JPH06253826A - エステル香味の低減した酒類の製造 - Google Patents

エステル香味の低減した酒類の製造

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JPH06253826A
JPH06253826A JP6299893A JP6299893A JPH06253826A JP H06253826 A JPH06253826 A JP H06253826A JP 6299893 A JP6299893 A JP 6299893A JP 6299893 A JP6299893 A JP 6299893A JP H06253826 A JPH06253826 A JP H06253826A
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aatase
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 エステル香味の低減した酒類の製造に有用な
酵母を提供する。 【構成】 サッカロマイセス・セレビシェが産出するよ
うなアルコールアセチルトランスフェラーゼの生物工学
的産生能を有するDNA鎖を利用して形質転換された、
エステル生産能が減少している酵母に関する。またこの
形質転換酵母によるエステル香味の低減した酒類の製造
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】〔発明の背景〕
【産業上の利用分野】本発明は、サッカロマイセス・セ
レビシエが産生するようなアルコールアセチルトランス
フェラーゼ(以下AATaseという)の生物工学的産
生能を有するDNA鎖を利用して形質転換された、エス
テル生産能が減少している酵母に関するものである。本
発明は、また、この形質転換酵母による、エステル香味
の低減した酒類の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】清酒、ビール、ワイン、ウイスキー等の
酒類において、各種のエステル成分の量がその評価を大
きく左右することは、周知の事実である。これらのエス
テルは、一般に、発酵過程において酵母が各種の低級も
しくは高級アルコールを産生し、これをさらにエステル
へと変換することによって発酵液中に存在する。
【0003】エステルのうちでも、とりわけ酢酸イソア
ミルは果実様の香りがするエステルであり、またその前
駆体であるイソアミルアルコールとの含量比が香りの官
能評価との相関が高いことで知られていて、例えば清酒
ではこの比率が高いものほど吟醸香が高いとして珍重さ
れてきた(醸試報告 No. 145 、p.26(1973))。
【0004】先に吉岡らが報告しているように(Agric.
Biol. Chem. 45, 2183(1981))、AATaseは酢酸
イソアミルの生成において中心的役割を果たす酵素であ
って、イソアミルアルコールとアセチルCoAを縮合さ
せて酢酸イソアミルを産生する性質を有する。また、A
ATaseは幅広い基質特異性を持つことが知られてお
り、酢酸エチル等その他多くの酢酸エステルを同様の機
構により産生することが知られてきた。
【0005】したがって、酒類の製造において酢酸イソ
アミルをはじめとするエステル類の量を増加する方法と
しては、使用する酵母のAATaseの活性を増強する
ことが有効であり、従来酒類の製造においてなされてき
た原料の選定や発酵条件の管理等のうちには、結果とし
てAATaseの活性を増強してきたものも多かった。
【0006】一方、ビールにおいてはエステルは重要な
香気成分であるけれども、過剰なエステルはエステル臭
として嫌われることも事実であり、このエステル臭の生
成要因にもAATaseは関与していると思われる。
【0007】以上のように、AATaseがエステル生
成に重要であることは明らかであったが、AATase
そのものに関しての報告は少ない。これまでに部分精製
した報告(日本農芸化学会誌63. 435 (1989)、Agric. B
iol. Chem., 54. 1485 (1990) 、日本醸造協会誌87. 33
4 (1992)等)はあるものの、この酵素がきわめて不安定
であることから、その精製は困難であって、本発明者ら
の知る限りでは未だ完全な精製に成功した例はなく、ま
たこの酵素を産生するDNA鎖に関しても全く報告はな
かった。 〔発明の概要〕
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、酵母のAA
Taseの構造を明らかにし、そのDNA配列を利用す
ることによって、AATase産生能を低減させた形質
転換酵母を得ること、ひいてはエステル香味の低減した
酒類を製造すること、を目的とするものである。
【0009】<要旨>本発明は、実質的には添付図1〜
2、3〜4のいずれかのAからBまでおよび19〜20
のAからCまたはBからCまでのDNA配列、を利用し
て酵母固有のAATase産生能を消失ないし減少させ
る技術に関するものである。
【0010】したがって、本発明は、その第一の態様に
おいて、形質転換されてアルコールアセチルトランスフ
ェラーゼ産生能の消失ないし減少した酵母に関する。
【0011】すなわち、本発明による形質転換されてア
ルコールアセチルトランスフェラーゼ産生能の消失ない
し減少した酵母は、下記の(1a)〜(1d)のいずれ
かのDNA配列を利用してホスト酵母に固有のアルコー
ルアセチルトランスフェラーゼ産生遺伝子の発現を抑制
したものであること、を特徴とするものである。 (1a) 実質的に添付図1および2にわたって示した
DNA配列のAからBまでのDNA配列。 (1b) 実質的に添付図3および4にわたって示した
DNA配列のAからBまでのDNA配列。 (1c) 実質的に添付図12および13にわたって示
したDNA配列のAからCまでまたはBからCまでのD
NA配列。 (1d) 上記(1a)〜(1c)のいずれかのDNA
配列またはその相補体にハイブリダイズするDNA鎖。
【0012】ここで、「ホスト酵母に固有のアルコール
アセチルトランスフェラーゼ産生遺伝子の発現を抑制し
た」ということは、具体的には、当該遺伝子をAATa
se産生能を失う程度に破壊したか、当該遺伝子のAA
Tase産生能は実質的に破壊しないがその発現の過程
に障害を設けたか、を意味する。後者の具体例は、たと
えば、当該遺伝子のmRNAと相補的なRNA、すなわ
ち所謂アンチセンスRNA、を発現するような外来DN
A鎖を酵母細胞内に導入して、mRNAによる翻訳の阻
害、ひいては遺伝子の発現の抑制、を生じさせることで
ある。このような、いわば「負」の形質転換は、酵母の
AATaseの塩基配列が明らかになったことによっ
て、はじめて可能となったものである。すなわち、この
第一の態様において所定のアミノ酸配列を有するポリペ
プチドをコードするDNA配列を「利用して」というこ
とは、具体的には、たとえば、当該DNA配列をホスト
酵母に固有のAATaseとの相同性は保存されている
がAATase産生能は消失ないし減少するように改変
し、この改変DNA配列を相同組換えによってホスト酵
母のAATase産生遺伝子と置換して、ホスト酵母固
有のAATase産生能を喪失ないし低下させるか、あ
るいはホスト酵母固有のAATase産生遺伝子のmR
NAに相補性のRNAを当該DNA配列からつくって、
それを前記のアンチセンスRNAとして使用すること、
を意味する。
【0013】このようにAATase産生能を消失ない
し低下させた酵母を手にすることができたところから、
本発明によればエステル香味の減少した酒類の製造が可
能となる。
【0014】したがって、本発明は、その第二の態様に
おいて、エステル香味の減少した酒類の製造法に関す
る。
【0015】すなわち、本発明によるエステル香味の減
少した酒類の製造法は、糖を酵母で発酵させて酒類を製
造する方法において、使用する酵母が、上記第一の態様
で示した形質転換されてアルコールアセチルトランスフ
ェラーゼ産生能の消失ないし減少した酵母であること、
を特徴とするものである。
【0016】なお、本発明では、「DNA鎖」、「DN
A配列」、および「遺伝子」を実質的に同義のものとし
て使用している。
【0017】<効果>酵母AATase遺伝子を遺伝子
工学的手法を用いて改変することによってAATase
遺伝子を破壊、もしくはその発現を抑制するような外来
DNA鎖の作製が可能である。すなわち、このDNA鎖
を核外および(または)核内遺伝子として酵母細胞内に
導入することによって、酵母のAATase産生能を抑
制することができ、この酵母によって糖を発酵させるこ
とによってエステル香味の低減した酒類を製造すること
ができる。
【0018】〔発明の具体的説明〕 <AATase>本発明においてホスト酵母に固有のA
ATase産生遺伝子の発現を抑制すべく利用するDN
A配列は、AATase産生能を有するDNA配列であ
る。
【0019】AATase、すなわちアルコールアセチ
ルトランスフェラーゼはアセチルCoAよりアセチル基
をアルコール類に転移させる反応によって酢酸エステル
を産生する能力を有する酵素である。
【0020】この場合のアルコール類とは、主として炭
素数が1から6までの直鎖もしくは分岐鎖状のアルコー
ル類であるが、本発明者らが検討したところによると、
AATaseは2‐フェニルエチルアルコールのような
さらに炭素数の多いアルコールをも基質としうることが
知られている。
【0021】したがって、本発明でAATaseの基質
アルコールを議論する必要がある場合は、「アルコール
類」は広範囲のアルコールを包含するものと理解すべき
である。
【0022】本発明でのAATaseは、酵母由来もの
である。これは具体的にはサッカロマイセス・セレビシ
エ(S. cerevisiae )から得られたものであって、実質
的に添付図1および2にわたって示したアミノ酸配列の
AからBまでのアミノ酸配列、添付図3および4にわた
って示したアミノ酸配列のAからBまでのアミノ酸配
列、添付図19および20にわたって示したアミノ酸配
