JPH06223351A - 磁気ヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 浮上型の磁気ヘッドであるサイドレール型モ
ノリシックヘッドにおける磁気ギャップ部分の機械的強
度とインダクタンスの低減を図る。 【構成】 少なくともフェライト１よりなる浮上スライ
ダーの磁気ギャップ２が存在する側の側面に低融点ガラ
スよりなる接着層５を介して補強コア６を接着した構造
とする。この補強コア６は接着層５を介して、磁気ギャ
ップ２を形成する２個のヘッドコア半体と接しており、
予め巻線用の溝９が形成されている。また巻線用に、溝
ではなく巻線用の穴が形成された補強コアを用いること
で巻線部の磁路の断面積を小さくすることができ、低イ
ンダクタンス化が達成される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はハードディスク装置等に
用いられる磁気ヘッドにおいて、磁気ギャップを浮上ス
ライダーの側面近傍に有するサイドレール型モノリシッ
クヘッドと呼ばれる浮上型の磁気ヘッドに関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】ハードディスク用磁気ヘッドには、浮上
スライダーと磁路の大部分を強磁性のフェライトで形成
されたモノリシックヘッドと呼ばれる構造の磁気ヘッド
がある。モノリシックヘッドには、浮上スライダーの両
側面と中央に３本の浮上面(浮上レール)を有し、中央の
浮上レールに磁気ギャップが配置された３レール型と、
２本の浮上面(浮上レール)を浮上スライダーの両側面に
有し、片側の浮上レールに磁気ギャップが配置された２
レール型とが知られている。

【０００３】この２レール型がサイドレール型とよばれ
ており、３レール型と比較してハードディスクの内周側
に記録が可能となるため、記録容量を高めることができ
るという特長を有している。サイドレール型モノリシッ
クヘッドでは、記録再生を行う磁気ギャップの正面のみ
でなく磁気ギャップの両側面にも露出した構造になって
おり、この磁気ギャップ部分の接着に関して機械的な強
度が必ずしも十分に強くはない。

【０００４】特に磁気ギャップ近傍、すなわちフェライ
トと磁気ギャップの間に金属磁性体を配したメタル・イ
ン・ギャップ型磁気ヘッド(ＭＩＧヘッド)と呼ばれる構
造では、電磁変換特性に優れているが、磁気ギャップの
両側が金属磁性体となるために、フェライトだけで構成
された磁気ヘッドよりも接着部の強度が比較的弱くな
り、量産時の歩留まりが低下する。

【０００５】一方、磁気記録システムの高周波化が進む
中で、電気的な回路系の共振点を高周波側に高める必要
が生じ、磁気ヘッドのインダクタンスを下げることが要
望されている。この磁気ヘッドの低インダクタンス化を
図るためには、巻線部の磁路の断面積を小さくする必要
があるが、巻線部の磁気コアの断面積を小さくすること
は巻線部の機械的な強度の低下を生じる。したがって、
一見無関係にも思えるが、磁気ヘッドの低インダクタン
ス化の観点からは、巻線部の機械的強度を向上させるこ
とが必要となる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】近年、記録密度の向上
に伴ってトラック幅が狭くなり、サイドレール型磁気ヘ
ッドのように、磁気ギャップが正面ばかりでなく両側面
にも露出した構造では、磁気ギャップの接着断面積が小
さくなり、接着強度がますます弱くなる傾向がある。特
に、電磁変換特性に優れたＭＩＧヘッドを高密度記録用
のサイドレール型モノリシックヘッドに適用する場合、
量産性や信頼性の点で磁気ギャップ部分の機械的な強度
の向上が必要となっていた。

【０００７】さらに、これとは別に磁気ヘッドの低イン
ダクタンス化が進む中で、巻線部の機械的な強度改善も
望まれていた。

【０００８】本発明は以上のような点に鑑み、サイドレ
ール型モノリシックヘッドにおける磁気ギャップ部分の
機械的強度を向上できる構造とすることによって、量産
時における歩留まりを向上させることができる浮上型の
磁気ヘッドを提供することを目的とする。さらに、磁気
ギャップ部分ばかりでなく、同時に巻線部分の機械的な
強度も改善できる構造とすることによって、量産時の歩
留まりに優れ、低インダクタンス化が可能な浮上型の磁
気ヘッドを提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達
成するために、浮上型の磁気ヘッドは、フェライトより
なる浮上スライダーの少なくとも磁気ギャップが存在す
る側の側面に接着層を介して非磁性の補強コアを有し、
前記補強コアが前記接着層を介して磁気ギャップを形成
する２個のヘッドコア半体に接しており、前記浮上スラ
イダーの巻線穴近傍の前記補強コアに溝または穴が形成
されていることを特徴とする。

