JPH06264280A - 電解金属箔の製造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 金属箔を電着させる回転円筒陰極１と、該円
筒陰極１の周面に対向させた陽極２と、回転円筒陰極１
と陽極２との間隙３に電解液を連続的に供給する電解液
供給装置４とを備えた金属箔製造装置であって、電解液
供給装置４の電解液供給口５が、回転円筒陰極１の回転
軸方向と平行にスリット状に、回転円筒陰極１の下方か
ら上記間隙３に開口し、かつ電解液供給口５には、金属
箔を電着させる幅区間にわたって複数の電解液流量調節
手段６を備えた電解金属箔の製造装置。 【効果】 本発明の製造装置は、電解金属箔の製造工程
で、電解液流量調節手段によって、電解液量の供給量を
調節して電解金属箔の厚さを修正することができ、また
設備コストが安価で、電解金属箔の厚さ分布を所望の分
布に自動制御することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、電解金属箔の製造装置
に関する。

【０００２】

【従来の技術】今日、最も大量に生産されている電解金
属箔は、プリント回路用電解銅箔であり、その製造方法
としては、硫酸銅等を含む電解液を、鉛等の不溶性陽極
と、ステンレス、チタン等からなる回転円筒陰極とで電
解し、円筒陰極の周面に銅を析出させた後、これを剥離
する方法が知られている。一般的に、このような製造方
法に用いる装置は、一定期間使用すると鉛の陽極が消耗
するため、回転円筒陰極と陽極との間隔が不均一にな
り、その結果、回転円筒陰極の周面に形成される銅箔の
厚さが、幅方向で不均一になるという欠点があり、ま
た、銅箔の厚さ分布が変動することにより、銅箔にシワ
等が生じ易くなるという問題点があった。

【０００３】また、一定期間使用した陽極表面を、回転
円筒陰極と陽極との間隔が均一になるように切削研磨し
た後、再使用する方法が知られている。しかしながら、
この方法では、装置の稼動中は切削研磨ができないとい
う欠点があり、さらに、切削研磨に長時間を要し、効果
も不十分であるという欠点があった。また、回転円筒陰
極に対向する陽極を、円筒陰極の回転軸方向に分割した
装置を使用し、各陽極に供給する電気量を制御しなが
ら、銅箔を円筒陰極の周面に析出させる方法が知られて
いる（特開平４−３６４８９号公報）。しかしながら、
この方法に用いる装置は、分割した各陽極間の絶縁が困
難であるという欠点があり、また、分割した陽極のそれ
ぞれについて供給する電気量を調節しなければならない
ため、複数の整流器が必要となり、設備コストが高くな
るという欠点がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、装置の稼動
中に、電解金属箔の厚さを調節することができ、特に、
高品質で物理的性質が優れ、箔厚分布が均一でシワ等が
発生しないプリント回路用に適した電解銅箔を得ること
ができる電解金属箔の製造装置を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、金属箔を電着
させる回転円筒陰極と、該円筒陰極の周面に対向させた
陽極と、回転円筒陰極と陽極との間隙に電解液を連続的
に供給する電解液供給装置とを備えた金属箔製造装置で
あって、電解液供給装置の電解液供給口が、回転円筒陰
極の回転軸方向と平行にスリット状に、回転円筒陰極の
下方から上記間隙に開口し、かつ電解液供給口には、金
属箔を電着させる幅区間にわたって複数の電解液流量調
節手段を備えたことを特徴とする電解金属箔の製造装置
である。以下、本発明を詳細に説明する。

【０００６】

【作用】本発明の製造装置は、図１に示すように、回転
円筒陰極１と陽極２との間隙３に、下方から電解液供給
装置４で、析出させる金属イオンを含む電解液を連続的
に供給する際に、例えば図３に示すように、電解液供給
装置４のスリット状の電解液供給口５に設けられた複数
の電解液流量調節手段６ごとに、間隙３に供給する電解
液量を増減する。

【０００７】回転円筒陰極１の周面のうち、電解液量の
供給量を減少させた部分では、回転円筒陰極１の表面近
傍で、金属イオンの供給不足により、濃度分極が高まる
ため電流密度が低下し、回転円筒陰極１表面の金属析出
量が少なくなる。一方、電解液量の供給量を増大させた
部分では、反対に、金属イオンの供給量が増大し、濃度
分極が小さくなるため、その部分の電流密度が高くな
り、金属析出量が多くなる。

