JPH06264311A - 高性能炭素繊維及び/又は黒鉛繊維の製造法 - Google Patents

高性能炭素繊維及び/又は黒鉛繊維の製造法

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JPH06264311A
JPH06264311A JP7518893A JP7518893A JPH06264311A JP H06264311 A JPH06264311 A JP H06264311A JP 7518893 A JP7518893 A JP 7518893A JP 7518893 A JP7518893 A JP 7518893A JP H06264311 A JPH06264311 A JP H06264311A
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carbon fiber
air
atmosphere
graphite
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JP7518893A
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Kunio Maruyama
國男 丸山
Akira Okazaki
章 岡崎
Akiyoshi Yukatani
明吉 床谷
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Sumika Hercules Co Ltd
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Sumika Hercules Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 乾燥空気又は乾燥した酸化性のガスを用いて
プレカーサーを耐炎化し、更に1000℃までの炭素化
工程の間に耐炎化繊維及び炭素繊維中間体が吸湿するの
を防止することにより品質の安定した高性能炭素繊維及
び/又は高性能黒鉛繊維の工業生産を可能ならしめる。 【構成】 乾燥した空気又は乾燥した酸化性のガスを用
いることにより常に絶対湿度が水12g/kg・ガス以
下の乾燥した空気又は酸化性のガスを用いて耐炎化繊維
を作成する。この耐炎化繊維を炭素化するに先立って含
有水分が2重量%以下になるように保持又は乾燥してか
ら炭素化する。更に1000℃以下で処理された炭素繊
維中間体が湿った空気又はガスと接触する場合は含有水
分が2重量%以上にならないように吸湿を防止してから
不活性ガス中で炭素化及び/又は黒鉛化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高性能炭素繊維及び/又
は黒鉛繊維の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維及び/又は黒鉛繊維は、その前
駆体繊維(以下プレカーサーと称する)であるアクリロ
ニトリル系、レーヨン系、ポリビニールアルコール系等
の有機繊維やピッチ系の無機繊維を、200〜300℃
の加熱された酸化性の雰囲気中で酸化繊維(耐炎化繊維
と称されることが多い)に転換した後、更に高温の不活
性雰囲気中で熱処理することにより工業的に製造されて
いる。
【0003】良質な炭素繊維及び/又は黒鉛繊維を製造
するためには、酸化性の雰囲気中で熱処理する酸化工程
(耐炎化工程とも称される)が非常に重要であることは
良く知られており、多くの提案がなされている。しかし
その多くは、この酸化工程が繊維の熱収縮と大量の発熱
を伴う反応であることに注目したものである。
【0004】この酸化処理においてはオゾン、酸化窒素
等の特殊な酸化性のガスを用いる方法も提案されてはい
るが、工業的には安価な大気(空気)を加熱して用いる
