JPH0625651A - 摩擦材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 乾燥工程を不要とし、かつかぶれや性能の低
下なく、カシューダストの偏析を防止する。 【構成】 基材繊維と、結合剤、添加剤の混合物を成形
して構成される摩擦材であって、その表面に繊維を保持
するカシューダストが含有されている。繊維を表面に保
持したカシューダストは、他の材料と混合される際に他
の材料とカシューダスト表面の繊維とが絡まるので、材
料中に均一に分散される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動車、産業用車両な
どのブレーキ、クラッチフェーシングに使用される摩擦
材に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、車両用のブレーキパッド等に使用
される摩擦材としては、摩擦係数が高くて制動力が大き
いこと、摩擦係数が安定していて制動力が安定している
こと、耐摩耗性が良好であること、相手攻撃性が小さい
こと、水や油等に侵されず材料強度が大きいことなどの
特性が求められている。

【０００３】上記特性を比較的満足させる摩擦材とし
て、繊維基材、結合剤、固体潤滑剤や有機物、無機物の
添加剤とから構成されたものが一般的に使用されてい
る。そして、これらの摩擦材においては、配合される材
料の種類や量によって摩擦特性が決定され、特に摩擦調
整剤の種類や量が摩擦特性に大きな影響を与えている。
この摩擦調整剤として、摩擦材の耐摩耗性を向上させか
つ摩擦係数を安定させるカシューダストが従来より広く
用いられている。

【０００４】しかし、上記摩擦調整剤としてのカシュー
ダストは、摩擦材中に偏析して、摩擦材の摩擦特性を不
均質にするという問題がある。このようにカシューダス
トが偏析するのは、カシューダストとして通常１００〜
４００μｍの平均粒子径をもつものが用いられ、平均粒
子径が１〜数十μｍ程度の他の配合剤と比べてカシュー
ダストの粒径が格段と大きいためである。

【０００５】そこで従来は、有機溶剤、フェノール誘導
体、液状フェノール樹脂、液状エポキシ樹脂などの液状
原料を混合助剤として用い、偏析を防止することとして
いる。また特開平２−１３３４３１号公報、特開平２−
１３３４３２号公報などの公報には、３置換芳香族炭化
水素が結合された含酸素オリゴマーをフェノールで変成
した変性フェノール樹脂を混合助剤として用いた例が開
示されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、混合助剤と
して有機溶剤を用いた場合には、混合後に溶剤を除去す
る乾燥工程が必要となり工数が多大となる。またフェノ
ール誘導体は皮膚に触れると、かぶれが生じるため好ま
しくない。さらに液状のフェノール樹脂やエポキシ樹脂
は、摩擦材中に残留して耐フェード性を低下させるな
ど、性能低下の原因となる。

【０００７】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、乾燥工程を不要とし、かつかぶれや性能の低下な
く、カシューダストの偏析を防止することを目的とす
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の摩擦材は、繊維基材、結合剤及び添加剤の混合物を
成形してなる摩擦材であって、その表面に繊維を保持す
るカシューダスト（以下、繊維保持カシューダストと称
する）が含有されていることを特徴とする。上記繊維保
持カシューダストは、以下のように得ることができる。
まず第１の方法として、カシューナットシェルオイルを
重合し、アルデヒド類と反応硬化させた後、冷却、粉砕
して得た粒状のカシューダストの表面に、カシューポリ
マーを介してミルド状の繊維を付着させることにより、
その表面にミルド状の繊維が付着保持された粒状の繊維
保持カシューダストを得ることができる。また第２の方
法として、カシューナットシェルオイルを重合し、これ
に所定長さの繊維を均一に分散させ、アルデヒド類とカ
シューナットオイルを反応硬化させた後、冷却、所定の
条件で粉砕することにより、その表面にミルド状の繊維
が埋設保持された粒状の繊維保持カシューダストを得る
ことができる。なお、このときの粉砕程度や加える繊維
形態を制御することにより、その表面にパルプ状の繊維
が埋設保持された塊状の繊維保持カシューダストを得る
こともできる。

【０００９】ミルド状の繊維が付着保持、又は埋設保持
された粒状の繊維保持カシューダストは、１００〜３０
０μｍ程度の平均粒子径をもつものとすることができ
る。このミルド状の繊維が付着保持、又は埋設保持され
た粒状の繊維保持カシューダストにおいて、繊維は、カ
シューダストの表面からカシューダストの直径の１／２
０〜１／１程度の長さだけ突出するように保持させるこ
とがことができる。この繊維の直径は０．１〜２０μｍ
程度とすることができる。

