JPH06287537A - 高温使用経過時間表示体 - Google Patents

高温使用経過時間表示体

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JPH06287537A
JPH06287537A JP19271093A JP19271093A JPH06287537A JP H06287537 A JPH06287537 A JP H06287537A JP 19271093 A JP19271093 A JP 19271093A JP 19271093 A JP19271093 A JP 19271093A JP H06287537 A JPH06287537 A JP H06287537A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 芳香剤、消臭剤、害虫忌避剤、殺虫剤、殺ダ
ニ剤、殺菌剤、防虫剤等の比較的高温度条件下で使用す
るものであって、剤型上、終点識別が困難であって使用
有効期間が限られた商品に容易に適用でき、また商品の
有効期間に対応してその使用経過時間量、終点あるいは
使用期限超過を色調変化あるいは色調変化を含む図形変
化により比較的正確に目視判別できる高温使用経過時間
表示体を提供する。 【構成】 染料被移行高分子物質部を構成する内側円盤
状成型物2と、その周囲に配された染料含有高分子物質
から成る外側リング状成型物1とから形成されている。
このインジケーターをある特定の使用温度条件下におく
と、外側リング状成型物1に含有されている移行性染料
が、経時的に徐々に内側円盤状成型物2の中心に向って
移行進行し、その進行距離により使用経過時間を認知で
き、また内側円盤状成型物が完全に色調変化した時点を
終点とするように設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、比較的高温度条件下で
の使用経過及びその終点あるいはさらに使用期限超過を
色調変化あるいは色調変化を含む図形変化により視覚的
に認知できる使用経過時間表示体に関するものであり、
さらに詳しくは、芳香剤、消臭剤、忌避剤、殺虫剤、殺
ダニ剤、殺菌剤、防虫剤等で比較的高温で使用するもの
であって、剤型上、商品の終点識別が困難なものに適用
して、使用経過時間及び終点又は終点と使用期限超過を
容易に知ることのできる高温使用経過時間表示体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、色調変化を利用するタイムイ
ンジケーターとしては種々のものが提案されている。そ
れらは、中和反応、還元反応等の化学反応によって色調
変化を伴う指示薬を利用するものであったり、大気中の
2 ガス、CO2 ガスとの接触により色調変化を生じる
指示薬を利用するもの、あるいは、電子供与性呈色性有
機化合物の呈色を利用するもの、有機溶剤の揮散により
色調変化するもの等、多種多様である。
【0003】例えば、実公昭61−42895号公報に
おいては、気化性又は溶出性の活性薬剤を含有する樹脂
成型物と、実質的に透明で、不活性な薬剤が飽和溶解度
以上に分散されている非活性樹脂成型物との間に不透明
層を有する三層構造物であって、経時に不活性薬剤が気
化又は溶出して、非活性樹脂成型物が透明になったと
き、該透明樹脂層を介して不透明層が透視され、それに
より活性薬剤の消滅が間接的に表示されるようにしたも
のが提案されている。また、特開平1−161081号
公報においては、色素の有機溶媒溶液を基材に塗布、含
浸または滴下により保持させ、経時による有機溶媒の揮
散によって色調変化を生じさせるタイムインジケーター
が提案されている。しかしながら、上記のようなタイム
インジケーターにおいては、非活性薬剤の気化又は溶
出、あるいは有機溶媒の揮散は、徐々に進行し、呈色の
しかたも徐々に進行するため、使用経過時間量や終点の
認識が難しいという問題があった。また、使用開始前は
完全密封し、非活性薬剤や有機溶媒が開放されないよう
にする必要があり、そのため使用時に開封する手間がか
かり、またコスト高となる欠点があった。
【0004】特公昭62−44590号公報には、加熱
により経時的に無色又は淡色から濃色を呈する電子供与
性呈色性有機化合物と、加熱により融解蒸発又は昇華す
る色素と、酸性基を有する樹脂を共存させ、加熱経時に
より色調変化させる加熱時間経過表示体が記載されてい
る。しかしながら、この加熱時間経過表示体において
は、加熱時に色素の大部分を融解蒸発又は昇華させるた
め、他の物質や周囲環境を汚染するという問題があり、
さらに電子供与性呈色性化合物の呈色においても、それ
ぞれ徐々に進行するため、使用経過時間量を認識するこ
とが難しいという問題があった。
【0005】また、特開平1−147391号公報及び
特開平1−150883号公報には、容器中に高粘性液
体又はゲル状物質を封入し、該容器の一部に染色物質を
局在させた期間経過表示体、あるいはさらに、上記容器
内物質中に染色物質と酸化還元反応を起こし得る物質を
含有させ、さらに染色物質として酸化還元反応によって
消色しうる色剤を用いた期間経過表示体が記載されてい
る。上記期間経過表示体は、基本的には、高粘性液体又
はゲル状物質を充填・封入した筒状の容器本体と、染色
物質を充填しキャップで密封した蓋体とから構成され、
使用開始時に容器本体を切断し、この切断口に上記キャ
ップを外した蓋体を嵌合して用いるものであるため、使
用開始時の装着操作が面倒で、また部品点数も多く、コ
スト高になるという問題があった。
【0006】さらに、特開昭60−151578号公報
には、易マイグレーション性染料を合成樹脂表面に印刷
したものにおいて、温湿度やその他の条件により有効期
間が変化しないで安定して経時による色の発色又は退色
(消色)を行なわせる時間経過表示体が提案されてい
る。しかしながら、この時間経過表示体は、製造直後か
ら経時的に易マイグレーション性染料の移行に伴なう発
色又は退色が起こるため、製造時からの有効期限を表示
するのには適するが、使用開始時からの経過時間を表示
するには適さず、商品流通段階で既に染料移行により色
調変化を生じてしまうという問題があった。また、耐熱
性・耐薬品性(耐溶剤性)の面から印刷体が剥離する等
の問題もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来技
術の多くは、部品構造上、製造工程が多かったり、部品
点数(原材料種)が多く、使用性やコスト的に問題があ
り、あるいは、使用経過時間量を認識できないものや終
点が判別しにくいものであったりして、満足のいくもの
ではなかった。特に、芳香剤、消臭剤、害虫忌避剤、殺
虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、防虫剤等で比較的高温に加熱
して使用するものであって、剤型上、終点識別が困難で
使用有効期間が限られた製品に適用することは困難であ
ったり、あるいはその高温使用時における経過時間量及
び終点を正確に目視判別することは困難であった。
【0008】従って、本発明の目的は、剤型上、使用経
過時間量及び終点の識別が困難なものに適用して、商品
の有効期間に対応して数時間から長期間に亘る使用経過
時間量及び終点あるいは使用期限超過を明瞭に表示する
ことが可能であると共に、高温使用時までインジケータ
ー機能が発現しない使用経過時間表示体であって、しか
も低コストで、保管及び使用方法が簡単なものを提供す
