JPH0621803U - 工作機械の主軸軸受の予圧調整装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 ［目的］構造が簡素なので、余分なスペースも必要とし
ない工作機械の主軸軸受の予圧調整装置。 ［構成］主軸１の高速回転時は、環状押圧体８の加圧室
に圧油を供給して軸受３，４の予圧を増大させる。その
結果、軸受３，４を主軸１の中心方向へ絞り込む力が作
用し重予圧が加わることにより重切削の付加を受け止め
る剛性が保証される。次に、高速回転時は、環状押圧体
８の圧油を抜き予圧を減少させる。その結果軽予圧にな
り高速回転での加工を行うことができる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、工作機械の主軸軸受の予圧調整装置に関する。更に詳しくは、軸受 の外輪に主軸の中心方向に向かう調整可能な外力を加える工作機械の主軸軸受の 予圧調整装置に関する。

【０００２】

【従来技術】

一般に、工作機械の主軸は、低速回転から高速回転まで広い範囲に亘って安定 した切削が可能なことが要求されている。すなわち、工作機械では低速回転領域 で切削負担が大きい重切削加工が、また高速回転領域で切削抵抗が小さい軽切削 加工が行われる。このときの主軸の支持は、その切削負荷に影響されない安定し た剛性を有する支持が必要とされる。そのために、軸受には所定の予圧が付加さ れている。

【０００３】 しかし、主軸の高速回転のときは、低速回転時と異なった以下の現象が生じる 。高速回転すると主軸を支持する軸受の転動体（玉またはコロ）および内輪に遠 心力が作用し、内輪の径が遠心力により拡大する。更に、軸受の転がり摩擦によ って生じる熱により内輪と外輪とが加熱される。しかし、これらの加熱は通常一 様でないため内輪と外輪の膨脹の大きさに差が生じる。

【０００４】 総じてこれらの現象は、軸受の予圧を増大せしめる原因となっている。このた め軸受の予圧は、低速回転領域から高速回転領域まで広い領域での安定した回転 ができるように、低速回転時に対応できる定位置予圧を基本にし、高速回転の時 にはその予圧を調整することによって対応するものがある。

【０００５】 この高速回転時の予圧の調整を行う従来の例として、例えば、特公平３−７８ ４８８号公報に記載されたスピンドルユニットがある。これは、軸受の外輪間座 を軸線方向に撓ませることにより高速回転時の軸受の予圧を減少させている。ま た特開平１−９２００５号公報には、内輪間座を３個に分割し、その真ん中の中 央の間座を主軸の高速回転に応じて半径方向に変位をするようにして、軸受に加 わる予圧を自動調整することが示されている。

【０００６】 また、実開昭２−１５０１０１号公報には、スプリングによる予圧を切替え手 段を用いて変える主軸支持構造が示されている。しかし、これら従来の予圧調整 機構は、軸線方向に予圧調整のための機構を新たに設けなければならないので、 構造が複雑になったり余分なスペースを必要とする。また、予圧方向が軸受の外 輪または内輪を主軸の軸線方向から押圧し転動体を介して予圧を調整するもので あったので予圧の付加の方法が間接的であった。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は、前記のような技術的背景で考案されたものであり、次の目的を達成 する。

【０００８】 本考案の目的は、構造が簡素なので、余分なスペースも必要としない工作機械 の主軸軸受の予圧調整装置を提供するものである。

【０００９】 本考案の他の目的は、直接的に軸受の予圧の調整ができる工作機械の主軸軸受 の予圧調整方法およびその装置を提供するものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

前記課題を解決するために次のような手段を採る。

【００１１】 ハウジング（２）内で主軸（１）を回転可能に支持する軸受（３），（４）に 予圧を加える工作機械の主軸軸受の予圧調整装置において、 前記軸受（３），（４）の外輪の外側に前記主軸（１）の中心軸方向に外圧を 加えるための環状押圧体（８）を設けたことを特徴とする工作機械の主軸軸受の 予圧調整装置である。