のが一般的である。
【0005】本発明者等も炭素繊維及び/又は黒鉛繊維
の製造に際して、これまで大気を取り入れて加熱循環す
る方式の熱風循環式耐炎化炉を用いて、中間品である耐
炎化繊維を製造し、これを更に高温の不活性雰囲気中で
炭素繊維及び/又は黒鉛繊維に転換する方法を採用して
きたが、この方式で特に問題は生じていなかった。
【0006】ところが近年、より高性能な超高強度炭素
繊維や高強度高弾性黒鉛繊維が要求されるようになって
来たため、これらのより適切な製造方法を見出さんがた
めの詳細な研究を重ねて来た結果、意外な事実を見付
け、新たな製造法を開発することが出来た。
【0007】即ち製造した季節により炭素繊維及び/又
は黒鉛繊維の強度に大きな差が生じることがあることが
判明した。しかも高強度品ほどこの傾向が強く、通常品
ではあまり大きな差異は認められなかった。
【0008】この原因を鋭意追求したところ、耐炎化の
ために用いている大気中の水分が形成される炭素繊維及
び/又は黒鉛繊維の強度に大きな影響を与えているとい
う新たな事実を見出した。しかも大気中の水分がある量
を越えると急激に炭素繊維及び/又は黒鉛繊維の強度が
低下することも判明した。
【0009】耐炎化繊維の製造工程において、雰囲気中
の水分が製品となる炭素繊維及び/又は黒鉛繊維の品質
に影響を与えるということについて論じた文献や特許は
これまで全く見出されない。
【0010】そのために本発明者等自身も冬季と夏期の
炭素繊維及び/又は黒鉛繊維の品質差が、大気中の水分
の含有量、即ち絶対湿度の違いから生じるものであると
いう結論に達するためには可成りの期間と実験の繰り返
しを必要とした。
【0011】1年間を通じて同じプレカーサーを同一設
備で同一条件で耐炎化及び炭素化及び/又は黒鉛化する
と共に、乾燥空気に水蒸気を混合して絶対湿度の異なる
空気を調整し、これを加熱して耐炎化炉に吹き込む等の
実験を行なってこの現象を確認した。
【0012】この実験によって大気中の水分の影響を明
らかにすると共に、乾燥空気を用いる効果も確認し、本
発明に到達した。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】即ち大気中の水分の変
動に左右されないで、常に品質(特に強度と伸度)の安
定した高性能炭素繊維及び/又は高性能黒鉛繊維の工業
的な製造方法について多くの実験を繰り返して本発明に
到達した。
【0014】本発明の目的は、工業製品として重要な品
質の安定した高性能炭素繊維及び/又は高性能黒鉛繊維
を製造するための製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、アクリロニト
リルを90重量%以上含有するアクリロニトリル系プレ
カーサー(耐炎化処理工程中のプレカーサーも含む)
を、絶対湿度が水12g/kg・ガス以下、より好まし
くは水10g/kg・ガス以下となるように調整し、乾
燥した酸化性のガスを用い、これを加熱した処理室の中
で200〜300℃で耐炎化せしめた後、不活性雰囲気
中で熱処理して炭素化繊維及び/又は黒鉛化繊維に転換
する方法によって達成することが出来る。
【0016】本発明を図3を参照して以下に説明する。
乾燥した酸化性の雰囲気の調整は、図3において2から
送気される乾燥空気又は乾燥した酸化性ガスと、3から
送気される大気(湿った空気)とを混合器4で絶対湿度
が水12g/kg・乾燥空気以下となるように混合し、
これを熱交換器5に通して予熱し、送気ファン8cを用
いて熱風発生器7に送り込む。
【0017】熱風発生器7で所定の温度に加熱された熱
風は、送気ファン8aにより送気ダクト10を通って、
耐炎化処理室9へ送り込まれ、被耐炎化繊維1を耐炎化
せしめる。耐炎化処理室9へ送り込まれた熱風は、熱風
循環排出ダクト11を通った後、循環ファン8bにより
