JPH06272109A - 吸湿性網状繊維及びその製造方法 - Google Patents

吸湿性網状繊維及びその製造方法

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JPH06272109A
JPH06272109A JP8269693A JP8269693A JPH06272109A JP H06272109 A JPH06272109 A JP H06272109A JP 8269693 A JP8269693 A JP 8269693A JP 8269693 A JP8269693 A JP 8269693A JP H06272109 A JPH06272109 A JP H06272109A
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polymer
spinning
fiber
polyvinyl alcohol
solution
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JP8269693A
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Inventor
Fumio Matsuoka
文夫 松岡
Shigemitsu Murase
繁満 村瀬
Hiroshi Nishimura
弘 西村
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Unitika Ltd
Original Assignee
Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ポリオレフイン系重合体Aとポリビニルアル
コール系重合体Bとからなり,かつポリオレフイン系重
合体Aの中にポリビニルアルコール系重合体Bが微細に
分散されてなる吸湿性網状繊維。ポリオレフイン系重合
体Aとポリビニルアルコール系重合体Bとを同一浴で溶
媒と水とを用い高温高圧下で溶解混合して得た溶液を紡
糸液とし,これを自生圧下で又は加圧下で圧力降下室を
有する紡糸孔を通して大気中に紡出し,紡出直後に溶媒
を瞬間的に気化させることを特徴とする吸湿性網状繊維
の製造方法。 【効果】 高強度でかつ優れた吸湿性を有し,織物,編
物,乾式不織布,合成パルプ,湿式不織布等の素材とし
て,特に吸湿性が要求される分野に好適である。また,
前記網状繊維を効率良く製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,ポリオレフイン系重合
体Aとポリビニルアルコール系重合体Bとからなり,高
強度でかつ優れた吸湿性を有する網状繊維とその繊維を
製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から,極細繊維として,相異なる二
種の重合体が海島型に配置された二成分系フイラメント
を溶融紡糸し一方の重合体を溶媒で除去して得た繊維,
溶融重合体を紡糸孔から押し出し高温空気流により高速
で牽引するいわゆるメルトブローン法により得た繊維が
知られている。しかしながら,前者の二成分系フイラメ
ントでは,このフイラメントを製造するに際して一方の
重合体を溶媒で溶解除去するための種々の複雑な工程を
要し,また,後者のフイラメントでは,確かに極細繊維
ではあるものの,このフイラメントを製造するに際して
吐出直後の溶融状態のままで重合体を牽引・細化するた
め延伸配向と結晶化が十分に進行せず,したがって得ら
れた繊維の強度が向上しない。一方,極細の網状繊維と
して,米国特許第3081519号公報には,熱可塑性
重合体を特定の溶媒に高温高圧下で溶解して得た溶液を
自生圧以上にさらに加圧し大気中に紡出するいわゆるフ
ラツシユ紡糸法により前記繊維を得る技術が開示されて
いる。しかしながら,この網状繊維は疎水性のあるいは
少なくとも吸湿性が乏しい熱可塑性重合体からなるもの
であるため,製品の用途が限定される。例えば,ポリエ
チレンやポリプロピレン等の疎水性のあるいは少なくと
も吸湿性が乏しい熱可塑性重合体採用した場合,得られ
た網状繊維は当然のことながら吸湿性が乏しく,したが
って,例えば吸湿性を必要とする医療衛生分野での保護
