JPH06283059A - Nb3 Al極細多芯超電導線材の製造法 - Google Patents

Nb3 Al極細多芯超電導線材の製造法

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JPH06283059A
JPH06283059A JP5089547A JP8954793A JPH06283059A JP H06283059 A JPH06283059 A JP H06283059A JP 5089547 A JP5089547 A JP 5089547A JP 8954793 A JP8954793 A JP 8954793A JP H06283059 A JPH06283059 A JP H06283059A
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安男 飯嶋
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】高磁界特性と耐歪特性に優れたNb3 Al超電
導材料により、その特長を失わせることなく、安定性、
交流特性ともに優れた極細多芯構造の長尺超電導線材を
製造する。 【構成】2〜15at%Mg,2〜10at%Zn,2〜1
0at%Li,1〜8at%Agまたは0.1 〜7at%Cuの
1種以上を含むアルミニウム合金とニオブの複合体を作
製し、この複合体をアルミニウム合金の厚みが10μm
以下となるまで冷間伸線加工し、次いで、この複合線を
移動させながら通電加熱により1500℃以上の温度で5秒
以下の熱処理を行い、液体金属中に導き、急冷し、Nb
−Al過飽和固溶合金フィラメントがニオブマトリック
ス中に配置された複合線とした後に、650〜950 ℃で追
加熱処理し、Nb−Al過飽和固溶合金フィラメントを
A15相化合物フィラメントに変態させてNb3 Al極
細多芯超電導線材とする。また、2〜8at%Siまたは
2〜25at%Geの1種以上をアルミニウム合金に添加
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】この発明は、Nb3 Al極細多芯
超電導線材の製造法に関するものである。さらに詳しく
は、この発明は、高磁界特性と耐歪特性に優れたNb3
Al超電導材料により、その特長を失わせることなく、
安定性、交流特性ともに優れた極細多芯構造の超電導線
材を製造することのできるNb3 Al極細多芯超電導線
材の製造法に関するものである。
【従来の技術とその課題】現在、高磁界用の超電導導体
としてNb3 Sn,V3 Ga極細多芯線材が、低磁界用
としてNb−Ti極細多芯線材が、また、交流用として
Nb−Ti超極細多芯線材がそれぞれ実用化されてい
る。一方、Nb3 Alは、Nb3 SnやV3 Gaに比べ
臨界温度と上部臨界磁界が高く、有望な高磁界用超電導
材料として注目されているものである。このNb3Al
については、ニオブとアルミニウムの粉末を混合プレス
した後、伸線加工して熱処理する粉末冶金法や、ニオブ
箔とアルミ箔を重ね合わせ、巻き込んだ複合体を伸線加
工し熱処理するジェリーロール法などの実験室レベルの
手法により作製された短尺線材が優れた特性を有すると
報告されているが、原料粉末あるいは原料箔材の表面か
らの酸化問題を完全に解決することが難しく、長尺の線
材としては未だ実用化されるまでに至ってはいない。こ
れに対し、この発明の発明者らは、先に、Nbとこれと
加工硬化特性を類似させたAl合金を複合し、伸線加工
と再複合を繰り返すことによりNb/Al合金複合超極
細多芯線材を作製し、これを1000℃以下の比較的低い温
度で熱処理し、相互拡散反応させて長尺のNb3 Al超
電導線材を製造する方法を提案している。しかしなが
ら、この方法を用いて製造したNb3 Al超電導線材に
ついては、結晶粒は細かいが、化学量論組成からずれた