列のAからCまでのアミノ酸配列、添付図19および2
0にわたって示したアミノ酸配列のBからCまでのアミ
ノ酸配列、のいずれかを有するポリペプチドである。ポ
リペプチドの生理活性がいくつかのアミノ酸の付加、挿
入、削除、欠失または置換によって変化しないことがあ
ることは遺伝子工学あるいは蛋白工学の明らかにすると
ころである。本発明でアミノ酸配列を「実質的に」添付
図1および2にわたって示したアミノ酸配列のAからB
までのアミノ酸配列というのは、本発明でいうアミノ酸
配列がたとえば添付図1および2にわたって示したアミ
ノ酸配列のA−Bのアミノ酸配列と全く同じである場合
のみに限られず、AATase産生能が保存されている
限り上記のようなアミノ酸の改変を包含することを示す
趣旨である。
【0023】なお、本発明でいうサッカロマイセス・セ
レビシエは、The yeasts,a taxonomic study 3rd.Editi
on(ed.by N.J.W.Kreger-van Rij,Elsevier Science Pub
lishers B.V.,Amsterdam(1984),p379)に記載されている
ところのサッカロマイセス・セレビシエおよびそのシノ
ニムないし変異株である。
【0024】AATaseは、その精製法も含めて、既
に報告されている(日本農芸化学会誌63. 435 (1989)、
Agric. Biol. Chem., 54. 1485 (1990) 、日本醸造協会
87. 334(1992) 等)。しかし、本発明者らの知る限り
では、そのAATaseは純度が充分に高くないので、
そのアミノ酸配列を決定することはできなかったのであ
る。
【0025】本発明者らは、AATaseの精製に1‐
ヘキサノールをリガンドとするアフィニティーカラムの
使用が有効であることを見いだし、これを用いてAAT
aseをサッカロマイセス・セレビシエより完全に精製
することに成功し、ここにその諸性質を明らかにし得た
のである。添付図1および2にわたって示したアミノ酸
配列は、このようにして充分に精製されたサッカロマイ
セス・セレビシエ由来のAATaseについて得られた
ものである。
【0026】今回あきらかとなったAATaseの性質
のうち、代表的なものをあげるならば、AATaseの
分子量をあげることができる。すなわち、これまで推定
されていたAATaseの分子量は約45,000〜5
6,000であったが、今回精製されたAATaseの
分子量はSDS‐PAGE(SDSポリアクリルアミド
電気泳動)の結果(図10)、約60,000であり、
これまで報告されていた蛋白質とは異なるものであるこ
とが示唆された。なお、塩基配列から推定されるAAT
aseの分子量は約61,000であった。
【0027】本発明でのAATaseを酵素学的に定義
すれば下記の通りである。 a 作用:エチルアルコールなどの種々のアルコールお
よびアセチルCoAに作用して、酢酸のエステルを生成
する。 b 基質特異性:アルコールに対しては、炭素数が2か
ら5までの種々のアルコールに作用する。炭素数が2か
ら5の範囲では炭素数が多いほど良く作用する。また、
枝分かれしたアルコールよりも直鎖状のアルコールに良
く作用する。 c 分子量:約60000 d 至適および安定pH: 至適pH:8.0 安定pH:7.5−8.5 e 至適および安定温度: 至適温度:25℃ 安定温度:4℃ f 阻害剤等の影響:パラクロロ水銀安息香酸(PCM
B)、およびジチオビス安息香酸(DTNB)により強
い阻害を受ける。 g 各種脂肪酸の活性に及ぼす影響:飽和脂肪酸によっ
ては顕著な阻害は受けないが、不飽和脂肪酸により強い
阻害を受ける。 h イソアミルアルコールまたはアセチルCoAに対す
るKm値: イソアミルアルコール:29.8mM アセチルCoA:190μM
【0028】このAATaseは、サッカロマイセス・
セレビシエである協会酵母7号の培養および菌体内容物
からの粗酵素の回収ならびに精製からなる方法によって
得ることができる。これらの単位工程からなるAATa
se取得の実際は、後記の実施例に示した通りであっ
て、1‐ヘキサノールをリガンドとするアフィニティー
カラムクロマトグラフィーを含めて本発明AATase
の取得は当業者にとって容易である。
【0029】<AATaseを産生するDNA配列ない
しDNA鎖/遺伝子>本発明において、AATaseを
産生する能力を有するDNA配列ないしDNA鎖とはA
ATase活性を有するポリペプチドをコードするDN
A配列ないしDNA鎖のことであり、それがコードする
ポリペプチドすなわちAATaseのアミノ酸配列で示
せば下記の(2a)〜(2d)からなる群から選ばれた
ものであり、その具体例を示せば、それは下記の(3
a)〜(3d)からなる群から選ばれたものである。 (2a) 実質的に添付図1および2にわたって示した
アミノ酸配列のAからBまでのアミノ酸配列を有するポ
リペプチドをコードするDNA配列からなることを特徴
とする、アルコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝
子。 (2b) 実質的に添付図3および4にわたって示した
アミノ酸配列のAからBまでのアミノ酸配列を有するポ
リペプチドをコードするDNA配列からなることを特徴
とする、アルコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝
子。 (2c) 実質的に添付図12および13にわたって示
したアミノ酸配列のAからCまでまたはBからCまでの
アミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA
配列からなることを特徴とする、アルコールアセチルト
ランスフェラーゼ遺伝子。 (2d) 上記(2a)〜(2c)のポリペプチドのい
ずれかのアミノ酸の付加、挿入、削除、欠失または置換
による変異体のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコ
ードするDNA配列であることを特徴とする、アルコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子。 (3a) 実質的に添付図1および2にわたって示した
塩基配列のAからBまでの塩基配列からなる、アルコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子。 (3b) 実質的に添付図3および4にわたって示した
塩基配列のAからBまでの塩基配列からなる、アルコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子。 (3c) 実質的に添付図19および20にわたって示
した塩基配列のAからCまでまたはBからCまでの塩基
配列からなる、アルコールアセチルトランスフェラーゼ
遺伝子。 (3d) 上記(3a)〜(3c)のいずれかのDNA
配列またはその相補体にハイブリダイズし、かつアルコ
ールアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプ
チドを産生しうるDNA鎖。
【0030】ここで、このDNA配列がコードするポリ
ペプチドの定義において「実質的」ということの意味は
前記したところであって、DNA配列もそれがコードす
るポリペプチドの変動に対応して変動する訳であるが、
このポリペプチドを「コードするDNA配列」というこ
ともまた所謂遺伝暗号に関する知見にしたがってその最
も広い意味に解するものとする。したがって、縮退(de
generacy)によって所与のアミノ酸をコードする核酸の
トリプレットは複数種ありうるし、またコードされるポ
リペプチドのAATase産生能が保存される限り、ア
ミノ酸の付加、挿入、削除、欠失または置換に対応し
て、トリプレットのいくつかおよび(または)その構成
核酸のいくつかが変化していてもよい。なお、「コード
する」ということは、「コードする能力を有する」と同
義である。
【0031】本発明で対象とするDNA配列は、天然物
由来のものでも、全合成したものでも、あるいは天然物
由来のものの一部を利用して合成を行なったもの、すな
わち半合成のもの、でもよい。
【0032】このようなDNA鎖の典型的な取得法の一
つは、本発明の提供するAATaseを産生する能力を
有するDNA鎖の一部をプローブとして使用して、プラ
ークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼ
ーション、PCR等の手段を行なうことである。これら
の方法は、いずれも当該分野に関わる当業者に周知であ
って、容易に実施できるものである。
【0033】またこのような手段によってAATase
を産生する能力を有するDNA鎖を取得するための遺伝
子源として有用なものとしては、細菌、酵母、植物等が
考えられ、特に酒、醤油等の発酵食品の製造に使用され
ている酵母類は上記の条件に当てはまるDNA鎖を有し
ている可能性が高い。
【0034】このDNA配列は、AATaseに丁度対
応する長さのものであってもよく、またその上流および
(または)下流側にDNA配列が結合した構造のもので
あってもよい。後者の具体例は、適当なベクターに組込
まれたプラスミドの形状のものである。
【0035】<形質転換>AATase遺伝子を利用し
てホスト酵母のAATase産生能発現を抑制するに
は、形質転換の手法によればよい。
【0036】形質転換体の作製のための手順ないし方法
は遺伝子工学の分野において慣用されているものであ
り、本発明においても下記したところ以外のものについ
ては慣用基準(ANALYTICAL BIOCHEMITSTRY 163. 391 (1
987)等)に準じて実施すれば良い。
【0037】形質転換の典型的なものは、外来遺伝子、
すなわち、本発明の場合はAATase産生遺伝子、を
ホスト細胞、すなわち酵母、の核内および(または)核
外に導入して、その形質を発現させることからなるもの
である。
【0038】しかし、ホスト酵母が固有のAATase
産生遺伝子を持つものである場合に、その遺伝子の発現
を抑制することによって、AATase産生能の消失な
