JPH06205860A - ゴルフクラブシャフトの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 管状体に綾巻き状に捲回した高強度繊維の集
束によって形成された補強層の模様がムラにならずに模
様がきれいに表れるようにしたゴルフクラブシャフトの
製造方法を提供することにある。 【構成】 熱硬化性合成樹脂を含浸した補強繊維からな
る管状体の外周面に、高強度繊維の集束を螺旋状に綾巻
きした後、前記補強層を含む管状体の外周面に、強化繊
維からなる透明な表面シートを捲回し、熱硬化処理で一
体に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、熱硬化性合成樹脂を含
浸した強化繊維からなる管状体の外周面に、高強度繊維
の集束を螺旋状に綾巻きして補強層を形成したゴルフク
ラブシャフトの製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ゴルフクラブシャフトは、スチー
ルシャフトに代わってカーボン繊維からなる管状体を使
用したゴルフクラブシャフトが多く用いられていた。

【０００３】しかし、カーボン繊維を用いたゴルフクラ
ブシャフトは、スチールに比較して軽量であるが、スチ
ールシャフトに比較して剪断弾性率が小さいため、捩じ
りが大きいという欠点があった。

【０００４】そこで、熱硬化性合成樹脂を含浸した強化
繊維からなる管状体の外周面に高強度繊維を捲回したゴ
ルフクラブシャフトが、実開昭６０−１６６５２９号公
報に開示されている。

【０００５】しかし、このゴルフクラブシャフトでは、
綾巻き状に捲回した高強度繊維が最外層に位置するた
め、他のゴルフクラブシャフトやその他のものとの接触
などによって切断するおそれがあった。

【０００６】そこで、これを防止するため、この外周面
全体に保護層を設けることが考えられ、その手段とし
て、管状体の補強方法として一般的に用いられているフ
ィラメントワインディングが提案されている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかし、補強層を捲回
した管状体の外周面にフィラメントワインディングによ
って高強度繊維を捲回して保護層を形成すると、保護層
の表面が凸凹になり、厚みにムラができて、管状体に綾
巻き状に捲回した高強度繊維の集束によって形成された
補強層の模様がムラになって見えるという不具合があっ
た。

【０００８】また、この種のゴルフクラブシャフトで
は、管状体の形成から最外層の高強度繊維の保護層の形
成までを行った後に、加熱炉に入れて常法にしたがって
熱硬化処理するものであるから、保護層の形成後に施さ
れるテーピングあるいは焼成（キュアー）後において、
綾巻き状に捲回された高強度繊維の集束およびフィラメ
ントワインディングによって捲回された高強度繊維に蛇
行あるいは皺が寄るという問題があった。

【０００９】しかも、いわゆるザクあるいは白化現象が
発生し、綾巻き状に捲回された高強度繊維の集束によっ
て形成された保護層の模様が見えなくなるおそれがあっ
た。本発明はかかる従来の問題点を解決するためになさ
れたもので、その目的は、管状体に綾巻き状に捲回した
高強度繊維の集束によって形成された補強層の模様がム
ラにならずに模様がきれいに表れるようにしたゴルフク
ラブシャフトの製造方法を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は、熱硬化性合成
樹脂を含浸した補強繊維からなる管状体の外周面に、高
強度繊維の集束を螺旋状に綾巻きした後、前記補強層を
含む管状体の外周面に、強化繊維からなる透明な表面シ
ートを捲回し、熱硬化処理で一体に形成するものであ
る。

【００１１】

【作用】本発明においては、まず、芯金の外周に液状の
離型剤を塗布し、乾燥して離型剤層を形成する。

【００１２】つぎに、四辺形に裁断した本体シートをそ
れぞれ傾斜した強化繊維を交差するようにかつ幾分ずら
して重ね合わせ、芯金の離型剤層の外周に適宜回数捲回
する。

【００１３】ここで、本体シートは、本工程とは別に、
炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維を傾斜配列し、エ
ポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの
熱硬化性合成樹脂を含浸したシートを、四辺形に裁断し
たものである。

【００１４】つぎに、さらに、本体シートの捲回層の外
周に、本体シートと同質の強化繊維を引き揃えた他の本
体シートを捲回する。これによって管状体を得る。

【００１５】つぎに、この管状体の外周面に、炭素繊
維、ケプラー繊維やアモルファスなどの高強度繊維の集
束を綾巻き状に捲回する。つぎに、その外周面に、ガラ
ス繊維などの強化繊維からなる透明な表面シートを捲回
する。

【００１６】そして、その外周面に、テーピングを施
し、加熱炉の中に入れて常法にしたがって熱硬化処理で
一体に形成する。その後、芯金が抜き取られ、ゴルフク
ラブシャフトが得られる。

