JPH06219893A - 蒸着薄膜の作製法 - Google Patents

蒸着薄膜の作製法

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JPH06219893A
JPH06219893A JP5034349A JP3434993A JPH06219893A JP H06219893 A JPH06219893 A JP H06219893A JP 5034349 A JP5034349 A JP 5034349A JP 3434993 A JP3434993 A JP 3434993A JP H06219893 A JPH06219893 A JP H06219893A
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thin film
laser
particles
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JP5034349A
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Yukio Watabe
行男 渡部
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Mitsubishi Kasei Corp
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Publication date
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E40/00Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

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Abstract

(57)【要約】 【構成】 基板上に薄膜を蒸着により作製する方法にお
いて、目的とする薄膜を構成する金属原子の少なくとも
一つを含有するターゲットに短パルス状のエネルギービ
ームを照射して薄膜を堆積させる際、該基板のスパッタ
リング表面を下方に向け且つ基板をターゲットに対し斜
めに配置するか、もしくは、ターゲットと基板との間の
位置であってターゲット上のレーザー照射位置と基板と
を結んだ線より上方に遮蔽板を配設することを特徴とす
る蒸着薄膜の作製法。 【効果】 レーザー蒸着法により酸化物超伝導体薄膜等
の酸化物薄膜や窒化物薄膜等のセラミック薄膜を作製す
る際に安価簡便に薄膜形状を向上できるので工業的に有
用である。特に、雰囲気ガス圧に依存せず基板とターゲ
ットの距離が長い条件下で有用な蒸着速度や励起原子分
子の基板衝撃を保持しつつ、レーザー蒸着に固有な粒子
の発生を解決できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、蒸着薄膜の作製法に関
する。詳しくは、原料ターゲットに短パルス状の電磁光
線を照射して蒸発させ所定の基板上に薄膜を堆積させる
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大出力レーザーの薄膜作製への応用研究
開発が近年盛んになされている。この薄膜作製方法とし
て、レーザー蒸着法として知られている方法(例えば、
特開平2ー17685号公報、Applied Phy
sics Letters 第51巻 No.11 第
861−863頁等参照)があり、特に1987年以来
研究が活発になった酸化物超伝導体薄膜の作製への応用
が検討されている。
【0003】ところで、超伝導遷移温度(Tc)80K
以上の超伝導薄膜は公知であり、その成分は例えばイッ
トリウム等の希土類元素、バリウム等のアルカリ土類金
属元素と銅及び酸素からなる。このような超伝導薄膜
