割れを防止するに
は、まず、硫化物の形態制御を十分に行うことが必要で
あると考えた。実機で製造したX60からX70グレー
ドの種々のUOEラインパイプについて調査した結果、
硫化物の形態制御を十分に行うために必要なCa量に関
して、(1)式を満足することが必要であることを知見
した。
十分に行われていない場合、比較的大きな割れが生じ、
割れは伸長したMnSを起点とすることが判明した。そ
こで、本発明者は軟化部の硫化物応力割れを防止するに
は、まず、硫化物の形態制御を十分に行うことが必要で
あると考えた。実機で製造したX60からX70グレー
ドの種々のUOEラインパイプについて調査した結果、
硫化物の形態制御を十分に行うために必要なCa量に関
して、(1)式を満足することが必要であることを知見
した。
【数4】
【0011】また、Caによる硫化物の形態制御が十分
に行われている場合、比較的小さな割れが生じ、割れの
起点は多くの場合、群状に存在するCaO,Al2 O3
またはこれらを主体とする複合酸化物であり、その群の
圧延面内で圧延直角方向の幅は200μmを超えること
が判明した。そこで、本発明者は硫化物応力割れが生じ
なかった軟化部について、さらに電解水素チャージを行
い、強制的に水素割れを起こしその破面を観察し、NA
CE規格試験で割れが生じなかった部位では、酸化物の
群幅が200μm以下であるということを知見するに至
った。以上の事実に基づき、後述する理由で化学成分を
限定した上で、上記の条件が満足されれば、溶接部の耐
硫化物応力割れ性に優れたAPIグレードX60からX
70の高強度UOEラインパイプの製造が可能であると
いう結論を得た。
に行われている場合、比較的小さな割れが生じ、割れの
起点は多くの場合、群状に存在するCaO,Al2 O3
またはこれらを主体とする複合酸化物であり、その群の
圧延面内で圧延直角方向の幅は200μmを超えること
が判明した。そこで、本発明者は硫化物応力割れが生じ
なかった軟化部について、さらに電解水素チャージを行
い、強制的に水素割れを起こしその破面を観察し、NA
CE規格試験で割れが生じなかった部位では、酸化物の
群幅が200μm以下であるということを知見するに至
った。以上の事実に基づき、後述する理由で化学成分を
限定した上で、上記の条件が満足されれば、溶接部の耐
硫化物応力割れ性に優れたAPIグレードX60からX
70の高強度UOEラインパイプの製造が可能であると
いう結論を得た。
【0012】次に本発明における成分限定理由を述べ
る。Cは、強化元素であるため、所望の強度を得るため
に0.03%以上とする。一方、多量に添加すると、ラ
インパイプの母材、溶接部の硬度が高くなり、靭性が低
下することに加え、硫化水素環境中では、硫化物応力割
れが生じやすくなるため0.09%以下とする。
る。Cは、強化元素であるため、所望の強度を得るため
に0.03%以上とする。一方、多量に添加すると、ラ
インパイプの母材、溶接部の硬度が高くなり、靭性が低
下することに加え、硫化水素環境中では、硫化物応力割
れが生じやすくなるため0.09%以下とする。
【0013】Siは脱酸元素であり、0.1%未満で
は、十分な脱酸力が得られないため、また、0.6%を
超えると鋼を脆化させるため0.1〜0.6%とする。
Mnは、硫化物応力割れの発生起点となるMnSを形成
するとともに、鋼の脆化を促進するPと共偏析して、割
れの伝播、進展を助長するので、Mnの添加量は、でき
るだけ低い方が望ましい。しかし、Mnは強度、靭性を
得る上で、不可欠の元素であるため、X60からX70
のラインパイプの強度を得るため、1.1〜1.5%と
する。
は、十分な脱酸力が得られないため、また、0.6%を
超えると鋼を脆化させるため0.1〜0.6%とする。
Mnは、硫化物応力割れの発生起点となるMnSを形成
するとともに、鋼の脆化を促進するPと共偏析して、割
れの伝播、進展を助長するので、Mnの添加量は、でき
るだけ低い方が望ましい。しかし、Mnは強度、靭性を
得る上で、不可欠の元素であるため、X60からX70
のラインパイプの強度を得るため、1.1〜1.5%と
する。
【0014】Pは偏析により硫化物応力割れの伝播を起
こしやすくする元素で、低い方が望ましく、0.015
%を上限とする。SはMnと結びついて硫化物応力割れ
の発生起点であるMnSを形成するため、極力低い方が
望ましい。耐割れ性を安定して得る観点から、0.00
10%を上限とする。
こしやすくする元素で、低い方が望ましく、0.015
%を上限とする。SはMnと結びついて硫化物応力割れ
の発生起点であるMnSを形成するため、極力低い方が
望ましい。耐割れ性を安定して得る観点から、0.00
10%を上限とする。
【0015】Nbは圧延組織の細粒化、焼入性の向上と
析出硬化のため0.010%以上添加するが、0.05
0%を超えて添加しても多量に添加する効果は小さく、
むしろ、粗大な炭化物を形成して耐水素誘起割れ性を低
下するので、0.05%を上限とする。Alは脱酸元素
として重要であるが、多量に添加すると鋼を汚染し、ま
た靭性を低下させるので、0.005%から0.04%
とする。
析出硬化のため0.010%以上添加するが、0.05
