JPH0623596Y2 - 伸縮性ロ−プ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は伸縮性ロープに関し、特に伸び率が大きく耐久
性のある伸縮性ロープに関する。

〔従来の技術〕

産業資材としてのロープは目的に応じて種々の特性のも
のが使用されている。例えば帆立貝などの貝類の養殖施
設に於ては、浮子や筏から水中に垂下したロープ先端に
取付けた籠内に貝類を収容して育成するが、水面の波浪
による浮子等の上下移動に伴い籠が水中で上下移動する
と、貝類の生育に悪い影響を及ぼす。そこで浮子を結ぶ
ロープに伸縮自在なロープ、即ち伸縮性ロープを用い、
浮子等の上下移動を該ロープ部で吸収して籠に伝わるこ
とを防止する手段が講じられている。

特開昭４９−６６４８７号公報記載の貝類および藻類の
養殖法には、ロープの一部をゴム製のスプリングやゴム
の丸ひもの束としたものが記載されている。また、特開
昭６０−２３５４２５号公報には、同様な目的の伸縮性
ロープとして、伸縮自在のパイプの中に、その長さの二
倍の長さの非常に強いアラミド繊維ロープが上下に固定
して入ったものを使用することが記載されている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら前者のゴムの丸ひもの束のような伸縮性ロ
ープの場合、伸び率は良いが過大な荷重、例えば急激な
波浪が加わったときなどに、その許容伸度以上に伸ばさ
れて切断するおそれがあり、またゴム材が外部環境にさ
らされているので耐久性に劣るという欠点がある。

また、切断対策として同公報においては、伸縮性ロープ
より所定長だけ長い通常のロープを該伸縮性ロープに並
列に余裕綱として設けて、許容伸度以上の伸びと劣化に
よる切断事故を防止しているが、複雑な構成となり設置
に手間がかかる上、波などによるからみ付き等のおそれ
も増大するという新たな問題が生じている。

また、後者のゴムパイプ内にアラミド繊維ロープを収容
する方法は、前者のような設置の手間及び波によるから
み付き等は低減されているが、伸縮性ロープ自体の構造
が複雑である上に長さが固定されており、目的に合せそ
の都度製造しなければならないので生産性に問題があ
る。

〔問題を解決するための手段〕

本考案はかかる従来の伸縮性ロープの種々の問題点を解
決し、伸び率が大きく耐久性があり、大量生産に適した
伸縮性ロープを提供することを目的とするものである。

このような本考案の伸縮性ロープは、直線状のポリウレ
タン系弾性マルチフィラメント糸の周囲に非弾性被覆材
を一方方向に螺旋状に巻回して、それにより前記フィラ
メント糸が完全弾性限度を越えてその長手方向に伸長し
ないように拘束した伸縮性線条の単綱とする。そして、
この単綱を多数組合せ又は編み合せてロープを形成させ
たことを特徴とする。

〔実施例及び作用〕

次に図面に基づいて本考案の実施例を説明する。第１図
は本考案の伸縮性ロープに用いられる伸縮性線条の概略
構造を拡大して示す分解斜視図である。第１図に於て、
直線状の弾性マルチフィラメント糸１は、多数の弾性モ
ノフィラメント１ａを集束したものから構成されてお
り、その断面は例えば第２図のように、各モノフィラメ
ント１ａ外周の一部同志が一体になっている。この弾性
マルチフィラメント糸１を１本以上、好ましくは複数本
束にして、その周囲に非弾性被覆材２を螺旋状に常にそ
の巻回方向が一定回転方向となるようにカバーリングし
て伸縮性線条３を形成する。非弾性被覆材２は好ましく
は繊維状もしくはスプリット状のものが使用され、弾性
マルチフィラメント糸１の周囲をカバーリングしてそれ
を外力及び強い日射光さらには摩擦による損耗から保護
し、伸縮性ロープとしての耐久性を向上させる機能を有
すると共に、弾性マルチフィラメント糸１が許容伸度以
上に伸びることを防止する作用を有している。そのため
カバーリングピッチは、弾性マルチフィラメント糸１の
許容伸度に適合して設定する必要があるが、これは通常
簡単な計算によりもしくは実験によって容易に決めるこ
とができる。

弾性マルチフィラメント糸１の材質は、ゴム弾性を示す
マルチフィラメント糸なら特に制限はなく、例えばいわ
ゆるスパンデックス糸として知られているポリウレタン
系弾性マルチフィラメント糸等が使用できる。海水中で
使用する場合等に於ては、特にポリウレタン系弾性マル
チフィラメント糸が耐久性などから好ましい。このよう
なポリウレタン系弾性マルチフィラメント糸は、通常85
％以上のポリウレタン成分とポリエーテルもしくはポリ
エステル成分とのコポリマーを紡糸して作られ、450〜5
60％程度の伸度を有している。