ることにある。さらに本発明の目的は、比較的高温(例
えば40℃〜450℃の発熱体を利用)に加熱して薬剤
を加熱揮散させる場合においても、薬剤の揮散に対応
(温度に対応)して使用経過時間量及び終点あるいはさ
らに使用期限超過を明瞭に表示することができる使用経
過時間表示体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明によれば、加熱により経時的に高分子物質中
を移行する少なくとも1種の移行性染料を含有する高分
子組成物と、上記染料が移行することにより色調変化を
示す染料被移行高分子組成物を組み合わせてなる高温使
用経過時間表示体(以下、単にインジケーターと称す)
が提供される。好適な態様においては、上記染料含有高
分子組成物及び/又は染料被移行高分子組成物中に染料
移行制御添加剤を含有せしめ、染料の移行性を制御する
ことにより、対象とする種々の商品の使用有効期間に対
応させて使用経過時間量及び終点あるいは使用期間超過
をより正確に識別できるように制御することができる。
【0010】
【発明の作用及び態様】本発明のインジケーターは、商
品の用途に応じて使用経過時間及び終点あるいはさらに
使用期限超過の表示を行うが、その経過は、商品使用時
の環境、特に温度に対応して変化する。温度は、商品の
有効期間とかなり密接した関係を持ち、例えば、加熱蒸
散性殺虫剤や防虫剤のように薬剤を蒸散させて使用する
形態の商品などは、特に使用する温度条件によって商品
の有効期間が左右される。同様に有効期間が温度に大き
く依存している商品は多種多様である。
【0011】本発明者らは、商品の使用温度における使
用有効期間に対応させて使用経過時間を表示することに
着目し、高分子物質を基材とし、加熱により経時的に高
分子物質中を移行する少なくとも一種の移行性染料を含
有させ、比較的高温度条件下での使用時に該移行性染料
が上記染料含有高分子物質と接する高分子物質中へ移行
する性質を利用することにより、使用有効期間の温度依
存性が大きい商品の使用温度条件に対応した使用経過時
間及び終点あるいはさらに使用期限超過の表示をより正
確に行えることを見い出し、本発明を完成するに至った
ものである。すなわち、基本的な機能を述べるとする
と、本発明のインジケーターは、少なくとも1種の移行
性染料を含有する高分子物質を該移行性染料を含有しな
い又は含有率の低い高分子物質と密着、熔着、圧着、あ
るいは接着等により接触させたものであり、比較的高温
の使用環境温度下におくことにより、該接触面より移行
性染料が経時的に該移行性染料を含有しない高分子物質
中に移行し、色の発色又は退色(消色)を行わせて、使
用経過時間を色調変化あるいは色調変化による図形変化
により知らしむるものである。なお、本発明のインジケ
ーターは、積極的に加熱して使用する商品のみでなく、
比較的高温度条件下で使用される商品の使用経過時間及
び終点あるいは使用期限超過の表示にも用いることがで
きる。
【0012】上記のように、本発明のインジケーター
は、熱を受けることによって使用を開始するように設定
している。したがって、移行性染料を含有する高分子物
質と、該染料の移行を受け入れる高分子物質を製造時か
ら接触させておいても、商品流通段階等の使用開始前に
は染料の移行が開始しないインジケーターが提供でき、
しかも、高温度条件下においてのみインジケーター機能
が開始され、使用者がわざわざインジケーターの開始操
作(従来のインジケーターのように異なる部材の装着操
作等)をする必要もない。
【0013】また、本発明のインジケーターは、適用す
る商品の用途(使用温度、有効期間等)に応じて、移行
性染料の種類及び含有量、高分子物質の種類及び形状等
を任意に設定し、また、高分子物質中に各種染料移行制
御添加剤(例えばフィラー、酸化防止剤、紫外線吸収
剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等、あるいはこ
れらをマイクロカプセル化したもの等)を添加すること
により、染料の移行性を任意に制御することができる。
さらに、高分子物質中に複数の移行性染料を含有させた
り、非移行性の染料や有機顔料、無機顔料等を含有させ
て、染料移行の識別性を向上させたり、商品のデザイン
性(装飾性)を向上させることも可能である。
【0014】本発明のインジケーターにおける染料移行
の態様としては、以下のような種々の態様を採用できる
が、これらに限定されるものではない。基本的な構成と
しては、少なくとも1種の移行性の染料を含有する高分
子物質[1]を該移行性染料を含有しない又は含有率の
低い高分子物質[2]と接触させ、使用開始とともに移
行性染料が経時的に該移行性染料を含有しない高分子物
質中へ接触面を介して移行し、色の発色又は退色(消
色)を行わせるものである。接触方法としては、嵌合、
ネジ込み、無り嵌め込み、溶着、あるいは接着(貼り付
け)等任意であり、その構造も任意に選択・設計でき
る。
【0015】また、染料の移行形態に関しても任意であ
り、移行性染料の移行例として以下のような形態を例示
できる。(イ)1種類の移行性染料を含有する高分子物
質[1]から移行性染料を含有しない又は含有率の低い
高分子物質[2]へ該移行性染料が移行するもの、
(ロ)色調が異なる複数の移行性染料が高分子物質
[1]から高分子物質[2]へ移行するもの、(ハ)互
いに色調の異なる移行性染料をそれぞれ含有する高分子
物質[1]及び[1′]間で、相互へ移行性染料が移行
するもの、(ニ)上記(イ)〜(ハ)において、高分子
物質[1]及び/又は[1′],[2]に非移行性の染
料又は顔料を含有させて、移行具合の識別性を良好にし
たり、色彩性を豊かにしたもの、(ホ)上記(イ)〜
(ニ)において、高分子物質[1]及び/又は
[1′],[2]に少なくとも1種の染料移行制御添加
剤を含有させ、移行性を制御したもの、(ヘ)上記
(イ)〜(ホ)において、相接する高分子物質[1],
[1′]及び[2]の材質を異なるものとし、相互間で
の移行性染料の吸着性、相溶性等を異にしたもの等、種
々の移行形態をとることができる。
【0016】上記(ロ)の移行形態においては、例え
ば、色調の異なる複数の移行性染料で移行難易性が異な
るものを使用することにより、まず使用開始とともに一
方(移行しやすい方)の染料が高分子物質[2]へ移行
して色調を変化させ、経時的に他方(移行しにくい方)
の染料が徐々に移行進行してさらに色調を変化させてい
くことで、使用開始と、使用経過時間及び終点あるいは
さらに使用期限超過を識別できるようにすることもでき
る。上記(ホ)の移行形態においては、例えば染料被移
行高分子物質側だけに染料移行制御添加剤を含有させる
場合も含まれる。これらの染料移行制御添加剤のうち、
添加剤の融点が使用環境温度以下であるとき、染料移行
性は大きくなる傾向にあり、さらに染料移行部分への拡
散性が良好で、染料移行境界、即ち染料既移行部と未移
行部間での染色濃度勾配が大きく、経過時間量の識別性
も向上する。また、上記(ヘ)の移行形態の如く、高分
子物質[1]と[1′]及び[2]の材質を異種にする
ことにより、染料移行完了時の染色濃度に差が生じた
り、一方だけに染料が集中して、他方が退色したように
見せることも可能である。例えば、ポリプロピレンとポ
リウレタン材質の如き組合わせである。
【0017】本発明で用いる移行性染料としては、ある
特定の使用温度において高分子物質中を移行し易い性質