いし減少した酵母を作成することができる。すなわち、
(イ)当該遺伝子を破壊ないし不活性化するDNA鎖で
置換えて、AATase産生能そのものを消失にないし
減少させることができ、また(ロ)ホスト細胞固有のA
ATase産生遺伝子を保有させたまま、所謂アンチセ
ンスRNAを発現するような外来DNA鎖の導入により
翻訳を抑制することによって当該遺伝子の発現を抑制す
ることができる。
【0039】この際用いられるベクターとしては、酵母
用として知られているもの、たとえば、YRp系(酵母
染色体のARS配列を複製起点とする酵母用マルチコピ
ーベクター)、YEp系(酵母の2μmDNAの複製起
点を持つ酵母用マルチコピーベクター)、YCp系(酵
母染色体のARS配列を複製起点として持ち、かつ酵母
染色体のセントロメアのDNA配列を持つ酵母用シング
ルコピーベクター)、YIp系(酵母の複製起点を持た
ない酵母染色体組込み用ベクター)等、知られているも
の全てを用いることができる。これらのベクターは文献
上公知(朝倉書店刊、日本農芸化学会ABCシリーズ
「物質生産のための遺伝子工学」、p68)であるばか
りでなく、容易に作製することができる。
【0040】前者の方法(イ)は、具体的には、たとえ
ば、所謂「相同組換え」を利用するものであって、ホス
ト酵母に固有のAATase産生遺伝子をAATase
産生能を失う程度に破壊することからなる。
【0041】相同組換えを利用したAATase遺伝子
の破壊法は、二つの段階により行われる。
【0042】まず、第一段階として破壊したいAATa
se遺伝子の中心部の一部を制限酵素で切り落とし、そ
の代りに適当な他の遺伝子(G418耐性遺伝子等)を
挿入したDNA断片を作製する。この断片はAATas
e遺伝子の一部が欠失し、他の断片に置き代っているた
めAATase遺伝子が発現し得ない。
【0043】次に、第二段階として作製したこの断片と
酵母のAATase遺伝子を置換える。この方法は通常
の形質転換と全く同じ手順によって行われる。すなわ
ち、この断片は、両端に存在するAATase遺伝子相
同塩基配列を利用して酵母のAATase遺伝子を置き
代えることができ(相同組換え)、置き代った酵母はA
ATase遺伝子を失っている。
【0044】なお、相同組換えによる方法の詳細につい
ては、たとえば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 76.4951(19
79) 、Methods in Enzymology.101 ,202(1983) 等を参
照されたい。
【0045】後者の方法(ロ)は、たとえば、AATa
se産生能は実質的に破壊しないが、AATase産生
遺伝子の発現の過程に障害を設けるものであって、具体
的にはアンチセンスRNAを使用することからなる。
【0046】アンチセンスRNAによりAATase遺
伝子の発現量を減少させる方法は、発現を抑制したいA
ATase遺伝子のmRNAと相補的なmRNAを適当
なプロモーターによって発現させることにより行われ
る。この相補的なmRNAの発現のためには、一般的に
当該遺伝子のmRNA部分をプロモーターに逆向きに接
続する方法が採られる。本来の向きと逆向きに接続され
た遺伝子は、2本鎖DNAのうちの本来と反対側のDN
A鎖、つまりAATase蛋白をコードしていない方の
DNA、を転写する。できたアンチセンスRNAはAA
Tase遺伝子のmRNAと細胞内でハイブリッドを形
成して、当該遺伝子のmRNAにリボソームが結合して
AATase蛋白を合成するのを著しく妨げる。
【0047】本発明の前提にかかるAATase遺伝子
のアンチセンスRNAを酵母中で発現させるためあるい
は発現を増加もしくは減少させるためには、転写および
翻訳を制御するユニットであるプロモーターを本発明D
NA鎖の5′−上流域に、ターミネーターを3′−下流
域にそれぞれ組込めば良い。このプロモーターおよびタ
ーミネーターとしては、AATase遺伝子それ自身に
由来するものの他、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子
(J. Biol. Chem., 257 ,3018(1982) )、ホスホグリセ
レートキナーゼ遺伝子(Nucleic Acids Res., 10, 7791
(1982) )、グリセロールアルデヒド−3−燐酸デヒド
ロゲナーゼ遺伝子(J.Biol. Chem., 254, 9839(1979))
等既に知られているあらゆる遺伝子由来のものもしくは
人工的にそれを改良したものの使用が可能である。な
お、アンチセンスRNAによる方法の詳細については、
たとえば、Science, 229.,345(1985) を参照されたい。
また、酵母におけるアンチセンスRNAの使用方法につ
いてはCurr.Genet.,13,283(1988)等を参照されたい。
【0048】本発明において形質転換すべき酵母、すな
わちホスト酵母、は分類学上、酵母の範疇に入りうる任
意のものでありうるが、本発明の目的からすれば、サッ
カロマイセス・セレビシエに属する酒類製造用酵母、具
体的にはビール酵母、清酒酵母、ワイン酵母等が好まし
い。具体的には、例えば、ビール酵母:ATCC26292
、ATCC2704、ATCC32634 およびAJL2155、
清酒酵母:ATCC4134、ATCC26421 およびIFO
2347、ワイン酵母:ATCC38637 、ATCC38638 お
よびIFO2260を例示することができる。
【0049】ホスト酵母として好ましい他の一群は、パ
ン酵母である。具体的にはATCC32120 を例示するこ
とができる。
【0050】<酒類の製造>上記のようにして得た、A
ATase産生能の低減した形質転換酵母は、導入され
た形質に加えてホスト酵母個有の形質を具備しているか
ら、その個有の形質に着目した各種の用途に利用するこ
とができる。
【0051】ホスト酵母が酒類製造用酵母である場合
は、形質転換酵母も糖を資化してアルコールを産生する
能力を有しているから、本発明による形質転換酵母を使
用すれば、エステル香味の低減した酒類を製造すること
ができる。
【0052】酒類としては清酒、ワイン、ウイスキーお
よびビールが代表的であり、酵母によるこれらの製造法
は周知である。
【0053】
【実施例】
(1) AATaseの製造 本発明の酵素は、サッカロマイセス属に属し、前記特性
を有する酵素を生産する微生物を培養し、その培養物か
ら得ることができる。好ましい製造法の一例を示せば次
の通りである。
【0054】(1)−(i )アルコールアセチルトラン
スフェラーゼ活性の測定 AATase反応用緩衝液(25mMイミダゾール塩酸
緩衝液(pH7.5)、1mMアセチルCoA、0.1
%トライトンX−100、0.5%イソアミルアルコー
ル、1mMジチオスレイトール、0.1M塩化ナトリウ
ム、、20%グリセロール、または10mMリン酸緩衝
液(pH7.5)、1mMアセチルCoA、0.1%ト
ライトンX−100、0.5%イソアミルアルコール、
1mMジチオスレイトール、0.1M 塩化ナトリウ
ム、20%グリセロール)、および本酵素を含む溶液1
mlを20ml容バイアルに封入した後、25℃で1時
間反応を行ない、その後開封し0.6g塩化ナトリウム
を加えることにより反応を停止した。内部標準として、
n−ブタノールを50ppmの濃度になるように加え、
再びテフロン栓で蓋をした後、ガスクロマトグラフィー
(島津 GC−9A、HSS−2A)を用いて、ヘッド
スペース法により生成する酢酸イソアミルを定量した。 分析条件: カラム:ガラスカラム 2.1m×3mm 充填剤:10%ポリエチレングリコール1540 ダイアソリッドL(60/80メッシュ) カラム温度:75℃ 注入温度:150℃ キャリア−ガス:窒素 流速 :50ml/分 サンプル量:0.8ml
【0055】(1)−(ii)粗酵素液の調製 協会酵母7号をYPD培地(イーストエクストラクト1
%、バクトペプトン2%、グルコース2%)500ml
に植菌し、15℃で3日間前培養した。その培養液を1
000mlのYPD培地を入れた2000ml容三角フ
ラスコ20本に各々25ml接種し、30℃で12時間
静置培養した。次に、遠心(3000回転/分、10分
間)により菌体を回収し、その菌体重量の10倍容の緩
衝液(50mM トリス塩酸緩衝液(pH7.5)、
0.1M 亜硫酸ナトリウム、0.8M 塩化カリウ
ム)に懸濁させ、菌体重量の1000分の1量の「ザイ
モリエース100T」(生化学工業(株)より市販の酵
母細胞溶解酵素(第702095号特許、U.S.Patent No.3917
510 ))を加えた。これを30℃で1時間振盪し、生じ
たプロトプラストを3000回転/分、5分間の遠心に
よって回収した。回収したプロトプラストを400ml
の菌体破砕用緩衝液(25mMイミダゾール−塩酸緩衝
液(pH7.5)、0.6M 塩化カリウム、1mMエ
チレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTAと略))に
懸濁させ、「ポリトロンPT10型」(KINEMAT
ICA社)菌体破砕装置を用いて細胞を破砕した。破砕
後、45000rpmの遠心により破砕残渣を取り除い
て粗酵素液を得た。
【0056】(1)−(iii) ミクロソーム画分の調製 (1)−(ii)で得られた粗酵素液を100,000×G
で2時間遠心し、生じた沈殿(ミクロソーム画分)を
40mlの緩衝液(25mMイミダゾール−塩酸(pH
7.5)、1mM ジチオスレイトール)に懸濁させ
た。直ちに使用しない場合は、これを−20℃で保存し
た。
【0057】(1)−(iv)可溶化酵素の調製 (1)−(iii) で得られたミクロソーム画分を三角フラ
スコに移し、100分の1容のトライトンX−100を
加えた。これを、4℃で、泡立たないように注意して6
0分間マグネチックスタラーを用いて攪拌した。その
後、100,000×Gで2時間遠心し、上清を緩衝液
A(25mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH7.