【００１０】また、上記浮上型の磁気ヘッドにおいて、
補強コアとしてα−Ｆe₂Ｏ₃もしくはＴiＯ−ＣaＯもし
くはＡlＯ−ＴiＣを主成分とするセラミック系の補強コ
アを用いる。

【００１１】

【作用】本発明の浮上型の磁気ヘッドは、フェライトと
金属磁性体等で形成されたサイドレール型モノリシック
ヘッドの浮上スライダーにおいて、磁気ギャップが存在
する側の側面に接着層を介して非磁性の補強コアを配し
た構造となっている。この補強コアが接着層を介して磁
気ギャップを形成する２個のヘッドコア半体に接してお
り、磁気ギャップの機械的な接着強度を強いものにして
いる。

【００１２】ここで、単に補強コアを側面に接着するだ
けでは巻線ができないため、浮上スライダーの巻線穴近
傍において補強コアに溝が形成され、巻線が施しやすい
構成となっている。この補強コアの溝は加工によっても
成形によっても予め容易に形成しておくことができる。

【００１３】以上のような構造とすることによって、磁
気ギャップ部分の剥がれや、折れが生じにくくなり量産
性に優れた浮上型の磁気ヘッドとなる。

【００１４】また、上述の構造により磁気ギャップの機
械的強度が向上するが、この際の補強コアにおいて、巻
線用の溝に代わり、巻線用の穴を設ければ磁気コアにお
ける巻線部分の機械的強度も向上させることができて、
巻線部分の磁路の断面積を小さくすることができるた
め、結果として浮上型の磁気ヘッドの低インダクタンス
化を図ることが可能となる。

【００１５】したがって本発明の浮上型の磁気ヘッド
は、サイドレール型モノリシックヘッドにおいて、磁気
ギャップを形成する２個のヘッドコア半体に巻線用溝を
有する補強コアを接着することにより、磁気ギャップの
機械的強度を向上させることができる。さらに本発明の
浮上型の磁気ヘッドでは、この補強コアにおいて、巻線
用溝の代わりに巻線用穴を用いることで磁気ギャップ部
分のみならず、磁気コアの巻線部分の機械的強度をも向
上させることができる。

【００１６】以上の磁気ヘッドにおいて、補強コアとし
てα−Ｆe₂Ｏ₃もしくはＴiＯ−ＣaＯもしくはＡlＯ−Ｔ
iＣを主成分とするセラミック系の補強コアを用いる場
合、これらの材料は記録媒体であるハードディスクとの
接触等の点で良好な耐久性を有しているため、極めて信
頼性が高い浮上型の磁気ヘッドを得ることができる。特
にα−Ｆe₂Ｏ₃(アルファヘンマタイト)系のセラミック
材料は、浮上スライダーに用いられる強磁性のＭn−Ｚn
系フェライトに対して熱膨張率を近くすることができる
ため、これを補強コアとして用い、浮上スライダーに低
融点ガラスによる接着を行った場合に良好な接着性が得
られる。

【００１７】

【実施例】本発明の各実施例を図面を参照しながら説明
する。

【００１８】(実施例１)図１は本発明の第１の実施例に
おける浮上型の磁気ヘッドの構成を示す斜視図であり、
ハードディスク用の浮上型の磁気ヘッドである。

【００１９】図１の磁気ヘッドは、浮上スライダーと磁
路の大部分が強磁性のフェライト１で形成されたモノリ
シック構造を有しており、磁気ギャップ２近傍のみに高
飽和磁化の金属磁性体３が配されたＭＩＧヘッドとなっ
ている。

【００２０】この磁気ヘッドは、浮上スライダーの両側
面(サイド)のみに２本の浮上面４ (浮上レール)を有
し、片側の浮上レールに磁気ギャップ２が配置された２
レール型となっており、サイドレール型モノリシックヘ
ッドと呼ばれている。

