JPH06199520A - 金属酸化物の製造方法及び該製造方法にて製造された金属酸化物 - Google Patents

金属酸化物の製造方法及び該製造方法にて製造された金属酸化物

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JPH06199520A
JPH06199520A JP5248603A JP24860393A JPH06199520A JP H06199520 A JPH06199520 A JP H06199520A JP 5248603 A JP5248603 A JP 5248603A JP 24860393 A JP24860393 A JP 24860393A JP H06199520 A JPH06199520 A JP H06199520A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 少なくともBi系やTl系超伝導材料よりも
安全性に優れたものであり、且つ臨界温度等の超伝導特
性が、Y系材料とほぼ同等な性能を持つ化学的に安定な
超伝導材料を提供すること。 【構成】 a)下記一般式で表される金属酸化物を合成
する工程、A (式中、Aは希土類元素、イットリウム及び希土類元素
或はイットリウムの一部をアルカリ金属やアルカリ土類
金属にて置換した元素の中から選ばれる少なくとも一
種、Bはアルカリ土類金属、Cは銅又は銅の一部を遷移
金属にて置換した元素、Dは酸素を示し、且つX=1の
ときY=2〜4、Z=2.7〜6、n=6〜13であ
る。) b)前記一般式で表される金属酸化物を還元処理する工
程、 c)前記還元処理した金属酸化物をハロゲン化する工程
とを有し、前記一般式で表される金属酸化物の酸素
(D)の一部がハロゲン元素にて置換された金属酸化物
を合成することを特徴とする金属酸化物の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属酸化物の製造方法
に関し、特に、ある特定の温度以下で超伝導性を示し、
電力貯蔵用超伝導コイル、磁気シールド、ジョセフソン
素子等の各種電子デバイス、MRIやSQUID等の医
療機器や高精度計測装置に使用される超伝導マグネット
等、多くの分野に利用可能な超伝導材料としても利用可
能な金属酸化物の製造方法と、該方法にて製造された金
属酸化物に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、超伝導材料としては、従来から知
られているNb、NbTi、NbSn、NbAl等
が実用化或は実用化検討されているが、これらの材料が
超伝導性を示す為には、液体ヘリウムで非常に低い温度
に冷却する必要がある。
【0003】更に、これらの従来材料では、約20テス
ラ以上の磁場条件下では超伝導特性が壊れて使えないと
云う問題があった。そして、これは材料固有の特性によ
るものであり、約20ステラ以上の磁場を発生させる為
には、より臨界温度の高い材料が必要である。従来は、
この様な材料の存在が知られていなかった為、約20テ
スラ以上の磁場発生は原理上不可能と云われてきた。
【0004】近年、Cuを含む各種ペロブスカイト化合
物が発見され、その中には、例えば、Y−Ba−Cu−
O(以下、Y系と呼ぶ)、Bi−Sr−Ca−Cu−O
やTl−Sr−Ca−Cu−O(以下、Bi系やTl系
と呼ぶ)の様に、液体窒素の沸点よりも高い温度で超伝
導性を示すものもある。
【0005】これら酸化物超伝導体は、臨界温度が高
く、臨界磁場も従来材料よりも大きい等の特徴を持って
おり、従来は不可能とされていた分野にも応用すること
が出来る可能性が出てきた為に、これらの材料に対する
応用検討が活発に行われている。しかし、Bi系やTl
系は、毒性が強く安全性を考えると特殊条件下以外には
使えないと云う問題がある。
【0006】そして、これらは、水蒸気と炭酸ガスが共
存する条件下では化学的安定性がよいとは云えず、且つ
結晶構造が複雑で複数の臨界温度を有する結晶相が共存
し、それらを単層化することがむずかしい。更に、超伝
導状態と常伝導状態が共存し始める下部臨界磁場が非常
に小さいと云う問題もある。
【0007】又、Y系の材料は、材料の表面近傍の酸素
量が変化し易い為、電子デバイスやマグネット等に使用
する線材において、異種材料との界面や結晶粒同士の界
面が安定せず、各種製品を作成してもその特性が不安定
になると云う欠点がある。そして、水分等との反応性も
高く、下部臨界磁場がBi系材料等よりも大きいにもか
かわらず、実用性能が低いと云われている。