組成のNb3 Alが生成してしまい、JC は高くなるも
のの、TC とHC2が若干低くなるという欠点がある。こ
の線材を1500℃以上の高温で熱処理すると、結晶粒は粗
くなるが化学量論組成に近いNb3 Alが生成し、TC
とHC2は高くなるが、その一方でJC は低くなってしま
う。また、高温でのみ安定なNb−Al過飽和固溶bc
c合金を高温熱処理後急冷することにより擬安定状態で
生成させ、これを低温で熱処理し、細かい結晶粒で化学
量論組成に近いNb3 Alを析出させて、TC ,HC2
ともにJC も高い線材を製造する方法がこれまでに検討
されてきてもいる。たとえば、IEEE Transactions on M
agnetics, Vol. MAG-13, No.1, January 1977 には、ニ
オブチューブに純アルミニウム棒を挿入した複合線を通
電加熱により高温で熱処理し、次いで通電を切り、ヘリ
ウムガスジェットを線材に吹き付けて急冷する方法が開
示されており、過飽和bcc固溶体が生成し、さらに低
温熱処理することでNb3 Al短尺線が得られると報告
されている。同様に、米国特許第4,088,512 号公報に
は、Nb/Al複合単芯線を通電加熱し、ヘリウムガス
ジェットで連続的に急冷し、低温で追加熱処理するNb
3 Al線材の製造法が開示されている。しかしながら、
この方法によって連続的に長尺のNb3 Al線材を作製
することができたという報告はこれまでになされてはい
ない。これは、使用している複合線のAl芯径が100 μ
m程度と太すぎるため、熱処理に時間がかかり過ぎ、線
材をゆっくりとしか移動させることができず、連続的に
急冷することが実際には不可能であったためと考えられ
る。また、細いAl芯径のNb/Al複合体を実現する
には、Alの硬度がNbの硬度に比べ柔らか過ぎ、加工
時に異常変形し、10μm以下に加工するのが不可能で
あったこともその一因と考えられる。この発明は、以上
の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来方法の
欠点を解消し、高JC ,高HC2および高TC 特性を合わ
せ持つ、実用に有用な極細多芯形状の長尺Nb3 Al超
電導線材を得ることのできる、新しい製造法を提供する
ことを目的としている。
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するために、2〜15at%Mg,2〜10at%Z
n,2〜10at%Li,1〜8at%Agまたは0.1 〜7
at%Cuの1種以上を含むアルミニウム合金とニオブの
複合体を作製し、この複合体をアルミニウム合金の厚み
が10μm以下となるまで冷間伸線加工し、次いで、こ
の複合線を移動させながら通電加熱により1500℃以上の
温度で5秒以下の熱処理を行い、液体金属中に導き、急
冷し、Nb−Al過飽和固溶合金フィラメントがニオブ
マトリックス中に配置された複合線とした後に、650 〜
950 ℃で追加熱処理し、Nb−Al過飽和固溶合金フィ
ラメントをA15相化合物フィラメントに変態させて極
細多芯超電導線材とすることを特徴とするNb3 Al極
細多芯超電導線材の製造法を提供する。またこの発明
は、アルミニウムまたは上記のアルミニウム合金に2〜
8at%Siまたは2〜25at%Geの1種以上を添加し
たインゴットを作製し、350 〜450 ℃で1〜30時間熱
処理した後に冷間加工したアルミニウム合金とニオブか
ら複合体を作製するNb3 Al極細多芯超電導線材の製
造法を提供するものでもある。前述したように、純アル
ミニウム(Al)とニオブ(Nb)の複合体では複合加
工性が劣るので、複合体のAl芯径(厚み)を10μm
以下にすることができない。そこで、Alを合金化し、
加工硬化特性をNbに類似させることが考えられるが、
この場合、添加する成分にはAlの硬度を適度に増加さ
せること、そしてNb3 Alの超電導特性を劣化させな