0%を超えて添加しても多量に添加する効果は小さく、
むしろ、粗大な炭化物を形成して耐水素誘起割れ性を低
下するので、0.05%を上限とする。Alは脱酸元素
として重要であるが、多量に添加すると鋼を汚染し、ま
た靭性を低下させるので、0.005%から0.04%
とする。
【0016】CaはMnS等の硫化物系介在物の形状を
制御するために、0.002%以上添加するが、多量に
添加すると鋼が汚染されるので0.004%以下とす
る。Ti添加量の下限0.005%は、微細なTiNを
形成し、ミクロ組織の細粒化が期待される最小量であ
り、上限はTiCによる靭性低下が起きない条件から
0.025%とする。
制御するために、0.002%以上添加するが、多量に
添加すると鋼が汚染されるので0.004%以下とす
る。Ti添加量の下限0.005%は、微細なTiNを
形成し、ミクロ組織の細粒化が期待される最小量であ
り、上限はTiCによる靭性低下が起きない条件から
0.025%とする。
【0017】本発明では、上記元素に加えてV,Ni,
Cu,Cr,Moの一種または二種以上を添加する。V
は強化元素として0.01%以上添加し、過剰に添加す
ると靭性を低下させるので0.1%以下とする。Ni,
Cu,Cr,Moはいずれも鋼の焼入性を増大し、強度
を増加する必要がある場合にそれぞれ0.1%以上添加
するが、過度の添加により低温変態生成物が形成され靭
性及び耐水素誘起割れ性が損なわれるので、それぞれ、
1.0%、1.0%、1.0%、0.5%を上限とす
る。
Cu,Cr,Moの一種または二種以上を添加する。V
は強化元素として0.01%以上添加し、過剰に添加す
ると靭性を低下させるので0.1%以下とする。Ni,
Cu,Cr,Moはいずれも鋼の焼入性を増大し、強度
を増加する必要がある場合にそれぞれ0.1%以上添加
するが、過度の添加により低温変態生成物が形成され靭
性及び耐水素誘起割れ性が損なわれるので、それぞれ、
1.0%、1.0%、1.0%、0.5%を上限とす
る。
【0018】本発明は、上記成分を有するラインパイプ
に関して、比較的大きな硫化物応力割れの原因となる伸
長したMnSの生成を防止するため、硫化物の形態制御
を十分に行うのに必要な条件である式(1)に従いCa
添加量を調整する。
に関して、比較的大きな硫化物応力割れの原因となる伸
長したMnSの生成を防止するため、硫化物の形態制御
を十分に行うのに必要な条件である式(1)に従いCa
添加量を調整する。
【数5】
【0019】また、本発明では、比較的小さな硫化物応
力割れの原因となる群状に存在するCaO,Al2 O3
またはこれらを主体とする複合酸化物の群の幅を200
μm以下に制限して優れた溶接部の耐硫化物応力割れ性
を付与する。これらの条件は、鋼管の母材の耐硫化物応
力割れ性を得るためにも十分な条件である。
力割れの原因となる群状に存在するCaO,Al2 O3
またはこれらを主体とする複合酸化物の群の幅を200
μm以下に制限して優れた溶接部の耐硫化物応力割れ性
を付与する。これらの条件は、鋼管の母材の耐硫化物応
力割れ性を得るためにも十分な条件である。
【0020】
【実施例】表1に化学成分を示す鋼を溶製し、連続鋳造
でスラブを製造し、厚板圧延を実施後、UOE鋼管に造
管した。鋼管のサイズは、外径が約30インチ、管厚が
約20mmで、各鋼管は成分により異なるがAPI規格X
60からX70を満足する。シーム溶接部から溶接線に
垂直方向にNACE規格TM0177−90methodAに
従う試験片を、シーム溶接部から180°離れた鋼管の
母材部より同様の試験片を作製した。同規格に従い定荷
重試験を実施し、720時間後に試験片が破断しない限
界の応力(σth)を求めた。結果を表2に示す。σthを
鋼管の規格最小降伏応力、SMYSで規格化しσth/S
MYS≧0.8をもって、優れた耐硫化物応力割れ性を
有すると判断した。
でスラブを製造し、厚板圧延を実施後、UOE鋼管に造
管した。鋼管のサイズは、外径が約30インチ、管厚が
約20mmで、各鋼管は成分により異なるがAPI規格X
60からX70を満足する。シーム溶接部から溶接線に
垂直方向にNACE規格TM0177−90methodAに
従う試験片を、シーム溶接部から180°離れた鋼管の
母材部より同様の試験片を作製した。同規格に従い定荷
重試験を実施し、720時間後に試験片が破断しない限
界の応力(σth)を求めた。結果を表2に示す。σthを
鋼管の規格最小降伏応力、SMYSで規格化しσth/S
MYS≧0.8をもって、優れた耐硫化物応力割れ性を
有すると判断した。
【0021】表2に示すように、本発明に従う条件で
は、いずれの場合も溶接部、母材ともσth/SMYS≧
0.80%であり優れた耐硫化物応力割れ性が得られ
た。しかし、比較例1では式(1)の値が、比較例2で
はCa量と式(1)の値が、比較例3ではS量と式
(1)の値が、比較例4では酸化物の群の幅が、比較例
5ではCa量と酸化物の群の幅が、比較例6ではAl量
と酸化物の群の幅が本発明の範囲を逸脱するために、そ
れぞれ耐硫化物応力割れ性が低下することが明らかであ
る。
は、いずれの場合も溶接部、母材ともσth/SMYS≧
