JPH0626472A - スクロール式圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、特殊な運転による圧縮空間の異常高
圧・異常高温に対する自己防衛が完璧で、摩耗の発生を
防止し、信頼性の向上を図れるスクロール式圧縮機を提
供する。 【構成】圧縮空間ａで圧縮されたガスを吐出する吐出ポ
ート１５の近傍部位と密閉ケース１内とを連通するバイ
パス路２４を設け、このバイパス路に、上記圧縮空間が
異常昇温して設定温度以上に達した状態で熱変形をな
し、バイパス路を開放して圧縮空間の高温・高圧ガスを
放出させる開閉弁２８を具備した

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、たとえば空気調和機の
冷凍サイクルを構成する圧縮機として用いられるスクロ
ール式圧縮機に関する。

【０００２】

【従来の技術】たとえば、空気調和機の冷凍サイクルを
構成する圧縮機においては、通常のロータリ式圧縮機と
比較して、運動騒音が極めて低く、かつ吸込弁や吐出弁
など不要で部品点数が少なくてすみ、しかも圧縮性能の
よいスクロール式圧縮機が多用される傾向にある。

【０００３】この種のスクロール式圧縮機は、密閉ケー
ス内に、固定スクロール翼と旋回スクロール翼とを収容
する。各スクロール翼の渦巻状の翼部相互を噛合させ、
これら翼部と各スクロール翼の鏡板部とで圧縮空間を形
成する。上記旋回スクロール翼を旋回運動させて、圧縮
空間に被圧縮ガスを吸込み、圧縮して吐出するようにな
っている。この種の圧縮機は負荷の変動に関係なく、一
定の圧縮比で運転されることが特徴である。

【０００４】さらに特徴的なこととして、圧縮作用は各
スクロール翼の外周側からガスを吸い込み、旋回スクロ
ール翼の旋回運動にともなって徐々に中心部側に移動
し、中心部に設けられる吐出ポートから吐出されるよう
になっている。ガスは圧縮されて高圧となるとともに温
度上昇して高温化し、そのため、スクロール翼の外周部
に対して圧縮空間の中心部側の温度が極端に高くなる。
この熱影響を受けて、圧縮運転中における各スクロール
翼の翼部高さは、中心部側が高く、外周部は相対的に低
い。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】このような特徴をもつ
圧縮機は、真空運転のごとき、たとえば冷媒ガスを回収
するためのポンプダウンをなす高圧縮比運転では、圧縮
空間の中心部とその近傍では、吐出ガスの再膨張・再圧
縮が行われることから異常高温になり、中心部側の翼部
だけが熱膨張変形する。

【０００６】そして、熱変形した翼部の先端が対向する
鏡板部底面に積極的に当接して、互いの異常摩耗が生じ
たり、極端な場合ではロックする虞れがある。したがっ
て、スクロール式圧縮機は、真空運転ができない、ある
いは真空運転に極めて弱いと言われている。

【０００７】このような不具合の解消のために、たとえ
ば、密閉ケース内高圧タイプで、旋回スクロール翼の背
面側に中間圧の背圧をかける構成で、真空運転による異
常高温時に、密閉ケース内に集溜する潤滑油を、圧力差
で圧縮空間へインジェクションするものがある。

【０００８】また、ガスの吐出室とガス吸込部とを連通
する連通路を備え、さらに連通路の途中にバイメタルを
設けて、異常高温にともなう熱影響を受けて変形させ、
逆流化をなす方式のものなどがみられる。しかしなが
ら、前者の構造では、潤滑性は保持されるが、圧縮空間
の温度低下を図るには不充分であり、その効果はさほど
期待できない。後者の構造では、常に圧縮された状態を
保持しているためにエネルギロスが大きいばかりでな
く、圧縮空間温度の降下速度が遅く、信頼性に乏しい。

【０００９】本発明は上記事情に着目してなされたもの
であり、その目的とするところは、特殊な運転による圧
縮空間の異常高圧・異常高温に対する自己防衛が完璧
で、摩耗の発生を防止し、信頼性の向上を図れるスクロ
ール式圧縮機を提供しようとするものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を満足するため
本発明は、密閉ケース内に、固定スクロール翼と旋回ス
クロール翼を噛合した状態で収容し、これら固定，旋回
スクロールの翼部と鏡板部とで圧縮空間を形成し、旋回
スクロール翼を旋回運動させて、圧縮空間に被圧縮ガス
を吸込み、圧縮して吐出するスクロール式圧縮機におい
て、

【００１１】上記圧縮空間で圧縮されたガスを吐出する
吐出ポートの近傍部位と密閉ケース内とを連通するバイ
パス路を設け、このバイパス路に、上記圧縮空間が異常
昇温して設定温度以上に達した状態で熱変形をなし、バ
イパス路を開放して圧縮空間の高温・高圧ガスを放出さ
せる開閉弁を具備したことを特徴とするスクロール式圧
縮機である。