服や,水性インクを用いて印刷を施す各種不織布あるい
は合成パルプ等の用途分野に適用することができないの
である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,前記問題を
解決し,ポリオレフイン系重合体Aとポリビニルアルコ
ール系重合体Bとからなり,高強度でかつ優れた吸湿性
を有し,織物,編物,乾式不織布,合成パルプ,湿式不
織布等の素材として,特に吸湿性が要求される分野に好
適な網状繊維とその繊維を効率良く製造する方法を提供
しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,前記問題
を解決すべく鋭意検討の結果,本発明に到達した。すな
わち,本発明は,ポリオレフイン系重合体Aとポリビニ
ルアルコール系重合体Bとからなり,かつポリオレフイ
ン系重合体Aの中にポリビニルアルコール系重合体Bが
微細に分散されてなる吸湿性網状繊維を要旨とするもの
である。また,本発明は,ポリオレフイン系重合体Aと
ポリビニルアルコール系重合体Bとを同一浴で溶媒と水
とを用い高温高圧下で溶解混合して得た溶液を紡糸液と
し,これを自生圧下で又は加圧下で圧力降下室を有する
紡糸孔を通して大気中に紡出し,紡出直後に溶媒を瞬間
的に気化させることを特徴とする吸湿性網状繊維の製造
方法を要旨とするものである。
【0005】次に,本発明の網状繊維を詳細に説明す
る。本発明の網状繊維とは,ポリオレフイン系重合体A
とポリビニルアルコール系重合体Bとからなるものであ
る。本発明の網状繊維の一構成成分であるポリオレフイ
ン系重合体Aとは,繊維形成性を有する低密度ポリエチ
レン,線状低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,
高密度ポリエチレンあるいはエチレンを主体としこれに
他の成分が共重合された共重合ポリエチレン,結晶性ポ
リプロピレンあるいはプロピレンを主体としこれに他の
成分が共重合された共重合ポリプロピレン等であり,か
つその融点が100℃以上のものである。これらの重合
体は,その融点が100℃未満であると沸騰水によって
も融解してしまうことになり,網状繊維としたときにそ
の実用性が低下する。
【0006】本発明の網状繊維の他構成成分であるポリ
ビニルアルコール系重合体Bとは,繊維形成性を有する
ポリビニルアルコールあるいはエチレン,イタコン酸,
ビニルピロリドン等の他のビニル基が10モル%以下好
ましくは2モル%以下共重合された共重合ポリビニルア
ルコール等である。また,この重合体Bの重合度は特に
限定されないが,網状繊維の強度を向上させたいときに
は,重合体の水溶液を粘度法により温度30℃で測定し
たときの平均重合度を1000以上,好ましくは150
0以上,特に好ましくは1700以上とするのがよい。
さらに,この重合体Bのケン化度も特に限定されない
が,網状繊維の耐熱性を向上させたいときには,重合体
のケン化度を97モル%以上,好ましくは99モル%以
上とするのがよい。
【0007】本発明の網状繊維は,前記ポリオレフイン
系重合体Aの中に前記ポリビニルアルコール系重合体B
が微細に分散されてなるものである。本発明がいう微細
に分散されてなるとは,ポリビニルアルコール系重合体
Bが直径0.0001〜0.1μm程度の微粒子状態あ
るいはフイブリル状態で繊維中にランダムに散在してい
ることを意味する。このポリビニルアルコール系重合体
Bの散在状態は,例えば,繊維を四酸化オスミウムで電
子染色し,次いでエポキシ樹脂で包理し,トリミングし
て面出しを行い,包理ブロツクのまま四酸化ルテニウム
で染色し,その染色固定後の繊維を超薄型切片に切り出
し,透過型電子顕微鏡を用い6万倍程度の拡大率で観察
することにより,知ることができる。本発明の網状繊維
では,前記ポリオレフイン系重合体Aの中に前記ポリビ
ニルアルコール系重合体Bが前述したように極めて微細
な微粒子状態あるいはフイブリル状態でランダムに散在
しているため,ほぼ永久的な吸湿性を具備することにな
るのである。
【0008】本発明の網状繊維においては,前記ポリオ
レフイン系重合体Aの中に前記ポリビニルアルコール系
重合体Bとが前記式(1)を満足することが好ましい。
本発明の網状繊維において,ポリビニルアルコール系重
合体Bの存在比〔B×100/(A+B)〕が1未満で