を有するものであればよく、より好ましくは、高分子物
質中に含有させたとき、使用する特定温度における昇華
または融解蒸発による汚染が少ない、又は無いことが望
ましい。移行性染料としては、油溶性、アルコール溶性
のものが中心で油溶性染料、分散染料、塩基性染料の一
部等が挙げられる。
【0018】移行性染料の具体例としては、アントラキ
ノン系油溶性染料として、1,4−ジプロピルアミノア
ントラキノン、1,4−ジブチルアミノアントラキノ
ン、1,4−ジオクチルアミノアントラキノン、1,4
−ジイソプロピルアミノアントラキノン、1−メチルア
ミノ−4−メタトリルアミノアントラキノン等の1,4
−ジアミノアントラキノン類、さらに1,6−ジアミノ
アントラキノン類等が挙げられる。
【0019】また、モノアゾ系油溶性染料として、2−
ヒドロキシナフタレン−1−アゾ−(2′,4′−ジメ
チルベンゼン)、4−ジメチルアミノアゾベンゼン、2
−アミノナフタレン−1−アゾ−(2′−メチルベンゼ
ン)、2−ヒドロキシナフタレン−1−アゾ−(2′−
メチルベンゼン)、2−ヒドロキシナフタレン−1−ア
ゾベンゼン、2−ヒドロキシ−1−フェニルピラゾール
−4−アゾベンゼン、4−ジエチルアミノアゾベンゼ
ン、2,4−ジヒドロキシアゾベンゼン、2−ヒドロキ
シナフタレン−1−アゾ−(2′−メチルベンゼン)、
2−ヒドロキシナフタレン−1−アゾ−(2′−メトキ
シベンゼン)、4−ヒドロキシナフタレン−1−アゾ−
(4′−エトキシベンゼン)、4−アミノ−1,1′−
アゾナフタレン、4−ヒドロキシ−1,1′−アゾナフ
タレン、2−アミノナフタレン−1−アゾベンゼン、
C.I.ソルベント・イエロー61、C.I.ソルベン
ト・イエロー80等が挙げられる。
【0020】また、ジスアゾ系油性染料として、2−ヒ
ドロキシナフタレン−1−アゾ−1′−ベンゼン−4′
−アゾベンゼン、2−ヒドロキシナフタレン−1−アゾ
−1′−(2′−メチルベンゼン)−4′−アゾ−
(2″−メチルベンゼン)、2−ヒドロキシナフタレン
−1−アゾ−1′−(3′−メチルベンゼン)−4′−
アゾ−(3″−メチルベンゼン)、2−ヒドロキシナフ
タレン−1−アゾ−1′−(2′,3′−ジメチルベン
ゼン)−4′−アゾ−(2″,3″−ジメチルベンゼ
ン)、ビス[2−ヒドロキシナフタレン−1−アゾ−
4′−(3′−メトキシフェニル)]−フェニルメタ
ン、C.I.ソルベント・オレンジ14、C.I.ソル
ベント・レッド18等、トリアリルメタン系油性染料と
してC.I.ソルベント・バイオレット8、C.I.ソ
ルベント・ブルー2等、ナフタルイミド系油性染料とし
てN−ブチル−4−ブチルアミノナフタルイミド等が挙
げられ、その他、C.I.ソルベント・レッド109等
が挙げられる。さらに、アントラキノン系分散染料とし
てC.I.ディスパース・ブルー56等、塩基性染料と
してC.I.ベーシック・バイオレット10等が挙げら
れ、これらを適宜選択して用いることができる。
【0021】本発明のインジケーターは、これらの移行
性染料を製造時に高分子物質中に含有させ、これを染料
被移行高分子物質と組み合わせることによって得られ、
染料の移行速度及び移行距離は、前述した染料の種類及
び含有量によって異なるが、高分子物質の種類によって
も大きく影響される。高分子物質としては、例えばポリ
プロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂、シリコー
ン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレー
ト樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられ、使用する目
的に応じて、染料の移行性が良好で、使用に応じた耐熱
性、耐薬品性を有するものが使用できる。移行性染料の
移行速度(距離)は、染料分子構造と高分子物質の構造
によって左右され、高分子物質中での染料の相溶性・吸
着性に影響される。つまり、高分子物質の重合構造、分
子量、共重合物や添加物の有無やその種類等によって染
料の移行性は異なる。例えば、同一の染料を用いた場
合、ポリエチレンの中でも、高密度ポリエチレン(HD
PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)間では一般に
HDPEよりもLDPEの方が移行性は大であるし、プ
ロピレン単独重合体(Homo)よりもエチレン−プロ
ピレン共重合体(B−Co)の方が一般に移行性が大で
ある。
【0022】次に、高分子物質中の染料移行制御添加剤
について述べる。ここでいう染料移行制御添加剤とは、
染料の移行性に影響を与えるもので、染料移行性を助長
したり、抑制したり、又は染料移行の境界を明瞭にする
ため等の目的で用いられるもので、高分子物質中に含有
させることが可能なものである。添加剤としては、フィ
ラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑
剤、滑剤、難燃剤等、あるいはこれらをマイクロカプセ
ル化したもの等が挙げられる。
【0023】具体的には、酸化防止剤としては、ステア
リル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
フェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス
(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′
−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノー
ル)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチ
ルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチ
ル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス
(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,
5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t
−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,
1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−
t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス−[メチレン
−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキ
シフェニル)プロピオネート]メタン、2−メルカプト
ベンズイミダゾール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)シクロヘキサン、N−フェニル−β−ナフチル
アミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミ
ン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリ
ンポリマー、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−