は、反応性蒸着法、反応性分子線エピタキシー(MB
E)、反応性スパッタリング法等により作製されてい
る。特に薄膜素子を作製する際には、薄膜を堆積しつつ
十分酸素、オゾン等の酸化源を供給し基板を加熱するこ
とにより、後の熱処理なしで所望の超伝導相を形成する
ことが重要である。このためには、蒸着雰囲気を自由に
選択できるレーザー蒸着法が有利である。また、この方
法はこのような酸化物超伝導体に限らず他の多くのセラ
ミックス、例えば金属元素とN、P、O、S、Se、T
e、F、Cl、Br、I等の低沸点元素の化合物の薄膜
作製にも有用であると考えられる。実際、酸化物超伝導
体薄膜の研究に刺激され、レーザー蒸着法が酸化物超伝
導体以外の他の酸化物やカルコゲナイドにも適用されつ
つある。
【0004】レーザー蒸着法、特にレーザーアブレーシ
ョンと言われる条件では、大きなエネルギー密度を持っ
たレーザーパルスをターゲットに照射して、ターゲット
材を蒸発させ、基板上にターゲット組成に近い組成を有
する薄膜を作製することができる。図7はレーザー蒸着
装置の一例を示す概略模式図である。図7を用いてレー
ザー蒸着法について説明する。
【0005】エキシマレーザー発生装置1からの紫外レ
ーザー光11は、窒素パージされた光学ボックス2から
真空槽の窓5を通って真空槽3内に入射される。なお、
レーザーとしては、例えばYAGレーザー等の他の高出
力レーザーを用いてもよい。この紫外レーザー光11は
光学ボックス2内の集光レンズ4によりターゲット6に
集光され、ターゲット6に照射される。通常、集光レン
ズ4の材料としては人工石英が用いられ、真空槽3の窓
材としては1気圧の圧力差を支える程度の厚みを有し、
この紫外レーザー光11を透過させることのできる材
料、例えば、人工石英単結晶、MgF2 単結晶,サファ
イヤ等が用いられる。ターゲット6に照射された光はタ
ーゲット表面を局所的に短時間加熱する。例えば、エキ
シマレーザーではパルス幅10〜30nsecが一般的
である。この加熱を受け、ターゲット表面から蒸発が始
まる。この蒸発物はターゲット6に対向して配置された
基板上8に向かって放出され、基板上に堆積される。タ
ーゲット6はこれを支持するターゲットホルダー7によ
り回転可能であることが好ましく、場合によってはター
ゲットホルダー7に複数のターゲットを配置し各ターゲ
ットを回転可能にしてもよく、またターゲット間の位置
を交換できる機能を有していてもよい。これによりター
ゲットが回転し、レーザーがターゲットの一部のみでな
くその全域を用いるのでレーザー蒸着速度を一定に保つ
ことが出きる。また、基板8を保持する基板ホルダー9
も回転可能とするのが好ましく、通常基板加熱手段を有
する。実際に酸化物薄膜を作製する時には真空槽3には
酸素等の酸化性ガスがガス導入口12から供給される。
このレーザー蒸着法では極めて良好な電気特性、例えば
極めて高い超伝導転移温度や臨界電流密度等が得られる
ことが報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】かかるレーザー蒸着法
では、上述のように、通常、基板はターゲットに対向し
て配置されており、薄膜上に1μm程の球状の粒子がタ
ーゲットから飛来し膜形状を著しく損ない、積層薄膜素
子作製が困難という問題点が知られていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、粒子の軌道
計算を行ない、その直径が約1000Å以上に大きな粒
子に対しては重力による軌道の変化が無視できず、ある
条件下では粗大粒子が基板に大きな鉛直速度成分をもっ
て入射することを見い出した。さらに、直径約100Å
以下の粒子においては基板到達時の粒子の運動エネルギ
ーは粒子を原子、分子に分解するに十分な単位原子分子
当たりのエネルギーを持ち、さらに、1000Å以下の