あると,得られた網状繊維の吸湿性が低下するため好ま
しくない。一方,この存在比が25を超えると,得られ
た網状繊維の粘着性や接着性が増大してハンドリング性
が低下するため好ましくない。したがって,本発明で
は,この存在比を1〜25とし,好ましくは2〜20,
特に好ましくは3〜10とする。
【0009】本発明の網状繊維は,前述したような2種
の重合体からなりかつ0.1〜10μm相当径のフイブ
リルが連続しながら集合し,三次元的な網状構造を呈す
るごとく網状に広がった構造を有するものである。この
フイブリルの相当径が小さいほど,得られた網状繊維を
用いて例えば織物や編物あるいは不織布としたとき緻密
性や柔軟性を向上させることができ,特に不織布におい
て透湿性を十分に保持したまま通菌性を低下させること
もできる。
【0010】次に,本発明の製造方法を詳細に説明す
る。本発明の網状繊維は,前記ポリオレフイン系重合体
Aと前記ポリビニルアルコール系重合体Bとを用い,例
えば米国特許第3227794号公報に記載されたよう
ないわゆるフラツシユ紡糸法により効率良く製造するこ
とができる。すなわち,前記ポリオレフイン系重合体A
と前記ポリビニルアルコール系重合体Bとを同一浴で溶
媒と水とを用い高温高圧下で溶解混合して得た溶液を紡
糸液とし,これを自生圧下で又は加圧下で圧力降下室を
有する紡糸孔を通して大気中に紡出し,紡出直後に溶媒
を瞬間的に気化させて網状の繊維構造を形成する。本発
明の製造方法において,溶液を作成するに際して用いる
溶媒とは,常温では前記重合体A及びBに対して非溶媒
であるが,高温下では良溶媒であるような溶媒と水とを
用いる。この溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳
香族炭化水素,ブタン,ぺンタン,ヘキサン,ヘプタ
ン,オクタン又はこれらの異性体や同族体等の脂肪族炭
化水素,シクロヘキサン等の脂環族炭化水素,塩化メチ
レン,四塩化炭素,クロロホルム,1,1−ジクロル−
2,2ジフルオロエタン,1,2−ジクロル−1,1ジ
フルオロエタン,塩化メチル,塩化エチル,フルオロカ
ーボン等のハロゲン化炭化水素,アルコール,エステ
ル,エーテル,ケトン,ニトリル,アミド,二酸化硫
黄,二硫化炭素,ニトロメタン等の不飽和炭化水素,あ
るいは上述した溶媒の混合物を用いることができる。近
年,地球環境の保護が注目されており,この観点から特
にオゾン層を破壊する溶媒は避けることが好ましく,し
たがって溶媒として塩化メチレン,1,1−ジクロル−
2,2ジフルオロエタン,1,2−ジクロル−1,1ジ
フルオロエタンを用いると,従来のフロンを溶媒として
用いる場合にみられたような地球環境を害するというこ
とがなくて好ましい。本発明においては,前記溶媒と共
に水を用いるが,この水は前記ポリビニルアルコール系
重合体Bを溶解すると共に紡糸液中での分散剤としての
機能を有する。なお,この水としては,いわゆる純水を
用いるのがよい。
【0011】前記ポリオレフイン系重合体Aとしてポリ
エチレン系重合体を用いる場合,ASTM−D−123
8(E)に記載の方法により測定されるメルトインデツ
クスが0.3g/10分以上30g/10分以下のもの
を,また,ポリプロピレン系重合体用いる場合,AST
M−D−1238(L)に記載の方法により測定される
メルトフローレート値が1g/10分以上40g/10
分以下のものを用いることが好ましい。ポリエチレン系
重合体の場合にそのメルトインデツクスが0.3g/1
0分未満であると,あるいはポリプロピレン系重合体の
場合にそのメルトフローレート値が1g/10分未満で
あると,重合体を溶媒と水とに溶解して得た溶液の溶液
粘度が著しく高くなって極細のフイブリルを得ることが
困難となるため好ましくない。一方,ポリエチレン系重
合体の場合にそのメルトインデツクスが30g/10分
を超えると,ポリプロピレン系重合体の場合にそのメル
トフローレート値が40g/10分を超えると,重合度
が低過ぎてフラツシユ紡糸時の紡糸速度に追随できず,
紡出された繊維が短繊維状あるいは略粉体状の形態を有
するものとなり,仮に極細のフイブリルを得ることがで
きたとしてもその強度が向上せず,また,ポリエチレン
系フイブリルにおいてヌメリ感や粘着性が増大したり,