熱風発生器7に戻され循環使用されるが、その一部は風
量調整器12を経て熱交換器5に送られる。循環使用さ
れる熱風と熱交換器5に送られる熱風との比率は、風量
調整器12で調整される。熱交換器5に送られた熱風
は、熱交換器5に送り込まれた調整された乾燥空気を予
熱した後、排気口6から排出される。
【0018】更に炭素化に先立って、200℃以下の温
度で該耐炎化繊維の含有水分を2重量%以下に保持若し
くは減少せしめた後、不活性雰囲気中で熱処理して炭素
繊維及び/又は黒鉛繊維に転換する方法を併用すること
がより適切であることが判った。
【0019】この方法を図4を参照して以下に説明す
る。図4に示したように、耐炎化装置21を出た耐炎化
繊維27は、吸湿防止装置23を用い、入り口のスリッ
ト26aから吸湿防止装置23の中に入り移送ローラー
24a,24b,24c,24d,24eを経て出口ス
リット26bから炭素化装置22に導入される。吸湿防
止装置23には送気口25より200℃以下の乾燥した
空気又は乾燥したガスが送り込まれ、該耐炎化繊維が吸
湿して水分が2重量%より大になることのないように処
理される。ここにおいて乾燥した空気又はガスを用いて
吸湿を防止する代わりに移送ローラー24a〜24eを
加熱ローラーに変えて該耐炎化繊維を200℃以下に加
熱した乾燥ローラーで含有水分が2重量%以下になるよ
うに乾燥してから炭素化装置22に導入する方法も採用
出来る。
【0020】耐炎化繊維のみならず炭素化工程の途中
で、1000℃以下で熱処理された炭素繊維中間体(以
下炭素繊維中間体と称する)も湿った大気やガスと接触
すると容易に水分を吸収する。
【0021】参考までに耐炎化繊維と炭素繊維中間体の
吸湿性のデーターの一例を図5に示した。この吸湿性は
温度35℃、相対湿度52%(絶対湿度 水18.3g
/kg・乾燥空気)の室内で測定したものであるが、こ
の図5から明らかなように炭素繊維中間体は非常に吸湿
速度が早いため、吸湿防止装置を用いて含有水分が2重
量%を越えないように処置を施して次の炭素化装置に導
き、更に高温の不活性ガス中で熱処理することが必要で
ある。
【0022】このためには図6に示したように、第1炭
素化装置61を出た炭素繊維中間体66を吸湿防止装置
63に導き、移送ローラー64a,64b,64c,6
4d,64eを用いて第2炭素化装置62に導入する。
吸湿防止装置63と第2炭素化装置62は65によって
連結されているため、第2炭素化装置62から排出され
る乾燥した高温の不活性ガスは、吸湿防止装置63に送
り込まれるので特別な乾燥用のガスを用いなくても炭素
繊維中間体の吸湿を容易に防止することが出来る。
【0023】耐炎化繊維を製造する際に、耐炎化装置に
送気される空気の絶対湿度と得られた炭素繊維の強度の
関係の一例は図1に示した。
【0024】又絶対湿度が水1.0g/kg・空気の乾
燥した空気(温度26℃、相対湿度5%の空気)に水蒸
気を混合して作成した湿り空気を用いて耐炎化し、これ
を更に炭素化した場合の炭素繊維の強度の一例を図2に
示した。
【0025】図1,図2から明らかな如く耐炎化に用い
る空気1kg中に12gより大なる水を含むと(即ち絶
対湿度 水12g/kg・乾燥空気より大)炭素繊維の
強度が急に低下する。特に空気中の水が15g/kg・
空気以上になると炭素繊維の強度は10%以上も低下
し、日本の夏期のような条件下では高強度炭素繊維を安
定に生産することが不可能となる。
【0026】更に天候は日内でも日間でも変化するた
め、当然のことながら大気をそのまま使用していたので
は大気中の水分変化の影響を受けて炭素繊維の強度が天
候の変化と共に大きく変動してしまうのである。
【0027】このように湿った空気を用いたために強度
が低くなった炭素繊維を、更に高温の不活性雰囲気中で
黒鉛化のための熱処理をしても高強度の黒鉛繊維は得ら
れない。
