JPH06256484A - 芳香族ポリエステルの製造法 - Google Patents

芳香族ポリエステルの製造法

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JPH06256484A
JPH06256484A JP4360493A JP4360493A JPH06256484A JP H06256484 A JPH06256484 A JP H06256484A JP 4360493 A JP4360493 A JP 4360493A JP 4360493 A JP4360493 A JP 4360493A JP H06256484 A JPH06256484 A JP H06256484A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 結晶性の優れた芳香族ポリエステルを溶融重
合法により製造する。 【構成】 イソフタル酸、ハイドロキノン、特定のジヒ
ドロキシ化合物及びフェノール類を特定の割合で触媒の
存在下、加熱溶融反応せしめて、エステル化反応率が5
0%以上のエステル化物を生成せしめ、未反応―COO
H基100モルに対し70〜100モル当量のジアリル
カーボネートを加え、さらに加熱溶融せしめて、固有粘
度が0.4〜1.5の範囲の芳香族ポリエステルを製造
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は結晶性ポリエステル重合
体の製造方法に関する。更に詳しくは、優れた耐熱性、
難燃性、機械的特性及び成形性を有し、光学的に等方性
である結晶性芳香族ポリエステル重合体を効率的に製造
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリエステルは、その構成成分の
組み合わせあるいは、組成により非晶性ポリマー、結晶
性ポリマーまたは液晶性ポリマーと様々なものが得られ
る。これらのうち非晶性ポリマーは、寸法安定性、透明
性、機械特性、耐熱性に優れており、液晶性ポリマー
は、流動性、機械特性、耐熱性、耐溶剤性に優れており
様々の検討がなされ実用化されている。それに対し結晶
性ポリマーは、耐熱性、機械特性、耐溶剤性、摺動性、
剛性に優れるにも関わらず、結晶性芳香族ポリエステル
の検討例は数少ない。
【0003】この一つの理由としては、その製造法を挙
げることが出来る。非晶性ポリエステルの場合には、一
般にポリマーを溶解する溶媒が存在するため、反応溶媒
を用いた重合が可能であるし、結晶化して固化すること
がないので、比較的溶融粘度の低い場合には、溶融重合
法が利用されている。また、液晶性ポリエステルについ
ては、その流動性を利用して溶融重合法が用いられてい
る場合がほとんどである。ところで、結晶性ポリエステ
ルについては、耐溶剤性が良いために良好な反応溶媒が
見いだせなかったり通常高融点のポリマーとなるため、
溶融重合法では結晶化してしまい、分解反応を伴わずに
高重合度のポリマーを得ることが困難であるため、製造
が困難であった。
【0004】こうした芳香族ポリエステルとしては、例
えば、米国特許第3,036,991号には、p,p′
―ビフェニレンイソフタレート単位を共重合したp―フ
ェニレイソフタレート単位からなる極限粘度が少なくと
も0.5であってp―フェニレンイソフタレート単位が
上記両単位の合計に対し少くとも40モル%含有する線
状のポリエステルが開示されている。
【0005】そして、この米国特許第3,036,99
1号の実施例1には、ハイドロキノン(0.04モ
ル)、4,4′―ジヒドロキシビフェニル(0.01モ
ル)およびイソフタル酸クロライド(0.05モル)の
混合物を、ペンタクロロフェニル中で重縮合せしめて、
融点360〜370℃のポリマーを得た実験例が開示さ
れている。
【0006】一方、米国特許第3,160,602号に
は、芳香族ジカルボン酸と2価のフェノールとからなる
線状の全芳香族ポリエステルを製造する方法として、芳
香族ジカルボン酸ハライドと2価のフェノールとの反応
性混合物をベンゾフェノン、m―タ―フェニール、塩化
ビフェニル、臭化ビフェニル、塩化ジフェニルオキサイ
