JPH06225784A - 蛋白質の高分泌生産方法 - Google Patents

蛋白質の高分泌生産方法

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JPH06225784A
JPH06225784A JP5017132A JP1713293A JPH06225784A JP H06225784 A JPH06225784 A JP H06225784A JP 5017132 A JP5017132 A JP 5017132A JP 1713293 A JP1713293 A JP 1713293A JP H06225784 A JPH06225784 A JP H06225784A
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JP
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medium
yeast
strain
thiamine
solution
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JP5017132A
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Inventor
Nobuki Serizawa
伸記 芹澤
Kimihisa Ichikawa
公久 市川
Yoichiro Shiba
陽一郎 柴
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Sankyo Co Ltd
Original Assignee
Sankyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】炭素源としてグルコース、シュクロース又はマ
ンノース、窒素源として硫酸アンモニウム、塩化アンモ
ニウム、トリプトファン等ビタミンとしてビオチン、無
機栄養塩類として、ほう酸、硫酸銅、ヨウ化カリウム等
を含む培地中で酵母を培養する場合において、培地中に
チアミンを含有せしめることにより酵母由来又は外来性
蛋白質を菌体外培養液に分泌させ、培養液から該蛋白質
を採取することを特徴とする蛋白質の製造法を提供す
る。 【効果】酵母由来又は外来性の蛋白質の分泌生産に最低
限必須な培地成分が明らかとなり、より安価な培地を使
用して、酵母により蛋白質を大量に生産できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チアミン添加培地で酵
母を培養することにより酵母由来又は外来性蛋白質を菌
体外培養液に高い効率で分泌生産させ、菌体外培養液か
ら該蛋白質を採取する、蛋白質の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、遺伝子組換え技術の発展に伴い、
酵母を宿主に用いて、ヒト等の他の生物由来の蛋白質を
大量に生産することが工業規模で行われている。酵母を
宿主に用いた場合には大腸菌を宿主に用いた場合に比べ
て、遺伝子産物を菌体外に分泌させることが可能であ
り、また、発熱物質等の混入を避けやすく、さらに、高
等生物由来の遺伝子産物が正しい立体構造をとりやすい
等の利点があるため、その利用度は高まっている。
【0003】また、酵母由来の蛋白質を菌体外に分泌さ
せ、培養物から該蛋白質を採取することも工業規模で行
われている。
【0004】従来、かかる分泌生産においては、YP
D、SD培地等の栄養培地が用いられていたため、培地
中の各構成成分と酵母の分泌能との関連性は明らかにさ
れていなかった。
【0005】なお、YPD培地、SD培地の組成は、以
下の表1及び表2に表される通りである。
【0006】
【表1】 YPD 培地 バクト・イ−ストエキストラクト(ディフコ社製) 1% バクト・ペプトン(ディフコ社製) 2% グルコース 2%
【0007】
【表2】 SD培地 バクト・イースト・ナイトロジェン・ベース・ウィズアウト・アミノアシッド (ディフコ社製) 0.67% グルコース 2 % リン酸カリウム緩衝液(pH 8.0) 50 mM ガラクトース 2 % トリプトファン (和光純薬) 0.02 g/L ウラシル (和光純薬) 0.2 g/L ヒスチジン (和光純薬) 0.02 g/L リジン (和光純薬) 0.03 g/L アルギニン (和光純薬) 0.02 g/L スレオニン (和光純薬) 0.2 g/L メチオニン (和光純薬) 0.02 g/L チロシン (和光純薬) 0.03 g/L フェニルアラニン(和光純薬) 0.05 g/L イソロイシン (和光純薬) 0.03 g/L バリン (和光純薬) 0.15 g/L アデニン硫酸 (和光純薬) 0.02 g/L グルタミン酸 (和光純薬) 0.1 g/L アスパラギン酸 (和光純薬) 0.1 g/L セリン (和光純薬) 0.375 g/L
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、他のビ
タミン類を有しない完全合成培地(基本培地)にチアミ
ンを添加した培地を用いて酵母を培養した場合、チアミ
ンを添加しない場合に比較して、酵母由来又は外来性の
蛋白質の分泌が著しく増大することを見出し、本発明を
完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)炭素源と
してグルコース、シュクロース又はマンノース、窒素源
として硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、トリプト
ファン、ウラシル、ヒスチジン、リジン、アルギニン、
スレオニン、メチオニン、チロシン、フェニルアラニ
ン、イソロイシン、アデニン、グルタミン酸、アスパラ
ギン酸、セリン又はバリン、ビタミンとしてビオチン、
無機栄養塩類として、ほう酸、硫酸銅、ヨウ化カリウ
ム、塩化第二鉄、硫酸マンガン、モリブデン酸ナトリウ
ム、硫酸亜鉛、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、
塩化ナトリウム又は塩化カルシウムを含む培地中で酵母
を培養する場合において、培地中にチアミンを含有せし
めることにより酵母由来又は外来性蛋白質を菌体外培養
液に分泌させ、培養液から該蛋白質を採取することを特
徴とする蛋白質の製造法、(2)(1) 記載の製造法におい
て、培地中のチアミンの濃度が少なくとも 10 μg/ml以
上である製造法、(3)(1) 又は(2) 記載の製造法におい
て、酵母がサッカロミセス・セルビシエである製造法に
関する。
【0010】本発明において、好適には(2) 又は(3) 記
載の製造法であり、さらに好適には(3) 記載の製造法で
ある。
【0011】本発明において使用される酵母は、該酵母
より分泌される酵母由来の蛋白質を利用し得るもの、又
は、遺伝子組換え技術の宿主として利用し得るものなら
ばいずれのものも使用し得るが、サッカロミセス(Sacc
haromyces )属に属する酵母が好適であり、さらに好適
には、サッカロミセス・セルビシエ(Saccharomycescer
evisiae)である。
【0012】さらに、サッカロミセス・セルビシエに属
する各菌株のうち、KK4株 (α,gal80, ura3, leu2, his
1,trp1)(Molecular and General Genetics, (1984), 1
95, 29-34)、106-3D株(Genetics, (1966), 54, 911-9
16 )、SHY3 株(Gene, (1979), 8, 17-24 )、KS58-
