JPH06245415A - 電動機用ステータ及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 電動機用ステータの成形装置を簡素化するこ
とができるとともに、固定子外周への樹脂モールド部の
形成を不要にして固定子の外周面から外部への放熱性を
向上する。 【構成】 固定子片１を積層してなる固定子２のスロッ
ト部２ａに内型３を挿入して、該固定子片１間にワニス
を含浸する。次に、前記各スロット部２ａから内型３を
取り外して固定子２にコイルを巻装する。さらに、前記
固定子２に巻装したコイルのエンドにハウジングを配置
し、かつ固定子２の空洞部２ｃ内に成形型を挿入した
後、ハウジング内に樹脂を注入してコイルのエンド部分
のみに樹脂モールド部を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は電動機用ステータ及び
その製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、電動機用ステータの固定子は、
厚さ１ｍｍ以下の薄い鋼板よりなる固定子片を多数枚積
層した構造となっている。そこで、従来はその外周を何
らかの方法で覆うことにより、固定子片間の隙間からの
水分の侵入を阻止して電動機の密閉性及び絶縁性を確保
するようにしている。又、固定子に巻装したコイルのエ
ンドをワニスで被覆し、それらの外周に樹脂モールド部
を一体成形している。（特開昭５９−２２００５０号公
報参照）一方、成形下型のキャビティ内に固定子を収容
するとともに、成形下型の上部を成形上型で覆い、成形
上型に設けた注入口から樹脂を圧入して、固定子の外周
に樹脂モールド部を形成する電動機用ステータの製造方
法も提案されている。（特開平４−２２９号公報参照）

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、前者の電動
機用ステータは、固定子の外周面全体が樹脂材で覆われ
ているので、電動機として使用した場合に固定子の外周
面が外部に露出している場合に比較して放熱性が低いと
いう第１の問題があった。

【０００４】又、前者の電動機用ステータは、固定子及
びコイルエンドの外周を樹脂で一体モールド成形する成
形型が必要となるので、成形装置が複雑かつ大型化する
という第２の問題があった。

【０００５】一方、後者の電動機用ステータの製造方法
も、固定子の外周に樹脂モールド部が形成されるため、
固定子の外周が外部に露出している場合に比較して放熱
性が低いという前述した第１の問題を有している。

【０００６】又、後者の電動機用ステータの製造方法
は、樹脂の射出成形時に上型と下型を必要とするため、
成形装置が複雑かつ大型化するという前述した第２の問
題と同様の問題があった。

【０００７】この発明の第１の目的は上記第１の問題を
解消して、固定子外周への樹脂モールド部の形成を不要
にして固定子を電動機に使用した場合に該固定子の外周
面から外部への放熱性を向上することができる電動機用
ステータ及びその製造方法を提供することにある。

【０００８】又、この発明の第２の目的は上記第１の目
的に加えて固定子へのコイルの巻装作業を容易に行うこ
とができる電動機用ステータの製造方法を提供すること
にある。

【０００９】さらに、この発明の第３の目的は上記第２
の問題を解消して、成形装置を簡素化することができる
とともに、コイルエンドを包蔵するハウジングの構造を
簡素化することができ、ハウジング内部に注入硬化され
る樹脂モールド部の内周成形面の芯出しを高精度に行う
ことができる電動機用ステータの製造方法を提供するこ
とにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の発明は上
記第１の目的を達成するため、複数の固定子片間にワニ
スを介在させてそれらの固定子片を積層固定した筒状の
固定子と、該固定子の内周の複数のスロット部間に形成
された複数のコイル巻付部に巻装したコイルと、前記各
スロット部の両端開口から露出したコイルエンドをそれ
ぞれ包蔵する樹脂モールド部とにより構成されている。

【００１１】又、請求項２記載の発明は上記第１の目的
を達成するため、複数の磁性材よりなる固定子片を積層
して筒状の固定子を形成し、その固定子片間にワニスを
含浸する工程と、前記固定子の内周の複数のスロット部
間に形成された複数のコイル巻付部にコイルを巻装する
工程と、前記各スロット部の両端開口からそれぞれ露出
したコイルエンドを包蔵するように樹脂モールド部を形
成する工程とを有している。

【００１２】又、請求項３記載の発明は上記第２の目的
を達成するため、複数の磁性材よりなる固定子片を積層
して筒状の固定子を形成し、その固定子に形成された複
数のスロット部にスロット部と相似形の内型をそれぞれ
挿入する工程と、複数のスロット部に内型をそれぞれ挿
入した状態で、固定子片間にワニスを含浸する工程と、
ワニスの含浸硬化後に前記スロット部から内型を抜き取
る工程と、前記固定子のスロット部間に形成された複数
のコイル巻付部にコイルを巻装する工程と、前記各スロ
ット部の両端開口からそれぞれ露出したコイルエンドを
包蔵するように樹脂モールド部を形成する工程とを有し
ている。

