JPH06192475A - セルロースドープ - Google Patents

セルロースドープ

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JPH06192475A
JPH06192475A JP35728892A JP35728892A JPH06192475A JP H06192475 A JPH06192475 A JP H06192475A JP 35728892 A JP35728892 A JP 35728892A JP 35728892 A JP35728892 A JP 35728892A JP H06192475 A JPH06192475 A JP H06192475A
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JP
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cellulose
dope
sulfuric acid
water
concentration
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JP35728892A
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Kazunari Nishiyama
和成 西山
Shuji Takasu
修二 鷹巣
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 安定性が良く、成形に適するセルロースドー
プを提供する。 【構成】 セルロースを溶解した硫酸水溶液であっ
て、その溶液中の水のモル分率(a)硫酸のモル分率
(b)が3≦a/b≦4の関係にある安定で成形に適す
るセルロースドープ。 セルロースの水酸基のモル分
率(c)が(a+c)/b≦4の関係にある。 【効果】 セルロースドープは粘度が高く、高い濃度で
も透明性に優れる。また、低温で保存することができ、
水、アルカリ、希薄酸水溶液などで凝固させて成形でき
る。。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は成形に適するセルロース
のドープに関する。
【0002】
【従来技術】一般に、再生セルロースの成形物は、セル
ロースをある種の方法で溶媒に溶解し、その溶液を押出
機を用いて非溶媒や再生溶媒中に投入することによって
製造される。古くから、セルロースを溶解して成形する
ことを目的として、溶媒や溶解機構に関して多数の研究
と文献が存在する。セルロースを溶解する方法も多数提
案されているが、従来より工業的に利用されるセルロー
ス溶解方法としては、銅アンモニア法とビスコース法が
良く用いられている。
【0003】これらの方法で得られた溶液中のセルロー
スはセルロースがそのままの型で溶解しているのではな
く、ある種の誘導体として溶解している特徴がある。従
って、セルロースに戻すには、いわゆる再生という操作
が行われる。これらの溶液の製造、また再生のために用
いられる薬品や溶媒或いはそれらの分解生成物の中に
は、重金属やその塩、あるいは毒性や爆発性を有する物
質の使用が必要であった。
【0004】また、高濃度の鉱酸がセルロースを溶解す
る。一定濃度以上の硫酸がセルロースを溶解することは
古くから知られている(例えば、S.M.Hudson,J.A.Cucul
o;J.Macromol.Sci.-Rev.Macromol.Chem.,c18(1),p-6(19
80) 、右田、米沢、近藤編,「木材化学(上)」(1968)p
-135 等)。その濃度は文献によって少し違いがある
が、72重量%以上、原料の状態によっては65重量%
以上の濃度が必要と一般的には言われている。しかし、
これらの文献等にも記載されているようにこれらの溶液
はセルロースの解重合や分解が激しく、工業的には全く
利用できないものであった。
【0005】例えば、室温で75重量%硫酸を用いてセ
ルロースを溶解させると、溶解操作中にセルロースの解
重合が急激に起こり、溶解させることはできるが、30
分程度の溶解時間後の重合度は数10にまで低下し、も
