JPH0625650Y2 - 内燃機関用ピストン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、内燃機関用ピストンに係わり、特に、内部に
装着されるピストンピンとの摺接面へ潤滑油を供給する
手段を備えたピストンに関するものである。

［従来の技術］ 一般に、内燃機関に用いられているピストンにおいて
は、ピストンとコンロッドとの連結に用いられるピスト
ンピンが嵌挿されるピストンピン孔が形成されており、
このピストンピン孔とピストンピンとの摺接面には、ピ
ストンとピストンピンとの円滑な摺動を確保するため
に、極力多くの潤滑油を供給する必要がある。

そして、前記摺接面へ潤滑油の供給を行う手段として、
従来では、例えば、実開昭56-090408号公報に示される
技術が提案されている。

この技術は、ピストンリング溝とピストンピン孔との間
にオイル孔を形成しておき、ピストンリングによって掻
き落とした潤滑油を、前記ピストンリング溝およびオイ
ル孔を経て前記ピストンピン孔内へ導くようにしたもの
である。

［考案が解決しようとする課題］ ところで、前述の技術によると、ピストンリング溝から
ピストンピン孔へ向かってオイル孔を形成する場合、ピ
ストンの鋳造後における後加工によらなければならな
い。

この結果、ピストンの製造時における工数が増加してし
まうという不具合が生じる。

また、ピストンリング溝という狭隘部における加工であ
ること、かつ、ピストンリング溝の上下面はシリンダと
の摺接面となされていて、この摺接面に傷を付けないよ
うに加工しなければならないことから、オイル孔の加工
が高精度の加工となり、前記工数の増加と相俟って、加
工性の低下やコストの高騰を招いてしまう。

したがって、従来においてはこれらの不具合への対処が
望まれており、本考案はこのような課題を解決せんとす
るものである。

［課題を解決するための手段］ 本考案は、前述の課題を有効に解決し得る内燃機関用ピ
ストンを提供せんとするもので、特に、外周部に開口
し、ピストンピンが嵌挿されるピストンピン孔と、この
ピストンピン孔の内周面に形成され、前記ピストンピン
の抜け止めをなすサークリップが装着されるサークリッ
プ溝と、前記ピストンピン孔の前記外周部に対する開口
端を囲撓し、該開口端からピストンの内方へ向かって凹
状に掘り込んで形成された肉抜き部と、前記開口端から
前記サークリップ溝を越えて形成され、前記肉抜き部に
開口する切り欠き溝とを有することを特徴としている。

［作用］ 本考案に係わる内燃機関用ピストンは、前述の構成とす
ることにより、ピストンリング等によって掻き落とされ
た潤滑油が、ピストンピン孔の開口端の周囲に形成され
た肉抜き部に溜まり、この肉抜き部から切り欠き溝を経
てピストンピン孔内へ導かれ、ピストンピンの外周面と
ピストンピン孔の内周面との間、すなわち、ピストンピ
ンとピストンピンとの摺接面に供給される。ピストンは
上下動するとともに、ピストンピンを中心に揺動するも
のであるが、その揺動にともなって肉抜き部内の潤滑油
が飛散しようとしても、この肉抜き部内に確保され、再
び切り欠き溝を経てピストンピン孔内に対し供給され
る。

また、切り欠き溝がサークリップ溝を越えて形成されて
いることから、この切り欠き溝にサークリップ装着用の
工具を挿入することができ、切り欠き溝を潤滑油の供給
路と工具の挿入路との兼用化が可能となる。

さらに、肉抜き部と切り欠き溝との開口方向を一致させ
て、両者を一つの鋳型によって形成することが可能とな
り、製造時の工数が軽減される。

［実施例］ 以下、本考案の一実施例を第１図ないし第３図に基づき
説明する。

これら図において、符号１０は、本実施例に係わる内燃
機関用ピストンを示し、このピストン１０は、径方向断
面が長円形に形成されたものである。

このピストン１０は、内燃機関のシリンダ（図示略）と
の摺接面（外周部）２に対して凹状に形成された肉抜き
部３と、この肉抜き部３の内側に設けられたピンボス部
４と、このピンボス部４に、ピストン１の半径方向にそ
って穿設され、前記肉抜き部３に開口したピストンピン
孔５と、このピストンピン孔５の内周面に形成され、ピ
ストンピン孔５内に嵌挿されるピストンピン（図示略）
の抜け止めをなすサークリップ（図示略）が装着される
サークリップ溝６と、前記ピストンピン孔５の開口端５
ａからサークリップ溝６を越えて形成され、前記肉抜き
部３とピストンピン孔５内とを連通する切り欠き溝７と
を具備した構成となっている。