【００１７】このようにして形成されたゴルフクラブシ
ャフトによれば、管状体の外周面に螺旋状に綾巻きされ
た高強度繊維の集束による補強層を含む管状体のほぼ全
長が、透明な表面シートを捲回してなる保護層によって
覆われるため、例えばゴルフクラブシャフトやその他の
ものが直接ぶつかることがなくなり、切断を防止するこ
とができる。

【００１８】また、管状体の外周面に螺旋状に綾巻きさ
れた高強度繊維の集束による模様がきれいに表れるとと
もに、高強度繊維の集束による模様がムラなく鮮明に見
える。

【００１９】

【実施例】以下、本発明の詳細を図面に示す実施例につ
いて説明する。図１は、本発明に係るゴルフクラブシャ
フトの製造方法によるゴルフクラブシャフトの一実施例
を示す断面図、図２はこのゴルフクラブシャフトを用い
たゴルフクラブ、図３はその製造方法を示す。

【００２０】図１において、１は本実施例に係るゴルフ
クラブシャフトである。２は熱硬化性合成樹脂を含浸し
た強化繊維からなる本体シートを捲回して形成された管
状体である。

【００２１】３は管状体２の外周面に４本並列して螺旋
状に綾巻きされた高強度繊維の集束１４を捲回して形成
された補強層である。４は強化繊維からなる透明な表面
シート１５を捲回して形成された透明な保護層である。

【００２２】５は管状体２の内層である。６は管状体２
の中間層である。７はゴルフクラブシャフト１の前端に
固定されたヘッドである。

【００２３】８はゴルフクラブシャフト１の後端に固定
されたグリップである。つぎに、図３に基づいて本実施
例に係るゴルフクラブシャフト１の製造方法について説
明する。

【００２４】まず、芯金１０の外周にパラフィン系ワッ
クスをトルエンなどで溶かした液状の離型剤を刷毛で塗
布し、乾燥して離型剤層を形成する。つぎに、四辺形に
裁断した本体シート１１，１２をそれぞれ傾斜した強化
繊維を交差するようにかつ幾分ずらして重ね合わせ、芯
金１０の離型剤層の外周に適宜回数捲回する。

【００２５】ここで、本体シート１１，１２は、本工程
とは別に、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維を傾斜
配列し、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル
樹脂などの熱硬化性合成樹脂を含浸したシートを、四辺
形に裁断したものである。

【００２６】つぎに、さらに、本体シート１１，１２の
捲回層の外周に、本体シート１１，１２と同質の強化繊
維を引き揃えた他の本体シート１３を捲回する。これに
よって管状体２を得る。

【００２７】つぎに、この管状体２の外周に、炭素繊
維、ケプラー繊維やアモルファスなどの高強度繊維の集
束１４を４本並列して螺旋状に綾巻きする。この際、高
強度繊維の集束１４は、管状体２の小径部２ａでピッチ
が密に、かつ管状体２の軸線に対して急傾斜で捲回さ
れ、小径部２ａから徐々に管状体２の大径部２ｂに向か
ってピッチが粗でかつ緩やかな傾斜となるように連続的
に綾巻きで捲回される。

【００２８】つぎに、その外周面を含む管状体２のほぼ
全長に亘ってガラス繊維などの強化繊維が平織りされた
透明な表面シート１５を捲回する。この透明な表面シー
ト１５は、後述する加熱処理によって硬化した際に、透
明な保護層４を形成できる材料で構成されている。

【００２９】そして、その外周面に、テーピングを施
し、加熱炉の中に入れて常法にしたがって熱硬化処理で
管状体２と補強層３と保護層４を一体に形成する。その
後、芯金１０が抜き取られ、ゴルフクラブシャフト１が
得られる。

【００３０】このようにゴルフクラブシャフト１が形成
されると、強化繊維を生かした軽量化されたゴルフクラ
ブシャフト１が得られるとともに、管状体２の外周に捲
回された高強度繊維の集束１４が、管状体２の小径部２
ａでピッチを密に、かつ管状体２の軸線に対し急傾斜で
捲回され、管状体２の大径部２ｂでピッチが粗でかつ緩
やかな傾斜で螺旋状の綾巻きで捲回され補強されている
ので、剪断弾性率が大きくなって特に小径部２ａで捩じ
れの少ないゴルフクラブシャフトが得られ、スイングで
ヘッドのフェースの方向が変わらず、ヘッドの進行方向
とフェースの向きが一致して安定した飛び方向が得られ
る。

【００３１】また、補強層３を含む管状体２のほぼ全長
に亘って捲回された熱硬化処理で熱硬化性合成樹脂が含
浸された補強繊維からなる透明な表面シート１５が、管
状体２の外周面に４本並列して螺旋状に綾巻きされた高
強度繊維の集束１４を均一に覆うので、例えば他のゴル
フクラブシャフトやその他のものと接触するなどして
も、管状体２の外周面に４本並列して螺旋状に綾巻きさ
れた高強度繊維の集束１４に直接ぶつかることがなくな
り、高強度繊維の集束１４が切断することがなくなる。