2D 株( α, ssl1, leu2, his3, ura3) 、KS51-3C 株(M
olecular and General Genetics, (1989), 219, 58-6
4)、KSM-I69 株( α, ssl1, leu2, his1 or 3, ura3)
(Molecular and General Genetics, (1989), 219, 58-
64)、KS45-3D 株(Molecular and General Genetics,
(1989), 219, 58-64 ) KS77-5D 株 (α, ssl1, leu2, his3, ura3) KS58-2D 株× KS77-2D 株、SANK 50182株( P株:Appl
ied and Environmental Microbiology, (1992), 58, 94
8--952)等が好ましい。
【0013】なお、 KK4株は、106-3D 株とSHY3 株と
の交配により得られた1倍体株であり、KS58-2D 株は、
KS51-3C 株とKSM-I69 株との交配により得られた1倍体
株である。KSM-I69 株は、KS45-3D 株の突然変異により
得られた1倍体株である。KS77-5D 株は、KS51-3C 株と
KSM-I69 株との交配により得られた1倍体由来の株であ
る。KS58-2D 株× KS77-2D 株は、KS58-2D 株と KS77-
2D 株とを交配させて得られた2倍体株である。SANK 5
0812株(P株) は、工業的に使用されている2倍体株であ
る。KS58-2D 株は、KS51-3C 株とKSM-I 69株(Molecula
r and GeneralGenetics, (1989), 219, 58-64)との交
配により得られた株である。また、KS77-5D 株は、KS51
-3C 株とKSM-I 69株との交配により得られた KS58-3A
株由来の株である。
【0014】また、KS58-2D 株、KSM-I69 株、KS77-5D
株等の( α, ssl1, leu2, his3) 型の株を ssl 1株と総
称する。
【0015】本発明において、基本培地とは、炭素源と
してグルコース、シュクロース又はマンノース、窒素源
として硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、トリプト
ファン、ウラシル、ヒスチジン、リジン、アルギニン、
スレオニン、メチオニン、チロシン、フェニルアラニ
ン、イソロイシン、アデニン、グルタミン酸、アスパラ
ギン酸、セリン又はバリン、ビタミンとしてビオチン、
無機栄養塩類として、ほう酸、硫酸銅、ヨウ化カリウ
ム、塩化第二鉄、硫酸マンガン、モリブデン酸ナトリウ
ム、硫酸亜鉛、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、
塩化ナトリウム又は塩化カルシウムを含む培地をいう。
【0016】この場合、グルコース、シュクロース又は
マンノースは、少なくとも20g/L 含む培地が好適であ
る。
【0017】硫酸アンモニウムは少なくとも 5g/L 、塩
化アンモニウムは少なくとも 5g/L、トリプトファンは
少なくとも 20 mg/L、ウラシルは少なくとも 200 mg/L
、ヒスチジンは少なくとも 20 mg/L 、リジンは少な
くとも 30 mg/L、アルギニンは少なくとも 20 mg/L、ス
レオニンは少なくとも 200 mg/L 、メチオニンは少なく
とも 20 mg/L、チロシンは少なくとも 30 mg/L、フェニ
ルアラニンは少なくとも50 mg/L、イソロイシンは少な
くとも 30 mg/L、アデニンは少なくとも 20 mg/L、グル
タミン酸は少なくとも 100 mg/L、アスパラギン酸は少
なくとも、セリンは少なくとも 375 mg/L又はバリンを
少なくとも 50 mg/Lを含む培地が好適である。
【0018】ビオチンは少なくとも 2 μg/L を含む培
地が好適である。
【0019】ほう酸は少なくとも 500 μg/L 、硫酸銅
は少なくとも 40 μg/L 、ヨウ化カリウムは少なくとも
100μg/L 、塩化第二鉄は少なくとも 200 μg/L 、硫
酸マンガンは少なくとも 400 μg/L 、モリブデン酸ナ
トリウムは少なくとも 200μg/L 、硫酸亜鉛は少なくと
も 400 μg/L 、リン酸二カリウムは少なくとも 0.5%
、硫酸マグネシウムは少なくとも 0.05% 、塩化ナト
リウムを少なくとも 0.01% 又は塩化カルシウムを少な
くとも 0.01% を含む培地が好適である。
【0020】培地中のチアミン濃度は、少なくとも 400
μg/L 以上であることが好適であり、さらに少なくと
も 10 μg/L 以上であることが好適である。
【0021】本発明におけるチアミン含有培地中で酵母
を培養することにより、酵母由来又は外来性蛋白質を菌
体外培養液に分泌させることができる。
【0022】本発明において「酵母由来蛋白質」とは、
酵母菌体内で生産され、チアミン非含有培地では菌体外
培養液に分泌されないが、チアミン含有培地では菌体外
培養液に分泌される蛋白質をいう。このような蛋白質と
しては、酵母サッカロミセス・セルビシエが有するイン
ベルターゼ等を例示できる。
【0023】本発明において、「外来性蛋白質」とは、
外来性蛋白質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベク
ターにより形質転換された酵母により発現される蛋白質
であって、チアミン非含有培地では菌体外培養液に分泌
されないが、チアミン含有培地では菌体外培養液に分泌
される蛋白質をいう。
【0024】このような蛋白質としては、外来性酵母カ
ルボキシペプチダーゼYをコードする遺伝子を組み込ん
だ発現ベクターにより形質転換された酵母 ssl 1株によ
り発現される組換え型カルボキシペプチダーゼY、外来
性ヒトリソゾームをコードする遺伝子を組み込んだ発現
ベクターにより形質転換された酵母 ssl 1株により発現
される組換え型ヒトリソゾーム等を例示できる。
【0025】このように、チアミン含有培地中で酵母を
培養することにより、菌体外培養液に分泌された酵母由
来又は外来性蛋白質は、その物理学的性質や化学的性質
等を利用した各種の公知の分離操作法により分離・精製
し、培養液から採取することができる。このような方法
としては、通常の蛋白質沈殿剤による処理、限外濾過、
分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロ
マトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフ
ィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析
法、及びこれらの組み合わせ等を例示できる。
【0026】
【0027】
【実施例】以下、参考例及び実施例により本発明をさら
に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0028】参考例1 サッカロマイセス・セルビシエ
の染色体DNAの分離 サッカロマイセス・セルビシエSANK50182 菌株を、
YPD培地(1%バクト・イーストエキストラクト(D
ifco社製)/2%バクト・ペプトン(Difco社
製)/2%グルコース)において、28℃で2日間振と
う培養し、染色体分離の為の菌体とした。菌体を遠心分
離(トミー精工(株)RS−20II、ローター:RPR
20−2)により回収後、10mlの菌体処理液A(1.