さらに詳述すれば、前記肉抜き部３は、前記ピストンピ
ン孔５の開口端５ａを略囲撓し、該開口端５ａピストン
１０の内方に向かって凹状に掘り込んで形成されたもの
で、特に、開口端５ａの周囲の部分が、ピストン１の接
線方向と平行な平面部３ａとなされているとともに、そ
の上部がさらにピストン１の内方へ向かってさらに掘り
込まれた深底部３ｂとなされている。平面部３ａは、ほ
ぼ一定の幅で、ピストンピン孔５を取り囲むよう形成さ
れ、深底部３ｂは、ピストンピン孔５の一側部まで回り
込む状態で形成されている。

前記切り欠き溝７は、平面部３ａの所定箇所に形成さ
れ、ピストンピン孔５と深底部３ｂとのいずれにも開口
している。つまり、ピストンピン孔５と深底部３ｂとは
切欠き溝７により連通している。

また、この切り欠き溝７は、第３図に示すように、ピス
トンピン孔５の開口端５ａから、すなわち、平面部３ａ
の表面から深底部３ｂの底部とほぼ同じ深さに形成され
ている。さらに、この切り欠き溝７は、その途中におい
て前記サークリップ溝６を越えて交差させられていると
ともに、第１図に示すように、その全長に亙って、前記
ピストンピン孔５内へ開口させられている。

これによって、切り欠き溝７により、前記肉抜き部３が
ピストンピン孔５の内側へ連絡されている。

一方、前記ピストン１の上端部近傍の周壁には、ピスト
ンリング（図示略）が装着されるピストンリング溝８が
全周に亙って形成されている。

しかして、このように構成された本実施例のピストン１
０によれば、ピストン１０がシリンダ内を往復移動させ
られる際に、ピストンリング溝８に装着されたピストン
リングによって潤滑油が掻き落とされ、その掻き落とさ
れた潤滑油が、前記肉抜き部３の平面部３ａおよび深底
部３ｂに溜る。

そして、平面部３ａに溜まった潤滑油は切り欠き溝７を
経てピストンピン孔５の内部へ供給されて、ピストンピ
ンとピストンピン孔５との摺接面の潤滑に供される。ま
た、深底部３ｂに溜まった潤滑油は、一旦平面部３ａへ
落下し、そののちに前述と同様にして切り欠き溝７を経
るか、あるいは直接切り欠き溝７を経て、前記摺接面へ
供給される。

ピストン１０は、上下動するとともに、ピストンを中心
に揺動するものであるから、その揺動によって肉抜き部
３に溜った潤滑油は、ピストンピンの中心を通るシリン
ダ中心を境に、このシリンダ中心の外方（側方）に飛散
しがちであり、ピストンピンの軸線方向には積極的に供
給はなされない。

ところが、本実施例では、肉抜き部３（平面部３ａと深
底部３ｂ）がピストンピン孔５の開口端５ａの周囲にお
いて、ピストンピン孔１０の内方に向かって掘り込んで
形成されているので、この肉抜き部３内の潤滑油は、前
記揺動によって外部に飛散しにくく肉抜き部３内に確保
された状態となる。そして、切り欠き溝７が肉抜き部３
に開口し、その開口が、前記揺動にともなう潤滑油の飛
散方向に合致するため、肉抜き部３からのピストンピン
孔５内への潤滑油の給油作用が、切り欠き溝７を経て途
切れることがなく、その供給量も充分な量となる。