2)、0.1%トライトンX−100、0.5%イソア
ミルアルコール、1mMジチオスレイトール、20%グ
リセロール)に対して1晩透析した。
【0058】(1)−(v) 酵素の精製 酵素の精製は、(1)−(ii)および(1)−(iii) の操
作を20回繰り返して取得して−20℃で保存したミク
ロソーム画分に対して(1)−(iv)の操作を行ない、得
られた可溶化酵素液を用いて行なった。まず、可溶化酵
素液をポリバッファ−エクスチェンジャー94(ファル
マシア社)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精
製した(吸着:緩衝液A、溶出:緩衝液A 0.0−
0.6M塩化ナトリウム濃度勾配)。
【0059】活性画分を、繰り返し、ポリバッファ−エ
クスチェンジャー94により精製した。活性画分を、さ
らに、第1表に示したように精製した。すなわち、 イオン交換カラムクロマトグラフィーDEAEトヨ
パール55(TOSOH社) 吸着:緩衝液A、溶出:緩衝液A 0.0−0.2M塩
化ナトリウム濃度勾配 ゲルろ過カラムクロマトグラフィートヨパールHW
60(TOSOH社) 緩衝液B(10mM リン酸緩衝液(pH7.5)、
0.1%トライトンX−100、0.5%イソアミルア
ルコール、1mMジチオスレイトール、0.1M塩化ナ
トリウム、20%グリセロール) ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー
(和光純薬社) 吸着:緩衝液B、溶出:緩衝液B 10−50mMリン
酸緩衝液(pH7.5)濃度勾配 オクチルセファロースカラムクロマトグラフィ−
(ファルマシア社) 吸着:50mMイミダゾール−塩酸(pH7.5)、
0.5%イソアミルアルコール、1mM ジチオスレイ
トール、0.1M塩化ナトリウム、20%グリセロー
ル、溶出:50mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH
7.5)、0.1%トライトンX−100、0.5%イ
ソアミルアルコール、1mMジチオスレイトール、0.
1M塩化ナトリウム、20%グリセロール)により精製
した。
【0060】第1表に示すようにこの段階で比活性で約
2000倍に精製されていることが確認されたが、SD
Sポリアクリルアミド電気泳動、銀染色を行なったとこ
ろ、依然として複数のバンドが認められ、完全な精製に
は至っていなかった。
【0061】そこで、本発明者らはAATaseの基質
である1‐ヘキサノールが、AATaseと強い親和性
を持つことを利用し、1‐ヘキサノールのアフィニティ
ークロマトグラフィーを実施した。6‐アミノ‐1‐ヘ
キサノール(和光純薬社)を担体にCNBr活性化セフ
ァロース4B(ファルマシア社)を用いてファルマシア
社のマニュアルにしたがってヘキサノールセファロース
4Bを作成した。この担体を用いて、アフィニティーク
ロマトグラフィーを実施した(吸着:5mMリン酸バッ
ファー(pH7.2)、0.1%トライトンX−10
0、20%グリセロール、1mMジチオスレイトール、
溶出:0.0−0.2M塩化ナトリウム濃度勾配)、図
9のように得られた活性画分をSDSポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動に供し、銀染色したところ、この活性画
分は図10に示すように単一バンドを与える酵素標品で
あり、AATaseの完全な精製に成功したと判断され
た。
【0062】 第1表 AATaseの精製(その一) 液量 活性 全活性 (ml) (ppm/ml) (ppm) 可溶化酵素 505 119 60100 PBE 94 1st. 395 77 30400 PBE 94 2nd. 86 304 26100 DEAE Toyoparl 24 580 13900 Toyopearl HW60 24 708 17000 Hydoroxy apatite 7.6 1020 7750 Octyl sepharose 1.0 2390 2390 第1表 AATaseの精製(その二) 蛋白量 比活性 収 率 精製率 ppm (mg/ml) mg prot. (%) 可溶化酵素 5.43 22 100 1 PBE 94 1st. 0.515 150 51 7 PBE 94 2nd. 1.086 280 43 13 DEAE Toyoparl 0.96 604 23 27 Toyopearl HW60 0.262 2700 28 123 Hydoroxy apatite 0.119 8570 13 266 Octyl sepharose 0.056 42700 4 1940
【0063】(2) AATaseの特徴 (2)−(i) 基質特異性 前記の分析機器および方法により各種アルコールに対す
る基質特異性を検討したところ、炭素数が1から5まで
の種々のアルコールに作用した。炭素数が多いほど良く
作用した。また、枝分かれしたアルコールよりも直鎖状
のアルコールに良く作用した(図11)。
【0064】(2)−(ii)至適および安定pH 酵素の安定性に及ぼすpHの影響を調べるために、pH
の幅を5〜9(pH5〜6:50mM クエン酸−リン
酸緩衝液、pH6〜8:50mM リン酸緩衝液、pH
8〜9:50mMトリス−リン酸緩衝液)の範囲で22
時間、4℃で保持したのち、0.2Mリン酸二ナトリウ
ムでpH7.5に調整し、(1)−(i)の方法により酵
素活性を測定した。
【0065】酵素の活性に及ぼすpHの影響を調べるた
めに、pHを5〜9(pH5〜6:50mMクエン酸−
リン酸緩衝液、pH6〜8:50mMリン酸緩衝液、p
H8〜9:50mMトリス−リン酸緩衝液)の範囲で変
化させて、(1)−(i) の方法によって酵素活性を調べ
た。pH安定性については、pH7.5〜8.5の範囲
で安定であった。また、至適pHは8.0であった。
【0066】(2)−(iii) 至適および安定温度 酵素の活性に及ぼす温度の影響を調べるために、(1)
−(i) の方法により、各温度で活性測定を行なった。
【0067】また、酵素の安定性に及ぼす温度の影響を
調べるために各温度で酵素液を30分保持した後、
(1)−(i) の方法により酵素活性を測定した。至適温
度は25℃であった。また、熱安定性については、4℃
では安定であったが、それ以上の温度では極めて不安定
であった。
【0068】(2)−(iv)阻害剤等の影響 各種阻害剤の酵素活性に及ぼす影響についての結果を調
べるために、(1)−(i) の反応液中に各種阻害剤を第
2表に示した濃度で加えた後、(1)−(i) の方法で活
性を測定した。結果を、第2表に示す。パラクロロ水銀
安息香酸(PCMB)、ジチオビス安息香酸(DTN
B)により強い阻害を受けたことから、本酵素はSH酵
素であると考えられる。
【0069】 第2表 阻害剤の影響 阻害剤 比活性 阻害剤 比活性 (1mM) (%) (1mM) (%) なし 100 ZnCl 12.7 KCl 98.6 MnCl 53.3 MgCl 86.2 HgCl 0 CaCl 87.7 SnCl 52.0 BaCl 73.7 TNBS 16.8 FeCl 54.5 PCMB 0 CoCl 37.6 DTNB 0 CdCl 3.1 PMSF 70.2 NiCl 22.3 1,10−フェナン CuSO 0 スロリン 87.9 *1mM TNBS:トリニトロ安息香酸 0.1mM PCMB:パラクロロ水銀安息香酸 0.1mM DTNB:ジチオビス(2‐ニトロ安息香
酸) 1mM PMSF:フェニルメタンスルホニルフル
オリド
【0070】(2)−(v) 脂肪酸の活性に及ぼす影響 各種脂肪酸を(1)−(i) の反応用緩衝液液中に2mM
の濃度になるように加えて、酵素活性に及ぼす影響を調
べた(第3表)。
【0071】 第3表 酵素活性に及ぼす脂肪酸の影響 脂肪酸 比活性 (2mM) (%) なし 100 ミリスチン酸 C1428 60.5 パルミチン酸 C1632 88.1 パルミトオレイン酸 C1630 16.7 ステアリン酸 C1836 80.5 オレイン酸 C1834 59.6 リノール酸 C1832 4.3 リノレン酸 C1830 32.0
【0072】(3)部分アミノ酸配列の決定 部分アミノ酸配列の決定は岩松(生化学 63、p13
9 (1991))のポリビニリデンジフロリド(PV
DF)膜を利用した方法にしたがって行なった。(1)
−(v) で取得したAATase酵素を10mM ギ酸3
リットルで1時間透析したのち、凍結乾燥した。これを
泳動用緩衝液(10%グリセロール、2.5%SDS、
2%2‐メルカプトエタノール、62mMトリス塩酸緩
衝液(pH6.8))に懸濁させて、SDSポリアクリ
ルアミド電気泳動に供した。泳動後、エレクトロブロッ
ティングにより当該酵素をゲルより10cm×7cmの
PVDF膜(「ProBlot」(アプライド・バイオ
システムズ社))へ転写した。エレクトロブロッティン
グ装置としてはザルトブロットIIs型(ザルトリウス
社)を用い、島津製作所編の「プロテインシーケンサの
試料前処理方法について(1)」にしたがって、エレク
トロブロッティングを160mAで1時間行なった。
【0073】転写後、当該酵素の転写された部分の膜を
切りとり、約300μlの還元用緩衝液(6M グアニ
ジン塩酸−0.5M トリス塩酸緩衝液(pH3.
