JP4330452B2 - 選択マーカー遺伝子 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は遺伝子組換え技術において有用な選択マーカー及びその利用に関する。詳しくは、糸状菌を形質転換する際に利用できる選択マーカーである、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、当該遺伝子を含むベクター、当該ベクターで形質転換された糸状菌の形質転換体、及び当該形質転換体を用いたタンパク質の生産方法に関する。
背景技術
アスペルギルス属糸状菌を主とする麹菌は古来より発酵食品または各種有用物質の生産等に広範に用いられ、この長年による経験によって安全性も評価されていることから、近年、遺伝子組み換えによる有用タンパク質の宿主として広く利用されている。
工業用に使用されるアスペルギルス属糸状菌の育種において、望ましい形質を付与するためには遺伝子工学的手法がきわめて有効である。この遺伝子工学的手法においては、望ましい形質を獲得した形質転換体を効率的に選択するための選択マーカーが必要とされる。
糸状菌用の選択マーカーとして報告されているものとしては、薬剤耐性を示す遺伝子、例えばhygromycin B耐性遺伝子(Gene.1987;56(1):117−24)やピリチアミン耐性遺伝子(Biosci Biotechnol Biochem.;64(7):1416−1421(2000)、特開2000−308491号公報)あるいは、栄養要求性を示す遺伝子、例えばargB(Agric.Biol.Chem.51(9),2549−2555,1987)、niaD(Gene 111(2),149−55,1992Feb 15)、またはpyrG(Curr.Genet.16(3),159−163,1989)等が挙げられる。
発明の開示
一般に、抗生物質耐性遺伝子を有する微生物を工業的に利用することには生活圏へ抗生物質耐性遺伝子が拡がる危険性を伴うことから、栄養要求性を指標とした選択マーカーを利用することが好ましいとされる。しかし、現在利用されている栄養要求性を指標とした選択マーカーの種類は限られており、研究を進めていく過程に於いての選択肢が少ないということ、また場合によっては栄養要求性が不安定であったり、マーカーの選択性が良くないことがあり、栄養要求性を指標とした新たな糸状菌用の選択マーカーを開発することが切望されている。
そこで本発明は、糸状菌を形質転換する際に利用し得る、栄養要求性を指標とした選択マーカー遺伝子を提供することを課題とする。また、当該選択マーカー遺伝子の具体的使用態様である、選択マーカー遺伝子を含むベクター、当該ベクターで形質転換された糸状菌の形質転換体、及び当該形質転換体を用いたタンパク質の生産方法を提供することを課題とする。更に、上記の選択マーカー遺伝子が欠損した糸状菌株を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく種々の検討を行った。まず、アスペルギルス・オリゼIFO30113株(財団法人発酵研究所)に突然変異処理を施した後、栄養要求性を示す変異株を単離してその栄養要求性について詳細に調べた。その結果、当該変異株はニコチン酸要求性であることが判明し、併せてその原因がキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの欠損によるものであることが推定された。続いて、アスペルギルス・オリゼのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子のクローニングに成功し、次いでこの遺伝子を組み込んだプラスミドを用いて当該遺伝子を欠損する糸状菌株を形質転換したところ形質転換体はニコチン酸要求性を示さず、当該遺伝子を糸状菌用の選択マーカーとして利用できることが確認された。
本発明は以上の知見に基づき完成されたものであって、次の構成を提供する。
[1]以下の(1)、(2)、又は(3)のDNAからなる選択マーカー、
(1)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA、
(2)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、
(3)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1若しくは複数の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む塩基配列からなり、かつキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[2][1]の選択マーカーを含む、組換えベクター。
[3][2]の組換えベクターで形質転換された糸状菌形質転換体。
[4][1]の選択マーカーを含む組換えベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損する糸状菌を形質転換し、ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する、ことを特徴とする形質転換体の調製方法。
[5][1]の選択マーカー及び目的のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損する糸状菌を形質転換する工程、
ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する工程、
選択された形質転換体を、前記目的のタンパク質を産生可能な条件で培養する工程、