はや成形用のドープとしての機能を備えない状態になっ
てしまう。また、低い濃度(例えば50重量%など)で
は極低重合度のものを除いてはセルロースを溶解する力
はなく、ただ膨潤させるにすぎない。
【0006】なお、セルロースの加水分解や重合度の調
製等を目的とした処理には希硫酸から高濃度の硫酸まで
広い範囲の硫酸がその用途に応じて用いられている。こ
の他、工業的にはあまり用いられてはいないが、セルロ
ースを溶解する方法として、金属錯体、例えば、カドミ
ウム/エチレンジアミン/アルカリ(いわゆるカドキセ
ン)、コバルト/エチレンジアミン/アルカリ、亜鉛/
エチレンジアミン/アルカリ、ニッケル/エチレンジア
ミン/アルカリ、鉄/酒石酸/アルカリなどが知られて
いる。しかし、いずれも重金属、アミン等の毒性物質を
用いる点や経済性の点で問題があるものであった。
【0007】また、1970年代よりセルロースを直接
有機溶媒に溶解し、繊維やフィルムの製造プロセスを閉
鎖系(クロースド)化して新規な成形品を得ようとする
研究が盛んに行われ、多くの溶解法が見い出された。そ
のほとんどは複雑な多成分系溶媒を用いるものであった
り、溶媒自体のコスト高、毒性、爆発性、回収困難性な
ど実用化の上で問題の多いものが殆どであった。
【0008】さらに、これらの新しく発見されたセルロ
ースの溶解方法の殆どは、セルロースを或る種の誘導体
や錯体の形にして、その誘導体や錯体を適当な溶媒に溶
解しているという点で、ビスコース法や銅アンモニア法
と大差ない発想でしかなかった。例えば、ジメチルスル
ホキシド/パラホルムアルデヒド法の場合は、セルロー
スはメチロールセルロースとして溶解しているし、ジメ
チルホルムアミド/N2O4法では、セルロースナイト
ライトとして溶解する。SO2/アミン法、ジメチルホ
ルムアミド/クロラール法等も同様である。
【0009】この範疇の溶媒の中で比較的問題の少ない
と思われるものに、アミンオキサイド系の溶媒が提案さ
れている。その中で、N−メチルモルホリン−N−オキ
サイドを用いたものが盛んに研究され、実用化されつつ
あるが、溶媒が高価であり、その分解抑制や回収方法の
確立などが必須なものであった。このようなセルロース
の溶解技術の歴史をみても判るように、セルロースを単
純で安価な溶媒に溶解するのは至難の技であった。
【0010】また、これらの問題を大幅に軽減した例と
して、アルカリ溶液が提案されている(例えば、特開昭
60−42438号公報、特開昭61−130353号
公報、特開昭62−116601号公報等)。この溶液
は単純な溶媒を用いている点で工業的見地からも優れた
ものである。
【0011】しかし、本明細書中にも記載されているよ
うに、溶解させるセルロースの前処理(例えば水素結合
の開裂度を上げるための操作等)が必要であったり、ま
た、溶解した溶液はゲル化し易い傾向を持つものである
ために、工業的に利用するにはセルロース及びその溶液
の取り扱いノウハウの蓄積が不可欠なものであった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、セルロース
の溶液の上記の様な種々の問題を解決し、安定で成形に
適し、工業的生産性の良好なセルロースドープを提供す
ることを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成すべく、セルロースを硫酸に溶解する条件や溶解挙
動、特に硫酸の性質、セルロースとの相互作用について
鋭意検討を行なった結果、水あるいは水酸基と硫酸の存
在比率がセルロース溶液の安定性に極めて大きく影響す
ることを見い出し、本発明に到達した。
【0014】本発明の目的は、セルロースを溶解した硫
酸水溶液であって、その溶液中の水のモル分率(a)及
び硫酸のモル分率(b)が3≦a/b≦4の関係にある
ことを特徴とする、安定で成形に適するセルロースドー
プによって達成される。さらに好ましくは、セルロース
の水酸基のモル分率(c)が(a+c)/b≦4の関係
にあることを特徴とする、上記のセルロースドープによ
って達成される。
【0015】本発明にいうセルロースとは、セルロース
またはその水酸基のごく一部が硫酸ドープ中で安定な置