5)、0.3%EDTA、2%アセトニトリル)に浸
し、1mgのジチオスレイトール(DTTと略)を加
え、アルゴン下で60℃/約1時間の還元を行った。こ
れに、2.4mgモノヨード酢酸を0.5N水酸化ナト
リウム液10μlに溶かしたものを加え、遮光下で20
分攪拌した。PVDF膜をとりだし、2%アセトニトリ
ルで十分洗浄した後、0.1%SDS中で5分間攪拌し
た。次に、PVDF膜を水で軽く洗浄後、0.5%ポリ
ビニルピロリドン‐40‐100mM酢酸に浸し、30
分間静置した。こののち、PVDF膜を水で十分洗浄
し、約1mm四方に切断した。これを消化用緩衝液(8
%アセトニトリル、90mMトリス塩酸緩衝液(pH
9.0))に浸し、アクロモバクタープロテアーゼI
(和光純薬)を1pmol加え、室温で15時間消化し
た。その消化物を、C8カラム(日本ミリポア・リミテ
ッド社、μ−Bondasphere 5C8、300A、2.1×
150mm)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー
(日立 L6200)により分離して、10数種のペプ
チド断片を得た。ペプチドの溶出溶媒としてはA溶媒
(0.05%トリフルオロ酢酸)、B溶媒(0.02%
トリフルオロ酢酸を含む2‐プロパノール/アセトニト
リル 7:3)を用い、B溶媒に関し、2〜50%の直
線濃度勾配で0.25ml/minの流速で40分間溶
出させた。得られたペプチド断片について、アミノ酸配
列決定試験をアプライド・バイオシステムズ社の気相プ
ロテインシークエンサー470型をマニュアルにしたが
って用い、自動エドマン分解法により行なった。
【0074】その結果、以下のアミノ酸配列が決定され
た。 ピーク1 Lys Trp Lys ピーク2 Lys Tyr Val Asn Ile Asp ピーク3 Lys Asn Gln Ala Pro Val Gln Gln Glu Cy
s Leu ピーク4 Lys Gly Met Asn Ile Val Val Ala Ser ピーク5 Lys Tyr Glu Glu Asp Tyr Gln Leu Leu Ar
g Lys ピーク6 Lys Gln Ile Leu Glu Glu Phe Lys ピーク7 Lys Leu Asp Tyr Ile Phe Lys ピーク8 Lys Val Met Cys Asp Arg Ala Ile Gly Ly
s ピーク9 Lys Leu Ser Gly Val Val Leu Asn Glu Gl
n Pro Glu Tyr ピーク10 Lys Asn Val Val Gly Ser Gln Glu Ser
Leu Glu Glu Leu Cys Ser Ile Tyr Lys
【0075】(4)AATaseを産生するDNA鎖の
清酒酵母協会7号よりのクローニング (i) 清酒酵母ライブラリーの作製 1リットルのYPD培地で酵母をO.D.600=10
まで培養し、集菌後、オートクレーブ処理した水で洗浄
した。これを菌体1gあたり2mlのSCE液(1Mソ
ルビトール、0.125MEDTA、0.1Mクエン酸
3ナトリウム(pH7)、0.75%2‐メルカプトエ
タノール、0.01%「ザイモリエース100T」(生
化学工業(株))に懸濁させたのち、37℃で約2時間
緩やかに振盪し、酵母を完全にプロトプラスト化させ
た。これに、菌体あたり、3.5mlのLysis Buffer
(0.5Mトリス塩酸緩衝液(pH9)、0.2MED
TA、3%ドデシル硫酸ナトリウム(SDSと略))を
加えて緩やかに攪拌した。これを65℃で15分保温
し、完全に溶菌させた。溶菌後、これを室温まで冷却
し、あらかじめ日立超遠心チューブ40PAに製作して
おいた23.5mlの10%−40%のシュークロース
密度勾配液(0.8M塩化ナトリウム、0.02Mトリ
ス塩酸緩衝液(pH8)、0.01MEDTA、10%
−40%シュークロース)に10mlずつ静かにのせ
た。これを、日立超遠心機SCP85Hを用いて、4℃
/26000rpm/3hrで遠心した。遠心後、コマ
ゴメピペットを用いてチューブ底になるべく近いところ
から液を約5mlずつ回収した。回収したサンプルを1
リットルのTE液で一晩透析した。
【0076】次に、こうして得られた染色体DNAをFr
ischauf 等の方法(Methods in Enzymology; 152, 183
、 Academic press 1987)に準じて、制限酵素Sau
3AIで部分分解し、再び10%−40%のシュークロ
ース密度勾配液にのせ、20℃/25000rpm/2
2hrの遠心を行なった。遠心終了後、注射針で超遠心
チューブの底に穴をあけ、0.5mlずつ密度勾配液を
サンプリングチューブに分取した。分取したそれぞれの
一部をアガロースゲルによる電気泳動に付すことによっ
て、密度勾配液中に含まれる染色体DNAの分子量を確
認し、15〜20kbのDNAをあつめ、エタノール沈
殿を行なって、回収した。この染色体DNA1μgとλ
−EMBL3/BamHI vector kit(ス
トラタジーン社製、フナコシ(株)より購入)のλ−E
MBL3 ベクター1μgを16℃で一晩ライゲーショ
ンした。これをGIGAPACK GOLD(ストラタ
ジーン社製、フナコシ(株)より購入)を用いて、パッ
ケージングを行なった。ライゲーションの方法はλ−E
MBL3ベクター付属のマニュアル、パッケージングは
GIGAPACK GOLD付属のマニュアルにしたが
って行なった。
【0077】次に、パッケージング液50μlをλ−E
MBL3 ベクターキットに付属しているホスト菌株 P
2392に感染させた。P2392 1白金耳をTB培地(1%バ
クトトリプトン(ディフコ社)、0.5%塩化ナトリウ
ム、0.2%マルトース、pH7.4)5mlで37℃
で一晩培養し、この培養液1mlを50mlのTB培地
に植菌し、O.D.600=0.5になるまで培養し、
これを氷浴上で冷却した後、集菌し、15mlの氷冷し
た10mM硫酸マグネシウム液に懸濁させた。この菌液
1mlに0.95mlのSM液(0.1M塩化ナトリウ
ム、10mM硫酸マグネシウム、50mMトリス塩酸緩
衝液(pH7.5)、0.01%ゼラチン)と50μl
のパッケージング液を加えて軽く混ぜ、37℃で15分
保温した。これを、あらかじめ47℃に保温しておいた
BBL軟寒天培地(1%Tripticase peptone(BBL
社)、0.5%塩化ナトリウム、0.5%アガロース
(シグマ社))7mlに200μlずつ分注し、軽く混
ぜた後、あらかじめ作製した直径15cmのBBL寒天
培地(1%Tripticase peptone、0.5%塩化ナトリウ
ム、1.5%Bactoagar(ディフコ社))に重
層して広げた。
【0078】これを37℃で8時間保温し、寒天培地1
0枚、約30,000個の酵母染色体DNA断片を含む
ファージライブラリーを完成させた。次に、このライブ
ラリーをクローニングに供するため、メンブレンにうつ
しとった。直径15cmのハイブリダイゼーショントラ
ンスファーメンブレン(NEN社)を重層した寒天培地
に約2分接触させ、ファージをメンブレンにうつしとっ
たものを2組、計20枚作製した。このメンブレンをア
ルカリ変性液(1.5M塩化ナトリウム、0.5N水酸
化ナトリウム)をしみこませた濾紙上に、寒天培地と接
触させた面を上にして、約5分静置した。続いて、メン
ブレンを中和液(3M酢酸ナトリウム(pH5.8))
をしみこませた濾紙上に移動させ、約5分放置した。こ
の後、メンブレンを室温で乾燥させ、さらに80℃で1
時間真空乾燥させた。また、うつしとりの終わった寒天
培地は4℃で保存しておいた。
【0079】(ii)プローブの合成と標識 (3)で得られた部分アミノ酸配列のうちpeak5お
よび2の情報をもとにアプライド・バイオシステムズ社
DNAシンセサイザー「モデル380B」を用いて、以
下のような合成プローブを作製した。 プローブ5 Lys Tyr Glu Glu Asp Tyr (ピーク5) 5′−AAA TAT GAA GAA GAT TAT CA−3′ G C G G C C プローブ2 Lys Tyr Val Asn Ile (ピーク2) 5′−AAA TAT GTA AAT ATT GA−3′ G C G C C C A T
【0080】ホスホアミダイド等の合成試薬は全て同社
のものを採用し、付属のオペレーターズマニュアルにし
たがって使用した。
【0081】得られた合成DNAを28%アンモニア水
3mlで60℃で4hr処理し、これをアプライド・バ
イオシステムズ社製のOligonucleotide Purification C
artridges で精製した。
【0082】合成した2種類のプローブをそれぞれ独立
に[γ−32P]ATP(〜6000Ci/mM)で標識
した。各プローブDNA約250ngを10単位のT4
ポリヌクレオチドキナーゼ、500μCiの[γ−
32P]ATP、およびリン酸化緩衝液(0.1mMスペ
ルミジン、0.1mM EDTA、10mM塩化マグネ
シウム、5mM DTT、50mMトリス塩酸緩衝液
(pH7.6))を含む200μlの反応液中で37℃
で1hr反応させたのち、これを70℃で10分間保温
した。これをワットマン社製DE52で精製して、未反
応の[γ−32P]ATPを除去した。
【0083】(iii) プラークハイブリダイゼーションに
よるクローニング プラークハイブリダイゼーションによるクローニング
は、以下のように第一、第二および第三の3段階のスク
リーニングをすることにより行なった。
【0084】まず、第一スクリーニングとして、(4)
−(i) で作製した酵母ライブラリーをうつしとったメン
ブレン20枚をハイブリダイゼーション液(6×SSP
E(1.08M塩化ナトリウム、0.06Mリン酸化ナ
トリウム、6mM EDTA、pH7.4)、5×デン
ハルト液(0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フ
ィコール、0.1%牛血清アルブミン)、0.5%SD
S、10μg/ml一本鎖サケ精子DNA)200ml