産生されたタンパク質を回収する工程、を含むタンパク質の生産方法。
[6]キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を欠損している、ことを特徴とするアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)に属する糸状菌株。
[7]糸状菌由来のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を選択マーカーとして含む組換えベクター。
[8][7]の組換えベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼを欠損する糸状菌を形質転換し、ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する、ことを特徴とする形質転換体の調製方法。
[9]糸状菌由来のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子及び目的のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損する糸状菌を形質転換する工程、
ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する工程、
選択された形質転換体を、前記目的のタンパク質を産生可能な条件で培養する工程、
産生されたタンパク質を回収する工程、を含むタンパク質の生産方法。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の構成を詳細に説明する。本発明は選択マーカーに関し、配列表の配列番号1に示される配列のDNAからなる。かかるDNAはキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子であって、以下の方法で得ることができる。
<1>アスペルギルス・オリゼのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の単離
(1)アスペルギルス・オリゼのニコチン酸要求性株の取得
キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、アスペルギルス・オリゼ(例えばIFO30113株(財団法人発酵研究所))の染色体DNAライブラリーから、公知のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子と相同性の高いESTクローンの配列に基づいて作製したプライマーを用いたPCR反応により、あるいは前記PCR産物をプローブとするハイブリダイゼーションにより単離することができる。また、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、アスペルギルス・オリゼの染色体DNAライブラリー又は発現ベクターを用いたcDNAライブラリーでアスペルギルス・オリゼのニコチン酸要求性変異株を形質転換し、ニコチン酸要求性が相補された形質転換株を選択し、該形質転換体から組換えDNAを回収することによっても取得され得る。
得られたDNA断片がキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードしていることは、例えば当該DNA断片を、ニコチン酸要求性を示す宿主に形質転換し、形質転換体のニコチン酸要求性が回復されることを調べることによって確認することができる。
アスペルギルス・オリゼのニコチン酸要求性変異株は、UV等を用いてアスペルギルス・オリゼの胞子を生存率が数%になるように変異処理し、最少培地で生育しない株の中からニコチン酸要求性を示す株を選択することにより得ることができる。あるいは、あらかじめ遺伝子が発現しないように変異を導入したキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を、ニコチン酸要求性を示さないアスペルギルス・オリゼに導入して染色体上のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子と相同的に組換えすることによっても得ることができる。
当該糸状菌株と上記の選択マーカー遺伝子を組み合わせて用いることにより、栄養要求性を指標とした新たな形質転換体の選択方法が提供される。
(2)選択マーカー遺伝子の単離・同定
(i)アスペルギルス・オリゼの染色体DNAライブラリーの作製
まず、アスペルギルス・オリゼ(例えばIFO30113株(財団法人発酵研究所))から染色体DNAを抽出する。染色体DNAは常法によって抽出することができ、例えばTIG,10(7),226(1994)に記載される方法を採用することができる。
得られた染色体DNAを適当な制限酵素(例えばHindIII、EcoRI、EcoRV、PstI、BamHI、XhoI)で切断し、適当なベクター(例えばpUC119、宝酒造株式会社製)の使用した制限酵素に対応する切断部位にDNAリガーゼを用いて連結する。このようにして得られた組換えベクターを用いて宿主(大腸菌等)を形質転換することにより染色体DNAライブラリーを作製することができる。
使用し得るベクターとしては宿主内で自律複製可能、かつ選択マーカーを持つベクターであればいずれでもよく、具体的にはプラスミドpUC119以外にpUC18、pUC118、pUC19、pBR322等が挙げられる。