1,2−ジヒドロキノリン、2−t−ブチル−6−(3
−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)
−4−メチルフェニルアクリレート、3,5−ジ−t−
ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−
ジエチルエステル、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、
トリス[2−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒ
ドロキシヒドロ−シンナモイルオキシル)エチル]イソ
シアヌレート、トリス−(4−t−ブチル−2,6−ジ
メチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、
3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t
−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロ
ピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラ
オキサスピロ[5.5]ウンデカン、ジトリデシル−
3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,
3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′
−チオジプロピオネート、トリエチレングリコール−ビ
ス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキ
シフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオ
ール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサ
メチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキ
シ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレン
ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
フェニル)プロピオネート]、N,N′−ビス[3−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオニル]ヒドラジン、トリス−(3,5−ジ−t
−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレー
ト、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−
ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,
3,5−トリアジン等の化合物が挙げられる。これらの
化合物は、単独でもまた2種以上を組み合わせて混合使
用することもできる。
【0024】紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒド
ロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ
−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2′−ヒ
ドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾー
ル、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェ
ニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−
3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ
ール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリ
レート等の化合物が挙げられる。これらの化合物も、単
独であるいは2種以上を組み合わせて混合使用すること
もできる。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤
は、少量を用いれば染料の移行性に大きな影響を与え
ず、安定剤として添加することもできる。
【0025】その他の染料移行制御添加剤としては、可
塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤等であって、常温にお
いて油状のものや、使用する環境(温度)において油状
になる物質等が含まれ、例えば、フタル酸ジメチル、フ
タル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチ
ル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソ
オクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニ
ル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フ
タル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸エステル類、トリ
メリット酸エステル類、アジピン酸エステル類、アゼラ
イン酸エステル類、セバシン酸エステル類、オレイン酸
エステル類、ステアリン酸エステル類、リン酸エステル
類、オレイン酸アミド類、エルカ酸アミド類、ステアリ
ン酸アミド類、エポキシ化大豆油等のワックス類や、シ
リコーンオイル等が挙げられる。これらの添加剤も、単
独であるいは2種以上を組み合わせて混合使用すること
ができる。
【0026】また、上述した染料移行制御添加剤は、必
要に応じて、各種添加剤を2種以上併用することも可能
である。これらの添加剤のうち、染料の移行性を助長す
るものとしては、染料及び高分子物質との相溶性が良好
で、しかも使用環境下において液状となるものである。
逆に、染料の移行性を抑制する傾向にあるものとして
は、添加剤自体の染料吸着性が高かったり、ガラス繊維
等、染料の染色性を受けにくいものなどである。
【0027】以上、高分子物質中への含有物について述
べたが、それぞれの含有量としては、使用する目的(機
能)によって異なるが、高分子物質に対する重量パーセ
ントで、染料が0.01〜5%、その他の添加剤は0〜
50%程度が好ましい。また、高分子物質中への染料や
その他の添加剤の含有方法は、高分子物質中へ練り込む
方式が、製造も容易で、しかも低コストでできるので有
利である。一般に高分子物質、特に合成樹脂の成型方法
には、射出成型、押出成型、圧縮成型、ブロー成型等が
あるが、製品形状に応じて任意の成型方法を採用でき、
必要に応じて二色成型法やインサート成型法にも対応で
きる。
【0028】次に、本発明のインジケーターの幾つかの
形状例を以下に記すが、これらの形状も、以下に記載の
ものに限定されるものではなく任意であり、製品形状に
合わせて一体に形成することもできる。図1乃至図4
は、円盤状のインジケーターの例を示し、染料被移行高
分子物質部(以下、染料被移行部という)を構成する内
側円盤状成型物2と、その周囲に配された染料含有高分
