JPH06269089A - 小型スピーカ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ボイスコイルの両端リードによる振動板の振
動の疎外を抑え、小型スピーカでありながら低域共振周
波数を低くかつ高忠実度再生できるようにする。 【構成】 ヨークフレーム２９の先端面に振動板３１を
直接固定する。振動板３１の裏面側にボイスコイル３３
を固定する。ベースプレート３７に重ねたヨークプレー
ト３９の内側にマグネット４１とポールピース４３を重
ねてハトメ４５で一体化する。ヨークフレーム２９と３
９の間の磁気ギャップ４７にボイスコイル３３を挿入す
るようにしてヨークフレーム２９にヨークプレート３９
をはめて一体化する。ボイスコイル３３の両端リード３
５ａ、３５ｂをハトメ４５の中空部４５ａを介してヨー
クプレート３９の外部へ導出する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は小型スピーカに係り、特
に音楽再生用や通信用のヘッドホンに使用して好適し、
高忠実度再生の可能な小型スピーカの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】近頃、携帯用のステレオ型ラジオ受信機
やステレオ型テープレコーダが普及しており、この種の
電子機器にはインナーイヤータイプ（耳殻挿入型）のヘ
ッドホンが附属されるのが一般的である。このようなヘ
ッドホンに使用するスピーカは小型ながら高忠実度再生
が要求されており、例えば図５に示すような構成を有し
ている。

【０００３】すなわち、マグネット１をカップ状のヨー
クフレーム３とポールピース５で挟むとともにハトメ７
でそのヨークフレーム３に固定し、屈曲するように拡開
するそのヨークフレーム３の先端立上り部９の内側に振
動板１１を固定し、マグネット１の外周とヨークフレー
ム３間に形成された円筒状の磁気ギャップ１３に挿入す
るようにしてリング状のボイスコイル１５をその振動板
１１の裏面に固定した構成となっていた。

【０００４】しかも、振動板１１の裏面に固定したボイ
スコイル１５の両端リード１７ａ、１７ｂは、図６に示
すように、振動板１１の裏面に沿わせて引出すとともに
接着剤（図示せず）で固定するのが一般的である。な
お、図５中の符号１９はヨークフレーム３へ固定させる
前に予め振動板１１を支持するリング、符号２１はヨー
クフレーム３に重ねられたベースプレート、符号２３は
それらヨークフレーム３、マグネット１、ポールピース
５および磁気ギャップ１３等によって形成された磁気回
路である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
小型スピーカでは、ボイスコイル１５の両端リード１７
ａ、１７ｂを振動板１１の裏面に沿わせて接着剤で固定
しているから、振動板１１の動きが疎外され、振動系の
低域共振周波数ｆ₀ の上昇や耐入力特性の低下等が生
じ、高忠実度再生を向上させるには限界があった。一般
に、スピーカの低域共振周波数ｆ₀ はｆ₀ ＝１／［２π
√（Ｍ／Ｓ）］（但し、符号Ｍは振動系の質量、符号Ｓ
は振動系のスティフネス）で表され、両端リード１７
ａ、１７ｂを振動板１１に接着剤で固定するとスティフ
ネスＳが大きくなることから振動系の低域共振周波数ｆ
₀ の上昇を招くし、振動板１１の一部が剛体となって振
動にローリング（揺動）が生じて耐入力特性も低下す
る。

【０００６】もっとも、低域共振周波数ｆ₀ を低下させ
るために、振動板１１の厚さを例えば６μｍ程度に薄く
するとか、耐入力特性を向上させるためにスピーカの外
径を例えばφ１６ｍｍ程度に大きくする等の対策も提案
されているが、下記に示すような副次的な問題が発生し
て根本的な解決とはならなかった。すなわち、振動板１
１を薄くすると扱い難くなって製造歩留りの低下や工数
増加と言った生産面の支障を招いてコストアップとなり
易いし、スピーカを大径化すると、インナーイヤータイ
プのヘッドホンの場合には口径が大きすぎて「耳に入り
にくい」とか、長時間耳孔に挿入していると「耳が痛く
なる」と言った使用面の支障がある。

【０００７】さらに、上述した図５のように、振動板１
１を予めリング１９に支持してからヨークフレーム３に
固定するいわゆるリング方式では、ヨークフレーム３の
先端立上り部９の内側にリング１９が位置するから、ス
ピーカ外径に対してその分振動板１１が小径となって低
域共振周波数ｆ₀ の上昇の原因となり、同様の問題点が
発生する。また、口径の大きいスピーカとか、口径にも
よるが厚みが１２μｍ以上の厚い振動板１１を用いる場
合には、組立て時にその振動板１１を単体として取扱い
易くなり、大きな振動板１１を図７のようにヨークフレ
ーム２５のガイド部２７に直接嵌合させることも可能と
なり、低域共振周波数ｆ₀ の上昇を抑えることができる
が、この構造では腰のしっかりした大径の振動板１１を
使用する必要があり、イヤホーン用のスピーカには不向
きである。