に浸し、60℃で3時間緩やかに振盪して、プレハイブ
リダイゼーションを行なった。
【0085】次に、(4)−(ii)で作製した[γ−
32P]ATPで標識したプローブ5を、95℃、5分保
温し、氷水で急冷した。これとハイブリダイゼーション
液400mlとまぜた液にブレハイブリダイゼーション
の終わったメンブレン20枚を浸し、30℃で一晩緩や
かに振盪して、メンブレンと標識したプローブ5とをハ
イブリダイズさせた。
【0086】ハイブリダイゼーション液を捨て、2×S
SC(0.3M塩化ナトリウム、0.03Mクエン酸ナ
トリウム)400ml中でメンブレンを30℃で20分
間、緩やかに振盪し、メンブレンより過剰のプローブ5
を除く操作を2回繰り返した。この後、メンブレンをX
線フィルムと接触させ、一晩マイナス80℃で露光し
た。2枚のメンブレンいずれでも感光するプラーク49
個を陽性クローンとして第二スクリーニングに供した。
【0087】第二スクリーニングでは、まずこれらのプ
ラークをもとの寒天培地より、滅菌パスツールでつつい
てそれぞれ1mlのSMに懸濁させた。この溶液の1/
1000希釈液を作り、その100μlをライブラリー
作製の時と同様に、それぞれP2392の菌液100μ
lに感染させ、3mlのBBL軟寒天培地と混ぜ、直径
9cmのBBL寒天培地に広げた。プラーク出現後、
(3)−(iii) に述べたのと同じようにして、メンブレ
ンを1クローンに対し2枚、49組調製した。(4)−
(ii)で作製した[γ−32P]ATPで標識したプローブ
2を用い、第一スクリーニングと同様の操作を繰り返し
た。陽性クローンとして15個のプラークを第三スクリ
ーニングに供した。
【0088】第三スクリーニングでは、再びさらに[γ
32P]ATPで標識したプローブ5を用い、第二スク
リーニングと同様の操作を繰り返した。以上の操作によ
り、最終的に14個の陽性クローンを取得した。
【0089】次に、得られた陽性クローンより、DNA
を抽出した。P2392をTB培地で一晩培養したの
ち、10mM硫酸マグネシウムを含むTB培地で4倍に
濃縮した。この菌液5mlに109 〜1010プラーク/
mlの濃度に調製したそれぞれの陽性クローンを20μ
l混ぜ、37℃で15分保温した。これを10mMの硫
酸マグネシウムを含むTB培地50mlに移し、37℃
で6時間振盪した。これにクロロフォルム2mlを加え
て37℃で30分振盪し、P2392を溶菌させたの
ち、10,000rpmで10分遠心して上清を回収し
た。これにDNaseI(宝酒造)、RNaseI(ベ
ーリンガー・マンハイム)をそれぞれ10μg/mlに
なるように加え、37℃で30分保温した。ポリエチレ
ングリコール液(20%ポリエチレングリコール600
0、2.5M塩化ナトリウム)を30ml加え、4℃で
一晩放置した。10,000回転/10分の遠心をし、
上清を捨て、沈殿を3mlのSMに懸濁させた。EDT
A(pH7.5)、SDSをそれぞれ20mM、0.1
%になるように加え、55℃で4分間保温した。フェノ
ール液(フェノール(25):クロロホルム(24):
イソアミルアルコール(1))を加え、10分間ゆっく
り攪拌し、10,000rpmで10分間遠心し、DN
A層(水層)を回収した。この操作をもう一度繰り返し
た後、水層に0.33mlの3M酢酸ナトリウム、7.
5mlのエタノールを加えて攪拌し、−80℃で30分
静置した。10,000回転/10分間の遠心をした
後、沈殿を70%エタノールでリンスし、エタノールを
除去し、沈殿を乾燥させ、TE500μlに溶かした。
こうして得られたそれぞれのファージDNAを各種制限
酵素で切断し、電気泳動して比較した。14個の陽性ク
ローンにはAATaseを産生し得るDNA鎖の全体を
含むものばかりでなく、一部欠けたものもあると思われ
たが、すべて酵母染色体上の同じ部位をクローニングし
たものであった。このうち、当該DNA鎖の完全長を含
む6.6kbのXbaIフラグメントの制限酵素地図を
図5に示す。塩基配列の決定はこのXbaI断片をpU
C119(宝酒造)にサブクローニングしたものを用
い、ジデオキシ法により行なった。AATaseをコー
ドする部分の塩基配列を図1および2にわたって示す。
【0090】(5)ハイブリダイズするDNA鎖のビー
ル酵母よりの取得 (4)−(iii) で得られた清酒酵母AATase遺伝子
をプローブとすることにより、清酒酵母(協会7号)A
ATase遺伝子とハイブリダイズするDNA鎖をビー
ル酵母よりクローニングした。図5に示した1.6kb
のHindIII(矢印の範囲)フラグメント50ng
をマルチプライムラベリングキット(アマシャムジャパ
ン(株))を用いて100μCiの[α−32P]dCT
P(〜3000Ci/mM)と反応させた。これをプロ
ーブとし、(4)−(i) とまったく同様に作製したビー
ル酵母ライブラリー30,000個を用い、プラークハ
イブリダイゼーションによるクローニングを行なった。
ハイブリダイゼーションの温度は50℃とし、ハイブリ
ダイズさせたのち、メンブレンより過剰のプローブを除
くために、50℃でメンブレンを2×SSC中で30
分、さらに0.2×SSC中(0.03M塩化ナトリウ
ム、3mMクエン酸ナトリウム)で20分間緩やかに振
盪した。第一スクリーニングで60個の陽性クローンを
取得した。これらの陽性プラークを(4)−(iii) と同
様に第二スクリーニングに供し、同じプローブを用いて
最初と同条件でハイブリダイゼーションを繰り返したと
ころ、30個の陽性クローンが得られた。これらの陽性
クローンよりDNAを抽出して、制限酵素解析を行なっ
た。その結果、これらのクローンは2種類のDNAから
なるものであり、双方の制限酵素地図が全く異なること
から、酵母染色体上の別の部位をクローニングしている
ものであると思われた。これらのクローンのAATas
e遺伝子を含む部分の制限酵素地図を図6(a)、
(b)に示す。これらのクローンを以下それぞれビール
酵母AATase1遺伝子およびビール酵母AATas
e2遺伝子と呼ぶ。
【0091】ビール酵母AATase1遺伝子およびビ
ール酵母AATase2遺伝子の塩基配列の決定を、
(4)−(iii) と同様に行なった。AATase1遺伝
子の塩基配列を図3および図4にわたって、またAAT
ase2遺伝子の塩基配列を図12から図13にわたっ
て示してある。なお、AATase2はAからCのDN
A鎖、BからCのDNA鎖いずれであってもAATas
e活性を有するポリペプチドを産生するDNA鎖であっ
た。
【0092】(6)AATase遺伝子を含むベクター
の作製およびこのベクターにより形質転換された酵母の
育種 (i) サッカロマイセス・セレビシエ用発現ベクターの構
築 (4)−(iii) で得られた図5の清酒酵母AATase
遺伝子の6.6kbのXbaI断片(AAT−K7)を
取得した。これを酵母2μmDNAの複製起点とLEU
2遺伝子をマーカーに持つ酵母用ベクターYEp13K
(図12、特開昭62−228282号公報)をNhe
Iで切断したものと連結して、発現ベクターYATK1
1を作製した(図13)。
【0093】同様に(5)で取得した図6(a)のビー
ル酵母AATase1遺伝子の6.6kbのXbaI断
片(AAT−1)を取得し、YEp13KをNheIで
切断したものと連結して、発現ベクターYATL1を作
製した(図14)。また図6(b)のビール酵母AAT
ase2遺伝子の5.6kbのBglII断片(AAT
−2)を取得し、YEp13KをBamHIで切断した
ものと連結して、発現ベクターYATL2を作製した
(図15)。
【0094】(ii)清酒酵母協会9号用発現ベクターの構
築 G418耐性遺伝子を持つプラスミドpUC4k(ファ
ルマシア社)を制限酵素SalIで切断し、得られたG
418耐性遺伝子を含む断片をSalIで切断したYA
TK11と連結して、清酒酵母にAATase遺伝子を
導入するためのベクターYATK11Gを作製した(図
16)。
【0095】(iii) ビール酵母用発現ベクターの構築 (iii-a) G418耐性マーカーの取得 PGK遺伝子を含む2.9kbのHindIII断片
(特開平2−265488号公報)をpUC18(宝酒
造)にクローニングした。この断片より、図18に示し
た手段でPGKプロモーターおよびターミネーターを持
つプラスミドpUCPGK21を作製した。pUCPG
K21にG418耐性遺伝子を、プラスミドpNEO
(ファルマシア社)より図18に示した手段で導入して
pPGKneo2を作製した。
【0096】(iii-b) 発現ベクターの構築 pPGKNEO2をSalIで切断し、PGKプロモー
ター、G418耐性遺伝子およびPGKターミネーター
を含む、約2.8kbの断片をYATL1をXhoIで
切断したものと連結して、YATL1Gを作製した(図
17)。
【0097】(7)AATase遺伝子による形質転換
酵母の取得 (4)−(iii) および(5)でクローニングしたAAT
ase遺伝子がAATaseを産生し得ることを確認す
るため、(6)で作製した各種ベクターを用いて、AA
Tase遺伝子による形質転換酵母の取得を行ない、形
質転換のAATase活性について検討を行った。サッ
カロマイセス・セレビシエTD4(a, his, leu, ura,
trp)へのプラスミドの導入は酢酸リチウム法(J. Bacte
riol., 153, 163 (1983))を用いて行ない、YATK1
1/TD4、YATL1/TD4およびYATL2/T
D4(SKB105株)を取得した。
【0098】清酒酵母協会9号の形質転換体(SKB1
06株)の取得は、次の通りに行った。すなわち、酢酸
リチウム法を用いてプラスミドを導入した後、300μ
g/mlのG418を含むYPD寒天培地に塗布した。
この寒天培地を30℃で3日間保温し、生育してくるコ
ロニーを500μg/mlのG418を含むYPD寒天
培地に再び植菌し、30℃で2日間培養して、形質転換
体を取得した。
【0099】ビール酵母Alfred Jorgensen Laboratory