子物質(以下、染料含有体という)から成る外側リング
状成型物1とから形成されている。このインジケーター
をある特定の使用温度条件下におくと、外側リング状成
型物1に含有されている移行性染料が、図2の中空矢印
及びその断面を示す図4の矢印で示すように、経時的に
徐々に内側円盤状成型物2の中心に向って移行進行し、
その進行距離により使用経過時間を認知でき、また図3
に示すように内側円盤状成型物2が完全に色調変化した
時点を終点とするように設定されている。
【0029】図5は、染料被移行部を平板状に形成し、
さらに平板状染料被移行部表面に使用経過時間が識別し
易いように経過時間量標識を一体に形成した例を示して
いる。すなわち、平板状の染料被移行部5の表面には、
図示のように長手方向に所定間隔をおいて経過時間量を
示す複数の細長い突状の経過時間標識部6及びその中間
時点を示す短い突状の経過時間標識部7が一体に成型さ
れ、さらに細長い突状の経過時間標識部6のそれぞれ対
応する位置に経過時間が、例えば図示の例では10、2
0、30(日)と刻印されている。平板状の染料被移行
部5の一端面には細長い突部が形成され、これが角状の
染料含有体3を収容している箱状の保持部4の一側壁部
に形成されたスリット状の開口部に嵌合され、染料含有
体3と接触している。あるいはまた、角状の染料含有体
3の周囲に配された保持部4を枠状に形成し、この枠状
の保持部4と平板状の染料被移行部5を一体に成型して
もよい。このインジケーターを比較的高温の使用温度条
件下におくと、染料含有体3に含有されている染料は、
平板状の染料被移行部5との接触面を介して図示の中空
矢印の方向に移行し、その移行先端部(染料既移行部と
未移行部間の染料移行境界)が染料被移行部5表面に形
成された各経過時間標識部6、7のどの位置にあるかに
よって使用経過時間を認知できる。なお、終点は、平板
状の染料被移行部5が完全に色調変化した時点に設定す
ることもできるし、あるいは染料移行先端部が最外側の
標識部に達した時点に設定することもでき、この場合、
最外側の標識部に対応する位置に「終わり」又は「FI
NE」の文字を印刷したり、または標識部自体をFIN
Eの図形に突設することもできる。
【0030】また、染料被移行部における移行性染料の
移行境界において経時的に濃度勾配が生じて、境界識別
が不明瞭になるときは、図6及び図7に示すような形状
例が適当である。図6は、染料被移行部の体積を先細と
なるようにしぼり、染料移行先端部の濃度低下を防いで
識別性を向上させた例を示す。すなわち、染料被移行部
9は、円盤状の染料含有体8の周囲に配されたリング状
の保持部10と、該保持部10の一周側から横方向に略
細長い先細の三角形状に突設された平板部11とから一
体に成型されており、該平板部11の表面には長手方向
に所定間隔をおいて複数の小円盤状の経過時間標識部1
2が一体に突設されている。染料移行においては、染料
含有体8に含有されている染料は、初期には染料含有体
8周囲の染料被移行部9の保持部10に移行するが、そ
の後、図示の中空矢印の方向に平板部11先端側に向っ
て移行し、その際、平板部11の断面が先端に向って漸
次小さくなるように形成されているので、染料既移行先
端部内での濃度勾配が小さく、使用経過時間を明瞭に目
視判読することができる。
【0031】図7は、移行性染料が移行しない材質のカ
バーを設けて識別性を向上させた例を示す。染料被移行
部14は、薄い角片状の染料含有体13の周囲に配され
た枠状の保持部15と、該保持部15の一側面から横方
向に突設された細長い平板部16とから一体に成型され
ており、該平板部16の表面には長手方向に所定間隔を
おいて複数の突状の経過時間標識部17が一体に突設さ
れている。一方、カバー18は、上記保持部15に被冠
されるような形状及びサイズの染料含有体カバー部19
と上記細長い平板部16に被冠されるような形状及びサ
イズの平板部カバー部20とから成り、該平板部カバー
部20には上記経過時間標識部17に対応する位置及び
サイズの開口部21が形成されている。上記カバー18
をインジケーターに被冠すると、インジケーターの経過
時間標識部17がカバーの開口部21を通して露出され
る。従って、染料含有体13に含有されている染料が染
料被移行部14に移行するに伴なって、経過時間標識部
17の色調変化のみがカバーの開口部21を通して目視
されるので、使用経過時間を明瞭に認識できる。なお、
カバー18のそれぞれの開口部21の位置に対応する経
過時間を印刷したり、また経過時間標識部17の色調変
化をより明瞭に識別できるようにカバー18を着色する
こともできる。
【0032】図8及び図9は、相接した高分子物質の材
質を異種なものとし、染料移行完了時、つまり終点にお
いて、FINE文字外わくが退色し、FINE文字が浮
き上がって見える例を示す。本例の場合、下部プレート
23の表面には「FINE」の突状文字図形部分24が
一体に突設されており、一方、上部プレート22には上
記文字図形部分に対応する図形状孔部が形成され、この
図形状孔部に上記下部プレート23表面の「FINE」
突状文字図形部分24を嵌め込んで一体に組み立てられ
ている。上記上部プレート22及び下部プレート23の
両方に染料が含有され、使用前には図8に示すように全
体的に着色されており、「FINE」の文字が識別困難
であるが、例えば上部プレート22をポリプロピレン
で、下部プレート23及びその表面に突設された「FI
NE」の文字図形部分を染料の相溶性、吸着性に優れる
ポリウレタンで作製することにより、これを比較的高温
の使用温度条件下におくと、含有されている染料がポリ
ウレタン材質の下部プレート23及び「FINE」の文
字図形部分24に集中移行し、終点においては、図9に
示すように、上部プレート22が完全に退色し、「FI
NE」の文字が浮き上がって見えるようになる。
【0033】本発明のインジケーターは、用途によって
は製品と別体に又は製品に装着して使用することも可能
であるが、容易に製品の一部分として一体に設けること
もできる。例えば、発熱体により薬剤含浸体を加熱して
薬剤を蒸散させる製品において、該薬剤含浸体の保護カ
バーに本発明のインジケーターを一体に設けた例を図1
0及び図11に示す。図10は発熱体上に載置して加熱
使用する形態の製品を部品毎に分解した図を示し、その
組立体の断面図を図11に示す。該製品は、加熱により
蒸散する薬剤を含有する薬剤含浸体32と、上壁中央部
に薬剤蒸散孔34を有するキヤップ状の上部安全カバー
33と、インジケーター機能を有する下部安全カバー2
5とから構成されている。下部安全カバー25は、円盤
状の染料被移行プレート31とその周囲に配されたリン
グ状の染料含有環状体26とから成る。該染料含有環状
体26の周囲には4箇所対称的に台座部27が一体に形
成され、かつ該台座部27の内側には上下面に小円盤状
の突部29及び30がそれぞれ突設されている。組立て
に当っては、図11に示すように、染料含有環状体25
の上面に突設された突部29を座部として薬剤含浸体3
2を載置し、次いで、上部安全カバー33の側壁下端部
を台座部27の上側部に形成された段差部28に嵌め込
む。このようにして組み立てられた製品を、染料含有環
状体26の下面に突設された突部30を支持部として発
熱体35上に載置し、発熱体35に通電すると、薬剤含
浸体32は下部安全カバー25を介して間接的に加熱さ
れ、含有される薬剤は上部安全カバー33の薬剤蒸散孔
