JPH0618480Y2 - 培養容器 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の目的〕 （産業上の利用分野） 本考案は植物等の培養に用いる培養容器に関する。

（従来の技術） 近年、微生物、組織細胞などを分裂増殖させる、いわゆ
る培養が盛んに行なわれており、とくに組織培養と称さ
れる細胞の培養は細胞群または組織片を培養するもので
あるが、この培養においては培地が必要であり、これを
入れるために種々の容器が用いられている。

このような目的を持つ容器としては、例えば第８図に示
すように透明ガラス製の三角フラスコがあり、このフラ
スコａ内に培地ｂを入れたのち組織片などを置床するよ
うになされている。この場合、フラスコａ内に細胞の侵
入を防ぐため第８図（Ａ）のようにアルミ箔ｃで覆うよ
うにしたもの、第８図（Ｂ）のように綿栓ｄによるもの
や、第８図（Ｃ）のようにシリコン栓ｅによるものなど
が用いられる。

また、第９図に示すように厚肉のプラスチックなどで作
られた四角形の深底の箱ｆに浅い蓋ｇを被せて容器とし
たものがあり、この箱ｆ内に培地を入れ、培地に組織片
を置床して培養するものがある。

（考案が解決しようとする課題） しかるに前記の三角フラスコａによるものでは下記のよ
うな欠点がある。すなわち (1)培地を分注する場合、容器の口部が小さくかつ深底
のため培地の表面が遠く、表面に届くようにするにはピ
ンセットなどを用いて奥部まで挿入しなければならない
難しさがあり、やり損なうと培地が飛散して容器内が汚
れやすい。

(2)小さい植物片を置床する場合、方向を揃えることが
難しく、作業効率が著しく悪い。

(3)容器内で育成した培養物を他の容器に植え替える際
に深い容器の底部からつまみ出さなければならないため
に培養物を傷つけやすい。

(4)水分過多による形態異常の発生、成育の遅延、活着
率の低下をきたしやすい。

ことなどが指摘され、またアルミ箔による蓋の場合には
培養液がアルミ箔に接触すると接触部位から枯死が起る
という問題もある。

このような三角フラスコａによる容器に対し第９図示の
容器を用いた場合には、三角フラスコ程の使いにくさは
ないにしても、深底の容器である以上前記(1)〜(3)と同
様な問題は避けられず、また容器を構成する箱ｆの上部
に蓋ｇが被嵌されてその嵌合部が二重構造ｈとなってお
り、この部分は植物の育成に必要な直射光ｌの透過が著
しく低下して、培養容器としての透光面積が制限される
などの欠点を有している。

さらにこのような容器に通気性を与えるための栓を施す
につき、従来容器の蓋に通気用の孔をあけ、これに通気
栓を詰めて容器内に通気性を与えるようにしている。し
かし、この通気栓の材質によっては蒸気細菌したとき線
が吸湿して収縮し、通気栓としての機能を失うばかりで
なく、水分が容器内に侵入して植物細胞に悪影響を及ぼ
すという問題があった。

本考案はこれに鑑み、乾式はもちろん蒸気による湿式殺
菌を可能として汚染上の問題のない通気栓を有する培養
容器を提供することを目的としてなされたものである。

〔考案の構成〕

（課題を解決するための手段） 上記従来技術が有する課題を解決する手段として、本考
案は、容器本体と、この容器本体の上部開放部を閉止す
る蓋とを有する培養容器において、前記容器本体および
蓋を光透過性および耐熱性を有する薄肉プラスチック材
により形成し、前記容器本体は培地を収容するための底
部と浅い側壁とを有していてその側壁の上端に蓋結合部
を形成し、前記蓋は天板と縦長の側壁とを有していて深
い器状に形成し、その側壁の下端に前記蓋結合部に結合
可能な本体結合部を形成し、前記蓋の天板にはレンズを
形成するとともにその一側に通気孔を有する栓収納凹部
を設け、この凹部内に湿式加熱殺菌処理に非収縮の素材
からなる通気栓を詰納し、前記蓋の天板の周縁上部に前
記容器本体の底部が嵌合し得る突縁を形成して容器を積
み重ね自在とするとともに、前記栓収納凹部の上部開口
部の周縁に前記突縁より高さの低い突堤を設けたことを
特徴とするものである。

（作用） 上記の構成により、容器本体内に培地を収容してその中
に植物等の組織片を置床し、蓋を被嵌すれば、蓋の天板
に備える通気栓により雑菌の侵入を防ぐ一方、容器内へ
の通気が確保される。容器の蒸気殺菌を行なっても、通
気栓は非収縮性素材からなるので収縮することがなく、
通気栓としての機能を失うことがない。また容器の上方
部には二重構造となる部分がないので、外光の透過が妨
げられず、植物組織等の培養物の生育が良好に行なわれ
る。さらに蓋の天板にあるレンズを通じて内部の様子を
拡大して観察することができる。