粒は固体の融点融解熱に比べ著しく低い値を持つため、
基板加熱がなされている場合には原子分子に分解する可
能性もあることが分かった。
【0008】本発明の要旨は、基板上に薄膜を蒸着によ
り作製する方法において、目的とする薄膜を構成する金
属原子の少なくとも一つを含有するターゲットに短パル
ス状のエネルギービームを照射して薄膜を堆積させる
際、該基板のスパッタリング表面を下方に向け且つ基板
をターゲットに対し斜めに配置するか、もしくは、ター
ゲットと基板との間の位置であってターゲット上のレー
ザー照射位置と基板とを結んだ線より上方に遮蔽板を配
設することを特徴とする蒸着薄膜の作製法に存する。
【0009】図1は、本発明における基板とターゲット
の配置の一例を示す模式図である。図1に示すように、
本発明においては基板8のスパッタリング表面を鉛直下
方に向け且つターゲット6に対し斜めに配置する。図1
に示したように、原子分子は図1中の直線17で示され
る軌跡もしくはこれが雰囲気ガスにより散乱され蛇行し
た軌跡を描くが、1μm程の球状の粒子は図1中の曲線
16で示される軌跡のように明瞭な放物線を描き、基板
到達時に入射速度が有限の鉛直成分を持つ。したがっ
て、基板8のスパッタリング表面を鉛直下方に向け且つ
ターゲット6に対し斜めに配置すれば、基板上に該粒子
がターゲットから飛来するのを防ぐことができるので、
良好な膜形状の薄膜を作製することができるのである。
以上の原理を式で示すと下記式(1)のようになる。
【0010】
【数1】 A=arctan(tanA0ーgL/v2(cosA0)2) …(1) 式(1)中、Aは基板への入射角度(ラジアン)、A0
はターゲットからの出射角度(ラジアン)、Lはターゲ
ット基板間距離、gは重力加速度を表す。但し、A0は
基板上の位置zと下記式(2)の関係を満たす。
【0011】
【数2】 vsinA0/g+((vsinA0/g)2ー2z/g)0.5=L/vcosA0 …(2) 式(2)中、zは基板上の鉛直方向距離成分(ターゲッ
ト上のレーザービーム照射部の下端と同一水平線上を0
と取る)を表す。Aが小さな角度であるという近似を取
ると、レーザー照射部と同一水平線上(z=0)では、
下記のようになる。
【0012】
【数3】A=Lg/2v2〜LgM〜Lgl3 ここで、Mは粒子質量、lは粒子半径を表す。なお、蒸
発原子や分子は雰囲気ガスによる散乱が無視できない
が、粒の持つ初期運動量は質量の平方、即ち半径の1.
5乗に比例して大きくなるので粒の軌跡の散乱による変
化は小さく無視することができる。除去しようとする粒
の大きさの範囲では典型的にはAは最小2度である。
【0013】同様の原理に基づき本発明のもう一つの方
法として、図2及び図3に示したように遮蔽板を取付け
てもよい。この原理は、図2に示すように遮蔽板がある
と、原子、分子は直線17で示されたような軌跡を持つ
が、粒子は曲線16で示されるように、遮蔽板があるた
めより重力の影響が出やすい軌跡をとるものが基板に到
達するようになることによる。尚、曲線18は遮蔽板が
無ければ基板に到達するが遮蔽板のために到達できなく
なった粒子の軌跡を示す。これを前記式(1)に対比さ
せると、下記式(3)のようになる。
【0014】
【数4】 A=arctan(tan(sin-1(g(LーL')/2v2))−gL/v2cos2(sin-1( g(LーL')/2v2))) …(3) ここで、L’は基板先端から遮蔽板の最もターゲットよ
りの位置までの距離であり、0<L’<Lである。
【0015】Aが小さな角度であるという近似を取る
と、L’を通過する粒子は基板到達時、次の角度を持
つ。
【0016】
【数5】A=gL/2v2+gL'/2v2 このため、遮蔽板により、基板の傾き角をgL'/2v2
だけ大きくすることができる。さらに、遮蔽板により粒
子の到達できない領域を基板近傍に形成できる。即ち、