【００２１】図１の磁気ヘッドの特徴は、フェライト１
よりなる浮上スライダーの磁気ギャップ２が存在する側
の側面に低融点ガラスよりなる接着層５を介して、非磁
性のセラミックよりなる補強コア６が設けられている点
である。この補強コア６は接着層５を介して磁気ギャッ
プ２を形成する２個のヘッドコア半体に接しており、磁
気ギャップ２の部分における磁気コアの剥がれや、折れ
といった問題が生じにくい構造になっている。

【００２２】ここで浮上スライダーの巻線穴８近傍の補
強コア６には溝９が形成されており、このような溝９を
加えることで巻線７を容易に行うことができるようにな
っている。さらに補強コア６の溝９の形成は浮上スライ
ダーに接着する前に、予め機械加工等で容易に形成して
おくことができる。

【００２３】以上の第１の実施例の磁気ヘッドは、まず
高融点ガラスによる加熱接着により磁気ギャップ２を形
成し、その後に低融点ガラスを接着層５に用いた加熱接
着で補強コア６を浮上スライダーに接着する方法で容易
に作製できる。ここで述べている高融点ガラスとは、融
点が640〜720℃程度のものであり、低融点ガラスとは融
点が480〜600℃程度の鉛入りガラス等である。

【００２４】また磁路を構成し、浮上面４にも用いられ
るフェライト１としては、多結晶もしくは単結晶のＭn
−Ｚn系フェライトが用いられる。さらに金属磁性体３
としては、Ｆe−Ａl−Ｓi系合金もしくはＦe−Ｚr−(Ｎ
b，Ｔa)−Ｎ系の窒化合金膜等が用いられる。

【００２５】ここで補強コア６の材質の選択は、浮上型
の磁気ヘッドの信頼性を確保する上で重要な問題である
が、少なくともα−Ｆe₂Ｏ₃もしくはＴiＯ−ＣaＯもし
くはＡlＯ−ＴiＣを主成分とするセラミック系の補強コ
アを用いる場合は、信頼性が高い磁気ヘッドを得ること
ができる。特にα−Ｆe₂Ｏ₃(アルファヘンマタイト)系
のセラミック材料は、浮上スライダーに用いられる強磁
性のＭn−Ｚn系フェライトに対して熱膨張率を近くする
ことができるため、これを補強コア６として用い、浮上
スライダーに接着層５として低融点ガラスを用いた場合
に、特に良好な接着性が得られた。

【００２６】以上述べてきた本実施例の浮上型の磁気ヘ
ッドは、ハードディスク装置用のサイドレール型モノリ
シックヘッドの側面に補強コアを設け、磁気ギャップ部
分の機械的強度を向上させるものである。これらの磁気
ヘッドを試作した際の歩留まり、すなわち良品率は68％
であり、従来の補強コアなしのサイドレール型磁気ヘッ
ド作製時の歩留まりである52％と比較して大幅に改善さ
れた。この歩留まりの向上は、主に磁気ギャップ部分の
剥がれや、磁気ギャップを境としたヘッドコアの折れ等
が低減されたことに起因しており、本発明の効果が如実
に現れたものと考えられる。したがって本発明の磁気ヘ
ッドを作製する場合、補強コアの接着工程は加わるけれ
ども量産性は向上しているのである。

【００２７】(実施例２)図２は本発明の第２の実施例に
おける浮上型の磁気ヘッドの構成を示す斜視図であり、
ハードディスク用の浮上型の磁気ヘッドである。

【００２８】図２の磁気ヘッドの場合は図１と異なり、
巻線穴８近傍の補強コア６に溝ではなく、穴10が形成さ
れている。この穴10を有する補強コア６は予めセラミッ
クの加圧成形などにより作製されている。

【００２９】このような構造にすることによって、磁気
コアの巻線部11にも補強コア６が接着されることによ
り、磁気ギャップ２ばかりでなく、巻線７が施される巻
線部11の機械的な強度も改善されることになる。これに
より巻線部11において、図中のａで表される磁路の幅を
狭めることができ、低インダクタンスの磁気ヘッドとす
ることができる。