遺伝子全長を含む染色体DNAライブラリーを作製するためには、予め種々の制限酵素で消化したアスペルギルス・オリゼの染色体DNAに対してサザン・ハイブリダイゼーションを行い、単一のバンドが検出される制限酵素をライブラリーの作製に用いることが好ましい。
(ii)アスペルギルス・オリゼのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の取得
アスペルギルス・オリゼからキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子をクローニングするにあたり、公知のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼと相同性の高いタンパク質をコードする塩基配列をもつESTクローンの検索を行う。ESTクローンの検索には例えばAspergillus oryzae ESTデータベース(http://www.aist.go.jp/RIODB/ffdb/index.html)を利用できる。検索の結果得られた相同性の高いクローンの塩基配列を参考にしてオリゴヌクレオチドを合成する。オリゴヌクレオチドの合成は例えば市販のDNA自動合成装置などを用いて行うことができる。ここでのオリゴヌクレオチドの長さはPCRに適したものであれば特に限定されない。例えば10〜50塩基長であり、好ましくは15〜30塩基長である。
次に、合成したオリゴヌクレオチドをプライマーとしてアスペルギルス・オリゼの染色体DNAを鋳型としたPCRを行い、アスペルギルス・オリゼのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の一部を取得する。これをプローブとして(i)で作製したアスペルギルス・オリゼの染色体DNAライブラリーをスクリーニングしてキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を保有するクローンを選択し、当該クローンよりアスペルギルス・オリゼのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子全長を取得する。
スクリーニング方法としては染色体ライブラリーの性状に応じてコロニーハイブリダイゼーション又はプラークハイブリダイゼーションが用いられる。具体的には、プラスミド及びその宿主である大腸菌を用いて染色体DNAライブラリーを作製した場合には大腸菌のコロニーをメンブランにトランスファーし、上記で取得したキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の一部をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーションを行う。このようにして選択されたクローンからプラスミドを調製することにより、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が組み込まれたプラスミドを得ることができる。
(iii)単離されたDNA断片(選択マーカー遺伝子)の解析
上記で得られたプラスミドにインサートされたDNA断片(クローニングDNA断片)の塩基配列は、例えばDeletion Kit for Kilo−Sequencing(TAKARA社)を用いてデレーションシリーズを作製し、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)を用いて決定することができる。
以上の方法によってアスペルギルス・オリゼIFO30113株から取得されたクローニングDNA断片(キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子)のコード領域の塩基配列(配列番号1)、及びこの塩基配列によってコードされ得るアミノ酸配列(配列番号2)を決定した。
尚、これまでアスペルギルス・オリゼのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を同定したという報告はないことから、決定された遺伝子配列を有する遺伝子は新規なものである。
配列番号1の配列の一部が改変されたDNA(以下、「改変DNA」ともいう)であっても、それがコードするタンパク質がキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する限り本発明の選択マーカーとして利用できる。尚、ここでのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性の程度は特に限定されないが、選択マーカーとしての機能を考慮すればできるだけ高い方が好ましい。例えば、配列番号1の配列からなるDNAがコードするタンパク質のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性と同等であることが好ましい。
改変DNAの具体例としては、配列番号1の配列のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを挙げることができる。尚、ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、ハイブリダイゼーション液(50%ホルムアルデヒド、10×SSC(0.15M NaCl,15mM sodium citrate,pH7.0)、5×Denhardt溶液、1% SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いて42℃でインキュベーションし、その後0.1×SSC、0.1% SDSを用いて68℃で洗浄する条件である。更に好ましいストリンジェントな条件としては、ハイブリダイゼーション液として50%ホルムアルデヒド、5×SSC(0.15M NaCl,15mM sodium citrate,pH7.0)、1×Denhardt溶液、1%SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いる条件を例示することができる。