したがって、潤滑油を積極的にピストンピンとピストン
ピン孔５の内周面との間に供給して、両者の摺動を円滑
なものとする。

一方、サークリップをサークリップ溝６に装着して、ピ
ストンピン孔５内に嵌挿されたピストンピンの抜け止め
を行う場合には、装着用の工具によりサークリップを把
持して、このサークリップをピストンピン孔５内に挿入
するとともに、前記工具を切り欠き溝７内に挿入するこ
とにより容易に行われる。

すなわち、工具を切り欠き溝７内に挿入すると、この切
り欠き溝７が、サークリップ溝６を越えてピストンピン
孔５の内側へ形成されているから、この切り欠き溝７に
より工具の逃げが形成されることにより、サークリップ
を工具によって把持した状態であっても、サークリップ
とサークリップ溝６との位置合わせが容易に行える。

さらに、ピストン１を鋳造する際に、切り欠き溝７およ
び肉抜き部３の開口部が同一方向となされていることか
ら、両者の鋳型の抜き方向が一致させられて、両者が単
一の鋳型によって同時形成され、しかも、潤滑油の供給
路とサークリップ装着用の工具の挿入孔とが兼用され
る。

この結果、ピストン１の製造時の工数が削減されコスト
面の改善が図られる。

なお、前記上記一実施例で示したピストンの諸形状や細
部寸法等は一例であって、適用する内燃機関の種類や設
計要求等に基づき種々変更可能である。たとえば、長円
形ピストンとしては、上記実施例の如く長径側両側部が
半円弧で短径側が直線のものに限らず、楕円形あるいは
それに近似する形状のものも含む。また、径方向断面が
円形である一般的なピストンに適用できるものはもちろ
んである。

［考案の効果］ 以上説明したように、本考案の内燃機関用ピストンによ
れば、次のような優れた効果を奏する。

ピストンリングによって潤滑油が掻き落とされた潤滑油
を肉抜き部に溜め、この潤滑油を切り欠き溝を経てピス
トンピン孔の内部へ供給することにより、ピストンピン
とピストンピン孔との摺接面へ潤滑油を供給することが
できる。また、ピストンの揺動にともなう肉抜き部内の
潤滑油の飛散が抑制されて、肉抜き部内の潤滑油が充分
に確保され、この潤滑油が切り欠き溝を経てピストンピ
ン孔内に供給されるので、その供給量を多くすることが
できる。

潤滑油の供給経路を切り欠き溝によって形成することに
より、サークリップをサークリップ溝に装着する際に用
いられる工具の挿入路と兼用させることができ、これに
よって、別個に潤滑油の供給経路を形成する必要がなく
なり、ピストンの製造工程の簡略化が図れる。

さらに、切り欠き溝および肉抜き部の開口部を同一方向
としたことにより、ピストンを鋳造する際に、両者の鋳
型の抜き方向を一致させて、両者を単一の鋳型によって
同時に形成することができ、前記効果と相俟って、製造
工程の一層の簡略化を図り、大幅なコスト低減が期待で
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は本考案の一実施例を示すもので、
第１図は正面図、第２図は平面図、第３図は第１図にお
けるIII−IIIに沿う矢視断面図である。 ２……摺接面（外周部）、３……肉抜き部、５……ピス
トンピン孔、５ａ……開口端、６……サークリップ溝、
７……切り欠き溝、１０……ピストン。

フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭53−41510（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭55−4316（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭59−35662（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭56−90408（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭60−171946（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭58−6940（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭48−43284（ＪＰ，Ｙ１) 実公 昭55−37709（ＪＰ，Ｙ２) 実公 昭52−34494（ＪＰ，Ｙ２)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】内燃機関のシリンダ内に嵌挿されるピスト
   ンであって、外周部に開口し、ピストンピンが嵌挿され
   るピストンピン孔と、このピストンピン孔の内周面に形
   成され、前記ピストンピンの抜け止めをなすサークリッ
   プが装着されるサークリップ溝と、前記ピストンピン孔
   の前記外周部に対する開口端を囲撓し、該開口端からピ
   ストンの内方へ向かって凹状に掘り込んで形成された肉
   抜き部と、前記開口端から前記サークリップ溝を越えて
   形成され、前記肉抜き部に開口する切り欠き溝とを有す
   ることを特徴とする内燃機関用ピストン。