【０００８】本発明の製造装置では、陽極が消耗し、間
隙３の距離が変動した場合に、上述のように複数の電解
液流量調節手段６ごとに電解液量の供給量を調節するこ
とにより、厚さが均一になるように電解金属箔を形成さ
せることができる。

【０００９】

【実施例】本発明の製造装置は、例えば図１に示すよう
に、金属箔を電着させる回転円筒陰極１と、該円筒陰極
１の周面に対向させた陽極２と、回転円筒陰極１と陽極
２との間隙３に電解液を連続的に供給する電解液供給装
置４とを備える。本発明に用いる電解液供給装置４とし
ては、例えば、図２及び図３に示すように、電解液を移
送する配管７と、配管７から電解液を電解液供給口５側
に流入させる突出穴８と、スリット状の電解液供給口５
を形成し、かつ複数の電解液流量調節手段６を支持する
一対の隔壁９とで構成することができる。

【００１０】突出穴８は、図４に示すように、複数の独
立した孔でも、図５に示すように、スリット状の穴でも
よい。一対の隔壁９は、平行になるように配管７にそれ
ぞれ接合され、これと反対の端側に、スリット状の電解
液供給口５を形成する。この際、一対の隔壁９は、突出
穴８をはさむように配管７と接合されるが、図４及び図
５中、ａ及びｂで示される突出穴８と隔壁９との間隔
は、小さい方が好ましく、突出穴８の開口幅と隔壁９間
隔が等しい場合が最も好ましい。ａ及びｂで示される間
隔が、大きすぎるときには、突出穴８から流入した電解
液が、隔壁９に当たり電解液の流れを不規則にする場合
があるので好ましくない。

【００１１】電解液流量調節手段６としては、スリット
状の電解液供給口５から、電解液が間隙３に供給される
際、電解液供給口５の長手方向の複数位置で、独立して
電解液流量を調節することができれば、特に制限はな
い。具体例としては、図２に示すように、隔壁９の一方
に、複数個のピストンを隣接させ、他方の隔壁９方向に
往復摺動自在に支持した電解液流量調節手段６を挙げる
ことができる。またピストンは両方の隔壁９に上記と同
様にして設けても良い。ピストンの断面形状は特に制限
はなく、例えば円形、矩形等を挙げることができる。ピ
ストンの配列数は、多いほど流量調節精度が向上するの
で好ましい。また、ピストンの配列位置は、突出穴８と
ピストンの下端との距離が小さくなるように配置するの
が流量調節精度を向上させることができるので好まし
い。また、装置設計上、当該距離を小さくすることがで
きない場合には、図６に示すように、距離間隔相当の高
さの仕切り板１０をピストン間に配置することにより、
流量調節精度を向上させることができる。また、ピスト
ンの先端面には、摺動時に隣接するピストン間の段差を
無くする段差調節部材１６を設けることができる。段差
調節部材１６としては、例えば、図７に示すように、ピ
ストンの先端面に取り付けたスポンジ等の軟質部材１７
と、これを介して取り付けたフッ素ゴム等の伸縮自在な
シート１８とからなるものや、図８に示すように、伸縮
自在なシート１８の、ピストン側の面に、ヒダ１９を有
するものを挙げることができる。段差調節部材１６は、
隣接するピストン間の段差を無くすることにより、流量
調節精度を向上させることができる。

【００１２】ピストンを往復摺動させる手段１１として
は、外部からピストンを動作させることができる公知の
手段を使用することができ、例えば水圧式、油圧式等の
手段を挙げることができる。また水圧、油圧等で往復摺
動させる場合には、ピストンの材質は、ベローズタイプ
の伸縮性のものが好ましい。回転円筒陰極１と、該円筒
陰極の周面に対向させた陽極とは、図１に示すように間
隙３を形成し、陽極２の下部は、図１に示すように、上
記電解液供給口５に対応するように開口する。電解液供
給口５を通過する電解液は、複数の電解液流量調節手段
６ごとに流量を調節されながら、陽極２の開口部を経
て、陽極２の上端の間隙３から排出される。