改変DNAの他の例として、配列番号1に示される塩基配列において1若しくは複数の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む塩基配列からなり、かつキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを挙げることができる。塩基置換などの変異は複数の部位に生じていてもよい。ここでの「複数」とはアミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、2〜40個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個である。尚、このような改変にはイントロン部分の削除、5’末端、3’末端、又はその他の部位への制限酵素切断配列の導入や、シグナルペプチドをコードする配列の付加などが含まれる。
具体例としては、配列番号3に示される、イントロンを除いた塩基配列を有するDNAを挙げることができる。
以上のようなキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼと実質的に同一のタンパク質をコードする改変DNAは、例えば部位特異的変異法を用いて特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むようにキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードするDNAを遺伝子工学的に改変することによって得られる。また、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を保有する糸状菌を紫外線で処理し、その後改変された遺伝子を単離することなど、公知の変異処理を利用した方法によっても取得することができる。
尚、上記のような塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位等の変異にはキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼを保持する微生物の個体差、種や属の違いに基づく場合など、天然に生じる変異も含まれる。
例えば、天然に存在する糸状菌(例えばアスペルギルス・オリゼ)がこのような改変DNAを有する場合には当該糸状菌からゲノム(染色体)DNAを抽出し、これを適当な制限酵素で処理した後に、配列番号1のDNA又はその一部をプローブとしたスクリーニングにおいてストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAを選択、単離することによって得ることができる。また、改変DNAを保持するクローンを含むゲノム(染色体)DNAライブラリーを用いて、配列番号1のDNA又はその一部をプローブとしてストリンジェントな条件下でスクリーニングすることによっても得ることができる。
本発明の選択マーカー遺伝子を用いて、糸状菌の形質転換に利用できる組換えベクターを構築することができる。即ち、本発明の他の局面は上記の選択マーカー遺伝子を有する組換えベクターに関する。ここでのベクターには発現を所望するタンパク質(目的タンパク質)をコードする遺伝子が既に組み込まれたもの、及び組み込まれていないものの両者を含む。
以下に組換えベクターの構築方法を具体的に示す。
<2>組換えベクターの構築
糸状菌を形質転換するための組換えベクターは、例えば糸状菌の形質転換に利用可能な市販のベクターのクローニングサイトに上記の選択マーカー遺伝子を挿入することにより構築することができる。このようにして構築されたベクターに発現を所望するタンパク質(以下、「目的タンパク質」ともいう)をコードする遺伝子を挿入することにより目的タンパク質の生産系に利用できる組換えベクターを得ることができる。ここでの目的タンパク質の種類は限定されず、例えばα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ等の糖質関連酵素、キモシン等のプロテアーゼ、リパーゼなどを挙げることができる。また、目的タンパク質は同種タンパク質であっても異種タンパク質であってもよい。ここでの同種タンパク質とは形質転換に供される糸状菌が本来的に産生するタンパク質を意味し、異種タンパク質とは形質転換に供される糸状菌が本来は産生しないタンパク質、即ち外来的にそれをコードする遺伝子が導入されることにより初めて産生されるタンパク質を意味する。
ここで、目的タンパク質をコードする遺伝子は、例えば宿主と同種の遺伝子のように形質転換体において機能するプロモーターを既に含んでいる場合にはそのままベクターに挿入することによって使用することができる。一方、異種遺伝子又は同種の遺伝子であってもプロモーターを含んでいない遺伝子の場合は、通常形質転換体において機能するプロモーターを目的タンパク質のコード領域の上流に連結する必要がある。
本発明において「組換えベクター」とは、それを用いて形質転換を行った場合にその少なくとも一部(例えば目的タンパク質をコードする遺伝子及び選択マーカー遺伝子)が宿主染色体に組み込まれるもの、及び宿主内でプラスミドの状態で存在し得るものが含まれる。