ポリプロピレン系フイブリルにおいても粘着性が増大し
てハンドリング性が低下したりするため好ましくない。
なお,本発明においては,前記ポリオレフイン系重合体
Aあるいは溶媒に溶解して作成した紡糸液中には,通常
に繊維用として用いられる艶消し剤,耐光剤,耐熱剤,
顔料,開繊剤,紫外線吸収剤,畜熱剤,安定剤等を本発
明の効果を損なわない範囲内であれば添加することがで
きる。
【0012】本発明の製造方法においては,得られた網
状繊維の特性を勘案すると,前記ポリオレフイン系重合
体Aの中に前記ポリビニルアルコール系重合体Bとが前
記式(1)を満足することが好ましい。本発明の製造方
法において,ポリビニルアルコール系重合体Bの存在比
〔B×100/(A+B)〕が1未満であると,得られ
た網状繊維の吸湿性が低下するため好ましくない。一
方,この存在比が25を超えると,得られた網状繊維の
粘着性や接着性が増大してハンドリング性が低下するた
め好ましくない。したがって,本発明では,この存在比
を1〜25とし,好ましくは2〜20,特に好ましくは
3〜10とする。
【0013】本発明の製造方法においては,この紡糸液
を用いてフラツシユ紡糸するに際しての紡出性と得られ
た網状繊維の特性を勘案すると,紡糸液として前記ポリ
オレフイン系重合体A,前記ポリビニルアルコール系重
合体B,溶媒C及び水Dがそれぞれ式(2)〜(4)を
満足する溶液を用いることが好ましい。本発明の製造方
法において,紡糸液中の重合体〔A+B〕の濃度が5重
量%未満であると,フイブリルが連続した構造の繊維を
得ることが困難となり,一方,重合体〔A+B〕の濃度
が25重量%を超えると,重合体〔A+B〕の濃度が高
過ぎて溶解が不均一となるため極細のフイブリルを得る
ことができず,しかも紡出された繊維はそのフイブリル
がその側面で相互に接合し,かつ内部に空洞を有する中
空構造の繊維となって高強度のフイブリルからなる繊維
を得ることができず,いずれも好ましくない。また,紡
糸液中の溶媒の濃度が40重量%未満であると,重合体
を溶解して得た溶液の溶液粘度が高過ぎて溶解が不均一
となるため極細のフイブリルを得ることができず,しか
も紡出された繊維は中空構造の繊維となり,一方,溶媒
の濃度が74重量%を超えると,フイブリルが連続した
構造の繊維を得ることが困難となり,いずれも好ましく
ない。さらに,紡糸液中の水濃度が1重量%未満である
と,重合体Bの粘度が高過ぎて溶解が不均一となるた
め,紡出された繊維は重合体Aの中に重合体Bが極めて
微細な微粒子状態あるいはフイブリル状態でランダムに
散在した構造を形成せず,一方,水濃度が55重量%を
超えると,フイブリルが連続した構造の繊維を得ること
が困難となり,いずれも好ましくない。
【0014】本発明の製造方法においては,紡糸液を作
成するに際して,前記全重合体を溶質とし,これらを前
記溶媒と水と共に溶解装置に充填し昇温・混練しながら
溶液を作成し,得られた溶液を紡糸液として用いる。溶
解装置としては,従来から最も広範に用いられているオ
ートクレーブや,例えばエクストルーダとこれに連続し
て配設された混練装置とからなる連続溶解装置等を用い
ることができる。溶解装置内でこの紡糸液を昇温・混練
を行うに際しては,その純度が99重量%以上の酸素を
含有しない窒素あるいは二酸化炭素といった不活性気体
による加圧下で行うと,紡糸圧力をなお一層高めること
ができて好ましい。窒素あるいは二酸化炭素の気体はい
わゆる不活性気体であって,本発明で用いる紡糸液中に
殆ど溶解せず重合体に対して悪影響を及ぼさないため,
紡糸液に対して実質的な圧力を印加することができる。
また,この不活性気体の注入を溶解装置内の紡糸液の昇
温以前から行うと,重合体の劣化防止や重合体の溶解性
促進,フイブリルの極細化が可能となり,一層好まし
い。
【0015】本発明の製造方法においては,溶解装置内
で前記全重合体〔A+B〕を溶媒と水に溶解するに際し
ての溶解時間は,5分以上90分以下とするのが好まし
い。溶解するに際しての溶解時間が5分未満であると,
全重合体〔A+B〕の溶解が不十分となって均一なフイ
ブリルからなる繊維を得ることが困難となったり,ある
いは紡糸時にフイルタの目詰まりを生じたりするため,
一方,この溶解時間が90分を超えると,紡糸液中の重
合体Bの着色や熱分解が生じて繊維の強度が向上せず,