【００１０】繊維保持カシューダストの表面に保持され
る繊維の種類は特に限定されず、ガラス繊維、フェノー
ル繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム繊維、スラグ
ウール等とすることができる。また、繊維保持カシュー
ダスト中の繊維の含有量は、１〜５重量％とすることが
できる。本発明の摩擦材は、繊維基材に結合剤と上記繊
維保持カシューダストや他の添加剤とが混合され、成形
されて形成されている。そして各種の添加剤が繊維基材
中に分散保持され結合剤で硬化されて一体化した成形体
として構成されている。

【００１１】繊維基材としては、アラミド繊維、ナイロ
ン繊維、レーヨン繊維、フェノール繊維などの有機繊維
や、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、チタン酸
カリウム繊維、ロックウールなどの無機繊維や、銅繊
維、スチール繊維などの金属繊維を用いることができ
る。これらの繊維は、１種又は２種以上用いることがで
きる。

【００１２】結合剤としては、フェノール樹脂、メラミ
ン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることが
できる。これらの熱硬化性樹脂は、１種又は２種以上を
用いることができる。上記繊維保持カシューダストの他
に添加される添加剤としては、マイカ、カオリン、タル
ク、バーミキュライト等の鱗片状無機物や、グラファイ
ト、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、銅粉、消石灰、
ラバーダスト、珪藻土、ドロマイト、炭酸カルシウム、
炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウ
ム、ケイ酸カルシウム等を用いることができる。

【００１３】本発明の摩擦材は、繊維保持カシューダス
トと繊維基材、結合剤や他の添加剤とを十分均一に混合
し、この混合物を型内に充填、押圧して予備成形を行
い、予備成形体を加熱加圧して結合剤を硬化させた後、
熱処理する通常の方法で成形して形成することができ
る。なお、摩擦材の材料の配合割合としては、繊維基材
１０〜４０重量％程度、結合剤５〜１５重量％程度、繊
維保持カシューダスト３〜１０重量％程度、繊維保持カ
シューダスト以外の添加剤２０〜７０重量％程度とする
ことができる。

【００１４】

【発明の作用及び効果】繊維保持カシューダストは、繊
維基材、結合剤や他の添加剤と混合される際に、他の材
料とカシューダスト表面の繊維とが絡まり、これにより
繊維保持カシューダストが材料中に均一に分散される。
したがって、本発明の摩擦材は、カシューダストが偏析
することに起因する摩擦特性の不均質化を効果的に防止
することができる。

【００１５】また、カシューダストの偏析を防止するた
めに混合助剤として有機溶剤、フェノール誘導体、液状
のフェノール樹脂等を用いる必要がないので、乾燥工程
を不要とし、かつ人体に対するかぶれの問題や性能低下
の問題もない。したがって、本発明の摩擦材は、工数を
低減してかつ安全性高く得ることができ、しかも性能低
下の問題もないものである。

【００１６】

【実施例】以下、実施例により具体的に説明する。本実
施例はブレーキパッドに本発明を適用したものである。 （実施例１）まず、ミルド状ガラス繊維を表面に付着保
持した粒状の繊維保持カシューダストを以下のように製
造した。カシューナットシェルオイルを重合し、その重
合物にフルフラールを加え、加熱硬化した。そして、冷
却後、粉砕機を用いて粉砕して、平均粒子径２００μｍ
の粒状のカシューダストを得た。このカシューダストの
表面にカシューポリマーを介して、直径１０μｍ、長さ
１００〜２００μｍ程度のミルド状のガラス繊維を付着
させることにより、ミルド状のガラス繊維が表面に付着
保持された粒状の繊維保持カシューダストを得た。な
お、この繊維保持カシューダスト中のミルド状ガラス繊
維の含有量は４重量％だった。

【００１７】そして、アラミド繊維５重量％、チタン酸
カリウムウイスカ１０重量％、ロックウール１０重量
％、結合剤として粉体状のフェノール樹脂８重量％、繊
維保持カシューダスト５重量％、グラファイト５重量
％、銅粉末２０重量％、硫酸バリウム２２重量％、消石
灰５重量％、マイカ５重量％、及びカオリン５重量％の
組成の混合物をＶ型ブレンダーで十分均一に乾式混合し
た。

【００１８】この混合物を加圧して予備成形した後、金
型中で１６０℃で４００ｋｇ／ｃｍ ² の圧力で１０分間
熱成形し、２５０℃で１２０分の熱処理をおこなって摩
擦材とした。 （実施例２）カシューダストの表面に付着保持させる繊
維として、直径２０μｍ、長さ２００〜４００μｍ程度
のミルド状のフェノール繊維を用いること以外は、上記
実施例１と同様にして摩擦材を得た。なお、実施例２で
得た繊維保持カシューダスト中のミルド状フェノール繊
維の含有量は３重量％だった。