【００１２】

【作用】このような構成によれば、圧縮空間の異常昇温
時に、開閉弁自体が熱変形をなしてバイパス路を開放
し、よって圧縮空間の温度を速やかに降下させ、各スク
ロール翼の熱変形を阻止する。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の一実施例を、図１にもとづい
て説明する。図中１は密閉ケースであり、この密閉ケー
ス１内上部に支持フレーム２が設けられ、回転軸３を回
転自在に枢支している。上記回転軸３には、後述する圧
縮機構部４が連結され、下部にはステータ５とロータ６
とからなる電動機部７が設けられる。

【００１４】上記圧縮機構部４は、上記支持フレーム２
にオルダムリング１０を介して旋回自在に支持される旋
回スクロール翼１１と、この旋回スクロール翼１１と噛
合する固定スクロール翼１２と、この固定スクロール翼
１２を軸方向に移動可能に支持する支持手段１３、固定
スクロール翼１２の背面側にガス圧を作用させる背圧案
内手段１４および圧縮空間ａの異常高温対策としてのバ
イパス手段４０とから構成される。上記オルダムリング
１０は、旋回スクロール翼１１の自転を規制し、旋回運
動のみ行わせる。

【００１５】上記旋回スクロール翼１１は、上記回転軸
３の上端偏心部３ａに掛合するボス部１１ｃを備えた鏡
板部１１ａと、この鏡板部１１ａの上面側に一体に突設
される渦巻状の翼部１１ｂとからなる。

【００１６】上記固定スクロール翼１２は、鏡板部１２
ａと、この鏡板部１２ａの下面側に一体に突設され旋回
スクロール翼１１の翼部１１ｂと噛合する渦巻状の翼部
１２ｂとからなる。

【００１７】これら旋回，固定スクロール翼１１，１２
の鏡板部１１ａ，１２ａと翼部１１ｂ，１２ｂとで、一
対の圧縮空間ａが形成され、周端部側から被圧縮ガスで
ある冷媒ガスを取り込んで、中心部側に移動するととも
にその容積を縮小させ、圧縮作用を行えるようになって
いる。

【００１８】一方、上記固定スクロール翼１２の周端部
にはガイドリング２７が掛合され、さらにガイドリング
２７にはガイドピン３０が挿入される。上記ガイドピン
３０は、支持フレーム２に螺着され、ガイドリング２７
を軸方向に変位自在に保持している。このように、支持
手段１３が構成され、固定スクロール翼１２を軸方向に
移動可能となっている。

【００１９】一方、上記固定スクロ−ル鏡板部１２ａの
上面部は凹陥状に形成され、この中央部には、上記圧縮
空間ａの渦巻き中心部と連通するよう貫通する吐出ポー
ト１５が設けられる。

【００２０】さらに、固定スクロール鏡板部１２ａ上面
側には、吐出ポート１５を中心として、異なる半径の、
２つの突条１６ａ，１６ｂが一体に設けられ、これら互
いの突条１６ａ，１６ｂ間の鏡板部１２ａ部位には、こ
こでは一対の中間圧導入孔１７，１７が貫通して設けら
れる。

【００２１】このような固定スクロール翼１２の上面側
には、密閉ケース１内部を上端部空間と下部空間とに仕
切る背圧板１８が、突条１６ａ，１６ｂ上端と狭小の間
隙を存して密閉ケース１に取付固定される。

【００２２】この背圧板１８は、中央部に逆止弁１９を
備えた弁座部２０が設けられ、上記吐出ポート１５と連
通する。換言すれば、上記吐出ポート１５は逆止弁１９
を備えた弁座部２０を介して、背圧板１８の上部側空間
と連通する。

【００２３】上記弁座部２０の周囲で、かつ背圧板１８
の下面側には、上記固定スクロール翼１２に設けられる
突条１６ａ，１６ｂの半径よりも僅かに大きな半径をも
って、突条２１ａおよび段部２１ｂが設けられる。

【００２４】隣接する突条１６ａと２１ａ，１６ｂと２
１ｂ間に、それぞれシールリング２２ａ，２２ｂが介在
される。このことから、固定スクロール翼１２が背圧板
１８との狭小の間隙の範囲内で軸方向に移動しても、隣
接する突条１６ａと２１ａ，１６ｂと２１ｂ相互間にお
けるシールは完全なものとなっている。