【００１２】 前記環状押圧体（８）が加圧室（９），（１０）を備え、この加圧室（９）， （１０）に供給される油圧を変えることにより前記主軸（１）の中心軸方向の外 力を調整可能とすると効果的である。

【００１３】

【作用】

主軸の高速回転時は、環状押圧体の加圧室に圧油を供給して軸受の予圧を増大 させる。その結果、軸受を主軸の中心方向へ絞り込む力が作用し重予圧が加わる ことにより重切削の付加を受け止める剛性が保証される。次に、高速回転時は、 環状押圧体の圧油を抜き予圧を減少させる。その結果軽予圧になり高速回転での 加工を行うことができる。

【００１４】

【実施例】

図１は主軸の予圧調整装置の簡略部分断面図である。主軸１がハウジング２の 中に配置されて回転自在に支持されている。主軸１は２個のアンギュラ軸受３， ４により、ハウジング２に支持されている。アンギュラ軸受３の内輪の内周は主 軸１に挿入されている。内輪の外周には、球である転動体を挟んで外輪が配置さ れている。転動体は、内輪と外輪との間を自転しながら公転をする。

【００１５】 外輪の外周には、環状押圧体８が接触して配置されている。同様にアンギュラ 軸受４の内輪も主軸１に挿入されており、その外輪の外周にも環状押圧体８が接 触して配置されている。アンギュラ軸受（以下、軸受と記載）３，４の間には、 間座６，７が介在されており、間座６，７で各軸受３，４に高速回転時に適した 与圧を付与している。

【００１６】 環状押圧体８は、ハウジング２との間で軸受３の外輪を外周から囲むように環 状の加圧室９が形成されている。この加圧室９は油路１１に接続されている。油 路１１は、更に電磁切換弁１２、圧力調整弁１３を介して油圧供給源１３に連続 されている。また、加圧室９に供給される圧油の圧力は、圧力制御弁１３で低速 回転時に適する与圧に相応する所望の圧力に調節される。

【００１７】 加圧室９の内部の外輪３ｂと接触する側には、更に環状の溝１６が設けられて いる。この溝１６は加圧室９に圧油が供給された時、環状押圧体８が軸受３の外 輪に向かって撓み易くするために設けられたものであり、環状押圧体８の材質の 硬さの度合い、強度などによりその形状や溝の数は異なる。

【００１８】 環状押圧体８とハウジング２との間には、圧油を密閉するためのＯリング８， １８され、加圧室９内の圧油を封じている。軸受押さ部材２２は、軸受２および 環状押圧体８の側面に接触して、かつハウジング２にボルトにより取り付けられ 軸線方向を規制している。軸受３の内輪の前方には、環状のスペーサ２１を介し て内輪固定部材２０が配置されている。内輪固定部材２０は、主軸１の外周に形 成されたねじ１ａにねじ込まれている。

【００１９】 内輪固定部材２０は、軸受３，４の各内輪、間座６を軸線方向に押圧して、主 軸１に形成された段部１ｂとの間で固定する。結局、主軸１は、これらのスペー サ２１、内輪固定部材２０、軸受３，４の内輪および間座６と一体に回転する。 ハウジング２の前方には、更にフロントカバー５がボルトで固定されている。

【００２０】 軸受３と同様に軸受４の内輪は主軸１に挿入されており、外輪は環状押圧体８ に挿入されている。環状押圧体８は、ハウジング２との間で外輪を外周から囲む ように環状の加圧室１０が形成されている。この加圧室３１も、油路１１に接続 されている。

【００２１】 加圧室３１の内部の軸受４の外輪と接触する側には、更に環状の溝１７が設け られている。この溝１７は加圧室１０に圧油が供給された時、環状押圧体８が軸 受４の外輪に向かって撓み易くするために設けられたものであり、環状押圧体８ の材質の硬さの度合いによりその形状や溝の数は異なる。