例えばターゲット上のレーザービーム照射部の下端と同
一水平線上(z=0)に遮蔽板先端(基板からの位置
L’)を配置した場合には、少なくとも0>z>−gL
2/2v2には粒が到達しない。このため、基板をターゲ
ットに対向させ傾け無くても、0>z>−gL2/2v2
の部分には粒子のない薄膜を形成できる。より一般的に
は、レーザービーム照射部の下端と遮蔽板先端(基板か
らの位置の水平成分L’)を結ぶ線の基板ホルダーの交
点から、gL2/2v2下がった位置以上の高さには粒子
が到達しない。したがって、少なくともこの交点と交点
からgL2/2v2下がった位置の範囲では粒子が除去で
き、広い雰囲気圧範囲で原子分子が蒸着できる領域が形
成できる。なお、gL2/2v2の値はLの2乗に比例
し、例えばターゲット基板間距離Lが7cmの場合1〜
5mm程度と見積られる。
【0017】粒子の発生を防止するためには、1)基板
とターゲットの距離を長くし、2)基板の位置をターゲ
ットに対してより水平に近くし、3)入射エネルギービ
ームのエネルギー密度を小さくすること等により、ター
ゲットからの粒子の飛来速度が小さくし、4)ターゲッ
ト上の蒸発部分より、基板の位置が下にあるようにする
ことが好ましい。5)遮蔽板を用いる場合は、入射レー
ザーを妨げない範囲で遮蔽板を十分ターゲットに近付
け、ターゲット上のレーザー照射部下端から上端の間に
遮蔽板の先端が位置するようにすることが好ましく、特
に(LーL')<Lを満たすことが好ましい。但し、基板
がターゲットに対してより水平に近いほど、特に低雰囲
気圧で蒸着速度が低く、または活性化粒子や高エネルギ
ー粒子が基板に到達しにくくなり膜質が低下する問題が
あるので、基板は以下に例示されるような有限の傾きを
持つようにする必要がある。
【0018】また、一般に、基板とターゲットの距離が
長い程、蒸着速度が低く、活性化粒子や高エネルギー粒
子が基板に到達しにくいが、これは雰囲気ガス圧を低め
にすることにより補うことが可能である。特に、雰囲気
ガス圧1mtorr以下ではターゲット上のレーザーエ
ネルギー密度が1J/cm2 程度に低くても、通常プル
ームと呼ばれる活性化粒子を多く含む蒸発部分は20c
m程離れた基板にも到達することが可能である。したが
って、本発明方法は、活性雰囲気ガスを用いて反応性を
高め、低圧でも十分目的のセラミック化合物薄膜が得ら
れるようにして、基板とターゲットの距離を長くする、
例えば10cm以上にして用いるのがより好ましい。
【0019】ここで、酸化物超伝導体YBa2Cu37
をターゲットとして用いた場合を例示する。発光分光や
エネルギー分布から活性原子分子の速度は5×106
m/sと見積れる。粒子にこれと同等のエネルギーが等
分配されるとすると、2000Å3 の粒子では速度が約
400cm/sと見積れる。これは、速度フィルターの
実験ともおおよそ一致する(MRS Bulletin
/Feburary、p54(1992)参照)。基板
とターゲットの距離を7.5cm、基板のターゲット上
のレーザービーム照射部の下端と同一水平線上の位置
(z=0)への入射角度は2度となる。よって基板を下
方を向けて傾き角2度までは十分粒を除去できる。また
レーザー照射エネルギー密度を1J/cm2 以下に小さ
くする場合にはさらに傾きを5度まで大きくしても十分
粒子が除去できる。
【0020】また、粒子には特定の組成と大きさの分布
(例えばCuO、Cu粒子では直径5000Åが多い)
を持つものが多いので、これらが主たる粒子の原因であ
る場合には、この飛来速度や質量に合わせて軌道計算し
て粒子を除く最大角度を計算する。例えば、銅合金ター
ゲットを用いレーザーエネルギー1J/cm2 とした場
合、粒子の直径5000ÅのCuが主たる成分で直径4
000Å以下のものは殆どないので、基板とターゲット
の距離を10cmとすると、基板を水平から25度まで