2 Mソルビトール/10mMEDTA(エチレンジアミン
四酢酸ニナトリウム)/20mMトリス−塩酸(pH7.6
))に懸濁した後に、10μlのβ−メルカプトエタ
ノールと40mgのザイモリエイス−100T(100,00
0 units/g)を加え、37℃で30分間放置し
た。その後、5,000 rpm、5分間の遠心分離(トミー
精工(株)RS−20II、ローター:RPR20−2)
により菌体を回収後、再度10mlの菌体処理液Aに懸
濁し、遠心分離(トミー精工(株)RS−20II、ロー
ター:PRR20−2)を5,000 rpm、5分間行なっ
て菌体を洗浄した。回収した菌体を5mlの菌体処理液
B(50mMEDTA/50mMトリス−塩酸(pH7.6
))に懸濁後、1mlの10%SDS(トデシル硫酸
ナトリウム)溶液を加えて菌体を破壊した。すぐに、7
mlのフェノールとクロロホルムの1:1混合液を加え
てゆるやかに攪拌後、7,000 rpm、10分間遠心分離
(トミー精工(株)RS−20II、ローター:RPR2
0−2)を行なって遠心上清を駒込ピペットで回収し
た。0.6 mlの3M酢酸ナトリウム溶液を加えて攪拌し
た後に、15mlの冷エタノールを加えて、−80℃に
1時間放置した。10,000rpm、15分間遠心分離(ト
ミー精工(株)RS−20II、ローター:RPR20−
2)を行なって染色体DNAを沈殿させた後、70%エ
タノールで洗浄し、減圧乾燥後、1mlのTE溶液(1
0mMトリス−塩酸(pH7.6 )/1mMEDTA)に懸濁
した。次に50μlのRNase溶液(20mg/10
ml RNaseA、25,000unit/10ml RN
aseT1 )を加え、37℃で30分間反応させた後
に、25μlのプロテイネースK(10mg/ml)と
50μlの10%SDSを加え、37℃で1時間反応さ
せた。反応終了後、1.2 mlのフェノールとクロロホル
ムの1:1混合液を加えてゆるやかに攪拌後、遠心分離
し遠心上清を回収し、さらに1.2 mlのフェノール溶液
を加えて同様の操作を繰り返した。得られた遠心上清約
1mlに2.5 倍量の冷エタノールを加え、−80℃に3
0分間放置した後、遠心分離によりエタノール沈殿物を
得た。それを70%エタノールで洗浄後、減圧乾燥し、
100μlのTE溶液に懸濁した。
【0029】参考例2 カルボキシペプチダーゼY遺伝
子のクローニング 得られたサッカロマイセス・セルビシエSANK50182
株由来の染色体DNA20μgに50μlの制限酵素緩
衝液M(100mMトリス−塩酸(pH7.5 )、100
mM塩化マグネシウム、10mMディチオスレイトー
ル、500mM塩化ナトリウム)および200単位の制
限酵素HindIII (宝酒造(株)製)を加えて全量を
滅菌脱イオン水で500μlとした後に、37℃で3時
間反応させ切断反応を行ない、その後TE飽和フェノー
ルを等量添加して攪拌することにより反応を停止した。
トミー精工(株)製微量高速遠心機MRX−150(ロ
ーター同社TMA−4)を用いて、15,000rpm、5分
間遠心分離を行ない、水層を分取し(以下「TE飽和フ
ェノール処理」とする)、その後1/10量の3N酢酸
ナトリウム溶液を加えて攪拌した後に、2.5 倍量の冷エ
タノールを加え、−80℃に15分間放置し、トミー精
工(株)製微量高速遠心機MRX−150(ローター同
社TMA−4)を用いて、15,000rpm、15分間遠心
分離を行ない沈殿物を得た(以下、「エタノール沈殿処
理」とする)。それを70%エタノールで洗浄後、減圧
乾燥し、TE溶液に懸濁して、これをSANK50182 株
由来染色体DNA断片とした。クローニングの為のベク
ターとしては、同様に制限酵素HindIII で切断した
PUC18(宝酒造社製)3μgを用い、子牛腸由来の
アルカリホスファターゼ(東洋紡績(株))20単位を
使い、360μlのTE緩衝液中で37℃、30分間イ
ンキュベートすることにより脱リン酸化反応を行なった
(以下、「アルカリホスファターゼ処理」とする)。以
上のように作成した大腸菌ベクターPUC18とSAN
K50182 株由来染色体DNA断片を宝酒造社製DNAラ
イゲーションキットを用いて16℃、14時間反応させ
連結反応を行なわせた。この反応液をエタノール沈殿処
理した後に、70μlのTE溶液に懸濁し、それぞれ1
0μlずつ100mM塩化カルシウム、100mM塩化
マグネシウム、100mMトリス−塩酸(pH7.6 )を
加えた後に、100μlの宝酒造(株)製大腸菌JM1
09コンピテントセルを加えて氷中に20分間放置し
た。そして42℃のヒートショックを90秒間行なった
後に、氷中で2分間冷却し、1mlの2×YT培地(1.