【0028】通常炭素化装置は、高温を得るための発熱
体の種類や特性上の制約及び炭素化時に発生する排ガス
やタール物質を装置外に取り出す関係で、2機以上の炭
素化装置に分離されている。そのため第1の炭素化装置
を出た炭素繊維中間体は一旦大気と接触することにな
る。前述した如くその際の炭素繊維中間体の吸湿速度は
非常に速くその吸湿量も多い(図5参照)。
【0029】しかし1000℃以上で処理された炭素繊
維は、大気と接触しても吸湿量は極く僅かであり、10
00℃以上の熱処理を受けた炭素繊維中間体が湿った大
気やガスと接触しても問題となるほどの吸湿は起こらな
い。
【0030】更に水を2重量%より大きく吸収した炭素
繊維中間体をそのまま炭素化若しくは黒鉛化してもやは
り高強度の炭素繊維や黒鉛繊維が得られ難い。
【0031】これらの課題を解決するためには以下に示
したような具体的な手段が必要となる。
【0032】1)耐炎化時の乾燥空気の調整法 空気を加圧圧縮してこれを冷却して凝縮水を取り除く、
或いは更に除湿装置を併用して乾燥空気を作成する。こ
の乾燥空気、又は絶対湿度が12g/kg・空気を越え
ない範囲で乾燥空気と通常の空気を混合したものを加熱
して耐炎化装置に送気することにより、常に耐炎化装置
に取り込む空気の絶対湿度を水12g/kg・空気以下
に制御する。耐炎化装置の加熱乾燥空気の循環系統のモ
デルの一例を図3に示した。
【0033】2)耐炎化繊維の含有水分を2重量%以下
に減少させる方法 耐炎化装置と炭素化装置の間で、耐炎化繊維と湿った大
気が接触しないように200℃以下の乾燥空気を用いて
大気を遮断する。或いは耐炎化繊維が炭素化装置に入る
直前で200℃以下の熱風又は加熱ローラー等を用いて
耐炎化繊維を乾燥してから炭素化装置へ導入する(図4
参照)。
【0034】3)炭素繊維中間体の水分を2重量%以下
にする方法 1000℃以下の炭素繊維中間体が湿った大気と接触し
ないように、第1炭素化装置と次の第2炭素化装置の間
に、吸湿防止のために箱型の装置を設け、この中に乾燥
空気又は乾燥したガスを送気して大気を遮断する。本発
明者等は第2炭素化装置の排ガスを利用することによ
り、吸湿防止と炭素繊維中間体の予熱を兼ねる方法を採
用した(図6参照)。
【0035】もし第2炭素化装置での最高処理温度が1
000℃以下であれば、更に第2炭素化装置と第3炭素
化装置の間にも図6と同様な吸湿防止装置を設ければ良
い。
【0036】
【作用】何故湿った酸化性の雰囲気中で耐炎化したり、
吸湿した耐炎化繊維や炭素繊維中間体を炭素化若しくは
黒鉛化しても高強度の炭素繊維又は黒鉛繊維が得られな
いのかその理由は明らかではないが、得られた炭素繊維
の単繊維引っ張り試験時の破断面付近を高倍率の走査型
電子顕微鏡で観察すると、外表面の極く小さな凹みや溝
のような欠陥と思われる所から破断が開始しているよう
に見受けられる繊維が、乾燥空気や吸湿防止処置を施し
たものに比べて湿った空気で耐炎化したり吸湿したまま
炭素化したものの方が明らかに多いことが判った。
【0037】更に単繊維引っ張り試験の強度分布図にお
いても、本発明に基づく炭素繊維と、全く水分に対して
配慮せずに製造した炭素繊維では、強度の平均値が後者
の方が低いばかりでなく、強度分布の幅にも明らかな差
があり、前者に対して後者の標準偏差は1.5〜2倍も
大きいことが判った。
【0038】これは耐炎化や炭素化時の水分が、1本1
本の炭素繊維フィラメントの強度を低下させているため
に、その集合体である炭素繊維束又は黒鉛繊維束(スト
ランド)の強度を必然的に低下させてしまっているため
と考えられる。
【0039】このことから耐炎化及び炭素化において、
水が炭素繊維の表面の欠陥を増大させているものと判断
される。
【0040】
【実施例】本発明をより具体的に説明するために、以下
に代表的な実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に