ド、臭化ジフェニルオキサイドから選ばれる溶媒に溶解
して、一定温度で反応させ、極限粘度が少くとも0.5
のポリマーを生成せしめることが記載されている。
【0007】さらに、特開昭58―47019号公報
は、イソフタル酸ジアリールエステル、ハイドロキノン
および4,4′―ジオキシビフェニルカラナル混合物、
又はイソフタル酸、ハイドロキノン、4,4′―ジオキ
シビフェニルおよびジアリールカーボネートからなる混
合物を溶融重合せしめ、必要によりさらに固相重合せし
めて芳香族コポリエステルを製造する方法が開示されて
いる。
【0008】さらに、特開平5―5024号公報では結
晶性芳香族ポリエステルの製造方法として、先ずフェノ
ール類が系外に留去し難しい条件下で、出発原料のカル
ボキシル基の50%以上がエステル化されるまで、生成
した水を系外に留出しつつ実施し、次いでフェノール類
(d)および生成した水を系外に留去しつつ実施し、所
望の重合度のポリマーを得る結晶性芳香族ポリエステル
重合体の製造方法について開示されている。
【0009】しかしながら、これらの従来公知の方法に
よるポリマーの製造法は、反応溶媒を使用している場合
にはその回収のためにコストがかさむとか、加熱溶融反
応では高重合度のものが得にくいといった問題点があ
る。
【0010】加熱溶融反応により高重合度のものを得る
方法では、上に示したようにアセチルエステルおよびジ
カルボン酸を原料とする方法、フェニルエステルおよび
ジフェノール類を原料とする方法、ジカルボン酸および
ジフェノール成分に加えたジアリルカーボネートを利用
する方法、ジカルボン酸およびジフェノール成分を直接
エステル化する方法が挙げられる。
【0011】ところでこうした方法のうち、アセチルエ
ステルを原料とする方法は、反応中に酢酸が生成するた
め設備的な対応が必要となる。フェニルエステルを原料
とする方法は通常安価に原料を入手することが困難でコ
スト高になるという問題点がある。
【0012】また、ジアリルカーボネートを利用する方
法では、1つのカルボン酸残基につき当量のジアリルカ
ーボネートが必要となり多量のジアリルカーボネートが
必要であるとか、ポリマー鎖中に脂肪族のジオール成分
が存在する場合には、脂肪族カーボネートの脱離のため
に高重合度のポリマーが得られないといった問題点があ
る。
【0013】さらにジカルボン酸とジフェノール類を直
接エステル化する方法では、安価な原料で高重合度のポ
リマーが得られるが、エステル価率が十分に高いものが
得られないために高融点の昇華物が反応中に生成して反
応装置での対応が必要となったり、連続工程での支障を
きたす場合がある。またフェニルエステル法で製造した
同組成のポリマーほどの耐熱性や、良好な結晶性を有す
るポリマーが得にくいといった問題点がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の1つの目的
は、結晶性の優れた芳香族ポリエステル重合体を溶融重
縮合反応のみにより工業的に極めて有利に製造しうる方
法を提供することにある。本発明の他の目的は、ポリマ
ー構造中に脂肪族ジオール成分とジフェール成分を含む
ような高重合度のポリマーを得るのが困難な場合にも、
溶融重縮合反応のみにより工業的に極めて有利に芳香族
ポリエステルを製造しうる方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明
らかになろう。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは以上の知見
をもとに鋭意検討した結果、ジカルボン酸、ジヒドロキ
シ化合物およびフェノール類を用いて直接エステル化反
応を行った後、ジアリルカーボネートを反応系に加えて
重合反応を行えば、フェニルエステルを原料とする場合
と同等の優れたポリマーをコスト的に有利に製造するこ
とができ、しかも、ジアリルカーボネートを用いた場合
の制約であった脂肪族ジオールを構成要素とするポリエ
ステルをも同じ方法で製造しうることを見いだした。
【0016】つまり、本発明による芳香族ポリエステル
の製造法は、下記式(I)、(II)および(III )の各
成分により実質的に構成され、かつ、成分(II)と(II