6 %バクト・トリプトン(Difco社製)/1.0%パ
クト・イーストエキストラクト(Difco社製)/0.
5 %塩化ナトリウム/0.1 %グルコース)を加えて、3
7℃で1時間振とう培養した。そしてこれを培地1リッ
トルあたり80mgのアンビシリンを添加した2×YT
培地プレートにまき、37℃で、12時間培養を行なっ
た。その結果、約32,000個のアンピリシン耐性株を得た
ので、これをカルボキシペプチダーゼY遺伝子をクロー
ニングするための遺伝子ライブラリーとした。
【0030】次にこの遺伝子ライブラリー中よりカルボ
キシペプチダーゼY遺伝子をクローニングする目的で、
ミリポア社製ニトロセルロースフィルター上に遺伝子ラ
イブラリーとしてのアンピシリン耐性株をレプリカし、
一晩37℃で2×YTプレート上で増殖させた後に、こ
のニトロセルロースフィルターを0.5 N水酸化ナトリウ
ム溶液に10分間浸し、さらに1Mトリス−塩酸(pH
7.5 )溶液に5分間、0.5 Mトリス−塩酸(pH7.5 )
/1.5 M塩化ナトリウム溶液に5分間、そして2×SS
C溶液(1×SSCは、0.875 %塩化ナトリウム/0.44
%クエン酸ナトリウム)に5分間浸した後に、80℃で
2時間焼き付けを行ない6×SSC溶液(5.25%塩化ナ
トリウム/2.64%クエン酸ナトリウム)中で菌体を除い
た後に風乾させた。次に目的のDNAを選別するための
プローブとして、アプライドバイオシステム社製380
BDNA合成機を用いてカルボキシペプチダーゼY構造
遺伝子の一部である20塩基のDNA(5’−TGTT
CCAGCTACCATTTATT−3’:配列表の配
列番号1)を化学合成し、その中の800ngのDNA
に、1μlの末端リン酸化緩衝液(0.5 Mトリス−塩酸
(pH7.6 )/0.1M塩化マグネシウム/50mMジチ
オスレイトール/1mMスペルミジン/1mMEDT
A)、10μlの[γ−32P]ATP(アマシャムジャ
パン(株)製、10μCi/μl)、およびT4ポリヌ
クレオチドキナーゼ(宝酒造社製)2μlを加えて全量
を40μlとした後、37℃で30分間反応させてDN
Aの5’末端にラベル体のリン酸基をとり込ませた。7
0℃で10分間放置することで反応を停止させ、100
μlの8M塩化アンモニウムを加えた後に、エタノール
沈殿処理を行ない、70%エタノールで洗浄後、減圧乾
燥してラベルしたDNAプローブを作成した。そこでこ
のDNAプローブを用いてカルボキシペプチターゼY遺
伝子をクローニングするため、まず、上記のように作成
したニトロセルロースをハイブリダイゼーション溶液
(0.1 %牛血清アルブミン、0.1 %フィコール、0.1 %
ポリビニルピロリドン、50%(U/V)ホルムアミ
ド、4×SSC、50mMトリス−塩酸(pH7.5 )、
10μg/mlサケ精子DNA)中で、49℃で3時間
振とうした後に、上記のように調製したDNAプローブ
を添加したハイブリダイゼーション溶液中でさらに49
℃で30時間振とうさせ、DNAを特異的に結合させ
た。次に、2×SSC溶液中で49℃で1時間振とう
し、0.1 %のSDSを添加した2×SSC溶液中で、4
9℃で30分間さらに振とうしてフィルターを洗浄し、
さらに0.5 ×SSC溶液中で49℃で1時間振とうした
後に、ペーパータオル上で風乾させ、オートラジオグラ
フィーによる検出を行なった。その結果、約32,000コロ
ニー中22コのCPY遺伝子を有すると思われるコロニ
ーが得られた。
【0031】次に、このようにして得られたポジティブ
なクローンより以下の方法に従がってプラスミドを回収
した。まず、2×YT培地1.5 mlにて一晩培養した
後、遠心分離(トミー精工(株)製微量高速遠心機MR
X−150(ローター同社TMA−4))により大腸菌
を回収し、200μlの溶液 I(50mMグルコース、
10mMEDTA、25mMトリス塩酸(pH8.0 )、リ
ゾチーム800μg)に懸濁した。氷中に10分間放置
した後、400μlの溶液II(0.2 N NaOH、1%SD
S)を加え懸濁した後に、氷中でさらに5分間放置し、
次に300μlの溶液III (3M酢酸ナトリウム(pH
4.8 ))を加えてゆるやかに攪拌し、氷中で20分間放
置した。そしてトミー精工(株)製微量高速遠心機MR
X−150(ローター同社TMA−4)にて、14,500r
pm、15分間遠心し、遠心上清を回収した。これに冷
エタノール1mlを添加して−80℃で10分間放置し
てエタノール沈殿を行なった。得られたエタノール沈殿
物をTE溶液に懸濁後、以下ダイデオキシシークエンス
法によりその塩基配列の確認を行なった。すなわち、1
8μlのプラスミドDNA(5μg)に2μlの2N水
酸化ナトリウムを加え、全量を20μlとした後に、室
温で5分間反応させ、5μlの8M酢酸アンモニウムと
100μlの冷エタノールを加えて、−80℃で5分間
放置し、トミー精工(株)製微量高速遠心機にて12,000
rpmで5分間遠心してエタノール沈殿物を得た。これ
を70%エタノールで2回洗浄後、減圧乾燥してアルカ
リ変性させた一本鎖プラスミドDNAを得た。次に東洋
紡績(株)製DNAシークエンシングキット(Ver.