【００１３】さらに、請求項４記載の発明は上記第３の
目的を達成するため、請求項２又は３において、前記各
スロット部の両端開口からそれぞれ露出したコイルエン
ドを包蔵するようにハウジングをそれぞれ固定子に接合
固定するとともに、固定子の中心部に形成された空洞部
に成形型を貫通して両ハウジング内に樹脂を注入して樹
脂モールド部を形成する工程と、前記樹脂モールド部の
硬化後前記成形型を前記固定子の空洞部から抜き取る工
程とを有している。

【００１４】

【作用】請求項１，２記載の発明によれば、固定子の外
周に樹脂モールド部が存在しない。このため固定子を電
動機に使用した場合に固定子の外周面から外部への放熱
性が向上する。又、固定子を構成する固定子片間の隙間
のみにワニスが含浸され、固定子片間の水密性が確保さ
れる。

【００１５】又、請求項３記載の発明は請求項１記載の
発明の作用に加えて、固定子に形成された複数のスロッ
ト部に内型をそれぞれ挿入した状態で固定子片間にワニ
スを含浸するため、スロット部内周面にワニス層が形成
されないか、あるいはワニス層を薄く形成できる。この
ため各スロット部の内部空間が大きくなり次工程での固
定子のスロット部間に形成されたコイル巻付部へのコイ
ルの巻装作業が容易となる。

【００１６】又、請求項４記載の発明は請求項２又は３
記載の発明の作用に加えて、各スロット部の両端開口か
らそれぞれ露出したコイルエンドを包蔵するようにハウ
ジングを固定子の両端部にそれぞれ接合固定する。そし
て、固定子の空洞部を貫通する成形型によりコイルエン
ドを包蔵する両ハウジングの内周成形面を形成し、両ハ
ウジング内に樹脂を注入して樹脂モールド部を形成す
る。このため、両ハウジングの構造を簡素化することが
できるとともに、ハウジング内部に注入硬化される樹脂
モールド部の内周成形面の芯出しを高精度に行うことが
できる。しかも、固定子の外周面に樹脂モールド部を形
成するための成形型が不要となる。

【００１７】

【実施例】以下、この発明の電動機用ステータ及びその
製造方法を具体化した一実施例を図面に基づいて説明す
る。

【００１８】図１、図２、図７及び図１１によりこの実
施例の電動機用ステータ１７の構成について説明する。
鋼板よりなる複数の固定子片１〜１をカシメあるいは溶
接により接着して積層することにより筒状の固定子２が
形成されている。又、固定子片１〜１間の隙間にはワニ
ス８が含浸されている。前記固定子２の内周には複数の
スロット部２ａ（図１参照）が形成され、それらの間に
形成された複数のコイル巻付部２ｂにはコイル１１が巻
装されている。さらに、前記固定子２の両端部には前記
各スロット部２ａの両端開口から露出したコイル１１の
エンドをそれぞれ包蔵する一対のハウジング１２，１３
が接合されている。両ハウジング１２，１３は、連結手
段としてのボルト１４（図７参照）により固定子２の端
面に固定されている。両ハウジング１２，１３の内部に
は樹脂モールド部１６が形成されている。

【００１９】又、電動機用ステータ１７の内部には回転
軸１８が支持され、該回転軸１８には前記固定子２の内
周面と小隙間をもって対向するマグネット１９が嵌合固
定され、電動機が構成されている。

【００２０】そこで、上記電動機用ステータ１７の製造
方法を各部の構成とともに以下に順次説明する。図１，
２に示すように、所定形状にプレス成形された例えば厚
さが１ｍｍ以下の薄いドーナッツ板状の鋼板よりなる固
定子片１〜１を多数枚積層して固定子２を形成する。前
記固定子２の外周には四箇所に突条部２ｄが一体に形成
され、各突条部２ｄにはそれぞれボルト挿通孔２ｅが形
成されている。

【００２１】次に、図３に示すように前記固定子２の複
数のスロット部２ａ〜２ａ内に内型３〜３を挿入すると
ともに、図４に示すように固定子２を左右両側面から加
圧装置４を構成する治具５，６により挟着加圧する。こ
の状態では図示しない固定手段により内型３が治具５に
固定される。そして、該固定子２を加圧装置４とともに
ワニス８を貯留した貯留槽９内に浸積し、固定子片１〜
１間にワニス８を含浸する。