(デンマーク),2155株(以下、AJL2155株
という)へのYATL1Gの導入は、以下のようにして
行った。酵母を100mlのYPD培地でO.D.60
0=16になるまで30℃で振盪培養した。集菌後、滅
菌水で1回洗浄した。続いて、135mMのトリス塩酸
緩衝液(pH8.0)で1回洗浄し、同じ緩衝液に菌濃
度が2×109 cel1s/mlになるように懸濁し
た。この菌液300μlに10μgのYATL1Gとキ
ャリアーDNAとして20μgのcalf thymu
s DNA(シグマ社)を加えた。これに1200μl
の35%PEG4000(フィルターで無菌ろ過した)
を加え、よく攪拌した。この攪拌した液750μlをジ
ーンパルサー(バイオラッド社)専用のキュベットに移
し、ジーンパルサーを用いて1μF/1000Vの条件
で電気パルス処理を1回行なった。菌液をキュベットよ
り15mlチューブに移し、30℃で1時間静置した。
菌を3000rpm/5分遠心して集菌したのち、1m
lのYPD培地に懸濁させて30℃で4時間振盪した。
集菌後、600μlの滅菌水に懸濁させ、150μlず
つ100μg/mlのG418を含むYPD寒天培地に
塗布した。この寒天培地を30℃で3日間保温して、形
質転換体(SKB108株)を取得した。
【0100】AATase遺伝子を導入した形質転換体
および対照株のAATase活性測定は、次のようにし
て行なった。すなわち、形質転換体の培養は、サッカロ
マイセス・セレビシエTD4の場合にはロイシンを除い
たアミノ酸混合液を添加したSD液体培地(0.65%
イーストナイトロジェンベース(除アミノ酸、ディフコ
社)、2%グルコース)を用いた。清酒酵母協会9号の
場合は、400μg/mlのG418を含むYPD液体
培地を用いた。ビール酵母AJL2155株の場合は1
0μg/mlのG418を含むYPD液体培地を用い
た。1000mlの培地に約16時間30℃で振盪培養
したものを25ml添加し、30℃で12時間から18
時間静置培養した。
【0101】粗酵素液の調製および活性の測定は、それ
ぞれ、(1)−(ii)および(1)−(i) に準じて行なっ
た。また、タン白質の定量は、バイオラッドプロテイン
アッセイキット(バイオラッド社)を用い、マニュアル
にしたがって行なった。
【0102】サッカロマイセス・セレビシエTD4の結
果を第4表に、清酒酵母協会9号の結果を第5表に、ビ
ール酵母AJL2155の結果を第6表に示す。AAT
ase活性は、対照株に比べ2倍から15倍の高さが認
められた。よって、本発明によるAATase遺伝子を
用いることによって、容易に酢酸イソアミル等の酢酸エ
ステルを多量に生成する株を育種することができる。
【0103】 第4表 組換酵母菌体および粗酵素液の酵素活性 粗 酵 素 液 ppm mg タンパク質 YEp13K/TD4 7.8 YATK11/TD4 84.0 YATL1/TD4 116.2 YATL2/TD4(SKB105) 50.6
【0104】 第5表 組換酵母菌体及び粗酵素液の酵素活性 粗 酵 素 液 ppm mg protein K9 3.4 YATK11G/K9(SKB106) 11.6
【0105】 第6表 組換酵母菌体及び粗酵素液の酵素活性 粗 酵 素 液 ppm mg protein AJL2155 4.1 YATL1G/AJL2155(SKB108) 23.4
【0106】(8)清酒酵母AATase遺伝子とハイ
ブリダイズするDNA鎖のワイン酵母からの取得 図8に示した清酒酵母AATase遺伝子中の2箇所と
相同なプライマーAおよびBを合成し、ジーンアンプP
CRリージェントキット(宝酒造)、DNAサーマルサ
イクラー(パーキン−エルマーシータスインストゥルメ
ンツ社)によりプライマーのアニーリングを50℃、2
分として、30サイクルの反応を行なった。反応液をア
ガロース電気泳動し、プライマーAからプライマーBま
で増幅された1.17kbの大きさのDNA鎖をゲルか
ら切り出して精製した。このDNA鎖0.5μgをニッ
クトランスレーションキット(宝酒造)を用いて100
μCi[32P]dCTPにより標識した。清酒酵母DN
Aと同様に作成したワイン酵母W−3(山梨工業技術セ
ンター)のゲノムライブラリー20,000個とハイブ
リダイゼーションを行なった。ハイブリダイゼーション
を65℃で行ない、メンブレンは65℃で2×SSC2
0分、さらに2×SSC10分、最後に0.1×SSC
(15mM塩化ナトリウム、1.5mMクエン酸ナトリ
ウム)で10分緩やかに振盪して洗浄した。最初14個
の陽性プラークが得られ、これらのプラークを同様にハ
イブリダイゼーションさせて、1.17kbのDNA鎖
と強くハイブリダイズする7個の陽性プラークを得た。
この陽性プラークのファージDNAを抽出精製し、制限
酵素解析を行なった。その結果、7個のクローンは全て
1種類のDNAであり、その制限酵素地図は図7に示す
通りであった。
【0107】(9)AATase遺伝子欠損酵母の取得 (i) 遺伝子破壊用ベクターの作製 遺伝子破壊用ベクターは図21に示した方法で作製し
た。すなわち、図6(a)に示したビール酵母AATa
se1遺伝子の6.6kbXbaI断片がpUC19
(宝酒造)のXbaI切断部位に挿入されたプラスミド
pATL16をBamHIで切断し、セルフライゲーシ
ョンを行なうことにより、pATL196Bを作製し
た。一方、YIp5より、URA3遺伝子を含む約1.
1kbのHind III断片を切り出し、pUC19のH
ind III切断部位に挿入し、pUCura3を作製し
た。pUCura3をSmaIで切断して約1.1kb
のURA3断片を取り出した。次にpATL196Bを
ClaIで切断し、exonucleaseIIIにより削った後、mu
ng bean nucleaseおよびklenow処理をおこなって両端を
平滑末端化したものと1.1kbのURA3断片を接続
し、pdel−AAT1を作成した。
【0108】(ii) AATase遺伝子破壊株の作成 (9)-(i) で作製したpdel−AAT1をEcoRIお
よび、NruIで切断したものを用いてサッカロマイセ
ス・セレビシエTD4を酢酸リチウム法を用いて形質転
換して、AATase遺伝子破壊株(SKB109株)
を取得した。形質転換体の選抜はL−ヒスチジン塩酸、
L−トリプトファン、L−ロイシンをそれぞれ40pp
m含むSD寒天培地を用いて行なった。また、pUCu
ra3をSmaIで切断したものを用いて、全く同様に
サッカロマイセス・セレビシエTD4を形質転換し、得
られた形質転換体を対照株とした。
【0109】(iii) 形質転換株のAATase活性の
測定 (9)-(ii)で得たSKB109株(AATase遺伝子破
壊株)および対照株を、L−ヒスチジン塩酸、L−トリ
プトファン、L−ロイシンをそれぞれ40ppm含むS
D液体培地で20℃、48時間振盪培養した。この培養
液1mlをそれぞれYM15培地(イーストナイロジェン
ベース1.25%(Difco)、麦芽エキス1.25
%(Difco)、グルコース15%)100mlを入れ
た500ml三角フラスコに移し、20℃で24時間静置
培養した。それぞれ約1x109 個の細胞の集菌後、蒸
留水で2回洗浄し、さらにAATase反応用緩衝液で
一度洗浄した。これを0.5mlのAATase反応用緩
衝液に懸濁した。これにガラスビーズ(425−600
μm、シグマ社)1.5gを加え、ボルテックスミキサ
ーで細胞を破砕した。懸濁液を回収し、15000g/
20分の遠心をして、上清を回収し、これを粗酵素液と
した。AATase活性の測定は、(1)-(i) に示した方
法で行なった。
【0110】AATase活性測定の結果は、第7表に
示す通りであった。SKB109株(AATase遺伝
子破壊株)では対照株に比較してAATase活性が約
1/5に低下していた。
【0111】 第7表 AATase遺伝子欠損酵母のAATase活性 菌株 AATase活性(ppm /mg protein ) SKB109 1.6 TD4(対照株) 10.3
【0112】(10)AATase遺伝子破壊株を用いたエ
ステルの少ない酒類の製造 (9)-(ii)で得たSKB109株(AATase遺伝子破
壊株)および対照株を、L−ヒスチジン塩酸、L−トリ
プトファン、L−ロイシンをそれぞれ40ppm 含むSD
液体培地で20℃、48時間振盪培養した。この培養液
1mlをそれぞれYM15培地100mlを入れた500ml
三角フラスコに移し、20℃で7日間静置培養した。上
清の分析結果は、第11表に示す通りであった。対照株
に比して、酢酸イソアミルが約1/5、酢酸エチルが約
3/5に抑制されており、SKB109株を用いるとエ
ステル量の少ない酒類が製造できることが確認された。
【0113】 第8表−1 菌 株 エタノール(%) アセトアルデヒド(ppm) 酢酸エチル(ppm) SKB109 7.28 11.51 6.70 TD4-URA3 7.29 9.19 11.13 (対照株) 第8表−2 菌 株 n−ブタノ イソブタノ 酢酸イソア イソアミルアル ノール(ppm ール(ppm) ミル(ppm) コール(ppm) SKB109 19.50 35.80 0.06 54.23 TD4-URA3 24.75 36.58 0.28 56.47 (対照株)
【0114】<微生物の寄託>本発明に関連する下記の
微生物は、通商産業省工業技術院微生物工業研究所に寄
託されて次の受託番号を得ている。 (1) SKB105 微工研条寄第3828号 (2) SKB106 微工研条寄第3829号 (3) SKB108 微工研条寄第3830号 (4) SKB109 微工研条寄第4166号 (5) EKB101 微工研条寄第4165号
【0115】YATL2、YATK11GおよびYAT
L1Gを取得するには、それぞれSKB105、SKB
106およびSKB108を所定の条件で培養し、これ
より酵母の全DNAを抽出し(参考文献Metbods in yea
st genetics 、Cold SpringHarbor Laboratory. 198