ベクターへの選択マーカー遺伝子の挿入、目的タンパク質をコードする遺伝子の挿入、プロモーターの挿入、目的タンパク質をコードする遺伝子とプロモーターの連結などは常法で行うことができる。
ベクターDNAの調製、ベクターDNAと挿入DNAとの連結(ベクターの構築)、或いは組換えDNAの調製などの容易性を考慮すれば大腸菌等の微生物細胞中で自律複製可能なベクターを用いることが好ましい。
<3>形質転換体の取得
以上の組換えベクターは糸状菌の形質転換に利用される。即ち、以上の組換えベクターを用いて糸状菌の形質転換体の調製方法を構築することができる。具体的には、上記の選択マーカーを含む組換えベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損する糸状菌を形質転換し、ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する、ことを特徴とする糸状菌の形質転換体の調製方法が提供される。
また、目的タンパク質をコードする遺伝子が挿入された組換えベクターで形質転換された形質転換体を、当該構造遺伝子を発現可能な条件で培養することにより目的のタンパク質を産生させることができる。培地は使用する宿主に応じて適切なものが用いられる。例えば市販の各種培地又はこれらにアルギニン、ウリジン等の形質転換体の生育、選択、タンパク質の発現促進などに必要な成分を添加した培地を用いることができる。
所望時間培養した後の培養液又は菌体より目的のタンパク質を回収することができる。即ち、分泌型タンパク質であれば培養液より、それ以外であれば菌体内より回収することができる。培養液から回収する場合には、例えば培養上清をろ過、遠心処理して不溶物を除去した後、硫安沈殿等の塩析、透析、各種クロマトグラフィーなどを組み合わせて分離、精製を行うことにより目的のタンパク質を取得することができる。他方、菌体内から回収する場合には、例えば菌体を加圧処理、超音波処理などによって破砕した後、上記と同様に分離、精製を行うことにより目的のタンパク質を取得することができる。尚、ろ過、遠心処理などによって予め培養液から菌体を回収した後、上記一連の工程(菌体の破砕、分離、精製)を行ってもよい。
形質転換に供される宿主糸状菌の種類は特に限定されず、アスペルギルス属(アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・ニドランス)、ペニシリウム属、トリコデルマ属、リゾプス属等に分類される糸状菌を用いることができる。好ましくはアスペルギルス属の糸状菌が用いられる。中でもアスペルギルス・オリゼ、又はニガーを用いることが安全性点から好ましい。尚、形質転換に供される宿主糸状菌はキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損している必要がある。
組換えベクターの宿主糸状菌への導入(形質転換)は公知の方法で行うことができる。例えば、プロトプラスト化した菌体を用いたTurnerら方法(Gene,36,321−331(1985))により行うことができる。その他、五味らの方法(Agric.Biol.Chem.,51,323−328(1987))などを採用してもよい。
ここで、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼはNAD合成経路において作用する酵素であり、種ないし属間での保存性が高いものと予想されることから、上記のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子はアスペルギルス・オリゼに限らず糸状菌一般用の選択マーカーとして利用できると考えられる。
また、他の糸状菌由来のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子についても同様に糸状菌一般用の選択マーカーとして利用できると考えられる。これらのことから、本発明の他の局面は以下に示す糸状菌組換え用ベクター、糸状菌の形質転換体の調製方法、糸状菌を利用したタンパク質の生産方法を提供する。
即ち組換えベクターとしては、糸状菌由来のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を選択マーカーとして含む組換えベクターである。
形質転換体の調製方法としては、糸状菌由来のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を選択マーカーとして含む組換えベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼを欠損する糸状菌を形質転換し、ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する、ことを特徴とする形質転換体の調製方法である。
タンパク質の生産方法としては、糸状菌由来のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子及び目的のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損する糸状菌を形質転換する工程、ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する工程、選択された形質転換体を、前記目的のタンパク質を産生可能な条件で培養する工程、及び産生されたタンパク質を回収する工程、を含むタンパク質の生産方法である。