I )の含有当量比が60/40〜90/10である芳香
族ポリエステルの製造に際し、
【0017】
【化3】
【0018】[式中、Rは炭素数が2〜20の脂肪族炭
化水素、芳香族炭化水素またはヘテロ原子を含む芳香族
炭化水素基を表す。]イソフタル酸またはイソフタル酸
を主たる酸成分とする芳香族ジカルボン酸(a)、ハイ
ドロキノン(b)、下記式(IV)で示されるジヒドロキ
シ化合物(c)および必要に応じて炭素数1〜10のア
ルキル基もしくはフェニル基で置換されていてよいフェ
ノール類(d)を、
【0019】
【化4】HO―R―OH ……(IV) [Rは式(III )のRと同じ。]下記式の(1)、
(2)および(3)
【0020】
【数2】 1.3≧(B+C)/A≧0.9 …(1) 90/10≧B/C≧60/40 …(2) D/A≦10 …(3) [ただし、式中、Aは芳香族ジカルボン酸(a)、Bは
ハイドロキノン(b)、Cはジヒドロキシ化合物
(c)、Dはフェノール類(d)の各モル数である。]
を同時に満足する割合で、エステル化触媒の存在下に加
熱溶融反応せしめてエステル化反応率が50%以上のエ
ステル化物を生成させた後、未反応―COOH基100
モルに対して70〜100モル当量のジアリルカーボネ
ートを加え、さらに加熱溶融せしめて、固有粘度が0.
4〜1.5の範囲にある芳香族ポリエステルを生成させ
ることを特徴とする芳香族ポリエステルの製造法であ
る。
【0021】本発明方法において用いられる芳香族ジカ
ルボン酸(a)は、イソフタル酸又はイソフタル酸を主
たる酸成分としてなる芳香族ジカルボン酸である。イソ
フタル酸と共に従たる酸成分として用いられる他の芳香
族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタ
レン―2,6―ジカルボン酸、ナフタレン―2,7―ジ
カルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエー
テルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸な
どを好ましいものとして挙げることができる。
【0022】かかる従たる酸成分は、全芳香族ジカルボ
ン酸の20モル%以下、好ましくは10モル%以下、を
占めることができる。
【0023】本発明においては、原料のジヒドロキシ化
合物として、少くともハイドロキノン(b)および式
(IV)で示されるジヒドロキシ化合物(c)が用いられ
る。
【0024】
【化5】HO―R―OH ……(IV) Rは式(III )のRと同じであり、炭素数2〜20のア
ルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。
【0025】式(IV)で表される化合物として、脂肪族
ヒドロキシ化合物ではネオペンチレングリコール、エチ
レングリコール、ペンチレングリコール、2―メチル―
2―エチル―1,3プロパンジオール等を、芳香族ジヒ
ドロキシ化合物としては、4,4′―ジヒドロキシビフ
ェニル、3,4′―ジヒドロキシビフェニルエーテル、
4,4′―ジヒドロキシジフェニルエーテル、t―ブチ
ルハイドロキノン等を例示することができる。これらの
うちネオペンチレングリコール、4,4′―ジヒドロキ
シビフェニル、4,4′―ジヒドロキシジフェニルエー
テルが好ましい。 本発明方法において、上記化合物
(a),(b)及び(c)は、下記2つの関係式
【0026】
【数3】 1.3≧(B+C)/A≧0.9 …(1) 90/10≧B/C≧60/40 …(2) が同時に成立するような量的割合で使用される。
【0027】これらの式中、Aは芳香族ジカルボン酸
(a)のモル数であり、Bはハイドロキノン(b)、C
は式(IV)で示される化合物(c)のモル数である。
【0028】また、式(IV)で示される化合物(c)
は、2種以上を併用してもかまわないがその際にも
(c)の全体量において上式(1)(2)が満足される
ことが必要である。
【0029】上記の式(1)は、芳香族ジカルボン酸
(a)とジヒドロキシ化合物[すなわち、ハイドロキノ
ン(b)及び式(IV)で示される化合物(c)]が重合