いことが要求される。これを満足させるために、この発
明では、2〜15at%Mg,2〜10at%Zn,2〜1
0at%Li,1〜8at%Agまたは0.1 〜7at%Cuの
1種以上をAlに添加する。この微量のMg,Zn,L
i,AgまたはCuの1種以上を添加したAl合金は、
Nbと加工硬化特性が類似し、Nbとの複合加工性が大
幅に向上する。このため、簡単に10μm以下のAl合
金芯径を持つNb/Al複合線を作製することができ
る。しかも、添加元素は、生成するNb3 Alの超電導
特性をほとんど劣化させない。また、2〜8at%Siま
たは2〜25at%Geの1種以上をAlまたは上記のA
l合金に添加することも有効である。この場合には、特
にNb3 Alの超電導特性が改善される。このSiまた
はGeの添加についてはこれまでにも知られているが、
SiやGeの添加はAlとNbの塑性加工性を著しく阻
害するため、長尺のNb3 Al線に実際に試みた例はき
わめて少ない。この発明では、SiまたはGeを添加し
たAl合金インゴットを、一旦、融点直下の温度350 〜
450 ℃で1〜30時間熱処理し、インゴット中のSiも
しくはGeの析出粒子を球状化させる。このようにする
と、この合金に塑性加工性を持たせることができる。こ
の合金を用いて製造したNb3 Al極細多芯線は、他の
合金を使った場合よりも優れた超電導特性を示す。一
方、上記の添加元素がその組成範囲から外れると複合加
工は難しくなる。この発明におけるAl合金芯の熱処理
直前の芯径(厚み)は、10μm以下であることが必要
不可欠であり、望ましくは5μm以下とする。10μm
以上の大きさになると、急冷がうまく行われず、均一な
Nb−Al過飽和固溶体が生成しにくくなるばかりでな
く、Al合金芯とNbマトリックスの間の拡散反応に時
間がかかる等の問題が生ずる。拡散反応を充分に行わせ
るためには熱処理時間を長くすればよいが、この場合に
は、Nb−Al過飽和固溶体層以外の化合物相層までも
が拡散生成し、線材がもろくなり、取扱が難しくなると
いう問題がある。このように、Al合金芯の厚みを10
μm以上にすると、Nb3 Al極細多芯線の超電導特性
と機械的特性が低下する。また、通電熱処理は5秒以下
で行う。たとえば典型的な例として、線材移動速度を1
m/sec に、電極間距離を10cmとすると、この時の
熱処理時間は0.1秒とすることができる。電極間距離を
あまり長くすると、高温熱処理によって発生する線材の
高温伸びが著しくなり、たるみとなって線材を移動させ
るリールから外れやすくなる。従って、電極間距離を長
くし、長尺線を連続的に熱処理するためには、そのたる
みを吸収する機械的機構が必要となる。しかしながら、
実際には、1900℃付近の高温で熱処理を行うため、線材
は極めて柔らかくなり、強い引張力をかけることは不可
能で、吸収機構の実現は極めて難しい。一方、10cm
程度に電極間距離を短くするとそのような特別のたるみ
吸収機構は必要ない。このように、電極間距離には制約
があるので、熱処理を充分に行うために線材移動速度を
遅くすることが考えられもするが、たとえば線材移動速
度を0.02m/sec まで落とすと熱処理時間は5秒とする
ことはできるものの、冷却速度は50分の1にもなるた
め、急冷条件が満足せず、準安定相の過飽和bcc固溶
相が生成しにくくなり、特性の良好な超電導線材は得ら
れない。また、熱処理時間を5秒以上長くすると、Nb
マトリックス中にAl原子が拡散し、Nbマトリックス
中へ低濃度で固溶するAlが多くなるため、不必要な低
濃度固溶体が生成され、しかもAlが無駄に使用される
ことにもなるため、線材中のNb3 Al生成量が少なく
なり、線材の断面積当りのJC が低下する。超電導特性
の良い線材を得ることはできない。通電熱処理の温度は
1500℃以上とし、1700〜2000℃程度の時が特性が最良と
なる。通電加熱後の急冷は、溶融金属中への焼入れによ