（実施例） 以下、本考案を第１図乃至第６図に示す実施例を参照し
て説明する。

本考案による培養容器１は、略円筒形状を有するもの
で、容器本体２と、この容器本体２の上部開口部に被嵌
される蓋３とからなっており、いずれも透明なプラスチ
ック、例えばポリカーボネイト等の加熱殺菌処理に耐え
得る耐熱性に富むプラスチック材により形成されてい
る。

容器本体２は、円形の底部４と、その周囲に立上がる浅
い側壁５とからなる器状のもので、側壁５の上端には蓋
結合部６が形成されている。

蓋３は、円形の天板７と、この天板７の周囲に垂設され
た深い側壁８とからなっており、この側壁８の高さは前
記容器本体２の高さの約２倍程度の寸法とされている。
上記側壁８の下端には、前記本体２の側壁上端の蓋結合
部６に可及的密に外嵌される本体結合部９が形成されて
いる。なおこれら結合部６，９は図示の実施例では嵌め
合わせによって容器本体２と蓋３とが結合されるように
しているが、これは第６図示のようにネジ１０，１１の
付加、バヨネット等の結合手段の付加は任意である。

蓋３の天板７の周囲には、容器本体２の底部４の下面周
縁に形成された段部１２が係合して容器本体２がずれ動
くことなくスタックするための突縁１３が形成されてお
り、突縁１３の内周面１３ａは上方に向けて拡開するテ
ーパー面とされている。

この蓋３の天板７の一側寄りには、第３図に当該部位の
拡大断面を示すように栓収納凹部１４が一体に形成され
ている。この栓納凹部１４は、その内径が８〜９m/m、
深さが１０m/m程度とされるもので、蓋３の天板７の下
面側に側壁８の内面にそうように円筒形の器状をないて
形成された周壁１５により囲まれて形成されており、そ
の上部は天板７の上面に開放され、下底部１６には通気
孔１７が穿設されている。

この栓収納凹部１４の上部開口部の開口縁には、天板７
の周縁の突縁１３より高さの低い突堤１８が周設されて
おり、この突堤１８は前記突縁１３に係合して重ねられ
る容器本体２の底部４が丁度当るか乃至は当らない高さ
とされている。

栓収納凹部１４内には、円筒状に形成された通気栓１９
が可及的密に挿着される。この通気栓１９は、乾式殺菌
はもとより、湿式（蒸気）殺菌により吸湿しても収縮す
ることのない材料からなっている。その材料としては、
例えば不織布をその繊維方向を軸方向として巻成、折り
畳み、集約等により丸めたものを和紙等でくるんで第５
図示のように円筒状に形成されたもので、太さ８〜９
φ、長さ１１m/m程度とされる。

前記蓋３の天板７にはレンズ２０が一体的に形成されて
いる。このレンズ２０は、外面側が平面で内面側が凸面
とされた平凸レンズ構造を有し、観察物までの距離を
ａ、像までの距離をｂ，レンズの焦点距離をｆとすると
き、ａ＜ｆとして虚像を得るようにし、拡大倍率Ｘ＝ｂ
／ａは１．３＜Ｘ＜２．０の範囲とすることが望まし
い。

次に上記実施例の作用を説明する。

容器本体２内に培地２１を収容し、その中に植物等の組
織片を置床する。この置床に際しては容器本体２が浅い
構造であるため培地２１が容器本体２の上部開放面に近
い位置にあり、置床作業が容易にでき、方向揃えも簡単
にできる。

次いで容器本体２の蓋結合部６に蓋３の本体結合部９を
嵌めつければ、第１図示のように縦長円筒状の培養容器
１となる。

このように蓋３が結合された培養容器１は、その内部が
蓋３の栓収納凹部１４内に嵌入された通気栓１９および
栓収納凹部１４の下底部１６の通気孔１７を通して外気
に連通した状態におかれ、好気培養についても支障なく
行なえる。また培養容器１は光透過性に優れており、し
かも蓋３と容器本体２との結合部６，９が低い位置にあ
るため、上方からの直射光の入射が妨げられず、培地２
１に対し十分な光が与えられ、成育が一層助長される。
また培養容器１内の組織片の成長状態等の観察には、培
養容器１の蓋３の天板７にあるレンズ２０を通して内部
を見ることにより、細部を拡大して観察することができ
る。空の培養容器１をスタックするには、第７図に示す
ように培養容器１，１を重ねれば、上位の容器本体１の
下面周縁の段部１２が下位の培養容器１の蓋３の周縁に
突出する突縁１３に係合してずれ動くことのないよう整
然と積み重ねることができる。