【0008】ハロゲンを含む超伝導材料に関しては、例
えば、特開昭63−274657号公報では、Y系材料
に弗素を導入した材料が、又、特開平01−10000
1号公報では、ABCOD(Aは周期律表IIA属元素、
Bは周期律表IIIA属元素、CはIB属元素、Dは弗
素)材料が開示されている。又、材料の製造方法として
は、特公平04−40284号公報では、弗素をイオン
注入により導入する方法が、特開平4−124003号
公報では、減圧条件下でのClFガスによる処理方法
が開示されている。
【0009】この様に、液体窒素の沸点より高い臨界温
度を持つY、Bi及びTl系超伝導材料は、魅力はあっ
ても現在の特性では、安全性や化学的不安定性による製
品特性の再現性等に問題があり、そのままでは実用材料
としては使いにくい。特開昭63−274657号公報
では、Y系材料の酸素ベイカンシーの1/100〜20
0%の濃度で弗素が導入されているが、酸素ベイカンシ
ーの濃度が明確でない為に、超伝導材料中の弗素量も明
確ではない。イオン注入による弗素量が3×1021
−3の材料が示されているが、開示された内容より弗
素は材料の表面近傍に導入されていると考えられる。
【0010】又、超伝導材料の表面にSiN等の皮膜を
形成しており、弗素濃度が材料表面から内部にかけて変
化した積層材料と考えるべきものである。更に、Y系材
料の表面近傍〜200Åの不安定性については議論して
いるが、材料全体の化学的安定性については何も示して
いない。又、特開平01−100001号公報では、Y
BaCu0.2の材料が開示されている
が、この材料の臨界温度は125Kであり、Y系材料に
おいてこの様な臨界温度の高い材料を再現性良く作製す
ることは困難とされており、その信頼性にも問題があ
る。又、化学的安定性については何も開示されていな
い。
【0011】又、ハロゲンを含む超伝導材料の製造方法
における特開平4−124003号公報のClFガス
によるハロゲン化方法は、通常の電気炉だけでなくCl
ガスを使用する為には、Ni製の容器、真空排気装
置、ガスの流量制御、廃ガス処理等、特殊部品や特殊装
置が必要であり、大きな成型体を形成する場合には適用
しにくい。
【0012】更に、この方法では、Y−Ba−Cu−O
において、材料中の酸素量が少ない場合でも超伝導開始
温度が改善されるとされているが、試料1グラムあたり
のハロゲン化処理による重量増加は、0.01〜0.0
5グラムであり、従って、酸素のハロゲン置換率が高い
為、臨界温度を改善することは出来ても化学的安定性を
改善することは出来ていないと推定される。
【0013】特公平04−40284号公報の方法は、
イオン注入により弗素を導入するものであり、更に、超
伝導材料の表面にSiNやAlN等で被覆することが必
要である。この方法では、材料の表面近傍に弗素を導入
することは出来ても、ある程度厚さのある材料全体に均
一に弗素を導入することは出来ない。原料物質にハロゲ
ン化金属を使用する方法は極めて簡単であるが、酸化物
とハロゲン化物の反応を正確に制御することは難しく、
特に、特定量の酸素を置換することは殆ど制御すること
が出来ないと云う問題もある。
【0014】
【発明が解決しようとしている課題】従って、本発明の
目的は、上記従来技術の問題点を解決し、少なくともB
i系やTl系超伝導材料よりは安全性に優れ、且つ臨界
温度等の超伝導特性が、Y系材料とほぼ同等な性能を持
つ化学的に安定な超伝導材料を提供することにある。
【0015】
【課題を解決する為の手段】上記の目的は、下記の本発
明によって達成される。即ち、本発明は、 a)下記一般式で表される金属酸化物を合成する工程、 A (式中、Aは希土類元素、イットリウム及び希土類元素
或はイットリウムの一部をアルカリ金属やアルカリ土類
金属にて置換した元素の中から選ばれる少なくとも一
種、Bはアルカリ土類金属、Cは銅又は銅の一部を遷移
金属にて置換した元素、Dは酸素を示し、且つX=1の
ときY=2〜4、Z=2.7〜6、n=6〜13であ
る。) b)前記一般式で表される金属酸化物を還元処理する工
程、 c)前記還元処理した金属酸化物をハロゲン化する工程
とを有し、前記一般式で表される金属酸化物の酸素
(D)の一部がハロゲン元素にて置換された金属酸化物
を合成することを特徴とする金属酸化物の製造方法、及
び該製造方法にて製造された金属酸化物である。
【0016】
【作用】本発明は、上記の構成により、少なくともBi
系やTl系超伝導材料よりは、安全性に優れ、又、臨界
温度等の超伝導特性がY系材料とほぼ同等な性能を有す