って行う。水焼入れ、油焼入れ、あるいは液体窒素中へ
の焼入れでは、充分な冷却速度を得ることはできない。
また、急冷操作がヘリウム等の低温ガス噴射による場合
よりも簡便である。溶融金属の種類については特に制限
はないが、室温近くに融点を持ち、あまり活性でない金
属または合金が望ましい。たとえばGa,Hg,In,
ローゼ合金(Bi−Pb−Sn合金)、ウッド合金(B
i−Pb−Sn−Cd合金)等が例示される。熱処理し
た複合線にはNb−Al過飽和固溶体が充分に生成す
る。このNb−Al過飽和固溶体には塑性加工性がある
ので、たとえば安定化材としてのCuと複合する場合に
好適となる。Cuを複合する方法としては、たとえばN
b/Al複合線の表面にCuをメッキなどにより被覆し
たり、Cu線の周りに多数本の複合線を網組してかぶせ
ることなどが例示される。特に制限はない。このように
Cuを安定化材として用いるのは、Nbマトリックスが
Cuと拡散反応しにくいという利点を利用したものであ
る。この発明においては、最終的に650 〜950 ℃の温度
で追加熱処理することにより、Nb−Albcc固溶体
フィラメントを細かい結晶粒のA15相化合物フィラメ
ントに変態させる。この追加熱処理温度を950 ℃以上と
すると、Nb3 Alの結晶秩序度が悪くなり、結晶粒も
粗くなるため、超電導特性が劣化する。Nb3 Al極細
多芯超電導線材を製造する場合には、たとえば図1に示
したように、Al合金棒(1)をNbパイプ(2)には
め込み複合加工し、単芯複合線(3)を作製し、この単
芯複合線(3)を多数本束ねてNbパイプ(4)中に詰
め込み再複合してNb/Al極細多芯線とすることがで
きる。より細いAl合金芯径を得るためには、さらに束
ねてNbパイプ(4)中に再々複合することもできる。
この複合線材を図2に示した装置において、連続通電熱
処理および連続急冷処理を行う。装置中の液体Ga浴槽
(5)は、通電電極の役割とともに急冷のための冷媒の
役割を兼ねている。Nb/Al極細多芯複合線(6)
は、連続的に移動しながら通電加熱により急激に加熱さ
れ、液体Ga浴槽(5)電極の直前で1700〜2000℃程度
の最高温度に達する。その直後、低温の液体Ga浴槽
(5)中に浸され、急冷される。なお、線材中のNbマ
トリックスはNb−Al過飽和固溶体生成のためのNb
供給源の役割とともに、通電熱処理時に極細多芯線材構
造を保つ役割を担っている。通電熱処理後の複合線材に
は、Nbマトリックス中に極細多芯形状のNb−Al過
飽和bcc固溶体フィラメントが形成する。この状態で
は、A15型化合物Nb3 Alはほとんど生成しておら
ず、線材はある程度の塑性加工性を有する。この状態で
Cuメッキ、あるいはCuとの複合加工等で電気電導度
に優れたCuを複合することによって安定化することも
できる。そして、複合線材をそのまま、あるいは安定化
材としてのCuと複合後、650 〜950 ℃で追加熱処理
し、Nb−Al過飽和bcc固溶体フィラメントをA1
5型Nb3 Alフィラメントに変態させる。このように
して作製したNb3 Al線材は化学量論組成に近い組成
比を持ち、結晶粒径が小さく、金属組織が微細なため、
優れた超電導特性を示す。高磁界中の臨界電流密度も大
きな値となる。より高磁界の発生が超電導マグネットで
可能となる。また、この発明では、加工途中の中間焼鈍
なしで芯径1μm以下のNb3 Alフィラメントを線材
中に多量に生成させることもでき、線材の交流損失が極
めて小さくなり、商用周波数の交流に使用することが可
能となる。さらに、安定化材としてのCuの体積比率を
自由に変えることも可能で、各種応用に最も適した安定
度の線材を供給することができる。現在、唯一実用化さ
れているNb−Ti交流線材の臨界温度は9Kであり、
4.2 Kの液体ヘリウム中で使用すると、温度マージンは
わずか4.8 Kしかない。一方、Nb3 Al超電導線材の
C は16〜19Kであり、温度マージンは10K以上