いずれも好ましくない。
【0016】本発明の製造方法において,紡糸液の溶解
温度とフラツシユ紡糸するに際しての温度すなわち紡糸
温度は,いずれも全重合体〔A+B〕が溶媒に十分に溶
解しかつ紡糸液をフラツシユ紡糸して極細のフイブリル
が集合し三次元的に網状に広がった構造を有する繊維を
得ることができるような温度であれば特に限定されるも
のではないが,敢えて特定すれば,150℃以上190
℃以下とするのが好ましい。この溶解温度や紡糸温度が
150℃未満であると,全重合体〔A+B〕が溶媒と水
に均一に溶解しないため極細のフイブリルを得ることが
できず,しかも紡出された繊維は中空構造の繊維とな
り,一方,この溶解温度や紡糸温度が190℃を超える
と,紡糸液中の重合体の熱分解が生じて得られた繊維の
強度が向上せず,また強度は保持していても着色が生じ
たりし,いずれも好ましくない。
【0017】本発明の製造方法において,作成した紡糸
液をフラツシユ紡糸するに際しての圧力は,全重合体
〔A+B〕の濃度と溶媒量と水量そして不活性気体の注
入量等により左右されるため一概に限定されないが,通
常,40kg/cm2 以上120kg/cm2 以下とす
るのが好ましい。繊維の強度は重合体の分子鎖自体が十
分に延伸・配向されることにより発現されるのであり,
フラツシユ紡糸法すなわち前記紡糸液を圧力降下室を有
する紡糸孔を通して紡出し,紡出直後に溶媒を瞬間的に
気化させて網状の繊維構造を形成する方法においては,
この延伸・配向を紡出直後の瞬間的な溶媒の気化に伴う
爆発力によって行う。この爆発力とは,溶媒が瞬間的に
気化する際の気化力であり,通常,0.1秒以下の時間
で溶媒が一気に気化するときの力を意味する。したがっ
て,この紡糸圧力は40kg/cm2 以上とするのが好
ましく,紡糸圧力が40kg/cm2 未満であると,紡
糸液を用いてフラツシユ紡糸するに際しての爆発力が低
下しフイブリルの配向が不十分となってその強度が向上
せず,また紡出状態が不均一なものとなって高度にフイ
ブリル化した網状繊維を安定して得ることが困難とな
る。一方,この紡糸圧力は120kg/cm2 以下とす
るのが好ましく,紡糸圧力が160kg/cm2を超え
ると,紡糸液中の重合体の粘度が低下してフイブリルの
強度が向上せず,好ましくない。
【0018】
【実施例】次に,実施例に基づいて本発明を具体的に説
明する。なお,実施例における各種特性の測定及び評価
は,次の方法により実施した。 重合体の融点:パーキンエルマ社製示差走査型熱量計D
SC−2型を用い,昇温速度20℃/分で測定した融解
吸収熱曲線の極値を与える温度を融点とした。 メルトインデツクス(g/10分):ASTM D 1
238(E) に記載の方法により測定した。 メルトフローレート値(g/10分):ASTM D
1238(L) に記載の方法により測定した。 繊維の繊度(デニール):JIS L−1090に記載
の方法にしたがい,正量繊度で求めた。 繊維の引張強度(g/デニール):東洋ボールドウイン
社製テンシロンUTM−4−1−100を用い,試料長
が10cmの試料20本につき各々20回/5cmの撚
りを加え,把持間隔5cm,引張速度5cm/分で測定
し,得られた引張強力の平均値を正量繊度当りに換算
し,繊維の強度(g/デニール)とした。 繊維の引張伸度(%):東洋ボールドウイン社製テンシ
ロンUTM−4−1−100を用い,前記試料20本に
つき各々引張速度5cm/分で測定し,得られた引張伸
度の平均値を繊維の引張伸度(%)とした。 繊維の比表面積(m2 /g):日本ベル株式会社製窒素
吸着装置BELSORP28型を用い,BET窒素吸着
法によって繊維の比表面積(m2 /g)を求めた。 繊維の吸湿率(%):試料5gを準備し,この試料に熱
風乾燥機を用いて処理温度80℃かつ処理時間24時間
の条件で乾燥処理を施し,デシケータ内で冷却した後,
絶乾重量W1 (g)を測定した。,次いで,この試料を
温度20℃かつ湿度65%の恒温恒湿槽内に放置し,経
時の質量変化が飽和値に到達したときの重量W2 (g)
を測定し,得られた重量値から下記式(5)により吸湿
率(%)を求めた。 繊維の吸湿率(%)=〔(W2 /W1 )−1〕×100 (5)
【0019】実施例1 融点が132℃,密度が0.96g/cm3 でかつメル