換基で置換された誘導体をいう。セルロースの重合度は
特に限定されるものではないが、好ましくは100以上
のものが用いられる。これより重合度の小さいもので
は、充分な機械強度の成形物が得られにくいので、工業
的に成形用に供するには不都合を来たし易い。
【0016】さらに、セルロースの重合度が極端に小さ
いもの(例えば20以下)はとても実用に供するに必要
な機械強度を持ち得ず、利用できる範囲は限定的になっ
てしまう。本発明では、一般に工業的に用いられている
範囲のもの(約200〜800)を直接用いることがで
きる。さらに重合度の高いものを用いると溶液の粘度が
大きくなる傾向を示すが、それに耐える能力を備えた溶
解機を使用することで溶液を得ることができる。
【0017】また、溶解し易くするために、前処理を施
すと溶解がし易くなるので好ましい。その前処理の例と
しては、アルカリや酸を用いた蒸気処理(いわゆる蒸
煮)や爆砕などの方法や表面積を大きくするための粉砕
処理などを用いてもよい。本発明に用いる原料セルロー
スは特に限定されるものではなく、木材パルプ、綿など
の天然セルロース、それらを酸加水分解などで重合度調
整したもの、さらにいわゆる再生セルロース、つまり、
一度何らかの溶媒に溶解後中和再生もしくは非溶媒中で
凝固したり易揮発性溶媒成分を蒸発凝固したりして再生
したセルロースなどが挙げられる。
【0018】また、低置換度の安定なセルロース誘導体
(例えばメチルセルロースなど)を用いてもよい。再生
セルロースや低置換度誘導体は他の溶媒への溶解に際し
ても溶解し易いように、本発明の溶媒に対しても溶解は
し易い傾向を示す。
【0019】本発明にいうセルロースの水酸基のモル分
率とは、その重量をグルコース残基当たりの分子量(1
62)で除して水酸基数(3)を乗じた値がドープ中の
水や硫酸を含めた総モル数に占める割合であり、水酸基
を置換したいわゆるセルロース誘導体の場合は、その置
換基と置換度に応じて分子量と水酸基数を換算して算出
したものを言う。
【0020】a/b<3の硫酸そのものはセルロースの
溶解力は十分にあるが解重合や分解作用が激しく、ドー
プ中でもセルロース重合度を大きく低下させてしまうた
め、工業的な利用には耐えないものである。a/b>4
の硫酸そのものはセルロースを膨潤させるが溶解してド
ープを作成することが困難である。本発明の3≦a/b
≦4の範囲に調製したセルロースドープは解重合や分解
が大幅に低減され、工業的に利用できるものである。
【0021】さらに、セルロースの水酸基のモル分率
(c)が(a+c)/b≦4の関係にある上記のセルロ
ースドープは一層安定性に優れ、好ましい。硫酸と水の
混合物(希硫酸)については古くから多くの文献等があ
り、その性質はかなり詳しく研究されている。硫酸(H
2 SO4 )はその化学式から容易に判るように硫酸1分
子に対して4個の水分子を水素結合で水和した構造をと
り得る構造をしている。そして、それぞれ正数倍の水分
子を含んだ状態でその構造は均一な形態を取っているも
のと考えられる。
【0022】その例として、硫酸の凝固点曲線の挙動が
挙げられる(C.M.Gable,H.F.Betz,S.H.Maron;J.Amer.Ch
em.Soc.;vol.72,1445-1448(1950)等)。つまり、凝固点
が極大値を示す濃度は水分子の正数倍の水和物にそれぞ
れ対応している。従来から一般にセルロースの溶媒とし
て言われている領域はH2 SO4 ・3H2 Oより水分子
の少ない状態の硫酸であると言える。
【0023】しかし、この領域の硫酸濃度であるセルロ
ース溶液は、すでに知られているようにセルロースの分
解が激しいため、安定なドープとして工業的に利用する
価値のないものであった。また、これ以下の濃度ではセ
ルロースを溶解する能力が低く、溶液を容易に造ること
ができないとされてきた。
【0024】本発明の溶液は低温で操作を行うことが好
ましい。それは、セルロースの解重合や分解を極力少な
くするためでり、−15℃以下に保った状態で溶解操作
を行うことが好ましい。特に、溶解操作時に濃度の高い
硫酸を用いる場合は更に低い温度、例えば凝固温度付近
で溶解操作を行うことが好ましい。
【0025】セルロースの溶解に際しては、溶解熱、撹