取ることができる。このような大きな温度マージンを持
つ線材は交流用にも有利となる。NMR−分析装置用高
磁界マグネット、核融合炉、エネルギー貯蔵、電磁推進
船、超電導発電機、超電導変圧器、磁気レンズ等に用い
られる強磁界用および交流用超電導マグネット用の線材
として使用することができる。以下実施例を示し、さら
に詳しくこの発明について説明する。
【実施例】実施例1 図1に例示した手順に従って、まず、外径7mmの純A
l,Al−2at%Mg,Al−6at%Mg,Al−10
at%MgおよびAl−15at%Mgの丸棒を、それぞ
れ、外径14mm,内径7mmのNbパイプ中に挿入し複合
体を作製し、冷間伸線加工により外径1.14mmの複合線に
加工した。この単芯複合線を121 本束ね、外径20mm,
内径14mmのNbパイプ中に挿入し複合体を作製し、冷
間伸線加工により外径1.14mmの121 芯複合線に加工し
た。この121 芯複合線をさらに121 本束ねて、外径20
mm,内径14mmのNbパイプ中に挿入した複合体を作製
し、冷間伸線加工により外径2mm,1mm,0.7mm および
0.35mmの121 ×121 芯複合線に加工した。なお、これら
の複合線のAl合金芯径は、それぞれ4μm,2μm,
1.4 μm,0.7 μmとした。以上において、一部の121
芯複合線については、19本束ね、外径8.3mm ,内径5.
8mm のNbパイプに挿入し伸線加工を行い、外径3mm,
1mm,0.7mm および0.35mmの19×121 芯複合線(Al
合金芯径は、それぞれ14μm,4.8 μm,3.4 μm,
1.7 μm)に加工した。また、121 芯の複合線の一部
は、さらに外径0.7mm および0.35mm( Al合金フィラメ
ント芯径は、それぞれ24μm,12μm)にまで伸線
加工した。図2に例示した装置において、これらの複合
線材を真空中で移動させながら通電加熱し、液体Ga浴
に通過させ連続的に急冷した。このGa浴は、通電加熱
の集電電極を兼用し、電極間距離は10cmとした。次
いで、このままの状態の線材と、600 〜1000℃で追加熱
処理した線材の超電導臨界温度TC および臨界電流密度
C を測定した。その結果は表1に示した通りであっ
た。なお、光温度計による温度計測によると、通電加熱
時の線材温度はGa浴直前で最高温となる。その温度が
1500℃以上の場合に、最終的に優れた超電導特性が得ら
れた。最良の特性は1700〜2000℃の場合に得られた。
【表1】 芯材に純Alを使った線材では、Alフィラメント芯径
が30μm以下になると、芯の形状が崩れ、加工がうま
くいかなかった。一方、Al−2at%MgおよびAl−
15at%Mg合金を使用した線材の場合には、芯径1μ
m程度までの加工は可能であったが、それ以下の芯径で
は異常変形し、断線するものもあった。Al−6at%M
gおよびAl−10at%Mg合金を使用した線材の場合
には、芯径1μm以下の超極細多芯線の作製が可能であ
った。TC の測定は抵抗法で行った。追加熱処理をしな
い線材の場合には、主にNbのTC (〜9K)に類似し
たTC しか示さず、2T以上の磁界中でのJC (4.2
K)は零であった。650 〜950 ℃で追加熱処理した線材
の場合には、13K以上、多くは16K以上の高いTC
が得られた。JC (4.2 K,15T)は芯径に強く依存
し、芯径が10μm以下の時に1×104 A/cm2 以上
の高い値となった。実施例2 実施例1と同様にして、Al−6at%Mg合金芯材を使
った121 ×121 芯複合線材(外径0.7mm ,Al合金フィ
ラメント芯径1.4 μm)を作製し、これを線材移動速度
を変えることにより300 A×0.05sec ,150 A×0.1se
c,50A×0.3sec,18A×1sec ,15A×1sec
,9A×2sec ,8A×2sec ,5A×4sec ,4A
×4sec ,3A×6sec および2.5A×6sec の通電