【０００８】さらにまた、図８に示すように、振動板１
１を支持するリング１９をヨークフレーム３の立上り部
９ａの外側に位置させ、振動板１１の実効径をスピーカ
の外径と同径にした構成もあるが、この構成では振動板
１１の外径に比べてスピーカの外径を小さくできる利点
はあるものの、リング１９自体が構造的に弱いから外圧
によって振動板１１が変形し易い難点があり、やはり小
型スピーカーには不向きである。本発明はこのような従
来の欠点を解決するためになされたもので、ボイスコイ
ルから引出される両端リードによって振動板の振動を疎
外させることがなく、高忠実度再生を可能にした小型ス
ピーカーの提供を目的とする。また、本発明は、耳殻に
入り易いような小型でありながら大口径のスピーカ並み
の良好な低域共振周波数特性および耐入力特性が得られ
る小型スピーカの提供を目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】そのような課題を解決す
るために本発明の第１の構成は、円筒状の磁気ギャップ
を有する磁気回路を形成したフレームと、このフレーム
に支持されたスピーカ用の振動板と、その磁気ギャップ
に挿入するようにしてその振動板に固定されたリング状
のボイスコイルとを具備し、特に、そのボイスコイルの
両端リードを、上記振動板との固定部からボイスコイル
の内側を通して上記フレームから外部へ導出したもので
ある。そして、本発明では、上記両端リードを互いに離
れるようにその振動板との固定部から導出させてからボ
イスコイル内側を通すと良い。

【００１０】また、本発明の第２の構成は、磁気回路の
一部を形成する筒型の第１のフレームと、この第１のフ
レームに連結しかつ磁気ギャップを有するその磁気回路
をその第１のフレームとともに形成する第２のフレーム
と、その第１のフレームに支持されたスピーカ用の振動
板と、その磁気ギャップに挿入するようにしてその振動
板に固定したリング状のボイスコイルとを具備し、その
ボイスコイルの両端リードを、上記振動板との固定部か
らそのボイスコイルの内側を通して上記第２のフレーム
から外部へ導出したものである。

【００１１】

【作用】このような構成を有する本発明の第１の構成で
は、振動板に固定したボイスコイルの両端リードをその
振動板との固定部からボイスコイルの内側を通して外部
へ導出させたので、ボイスコイルから引出される両端リ
ードによって振動板の振動を疎外させることがなくな
り、振動板の低域共振周波数を決定する要因であるステ
ィフネスＳが大きくならず、低域共振周波数が上昇し難
い。しかも、振動板に両端リードを固定しないから振動
板全体が均一に振動し、振動板のローリングが少なくて
動作時のバランスも良くなるし、強い音声信号の入力に
対しても追随して振動し易い。

【００１２】そして、上記両端リードを互いに離れるよ
うにその振動板との固定部から導出させた構成では、振
動板の振動時のバランスが一層良好となる。また、本発
明の第２の構成では、フレームを第１および第２のフレ
ームに分割して連結し、第１のフレームに振動板を固定
し、磁気ギャップを有する磁気回路をそれら第１および
第２のフレームに形成し、そのボイスコイルの両端リー
ドを上記振動板との固定部からそのボイスコイルの内側
を通して導出したので、振動板を直接フレームに固定し
て組立て可能となるうえ、同じ厚さの振動板を使用して
同じ性能を得る場合にスピーカの口径を小さくできる
し、振動板に加わるストレスも小さくなる。

【００１３】

【実施例】以下本発明の実施例を図面を参照しながら説
明する。図１は本発明に係る小型スピーカに係る一実施
例を示す縦断面図である。図１においては、磁性体から
なる第１のフレームとしての筒型のヨークフレーム２９
は一方の先端側（図中上側）が大径となるように屈曲形
成されており、大径の先端面には振動板３１が固定され
ている。振動板３１は、中央部が膨出するセンタードー
ム３１ａとなるとともにこれを囲む周囲がロールエッジ
３１ｂとなった形状を有し、ロールエッジ３１ｂの周囲
先端がヨークフレーム２９に直接固定されており、セン
タードーム３１ａとロールエッジ３１ｂの境界部が環状
に窪んで環状境界部３１ｃとなっている。

【００１４】振動板３１の裏面側において環状境界部３
１ｃに相当する部分には、絶縁導線を偶数巻き例えば二
重巻きしてリング状に成形したボイスコイル３３がその
端面側を重ねるようにして接着剤（図示せず）その他適
当な固定手段によって固定されている。すなわち、ボイ
スコイル３３と環状境界部３１ｃとはほぼ同径となって
いる。しかも、ボイスコイル３３の両端リード（巻始リ
ードと巻終りリード）３５ａ、３５ｂは、振動板３１と
の固定部、換言すればボイスコイル３３の固定端面部か
ら導出されている。