体鎖を形成するために、適当なバランスを維持して使用
されるべきであることを示している。すなわち、上方の
式(1)が満足されない場合には、ポリマーの重合度が
上がりにくく、また重合反応の際に着色などを起こし易
くなる。
【0030】化合物(a),(b)及び(c)の間に
は、好ましくは下記関係式(1a)が成立する。
【0031】
【数4】 1.2≧(B+C)/A≧1.0 …(1a)
【0032】また、下方の式(2)は、得られる芳香族
ポリエステル重合体に占めるハイドロキノン(b)及び
式(IV)で示される化合物(c)に由来する重合単位の
割合を規定しようとするものである。すなわち、ハイド
ロキノン(b)と式(IV)で示される化合物(c)との
モル比B/Cが90/10をこえる場合には、得られる
ポリマーの融点が高くなり過ぎ、溶融重合および成形が
困難になるので好ましくない。また、この値が60/4
0に満たない場合には、ポリマーの結晶性が低下した
り、融点が高くなりすぎたりして好ましくない。
【0033】ハイドロキノン(b),式(IV)で示され
る化合物(c)の間には下記関係式(2a)が成立する
ことが好ましく、とりわけ関係式(2b)が成立するこ
とが特に好ましい。
【0034】
【数5】 90/10≧B/C≧70/30 …(2a) 85/15≧B/C≧70/30 …(2b) 本発明方法に於ては、上記化合物(a)、(b)、
(c)のほかに、必要に応じて炭素数1〜5のアルキル
基もしくはフェニル基で置換されていてよいフェノール
類(d)を用いることができる。
【0035】かかるフェノール類(d)としては、例え
ばフェノール、m―クレゾール、p―クレゾール、p―
ブチルフェノール、p―アミルフェノールフェニルフェ
ノール等を好ましいものとして挙げることができる。こ
れらのうち、フェノール、クレゾール、o―フェニルフ
ェノールがより好ましく、フェノールが特に好ましい。
【0036】これらのフェノール類(d)は、生成する
全芳香族ポリエステル重合体の構成成分とするため使用
されるのではなく、上記化合物(a),(b)及び
(c)の間の反応の初期に反応媒体として作用するもの
である。
【0037】したがって、かかるフェノール類は必ずし
も使用する必要はないが、フェノール類を使用した方
が、反応が速く、また反応物が分解しにくく、着色も少
ないので、使用する方が好ましい。フェノール類(d)
の好ましい使用量は上記化合物(a)に対し関係式:D
/A≦10[Aは化合物(a)、Dはフェノール類
(d)のモル数]が成立するような量的割合であり、よ
り好ましくは、関係式:4≧D/A≧0.2が成立し、
特に好ましくは、関係式:2≧D/A≧0.3が成立す
るような割合で使用する。
【0038】本発明方法では、上記化合物(a),
(b),(c)及び必要に応じてフェノール類(d)
を、エステル化触媒の存在下に、加熱溶融反応せしめ
る。
【0039】エステル化触媒としては、例えば三酸化ア
ンチモン、酢酸第1錫、ジブチル錫オキシド、酸化ゲル
マニウム、チタニウムテトラブトキシド等が好適に用い
られる。
【0040】加熱溶融の間に、エステル化とエステル交
換反応とが進行し芳香族ポリエステル重合体が生成させ
ることができる。加熱溶融反応は初期反応と重合反応に
分けて説明するのが便利である。
【0041】本発明においては、この初期反応と重合反
応との間にジアリルカーボネートを未反応成分に対し実
質的に等モル、つまり、未反応のカルボン酸残基100
モルに対して70〜100モル当量加えることが重要な
特徴である。
【0042】このジアリルカーボネートとしては、例え
ばジフェニルカーボネートやビス(4―メチルフェニ
ル)カーボネート、ビス(o―フェニルフェニル)カー
ボネートといった置換基を有するジアリルカーボネート
等を挙げることができる。これらのうちジフェニルカー
ボネートが好ましく用いることができる。
【0043】以下順をおって反応について詳述する。初
期反応は、芳香族ジカルボン酸(a)のカルボキシル基
の少なくとも50%がヒドロキシ成分[すなわち、ハイ
ドロキノン(b)及び式(IV)で示される化合物
(c)、場合によってはさらにフェノール類(d)]と
反応してエステル化させる段階である。この段階では反