【００２５】固定スクロール翼１２の吐出ポート１５周
囲に設けられる凹陥部と背圧板弁座部２０とで、圧縮空
間ａから吐出される高圧ガスが導かれる高圧吐出室２２
が形成され、かつ半径が異り、互いに隣接する突条１６
ａと２１ａ，１６ｂと２１ｂ相互間に形成される空間部
は、上記中間圧導入孔１７と連通する中間圧室２３とな
り、これらで上記背圧案内手段１４が構成される。一
方、旋回スクロール鏡板部１１ａの中央部分と、この鏡
板部１１ａの外周面とは、バイパス路２４で連通され
る。

【００２６】なお説明すれば、このバイパス路２４は、
図３に拡大して示すように、鏡板部１１ａの溝底に開口
する凹陥部２５およびこの凹陥部２５底面と鏡板部１１
ａの外周面と連通する細孔２６からなる。

【００２７】上記バイパス路２４の凹陥部２５内には、
比較的薄板で、かつ熱伝導率が高く、熱影響を受けて容
易に変形し易い素材で形成された開閉弁２８が収容さ
れ、バイパス路２４を開閉自在にしている。

【００２８】上記開閉弁２８を、図２に拡大して示す。
これは中央部分が平面円形で、かつ断面が半球状に曲成
される弁本体２８ａと、この弁本体２８ａの周端部に所
定間隔を存して、放射状に、一体に突設される複数の脚
部２８ｂ…とからなる。高温の熱影響を受けない状態
で、開閉弁２８の脚部２８ｂ…は図示のように、略水平
方向に延出される。

【００２９】極めて高温の雰囲気下にさらされると、弁
本体２８ａの断面を形成する曲率半径が大となるととも
に、脚部２８ｂ…が弁本体２８ａに対して鋭角状に折曲
変形する。

【００３０】図３に実線で示すように、上記開閉弁２８
は、高温の熱影響を受けない状態で、弁本体２８ａの部
分が凹陥部２５底面の細孔２６開口内に挿入され、ここ
を閉成する。上記脚部２８ｂ…の先端は凹陥部２５底面
上に載る。

【００３１】同図に二点鎖線で示すように、異常高温の
熱影響を受けた状態で、弁本体２８ａの曲率半径が大と
なり、脚部２８ｂ…が弁本体２８ａに対して鋭角状に折
曲変形される。弁本体２８ａは細孔２６開口から離間し
て、脚部２８ｂ…相互間を介して凹陥部２５と細孔２６
との間が連通される。

【００３２】なお、上記凹陥部２５内には、断面逆Ｕ字
状に形成されるストッパ２９が装着される。このストッ
パ２９の上面部は開口され、ガスの流通の案内をなすと
ともに、上記開閉弁２８の凹陥部２５からの飛び出しを
阻止する。このように、上記バイパス路２４と開閉弁２
８およびストッパ２９とで、上記バイパス手段４０が構
成される。

【００３３】再び図１に示すように、密閉ケース１の上
部側面には吐出管３１が接続され、密閉ケース１内の背
圧板１８上部空間であるマフラ室３２と、冷凍サイクル
を構成する図示しない凝縮器とを連通する。密閉ケース
１の下部側面には吸込管３３が接続され、密閉ケース１
内下部空間と冷凍サイクルを構成する図示しない蒸発器
とを連通する。

【００３４】しかして、電動機部７に通電して圧縮機構
部４を駆動すると、蒸発器で蒸発した低圧の冷媒ガス
が、吸込管３３を介して密閉ケース１内に導入され、背
圧板１８より下部空間に充満する。

【００３５】この冷媒ガスは、旋回スクロール翼１１と
固定スクロール翼１２とで形成される圧縮空間ａの外周
側に吸込まれる。そして、旋回スクロール翼１１の旋回
運動にともなって徐々に中心部に移送され、かつ空間容
量が減少することにより圧縮される。

【００３６】所定圧まで上昇したところで、高圧の冷媒
ガスは吐出ポート１５から高圧吐出室２２へ吐出され
る。このような通常運転状態では、圧縮空間ａの特に吐
出ポート１５近傍が異常高温にならないから、開閉弁２
８はバイパス路２４を閉成しており、逆止弁１９は弁座
部２０を開放する。高圧吐出室２２の高圧ガスは、弁座
部２０を介して背圧板１８より上部空間のマフラ室３２
に充満し、さらに吐出管３１を介して外部の凝縮器に導
かれる。この凝縮器で高圧の冷媒ガスは凝縮し、液冷媒
に変ってから、断熱膨張をなし、さらに蒸発器に導かれ
て蒸発し、被空調室に対する冷房作用をなす。

【００３７】なお、吐出ポート１５から吐出される高圧
ガスは一旦高圧吐出室２２に充満して、固定スクロール
翼１２中央部に高圧の背圧をかける。また、圧縮空間ａ
から中間圧のガスの一部が中間圧導入孔１７を介して中
間圧室２３へ導かれ、ここに充満して固定スクロール翼
１２周端部に中間圧の背圧をかける。