加熱および急冷処理を行った。そして、850 ℃×2hr
の追加熱処理を加えた後に、TC およびJC を測定し
た。その結果は表2に示した通りであった。
【表2】 優れた超電導特性は、いずれれも4秒以下の通電熱処理
の場合にのみ得られた。また、150 A×0.1secで通電加
熱した試料を種々の条件で追加熱処理した。その熱処理
条件とTC の関係を示したのが図3である。最適時間は
異なるものの、650 〜950 ℃の追加熱処理温度で良好な
C が得られた。実施例3 外径7mmのAl−0.05at%Cu,Al−0.1 at%C
u,Al−2at%Cu,Al−5at%Cu,Al−8at
%Cu,Al−1at%Zn,Al−2at%Zn,Al−
4at%Zn,Al−8at%Zn,Al−12at%Zn,
Al−1at%Li,Al−2at%Li,Al−4at%L
i,Al−8at%Li,Al−12at%Li,Al−1
at%Ag,Al−2at%Ag,Al−4at%Ag,Al
−8at%AgおよびAl−12at%Agの合金丸棒を用
い、実施例1と同様にして複合および加工を繰り返し、
121 ×121 本のAl合金芯を持つ外径0.7mm の複合線材
(Al合金芯径1.4 μm)を作製した。なお、Al−0.
05 at %Cu,Al−8at%Cu,Al−1at%Zn,
Al−12at%Zn,Al−1at%Li,Al−12at
%Li,Al−1at%AgおよびAl−12at%Ag合
金を芯材に使用した線材の場合には、Al合金フィラメ
ント芯径が15μm以下になると異常変形を起こし、多
芯線構造が保てなくなり、場合によっては伸線加工時に
断線し、それ以上の加工は不可能となった。 加工でき
た複合線を150 A×0.1secの条件で通電加熱および急冷
処理を行い、次いで850 ℃×2hrの追加熱処理を加え
た。得られた線材についてTC とJC を測定した。その
結果は表3に示した通りであった。
【表3】 良好な超電導特性が得られた。実施例4 外径7mmのAl−2at%Mg−2at%Cu−2at%Li
−2at%AgおよびAl−3at%Mg−3at%Cu−3
at%Li−3at%Ag合金の丸棒を、それぞれ、外径1
4mm,内径7mmのNbパイプ中に挿入し複合体を作製
し、冷間伸線加工により外径1.14mmの複合線に加工し
た。この単芯複合線を121 本束ね、外径20mm,内径1
4mmのNbパイプ中に挿入し複合体を作製し、冷間伸線
加工により外径1.14mmの121 芯複合線に加工した。この
121 芯複合線をさらに121 本束ね、外径20mm,内径1
4mmのNbパイプ中に挿入した複合体を作製し、冷間伸
線加工により外径0.7mm の121 ×121 芯複合線(Al合
金フィラメント芯径1.4 μm)に加工した。この複合線
材を実施例1と同様にして連続的に通電加熱し、急冷し
た。この線材をさらに600 〜1000℃で追加熱処理した線
材の超電導臨界温度TC と臨界電流密度JC を測定し
た。追加熱処理をしない場合には、主にNbのTC (〜
9K)と一致するTC しか示さなかったが、650 〜950
℃で追加熱処理した線材については16K以上の高いT
C が得られた。JC (4.2 K,15T)も実施例1と類
似した6×104 A/cm2 以上の優れた特性が得られ
た。実施例5 Al−1at%Ge,Al−2at%Ge,Al−10at%
Ge,Al−25at%Ge,Al−28at%Ge,Al
−1at%Si,Al−2at%Si,Al−6at%Si,
Al−8at%SiおよびAl−10at%Si合金インゴ
ットを、それぞれ、タンマン溶解炉で作製し、冷間加工
した。Al−1at%GeとAl−1at%Siは直接冷間
加工できたが、その他の合金インゴットは割れが生じ、
冷間加工することができなかった。この冷間加工できな
かった合金を、Al−Ge合金については350 ℃で6時