よってその範囲に何らの限定を受けるものではない。
尚、以下の実施例に示される%は特に限定のない限りは
重量%である。
【0041】本例中の耐炎化繊維や炭素繊維中間体の水
分、空気の絶対湿度、ストランド強度は以下の方法によ
り測定した。
【0042】(1)耐炎化繊維及び炭素繊維中間体の水
分測定:約5gの耐炎化繊維又は炭素繊維中間体を、減
圧乾燥機(30mmHg)を用いて70℃で2時間乾燥
し、乾燥前後の重量変化より算出した。
【0043】(2)空気の絶対湿度:テストターム株式
会社製、温湿度測定装置FC−452を用いて温度、相
対湿度、絶対湿度を測定した。尚絶対湿度は水g/kg
・乾燥空気に換算した。
【0044】(3)ストランド物性測定:JIS−R−
7601の方法に従いマトリックス樹脂としてはARA
LDAITE XD911(エポキシ樹脂の商標名、長
瀬チバ株式会社製)/フルフリルアルコール=3/2の
混合液を用いて樹脂含浸ストランドを作成し、150℃
で45分間硬化したものについて引っ張り試験を行なっ
て強度、弾性率等を求める。
【0045】実施例 1 アクリロニトリル97%及びメタアクリル酸3%からな
る共重合体を、52%のチオシアン酸ナトリウム水溶液
に溶解してなる紡糸原液を、乾湿式紡糸法により紡糸、
水洗、延伸処理して得た水膨潤体繊維に、アミノ変成ポ
リシロキサン系の油剤を1.2%付与してから、乾燥す
ることにより作成されたプレカーサーを、温度の異なる
3台の熱風循環式耐炎化装置中に各20分間滞留するよ
うに連続的に通過させて耐炎化せしめた。ここで用いた
耐炎化装置は図3の本発明のものに対して乾燥した加圧
空気を吹き込む配管2がなく、単に空気を加圧して吹き
込むだけの従来技術による耐炎化装置である。図4に示
す如く耐炎化装置21を出た耐炎化繊維は、吸湿防止装
置23(図4)又は61(図6)を経由して、最高温度
が500℃の第1炭素化装置22を出た後、図6に示し
た如き炭素繊維中間体の吸湿防止装置63を経て、最高
温度1000℃の第2炭素化装置62に導き、更に最高
温度1400℃の第3炭素化装置(図示せず)を用いて
炭素繊維を得た。尚各炭素化装置は、有効加熱領域を各
1分間滞留するように連続的に通過させた。
【0046】プレカーサーとしてはA;72000デニ
ール/12000フィラメントと、B;12000/1
2000フィラメントの2種を作成して使用した。
【0047】ここで用いた耐炎化装置は、大気を取り込
みこれを加熱ヒーターにより加熱して炉内を循環する方
式であり、季節により大気の温度、相対湿度が変わるた
め絶対湿度も変動し、絶対湿度は水約3g〜20g/k
g・乾燥空気の範囲で変化した。
【0048】耐炎化装置21を出た耐炎化繊維は、図4
に示した吸湿防止装置23を用いたため第1炭素化装置
22(図4)又は61(図6)に入る直前の水分は常に
0.4〜0.6%の範囲に管理されていた。
【0049】又図6における第1炭素化装置61と第2
炭素化装置62の間には図6に示したような吸湿防止装
置63を設置したため第2炭素化装置62に入る炭素繊
維中間体の水分は0.3〜0.6%であった。
【0050】このようにして得られた炭素繊維のストラ
ンド強度と使用した耐炎化装置に取り込んだ空気の絶対
湿度との関係は後掲の表1及び図1に示した。
【0051】表1、図1から明らかな如く耐炎化装置に
取り込む大気(空気)の絶対湿度が、得られる炭素繊維
の強度に大きく影響する。弾性率の変化は強度に比べる
と小さいため、結果的に伸度(強度と弾性率の比が伸度
に相当する)も低下する。
【0052】常に高強度炭素繊維を安定に製造するため
には、耐炎化に用いる大気(空気)の水分を減少する手
段を必要とすることが明確になった。
【0053】実施例 2 実施例1と同様な設備を用いて実施例1と同様にして作