【００２２】その後、貯留層６から固定子２を加圧装置
４とともに引き上げた後、ワニス８が硬化したら、加圧
装置４の型引き抜き治具５，６を互いに離隔する方向に
移動する。この動作により各内型３は型引き抜き治具５
によりスロット部２ａ内から引き抜かれる。この工程で
は図５に示すように固定子片１〜１間がワニス８により
シールされた一体状の固定子２が製造される。

【００２３】次に、図６に示すように固定子２に対し各
スロット部２ａ〜２ａ及びコイル巻付部２ｂを利用して
コイル１１を巻装する。さらに、図７に示すように、固
定子２の左右両側面に対し前記コイル１１の各スロット
部２ａ〜２ａから露出したエンドを覆うように合成樹脂
製のハウジング１２，１３を接合する。一方のハウジン
グ１２の外周部には前記固定子２の突条部２ｄ及びボル
ト挿通孔２ｅと対応して突条部１２ａ及びネジ孔１２ｂ
が形成されている。他方のハウジング１３の外周部には
前記固定子２の突条部２ｄ及びボルト挿通孔２ｅと対応
して突条部１３ａ及びボルト挿通孔１３ｂが形成されて
いる。そして、図７に示すように前記挿通孔１３ｂ及び
２ｅに締め付けボルト１４を挿通して、各ボルト１４の
先端部を前記ネジ孔１２ｂに螺合することにより両ハウ
ジング１２，１３を固定子２の両端面に締め付け固定す
る。

【００２４】又、固定子２の空洞部２ｃの内周面及び両
ハウジング１２，１３の内側に円柱状の成形型１５を挿
入する。この状態では成形型１５の外周面１５ａにより
両ハウジング１２，１３の内周成形面が形成される。こ
の状態で図９に示すように両ハウジング１２，１３の外
周に形成した注入口１２ｃ，１３ｃからエポキシ樹脂等
の合成樹脂１６をハウジング１２，１３内にそれぞれ注
入し、固定子２から露出したコイル１１のエンドに樹脂
モールド部１６を形成する。

【００２５】前記樹脂モールド部１６の硬化後に、図１
０に示すように前記成形型１５を固定子２内部から取り
出して電動機用ステータ１７の製造を終了する。さて、
前記のように構成された電動機用ステータ１７は、固定
子２の外周面に対し樹脂モールド部１６が存在しないの
で、ステータ１７を電動機に使用した場合に固定子２に
発生する熱を外部に効率よく発散して、放熱性を向上す
ることができる。

【００２６】又、前述したステータ１７の製造方法によ
れば、固定子２を構成する固定子１片間の隙間にワニス
８が含浸され、固定子片１間の水密性が確保される。
又、前述したステータ１７の製造方法によれば、固定子
２の両端部にコイル１１のエンドを覆うようにハウジン
グ１２，１３を接合固定して、両ハウジングの内部に樹
脂１６を注入する。このため、固定子２の外周面を樹脂
モールドする成形型が不要となり成形装置を簡素化でき
る。

【００２７】さらに、前記実施例ではスロット部２ａ〜
２ａに内型３〜３を挿入したので、スロット部２ａ〜２
ａの内周面のワニス８の層が形成されないか、あるいは
形成されても同層を薄くできる。このため各スロット部
の内部空間が大きくなり、次行程でのコイル巻付部２ｂ
へのコイル１１の巻装作業が容易となる。そればかりで
なく、コイル１１の巻付量を増大させることが可能にな
り、全体を大型化することなくハイパワーを得ることが
できる。

【００２８】加えて、前述したステータの製造方法によ
れば、固定子２の空洞部２ｃを貫通する成形型１５によ
りコイル１１のエンドを包蔵する両ハウジング１２，１
３の内周成形面を形成した。このため、両ハウジング１
２，１３の構造を簡素化することができる。又、ハウジ
ング１２，１３内部に注入硬化される樹脂モールド部１
６の内周成形面の芯出しを高精度に行うことができる。

【００２９】なお、この発明は前記実施例に限定される
ものではなく、次のように具体化することもできる。 （１）前記実施例では成形型１５を使用したが、これを
省略するとともに両ハウジング１２，１３に対し内周成
形面を形成する壁部を形成すること。

【００３０】（２）前記各内型３〜３を型抜き治具５に
固定した状態で、スロット部２ａ内に内型３〜３を挿入
すること。この場合には内型３の先端部にテーパ部を形
成して挿入が容易に行えるようにするのが望ましい。