る化学的に安定な超伝導材料である金属酸化物を提供す
る。
【0017】以下にその概略を述べる。先ず、図1に、
液体窒素の沸点よりも高い臨界温度を有する超伝導材料
の代表的な例であるY−Ba−Cu−Oの結晶構造を示
す。図1に示す様に、結晶中には、Cuに2種類のサイ
トが存在し、Cu(2)と酸素で構成するCuO面と
Cu(1)と酸素とで構成するCuO鎖が存在する。こ
のCuO鎖は、実質的にはCuO面と同じであるが、
Cu(1)と結合する酸素が脱離し易く、酸素O(2)
の存在率が低い為、CuO鎖と便宜上呼ぶ。
【0018】又、O(1)サイトも、Cu(1)、O
(1)及びO(2)で形成する平面を安定化する為に、
O(1)からO(2)への酸素原子の移動や材料全体の
電荷を中性に保つ為に脱離して、例えば、O(3)等よ
りも存在率が低い。Y−Ba−Cu−Oの化学的不安定
さは、この様なCuと酸素との構造と相関があると推定
され、存在率の低いサイトの酸素を中心にして、雰囲気
により材料中の酸素量が変化することが超伝導特性の不
安定性の主原因の一つである。この為、材料の化学的安
定性を改善する為には、この様な存在率の低いサイトに
原子を導入する必要がある。
【0019】一般に酸化物をバルク状で合成する場合に
は、酸素を含む酸化雰囲気中で電気炉等で熱処理する。
この場合、材料中の酸素量は、熱処理をする温度、時
間、雰囲気中の酸素濃度等により制御することになる
が、Y−Ba−Cu−Oの様に、本質的に酸素の存在率
の低いサイトが存在する場合には、どの様に熱処理条件
を変化させても、酸素量を特定の値にすることは難し
い。つまり、酸素の存在率の低いサイトの原子は、本質
的に不安定であり、これは、作成条件を変化させても解
決することが出来る問題ではないからである。本発明
は、この様な材料の持つ本質的な不安定さを、材料中に
含まれる酸素の一部をハロゲン原子に置き換えることで
解決した。
【0020】
【好ましい実施態様】次に、好ましい実施態様を挙げて
本発明を更に詳細に説明する。ここでは、YBa
7−xを例として考える。図1において、O
(2)サイトの占有率が低い為に、Cu(1)、O
(1)及びO(2)で作る平面内は、O(1)とO
(2)との相互作用等により局所的には不安定状態にあ
ると云える。しかし、これらのサイトには、酸素が本質
的に入らない為に、酸素以外の原子によりサイトの存在
率を上げて不安定性を改善することになる。又、優れた
超伝導特性を得る為には、aとb軸の長さが僅かに異な
ることが必要である。この為に、本発明では酸素と同じ
符号の原子価を持ち、且つCuとBaとの結合が安定な
ハロゲン元素を導入する。
【0021】図1においてはO(1)の占有率がO
(2)より大きい為に、ハロゲンはO(2)に優先的に
入る。このことにより、b軸方向のCu(1)と隣接す
るCu(1)の間にハロゲンが入る為に、Cu(1)、
O(1)及びO(2)で形成される平面は安定化され、
この結果として材料全体も安定化されることになる。導
入するハロゲン量は、aとb軸の長さが異なる程度にす
る必要があり、又、CuやBaのハロゲン化物が生成し
ないことが必要である。この条件を満足するハロゲン量
は、金属酸化物1グラム当たり酸素に換算して2×10
−3〜1×10−6グラム当量である。この範囲以上の
ハロゲンを導入するとO(1)とO(2)の両方のサイ
トにハロゲンが入る為と推定されるが、aとb軸の長さ
の差が小さくなり、臨界温度が低下したり、超伝導性が
失われてしまう。又、ハロゲン量が少ないと化学的安定
性が改善されない。
【0022】この材料の製造方法について述べる。Y
、BaCO及びCuO粉末を原料とし、これらを
Y:Ba:Cu=1:2:3になる様に混合し、これを
900〜1,000℃で酸化雰囲気中で熱処理すること
により、臨界温度が90K程度の超伝導材料を合成する
ことが出来る。
【0023】次に、本発明ではこの試料を窒素雰囲気に
おいて、約400℃に加熱して還元する。従ってこの際
に最も大切なことは、上記の酸化雰囲気中での熱処理で
は十分に安定化されずに、結晶中では比較的脱離し易い
状態にある酸素のみを還元することである。還元が強過
ぎると本来安定な酸素まで還元されてしまい、場合によ
っては基本結晶構造が変化してしまうこともある。この
還元量は、材料により変化するが、一般的には、還元前
の酸化物1グラムに対して還元脱離した酸素による重量
減少が1×10−2〜1×10−6グラム、特に好適に
は5×10−3〜1×10−4グラムであることが望ま
しい。
【0024】次にこの還元試料をハロゲン化試薬と反応