成したプリカーサーC;9600デニール/12000
フィラメントを実施例1と同様に耐炎化及び炭素化して
炭素繊維を得た。但し、耐炎化装置に取り込む空気は、
乾燥空気(水1.0g/kg・空気)に水蒸気を混合し
て絶対湿度が約2.5〜21g/kg・空気となるよう
に調合したものを用いた。図3の装置を用い配管2から
加圧乾燥空気を吹き込み、配管3からは乾燥空気にミス
ト発生装置を用いて相対湿度100%の空気を作り、こ
の湿った空気の吹き込み量を変えることにより絶対湿度
を変化させた。
【0054】得られた炭素繊維の強度は後掲の表2及び
図2に示した。
【0055】この湿り空気によるモデル実験により、耐
炎化装置に取り込む空気中の水分(絶対湿度)が炭素繊
維の強度に大きく影響することがより明瞭になった。
【0056】特に絶対湿度が12g/kg・空気以下と
それより大では大きな差が生じ、耐炎化装置に取り入れ
る空気中の水分を十分管理しない限り、強度の安定した
高性能炭素繊維が製造出来ないことが立証された。
【0057】実施例 3 実施例1で用いたプレカーサーA及びBを、図4に示し
たように耐炎化装置21に取り入れる空気の絶対湿度を
乾燥空気(水1.0g/kg・空気)を用いて常に12
g/kg・空気以下になるように配慮した耐炎化装置2
1を用いて耐炎化し、実施例1と同様に炭素化して炭素
繊維を得た。尚乾燥空気と大気(水18.8g/kg・
空気)の混合比を変えることにより絶対湿度を変化させ
た。
【0058】又比較のために乾燥空気を用いずに大気の
みで同様に耐炎化し、更に耐炎化繊維や、第1炭素化装
置61(図6)を出た炭素繊維中間体66(図6)に対
しても吸湿防止装置を用いずに同一の条件で炭素化し
た。得られた炭素繊維の物性は後掲の表3に示した。
【0059】この結果から明らかな如く大気中の水分が
高い場合でも、本発明のように乾燥空気を用いて、絶対
湿度を水12g/kg・空気以下に制御すれば、常に高
強度、高伸度炭素繊維が安定に製造出来ることが判る。
【0060】一方湿った大気で耐炎化糸吸湿防止をせず
に炭素化した比較例の炭素繊維は低強度であった。
【0061】実施例 4 実施例3に従って炭素化し、1400℃の第3炭素化装
置を出た炭素繊維を、更にアルゴン雰囲気中で2450
℃で2%の伸張を与えながら3分間加熱して黒鉛繊維を
得た。
【0062】比較のために実施例3の比較例の炭素繊維
も同一条件で黒鉛化した。
【0063】得られた黒鉛繊維の物性は後掲の表4に示
した。
【0064】この結果から明らかな如く、比較例に対し
て本発明に基づく方法によって得られた黒鉛繊維は、弾
性率が高いばかりでなく、強度が著しく高くそれがため
にこれまで高弾性黒鉛繊維では容易に得られなかった1
%以上の伸度を有する高性能黒鉛繊維が得られた。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【発明の効果】本発明はプレカーサーの耐炎化に際し
て、乾燥した空気又は酸化性のガス(絶対湿度が水12
g/kg・乾燥ガス以下)中で耐炎化した後、該耐炎化
繊維の含有水分を2重量%以下となるように200℃以
下で吸湿防止若しくは乾燥してから炭素化装置に導き、
又不活性ガス中で炭素化する場合に1000℃以下で処
理された炭素繊維中間体が湿った空気又はガスと接触す
る際には吸湿防止処理を施すことにより、何れも含有水
分が常に2重量%以下になるよう配慮することにより、
水分による炭素繊維及び/又は黒鉛繊維の強度低下を防
止し、優れた強度、伸度を有する高性能炭素繊維及び/
又は高性能黒鉛繊維が容易に得られる。
【0070】更に常に強度、弾性率、伸度等の変動の少
ない安定した品質の製品の工業的生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のプレカーサーA及びBの耐炎化の際