34を通して蒸散される。インジケーター方式は、基本
的には前述した図1と同種の構成を採用しており、加熱
開始とともに、染料含有環状体26に含有されている染
料がその内側に配された円盤状の染料被移行プレート3
1に徐々に移行し、薬剤が蒸散し終える期間に合わせて
染料移行が完了し、中央の染料被移行プレート31全面
が色調変化するように設定されている。また、染料は特
定の温度に達した時点でしか有効な移行を生じず、同様
に薬剤も特定の温度で蒸散する性質を有しているため、
途中で使用を中断したとしても、インジケーターは、終
始薬剤蒸散に対応し、かなり正確な使用経過時間を認知
することができる。
【0034】図12及び図13は、製品の使用有効期間
を終点のみの表示で認知させる形態例を示す。図12に
示す形態例では、染料含有体36の下面から突設された
環状保持部38の内周段差部39に円盤状の染料被移行
プレート40が嵌め込まれているが、染料被移行プレー
ト40の中心部に対応する染料含有体36の部分には開
孔部37が設けられている。使用温度条件下において
は、染料含有体36に含有されている染料は、染料被移
行プレート40の周囲から中心部に向って徐々に移行
し、染料被移行プレート40の中心部が色調変化した時
点が終点となるように設定されている。中空矢印で示す
インジケーター可視方向からは染料被移行プレート40
の部分は中心部のみしか開孔部37を通して見えないた
め、終点のみを認知することができる。一方、図13に
示すインジケーターにおいては、図12に示すインジケ
ーターの終点識別性を向上させるために、染料被移行プ
レート40aの中心部から上方に突部41が突設され、
これが染料含有体36の開孔部37に挿入されるように
構成されている。このインジケーターの場合、上記突部
41の上端面が色調変化した時点が終点となり、より明
瞭に終点のみを認知することができる。
【0035】図14は、加熱により蒸散する薬剤を含有
する薬剤含浸体を、筒状放熱部を有する発熱体に設置し
て薬剤を蒸散させる形態の製品例を示し、インジケータ
ー可視方向に対して使用開始から使用途中段階、終点及
び使用期限超過を表示できるインジケーター機能を有す
る。該製品は、薬剤含浸体44、容器状の外部保護カバ
ー45、及びインジケーター機能を有する内部保護カバ
ー51より構成されている。外部保護カバー45の上板
部46の薬剤含浸体44を嵌挿するための中央孔周縁は
複数箇所切り欠かれて通気孔49が形成されている。ま
た、外部保護カバー45の周壁部47の内周面略中央部
には複数個の爪部50が突設されている。なお、符号4
8は、金型上、爪部50形成に必要な孔である。一方、
内部保護カバー51は、中央部に凹陥部53を有する円
形状の天板部52と、該天板部52から垂下された外筒
体54と上記凹陥部53の中央孔周縁部から垂下された
内筒体55とから成り、内筒体55の内部には上記凹陥
部53に近接する所定高さ位置に中央底板56が配設さ
れており、かつ、外筒体54の内周面には上端から下端
近傍所定位置まで垂直方向に延在する補強リブ57が円
周方向に所定の間隔を置いて複数個形成されている。上
記内部保護カバー51の外筒体54と内筒体55の間に
染料含有環状体59が嵌挿され、その上端縁が上記補強
リブ57の下端に当接するまで嵌め込まれる。なお、5
8は天板部52の周囲を円周方向に所定の間隔を置いて
複数箇所切り欠いて形成された通気孔である。組立てに
当っては、内部保護カバー51を外部保護カバー45の
下部開口部側から挿入する。内部保護カバー51は高分
子物質から作製されているのである程度の弾性を有し、
下側から押し込むことによって容易に外部保護カバー4
5の周壁部47内周面に形成された爪部50を通過で
き、一旦装着されると、上記爪部50がストッパーの役
目を果たし、内部保護カバー51及びその上に配置され
た薬剤含浸体44が下方に落下することはない。このよ
うに外部保護カバー45に内部保護カバー51を装着し
た後、薬剤含浸体44を外部保護カバー45の中央孔か
らその下端が内部保護カバー51の凹陥部53に載置さ
れるまで挿入する。
【0036】使用に際しては、薬剤含浸体44が外部保
護カバー45から突出している部分を発熱体42内周の
筒状放熱部43の内部に挿入して装着し、発熱体42に
通電すると、発熱体42内周の筒状放熱部43で薬剤含
浸体44が加熱される。加熱によって、内部保護カバー
51の通気孔58から外部保護カバー45の通気孔49
を経て発熱体42の筒状放熱部43内部を矢印の方向に
上昇する通気流を生じ、薬剤含浸体44から薬剤が蒸散
される。一方、染料被移行部としての内部保護カバー5
1と染料含有環状体59とから構成されるインジケータ
ーは、発熱体42の余熱により間接的に加熱されて、機
能を開始する。まず、機能開始とともに、図15に示す
状態から、内部保護カバー51の染料含有環状体59に
接触している外筒体54と内筒体55の部分へ向けて染
料が移行し、図16に示すように染料含有環状体保持部
(54,55)が変色する。この状態を中空矢印で示す
ように下方から目視判別することにより、該商品の使用
開始を認知できる。使用経過に伴い、染料移行は徐々に
進行し、商品の使用有効期限に対応して、終点時には、
図17に示すように内部保護カバー中心の中央底板56
が変色し、終点を判別できる。また、終点経過後も使用
すると、更に染料移行が進み、図18に示すように天板
部52外周部まで染料移行による変色が生じ、使用有効
期限超過をも認知することができる。
【0037】
【実施例】以下、実施例を示して本発明のインジケータ
ー及びその染料移行の形態に関して具体的に説明する。
【0038】実施例1 本実施例においては、全て図19に示す形状のインジケ
ーターを用いた。このインジケーターは、図1に示す形
状のインジケーターと同様に、染料被移行部を構成する
内側円盤状成型物[2]と、その周囲に配された染料含
有高分子物質から成る外側リング状成型物[1]とから
形成されており、染料移行の状態の比較のために厚みは
全て1.5mmに設定したが、インジケーター全体の外
径r1 及び内側円盤状成型物[2]の外径(外側リング
状成型物[1]の内径)r2 はそれぞれの例No.にお
いて種々の径に設定された。なお、r3 は染料移行先端
部の径を示し、従って、染色距離Rはr2 −r3 で表わ
される。
【0039】インジケーターの作製: 例No.1 図19に示す形状のインジケーターにおいて、外側リン
グ状成型物[1]及び内側円盤状成型物[2]をそれぞ
れ三井石油化学(株)製ポリプロピレンJ440を用い
て射出成型により成型した。尚、外側リング状成型物
[1]においては、移行性染料であるところの1,4−
ジブチルアミノアントラキノン(以下、D−1という)
を射出成型時に表2に示す配合割合で練り込んで成型し
た。次いで、得られた内側円盤状成型物[2]を外側リ
ング状成型物[1]に無理嵌め込みにより接触保持さ
せ、インジケーターを作製した。
【0040】例No.2〜8 表1に示す種々の添加剤を表2に示す配合割合で、射出
成型時に移行性染料D−1と同時に練り込んだ外側リン
グ状成型物[1]、及び添加剤のみを練り込んだ内側円
盤状成型物[2]を成型した以外は、例No.1と同様
にしてインジケーターを作製した。
【表1】
【0041】例No.9〜15 外側リング状成型物[1]及び内側円盤状成型物[2]
として、それぞれ表2に示すように三井石油化学(株)
製ポリプロピレンJ440(以下、P−1という)、同