トインデツクスが0.8g/10分の高密度ポリエチレ
ン重合体Aと,平均重合度が1700でケン化度が9
8.5モル%のポリビニルアルコール重合体Bと,ドラ
イアイスとをオートクレーブに充填・閉鎖し,次いで,
塩化メチレンと純水とをオートクレーブに注入し,この
溶液を適度な速度で攪拌しながら加熱した。この溶液
は,全重合体〔A+B〕の濃度が16.3重量%,ポリ
エチレン重合体A/ポリビニルアルコール重合体Bの重
量比(A/B)が95/5,塩化メチレンの濃度が6
3.4重量%,水濃度が20.3重量%である。このと
き,オートクレーブの内温が70℃から上昇し170℃
に到達するまでの昇温時間は50分間であった。次い
で,この溶液を温度170℃で10分間混練して均一な
溶液を得た。このとき,オートクレーブの内圧は82k
g/cm2 Gであった。引き続き,この内圧すなわち紡
糸圧力82kg/cm2 Gで直ちにオートクレーブのバ
ルブを開放して圧力降下室を有する孔径0.75mmで
孔長/孔径の比が1の紡出孔より紡糸液を大気中に紡出
し,前記ポリエチレン重合体Aとポリビニルアルコール
重合体Bとからなる網状繊維を得た。このとき,圧力降
下室の圧力は73kg/cm2 Gであった。重合体条件
と製糸条件を表1に示す。また,得られた網状繊維の特
性を表2に示す。なお,表1において,PEはポリエチ
レン重合体,PVAはポリビニルアルコール重合体,M
IXはメルトインデツクスを示す。この網状繊維は,表
2から明らかなように実用的な強度と優れた吸湿性とを
有し,しかも全く着色を有しないものであった。また,
この繊維を四酸化オスミウムで電子染色し,次いでエポ
キシ樹脂で包理し,トリミングして面出しを行い,包理
ブロツクのまま四酸化ルテニウムで染色し,その染色固
定後の繊維を超薄型切片に切り出し,透過型電子顕微鏡
を用い6万倍程度の拡大率で繊維の表面を電子顕微鏡で
写真撮影しその表面形態を観察したところ,この繊維
は,略径0.0001〜0.03μmのポリビニルアル
コール重合体からなる微粒子がポリエチレン重合体の中
にランダムに散在した構造を有するものであった。
【0020】実施例2 融点が162℃,密度が0.910g/cm3 でかつメ
ルトフローレート値が4.0g/10分の結晶性ポリプ
ロピレン重合体Aと,平均重合度が1700でケン化度
が98.5モル%のポリビニルアルコール重合体Bと,
ドライアイスとをオートクレーブに充填・閉鎖し,次い
で,塩化メチレンと純水とをオートクレーブに注入し,
この溶液を適度な速度で攪拌しながら加熱した。この溶
液は,全重合体〔A+B〕の濃度が13.8重量%,ポ
リプロピレン重合体A/ポリビニルアルコール重合体B
の重量比(A/B)が95/5,塩化メチレンの濃度が
69.0重量%,水濃度が17.2重量%である。この
とき,オートクレーブの内温が70℃から上昇し170
℃に到達するまでの昇温時間は35分間であった。次い
で,この溶液を温度170℃で10分間混練して均一な
溶液を得た。このとき,オートクレーブの内圧は101
kg/cm2 Gであった。引き続き,この内圧すなわち
紡糸圧力101kg/cm2 Gで直ちにオートクレーブ
のバルブを開放して圧力降下室を有する孔径0.75m
mで孔長/孔径の比が1の紡出孔より紡糸液を大気中に
紡出し,前記ポリプロピレン重合体Aとポリビニルアル
コール重合体Bとからなる網状繊維を得た。このとき,
圧力降下室の圧力は92kg/cm2 Gであった。重合
体条件と製糸条件を表1に示す。また,得られた網状繊
維の特性を表2に示す。なお,表1において,PPはポ
リプロピレン重合体,MFRはメルトフローレート値を
示す。この網状繊維は,表2から明らかなように実用的
な強度と優れた吸湿性とを有し,しかも全く着色を有し
ないものであった。また,この繊維を電子染色し,以降
実施例1と同様にして繊維の表面を電子顕微鏡で写真撮
影しその表面形態を観察したところ,この繊維は,略径
0.0001〜0.03μmのポリビニルアルコール重
合体からなる微粒子がポリプロピレン重合体の中にラン
ダムに散在した構造を有するものであった。
【0021】実施例3〜8及び比較例1 融点が132℃,密度が0.96g/cm3 でかつメル
トインデツクスが0.6g/10分の高密度ポリエチレ
ン重合体Aと,平均重合度が2000でケン化度が9