【００１５】ベースプレート３７に重ねた磁性体からな
り第２のフレームとしてのカップ状のヨークプレート３
９の内側には環状のマグネット４１およびポールピース
４３が重ねられ、これらを貫通する磁性体製のハトメ４
５によって一体化されている。ヨークフレーム２９の他
方の小径端部（図中下側）の外周にはヨークプレート３
９の開放端側がはめられて一体化されており、マグネッ
ト４１やポールピース４３の外周先端とヨークフレーム
２９や３９との間で磁気ギャップ４７が形成されてお
り、ヨークフレーム２９や３９、マグネット４１、ポー
ルピース４３および磁気ギャップ４７によって磁気回路
４９が形成されている。

【００１６】振動板３１の裏面側に固定されたボイスコ
イル３３はその磁気ギャップ４７に挿入するように位置
しており、図２にも示すように、ボイスコイル３３の両
端リード３５ａ、３５ｂが弧を描くように湾曲した遊び
部を経てハトメ４５の中空部４５ａを挿通され、ヨーク
プレート３９の外部へ下方へ導出されている。なお、両
端リード３５ａ、３５ｂは振動板３１に接触しない方が
好ましいが、多少の接触は支障ない。両端リード３５
ａ、３５ｂはハトメ４５の中空部４５ａにはめ込まれた
クッションピース５１によって弾性的に保持されてい
る。

【００１７】このように本発明の小型スピーカでは、振
動板３１の裏面側に固定したボイスコイル３３の両端リ
ード３５ａ、３５ｂを振動板３１との固定部から導出す
るとともにハトメ４５の中空部４５ａを介してヨークプ
レート３９の下方へ貫通導出してなるから、スピーカの
低域共振周波数ｆ₀ を決定する要素であるスティフネス
Ｓが大きくならず、低域共振周波数ｆ₀ が上昇しない。
さらに、ボイスコイル３３の両端リード３５ａ、３５ｂ
を接着剤等で固定することによって生じる振動板３１の
ローリングが解消されて振動が疎外され難くなり、動作
時のバランスが良好となるうえ、強入力時の歪みが減少
して耐入力特性も良好となる。

【００１８】ところで、ボイスコイル３３の両端リード
３５ａ、３５ｂは、図３に示すように、互いに離れるよ
うに、好ましくは対称のループを経てからハトメ４５の
中空部４５ａを介してヨークプレート３９の下方へ貫通
導出させると、両端リード３５ａ、３５ｂが振動に一層
影響を与えなくなるうえ、振動板３１の振動時のバラン
スが一層良好となる。図４は従来の小型スピーカと本発
明のそれを比較した周波数特性図である。これによれ
ば、本発明の小型スピーカは、低域共振周波数ｆ₀ が大
きく低下するとともに低域共振周波数ｆ₀ 以下の周波数
特性の傾斜が緩やかになり、低音域の再生能力が大幅に
向上していることが分かる。

【００１９】さらにまた、上述した本発明の小型スピー
カでは、振動板３１が従来のようにリング１９等を使用
せずにヨークフレーム２９に直接固定されているから、
スピーカの外径寸法がほぼ振動板３１の外径と同径にな
り、スピーカとしての外径を抑えながら低域共振周波数
を低くできるし、振動板３１に加わるストレスも軽減で
きる。例えば、インナーイヤータイプの小型のヘッドホ
ンは、スピーカ単体の低域共振周波数ｆ₀ を３００Ｈｚ
以下にすることが好ましいため、通常はスピーカの外径
をφ１６ｍｍに、振動板の厚さを６μｍ程度にしている
が、上述した図１の実施例の構成によれば、外径がφ１
４．５ｍｍに、振動板３１の厚さを９μｍ程度にしても
同等の性能を実現できるから、インナーイヤータイプの
小型ヘッドホンに好適する。

【００２０】また、小型スピーカの製造面では、振動板
３１の厚さを９μｍと言ったように厚くできるため取扱
いが容易になり、振動板３１の成形やスピーカ自体の組
立て等において作業性が向上するし、振動板３１を固定
するためのリング１９が不要となる等して、品質や性能
のバラツキが減少して歩留りが向上し、一層のコストダ
ウンを図ることができる。このように振動板３１をヨー
クフレーム２９に直接固定できる構成は、上述したよう
にフレームを第１のフレームとしてのヨークフレーム２
９と第２のフレームとしてのヨークフレーム３９に分け
て連結し、ボイスコイル３３と振動板３１をヨークフレ
ーム２９に固定した状態から、ヨークフレーム３９と連
結してボイスコイル３３を磁気ギャップ４７に収納でき
るようにしたことによるものである。