ここでの使用できるベクターの種類、ベクターの構築方法、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼを欠損する糸状菌の調製方法などについては、上記のアスペルギルス・オリゼのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を選択マーカーとして用いる場合と同様である。尚、本発明における糸状菌とは広義の糸状菌を意味し、酵母も包含する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例では、特に記載しない限り制限酵素およびその他の遺伝子操作用酵素として宝酒造株式会社または東洋紡績株式会社の製品を用いた。尚、酵素の反応条件等は添付の取り扱い説明書に従った。
また、本実施例では合成オリゴDNAとして宝酒造またはインビトロジェンで合成されたものを使用し、塩基配列の決定はABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)、PCR反応はサーマル・サイクラー(パーキンエルマージャパン社製)を用いてそれぞれ行った。
一般的な遺伝子操作には大腸菌DH5α(東洋紡績株式会社製)、プラスミドpUC119(宝酒造株式会社製)を用いた。
[実施例1]突然変異の誘導
アスペルギルス・オリゼ(以下、「A.オリゼ」ともいう)IFO30113株(財団法人発酵研究所)をツアペックドックス(0.2% NaNO、0.1% KHPO、0.05% KCl、0.05% MgSO・7HO、2%グルコース(pH5.5))プレートへ植菌し、30℃で5日間培養して分生子を着生させた。着生した分生子を胞子懸濁用溶液(0.01% tween80、0.8% NaCl)に懸濁して綿で濾過し、濾液を3000rpmで5分間遠心して分生子を回収した。この分生子を1×10spores/mlなるように0.8% NaCl溶液に懸濁してガラスシャーレに拡げ、UVを1〜3分間照射することにより突然変異を誘導した。UV照射後、突然変異誘導処理した分生子を回収し、YPD培地(1%酵母エキス、2%ポリペプトン、2%グルコース)では生育するがツアペックドックス培地では生育しない栄養要求性を示す92−1株を単離した。
[実施例2]A.オリゼ92−1株の栄養要求性の決定と欠失遺伝子の推定
実施例1で取得したA.オリゼ92−1株の栄養要求性を決定し、さらに欠失遺伝子を推定した。まず、ツアペックドックス培地に2%カザミノ酸、2%酵母エキス、又は2%ビタミンフリーカザミノ酸(すべてDIFCO社)を添加した3種類のプレートを用意した。これらのプレートに実施例1で単離した92−1株を点状に植菌して、変異株の生育の有無によりアミノ酸、核酸、またはビタミン要求性のどれに属するかを検討したところ、ビタミン要求性であることが分かった。
次に、ツアペックドックスプレートに92−1株の胞子懸濁溶液を拡げて、その上にチアミン、リボフラビン、ピリドキシン、パントテン酸カルシウム、パラアミノ安息香酸、ニコチン酸、コリン、葉酸、ビオチン、イノシトールの各物質の溶液をピペットで滴下し、その周辺の生育の反応を検討した。その結果、ニコチチン酸要求性であることが分かった
最後に、ニコチン酸を添加したプレートと添加していないプレートに92−1株を植菌してニコチン酸の有無と生育の有無が一致することを確認した。以上の検討の結果、A.オリゼ92−1株の要求物質はニコチン酸と決定された。
ここで、ニコチン酸の代謝経路を調べたところ、ニコチン酸はNAD合成に関わるNADサイクルを構成する物質の一つであった。一方、NADサイクルにおいて二コチン酸の一つ上流に位置するニコチンアミドを培地に添加して92−1株の生育をみたところ生育が可能であった。これらのことから、92−1株ではNADサイクルにおける各合成反応は正常に行われることが推定されるとともに、NADサイクルへのニコチン酸モノヌクレオチドの供給、即ちキノリン酸からニコチン酸モノヌクレオチドの合成が正常に行われないものと推定された。換言すれば、92−1株はこの反応を触媒する酵素であるキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの欠損株であることが推定された。
[実施例3]A.オリゼからの染色体DNA抽出
A.オリゼIFO30113株(財団法人発酵研究所)からの染色体DNAの調製を以下の方法で行った。まず、A.オリゼIFO30113株をYPD培地で一晩振とう培養後、得られた菌体をブフナー漏斗とNo.2のろ紙(アドバンテック社製)で集めた後、滅菌水で洗浄した。余分な水分を除去した後、−80℃で凍結し、FREEZONE(LABCONCO社)を用いて乾燥した。凍結乾燥後、1mmのガラス玉を加えて、マルチビーズショッカー(安井器械社)を用いて2000rpm、5分間の条件で破砕して微粉末状にした。この菌体破砕物に抽出溶液〔1%ヘキサデシルメチルアンモニウムブロマイド、0.7M NaCl、50mM Tris−HCl、10mM EDTA、1% β−メルカプトエタノール〕を加えて撹拌した後、室温で30分間放置した。得られた溶菌液をフェノール/クロロホルム抽出して夾雑するタンパク質を除去した後、等量のイソプロパノールを加えて、DNAを沈殿させた。この沈殿物を0.1mg/mlのRNaseを含むTE溶液に溶解して、37℃で30分間反応させた。その後、さらに0.2mg/mlのproteinase Kを含むTE溶液を加え、37℃で30分間反応させた。この溶液をフェノール/クロロホルム抽出した後、2.5倍量の冷エタノールで沈殿させた。この沈殿物を70%エタノールでリンスして乾燥後、TE溶液に溶解したものを染色体DNA溶液とした。