9.5モル%のポリビニルアルコール重合体Bと,ドラ
イアイスとをオートクレーブに充填・閉鎖し,次いで,
塩化メチレンと純水とをオートクレーブに注入し,この
溶液を適度な速度で攪拌しながら加熱した。このとき,
溶液の全重合体〔A+B〕の濃度と,ポリエチレン重合
体A/ポリビニルアルコール重合体Bの重量比(A/
B)と,塩化メチレンの濃度と,水濃度とをそれぞれ表
1に示したように変更した。引き続き,実施例1と同様
にして紡糸液を大気中に紡出し,ポリプロピレン重合体
Aとポリビニルアルコール重合体Bとからなる網状繊維
を得た。重合体条件と製糸条件を表1に示す。また,得
られた網状繊維の特性を表2に示す。実施例3〜8の網
状繊維は,表2から明らかなように実用的な強度と優れ
た吸湿性とを有し,しかも全く着色を有しないものであ
った。また,この繊維を電子染色し,以降,実施例1と
同様にして繊維の表面を電子顕微鏡で写真撮影しその表
面形態を観察したところ,この繊維は,略径0.000
1〜0.03μmのポリビニルアルコール重合体からな
る微粒子がポリプロピレン重合体の中にランダムに散在
した構造を有するものであった。これに対し,比較例1
の網状繊維は,実用的な強度を有し,フイブリルの形成
状態が良好であるため比表面積が高いものの,ポリエチ
レン重合体単独から形成されるため吸湿性を全く有しな
いものであった。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明の網状繊維は,ポリオレフイン系
重合体とポリビニルアルコール系重合体とからなり,か
つポリオレフイン系重合体Aの中にポリビニルアルコー
ル系重合体Bが微細に分散されてなるものであり,高強
度でかつ優れた吸湿性を有し,織物,編物,乾式不織
布,合成パルプ,湿式不織布等の素材として,特に吸湿
性が要求される分野に好適である。また,本発明の製造
方法によれば,前記網状繊維を効率良く製造することが
できる。
【手続補正書】
【提出日】平成6年5月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】
【表1】

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフイン系重合体Aとポリビニル
    アルコール系重合体Bとからなり,かつポリオレフイン
    系重合体Aの中にポリビニルアルコール系重合体Bが微
    細に分散されてなる吸湿性網状繊維。
  2. 【請求項2】 ポリオレフイン系重合体Aとポリビニル
    アルコール系重合体Bとが下記式(1)を満足する請求
    項1記載の吸湿性網状繊維。 1≦B(重量%)×100/〔A(重量%)+B(重量%)〕≦25 (1)
  3. 【請求項3】 ポリオレフイン系重合体Aとポリビニル
    アルコール系重合体Bとを同一浴で溶媒と水とを用い高
    温高圧下で溶解混合して得た溶液を紡糸液とし,これを
    自生圧下で又は加圧下で圧力降下室を有する紡糸孔を通
    して大気中に紡出し,紡出直後に溶媒を瞬間的に気化さ
    せることを特徴とする吸湿性網状繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 ポリオレフイン系重合体Aとポリビニル
    アルコール系重合体Bとが下記式(1)を満足する請求
    項3記載の吸湿性網状繊維の製造方法。 1≦B(重量%)×100/〔A(重量%)+B(重量%)〕≦25 (1)
  5. 【請求項5】 ポリオレフイン系重合体A,ポリビニル
    アルコール系重合体B,溶媒C及び水Dがそれぞれ下記
    式(2)〜(4)を満足する溶液を紡糸液として用いる
    請求項3又は4記載の吸湿性網状繊維の製造方法。 5≦A(重量%)+B(重量%)≦25 (2) 40≦C(重量%)≦74 (3) 1≦D(重量%)≦55 (4)
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115595682A (zh) * 2022-12-12 2023-01-13 吴江福华织造有限公司(Cn) 一种多功能纤维及其制备方法和应用

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