【００３０】例えば、トラック幅が９μm前後のサイド
レール型モノリシックＭＩＧヘッドにおいて、従来のヘ
ッド構造の場合は機械的な強度を考慮して巻線部11の幅
ａを200μm程度にしなければならなかった。この従来の
磁気ヘッドのインダクタンスは36ターンの巻線７を施し
たときに、１MHzで4.7μHと比較的高い値であった。こ
れに対して、本実施例の磁気ヘッドの構造を用いた場
合、機械的な強度を考慮しても、巻線部11の幅ａを50〜
150μm程度に狭めることができ、インダクタンスは幅ａ
が120μmで36ターンの巻線７を施したときに、１MHzで
4.2μHと低い値を示した。

【００３１】このインダクタンスの低減は、巻線部11の
磁路の幅ａを狭めることによって達成されたものであ
り、磁路の幅を狭めるためには巻線部11の機械的な強度
を考慮した本発明の浮上型の磁気ヘッドが有効なのであ
る。

【００３２】以上の第２の実施例の磁気ヘッドの作製
は、前記実施例１と同様であるので、その説明は省略す
る。

【００３３】本実施例の磁気ヘッドは、ハードディスク
装置用のサイドレール型モノリシックヘッドの側面に補
強コアを設け、磁気ギャップのみならず磁気コアの巻線
部分の機械的強度を向上させるものである。また、磁気
コアの巻線部分の磁路の断面積を小さくできるため、磁
気ヘッドの低インダクタンス化を図ることができる。こ
れらの磁気ヘッドを試作した際の歩留まり、すなわち良
品率は60％であり、従来の補強コアなしのサイドレール
型モノリシックヘッド作製時の歩留まりである52％と比
較して改善された。この歩留まりの向上は、主に磁気ギ
ャップ部分の剥がれや、磁気ギャップを境としたヘッド
コアの折れ等が低減されたことに起因しており、本発明
の効果が如実に現れたものと考えられる。したがって本
発明の浮上型の磁気ヘッドを作製する場合、補強コアの
接着工程は加わるけれども量産性は向上しているのであ
る。

【００３４】

【発明の効果】以上説明したように本発明の浮上型の磁
気ヘッドは、サイドレール型モノリシックヘッドにおけ
る磁気ギャップの機械的な接着強度が向上させることに
よって、容易に量産時の歩留まりを向上させることがで
きる。さらに本発明の浮上型の磁気ヘッドは、磁気ギャ
ップ部分ばかりでなく、巻線部分の機械的な強度も改善
できる構造とすることによって、量産時の歩留まりに優
れ、低インダクタンス化が可能な磁気ヘッドとなってい
る。

【００３５】したがって本発明の浮上型の磁気ヘッド
は、高容量のハードディスク装置に適したサイドレール
型モノリシックヘッドを容易に歩留まりよく量産するこ
とができるものであり、産業上の利用価値が高いもので
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施例に係る浮上型の磁気ヘッ
ドの構成を示す斜視図である。

【図２】本発明の第２の実施例に係る浮上型の磁気ヘッ
ドの構成を示す斜視図である。

【符号の説明】

１…フェライト、 ２…磁気ギャップ、 ３…金属磁性
体、 ４…浮上面、 ５…接着層、 ６…補強コア、
７…巻線、 ８…巻線穴、 ９…溝、 10…穴、11…巻
線部。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 フェライトよりなる浮上スライダーの少
   なくとも磁気ギャップが存在する側の側面に接着層を介
   して非磁性の補強コアを有し、前記補強コアが前記接着
   層を介して磁気ギャップを形成する２個のヘッドコア半
   体に接しており、前記浮上スライダーの巻線穴近傍の前
   記補強コアに溝が形成されていることを特徴とする浮上
   型の磁気ヘッド。
2. 【請求項２】 フェライトよりなる浮上スライダーの少
   なくとも磁気ギャップが存在する側の側面に接着層を介
   して非磁性の補強コアを有し、前記補強コアが前記接着
   層を介して磁気ギャップを形成する２個のヘッドコア半
   体に接しており、前記浮上スライダーの巻線穴近傍の前
   記補強コアに穴が形成されていることを特徴とする浮上
   型の磁気ヘッド。
3. 【請求項３】 前記補強コアとして、α−Ｆe₂Ｏ₃もし
   くはＴiＯ−ＣaＯもしくはＡlＯ−ＴiＣを主成分とする
   セラミック系の補強コアを用いたことを特徴とする請求
   項１または２記載の浮上型の磁気ヘッド。