0.80%であり優れた耐硫化物応力割れ性が得られ
た。しかし、比較例1では式(1)の値が、比較例2で
はCa量と式(1)の値が、比較例3ではS量と式
(1)の値が、比較例4では酸化物の群の幅が、比較例
5ではCa量と酸化物の群の幅が、比較例6ではAl量
と酸化物の群の幅が本発明の範囲を逸脱するために、そ
れぞれ耐硫化物応力割れ性が低下することが明らかであ
る。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明により、湿潤な硫化水素環境にお
いて優れた溶接部の耐硫化物応力割れ性を有する、AP
IグレードX60からX70のラインパイプが得られる
ため、工業的効果は著しく大きい。
いて優れた溶接部の耐硫化物応力割れ性を有する、AP
IグレードX60からX70のラインパイプが得られる
ため、工業的効果は著しく大きい。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、 C :0.03〜0.09%、 Si:0.1〜0.6%、 Mn:1.1〜1.5%、 P :0.015%以下、 S :0.0010%以下、 Nb:0.010〜0.050%、 Al:0.005〜0.03%、 Ca:0.002〜0.004%、 Ti:0.005〜0.025% を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、かつ下
記の(1)式を満足し、かつ群状に存在するCaO,A
l2 O3 またはこれらを主体とする複合酸化物の群の幅
が200μm以下であることを特徴とする溶接軟化部の
耐硫化物応力割れ性に優れた高強度UOEラインパイ
プ。 【数1】 - 【請求項2】 重量%で、 C :0.03〜0.09%、 Si:0.1〜0.6%、 Mn:1.1〜1.5%、 P :0.015%以下、 S :0.0010%以下、 Nb:0.010〜0.050%、 Al:0.005〜0.03%、 Ca:0.002〜0.004%、 Ti:0.005〜0.025% を含有し、 V :0.01〜0.1%、 Ni:0.1〜1.0%、 Cu:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%、 Mo:0.1〜0.5% の一種または二種以上を含有し、残部が鉄及び不可避不
純物からなり、かつ下記の(1)式を満足し、かつ群状
に存在するCaO,Al2 O3 またはこれらを主体とす
る複合酸化物の群の幅が200μm以下であることを特
徴とする溶接軟化部の耐硫化物応力割れ性に優れた高強
度UOEラインパイプ。 【数2】
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7477793A JPH06287683A (ja) | 1993-03-31 | 1993-03-31 | 溶接軟化部の耐硫化物応力割れ性に優れた高強度uoeラインパイプ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7477793A JPH06287683A (ja) | 1993-03-31 | 1993-03-31 | 溶接軟化部の耐硫化物応力割れ性に優れた高強度uoeラインパイプ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06287683A true JPH06287683A (ja) | 1994-10-11 |
Family
ID=13557067
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7477793A Withdrawn JPH06287683A (ja) | 1993-03-31 | 1993-03-31 | 溶接軟化部の耐硫化物応力割れ性に優れた高強度uoeラインパイプ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06287683A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109295289A (zh) * | 2018-09-20 | 2019-02-01 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种减轻抗硫化氢腐蚀用薄钢板带状组织的方法 |
-
1993
- 1993-03-31 JP JP7477793A patent/JPH06287683A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109295289A (zh) * | 2018-09-20 | 2019-02-01 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种减轻抗硫化氢腐蚀用薄钢板带状组织的方法 |
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Legal Events
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