させるが、例えば、塩化アンモニウム、臭化アンモニウ
ム或はポリ塩化ビニル及びテフロン樹脂の様な、金属元
素を含まないハロゲン元素を含む試薬と混合し、これを
酸素が10%程度以上含まれている酸化雰囲気中で熱処
理する。酸素が10%以下の場合には、反応時間を短く
してもハロゲン化が進み過ぎてしまう。置換した試料に
対するハロゲン元素の割合は、脱離した酸素の20%程
度以内、或は還元試料1グラム当たり10−2グラム以
下の重量増加であることが望ましい。この後、望みの形
に成型し、再度900〜1,000℃で熱処理すること
により、本発明の金属酸化物とすることが出来る。
【0025】この様にして作成された材料では、本来不
安定な酸素原子が還元操作により脱離し、その位置にハ
ロゲン原子が優先的に置換しているものと考えられる。
そして、一般的にはCuとOの結合よりもCuとハロゲ
ン原子の結合の方がより安定な結合となる為、材料中に
不安定な元素がなくなり、材料自身も安定化されると考
えられる。
【0026】しかし、ハロゲン量が多くなりすぎると超
伝導特性に影響が表われたり、BaやCu或はYのハロ
ゲン化物が形成されて超伝導材料の組成が変化して化学
的安定性が低下する等の問題が発生する。この為、ハロ
ゲン化の反応時間は、反応温度が高い場合は短く、反応
温度が低い場合は長くすればよい。ハロゲン化温度は、
高すぎると酸化雰囲気中の酸素による酸化反応が大きく
進んでしまう為、還元温度をより高く、酸化物の合成温
度、即ち、この場合には900〜1,000℃より低い
ことが望ましい。
【0027】ハロゲン化試薬としては、CF及びCl
等の気体の使用も考えられるが、この場合には、ガス
配管に厳重な安全対策が必要である。又、反応中、常時
この様なガスと還元試料が接触すると、反応の均一性は
比較的良いが、ハロゲン化が進み過ぎることが多く、ハ
ロゲン原子の置換量の制御が難しくなる。従って、本発
明の製造方法の場合には、ハロゲン化試薬は室温で固体
の物質を用いることが好ましい。
【0028】以上の様にして作成された材料は、結晶中
に本質的な不安定サイトがなくなり、例えば、水分や炭
酸ガスとの反応性が著しく改善され、環境に対しての安
定性が増大する。
【0029】
【実施例】次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に
具体的に説明する。本発明での結果を表1〜3に、比較
例での結果を表4〜6に纏めたが、幾つかの実施例及び
比較例について以下に詳細に説明する。
【0030】実施例1 粉末状態のY、BaCO及びCuOを、Y:B
a:Cu=1:2:3になる様に秤量し、これをメノウ
乳鉢で混合する。これを酸素中で950℃で10時間熱
処理する。得られた試料を粉砕し、更に酸素中で950
℃で10時間熱処理した。この時、得られた試料の電気
抵抗の温度依存性を図2に示した。この試料は、臨界温
度(Tc)が約90Kの超伝導材料であった。
【0031】次に、この試料を粉末状態で、窒素を10
0ml/minの割合で流した状態で、400℃で60
分間還元処理した。この熱処理により、図2に示した特
性を有する材料1グラム当たり、9.4×10−4グラ
ムの重量減少が認められた。この減少は酸素原子に換算
して、約5.9×10−5グラム当量の酸素が脱離した
ことを意味している。
【0032】脱離した酸素の約2倍の弗化アンモニウム
と、上記の様にして還元した試料とを混合し、N:O
=4:1の混合ガスを100ml/minの割合で流
しながら、700℃で1時間の熱処理を行った。最後
に、この試料を20mmφ、厚さ2mmのペレットに成
型し、酸素雰囲気中で、950℃で10時間の熱処理を
行った。
【0033】弗化アンモニウムで処理した試料は、還元
した試料1グラム当たり、1.9×10−3グラムの重
量増加が認められた。これは酸素の一部が弗素に置換し
た為である。尚、弗化アンモニウムと還元した試料とを
混合せずに、弗化アンモニウムを還元した試料の近傍に
置いて熱処理しても同じ効果が得られた。この試料の電
気抵抗の温度依存性は図2と同じであり、超伝導特性が
弗素化により変化しないことを示している。
【0034】弗素化しない試料と弗素化した試料とを、
40℃の飽和水蒸気下での大気雰囲気中での水分との反
応性を調べたところ、弗素化しない試料は、3日後には
完全に分解してしまったが、弗素化した試料は1週間後
においても殆ど変化が認められなかった。この水蒸気に
対する耐久性を示したX線回折図形を図3に示した。置
換した弗素量が少ない為、作成した材料のX線回折図形
は、弗素化に殆ど影響されず、図3(A)に示した様で