【００３２】さらに、ゴルフクラブシャフト１の最外層
には、補強層３を含む管状体２のほぼ全長に亘って四辺
形に裁断した補強繊維からなる透明な表面シート１５を
捲回して透明な保護層４を形成するので、フィラメント
ワインディングに比してその成形時の圧力が周方向にか
かることがなくなり、高強度繊維の集束１４が移動した
り、歪んだりすることが防止できる。

【００３３】さらにまた、補強層３を含む管状体２のほ
ぼ全長に亘って捲回された熱硬化性合成樹脂を含浸した
補強繊維からなる透明な表面シート１５が、管状体２の
外周面に４本並列して螺旋状に綾巻きされた高強度繊維
の集束１４を均一に覆うので、フィラメントワインディ
ングに比して熱硬化処理工程における熱などで移動した
り、歪んだりすることが防止できる。

【００３４】そのため、管状体２の外周面に４本並列し
て螺旋状に綾巻きされた高強度繊維の集束１４による補
強層３が、模様としてムラなく鮮明に見え、外観上好ま
しいゴルフクラブシャフトとなる。

【００３５】図４は、ゴルフクラブシャフト１の先端が
特に強度を持たせて形成される他の実施例を示すもの
で、芯金１０の先端に段差で小径部１０ａが形成されて
四辺形に裁断された強化繊維の引き揃え小シート１６が
最初に捲回されている。

【００３６】その他の構成は、図３に示す製造方法と同
様である。本実施例においても、上記実施例と同様の効
果を得ることができる。なお、上記実施例では、高強度
繊維の集束１４として、線条のものを使用した場合につ
いて説明したが、細幅のテープ状でもよい。

【００３７】また、４本の並列の場合について説明した
が、何本でもよい。さらに、本体シート１１，１２は重
ね合わせた場合について説明したが、重ね合わせない
で、順に捲回してもよい。

【００３８】さらにまた、高強度繊維の集束１４をピッ
チを管状体２の小径部２ａで密とするとともに、大径部
２ｂに向かって粗としたが、ピッチは任意である。ま
た、透明な表面シート１５は、強化繊維が平織りされた
ものを使用したが、捲回できるようなシート状をなして
おればよく、その他の織物や引き揃えなどの形態でもよ
い。

【００３９】

【発明の効果】以上の如く、本発明によれば、高強度繊
維の集束を螺旋状に綾巻きした外周面に、強化繊維から
なるシートを捲回して透明な保護層を形成したものであ
るから、管状体の外周面に螺旋状に綾巻きされた高強度
繊維の集束の切断が防止できるとともに綾巻きされた高
強度繊維の集束による補強層が模様として見ることがで
きる。

【００４０】また、捲回工程において、フィラメントワ
インディングのように管状体の周方向に強い圧力がかか
ることがないため、保護層成形時の圧力などで管状体の
外周面に螺旋状に綾巻きされた高強度繊維の集束が、移
動したり、歪んだりしてしまうことが防止できる。

【００４１】さらに、熱硬化処理工程において、管状体
の外周面に螺旋状に綾巻きされた高強度繊維の集束が、
熱などで移動したり、歪んだりしてしまうことが防止で
きる。

【００４２】そのため、管状体の外周面に螺旋状に綾巻
きされた高強度繊維の集束による模様がきれいに表れ、
外観上好ましい。また、透明な表面シートを捲回してい
るため、全体がほぼ均等に覆われ、管状体の外周面に螺
旋状に綾巻きされた高強度繊維の集束による模様がムラ
なく鮮明に見える。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るゴルフクラブシャフト
の断面図である。

【図２】本発明の一実施例に係るゴルフクラブシャフト
を用いたゴルフクラブを示す側面図である。

【図３】本発明の一実施例に係るゴルフクラブシャフト
の製造方法を示す工程説明図である。

【図４】本発明の別の実施例に係るゴルフクラブシャフ
トの製造方法を示す工程説明図である。

【符号の説明】

１ ゴルフクラブシャフト ２ 管状体 ３ 補強層 ４ 保護層 １４ 高強度繊維の集束 １５ 透明な表面シート

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 熱硬化性合成樹脂を含浸した補強繊維か
   らなる管状体の外周面に、高強度繊維の集束を螺旋状に
   綾巻きした後、前記補強層を含む管状体の外周面に、強
   化繊維からなる透明な表面シートを捲回し、熱硬化処理
   で一体に形成することを特徴とするゴルフクラブシャフ
   トの製造方法。