拌熱、周囲からの熱伝導などによって温度が局部的にあ
るいは一時的に上昇する可能性が高く、その場合にはセ
ルロースの解重合や分解が進行し易いために、極力それ
を抑えることが望ましい。
【0026】硫酸の水溶液はその水和分子の安定性、均
一性に起因すると思われる特異な凝固点挙動を示し、濃
度によってその凝固点は大幅に変化する。その凝固温度
は低く、本発明の範囲では−40〜−60℃を示し、低
温でも溶解操作が可能である。さらに、セルロースを溶
解すると硫酸の水和分子の対称性や均一性が壊されるこ
とに起因しているためか、操作温度は一層低温度にする
ことが可能である。
【0027】硫酸水溶液、あるいはセルロースを溶解し
た硫酸溶液の凝固温度が非常に低いことは、溶解や保存
の際に低温度で操作できるため、セルロースの解重合な
どを抑制することができる。例えば、ビスコースドープ
やNaOHドープでは、その組成にもよるが、概ね−2
0℃まで温度を下げて溶解や保存をしようとしても、溶
媒あるいはドープが凍ってしまい、操作が不可能になっ
てしまう。
【0028】本発明のドープはその粘度が非常に大き
く、例えば重合度300程度のセルロースを5重量%溶
解したときにも数千ポイズのものが得られる(ビスコー
スドープではせいぜい十ポイズ、銅アンモニアドープで
は重合度650程度のものでも百ポイズ程度のものしか
得られない。)。
【0029】このために、本発明のドープは成形用に適
しており、糸やフィルムを作成する際には直接紡糸ノズ
ルやスリットから押出して湿式紡糸、製膜することがで
きる。このことはまた、溶解操作や取扱い時に重合度の
低下が少ないことを示している。また、例えば、24時
間経過後の粘度も溶解時の粘度と殆ど同様である。逆
に、本発明のドープを作成する際の操作や条件が不適切
であったり、セルロースの濃度を極端に低く設定したり
して粘度の低いドープを作成しても、成形操作が難しか
ったり、成形したものの機械強度が十分でなかったりし
易いので好ましくない。
【0030】概ね1,000ポイズ以上の粘度のドープ
が得られるように条件や溶解操作を選択すると、容易な
成形操作や十分な機械強度を有する成形品が得られるの
で好ましい。本発明のドープは、その溶解力や溶液安定
性が良いことに起因すると思われるが、高濃度まで溶解
できかつドープは透明であり、経時安定性に優れてい
る。例えば、10重量%の濃度のドープを作成したもの
でもほとんど無色の透明なドープであり、低温で保存す
ると数十日保存後もゲル化することもなく透明であり、
容易に成形用に供することができる。
【0031】本発明のドープは、その溶解状態や機構は
十分に解明された訳ではないが、硫酸1分子に対してそ
れぞれ3分子の水が水和したもの、2分子の水とセルロ
ースの水酸基1個が水和したもの、3分子の水とセルロ
ースの水酸基1個が水和したもの、4分子の水が水和し
たものの混合物と推察される。
【0032】原料セルロースの分子内水素結合や分子間
水素結合が硫酸によって開裂され、硫酸分子または水分
子との水和によって溶解するが、この際、既に3分子以
上の水または水酸基と水和している硫酸はセルロースの
水素結合の開裂能力が低く溶解はしにくいが、分子鎖を
切断する能力も低いために比較的に安定なドープが得ら
れる。
【0033】すなわち、この3分子目または4分子目の
水の代わりにセルロースの水酸基が存在する状態を作っ
たものが本発明のドープ、言い換えればあと2分子の水
または水酸基と水和できる状態の硫酸分子(H2SO4
・2H2O)を含まないようにすることが、安定なセル
ロースの硫酸ドープを作るためには重要な用件であると
考えている。
【0034】このことからは、a/bの値は3以上でで
きるだけ4に近い状態のドープがより好ましい。さら
に、(a+c)/bの値が4以下の状態のドープが一層
好ましい。また、セルロースの低置換度の誘導体や水酸
基を有する他の高分子化合物についても同様の作用があ
ることが推測される。
【0035】本発明の溶液は凝固液に水、アルカリ水溶
液、低濃度の酸水溶液等を用いることで成形できる。特
に低濃度の硫酸あるいは水で凝固させることができるた
め、セルロースの溶解、成形のために用いる試薬は硫酸