応によって水が生成するので、これを反応系外に留去す
る。この段階ではヒドロキシ成分が反応系外に留去しな
いようにする必要がある。
【0044】初期反応の反応温度は、触媒によっても異
なるが、150℃以上とするのが好ましい。より好まし
くは180℃以上であり、特に好ましくは230℃以上
である。また反応温度は、反応の進行とともに昇温する
のが好ましい。この場合の好ましい上限は330℃であ
り、より好ましくは300℃程度である。
【0045】初期反応は常圧〜加圧下で行うことができ
る。式(IV)で示される化合物、フェノール類(d)の
沸点に比べて反応温度を特に高くする場合には加圧条件
下で反応することが好ましい。また、反応系は窒素、ア
ルゴン等の不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。
【0046】反応時間は、上記エステル反応が十分に進
行するに足る時間であればよく、また、この時間は反応
時間、反応スケール等によっても異なる。好ましくは3
0分〜20時間、より好ましくは1〜10時間程度であ
る。
【0047】上記反応に際しては、エステル化により発
生する水を反応系外に除去せしめることが好ましい。エ
ステル化反応は平衡反応であり、生成する水を系外に除
去するに従って反応が進行し、生成物の収率、純度が向
上する。生成した水は、フェノール類(d)との沸点差
により反応系外に除去することができるが、水と共沸混
合物を形成する有機溶媒を用いて共沸により反応系外に
除去することもできる。該有機溶媒としては、それ自身
反応条件で分解することなく、反応系で実質的に安定
で、水と共沸するものであればよい。具体的には、トル
エン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が
好ましく使用できる。
【0048】初期反応におけるエステル化反応の反応率
は、50%以上とすることが好ましい。このエステル化
反応率は反応により生成する水の量により知ることがで
きるが、より正確に求めるためには反応生成物の一部を
取出し、未反応―COOH価を測定することにより知る
ことができる。初期反応におけるエステル化率は、より
好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%
である。
【0049】以上のような初期反応の後、生成した水の
量あるいは未反応―COOH価を元にジアリルカーボネ
ート添加量を決定する。正確さの点で未反応―COOH
価より求めるのが好ましい。
【0050】ジアリルカーボネート添加量は、未反応―
COOH 100モルに対して70〜100モル当量添
加することが好ましい。さらに好ましくは75〜95モ
ル当量である。70モル当量以下では、ジアリルカーボ
ネートを添加した効果が小さく、100モル当量以上で
はポリマー中にカーボネート結合が多く残存しやすく着
色や重合中の固化をまねきやすく好ましくない。
【0051】このジアリルカーボネートは、次の重合反
応において、消費され未反応のエステル化率を補い、重
合反応を円滑に進行させ良好なポリマーを得るのに大き
く帰寄する。
【0052】ジアリルカーボネート添加方法としては、
初期反応後なら特に制限はなく降温した後仕込んでもよ
いし、初期反応温度のままジアリルカーボネートを反応
系に加えてもよいが、空気などが混入しない条件下で行
うことが好ましい。
【0053】次の重合反応は、さらにエステル化が進む
と同時に、それまでに生成したエステルとヒドロキシ成
分およびジアリルカーボネートとの反応が進み重合が進
行する段階である。この段階では二酸化炭素、水、フェ
ノール類が生成する。水、フェノール類は反応系外へ留
出するようにする。この段階でジアリルカーボネートは
未反応―COOHと反応し、二酸化炭素、水、フェノー
ル類を生成して、エステル化率の向上に役立っている。
【0054】反応温度は、初期反応温度乃至380℃で
好ましく実施される。重合反応はポリエステルの溶融下
で実施することが必要である。重合が進行するに従って
反応物の融点は上昇していくので、徐々に昇温しながら
行うのが好ましく、例えば、ポリマーの固有粘度が0.