2.0 )を用いて、この変性一本鎖プラスミドDNAの塩
基配列確認を行なった。シークエンシングのためのプラ
イマーとしてアプライドバイオシステム社製380BD
NA合成機を用いて化学合成した14本の合成DNA断
片((1) 5’−ACTTAAAGTATACATACG
CT−3’:配列表の配列番号2、(2) 5’−TGAT
GATACATATGTTA−3’:配列表の配列番号
3、(3) 5’−ATGCTTGTCCTCGTCTTC
CAC−3’:配列表の配列番号4、(4) 5’−TTT
GGTTGAACGGGGGTC−3’:配列表の配列
番号5、(5) 5’−GTTTCCAACACTGTCG
CC−3’:配列表の配列番号6、(6) 5’−CCCT
TGTTGACGTATTCAGGG−3’:配列表の
配列番号7、(7) 5’−TGTTCCAGCTACCA
TTTATT−3’:配列表の配列番号8、(8) 5’−
TCCTGATATCGTAAACGTTT−3’:配
列表の配列番号9、(9) 5’−GGTGATTGGAT
GAAGCCTTA−3’:配列表の配列番号10、(1
0)5’−CTTATTACCCAACCAGTT−
3’:配列表の配列番号11、(11)5’−TTCTTC
GTCGTACTTCC−3’:配列表の配列番号1
2、(12)5’−ACACATACACGCTTTATA
AGG:配列表の配列番号13、(13)5’−GATAA
TAAAAACGGTATGCCT−3’:配列表の配
列番号14、(14)5’−CAGCTGATTTTGTA
GTTATG−3’:配列表の配列番号15)を使用し
た。アルカリ変性一本鎖DNA0.5 pmolに対し、上
記の化学合成したDNAプライマーをそれぞれ0.5 pm
ol加え、さらに5×シークエンシング緩衝液2μlを
加えて、全量を10μlとした後に、65℃で15分、
室温で30分間放置することによってプライマーDNA
をアルカリ変性一本鎖DNAにはりつかせ、東洋紡績
(株)社製キット内のDTT1μl、ラベリングミック
スチャー(dGTP用)15倍希釈液2μl、シークエ
ネース酵素8倍希釈液2μl、およびアマシャム社製
[γ−32P]dCTP(10μCi/μl)1μlを加
えて、室温で5分間反応させた。そして、ダイデオキシ
GTP,ATP,TTP,CTPそれぞれのターミネー
ションミックスチャーを2.5 μlずつ小分けしたチュー
ブに、反応液3.2 μlずつを添加して室温で5分間反応
後、停止液を4μlずつ添加し、80℃で2分間放置す
ることで反応を停止した。そしてこの中の3μlずつを
8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、
ゲルを乾燥後、オートラジオグラフィーにより、その塩
基配列を確認した。その結果、L.A.Vallsらが
報告しているサッカロマイセス・セルビシエAB320
株のカルボキシペプチダーセY構造遺伝子[セル(Ce
ll),48,887−897(1987)]と同一で
あることが確認された。
【0032】参考例3 カルボキシペプチダーゼY発現
プラスミド(pCY303)の構築 参考例2で得られたカルボキシペプチダーゼY構造遺伝
子部分を含むプラスミドpCY101にSalIサイト
を導入するため、pCY101 5μgに30μlの制
限酵素緩衝液Mおよび50単位の制限酵素AccI(宝
酒造(株)製)を加えて全量を滅菌脱イオン水で300
μlとした後に、37℃で3時間反応させ、切断反応を
行ない、TE飽和フェノールを等量添加して攪拌するこ
とにより反応を停止した。このフェノール処理後、エタ
ノール沈殿処理し、得られたDNA断片を0.8 %アガロ
ースゲル電気泳動で分離し、4.8 キロベースペアー(以
下、「kb」とする)のカルボキシペプチダーゼY構造
遺伝子部分を含むDNA断片をゲルより回収した。この
回収したDNAをフェノール処理、エタノール沈殿処理
した後に宝酒造社製、DNAブランティングキットを用
いて末端の平滑化を行なった。すなわち回収したDNA
断片を1×TE緩衝液に懸濁後、その全量にキット内の
10×緩衝液1μlを加え全量を9μlとした後に、7
0℃で5分間放置し、さらにT4−DNAポリメラーゼ
(キット)1μlを添加し、37℃で5分間正確に反応
させた後に、キット内のDNA希釈緩衝液350μlと
40μlの3M酢酸ナトリウム溶液を加え、フェノール
処理、エタノール沈殿処理を行なった。得られたエタノ
ール沈殿物を10μlの1×TE緩衝液に懸濁後、その
うちの5μlに宝酒造(株)製の末端がリン酸化された
pSalIリンカー(d(pGGTCGACC))2μ
lを加え、さらに宝酒造(株)製DNAライゲーション
キットのA溶液56μl、B溶液7μlを加えた後に、
16℃で14時間反応させ連結反応を行なわせた。この
反応液をエタノール沈殿処理した後に、70μlのTE
緩衝液に懸濁し、参考例2で述べた方法と同様の方法
で、宝酒造(株)製大腸菌JM109コンピテントセル
内に導入し、アンピシリンを添加した2×YT培地プレ
ート上で生育可能なアンピシリン耐性株を得た。そこで
参考例2で述べた方法と同様の方法で、32コのコロニ
ーについて、1.5mlの2×YT培地で培養を行ない、
プラスミドDNAの回収を行なった。得られたプラスミ
ドDNAの一部を用いて制限酵素SalIとHindII
I で切断した後に、0.8%アガロースゲル電気泳動に
て、2.2 kbのDNA断片が生じたプラスミドDNAを
選別した結果、10コのコロニーにおいてカルボキシペ
プチダーゼY構造遺伝子上流のAccIサイトがSal
Iサイトに置き換わったプラスミドDNA(pCY20
1)を得た。そこでこのpCY201 5μgに20μ
lの制限酵素緩衝液Mおよび50単位のHindIII
(宝酒造(株)製)を加えて全量を滅菌脱イオン水で2
00μlとした後に37℃で2時間反応させ、さらに1
0μlの1MNaClと50単位のSalI(宝酒造(株)
製)を加え、37℃で2時間反応させることで切断反応
を行ない、TE飽和フェノールを等量添加して攪拌する
ことにより反応を停止した。フェノール処理、エタノー
ル沈殿処理して得られたDNAを0.8 %アガロースゲル
電気泳動で分離し、カルボキシペプチダーゼ構造遺伝子
部分を含む2.2 kbのSalI−HindIII DNA断
片をゲルより回収した。次にベクターDNAとしてプラ
スミドYEp−HLYSIG5μgを同様の条件で宝酒
造(株)製の制限酵素SalIとHindIII で切断