【００３８】このように、背圧案内手段１４が固定スク
ロール翼１２に効果的な背圧をかけるので、固定スクロ
ール翼１２は支持手段１３によって軸方向へ移動可能に
支持されているが、軸方向への移動を規制されて、旋回
スクロール翼１１との圧縮空間ａを形成するクリアラン
スを最適な状態に保持する。

【００３９】運転条件によっては、圧縮空間ａに液冷媒
を吸い込むことがあり、このときに異常高圧に昇圧す
る。背圧案内手段１４の背圧よりも圧縮空間ａの圧力が
上回り、固定スクロール翼１２は軸方向に移動する。

【００４０】旋回スクロール翼１１とで形成される圧縮
空間ａのクリアランスが拡大することとなり、圧縮空間
ａの異常高圧ガスを密閉ケース１内へ逃がす。各スクロ
ール翼部１１ｂ，１２ｂのストレスが解消され、いわゆ
るコンプライアンス機能を発揮する。

【００４１】一方、たとえばガス回収のための真空運転
をなすと、圧縮空間ａの特に中心部である吐出ポート１
５に対向する部分は、吐出ガスの再膨張・再圧縮がなさ
れるところから異常高温化する。

【００４２】圧縮空間ａの中心部に備えられる開閉弁２
８は、この高熱雰囲気にさらされることとなり、先に図
３で説明したように変形し、バイパス路２４の開口端を
開放する。高圧・高温ガスは、圧縮空間ａから直ちにバ
イパス路２４を介して密閉ケース１内に放出される一
方、逆止弁１９は弁座部２０を閉成する。したがって、
高圧吐出室２２の圧力は減少し、固定スクロール翼１２
背面側から旋回スクロール翼１１への押し付け力が小さ
くなる。

【００４３】高圧吐出室２２の容積は、上記マフラ室３
２の容積よりも遥かに小さく、開閉弁２８がバイパス路
２４を開放しても、密閉ケース１内（低圧側）の圧力の
上昇程度が僅かであり、再圧縮ロスが小さくてすむ。

【００４４】結論として、開閉弁２８が開放することに
より、ガスはバイパス路２４を介して密閉ケース１内の
背圧板１８より下部空間に戻ってしまうから、圧縮が無
効になる。

【００４５】この状態を継続すれば、自然的に圧縮空間
ａの中心部近傍の温度が低下し、各スクロール翼部１１
ｂ，１２ｂの端部の寸法形状は復帰して、正常な圧縮運
転に戻る。このように、圧縮空間ａ内の温度によって、
有効な圧縮作用と、無効圧縮作用を自己制御でき、異常
高圧・異常高温に対する自己防衛をなす。

【００４６】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、圧
縮空間で圧縮されたガスを吐出する吐出ポートの近傍部
位と密閉ケース内とを連通するバイパス路を設け、この
バイパス路に、圧縮空間が異常昇温して設定温度以上に
達した状態で熱変形をなし、バイパス路を開放して圧縮
空間の高温・高圧ガスを放出させる開閉弁を具備したか
ら、特殊な運転による圧縮空間の異常高圧・異常高温に
対する自己防衛が完璧で、摩耗の発生を確実に防止し、
信頼性の向上を図れる効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す、スクロール式圧縮機
要部の縦断面図。

【図２】同実施例の、開閉弁の斜視図。

【図３】同実施例の、バイパス路と開閉弁の作用を説明
する図。

【符号の説明】

１…密閉ケース、１２…固定スクロール翼、１２ａ…
（固定スクロール翼の）鏡板部、１２ｂ…（固定スクロ
ール翼の）翼部、１１…旋回スクロール翼、１１ａ…
（旋回スクロール翼の）鏡板部、１１ｂ…（旋回スクロ
ール翼の）翼部、ａ…圧縮空間、１５…吐出ポート、２
４…バイパス路、２８…開閉弁。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田井 裕一 静岡県富士市蓼原336番地 株式会社東芝 富士工場内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】密閉ケース内に、固定スクロール翼と旋回
   スクロール翼を噛合した状態で収容し、これら固定，旋
   回スクロールの翼部と鏡板部とで圧縮空間を形成し、旋
   回スクロール翼を旋回運動させて、圧縮空間に被圧縮ガ
   スを吸込み、圧縮して吐出するスクロール式圧縮機にお
   いて、上記圧縮空間で圧縮されたガスを吐出する吐出ポ
   ートの近傍部位と密閉ケース内とを連通するバイパス路
   を設け、このバイパス路に、上記圧縮空間が異常昇温し
   て設定温度以上に達した状態で熱変形をなし、バイパス
   路を開放して圧縮空間から高圧・高温ガスを放出させる
   開閉弁を具備したことを特徴とするスクロール式圧縮
   機。