5程度までは、好ましくは230〜340℃程度の温度
で実施される。それ以上の固有粘度の場合、好ましくは
340〜380℃、より好ましくは340〜360℃の
温度で溶融重合される。この際、フェノール類(d)は
回収され再使用される。
【0055】この重合反応においてジアリルカーボネー
トも反応し、二酸化炭素、水、フェノール類が生成す
る。このジアリルカーボネートは未反応の―COOH基
と反応するため、高融点の昇華物は抑制され、さらに重
合反応もより円滑に進行する。
【0056】本発明方法により得られる芳香族ポリエス
テルは高重合度化する場合、エクストルーダー型の反応
器等で実施することが好ましい。
【0057】重合反応は、減圧下又は不活性ガスを流
し、強制的に反応の結果生成する水及びフェノール類、
並びに、必要に応じて、過剰に用いたハイドロキノンな
どのジヒドロキシ芳香族化合物を反応系外に除去しつつ
行うのが有利である。
【0058】かくして上記本発明方法によれば、溶融重
合のみで、固有粘度が0.4〜1.5の芳香族ポリエス
テル重合体が得られる。好ましい固有粘度は0.45〜
1.0であり、より好ましくは0.5〜1.0である。
【0059】なお、本発明方法においては、熱安定剤の
存在下で実施することが好ましく、かかる熱安定剤とし
ては各種のリン化合物が好ましい。かかるリン化合物と
しては亜リン酸、リン酸、トリフェニルフォスファイ
ト、トリフェニルフォスフェート、トリフェニルホスフ
ィン等が好ましく例示される。かかる安定剤の好ましい
使用量は芳香族ジカルボン酸成分(a)に対して0.0
01〜1モル%程度、より好ましくは0.01〜0.5
モル%程度である。また、添加時期としては、特に制限
はないが、初期反応と重合反応との間での添加が好まし
い。
【0060】本発明による結晶性芳香族ポリエステル重
合体は、溶融状態で光学的に等方性であり、押出成形、
射出成形等の通常の溶融成形が可能である。しかも、該
ポリエステル重合体を溶融成形して得られた成形品は、
機械的特性、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、難燃性に
優れているばかりでなく、吸水性も小さいので、この芳
香族ポリエステル重合体はエンジニアリングプラスチッ
クス、繊維、フィルム等の素材として極めて有用であ
る。
【0061】
【発明の効果】以上のように、本発明の芳香族ポリエス
テル重合体の製造法によれば、安価な原料を用い、か
つ、溶融重合法のみにより高価な原料を用いた場合と同
様の優れた結晶性、色調を有する芳香族ポリエステルを
製造可能である。すなわち、本発明によれば結晶化に要
する時間の短い、溶融状態からの降温時の結晶化温度が
高いポリマーが得られるものである。このため、本発明
の製造法によって製造された芳香族ポリエステルを樹脂
原料として用いた場合には、その成形サイクルを短縮す
ることにより、生産性を向上させたり、良好な色調によ
り成形品に対して種々の着色も可能となる。さらに、ジ
アリルカーボネートの添加量をコントロールすること
で、ポリエステルにおいてしばしば問題となる未反応―
COOH基を大きく減少させることが可能なので耐加水
分解性等を向上させることが可能である。以上のことか
ら本発明の工業的意は極めて大きい。
【0062】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳述する。実
施例中単に「部」とあるは「重量部」を意味し、ポリマ
ーの固有粘度(Inherent Viscosity)はフェノール/テ
トラクロルエタン混合溶媒(重量比60/40)を用い