6)、この全DNAで大腸菌を形質転換したのち、アル
カリ法(参考文献Molecular Cloning 、Cold Spring Ha
rbor Laboratory. 1989)によりこのプラスミドを抽出
すればよい。pdel−AAT1を取得するには、EK
B101を所定の条件で培養し、これよりアルカリ法に
よりこのプラスミドを抽出すればよい。EKB101
は、大腸菌DH5をpdel−AAT1で形質転換した
ものである。形質転換は、ニッポンジーン社のTran
sfomation Kit DH5を用い、付属のマ
ニュアルに従っておこなった。
【0116】本発明で開示された図1および2にわたっ
て示したDNA鎖のAからBまでの一部を含むDNA鎖
はYATK11Gを適当な制限酵素で切断することによ
って得ることができる。望ましいDNA鎖の一例として
は、図5に矢印で示した1.6kbのHindIII断
片がある。
【0117】
【発明の効果】AATase遺伝子を手にしたことによ
ってエステル香味の低減された酒類が製造できること
は、〔発明の概要〕の項において前記したところであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるAATaseのアミノ酸および塩
基配列図である。図1および下記の図2は連続してい
る。
【図2】本発明によるAATaseのアミノ酸および塩
基配列図である。上記の図1および図2は連続してい
る。
【図3】本発明による他のAATaseのアミノ酸およ
び塩基配列図である。図3および下記の図4は連続して
いる。
【図4】本発明による他のAATaseのアミノ酸およ
び塩基配列図である。上記の図3および図4は連続して
いる。
【図5】本発明によるAATase遺伝子(清酒酵母由
来のもの)の制限酵素地図である。
【図6】本発明によるAATase遺伝子(ビール酵母
由来のもの)2種の制限酵素地図である。
【図7】本発明によるAATase遺伝子(ワイン酵母
由来のもの)の制限酵素地図である。
【図8】ワイン酵母よりAATase遺伝子を取得する
際に用いたプローブの作製法を示す説明図である。
【図9】本発明による精製法のうち、アフィニティーク
ロマトグラフィーによるAATase活性画分の溶出パ
ターンを示す説明図である。
【図10】本発明によるアフィニティークロマトグラフ
ィー溶出後のAATase活性画分のSDSポリアクリ
ルアミド電気泳動図である。
【図11】本発明によるAATaseの各種アルコール
に対する基質特異性を示す説明図である。
【図12】酵母用ベクターYEp13Kの制限酵素地図
である。
【図13】本発明によるAATase遺伝子(清酒酵母
由来のもの)発現ベクターYATK11の制限酵素地図
である。
【図14】本発明によるAATase1遺伝子(ビール
酵母由来のもの)発現ベクターYATL1の制限酵素地
図である。
【図15】本発明によるAATase2遺伝子(ビール
酵母由来のもの)発現ベクターYATL2の制限酵素地
図である。
【図16】本発明によるAATase遺伝子(清酒酵母
由来のもの)の清酒酵母用発現ベクターYATK11G
の制限酵素地図である。
【図17】本発明によるAATase1遺伝子(ビール
酵母由来のもの)のビール酵母用発現ベクターYATL
1Gの制限酵素地図である。
【図18】ビール酵母用発現ベクターの構築の過程の一
部を示した図である。
【図19】本発明によるビール酵母AATase2遺伝
子のアミノ酸および塩基配列図である。図19および下
記の図20は連続している。
【図20】本発明によるビール酵母AATase2遺伝
子のアミノ酸および塩基配列図である。図19および図
20は連続している。
【図21】AATase遺伝子破壊用ベクターの構築の
過程を示した図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年4月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】すなわち、本発明による形質転換されてア
ルコールアセチルトランスフェラーゼ産生能の消失ない
し減少した酵母は、下記の(1a)〜(1d)のいずれ
かのDNA配列を利用してホスト酵母に固有のアルコー
ルアセチルトランスフェラーゼ産生遺伝子の発現を抑制
したものであること、を特徴とするものである。 (1a) 実質的に添付図1および2にわたって示した
DNA配列のAからBまでのDNA配列。 (1b) 実質的に添付図3および4にわたって示した
DNA配列のAからBまでのDNA配列。 (1c) 実質的に添付図19および20にわたって示
したDNA配列のAからCまでまたはBからCまでのD
NA配列。 (1d) 上記(1a)〜(1c)のいずれかのDNA
配列またはその相補体にハイブリダイズするDNA鎖。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正内容】
【0029】<AATaseを産生するDNA配列ない
しDNA鎖/遺伝子>本発明において、AATaseを
産生する能力を有するDNA配列ないしDNA鎖とはA
ATase活性を有するポリペプチドをコードするDN
A配列ないしDNA鎖のことであり、それがコードする
ポリペプチドすなわちAATaseのアミノ酸配列で示
せば下記の(2a)〜(2d)からなる群から選ばれた
ものであり、その具体例を示せば、それは下記の(3
a)〜(3d)からなる群から選ばれたものである。 (2a) 実質的に添付図1および2にわたって示した
アミノ酸配列のAからBまでのアミノ酸配列を有するポ
リペプチドをコードするDNA配列からなることを特徴
とする、アルコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝
子。 (2b) 実質的に添付図3および4にわたって示した
アミノ酸配列のAからBまでのアミノ酸配列を有するポ
リペプチドをコードするDNA配列からなることを特徴
とする、アルコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝
子。 (2c) 実質的に添付図19および20にわたって示
したアミノ酸配列のAからCまでまたはBからCまでの
アミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA
配列からなることを特徴とする、アルコールアセチルト
ランスフェラーゼ遺伝子。 (2d) 上記(2a)〜(2c)のポリペプチドのい
ずれかのアミノ酸の付加、挿入、削除、欠失または置換
による変異体のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコ
ードするDNA配列であることを特徴とする、アルコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子。 (3a) 実質的に添付図1および2にわたって示した
塩基配列のAからBまでの塩基配列からなる、アルコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子。 (3b) 実質的に添付図3および4にわたって示した
塩基配列のAからBまでの塩基配列からなる、アルコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子。 (3c) 実質的に添付図19および20にわたって示
した塩基配列のAからCまでまたはBからCまでの塩基
配列からなる、アルコールアセチルトランスフェラーゼ
遺伝子。 (3d) 上記(3a)〜(3c)のいずれかのDNA
配列またはその相補体にハイブリダイズし、かつアルコ
ールアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプ
チドを産生しうるDNA鎖。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正内容】
【0091】ビール酵母AATase1遺伝子およびビ
ール酵母AATase2遺伝子の塩基配列の決定を、
(4)−(iii)と同様に行なった。AATase1
遺伝子の塩基配列を図3および図4にわたって、またA
ATase2遺伝子の塩基配列を図19から図20にわ
たって示してある。なお、AATase2はAからCの
DNA鎖、BからCのDNA鎖いずれであってもAAT
aSe活性を有するポリペプチドを産生するDNA鎖で
あった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12N 1/19 C12R 1:865) (C12N 9/10 C12R 1:865) (C12N 15/54 C12R 1:865)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の(1a)〜(1d)のいずれかのD
    NA配列を利用してホスト酵母に固有のアルコールアセ
    チルトランスフェラーゼ産生遺伝子の発現を抑制したも
    のであることを特徴とする、形質転換されてアルコール
    アセチルトランスフェラーゼ産生能の消失ないし減少し
    た酵母。 (1a) 実質的に添付図1および2にわたって示した
    DNA配列のAからBまでのDNA配列。 (1b) 実質的に添付図3および4にわたって示した
    DNA配列のAからBまでのDNA配列。 (1c) 実質的に添付図12および13にわたって示
    したDNA配列のAからCまでまたはBからCまでのD
    NA配列。 (1d) 上記(1a)〜(1c)のいずれかのDNA
    配列またはその相補体にハイブリダイズするDNA鎖。
  2. 【請求項2】糖を酵母で発酵させて酒類を製造する方法
    において、使用する酵母が請求項1に記載のアルコール
    アセチルトランスフェラーゼ産生能の消失ないし減少し
    た酵母であることを特徴とする、エステル香味の減少し
    た酒類の製造法。
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