【００３１】

【発明の効果】以上詳述したように、請求項１，２記載
の発明は、固定子外周への樹脂モールド部の形成を不要
にして固定子を電動機に使用した場合に該固定子の外周
面から外部への放熱性を向上することができる。

【００３２】請求項３記載の発明は、請求項２記載の発
明の効果に加えて、固定子に形成された複数のスロット
部に内型をそれぞれ挿入した状態で固定子片間にワニス
を含浸するため、スロット部内周面にワニス層が形成さ
れないか、あるいはワニス層を薄く形成できる。このた
め各スロット部の内部空間が大きくなり次工程での固定
子のスロット部間に形成されたコイル巻付部へのコイル
の巻装作業を容易に行うことができる。

【００３３】又、請求項４記載の発明は、各スロット部
の両端開口からそれぞれ露出したコイルエンドを包蔵す
るようにハウジングを固定子の両端部にそれぞれ接合固
定する。そして、固定子の空洞部を貫通する成形型によ
りコイルエンドを包蔵する両ハウジングの内周成形面を
形成し、両ハウジング内に樹脂を注入して樹脂モールド
部を形成する。このため、両ハウジングの構造を簡素化
することができるとともに、ハウジング内部に注入硬化
される樹脂モールド部の内周成形面の芯出しを高精度に
行うことができる。しかも、固定子の外周面に樹脂モー
ルド部を形成するための成形型が不要となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の電動機用ステータの製造方法に使用
される固定子及び内型の斜視図である。

【図２】固定子の側面図である。

【図３】内型を挿入した固定子の中央部縦断面図であ
る。

【図４】固定子にワニスを含浸する工程を示す断面図で
ある。

【図５】ワニスを含浸した固定子の中央部縦断面図であ
る。

【図６】固定子にコイルを巻装した状態を示す中央部縦
断面図である。

【図７】コイルの外周に樹脂層を形成する工程を説明す
る中央部縦断面図である。

【図８】図７のＡ−Ａ線断面図である。

【図９】コイルの外周に樹脂層を形成する工程を説明す
る中央部縦断面図である。

【図１０】製造完了した電動機用ステータの中央部縦断
面図である。

【図１１】電動機の中央部縦断面図である。

【符号の説明】

１…固定子片、２…固定子、２ａ…スロット部、２ｂ…
コイル巻付部、３…内型、４…加圧装置、８…ワニス、
９…貯留槽、１１…コイル、１２，１３…ハウジング、
１２ｃ，１３ｃ…注入口、１５…成形型、１６…樹脂モ
ールド部、１７…電動機用ステータ。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の固定子片間にワニスを介在させて
   それらの固定子片を積層固定した筒状の固定子と、 該固定子の内周の複数のスロット部間に形成された複数
   のコイル巻付部に巻装したコイルと、 前記各スロット部の両端開口から露出したコイルエンド
   をそれぞれ包蔵する樹脂モールド部とを備えた電動機用
   ステータ。
2. 【請求項２】 複数の磁性材よりなる固定子片を積層し
   て筒状の固定子を形成し、その固定子片間にワニスを含
   浸する工程と、 前記固定子の内周の複数のスロット部間に形成された複
   数のコイル巻付部にコイルを巻装する工程と、 前記各スロット部の両端開口からそれぞれ露出したコイ
   ルエンドを包蔵するように樹脂モールド部を形成する工
   程とからなる電動機用ステータの製造方法。
3. 【請求項３】 複数の磁性材よりなる固定子片を積層し
   て筒状の固定子を形成し、その固定子に形成された複数
   のスロット部にスロット部と相似形の内型をそれぞれ挿
   入する工程と、 複数のスロット部に内型をそれぞれ挿入した状態で、固
   定子片間にワニスを含浸する工程と、 ワニスの含浸硬化後に前記スロット部から内型を抜き取
   る工程と、 前記固定子のスロット部間に形成された複数のコイル巻
   付部にコイルを巻装する工程と、 前記各スロット部の両端開口からそれぞれ露出したコイ
   ルエンドを包蔵するように樹脂モールド部を形成する工
   程とからなる電動機用ステータの製造方法。
4. 【請求項４】 請求項２又は３において、前記各スロッ
   ト部の両端開口からそれぞれ露出したコイルエンドを包
   蔵するようにハウジングをそれぞれ固定子に接合固定す
   るとともに、固定子の中心部に形成された空洞部に成形
   型を貫通して両ハウジング内に樹脂を注入して樹脂モー
   ルド部を形成する工程と、 前記樹脂モールド部の硬化後前記成形型を前記固定子の
   空洞部から抜き取る工程とを有する電動機用ステータの
   製造方法。