傾けても十分に粒子が除去できる。
【0021】以上のように、与えられたターゲットと、
基板−ターゲット間距離、レーザーエネルギーで、基板
を何度傾けるのが適切かはこの例のように粒子の速度ま
たはエネルギー分布と大きさまたは質量により軌道計算
して求めることができる。しかし、この情報が無くて
も、一定の基板ーターゲット間距離で基板角度を変えた
り、基板の角度を固定し、例えば10度に、基板ーター
ゲット間距離を変えることにより、粒子が除去できる角
度や距離を決定することができる。
【0022】一般的な基板の角度としては、基板−ター
ゲット間距離7cmで約2度から20度、特に5度から
10度が好ましく、基板−ターゲット間距離15cmで
は4度から40度、特に10度から20度が好ましい。
この場合、雰囲気ガス圧は0.2torr以下が好まし
い。また、遮蔽板を併用する場合はこの角度を大きくす
ることができ、最大非併用時の2倍程度の角度まで可能
である。さらに、基板ーターゲット間距離を広げるため
には、雰囲気ガスによる蒸着気体の散乱を避けるため、
より低い雰囲気ガス圧を用いるのが好ましい。但し、ガ
ス圧を下げると膜中へのセラミック化合物を構成する気
体元素の取り込み反応が不十分な場合が多いのでO3
O、NO2 、NH3 やラジカル化やイオン化したガス成
分を雰囲気ガスとして用いることが好ましい。例えば、
基板−ターゲット間距離20cmでは、基板の角度とし
て6度から60度、特に15度から30度、ガス圧とし
てはセラミック化合物を構成する気体元素が薄膜中に十
分取り込まれる限り、1〜10mtorr以下が好まし
い。好適な条件の例としては、雰囲気ガス圧が1mto
rr程度で基板−ターゲット間距離が15cmから20
cm程度が例示される。
【0023】また、遮蔽板を用いる場合、遮蔽板の材質
としては、脱ガスや汚れがなく化学的機械的に安定な材
料、例えばアルミニウム、銅、ステンレス、セラミック
板が用いられる。また、目の大きさが5000Å以下、
好ましくは2000Å以下の網状の板を用いてもよい。
短パルス状のエネルギービームとしては、パルス状のレ
ーザー光線や電子線ビームが好ましく挙げられる。特に
は、レーザー光線が好ましく、用いられるレーザー光の
波長はターゲットに吸収されれば紫外光である必要はな
いが、一般に190nmから350nmの光は多くの物
質に吸収され易くまた、パルス当たりの出力の大きなレ
ーザーが得易い。このような発生源としては、エキシマ
レーザー、YAGレーザーに非線形光学素子を組合わせ
て波長を短かくしたもの、Arイオンレーザー、炭酸ガ
スレーザー等が用いられる。特にエキシマレーザー、Y
AGレーザーに非線形光学素子を組合わせたものが最も
一般的である。レーザーの出力はパルスあたり10〜1
000mJ程度が好ましく、より重要なのはターゲット
上のエネルギー密度であり、0.01〜10J/c
2 、一般的には1J/cm2 程度が用いられる。この
パルス幅としては、10〜100nsec程度である。
【0024】また成分ガスとしては、例えば、酸化物を
形成するのであれば、O2 、O3 、O、NO2 、N2
等が用いられ、硫黄化合物であれば、S、S2n(n=1
〜4)、SF6 等が用いられ、セレン化合物であれば,
Se、Se2n(n=1〜4)、SF6 等が用いられ、テ
ルル化合物であれば、Te蒸気、TeF6 等が用いら
れ、窒化物であれば、N2 、NH3 、Nを用いることが
できる。
【0025】ターゲットとしては、目的とする蒸着薄膜
と同一組成のセラミックスや金属元素組成が同一である
混合物や燒結体が用いられる。さらに、複数のターゲッ
トにレーザー照射して同時蒸着や逐次蒸着する場合は、
各ターゲットが少なくとも目的とする蒸着薄膜の金属元
素の一種類以上を含むことが重要である。また、これら
のターゲットは使用するレーザー光を吸収しまた反射が
極端に多くないことが必要である。また、できる限り爆