[実施例4]キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(QPRT)固有PCR断片の合成
A.オリゼのESTデータベース(http://www.aist.go.jp/RIODB/ffdb/index.html)に登録されている塩基配列を用いてBlast検索を行い、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼと相同性の高いタンパク質をコードする塩基配列を検索した。その結果、ニューロスポラ・クラッサの推定ニコチン酸ヌクレオチドピロフォスフォリラーゼ(キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ)と相同性の高いタンパク質をコードする塩基配列をもつ3つのクローンが見つかった。これらのクローンの塩基配列を参考にして、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子固有のPCR断片調製用のプライマーを以下のとおり設計した。
5’末端側プライマー
Figure 0004330452
3’末端側プライマー
Figure 0004330452
これらのプライマー及び鋳型として実施例3で取得した染色体DNAを用いて、94℃ 30秒、54℃ 30秒、72℃ 1分30秒を1サイクルとして30サイクルのPCR反応を行った。その結果、約1100塩基対のDNA断片(PCR断片)を取得した。
[実施例5]A.オリゼの遺伝子ライブラリーの構築
まず、実施例3で調製した染色体DNAをEcoRI、EcoRV、PstI、BamHI、XhoI、HindIII、XbaI、およびそれぞれの制限酵素とEcoRIを組み合わせて反応させた後、各反応物をアガロースゲル電気泳動に供した。続いて、実施例4で取得したDNA断片をプローブとしてサザンブロット解析を行った。その結果、HindIII消化によって、約4800塩基対付近に単一のバンドが得られることが確認できた。
次に、染色体DNAをHindIIIで完全消化後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供して約4500から5000塩基対の長さの断片を回収、精製した。これを、pUC119のマルチクローニングサイトのHindIII部位に挿入して、大腸菌に形質転換し、遺伝子ライブラリーとした。
[実施例6]遺伝子ライブラリーのスクリーニング
実施例5で作製した遺伝子ライブラリーからQPRT遺伝子をスクリーニングした。まず、実施例5で作製したA.オリゼIFO30113株の遺伝子ライブラリーを、実施例4で取得したPCR断片をプローブとして用いたコロニーハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。コロニーハイブリダイゼーションを行う際のプローブのラベリングおよびシグナルの検出はDIG核酸検出キット(ロシュ社製)を用いて行った。操作は添付の説明書に従って行った。
スクリーニングの結果、20株のクローンが得られた。それぞれのクローンからプラスミドを調製し、各プラスミドの大きさおよび部分塩基配列を決定したところ、これらのクローンは全て同一のプラスミドを有していた。このプラスミドをpUQと名付けた。
[実施例7]QPRT遺伝子のcDNAの調製
(7−1) A.オリゼIFO30113株からの全RNAの抽出
A.オリゼIFO30113株からの全RNAの調製を次のように行った。まず、A.オリゼをYPD培地で20時間振とう培養後、得られた菌体をブフナー漏斗とNo.2のろ紙(アドバンテック社)で集めて滅菌水で洗浄した。余分な水分を除去した後、乳鉢と乳棒を用いて液体窒素中で微粉末状にした。この菌体破砕物に1mlのTRIzol試薬(インビトロジェン社製)を加えて懸濁し、チューブに移した。5分間静置後、0.2mlのクロロホルムを加えてよく撹拌し、室温で3分間静置した。これを遠心して上層と下層に分離し、上層を別のチューブに移した。続いて0.5mlのイソプロパノールを加えて、室温で10分間静置した。遠心処理した後、上清を除き、ゲル状の沈殿物を得た。75%エタノールを1ml加えて撹拌した後、遠心処理した。上清を取り除いてRNaseフリーの水に溶かしたものを全RNA溶液とした。
(7−2) cDNA合成
以下のRT−PCRの操作にはSuperScript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(インビトロジェン社製)を用いた。(7−1)で抽出した全RNA溶液を用いて、RNA溶液1μl、10mM dNTP 1μl、oligo dT primer 1μl、HO 7μlからなる反応系を調製した。この反応系を65℃で5分間加熱後、急冷して氷中に1分間静置した。次に10×RT buffer 2μl、25mM MgCl 4μl、0.1M DTT 2μl、RNase inhibitor 1μl、を添加して42℃で2分間静置した後、1μlのSuperScriptII RTを添加して42℃で50分間反応させた。その後、70℃で15分間静置して反応を止めた後、1μlのRNaseHを加えて37℃で20分間反応させ、First−Strand DNA溶液を得た。一方、以下のプライマーを合成した。
5’末端側のプライマー
Figure 0004330452
3’末端側のプライマー
Figure 0004330452