社製ポリプロピレンJ700(以下、P−2という)、
同社製ポリエチレンJ519(以下、P−3という)、
同社製ポリエチレンJ2100(以下、P−4とい
う)、及びP−1とP−3の重量比にて1対1の割合の
ブレンド物(以下、P−5という)を用いて射出成型に
より成型したものを用い、また移行性染料の配合割合を
表2に示すように変えた以外は、例No.1と同様にし
てインジケーターを作製した。
【0042】例No.16〜22 高分子物質P−1を主材として、移行性の染料D−1、
C.I.ベーシック・バイオレット10(以下、D−2
という)、C.I.ディスパース・ブルー56(以下、
D−3という)、2−ヒドロキシナフタレン−1−アゾ
−1′−ベンゼン−4′−アゾベンゼン(以下、D−4
という)、2−ヒドロキシナフタレン−1−アゾ−
(2′,4′−ジメチルベンゼン)(以下、D−5とい
う)、2−ヒドロキシナフタレン−1−アゾ−(2′−
メチルベンゼン)(以下、D−6という)、又は2−ヒ
ドロキシナフタレン−1−アゾベンゼン(以下、D−7
という)を表2に示す配合割合で射出成型時に練り込ん
で外側リング状成型物[1]を成型した以外は、例N
o.1と同様にしてインジケーターを作製した。
【0043】例No.23及び24 外側リング状成型物[1]及び内側円盤状成型物[2]
のサイズを表3に示すように変える以外は、例No.9
と同様にしてインジケーターを作製した。
【0044】以上のようにして得られたインジケーター
の組成及び形状について、表2及び表3にまとめて示
す。
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】以上のようにして得たインジケーターを特
定の温度に加熱することにより、外側リング状成型物
[1]に含有されている移行性染料が内側円盤状成型物
[2]中へ、経時的に徐々に移行し、最終的に内側円盤
状成型物[2]が染色を完了する日数、又は単位期間当
たりの染色距離(R)を調査した。染料配合濃度による
染色完了日数を表4に示す。
【表4】
【0047】高分子物質の種類による染色完了日数を表
5に示す。
【表5】
【0048】添加剤の種類による染色距離(R)を表6
に示す。
【表6】
【0049】染料の種類による染色完了日数を表7に示
す。
【表7】
【0050】インジケーター形状(寸法)による染色完
了日数を表8に示す。
【表8】
【0051】さらに、温度による染色完了日数を表9に
示す。
【表9】
【0052】表4、表5、表6に示す結果において、2
5℃では染料の有効な移行染色を認めておらず、本発明
のインジケーターは、特定温度に加熱することにより作
用を開始するインジケーターとして適していることがわ
かる。また、本発明のインジケーターは、染料濃度、高
分子物質の種類及び添加剤の種類によって染料の移行速
度が異なり、同一の染料を用いた場合でも、成型物
[1]及び成型物[2]の形状を変えることなく、イン
ジケーターの表示期間を任意に設定できる。さらに、表
7に示す結果から明らかなように、染料の種類によって
も移行速度が異なり、染料を適宜選択して商品の有効期
間と対応させることができる。つまり、染料の種類と配
合量、高分子物質の種類、及び添加剤の種類と配合量を
適切に組み合わせることにより、同一商品形状で、使用
期間の異なるインジケーターを提供することが可能であ
る。
【0053】さらに、表6に示す結果によれば、添加剤
の配合のみで表示期間を有効に調節できるといえる。例
えば、インジケーターを配設しようとする商品におい
て、耐熱性上あるいは耐薬品性上等の制約により、使用
できる染料の種類や高分子物質の種類が限定される場合
にあっては、添加剤を適宜選択して配合することにより
インジケーターの表示期間を調節できるし、あるいは、
商品開発段階においてインジケーターのおおまかな組成
を決定して、最終的に添加剤の種類や配合量によって表
示期間の微調節を行なうこともでき、開発等に要する期
間短縮に貢献し、コストダウンにもつながる。染料の移
行性を促進する添加剤としては、添加剤自体の持つ融点
が使用する環境温度以下であるとき、特に効果が大き
く、しかも、使用する環境温度が染料の融点あるいは昇
華温度以下のとき、特に有効である。ちなみにD−1の
融点は113〜114℃である。
【0054】また、表8の結果は、インジケーターの形
状(寸法)により表示期間を任意に設定できることを示
し、さらに表9の結果は、使用する環境温度によって表
示期間を短期間から長期間にも対応できることを示して
いる。例えば、商品の一部を発熱体によって加熱して使
用する形態の商品においては、インジケーターの配設位
置を発熱体近傍にしたり、発熱体から遠ざけたりするこ
とによって、インジケーターの使用環境温度を任意に設
定して、表示期間の調節が任意に行なえるし、インジケ
ーターの形状を変えることによっても表示期間を短期間
にも長期間にも対応させることができる。
【0055】実施例2 図10及び図11に示す薬剤蒸散製剤において、使用時
の終点表示を行なわせた。本製品は、無水リン酸水素カ
ルシウム、結晶セルロース、及びステアリル−β−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート(以下A−7という)からなる基材に加
熱蒸散性殺虫薬剤(d,d−T80−プラレトリン)3
00mgを浸漬により含有させてなる薬剤含浸体32
と、薬剤蒸散孔34を有する上部安全カバー33、及び
染料含有環状体26と染料被移行プレート31からなる
下部安全カバー25で構成されている。本製品は、発熱
体35(表面温度130℃)上に載置し、通電、加熱さ
せることにより、薬剤が蒸散し、加温時連続15日間、
有効な薬剤蒸散効果が得られるように設定してある。ま
た、下部安全カバー25は、インジケーター機能を有し
ており、D−1を0.5重量部含有するP−1で染料含
有環状体26を、さらにP−1単独で染料被移行プレー
ト31を形成し、二色成型により得られたものである。
染料被移行プレート31は直径10mm、厚み1.0m
mに設定してあり、染料含有環状体26に設けた小円盤
状突部30により発熱体35との間に隙間を設けて載置
している。通電開始より、染料が染料含有環状体26か
ら染料被移行プレート31へ徐々に移行していることを
確認し、さらに、経時により徐々に染色距離は増大し、
薬剤蒸散効果が消失する15日目近辺において染料被移
行プレート31が染色完了した。これは、連続通電時に
おいても、非連続通電時においても、薬剤蒸散効果が消
失する期間とほぼ対応した結果を得た。また、本製品を
室温で6ケ月間放置した場合、染料被移行プレートへの
染料移行は認めなかった。したがって、本製品の如く、
薬剤蒸散の終点が視覚的に認識できない商品の一部に本
発明のインジケーターを配設することにより、薬剤蒸散
効果の消失に対応した終点表示を行なうことが可能とな
った。
【0056】実施例3 図8に示す形状のインジケーターにおいて、「FIN
E」の文字図形状に穿孔された上部プレート22とし
て、移行性の染料(D−1)を0.3重量部と、これと
色調の異なる非移行性の顔料を0.5重量部含有するP
−2成型物を用い、一方、「FINE」の文字図形部分
24が突設された下部プレート23として、上部プレー
トと同色の非移行性の顔料を含有するポリウレタン樹脂
の成型物を用い、両プレートを組み付けて90℃にて2
ケ月間保管したところ、移行性染料のほとんどが下部プ
レート側に移行し、上部プレートの色調が変化してFI