間、Al−Si合金については450 ℃で6時間熱処理す
ると、Al−28at%GeおよびAl−10at%Si合
金を除いて冷間加工できるようになった。ただし、Al
−25at%GeおよびAl−8at%Si合金は冷間加工
性が良くなかったため、加工度10%の段階でさらに6
時間の熱処理を加えた。このような熱処理により合金中
のGeまたはSi析出相が球状化し、Al−28at%G
eとAl−10at%Si合金を除く全ての合金インゴッ
トが冷間加工可能となった。冷間加工により作製した外
径7mmのAl−GeおよびAl−Si合金丸棒を、それ
ぞれ、外径14mm,内径7mmのNbパイプ中に挿入し複
合体を作製し、冷間伸線加工により外径1.14mmの複合線
に加工した。この単芯複合線を121 本束ね、外径20m
m,内径14mmのNbパイプ中に挿入し複合体を作製
し、冷間伸線加工により外径1.14mmの121 芯複合線に加
工した。この121 芯複合線をさらに121 本束ね、外径2
0mm,内径14mmのNbパイプ中に挿入した複合体を作
製し、冷間伸線加工により外径0.7mm の121 ×121 芯複
合線(Al合金フィラメント芯径1.4 μm)に加工し
た。Al−1at%GeおよびAl−1at%Siを芯材と
した線材の場合には、Al合金芯径が15μm以下にな
ると異常変形を起こし、多芯線構造が保てなくなり、場
合によっては伸線加工時に断線し、それ以上の伸線加工
は不可能となった。その他の組成のAl合金を使用した
線材の場合には、Al合金芯径が1.4 μm程度までは多
芯構造を保ったまま伸線加工を行うことが可能であっ
た。一方、1μm以下の芯径となると異常変形を起こ
し、多芯線構造が保てなくなり、場合によっては伸線加
工時に断線し、それ以上の伸線加工は不可能となった。
これらの複合線材を実施例1と同様にして連続的に通電
加熱および急冷処理を行った。その後、さらに600 〜10
00℃で追加熱処理し、得られた線材について超電導臨界
温度TC および臨界電流密度JC を測定した。追加熱処
理をしない場合には、主にニオブのTC (〜9K)と同
程度のTC しか示さなかったが、650 〜950 ℃の追加熱
処理を行ったものは17.5 K以上の比較的高いTC を示
した。JC (4.2 K,15T)も実施例1より若干高い
8×104 A/cm2 以上の優れた特性が得られた。これ
は、GeまたはSi添加効果によって超電導特性が向上
したためと考えられる。実施例6 Al−10at%Ge−2at%Mg−2at%Zn−2at%
Li−2at%Ag−2at%Cu合金およびAl−6at%
Si−2at%Mg−2at%Zn−2at%Li−2at%A
g−2at%Cu合金をタンマン溶解により作製した。こ
の合金は冷間加工性はないが、前者の合金では350 ℃で
6時間、後者の合金では450 ℃で6時間熱処理すると、
析出物の球状化が起こり冷間加工できるようになった。
このAl合金を用い、実施例4と同様にしてNbとの複
合線を作製した。この複合線は実施例5に示したAl−
Ge合金,Al−Si合金を使った複合線より複合加工
性が優れており、Al合金芯径が0.4 μm程度でも極細
多芯形状を保ったまま、伸線加工することが可能であっ
た。これらの複合線材を実施例1と同様にして連続的に
通電加熱および急冷処理を行った。そして、600 〜1000
℃で追加熱処理し、得られた線材について超電導臨界温
度TC と臨界電流密度JC を測定した。得られた超電導
特性は、実施例5に示した線材の特性と同程度であった
が、この線材に用いた合金の方が実施例5に示した合金
より複合加工性が優れているため、実用上有望であると
考えられる。もちろんこの発明は以上の例によって限定
されることはない。細部については様々な態様が可能で
あることはいうまでもない。
【発明の効果】以上に詳しく述べたように、この発明に
より、化学量論組成に近い組成のNb3 Al(TC およ
びHC2が高い)で、細かい結晶粒径を持つ(JC が高