発的膨張を避けるために、ターゲット内の気体成分はで
きるだけ抜き取っておくことが好ましい。
【0026】また、図7の装置を用いて説明すると、以
下のような点を留意することがさらに好ましい。エキシ
マレーザー発生装置1から集光レンズ4までは光路長を
50cm以上にして平行性のよいレーザービーム11を
集光レンズ4に到達させ、ターゲット6上のビーム形状
が単純でエネルギー分布が均一であるようにすることが
好ましい。このために、ビームを反射鏡14により曲げ
て集光レンズ4に到達させたり、エキシマレーザー発生
装置1前に絞り機構を置いて主ビーム部のみ透過させて
もよい。さらに、ターゲット上のビーム形状を単純でエ
ネルギー分布を均一にするため、さらに集光レンズは短
い焦点距離のものを選び、ターゲット6表面の少し手前
に焦点が合うようにすることが好ましい。
【0027】さらに、ターゲット6のレーザー照射によ
る劣化を防ぐため、ターゲット回転に加えて、反射鏡1
4を電気的に振動させて、ターゲット上をレーザー走査
させることも好ましい。この場合、ターゲット上をレー
ザーがランダムに走査するようにするためレーザーの走
査はターゲット回転と非同期の方がむしろ好ましい。タ
ーゲットホルダー7の材質としてはレーザーにより蒸発
しにくいもの、例えば熱伝導率、融点が高い純銅やジュ
ラルミン等が好ましい。
【0028】また異常放電等が起こり難いように、真空
装置内の各部分の突起部を無くしたり、ターゲットの周
りが帯電し難いように、アースを良く取っておくことも
重要である。さらに、新しいターゲットでは放電が起こ
ったり蒸着速度が変化しやすいので、シャッターをしめ
てターゲットをプレスパッターしてから蒸着を行うのも
有用である。
【0029】本発明方法が適する蒸着薄膜としては、以
下のような多くのセラミック薄膜が挙げられる。即ち、
銅酸化物超伝導体、例えばLnBa2Cu37(Ln:希
土類元素)、Bi2Sr2CanCu(n+1)(2n+4+δ)
誘電体、例えばLiNbO3、LiTaO3 、Si
34、半導体、例えばCdTe、CdSe、ZnO、Z
nS、磁性体、例えばフェライト酸化物、ガーネット酸
化物、窒化鉄等が挙げられる。
【0030】本発明で用いられる基板としては、非晶質
蒸着薄膜の作製であれば、ガラス、プラスチック、S
i、Ge、GaAs等の化合物半導体や金属でもよい
が、多結晶蒸着薄膜を作製するため基板を室温より加熱
する場合は使用する基板温度で蒸着薄膜と反応しないこ
とが重要であり、サファイヤ基板やYSZ(イットリウ
ム添加ジルコニア酸化物)等の高温でも安定で安価な基
板が用いられる。またこれらの基板上にさらに中間層を
形成したものを用いてもよい。単結晶薄膜を作製するに
は、さらに蒸着薄膜と格子整合性が重要であり、例え
ば、銅酸化物超伝導体薄膜では、MgO、SrTi
3 、LaAlO3 、NdGaO3 等の基板、NbN薄
膜ではMgO、Si等基板が用いられる。
【0031】この最適な基板−ターゲット間距離は雰囲
気ガス圧および種類、ターゲット材料、レーザーパワー
により決まり、プルームが少なくとも微かに基板に到達
するように基板−ターゲット間距離を調節することが好
ましい。また、レーザー蒸着の蒸着原子分子励起効果を
さらに高めるために、外部電極を導入し直流または交流
電場をターゲット付近に印加したりすることも有意義で
ある。図4ではターゲット6と基板8の間に平行な対向
電極20を配置し、この間に電場を印加して雰囲気ガス
やターゲットからの飛来分子原子を励起イオン化する場
合を示す。尚、特にRF電場を用いる時は、図5に示す
ように、平行電極20に代えてコイル21を巻いて電極
としてもよい。
【0032】磁場をターゲットに印加することにより、
電子の閉じ込めを行いターゲットから基板に向かって活
性化原子分子の密度が上がるようにすることも好まし