NE文字が浮き上がって見えることを確認した。
【0057】以上、幾つかの実施例を示して本発明につ
いて具体的に述べたが、当然のことながら本発明はこれ
らの実施例に限定されるものではなく、例えば、染料含
有高分子物質と染料被移行高分子物質間に接着剤やその
他の染料移行可能な物質を介在させることもできるし、
使用開始時に使用者が両物質を嵌合等の容易な操作によ
り接触させて使用する形態等にすることもできるもので
あり、本発明の思想及び特徴を逸脱することなく種々の
設計変更が可能である。
【0058】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る高温使用経
過時間表示体は、加熱により経時的に高分子物質中を移
行する少なくとも1種の移行性染料を含有する染料含有
体と、上記染料が移行することにより色調変化を示す染
料被移行部とを組み合わせてなるものであるため、芳香
剤、消臭剤、害虫忌避剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、
防虫剤等の比較的高温度条件下で使用するものであっ
て、剤型上、終点識別が困難であって使用有効期間が限
られた商品に容易に適用でき、また商品の有効期間に対
応してその使用経過時間量及び終点あるいはさらに使用
有効期限超過を色調変化あるいは色調変化を含む図形変
化により比較的正確に目視判別できる。しかも、本発明
の高温使用経過時間表示体は、熱を受けることによって
インジケーター機能を発揮するものであるため、商品流
通段階等の使用開始前に色調変化を生ずることはなく、
保管が容易であると共に、使用者がインジケーター開始
操作をする必要もなく、その使用は極めて簡便である。
【0059】また、染料含有体及び染料被移行部共に高
分子物質を基材としているため、射出成型、押出成型、
圧縮成型、ブロー成型等、製品形状に応じて任意の成型
方法を採用でき、また必要に応じて二色成型法やインサ
ート成型法も適用でき、その製造が容易であると共に、
低コストで製造できる。しかも、高分子物質中に複数の
移行性染料を含有させたり、非移行性の染料や有機顔
料、無機顔料等を含有させることも随意行うことがで
き、これによって色調変化の識別性を向上させたり、商
品の意匠性(装飾性)を向上させることもできる。さら
に、本発明の高温使用経過時間表示体は、染料含有体及
び/又は染料被移行部の高分子物質中に各種染料移行制
御添加剤を添加したり、あるいはまた高分子物質の種類
及び形状、移行性染料の種類及び含有量等を適宜設定す
ることにより、染料の移行性を任意に制御でき、それに
よって、対象とする商品の使用温度や有効期間等に対応
させて、使用経過時間量及び終点あるいはさらに使用有
効期限超過をより正確に目視判別できるように制御する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高温使用経過時間表示体の形状の一例
を示す斜視図である。
【図2】図1に示す高温使用経過時間表示体の染料移行
中間時点の状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す高温使用経過時間表示体の色調変化
が完了した時点(終点)の状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示す高温使用経過時間表示体の図2に対
応する時点の状態を示す断面図である。
【図5】本発明の高温使用経過時間表示体の形状の他の
例を示す斜視図である。
【図6】本発明の高温使用経過時間表示体のさらに他の
形状例を示す斜視図である。
【図7】本発明の高温使用経過時間表示体の別の形態を
示す斜視図である。
【図8】本発明の高温使用経過時間表示体のさらに別の
形状例であって、使用前の状態を示す斜視図である。
【図9】図8に示す高温使用経過時間表示体の使用後の
状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の高温使用経過時間表示体を、発熱体
上に載置し加熱して薬剤を蒸散させる形態の製品に適用
した例を示す分解斜視図である。
【図11】図10に示す製品の組立体のA−A矢視断面
図である。
【図12】本発明の高温使用経過時間表示体の他の形状
例を示す部分断面図である。
【図13】本発明の高温使用経過時間表示体のさらに他
の形状例を示す部分断面図である。
【図14】本発明の高温使用経過時間表示体を、加熱に
より薬剤を蒸散させる形態の他の製品に適用した例を示
す断面図である。
【図15】図14に示す高温使用経過時間表示体の使用
開始前の状態を示す部分断面図である。
【図16】図14に示す高温使用経過時間表示体の使用
途中表示の状態を示す部分断面図である。
【図17】図14に示す高温使用経過時間表示体の終点
表示の状態を示す部分断面図である。
【図18】図14に示す高温使用経過時間表示体の使用
期限超過表示の状態を示す部分断面図である。
【図19】実施例1で製造した本発明の高温使用経過時
間表示体の形状及びサイズを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 外側リング状成型物(染料含有体)、 2 内側円
盤状成型物(染料被移行部)、 3,8,13,36
染料含有体、 4,10,15,38 保持部、 5,
9,14 染料被移行部、 6,7,12,17 経過
時間標識部、11,16 平板部、 18 カバー、
21 開口部、 22 上部プレート、 23 下部プ
レート、 24 「FINE」の文字図形部分、 25
下部安全カバー、 26 染料含有環状体、 31,
40 染料被移行プレート、32,44 薬剤含浸体、
33 上部安全カバー、 35,42 発熱体、43
筒状放熱部、 45 外部保護カバー、 51 内部
保護カバー、 52天板部、 53 凹陥部、 54
外筒体、 55内筒体、 56 中央底板、 59 染
料含有環状体

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加熱により経時的に高分子物質中を移行
    する少なくとも1種の移行性染料を含有する高分子組成
    物と、上記染料が移行することにより色調変化を示す染
    料被移行高分子組成物を組み合わせてなる高温使用経過
    時間表示体。
  2. 【請求項2】 染料含有高分子組成物及び/又は染料被
    移行高分子組成物中に染料移行制御添加剤を含有するこ
    とを特徴とする請求項1記載の高温使用経過時間表示
    体。
  3. 【請求項3】 染料移行制御添加剤が使用環境温度以下
    の融点を有するものであることを特徴とする請求項2記
    載の高温使用経過時間表示体。
  4. 【請求項4】 染料被移行高分子組成物中に、染料含有
    高分子組成物中に含有する移行性染料と色調の異なる少
    なくとも1種の他の移行性染料を含有することを特徴と
    する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高温使用経
    過時間表示体。
  5. 【請求項5】 高分子組成物の基材がポリオレフィン系
    樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか
    一項に記載の高温使用経過時間表示体。
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