これらのプライマー及び鋳型として上記の様に調製したFirst−Strand DNAを用いて、94℃ 30秒、54℃ 30秒、72℃ 1分30秒を1サイクルとして25サイクルのPCR反応を行った。その結果、約1000塩基対のcDNA断片を取得した。
[実施例8]QPRT遺伝子の配列解析
次に、QPRT遺伝子の塩基配列を解析した。まず、実施例6で得たpUQについて、Deletion Kit for Kilo−Sequencing(TAKARA社)を用いて各種Deletionクローンを作製した。各Deletionクローンについてシークエンシングを行い、全コード領域(1094bp)の塩基配列(配列番号1)を決定した。また、実施例7で合成したcDNAについてもシークエンシングを行い、全塩基配列(配列番号3)を決定した。pUQ(染色体DNA)の配列とcDNAの配列を比較した結果、QPRT遺伝子はイントロンを2箇所含むことが分かった。
一方、ニコチン酸要求性を示す92−1株の染色体DNAの塩基配列を調べたところ、QPRT遺伝子(配列番号1)の711番目のアデニンがチミンに変異していた。この変異によって、配列番号2に示すアミノ酸配列の186番目のリジンが終止コドンに置き換わっており、この一塩基置換がニコチン酸要求性を示す原因であると断定された。
[実施例9]A.オリゼ92−1株を宿主とした形質転換
プラスミドpUQを用いてA.オリゼ92−1株の形質転換を行った。まず、A.オリゼ92−1株をYPD培地で一晩振とう培養した後、得られた菌体を細胞壁溶解液〔20mg/ml Yatalase(宝酒造社),0.8M NaCl,10mMリン酸緩衝液(pH6.0)〕に懸濁し、30℃で1〜2時間緩やかに振とうすることによりプロトプラスト化させた。得られたプロトプラストをナイロンフィルターで濾過することにより、残存する菌体を除去した。次にこのプロトプラスト及びpUQを用いて、Turnerらの方法〔Gene,36,321−331(1985)〕によりコンピテントセルの調製および形質転換を行い、ツァペック・ドックス培地で生育させた。対照群としてpUQの代わりにpUC119を用いた形質転換体を用意した。
形質転換体の栄養要求性を調べた結果、pUQによる形質転換体はニコチン酸を添加していない培地でも生育が可能であった。即ち、pUQによる形質転換によってA.オリゼ92−1はニコチン要求性を示さなくなった。一方、対照群であるpUC119による形質転換体はニコチン酸要求性を示し、ニコチン酸を含まない培地上では全く生育できなかった。この結果より、pUQが保持するキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(QPRT)は、糸状菌に対する有効な選択マーカーとして利用できることが確認された。
産業上の利用の可能性
本発明により、糸状菌の形質転換体の選択に利用できる新規な選択マーカー遺伝子が提供される。また、当該選択マーカー遺伝子を欠損した糸状菌株が提供される。本発明の選択マーカーは遺伝的解析に適した表現型のはっきりした遺伝子である。本発明の選択マーカー遺伝子を利用することにより、ニコチン酸又はニコチンアミドの要求性を指標として糸状菌の形質転換体を選択することが可能となる。即ち、本発明によればニコチン酸などの要求性を指標とした形質転換系を構築できる。かかる形質転換系は、例えば糸状菌の遺伝子工学的育種、遺伝子情報解析、糸状菌を宿主としたタンパク質の生産に利用できる。
【配列表】
Figure 0004330452
Figure 0004330452
Figure 0004330452
Figure 0004330452
Figure 0004330452
Figure 0004330452
Figure 0004330452

Claims (5)

  1. 以下の(1)又は(2)のDNAからなる選択マーカー、
    (1)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA、
    (2)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1若しくは2〜10個の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む塩基配列からなり、かつキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  2. 請求項1の選択マーカーを含む、組換えベクター。
  3. 請求項2の組換えベクターで形質転換された糸状菌形質転換体。
  4. 請求項1の選択マーカーを含む組換えベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損する糸状菌を形質転換し、ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する、ことを特徴とする形質転換体の調製方法。
  5. 請求項1の選択マーカー及び目的のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクターでキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損する糸状菌を形質転換する工程、
    ニコチン酸又はニコチンアミド要求性を指標として形質転換体を選択する工程、
    選択された形質転換体を、前記目的のタンパク質を産生可能な条件で培養する工程、
    産生されたタンパク質を回収する工程、
    を含むタンパク質の生産方法。
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