ある。
【0035】リードベルト法によりこのX線回折図形を
解析し、格子定数を決定したところ、a=3.8875
(Å)、b=3.8261(Å)、c=11.6822
(Å)であった。弗素化しない試料は、a=3.887
2(Å)、b=3.8233(Å)、c=11.682
3(Å)であるから、b軸の長さがa及びc軸に比較し
て長くなっており、O(2)サイトに弗素が導入された
事が確認された。
【0036】弗素化しない試料は、水蒸気と反応して分
解し、図3(B)に示した様に変化するが、本発明の材
料は図3(A)に示したものと同じであり、化学的な安
定性が改善されていることがわかる。
【0037】実施例2 実施例1において用いたY原料の代わりに、Er
を原料に用い、且つ弗化アンモニウムで処理する
代わりに、塩化アンモニウムで試料を塩素化する以外は
実施例1と同様の操作を行った。この結果、還元するこ
とにより、試料1グラム当たり6.8×10−4グラム
の重量減少(4.2×10−5グラム当量の酸素原子に
相当)があり、且つ塩素化により3.9×10−3グラ
ムの重量増加が認められた。これらのことより、還元に
より酸素が脱離し、塩素化により塩素が試料中に導入さ
れたことがわかる。
【0038】得られた試料の臨界温度は93Kであり、
塩素化を行わない場合と同じであるが、水分に対する反
応性は、塩素化により改善されており、40℃の飽和水
蒸気下での安定性は、塩素化により少なくとも3倍の期
間にわたり、超伝導特性が認められた。
【0039】実施例3 Er:Ba:(Cu,W)=1:2:3(Cu:W=
2.8:0.2)の割合になる様に、Er、Ba
(NO、CuO及びWOを混合し、大気中で9
00℃で50時間熱処理した。この試料を粉砕し、酸素
雰囲気中で980℃で20時間再度熱処理した。次に、
この試料を300℃で90分間、ヘリウムガス(200
ml/min)中で還元した。その後、塩化アンモニウ
ムと混合し、500℃で60分間熱処理し、塩素化し
た。
【0040】得られた試料を実施例1及び実施例2と同
様にして、水分との反応性を調べたが、臨界温度を保っ
たままで極めて高い安定性が得られ、1カ月程度では殆
ど変化しなかった。一方、塩素化をしない試料では、3
日後より表面に白色物質が折出し塩素化した試料よりも
明らかに化学的に不安定である。
【0041】比較例1 粉末状態のY、BaCO及びCuO原料を、
Y:Ba:Cu=1:2:3になる様に秤量し、これら
をメノウ乳鉢で混合する。これを、酸素中で950℃で
10時間熱処理する。得られた試料を粉砕し、更に酸素
中で950℃で10時間熱処理した。得られた試料を、
40℃の飽和水蒸気下の大気中に放置すると、直径10
0μm程度の粉末では2〜3日で、直径25mm、厚さ
2mmのペレットでは3〜5日で、完全に分解し超伝導
性を示さなくなった。
【0042】比較例2 還元温度を400℃から700℃とした以外は実施例1
と同様にして、比較用の試料を作成した。この場合、還
元により試料1グラム当たり、1.7×10−2グラム
の重量減少(1.06×10−3グラム当量の酸素に相
当)があった。弗化アンモニウム以外にも塩化アンモニ
ウム、臭化アンモニウム又は酸性弗化アンモニウムを用
い、ハロゲン化を行なったが、いずれも得られた試料は
絶縁体であった。
【0043】他の実施例及び比較例に関しては表1〜6
に纏めた。表1及び表4は、使用した原料の金属元素組
成、還元温度及び還元処理による重量減少のグラム数の
結果を纏めて示したものであり、表2及び表5は、ハロ
ゲン化条件と得られた試料の臨界温度を纏めて示したも
のである。又、表3及び6は、各種の形状に成型した金
属酸化物について、水分との反応性を調べ、材料の安定
性についての結果を示した。
【0044】
【表1】
【0045】(表1の続き) *:還元前の試料1グラム当たりの還元による重量減少
【0046】
【表2】
【0047】(表2の続き)
【0048】
【表3】
【0049】(表3の続き)
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】 *:絶縁体の為、耐水テストを行っていない。
【0053】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、化
学的に安定な、且つ臨界温度の高い超伝導材料である金
属酸化物を得ることが可能となった。更に、本発明に使
用されるハロゲン化試薬は極めて安価な材料であり、特
殊な或は有害ガスを使う必要がなく、そのうえ全ての操