し、フェノール処理、エタノール沈殿処理を行なった後
に、0.8 %アガロースゲル電気泳動によりGAL10プ
ロモーター部分を含む7.1 kbのSalI−HindII
I DNA断片をゲルより回収した。そしてフェノール処
理、エタノール沈殿処理を行なった後に、子牛腸由来の
アルカリホスファターゼ(東洋紡績(株))20単位を
使い、360μlのTE緩衝液中で37℃、30分間イ
ンキュベートすることによりアルカリホスファターゼ処
理を行なった。フェノール処理を3回繰り返した後、エ
タノール沈殿処理した後に、TE緩衝液に懸濁してこれ
をベクターDNAとした。以上のようにして作成したベ
クターDNA0.5 μgとカルボキシペプチダーゼY構造
遺伝子部分を含む2.2 kdのSalI−HindIII 断
片0.5 μgに、宝酒造(株)製DNAライゲーションキ
ットのA溶液48μl、B溶液6μlを加えて全量を6
0μlとした後に、16℃で15時間反応させて連結反
応を行なわせた。以下参考例2にて述べた方法と同様の
方法で、宝酒造(株)製大腸菌JM109コンピテント
セルに導入し、アンピシリン耐性株を得た。次に参考例
2で述べた方法と同様の方法で、32コのコロニーにつ
いて、1.5 mlの2×YT培地で培養を行ない、プラス
ミドDNAの回収を行なった。得られたプラスミドDN
Aの一部を用いて制限酵素SalIとHindIII で切
断し、0.8 %アガロースゲル電気泳動にて生じたDNA
断片を検討した結果、GAL10プロモーターの直下に
カルボキシペプチダーゼY遺伝子が連結されたプラスミ
ドDNAを有する株が9コロニー得られた。そこでこの
得られたGAL10プロモーターの直下にカルボキシペ
プチダーゼY構造遺伝子が連結された酵母多コピー型プ
ラスミドをpCY303と名付けた。(図1参照) 参考例4 pCY303プラスミドの酵母への導入 パン酵母サッカロマイセス・セルビシエKS58−2D
株(γ,ssl1,leu2,his1 or 3,
ra3)に、pCY303プラスミドを以下のように導
入した。すなわち、1コロニーのKS58−2D株を5
0mlのYPD培地に植菌し、28℃で12時間培養し
た後に、菌体を遠心分離(トミー精工(株)RS−20
II、ローター:RPR20−2)により回収後、20m
lのTE緩衝液で1回洗浄した後に、2×108 cel
l/mlの菌体濃度になるようにTE緩衝液中に懸濁し
た。この菌体懸濁液2mlを滅菌した100mlの三角
フラスコに移した後に、0.2 M酢酸リチウム溶液2ml
を加え、26℃で1時間振とうした。そして100%グ
リセロール溶液0.7 mlを加えて懸濁した後にこの中の
0.3 mlを5μgのpCY303プラスミドを入れたエ
ッペンドルフチューブ(1.5 ml)に移し、攪拌後、30
℃で30分間放置した。そして70%のポリエチレング
リコール溶液を0.3 ml加えて攪拌後、30℃で1時間
放置した後に、42℃で5分間ヒートショックを行なっ
た後に、トミー精工(株)微量高速遠心機MRX−15
0(ローター同社TMA−4)にて、5000rpm、1分
間遠心し、細胞を回収後、さらに1mlの滅菌水にて洗
浄した後に、500μlのTE緩衝液に懸濁した。そし
てこの細胞懸濁液450μlと50μlをそれぞれ0.
7%の寒天溶液に加えて、SD培地(0.667 %イースト
・ナイトロジェン・ベースウィズアウトアミノアシッド
(Difco社製)2%グルコース/2%ガラクトース
/0.2 Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.6 )/0.14%ア
ミノ酸混合液(ロイシンを除く)/0.5 %牛血清アルブ
ミンフラクションV(シグマ社製))プレート上に重層
して、30℃で3日間培養した。その結果、12コのコ
ロニーが得られ、これをKS58−2D(pCY30
3)と名付けた。
【0033】実施例1 チアミン添加によるカルボチキ
ペプチダーゼYの分泌生産の増大 サッカロマイセス・セルビシエKS58−2D(pCY
303)株を用いて、培養液中にカルボキシペプチダー
ゼYを分泌生産させるにあたり、培地成分の1つである
チアミンがカルボキシペプチダーセYの分泌生産にどの
ように影響を与えるかについて検討した。すなわち、参
考例4で示したサッカロマイセス・セルビシエKS58
−2D(pCY303)株をSD培地10ml(100
ml三角フラスコ)に植菌し、3日間、26℃にて前々
培養を行なった後に、さらに、その1%を同様の培地1
00ml(500ml三角フラスコ)に植菌して、3日
間、28℃にて前培養を行ない、その1%を表3に示し
た組成の完全合成培地100ml(500ml三角フラ
スコ)に植菌するとともに、この完全合成培地中のチア
ミンを除いた培地100ml(500ml三角フラス
コ)に植菌し、28℃で振盪培養(200rpm)を行
なった。そして培養開始後、7日間までの間、24時間
ごとに培養液1mlをサンプリングし、トミー精工
(株)製微量高速遠心機MRX−150(ローター同社
TMA−4)にて、8000rpm、5分間遠心分離
し、酵母菌体と培養液とを分離した。得られた培養液を
用いて以下のようにカルボキシペプチダーゼYの活性を
測定した。
【0034】
【表3】
【0035】カルボキシペプチダーゼYの活性測定は、
N−ベンゾイル−L-チロシン−p−ニトロアニリド(B
TPNA)を基質として用いる方法で行なった。すなわ
ち、6mMBTPNA100μlおよび0.1Mトリス−
塩酸(pH7.6)450μlを含む溶液に、50μl
の酵素液を添加し、37℃で20分間反応させた後に、
沸騰水中で3分間保温することで反応を停止させ、生成
したp−ニトロアニリドの吸光度(420nm)を測定
することによりカルボキシペプチダーゼYの活性を測定
した。なお、0.1Mトリス−塩酸(pH7.0)に溶
解した1mMN−CBZ−Phe−Leu 1mlに、酵
素液10μlを添加して、5分間の吸光度(224n
m)の減少を測定するというカルボキシペプチダーゼY
の活性測定法も併用して行なった。なお、カルボキシペ
プチダーゼY量は、標品のカルボキシペプチダーゼY
(ベーリンガーマンハイム山之内製)を用いて同様に活
性を測定し、検量線を作成することにより算出した。培
地中よりチアミンを除くと、菌体の増殖に変化は認めら
れなかったが、菌体外へのカルボキシペプチダーゼYの
分泌量は著しく低下した(図2)。
【0036】実施例2 チアミン添加によりヒトリゾチ
ームの分泌生産の増大 実施例1に示した方法と同様の方法で、サッカロマイセ