【００２１】もっとも、振動板３１をヨークフレーム２
９に直接固定しない構成では、フレームをヨークフレー
ム２９と３９に分割する必要はなく、上述した図５のよ
うな１個のヨークフレーム３を用いても、振動板３１の
振動が両端リード３５ａ、３５ｂによって疎外されるの
を防ぐことができる。さらに、本発明の小型スピーカで
は、上述したようにボイスコイル３３の両端リード３５
ａ、３５ｂをハトメ４５の中空部４５ａを介してヨーク
プレート３９の下方へ貫通導出する構成に限定されず、
広くその両端リード３５ａ、３５ｂをボイスコイル３３
の内側を通してヨークプレート３９の外部へ導出する構
成で実施可能である。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように本発明では、フレー
ムに支持させた振動板にボイスコイルを固定し、そのボ
イスコイルの両端リードをその振動板との固定部からボ
イスコイルの内側を通してそのフレームの外部へ導出さ
せたので、ボイスコイルから引出される両端リードによ
って振動板の振動を疎外させることがなくなり、高忠実
度再生ができる。そして、その両端リードを互いに離れ
るようにその振動板との固定部から導出させた構成で
は、振動板の振動時のバランスが良好となり、特性のば
らつきを確実に抑えることができる。さらに、本発明で
は、第１のフレームに振動板を固定し、この第１のフレ
ームに第２のフレームを連結し、磁気ギャップを有する
磁気回路をそれら第１および第２のフレームに形成し、
その磁気ギャップに挿入するようにしてその振動板にボ
イスコイルを固定するとともに、そのボイスコイルの両
端リードを上記振動板との固定部からそのボイスコイル
の内側を通して外部へ導出したので、上述した効果に加
え、スピーカの外径に対する振動板の実効振動径を大き
くすることが可能となり、耳に入り易いような小型であ
りながら大口径のスピーカ並みの良好な低域共振周波数
特性および耐入力特性が得られるうえ振動板を厚くでき
るので、製造が簡単で安価となる利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る小型スピーカの一実施例を示す縦
断面図である。

【図２】図１のボイスコイルおよびこの両端リードを示
す概略斜視図である。

【図３】本発明に好適するボイスコイルおよびこの両端
リードの他の例を示す概略斜視図である。

【図４】本発明および従来の小型スピーカの周波数特性
図である。

【図５】従来の小型スピーカの縦断面図である。

【図６】図５の振動板、ボイスコイルおよびこの両端リ
ードを示す縦断面図である。

【図７】従来の小型スピーカの他の例を示す縦断面図で
ある。

【図８】従来の小型スピーカの更に他の例を示す縦断面
図である。

【符号の説明】

１、４１ マグネット ３、２５ ヨークフレーム ５、４３ ポールピース ７、４５ ハトメ ９、９ａ 立上り部 １１、３１ 振動板 １３、４７ 磁気ギャップ １５、３３ ボイスコイル １７ａ、１７ｂ、３５ａ、３５ｂ 両端リード １９ リング ２１、３７ ベースプレート ２３、４９ 磁気回路 ２７ ガイド部 ２９ ヨークフレーム（第１のフレーム） ３１ａ センタードーム ３１ｂ ロールエッジ ３１ｃ 環状境界部 ３９ ヨークプレート（第２のフレーム） ４５ａ ハトメの中空部 ５１ クッションピース

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円筒状の磁気ギャップを有する磁気回路
   を形成したフレームと、 このフレームに支持されたスピーカ用の振動板と、 前記磁気ギャップに挿入するようにして前記振動板に固
   定されたリング状のボイスコイルと、 を具備する小型スピーカにおいて、 前記ボイスコイルの両端リードが、前記振動板との固定
   部から前記ボイスコイルの内側を通して前記フレームか
   ら外部へ導出されてなることを特徴とする小型スピー
   カ。
2. 【請求項２】 前記ボイスコイルの両端リードは、互い
   に離れるように前記振動板との固定部から導出されてか
   ら前記ボイスコイル内側を通して導出されてなる請求項
   １記載の小型スピーカ。
3. 【請求項３】 磁気回路の一部を形成する筒型の第１の
   フレームと、 この第１のフレームに連結された第２のフレームであっ
   て、磁気ギャップを有する前記磁気回路を前記第１のフ
   レームとともに形成する第２のフレームと、 前記第１のフレームに支持されたスピーカ用の振動板
   と、 前記磁気ギャップに挿入するようにして前記振動板に固
   定されたリング状のボイスコイルと、 を具備し、 前記ボイスコイルの両端リードが、前記振動板との固定
   部から前記ボイスコイルの内側を通して前記第２のフレ
   ームから外部へ導出されてなることを特徴とする小型ス
   ピーカ。