【００１３】円筒陰極１は、その周面の一部又は全部を
電解液に浸漬し、円筒陰極１の回転軸が水平になるよう
に配設する。円筒陰極１の材質は、公知のものでよく、
例えばステンレス、チタン等を挙げることができる。陽
極２の材質は、公知のものでよく、例えば鉛等の不溶性
の陽極を用いることができる。電解液供給装置４の材質
は、耐熱性、耐酸性を有するものであれば、特に制限は
なく、例えば塩化ビニル、チタン、ゴム材等を挙げるこ
とができる。本発明の装置では、電解金属箔の製造工程
で、例えば、図１に示すように、円筒陰極１周面から剥
離した電解金属箔１２の巻き取り工程部１３に非破壊式
厚さ検出器１４等を設置し、検出した電解金属箔の厚さ
信号ｃを、電解液流量調節手段６の駆動制御部１５にフ
ィードバックすることにより、得られる電解金属箔の厚
さ分布を自動制御することができる。

【００１４】電解金属箔の製造例１ 図１に示すように、円筒陰極１（直径：２２００mm、長
さ：１２５０mm、円筒周面：チタン）の周面に、２個の
円弧形の陽極２（酸化イリジウム被覆チタン）を、間隙
３が１０mmになるように配置し、そして、図２に示すよ
うに、突出穴８が円形であり、隔壁９の一方に断面形状
が矩形のピストンを２４個隣接させ、該ピストンを個別
に往復摺動させる棒（往復摺動させる手段１１）を備え
た電解液供給装置４を配置して電解金属箔の製造装置を
構成した。この製造装置を使用し、厚さ３５μm の電解
銅箔を製造した。なお、電解液として、硫酸酸性の硫酸
銅溶液を使用し、電解液供給装置４のピストンを上記棒
で操作し、電解液流量が、電解液供給口５の中央部で少
なく、両端部で多くなるように調節した。得られた電解
銅箔の厚さ分布を測定した。結果を図９に示す。なお、
図９中、縦軸は、銅箔の最大厚さを１００としたとき
の、各ピストン位置における箔厚の比率を表わし、横軸
は、２４個のピストンに端からふった番号を表わす。図
９から明らかなように、従来の製造装置で得られた電解
銅箔の厚さのバラツキが、２〜３％であったのに対し、
本発明の製造装置では、０．５％以下であった。

【００１５】電解金属箔の製造例２ 往復摺動させる手段１１を、手動から水圧式に代えたほ
かは、製造例１と同様の製造装置を構成した。この製造
装置を使用し、厚さ７０μm の電解銅箔を製造した。な
お、電解液として、製造例１で用いた電解液と同一組成
の電解液を用い、電解液供給装置４のピストンを水圧で
操作し、電解液流量が、電解液供給口５の中央部で多
く、両端部で少なくなるように調節した。得られた電解
銅箔の厚さ分布を測定した。結果を図１０に示す。な
お、図１０中、縦軸と横軸は、図９と同義である。図１
０から明らかなように、得られた電解銅箔の厚さのバラ
ツキは、１％以下であった。

【００１６】

【発明の効果】本発明の製造装置は、電解金属箔の製造
工程で、電解液流量調節手段によって、電解液量の供給
量を調節して電解金属箔の厚さを修正することができ、
また設備コストが安価で、電解金属箔の厚さ分布を所望
の分布に自動制御することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の製造装置を例示する概念図である。

【図２】電解液供給装置を例示する、一部切り欠き部を
含む斜視図である。

【図３】電解液供給装置を例示する斜視図である。

【図４】突出穴の配置を示す平面図である。

【図５】突出穴の配置を示す平面図である。

【図６】仕切り板の取り付け態様を示す平面図である。

【図７】段差調節部材を例示する概念図である

【図８】段差調節部材を例示する概念図である

【図９】本発明の製造装置で得られた電解銅箔の厚さ分
布を示すグラフである。

【図１０】本発明の製造装置で得られた電解銅箔の厚さ
分布を示すグラフである。

【符号の説明】

１ 円筒陰極 ２ 陽極 ３ 間隙 ４ 電解液供給装置 ５ 電解液供給口 ６ 電解液流量調節手段

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属箔を電着させる回転円筒陰極と、該
   円筒陰極の周面に対向させた陽極と、回転円筒陰極と陽
   極との間隙に電解液を連続的に供給する電解液供給装置
   とを備えた金属箔製造装置であって、電解液供給装置の
   電解液供給口が、回転円筒陰極の回転軸方向と平行にス
   リット状に、回転円筒陰極の下方から上記間隙に開口
   し、かつ電解液供給口には、金属箔を電着させる幅区間
   にわたって複数の電解液流量調節手段を備えた電解金属
   箔の製造装置。
2. 【請求項２】 上記電解液流量調節手段が、電解液供給
   口のスリットの間隔を調節するピストンである請求項１
   記載の電解金属箔の製造装置。