作を1気圧条件下でも行なえると云う利点もある。本発
明で使用されるハロゲン化試薬は、室温では固体状態に
あるが、温度を上げると昇華又は分解する為にハロゲン
化反応は実質的には固体−気体反応と見なすことが出
来、固体−固体反応の様に混合の度合いにより反応状態
が異なることがなく、均一な材料を製造することが出来
る。又、本発明の金属酸化物は、YBaCu
7−X等の超伝導材料の様に、表面近傍における酸素量
の不安定性の問題を生じることがない為、これにより作
成された薄膜の変質や、作成された線材における結晶界
面での不純物折出等の問題を生じない。
【0054】
【図面の簡単な説明】
【図1】代表的酸化物超伝導材料の結晶構造を示す観念
図。
【図2】電気抵抗の温度依存性を示すグラフ。
【図3】耐水テストの結果を示すX線回折図。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a)下記一般式で表される金属酸化物を
    合成する工程、 A (式中、Aは希土類元素、イットリウム及び希土類元素
    或はイットリウムの一部をアルカリ金属やアルカリ土類
    金属にて置換した元素の中から選ばれる少なくとも一
    種、Bはアルカリ土類金属、Cは銅又は銅の一部を遷移
    金属にて置換した元素、Dは酸素を示し、且つX=1の
    ときY=2〜4、Z=2.7〜6、n=6〜13であ
    る。) b)前記一般式で表される金属酸化物を還元処理する工
    程、 c)前記還元処理した金属酸化物をハロゲン化する工程
    とを有し、 前記一般式で表される金属酸化物の酸素(D)の一部が
    ハロゲン元素にて置換された金属酸化物を合成すること
    を特徴とする金属酸化物の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記還元処理する工程は、前記一般式で
    表される金属酸化物の酸素(D)の一部を該金属酸化物
    内から脱離させる工程である請求項1の金属酸化物の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記ハロゲン化する工程は、前記一般式
    で表される金属酸化物の酸素(D)のサイトの一部にハ
    ロゲン元素を導入する工程である請求項1の金属酸化物
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記還元処理する工程は、前記一般式で
    表される金属酸化物の1グラム当たり、1×10−2
    1×10−6グラムの重量減少をもたらす工程である請
    求項1の金属酸化物の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記還元処理する工程は、酸素の含有量
    が5%以下の不活性雰囲気中にて行われる工程である請
    求項1の金属酸化物の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記還元処理する工程は、前記一般式で
    表される金属酸化物の合成時の温度よりも低い温度雰囲
    気中にて行われる工程である請求項1の金属酸化物の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 前記ハロゲン化する工程は、酸素の含有
    量が10%以上の酸化雰囲気中にて行われる工程である
    請求項1の金属酸化物の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかの製造方法にて
    製造された金属酸化物。
  9. 【請求項9】 下記一般式で表される金属酸化物であっ
    て、 A (式中、Aは希土類元素、イットリウム及び希土類元素
    或はイットリウムの一部をアルカリ金属やアルカリ土類
    金属にて置換した元素の中から選ばれる少なくとも一
    種、Bはアルカリ土類金属、Cは銅又は銅の一部を遷移
    金属にて置換した元素、Dはハロゲン元素にて一部置換
    された酸素を示し、且つ、X=1のときY=2〜4、Z
    =2.7〜6、n=6〜13である。)ハロゲン原子の
    含有量が、前記一般式において酸素(D)がハロゲン元
    素にて置換されていない金属酸化物の1グラム当たり、
    酸素原子に換算して2×10−3〜1×10−6グラム
    当量であることを特徴とする金属酸化物。
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