い。この場合、基板8とターゲット6を結ぶ線及びター
ゲットからのイオン化した発光部が磁束に取り囲まれる
ようにすることが好ましい。図6では、ターゲットの近
傍でと基板の近傍に磁石22を配置して磁力線23がタ
ーゲットと基板を結び且つ覆うようにした場合を示す。
図中N、Sは磁石の向きを示す。
【0033】さらに、10mtorr以上の雰囲気ガス
では、蒸着原子分子が雰囲気ガスと衝突して軌道を変え
るのでターゲットに向かう雰囲気ガスの流れによっても
蒸着速度を向上させることが可能である。
【0034】
【実施例】以下、実施例と比較例をもとに本発明をさら
に詳細に説明するが、本発明はそれによって限定される
ものではない。。 比較例1 米国Superconductive Compone
nt社製の純度99.9%、焼結密度約95%のYBa
2Cu37 焼結体をホルダー上に固定しターゲットとし
た。基板とターゲット間の距離は8cmである。基板を
約720℃に加熱し3×10ー6torr以下にした状態
で真空槽内にマスフローメーター(流量計)で流量90
sccmでオリフィスを15%開として100mtor
rに酸素(純度99.5%)を満たした。酸素ガスは基
板から約10cm離れたノズルから基板方向に向かって
噴出させた。この状態でレーザーからの出射出力をパル
ス当り180mJ、実効2Hzで20分間運転した。タ
ーゲット上のエネルギービーム照射部でパルス当りの平
均エネルギー密度は約1J/cm2 になる。この条件で
はプルームは時々微かに基板に到達した。蒸着終了後た
だちに、真空槽に酸素を1torr以上満たし、500
℃まで10分で温度を下げその後炉冷した。この膜の超
伝導転移温度は、80Kであった。この表面を光学顕微
鏡及びSEMで観察したところ、多数の粒子が見られ
た。薄膜の1000倍での光学顕微鏡写真を図7に示
す。 実施例1 基板を傾けた以外は比較例1と同じにして蒸着を行っ
た。基板の垂線は重力方向からターゲット方向に向けて
7度傾けた。基板の上端をターゲット側を向かせ、その
垂直位置がターゲット上のレーザービーム照射部の下端
と同一水平線上の位置(z=0)になるようにした。こ
の条件ではプルームは時々微かに基板に到達した。この
ようにして作製した超伝導転移温度を測定したところ7
9Kであった。この時蒸着速度は比較例の約40%程度
を維持した。この薄膜の表面を光学顕微鏡及びSEMで
観察したところ、粒子は殆ど見られなかった。1000
倍での光学顕微鏡写真を図8に示す。 比較例2 析出物とターゲットからの粒子を分けて考察すべく、比
較例1と同様の実験を基板温度を室温にして行った。得
た薄膜の表面を光学顕微鏡及びSEMで観察したとこ
ろ、比較例1と同様に多数の粒子が見られた。これよ
り、比較例1で見られた粒子はターゲットからの飛来物
であることが分かる。粒子の総付着量は5×10-7モル
であった。 比較例3 比較例2と同様に基板温度を室温にし、基板を水平に保
持し且つ上を向けて他の実験条件を比較例1と同様にし
て行った。得た薄膜の表面を光学顕微鏡及びSEMで観
察したところ、比較例2程は粒子が多くないが、0.0
1mm2 当り1個程度の粒子が見られた。また、この時
の総付着量は0.7×10-7モルであった。 実施例2 実施例1と同様の実験を基板温度を室温にして行った。
得られた薄膜の表面を光学顕微鏡及びSEMで観察した
ところ、実施例1と同様粒子は殆ど見られなかった。ま
た、この時の総付着量は1.6×10-7モルであった。 比較例4 比較例3と同様に基板を水平に保持し上を向けて、基板
温度を室温でガス圧を1mtorrで、他の実験条件を
比較例1と同様にして行った。得た薄膜の表面を光学顕
微鏡及びSEMで観察したところ、粒子は殆ど見られな
かった。但し、この時の総付着量は0.1×10-7モル
であり、組成のずれが著しく特にBaが減少し、組成は
Y:Ba:Cu=2−d:0:1.5(d=0〜0.