【００２２】 環状押圧体８とハウジング２との間にも、圧油を密封するためのＯリング１９ ，１９が配置され、加圧室１０とハウジング２との間で油を封じている。軸受４ の外輪の外周には環状外輪止部材２５が配置されて、環状押圧体８に固定されて いる。

【００２３】 一方、ハウジング２の内部には油路２３ａ，２４ａが配置されており、この中 を潤滑のために加圧された潤滑油が図示しない潤滑油供給源から供給される。潤 滑油は、ノズル２３，２４の噴射口から軸受３，４に噴射される。

【００２４】 作動 次に主軸２が回転するに際しての予圧調整作動を述べるが、軸受３も軸受４に おいても予圧調整の作用はどちらも同じことなので、ここでは軸受３の場合につ いて説明する。

【００２５】 低速回転時の場合は、環状押圧体８の加圧室９に電磁切換弁１２のソレノイド １２ａを励磁して圧油を供給する。すると環状押圧体８の加圧室９の圧力が高ま ることから環状押圧体８が半径方向に（即ち、軸受３に向かって）縮まろうとし 、軸受３の外輪を外周から押圧する。すると外輪はその押圧力を受け転動体を加 圧する方向に作用し、高速回転用に間座６，７で付与された与圧に環状押圧体８ よりの押圧力が加わり結果的に予圧が強まる。予圧の方向は主軸１の中心軸方向 に向かって弾性変形により軸受３を締め付けるように働くので予圧が直接的であ り即効性がある。

【００２６】 高速回転時の場合には、電磁切換弁１２のソレノイド１２ａの励磁を停止する とばね１２ｂにより切換弁の方向が切換り環状押圧体８の加圧室９から圧油をぬ く。すると環状押圧体８の撓みは無くなり元の状態に戻ることから、軸受３の外 輪は環状押圧体８からの押圧力から解放される。その結果、転動体への加圧もな くなり結果的には間座６，７で付与された予圧に戻る。

【００２７】 この油圧の圧力の切換え調整は、例えば主軸１の回転数を、図示しない制御装 置において加工プログラムなどから読み出し、所定の回転数を越えた場合に電磁 切換弁１２を制御することにより予圧調整ができる。

【００２８】 ［他の実施例」 前記した実施例は、環状押圧体に環状の溝を形成したものであったが、溝でな くとも外周の等間隔に窪みなどを配置しても良い。この方法は、点で外輪を締め 付けるものである。前記実施例では、圧油の供給の有無で予圧調整を行ったが、 比例電磁式圧力制御弁を使用し、主軸回転数に比例した圧力の圧油を環状押圧体 に供給する方法であってもよい。以上種々の実施例を述べてきたが、それらは本 考案の単なる例示に過ぎず、必要に応じて種々の変形、変更が可能であることは 言うまでもない。

【００２９】

【考案の効果】

以上詳記したように、本考案は従来のように構造が複雑でなく、また余分なス ペースも必要としない。直接に軸受の外輪を中心軸方向に弾性変形により締め付 けることにより予圧を加えるため、可動部分がなく即時性があり効率的である。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、主軸の予圧調整装置の簡略部分断面図
である。

【符号の説明】

１…主軸 ２…ハウジング ３，４…アンギュラ軸受 ８…環状押圧体 ９，１０…加圧室 １４…油圧供給源 １６，１７…溝 １８，１９…Ｏリング

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ハウジング（２）内で主軸（１）を回転可
   能に支持する軸受（３），（４）に予圧を加える工作機
   械の主軸軸受の予圧調整装置において、 前記軸受（３），（４）の外輪の外側に前記主軸（１）
   の中心軸方向に外圧を加えるための環状押圧体（８）を
   設けたことを特徴とする工作機械の主軸軸受の予圧調整
   装置。
2. 【請求項２】請求項１において、 前記環状押圧体（８）が加圧室（９），（１０）を備
   え、この加圧室（９），（１０）に供給される油圧を変
   えることにより前記主軸（１）の中心軸方向の外力を調
   整可能にしたことを特徴とする工作機械の主軸軸受の予
   圧調整装置。