JP2898446B2 - 複合摩擦材 - Google Patents

複合摩擦材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車や産業機械用のブ
レーキ及びクラッチとして用いられる摩擦材に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来摩
擦材の構成材料中無機充填材としては粉末状炭酸カルシ
ウムが常用されている。この粉末状炭酸カルシウムはカ
ルサイト結晶でモース硬度は3であり、これを含有した
摩擦材の相手材である鋳鉄のモース硬度(4〜5)より
小さいため相手材攻撃性は小さいが、強度が小さいため
摩擦材の補強効果において満足のいくものではなかっ
た。
【0003】一方アラゴナイト結晶のウィスカー状炭酸
カルシウムは、摩擦材の構成材料として補強性に優れる
ので上記粉末状の炭酸カルシウムより有効であるが、モ
ース硬度が 3.5〜4であり、上記相手材と同等の硬度を
有しこれを常法により混合した摩擦材は相手材攻撃性が
大きく、使用上の支障が考えられるものであった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明はこれに鑑み種々
検討の結果、ウィスカー状炭酸カルシウムを用いて耐摩
耗性及び相手材攻撃性の良好な複合摩擦材を開発したも
のである。
【0005】即ち本発明は、無機充填材として、カルサ
イト結晶化したウィスカー状炭酸カルシウム及び/又は
カップリング処理を施したアラゴナイト結晶のウィスカ
ー状炭酸カルシウムを含有してなることを特徴とする複
合摩擦材である。
【0006】
【作用】このようなカルサイト結晶化したウィスカー状
炭酸カルシウムを得るには、通常のアラゴナイト結晶の
ウィスカー状炭酸カルシウムを 500〜800℃で熱処理す
ればよく、軟化して相手材攻撃性が小さくなるととも
に、ウィスカー形状による補強効果も得られる。
【0007】またカップリング処理したアラゴナイト結
晶のウィスカー状炭酸カルシウムは摩擦材のバインダー
中に均一に分散させることができ、これにより摩擦材の
バインダーとの接着性が増大し、相手材に対する攻撃性
が緩和されることになる。
【0008】さらにまたアラゴナイト結晶のウィスカー
状炭酸カルシウムをそのまま用いてバインダー中での分
散性を向上させる他の方法としては、摩擦材に使用され
る有機繊維を解繊する際に同時にウィスカー状炭酸カル
シウムを添加することによりウィスカー状炭酸カルシウ
ムは均一に分散し、相手材に対する攻撃性は緩和され
る。このような分散処理は、ウィスカー状炭酸カルシウ
ムをそのまま用いてもよいが、上記のカップリング処理
したウィスカー状炭酸カルシウムを用いればより効果が
大きくなる。
【0009】さらに上記のウィスカー状炭酸カルシウム
に対する熱処理及び分散処理はそれぞれ単独で行っても
よく、また併用してもよいことはもちろんである。
【0010】このようなウィスカー状炭酸カルシウムを
含有した摩擦材の推奨される組成としては、それぞれ配
合重量比でウィスカー状炭酸カルシウム:2〜30,無機
充填材:10〜50,有機繊維:0〜30,金属粉:5〜30,
摩擦調整剤:3〜20,潤滑剤3〜20,樹脂結合剤:3〜
15,が良好である。
【0011】なお上記摩擦材を構成する各原料成分の具
体例を示すと以下のようになる。即ち無機充填材として
はアルミナ,酸化チタン,リン酸カルシウム,ジルコニ
ア,珪藻土等があり、補強材である有機繊維としてはフ
ェノール繊維,アラミド繊維,スフ,レーヨン等があ
り、金属粉としては鉄粉,銅粉,アルミ粉等があり、摩
擦調整材としてはカシュー粒,ゴム粒等があり、潤滑剤
としてはグラファイト粉,二硫化モリブデン粉等があ
り、及び樹脂結合剤としては熱硬化性のフェノール系樹
脂,エポキシ系樹脂等がある。
【0012】
【実施例】表1に示す配合材料を同表に示す配合割合で
混合攪拌して摩擦材の混合原料を得た。なお表中、実施
例1はアラゴナイト結晶のウィスカー状炭酸カルシウム
に予めカップリング処理を施し、さらに有機繊維の解繊
時に添加して均一分散させたものであり、実施例2はア
ラゴナイト結晶のウィスカー状炭酸カルシウムを予め60
0℃で熱処理しカルサイト結晶化したものである。さら
に比較例1は、アラゴナイト結晶のウィスカー状炭酸カ
ルシウムをそのままで(即ち無処理で)添加したもので
ある。
【0013】
【表1】
【0014】上記各混合材料をそれぞれ常温にて予備成
形したものを、成形用金型にて常法により加熱加圧成形
した。その後加熱炉中で熱処理し、放冷後所定寸法に研
摩してブレーキパッド用摩擦材を製作した。
【0015】これらブレーキパッドについて相手材とし
て鋳鉄を用いて下記の評価試験を実施し、それらの結果
を表2に示した。効力試験は、JASO C406-82により慣性
力5.0kgfms2 ,キャリパーサイズ:シリンダー径51.0m
m,ロータ有効径 188mm,タイヤ有効径 0.279m、とし
て実施し、その際の摩擦係数[μ]を求めた。相手材の
攻撃性は、周速7m/sec,面圧 180g/cm2 ,8時間の連
続摩擦試験の後相手材の磨耗量を求めた。剪断強度は、
JIS4415により求めた。
【0016】
【表2】
【0017】表2から明らかなように、本発明の摩擦材
はいずれも相手材攻撃性及び剪断強度に優れているが、
一方無処理のアラゴナイト結晶のウィスカー状炭酸カル
シウムを含有した比較例1は強度は高いが相手材攻撃性
が大きく、また従来のカルサイト結晶の粉末状炭酸カル
シウムを含有した比較例2は相手材攻撃性は小さいが強
度が劣っていることが判る。
【0018】
【発明の効果】このようにウィスカー状炭酸カルシウム
を本発明のような処理を施して使用することにより、石
綿代替材料として有利に用いられ、従来のチタン酸カリ
ウム繊維と比較しても安全性が高く、コスト的にも有利
であり、さらに耐摩耗性及び相手材攻撃性に優れた摩擦
材が提供できる等工業上顕著な効果を奏する。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09K 3/14 520 F16D 69/02 CA(STN) WPI/L(QUESTEL)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機充填材として、カルサイト結晶化した
    ウィスカー状炭酸カルシウム及び/又はカップリング処
    理を施したアラゴナイト結晶のウィスカー状炭酸カルシ
    ウムを含有してなることを特徴とする複合摩擦材。
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