5)であった。 実施例3 実施例1と同様の実験を基板温度を室温、ガス圧を1m
torrにして行った。得た薄膜の表面を光学顕微鏡及
びSEMで観察したところ、実施例1と同様に、また比
較例4よりさらに、粒子は殆ど見られなかった。また、
この時の総付着量は0.5×10-7モルであり、組成は
Y:Ba:Cu=2−d:1:3、(d=0〜0.5)
であった。 実施例4 比較例2と同様の実験において、図3のような配置で遮
蔽板を基板から6cm離した位置で遮蔽板の先端がター
ゲット上のビームの中心位置の高さになるように設置し
た。得た薄膜の表面を光学顕微鏡で観察したところ、比
較例1に比べ粒子の数が著しく低減され、粒子密度は
0.01mm2 当り1個以下であった。この時総付着量
は0.3×10-7モルであった。
【0035】
【発明の効果】本発明はレーザー蒸着法により酸化物超
伝導体薄膜等の酸化物薄膜や窒化物薄膜等のセラミック
薄膜を作製する際に安価簡便に薄膜形状を向上できるの
で工業的に有用である。特に、雰囲気ガス圧に依存せ
ず、基板とターゲットの距離が長い条件下で有用な蒸着
速度や励起原子分子の基板衝撃を保持しつ、レーザー蒸
着に固有な粒子発生を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を示す模式図である。
【図2】遮蔽板による粒子除去の向上を行う場合の配置
図である。
【図3】遮蔽板による粒子除去の向上を行う場合の配置
図である。
【図4】電場による励起元素の増殖を組み合わせた例を
示す図である。
【図5】RF電場による励起元素の増殖を組み合わせた
別の例を示す図である。
【図6】磁場による活性化原子分子の閉じ込めを組合わ
せた例を示す図である。
【図7】本発明で用いるレーザー蒸着装置のー例を示す
模式図(上面図)である。
【図8】比較例1で得られた薄膜の粒子構造を示す電子
顕微鏡写真である。
【図9】実施例1で得られた薄膜の粒子構造を示す電子
顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 エキシマレーザー発生装置 2 光学ボックス 3 真空槽 4 集光レンズ 5 紫外光透過窓 6 ターゲット 7 ターゲットホルダー 8 基板 9 基板ホルダー 10 シャッター 11 紫外レーザー光 12 ガス供給配管 13 遮蔽板 14 ミラー 15 重力 16 粒子の軌跡 17 原子分子衝突無しでの軌跡 18 粒子の軌跡 19 ターゲット上レーザー照射位置を通る水平線 20 電極 21 コイル 22 対向磁石 23 磁力線

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に薄膜を蒸着により作製する方法
    において、目的とする薄膜を構成する金属原子の少なく
    とも一つを含有するターゲットに短パルス状のエネルギ
    ービームを照射して薄膜を堆積させる際、該基板のスパ
    ッタリング表面を下方に向け且つ基板をターゲットに対
    し斜めに配置するか、もしくは、ターゲットと基板との
    間の位置であってターゲット上のレーザー照射位置と基
    板とを結んだ線より上方に遮蔽板を配設することを特徴
    とする蒸着薄膜の作製法。
  2. 【請求項2】 短パルス状のエネルギービームがレーザ
    ー光であり、薄膜がセラミック化合物薄膜であり、セラ
    ミック化合物薄膜を構成する元素を含有するガス雰囲気
    中、10-6torr以上0.2torr以下のガス圧で
    蒸着を行なう請求項1記載の蒸着薄膜の作製法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0702416A1 (en) * 1994-09-16 1996-03-20 Sumitomo Electric Industries, Ltd Method and apparatus for depositing superconducting layer onto the substrate surface via off-axis laser ablation
WO1996010324A1 (en) * 1994-09-26 1996-04-04 Fom-Instituut Voor Plasmafysica Rijnhuizen Laser target for use in an apparatus for generating radiation and atomic particles

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