ス・セルビシエKS58−2D株に、YEp−HLYS
IGプラスミド(ジーン、43巻、273〜279頁、
1986(Gene,43(1986),273〜27
9):ガラクトースで誘導のかかるGAL10プロモー
ターの制御下に化学合成したニワトリ・リゾチームのシ
グナル配列とヒト・リゾチーム構造遺伝子を有する酵母
多コピー型プラスミド)を導入し、サッカロマイセス・
セルビシエKS58−2D(YEp−HLYSIG)株
を得た。このサッカロマイセス・セルビシエKS58−
2D(YEp−HLYSIG)株をSD培地10ml
(100ml三角フラスコ)に植菌し、3日間、26℃
にて前培養を行なった後に、その1%を、表1に示した
組成の完全合成培地よりビオチンとチアミン以外の7種
類のビタミンを除いた培地(以下「+チアミン培地」と
記す)100ml(500ml三角フラスコ)およびビ
オチン以外の8種類のビタミンを除いた培地(以下「−
チアミン培地」と記す)に植菌し、28℃で3日間、振
盪培養(200rpm)を行なった。そしてこの培養液
40mlを、トミー精工(株)製高速遠心機RL−13
1(ローター同社TS−9)にて、3,000 rpm、10
分間遠心して菌体と培養液とを分離した。ヒト・リゾチ
ームの活性測定は以下に示したように行なった。
【0037】すなわち、50mMリン酸ナトリウム緩衝
液(pH6.4)に懸濁したマイクロコッカス・リソデ
ィクティカス(シグマ社製、0.15mg/ml)800μ
lに、酵素液200μlを添加して、5分間の吸光度
(450nm)の減少を測定することでリゾチーム活性
を測定した。なお1ユニットは、1分間の吸光度の減少
で0.001 であり、これは培養液1リットルあたり0.02m
gのリゾチーム量となる。この結果、カルボキシペプチ
ダーゼYを分泌生産させた場合と同様に、菌体の増殖に
は影響が認められなかったが、ヒトリゾチームの菌体外
への分泌量は−チアミン培地で培養した場合に比べて+
チアミン培地で培養すると顕著に増大していた(図
3)。
【0038】実施例3 チアミン添加によるイソベルタ
ーゼの分泌生産の増大 pCY303プラスミドを有する酵母サッカロマイセス
・セルビシエKS58−2D株を、10mlのSD(−
leu)培地で、26℃、3日間培養後、その1%を同
様のSD(−leu)培地10mlに植菌して、26
℃、3日間培養し、前培養液とした。この前培養液1%
を、チアミンを添加した完全合成培地およびチアミンを
添加していない完全合成培地それぞれ100mlに植菌
し、7日間、28℃で本培養を行なった。培養液中のイ
ンベルターゼ活性の測定は、次のように行なった。
【0039】すなわち、0.1 M酢酸ナトリウム緩衝液
(pH4.65)1mlと0.3 Mショ糖溶液0.5 mlと上記
本培養液0.1 mlを混ぜ合わせ、25℃で5分間反応さ
せることにより、培養液中のインベルダーゼによりショ
糖をD−グルコースとD−フラクトースに変化させた。
反応は0.3 Mトリス(ハイドロキシメチル)−アミノメ
タン溶液0.4 mlを反応中に添加することにより停止さ
せた。次に0.3 Mトリエチルアミン緩衝液(pH7.6 )
2.5 ml、0.1 M、塩化マグネシウム溶液0.1 ml、1
6mMATP溶液0.1 ml、11mMNADP溶液0.1 m
l、280unit/mlのヘキソキナーゼ溶液(メル
ク社製)0.03ml、700unit/mlのホスホグル
コースイソメラーゼ(ベーリンガー・マンハイム山之内
社製)0.03mlと上記反応液0.05mlを混ぜ合わせた
後、分光光度計(日立製作所製、分光光度計モデル20
0−20)により、340nmでの吸光度を測定し、こ
れを吸光度1とした。なお、反応液0.05mlのかわりに
脱イオン水0.05mlを添加したものの吸光度も同様に測
定し、これをブランクの吸光度1とした。次に、350
unit/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナ
ーゼ0.01mlを添加し、37℃で20分間反応させた後
に沸騰水に5分間つけることで反応を停止させ、分光光
度計(日立製作所製、分光光度計モデル200−20)
により、340nmでの吸光度を測定し、これを吸光度
2とした。なお、ブランクとして脱イオン水を用いたも
のの吸光度も同様に測定して、これをブランクの吸光度
2とした。培養液中のインベルターゼ活性は、これらの
吸光度1および吸光度2を用いて、以下の計算式より求
めた。
【0040】 上記の測定法により求めたチアミンを添加した完全合成
培地(+チアミン)およびチアミンを添加していない完
全合成培地(−チアミン)で培養した場合の培養液中の
インベルターゼ活性を表4に示した。
【0041】
【表4】
【0042】この結果、培養液中のインベルターゼ活性
は、チアミンを添加した完全合成培地で酵母サッカロマ
イセス・セルビシエKS58−2D/pCY303株を
培養した方がチアミンを添加していない完全合成培地で
同株を培養するよりも有意に高いことが明らかとなっ
た。
【0043】pCY303プラスミドを有するKS58
−2D株を、ロイシン以外のアミノ酸を添加したSD培
地50mlに植菌し、26℃で3日間振盪培養して前々
培養を行なった。次に、前々培養液0.5 mlを同様の組
成のSD培地50mlに添加し、26℃で3日間振盪培
養することで前培養を行なった。この菌培養液1ml
を、ビタミンとしてビオチンだけを添加した完全合成培
地およびビオチンとチアミンだけを添加した完全合成培
地それぞれ100mlに添加し、28℃で振盪培養を行
なった。培養開始3日目、5日目、7日目にそれぞれ5
mlずつサンプリングした。このサンプリング液をトミ
ー精工製冷却遠心機(RL−131)にて3,000 rp
m、5分間遠心分離することで遠心上清と菌体を分離し
た。
【0044】このようにして得られた菌体を、5mlの
滅菌水に懸濁して洗浄後、湿菌体重量の4倍量のトリス
−温酸液(pH7.5 、0.1 M)に再度懸濁し、さらに湿
菌体重量の5倍量のガラスビーズを添加してカイザー社
製細胞破砕装置にて菌体を破砕した。この菌体破砕液1
mlを、トミー精工製冷却遠心機(MRX−150)に
て15,000rpm、10分間遠心分離した遠心上清を菌体
内酵素サンプルとして、またサンプリング液の遠心上清
を菌体外酵素サンプルとしてカルボキシペプチダーゼ酵
素活性を測定した。
【0045】KS58−2D株、KS58−2D株とK