と水だけでも可能である。硫酸の濃縮や回収方法は既に
工業的にも確立されており、また揮発性のガス発生や重
金属の排出がなく、また、毒性や爆発性などを有する危
険物を使用する必要がなく、排水や排気に対する公害対
策も大幅に軽減されるものである。
【0036】本発明のドープの製造方法の一例を以下に
示す。本発明のドープは、その水と硫酸の比率が重要で
あることから、原料セルロースまたは溶解操作を容易に
するための前処理を施したセルロースを予めその水分含
有率を測定しておくことが好ましい。
【0037】硫酸水溶液を調製する。濃度は特に限定さ
れないが、60〜75重量%程度のものが適当である。
その水分率を予め測定しておき、セルロース溶解後の水
分量が目的の範囲に入るように考慮しておく。特にセル
ロース濃度の高い(例えば10重量%以上)ドープを作
成する場合は、溶解操作に時間を要する場合がある上
に、水の分子量が小さいことから、水分量の正確な把握
と外部からの侵入を防ぐ工夫がされることが好ましい。
【0038】特に低温度での操作を行うときには、空気
中の水分の凝集によって、水酸基の総量が増加し、目的
の濃度範囲を逸脱する可能性があるために特に注意を払
って操作されることが肝要である。
【0039】硫酸水溶液の温度を下げる。−15℃以下
が望ましい。溶解操作中の温度上昇を考慮すると、より
低温度に維持しておくことが好ましく、該硫酸水溶液の
凝固点付近にしておくと一層好ましい。この温度は、採
用した硫酸水溶液の凝固温度に合わせて適宜選択すると
よい。溶解操作中は、その温度を十分に管理し、−15
℃を上回らないように十分な注意を払いながら操作する
ことが肝要である。
【0040】溶解が完了した後、ドープの組成を確認
し、本発明の組成領域に入るように調整操作を行う(こ
の操作は最初から組成比が本発明領域内で行われる場合
には必要はない。)。調整は水あるいは高濃度の硫酸を
用いて行うが、混合時に大きな発熱を伴うので、温度管
理には十分な注意を払うことが望ましい。また、発熱に
伴う温度上昇を軽減するために、水、高濃度硫酸を予め
凍結させて粉砕したものを用いたり、少量づつ添加する
と好ましい。
【0041】ドープはその粘度に応じて溶解機を選択
し、均一な組成になるまで混合溶解させる。粘度はセル
ロースの濃度、重合度等によって異なり、また、原料の
前処理の方法によって溶解のし易さの程度に差があるこ
とから、溶解時間はドープの状態に応じて適宜選択され
るべきである。
【0042】溶解操作が完了したドープは必要に応じて
フィルターなどで異物等を除去した後、外部からの水蒸
気の凝集による吸湿を防止できる容器に入れて低温で保
存する。セルロースの解重合を抑制するためにはより低
温である方が好ましいが、冷却費用の面からも−15℃
以下であれば解重合の速度は比較的遅く、成形に必要な
操作にかかる時間内では重合度の低下が殆ど見られない
ので十分である。
【0043】得られたドープはフィルムや糸、その他成
形体に成形できる。フィルムはアプリケーターを用いて
ガラス板などに流延して水や希薄酸液の凝固浴に直接浸
漬する方法や矩形ノズルから直接凝固浴に押し出す方法
などによって容易に作成することができる。糸の作成も
同様にノズルからドープを凝固浴中に直接押し出す従来
の湿式紡糸方法で作成できる。
【0044】凝固したフィルムや糸は通常行われている
ような方法で精練を行い、その後乾燥させる。油剤や柔
軟剤は用途に応じて適宜選択されてよい。凝固液や精練
液の温度は低温が好ましいが、接触時間が短かったり、
硫酸濃度が十分低下した後は解重合も起こりにくいた
め、生産性と合わせて適当な条件が採用されてよい。
【0045】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明およびその効果
を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を制限す
るものではない。なお、百分率は特に断わらない限り重
量によるものである。
【0046】(実施例1)爆砕処理後粉砕した重合度3
00のセルロース100gを原料として用いた。水分率
は18%であった。予め62%の濃度に調製して−30