濃度0.3g/dl温度35℃で測定した値である。ま
た、ポリマーの融点(Tm)及び二次転移点(Tg)溶
融状態からの降温結晶化温度TdcはDSCを用い昇温
速度降温速度共10℃/分で測定した。また、溶融粘度
はフローテスターを用いて360℃で測定し、ずり速度
1000/秒の値で示した。またポリマーの結晶化速度
は、脱偏光強度法により行い結晶化が半分進行する時間
(半結晶化時間)を390℃での溶融状態から各結晶化
温度と温度ジャンプさせた場合について測定して結晶化
速度の目安とした。
【0063】
【実施例1】イソフタル酸166部、ハイドロキノン9
1部、ネオペンチレングリコール21部、フェノール9
4部、三酸化アンチモン0.09部を撹拌装置留出系を
備えた反応器に仕込み(イソフタル酸/ハイドロキノン
/ネオペンチレングリコール/フェノールのモル比は1
00/83/20/100)、系を窒素置換した後窒素
加圧下280℃に加熱した。圧力を8kg/cm2 から
2kg/cm2 に徐々に下げつつ、かつ反応によって生
成する水を系外に留去しながら10時間反応させた。こ
の間に28部の水が生成した(エステル化反応率78
%)。その後未反応のフェノールを系外へ追出した。こ
の反応混合物について末端―COOH基を測定したとこ
ろ1760(当量/T)(エステル化反応率計算値75
%)であった。
【0064】次いで、反応系を常圧に戻し、ジフェニル
カーボネート83部およびトリフェニルフォスファイト
0.33部を加え窒素気流中揮発成分を系外に留去させ
つつ180分間反応させた。この間に反応温度は280
℃より340℃まで昇温した。次に系内を徐々に減圧と
し60分後には約0.5mmHgの高真空下としてさら
に60分反応させてポリマーを得た。得られたポリマー
は固有粘度0.53、Tm348℃、Tg134℃、T
dc284℃の結晶性の良好なポリマーであった。この
ポリマーの半結晶化時間は、結晶化温度150〜180
℃において約3.5秒であった。
【0065】
【比較例1】初期反応後にジフェニルカーボネートを添
加することなく実施例1と同様の反応を行ったところ、
得られたポリマーは固有粘度0.51、Tm342℃
Tg131℃、Tdc252℃であった。このポリマー
の半結晶化時間は結晶化温度170℃において最短の
5.5秒であり、160℃以下では結晶化は見られなか
った
【0066】
【実施例2】次に、2箇所に真空可能なベント口を有す
るL/D42の30mmφ同方向回転2軸エクストルー
ダーを用い、実施例1にて得られたポリマーをポリマー
温度350〜360℃、スクリュー回転数100rp
m、真空ゾーンでの平均滞溜時間約10分の条件下で溶
融反応させた。この際、各ベント口の前部には通常の搬
送用スクリューと逆向きのスクリュー部を設けて真空ゾ
ーンをシールすることにより、2箇所のベント口を夫々
約1mmHgの真空に保った。
【0067】このようにして得られたポリマーは良好な
結晶性を有し、固有粘度0.62、Tm348℃、Tg
140℃、Tdc292℃、半結晶化時間は160〜1
70℃において約4.5秒であった。
【0068】
【比較例2】イソフタル酸166部、ハイドロキノン9
1部、ネオペンチレングリコール21部、ジフェニルカ
ーボネート428部、三酸化アンチモン0.09部を撹
拌装置留出系を備えた反応器に仕込み(イソフタル酸/
ハイドロキノン/ネオペンチレングリコール/ジフェニ
ルカーボネートのモル比は100/83/20/20
0)、初期反応は行わず窒素気流中、揮発成分を系外に
留去させつつ180分間反応させた。この間に反応温度
は200℃より340℃まで昇温した。次に系内を徐々