【００１９】（実施例３）まず、ミルド状のアラミド繊
維を表面に埋設保持した粒状の繊維保持カシューダスト
を以下のように製造した。カシューナットシェルオイル
を重合し、その重合物にフルフラール及びアラミド繊維
を加え、加熱硬化した。そして、冷却後、粉砕機を用い
て粉砕して、その表面から長さ１０〜３００μｍ程度の
ミルド状のアラミド繊維が突出するとともに、同アラミ
ド繊維が表面に埋設保持された平均粒子径２００μｍの
粒状の繊維保持カシューダストを得た。なお、この繊維
保持カシューダスト中のミルド状アラミド繊維の含有量
は３重量％だった。

【００２０】そして、このミルド状アラミド繊維を表面
に埋設保持した繊維保持カシューダストを上記ミルド状
カラス繊維を表面に付着保持した繊維保持カシューダス
トの代わりに用いること以外は、上記実施例１と同様に
して摩擦材を得た。 （実施例４）加えるアラミド繊維長さを変えるとともに
粉砕の条件を変えること以外は上記実施例３と同様にし
て、その表面から長さ１０〜２０００μｍ程度のパルプ
状のアラミド繊維が絡まって埋設保持された塊状の繊維
保持カシューダストを得た。なお、この繊維保持カシュ
ーダスト中のパルプ状アラミド繊維の含有量は３重量％
だった。

【００２１】そして、このパルプ状のアラミド繊維を表
面に埋設保持した繊維保持カシューダストを上記ミルド
状カラス繊維を表面に付着保持した繊維保持カシューダ
ストの代わりに用いること以外は、上記実施例１と同様
にして摩擦材を得た。 （比較例）表面に繊維を保持していないカシューダスト
（平均粒子径２００μｍ）を、上記ミルド状カラス繊維
を表面に付着保持した繊維保持カシューダストの代わり
に用いること以外は、上記実施例１と同様にして摩擦材
を得た。

【００２２】

【表１】 （評価）上記実施例１〜４及び比較例の摩擦材につい
て、繊維保持カシューダスト又は繊維を保持していない
カシューダストの偏析を目視により観察した。その結果
を表１に示す。なお表１中、偏析評価の◎は繊維保持カ
シューダストの偏析が全く認められなかったもの、○は
繊維保持カシューダストの偏析が一部分で認められたも
の、×は繊維を保持していないカシューダストの偏析が
多数認められたものを示す。

【００２３】また、繊維保持カシューダスト又は繊維を
保持していないカシューダストを繊維基材、結合剤とし
てのフェノール樹脂や他の添加剤とともに乾式混合した
際において、繊維保持カシューダスト又は繊維を保持し
ていないカシューダストの分散性を評価した。これは、
これらのカシューダストと繊維基材、結合剤や他の添加
剤とを乾式混合した混合物を透明の袋に入れて振り、こ
れらのカシューダストの沈降具合を観察することにより
行った。その結果を表１に併せて示す。なお表１中、分
散性評価の◎は２０回以上振っても繊維保持カシューダ
ストがほとんど沈降しなかったもの、○は１０〜２０回
振って少量の繊維保持カシューダストが沈降したもの、
×は３〜５回振って多量の繊維を保持していないカシュ
ーダストが沈降したものを示す。

【００２４】これらの結果から、繊維保持カシューダス
トを用いることにより、他の材料との乾式混合中に繊維
保持カシューダストが沈降することが抑制されて分散性
が向上するので、カシューダストの偏析が効果的に防止
され得ることがわかる。特に、ミルド状のアラミド繊維
を表面に埋設保持した実施例３の摩擦材では、カシュー
ダストの分散性が極めて向上し、偏析が全く認められな
かった。これは、繊維強度が高く、しかも形態的に他の
材料と絡まりやすいミルド状のアラミド繊維が他の材料
と強く絡まったためと考えられる。

【００２５】また、本実施例に係る摩擦材は、結合剤と
して粉体状のフェノール樹脂を用い、かつカシューダス
トの偏析防止のための液状の混合助剤を添加することな
しに、摩擦材組成物を乾式混合することにより得ること
ができるので、乾燥工程を不要とし、液状の混合助剤や
フェノール樹脂によるかぶれや性能低下の問題が解消さ
れる。なお、結合剤として液状の樹脂を用いたり、カシ
ューダストの偏析防止のための液状の混合助剤を用いて
摩擦材組成物を湿式混合する場合においても、繊維保持
カシューダストは湿式混合の際に分散性良く混合される
と考えられる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 繊維基材、結合剤及び添加剤の混合物を
   成形してなる摩擦材であって、 その表面に繊維を保持するカシューダストが含有されて
   いることを特徴とする摩擦材。