い)極細多芯形状(安定度が高く、交流損失が少ない)
の長尺線材を連続的に製造することが可能となる。この
ような超電導線材は、NMR−分析装置用高磁界マグネ
ット、核融合炉、エネルギー貯蔵、電磁推進船、超電導
発電機、超電導変圧器、磁気レンズ等に用いられる強磁
界用および交流用超電導マグネット用の線材に有効とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のNb3 Al極細多芯超電導線材の製
造工程を例示したフローチャートである。
【図2】この発明に用いることのできる装置構成を例示
した断面図である。
【図3】組成Al−6at%Mg,芯径1.4μmの芯材
を用いて製造したNb3 Al極細多芯超電導線材の追加
熱処理温度によるTc の変化を示した相関図である。
【符号の説明】
1 Al合金棒 2 Nbパイプ 3 単芯複合線 4 Nbパイプ 5 液体Ga浴槽 6 Nb/Al極細多芯複合線
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年2月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小菅 通雄 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁金属材料技術研究所筑波支所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2〜15at%Mg,2〜10at%Zn,
    2〜10at%Li,1〜8at%Agまたは0.1 〜7at%
    Cuの1種以上を含むアルミニウム合金とニオブの複合
    体を作製し、この複合体をアルミニウム合金の厚みが1
    0μm以下となるまで冷間伸線加工し、次いで、この複
    合線を移動させながら通電加熱により1500℃以上の温度
    で5秒以下の熱処理を行い、液体金属中に導き、急冷
    し、Nb−Al過飽和固溶合金フィラメントがニオブマ
    トリックス中に配置された複合線とした後に、650 〜95
    0 ℃で追加熱処理し、Nb−Al過飽和固溶合金フィラ
    メントをA15相化合物フィラメントに変態させて極細
    多芯超電導線材とすることを特徴とするNb3 Al極細
    多芯超電導線材の製造法。
  2. 【請求項2】 2〜15at%Mg,2〜10at%Zn,
    2〜10at%Li,1〜8at%Agまたは0.1 〜7at%
    Cuの1種以上と、2〜8at%Siまたは2〜25at%
    Geの1種以上を含むアルミニウム合金インゴットを作
    製し、350 〜450 ℃で1〜30時間熱処理した後に冷間
    加工したアルミニウム合金とニオブから複合体を作製す
    る請求項1の製造法。
  3. 【請求項3】 2〜8at%Siまたは2〜25at%Ge
    の1種以上を含むアルミニウム合金インゴットを作製
    し、350 〜450 ℃で1〜30時間熱処理した後に冷間加
    工したアルミニウム合金とニオブから複合体を作製し、
    この複合体をアルミニウム合金の厚みが10μm以下と
    なるまで冷間伸線加工し、次いで、この複合線を移動さ
    せながら通電加熱により1500℃以上の温度で5秒以下の
    熱処理を行い、液体金属中に導き、急冷し、Nb−Al
    過飽和固溶合金フィラメントがニオブマトリックス中に
    配置された複合線とした後に、650 〜950 ℃で追加熱処
    理し、Nb−Al過飽和固溶合金フィラメントをA15
    相化合物フィラメントに変態させて極細多芯超電導線材
    とすることを特徴とするNb3 Al極細多芯超電導線材
    の製造法。
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