に減圧とし、60分後には約0.5mmHgの高真空下
としたが、まもなく反応物は固化し高融点の低分子量化
合物が得られたに過ぎなかった。
【0069】
【実施例3】イソフタル酸166部、ハイドロキノン8
1部、4,4′―ジヒドロキシジフェニル59部、フェ
ノール47部および三酸化アンチモン0.09部を、撹
拌装置、留出系を備えた反応器に仕込み(イソフタル酸
/ハイドロキノン/4,4′―ジヒドロキシジフェニル
/フェノールのモル比は100/73.5/31.5/
50に相当する)、窒素で加圧し280℃に加熱した。
圧力を5kg/cm2から2kg/cm2 に徐々に下げ
つつ、かつ反応によって生成する水を系外に留去し、5
時間反応させた。この間に28部の水が生成した(エス
テル化反応率78%)次いで反応系を常圧に戻しジフェ
ニルカーボネート85部(未反応のカルボン酸末端10
0モルに対し90モル当量)、トリフェニルホスフェー
ト0.33部を加え、窒素気流中、揮発成分を系外に留
去させつつ60分後には約0.5mmHgの高真空下と
して60分間反応させてポリマーを得た。得られたポリ
マーは固有粘度0.76、Tm332℃、Tg169
℃、Tdc282℃で結晶性の良好なポリマーであっ
た。
【0070】
【比較例3】初期反応後にジフェニルカーボネートを添
加することなく実施例3と同様の反応を行ったところ、
得られたポリマーは、固有粘度0.78、Tm325
℃、Tg170℃、Tdc273℃であった。
【0071】以上の実施例及び比較例に示すように、本
発明の製造法により製造された芳香族ポリエステルは結
晶性に優れていることが容易に理解される。また、脂肪
族ジオールを構成単位として含む場合にも良好なポリマ
ーを製造できることがわかる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(I)、(II)および(III )の
    各成分により実質的に構成され、かつ、成分(II)と
    (III )の含有当量比が60/40〜90/10である
    芳香族ポリエステルの製造に際し、 【化1】 [式中、Rは炭素数が2〜20の脂肪族炭化水素、芳香
    族炭化水素またはヘテロ原子を含む芳香族炭化水素基を
    表す。]イソフタル酸またはイソフタル酸を主たる酸成
    分とする芳香族ジカルボン酸(a)、ハイドロキノン
    (b)、下記式(IV)で示されるジヒドロキシ化合物
    (c)および必要に応じて炭素数1〜10のアルキル基
    もしくはフェニル基で置換されていてよいフェノール類
    (d)を、 【化2】HO―R―OH ……(IV) [Rは式(III )のRと同じ。] 下記式の(1)、(2)および(3) 【数1】 1.3≧(B+C)/A≧0.9 …(1) 90/10≧B/C≧60/40 …(2) D/A≦10 …(3) [ただし、式中、Aは芳香族ジカルボン酸(a)、Bは
    ハイドロキノン(b)、Cはジヒドロキシ化合物
    (c)、Dはフェノール類(d)の各モル数である。]
    を同時に満足する割合で、触媒の存在下に加熱溶融反応
    せしめてエステル化反応率が50%以上のエステル化物
    を生成させた後、未反応―COOH基100モルに対
    し、70〜100モル当量のジアリルカーボネートを加
    え、さらに加熱溶融せしめて、固有粘度が0.4〜1.
    5の範囲にある芳香族ポリエステルを生成させることを
    特徴とする芳香族ポリエステルの製造法。
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