S77−5D株との交配株、SANK50182 株(P
株)、KSM−I69株およびKK4株を50mlのロ
イシンを含むアミノ酸を添加したSD培地に植菌し、2
6℃で3日間振盪培養して前々培養を行なった。また、
プラスミドpCY303を有するKS58−2D株は、
ロイシン以外のアミノ酸を添加したSD培地にて、26
℃で3日間前々培養を行なった。次に、前々培養液0.5
mlをそれぞれ同様の組成のSD培地50mlに加え、
26℃で3日間振盪培養し、前培養液とした。この前培
養液1mlを、チアミン添加および無添加の完全合成培
地100mlにそれぞれ添加し、28℃で7日間振盪培
養して本培養を行なった。この本培養液を用いて、菌体
外のインベルターゼ活性を測定した。
【0046】
【発明の効果】本発明により、他のビタミン類を有しな
い完全合成培地(基本培地)にチアミンを添加した培地
を用いて酵母を培養した場合、チアミンを添加しない場
合に比較して、酵母由来又は外来性の蛋白質の分泌が著
しく増大することが確認された。従って、これらの蛋白
質の分泌生産に最低限必須な培地成分が明らかとなり、
より安価な培地を使用して、酵母により蛋白質を大量に
生産することが可能になった。
【0047】
【配列表】
配列番号:1 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 TGTTCCAGCT ACCATTTATT 20 配列番号:2 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 ACTTAAAGTA TACATACGCT 20 配列番号:3 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 TGATGATACA TATGTTA 17 配列番号:4 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 ATGCTTGTCC TCGTCTTCCA C 21 配列番号:5 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 TTTGGTTGAA CGGGGGTC 18 配列番号:6 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 GTTTCCAACA CTGTCGCC 18 配列番号:7 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 CCCTTGTTGA CGTATTCAGG G 21 配列番号:8 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 TGTTCCAGCT ACCATTTATT 20 配列番号:9 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 TCCTGATATC GTAAACGTTT 20 配列番号:10 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 GGTGATTGGA TGAAGCCTTA 20 配列番号:11 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 CTTATTACCC AACCAGTT 18 配列番号:12 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 TTCTTCGTCG TACTTCC 17 配列番号:13 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 ACACATACAC GCTTTATAAG G 21 配列番号:14 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 GATAATAAAA ACGGTATGCC T 21 配列番号:15 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 配列 CAGCTGATTT TGTAGTTATG 20
【図面の簡単な説明】
【図1】 pCY303 プラスミドの構築図
【図2】チアミンの添加の有無による酵母菌体外に分泌
されてくるカルボキシペプチダーゼY量の測定図
【図3】チアミンの添加の有無による酵母菌体外に分泌
されてくるヒト・リゾチーム量の測定図

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素源としてグルコース、シュクロース又
    はマンノース 窒素源として硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、ト
    リプトファン、ウラシル、ヒスチジン、リジン、アルギ
    ニン、スレオニン、メチオニン、チロシン、フェニルア
    ラニン、イソロイシン、アデニン、グルタミン酸、アス
    パラギン酸、セリン又はバリン、 ビタミンとしてビオチン、 無機栄養塩類として、ほう酸、硫酸銅、ヨウ化カリウ
    ム、塩化第二鉄、硫酸マンガン、モリブデン酸ナトリウ
    ム、硫酸亜鉛、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、
    塩化ナトリウム又は塩化カルシウムを含む培地中で酵母
    を培養する場合において、 培地中にチアミンを含有せしめることにより酵母由来又
    は外来性蛋白質を菌体外培養液に分泌させ、培養液から
    該蛋白質を採取することを特徴とする蛋白質の製造法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の製造法において、培地中の
    チアミンの濃度が少なくとも 10 μg/L 以上である製造
    法。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の製造法において、酵
    母がサッカロミセス・セルビシエである製造法。
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WO2014030774A1 (ja) * 2012-08-24 2014-02-27 国立大学法人山口大学 酵母用培地
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