℃に冷却した硫酸965gに冷却装置付きの密閉できる
双腕型捏和機を使用して溶解させた。
【0047】セルロースの添加は約20g/分程度の速
度で行い、捏和機にはドープの温度上昇を防止するため
に冷媒を循環させた。その後粉砕した氷29gを少量ず
つ添加して混合して濃度調製を行った。操作中は外気の
水分凝集を防ぐためにチャンバーを取り付けてセルロー
ス及び氷の添加を行った。できたドープはほとんど無色
で透明であり、粘度は1.5万ポイズ、組成はセルロー
ス濃度7.5%、硫酸濃度54.7%であった(このド
ープ中の水のモル数は対硫酸3.76、総水酸基モル数
は対硫酸4.01)。
【0048】得られたドープをガラス板上に流延し、水
を凝固浴として製膜したフィルムの重合度を測定した。
また、このドープを−20℃で保存し、24時間後にガ
ラス板上に流延し、水を凝固浴として製膜したフィルム
の重合度を測定した。その重合度及びその低下率は表1
に示すように小さいものであった。また、このフィルム
の乾強度は表1に示すように十分な強度を持ったもので
あった。
【0049】(実施例2)針葉樹パルプを粉砕した重合
度750のセルロース65gを用いた他は、実施例1と
同様の方法によってドープを作成した。得られたドープ
は淡黄色で透明であり、粘度は4.6万ポイズ、セルロ
ース濃度は5.0%、硫酸濃度は56.5%であった
(このドープ中の水のモル数は対硫酸3.71、総水酸
基モル数は対硫酸3.87)。
【0050】実施例1と同様にして作成したフィルムの
重合度及びその低下率は表1に示すように小さいもので
あった。また、このフィルムの乾強度は表1に示すよう
に十分な強度を持ったものであった。
【0051】(比較例1)氷の代わりに氷結させた97
%硫酸を粉砕したもの400gを用いた他は、実施例1
と同様の製法でセルロース濃度5.6%、硫酸濃度6
7.3%のドープを作成した(このドープ中の水のモル
数は対硫酸2.19)。
【0052】実施例1と同様にして作成したフィルムの
重合度及びその低下率は表1に示すように大きく低下し
たものであった。またこのフィルムの乾強度も大きく低
下したものであった。
【0053】(比較例2)実施例1のドープにさらに氷
を50g添加して硫酸濃度が52.3%のドープを作成
した(このドープ中の水のモル数は対硫酸4.22)。
実施例1と同様にして作成したフィルムのセルロースの
重合度低下は殆どないものの、ドープは一部凝固したゲ
ル状を呈してしまい、安定した製膜は不可能であった。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】本発明のセルロースドープは、従来の硫
酸水溶液に比べてその安定性に優れており、粘度が高
く、高い濃度でも透明なドープであり、工業的な成形に
適している。また、本発明のセルロースドープは、他の
溶媒系のドープに比べて重金属や有機溶媒等を含んでお
らず、毒性や環境対策面でも工業的に優れたものであ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロースを溶解した硫酸水溶液であっ
    て、その溶液中の水のモル分率(a)及び硫酸のモル分
    率(b)が3≦a/b≦4の関係にあることを特徴とす
    る、安定で成形に適するセルロースドープ。
  2. 【請求項2】 セルロースの水酸基のモル分率(c)が
    (a+c)/b≦4の関係にあることを特徴とする、請
    求項1記載のセルロースドープ。
JP35728892A 1992-12-24 1992-12-24 セルロースドープ Withdrawn JPH06192475A (ja)

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JP (1) JPH06192475A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016536481A (ja) * 2013-09-02 2016-11-24 海斯摩爾生物科技有限公司 高粘度純キトサンの紡糸液の複合式気泡抜き方法

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