弾性マルチフィラメント糸を構成する弾性モノフィラメ
ントの繊度は通常10デニール〜200デニール程度のもの
が使用され、それを数十〜数百本集束して弾性マルチフ
ィラメント糸とする。このように細い多数の弾性モノフ
ィラメントを集束したマルチフィラメント糸は、同一直
径の太い単糸を使用した場合に比較し、伸び率を大きく
することができる上に優れたドレープ性（しなやかさ）
を示し、ロープに形成したときしなやかさを発揮する効
果がある。

弾性マルチフィラメント糸の周囲をカバーリングする非
弾性被覆材としては、通常の天然または合成の繊維もし
くはスプリットが使用でき、例えば木綿、麻やナイロ
ン、ビニロン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン等を挙げることができる。水産用ロープとして使用す
る場合には、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリ
プロピレンなどが耐久性の点で好ましい。被覆材は好ま
しくは撚糸もしくはテープをスプリットしたスプリット
ヤーン等の形態にして使用するとよい。

第３図は第１図の伸縮性線条３を単綱としてそれにより
をかけることなく、その単綱を多数用いて編み上げた伸
縮性ロープ４の斜視図である。この編み方は通常ロープ
を編む方式をそのまま採用することができる。また、い
わゆる丸打組物といわれているような、単綱が左と右の
螺旋状に走って円筒状に仕上げられたものは、伸び率が
より高いので好ましい。単綱は１本づつ、もしくは数本
単位で編み上げることができる。

第４図（ａ）及び（ｂ）はこのような伸縮性ロープ４の
伸長前及び伸長後の状態を示す側面図であり、各単綱相
互の形態が伸長によって変化する様子をよく理解できる
であろう。

第５図は本考案の伸縮性ロープを貝類の養殖施設に使用
した応用例を示す図である。幹綱５から多数本の支綱６
が分岐され、その各々の先端に貝類が収容される籠７が
取付けられ、更に幹綱５の複数個所から表面浮子綱８及
び中間浮子綱９が分岐され、その各々の先端に表面浮子
10及び中間浮子11が取付けられている。また幹綱５の両
端部に（必要に応じ更に中間部にも）アンカー綱12が結
ばれ、その先端にアンカーブロック13が結合されてい
る。

本考案の伸縮性ロープは特に表面浮子綱８の全長もしく
はその一部分に使用される。それによって波浪による表
面浮子10の上下移動が籠７に伝わるのを有効に防止する
ことができる。

本考案の伸縮性ロープは、綱としての使用の他に種々の
用途に使用できる。例えば、定置網などの漁労用綱、工
事現場などに使用する落下防止のための安全ネット、等
の素材として用いることにより、その伸縮性を魚体損傷
防止もしくは人体へのクッション性に有効に利用でき
る。

〔考案の効果〕

本考案の伸縮性ロープは、直線状のポリウレタン系弾性
マルチフィラメント糸の周囲に非弾性被覆材を一方方向
に螺旋状に巻回して、それにより前記フィラメント糸が
完全弾性制限を越えてその長手方向に伸長しないように
拘束した伸縮性線状の単綱を構成する。そして、この単
綱を多数組合せ又は編み合せて製作したものである。そ
のため、伸び率が著しく大きくなると共に、所定以上に
伸長することを防止し、耐久性の高いものとなる。特に
貝類等の養殖施設のように、海水等において良好に使用
し得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の伸縮性ロープに用いられる伸縮性線条
の概略構造を拡大して示す部分斜視図、第２図は第１図
に於ける弾性モノフィラメント１ａの集束状態を拡大し
て示した断面図、第３図は本考案の伸縮性ロープの斜視
図、第４図（ａ）及び（ｂ）は本考案の伸縮性ロープの
伸長前及び後の状態を示す側面図、第５図は本考案の伸
縮性ロープを貝類の養殖施設に使用した応用例を示す
図。 １…弾性マルチフィラメント糸 １ａ…弾性モノフィラメント ２…非弾性被覆材、３…伸縮性線条 ４…伸縮性ロープ、５…幹綱 ６…支綱、７…籠 ８…表面浮子綱、９…中間浮子綱 10…表面浮子、11…中間浮子 12…アンカー綱、13…アンカーブロック

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】直線状のポリウレタン系弾性マルチフィラ
   メント糸１の周囲に非弾性被覆材２を一方方向に螺旋状
   に巻回して、それにより前記フィラメント糸１が完全弾
   性限度を越えてその長手方向に伸長しないように拘束し
   た伸縮性線条３の単綱とし、この単綱を多数組合せ又は
   編み合せてなる伸縮性ロープ。