に、耐炎化装置に取り込んだ大気(空気)の絶対湿度
と、その耐炎化繊維を炭素化して得られた炭素繊維の強
度の関係を示したものである。
【図2】実施例2のプレカーサーCの耐炎化の際に、乾
燥空気及び乾燥空気に水蒸気を混合して調整した空気を
用いて耐炎化し、これを吸湿防止をしながら炭素化して
得た炭素繊維の強度と耐炎化時の空気の絶対湿度との関
係を示したものである。
【図3】本発明に基づく調整した乾燥空気を取り込んで
耐炎化する場合の耐炎化装置内の概略及び加熱空気の循
環経路の一例を示したものである。
【図4】耐炎化繊維の吸湿を防止するための装置の一例
を示したものである。
【図5】参考例として耐炎化繊維とその耐炎化繊維を5
00〜1050℃で熱処理して得た炭素繊維中間体と
を、乾燥後温度35℃、相対湿度52%(絶対湿度1
8.3g/kg・乾燥空気)の室内に放置した場合の吸
湿速度を測定した結果を図示したものである。
【図6】炭素繊維中間体の吸湿防止装置の一例を示した
ものである。
【符号の説明】
1 被耐炎化繊維 2 加圧乾燥空気の配管 3 加圧大気の配管 4 乾燥空気と大気の混合器(絶対湿度調整器) 5 熱交換器 6 排気ガスの排気口 7 熱風発生器 8a,8b,8c 循環ファン 9 耐炎化処理室 10 熱風送入ダクト 11 熱風循環排出ダクト 12 熱交換器へ入る熱風の風量調整器 21 耐炎化装置 22 第1炭素化装置 23 吸湿防止装置 24a,24b,24c,24d,24e 耐炎化繊維
移送用ローラー 25 乾燥空気送入口 26a,26b 耐炎化繊維の入り口及び出口スリット 27 耐炎化繊維 61 第1炭素化装置 62 第2炭素化装置 63 吸湿防止装置 64a,64b,64c,64d,64e 炭素繊維中
間体移送用ローラー 65 第2炭素化装置と吸湿防止装置の結合部 66 炭素繊維中間体(被処理繊維)
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年7月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、アクリロニト
リルを90重量%以上含有するアクリロニトリル系プレ
カーサー(耐炎化処理工程中のプレカーサーも含む)
を、絶対湿度が水12g/kg・ガス以下、より好まし
くは水10g/kg・ガス以下となるように調整した乾
燥した酸化性のガスを用い、これを加熱した処理室の中
で200〜300℃で耐炎化せしめた後、不活性雰囲気
中で熱処理して炭素化繊維及び/又は黒鉛化繊維に転換
する方法によって達成することが出来る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アクリロニトリルを90重量%以上含有
    するアクリロニトリル系前駆体繊維を、絶対湿度が水1
    2g/kg・ガス以下になるように調整した酸化性の雰
    囲気中で200〜300℃で耐炎化せしめた後、不活性
    雰囲気中で熱処理することを特徴とする高性能炭素繊維
    及び/又は黒鉛繊維の製造法。
  2. 【請求項2】 耐炎化装置を出た該耐炎化繊維を炭素化
    不活性雰囲気中で熱処理する前に200℃以下の温度で
    その含有水分を2重量%以下に保持するか又は減少せし
    めた後、不活性雰囲気中で熱処理することを特徴とする
    請求項1の高性能炭素繊維及び/又は黒鉛繊維の製造
    法。
  3. 【請求項3】 炭素化工程の途中で1000℃以下で熱
    処理された炭素繊維中間体が大気若しくは湿ったガスと
    接触する際に、該繊維の含有水分が2重量%を越えない
    ように吸湿を防止した後、熱処理することを特徴とする
    請求項1の高性能炭素繊維及び/又は黒鉛繊維の製造
    法。
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