一方、培養容器１の蓋３の通気栓１９は耐熱性に富み、
かつ吸水しても収縮しないので、通気機能を失うことが
ないとともに、ゆるんで外れ落ちることもなく、前記の
スタック時にも栓収納凹部１４の開口部周縁の突堤１８
により通気栓１９の上部露出部分がガードされるので潰
れるおそれがなく、しかも蓋３の上面に溜った水分が上
記突堤１８によって栓収納凹部１４に流れ込むことが防
がれ、培養容器１内への水の浸入が防止される。

なお図示の実施例では、容器本体２および蓋３を断面円
形とした場合について示したが、これは多角形としても
よく、またレンズ２０は平凸レンズに限らず、フレネル
レンズ構造としてもよい。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案によれば、培養容器の蓋の天
板に栓収納凹部を形成し、この凹部内に耐熱性に富みか
つ吸水しても収縮することのない材料（例えば不織布）
により繊維方向を長手方向として円筒状に形成した通気
栓を嵌着したので、培養容器の内部の通気性を確保する
ことができながら培養容器の蒸気殺菌処理を可能とする
ことができる。

また栓収納凹部の開口部周縁に突堤が設けられているの
で、蓋の天板上に溜った水分が栓収納凹部に流れ込むこ
とがなく、培養容器内に水が浸入することが防がれ、植
物細胞等のコンタミネーションの発生を防止することが
できながら培養容器を積み重ねてスタックすることが支
障なく行なえ、しかも培養容器のハンドリング時にも方
向性がないので将来のロボット化や自動移植化に対応す
ることができる。

さらに容器本体および蓋を耐熱性に富む光透過性プラス
チック材により形成するとともに、容器本体は浅く、蓋
を深く形成してあるので、両者の結合部が外光入射の妨
げとならず、培養容器内への直射光の入射光量が多くな
り、培養効率を著しく高めることができるうえ、容器本
体内への培地の分注や植物組織片の置床作業が容易にで
きる。

さらに培養容器の蓋の天板にレンズが形成されているの
で、培養容器内の細部を明瞭に観察することができ、組
織片の成長状況やコンタミネーションの発生状況等を適
確に把握することができる。

前記通気栓の材料に不織布を選択し、この不織布をその
繊維方向が長手方向となるようにして円筒形に形成した
ものを使用すれば、従来用いられていたシリコン系、青
梅綿系の通気栓に較べ極めて安価（1/10以下）に得ら
れ、それでいて上記殺菌処理を行なっても殆ど収縮が認
められず、本考案において用いる通気栓の材料として最
も適当である。この場合の通気栓の長さは、栓収納凹部
の深さに突堤の高さを加えた寸法とするのがよい。

【図面の簡単な説明】 第１図は本考案の一実施例を示す斜視図、第２図は同平
面図、第３図は第１図における培養容器を分解して示
し、第３図（Ａ）は蓋の半部を縦断した正面図、第３図
（Ｂ）は容器本体の半部を縦断した正面図、第４図は同
要部の拡大断面図、第５図は第１図における通気栓の斜
視図、第６図は容器本体と蓋との結合部の他の例を示す
部分断面図、第７図は第１図の培養容器を積み重ねた状
態の説明図、第８図は従来の三角フラスコ型のガラス製
培養容器の斜視図で、（Ａ）はアルミ箔による栓、
（Ｂ）は綿栓、（Ｃ）はシリコン栓によるそれぞれの状
態図、第９図は従来のプラスチック製培養容器の斜視図
である。 １…培養容器、２…容器本体、３…蓋、４…底部、５…
側壁、６…蓋結合部、７…天板、９…本体結合部、１３
…突縁、１４…栓収納凹部、１５…周壁、１７…通気
孔、１８…突堤、１９…通気栓、２０…レンズ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】容器本体と、この容器本体の上部開放部を
   閉止する蓋とを有する培養容器において、前記容器本体
   および蓋を光透過性および耐熱性を有する薄肉プラスチ
   ック材により形成し、前記容器本体は培地を収容するた
   めの底部と浅い側壁とを有していてその側壁の上端に蓋
   結合部を形成し、前記蓋は天板と縦長の側壁とを有して
   いて深い器状に形成し、その側壁の下端に前記蓋結合部
   に結合可能な本体結合部を形成し、前記蓋の天板にはレ
   ンズを形成するとともにその一側に通気孔を有する栓収
   納凹部を設け、この凹部内に湿式加熱殺菌処理に非収縮
   の素材からなる通気栓を詰納し、前記蓋の天板の周縁上
   部に前記容器本体の底部が嵌合し得る突縁を形成して容
   器を積み重ね自在とするとともに、前記栓収納凹部の上
   部開口部の周縁に前記突縁より高さの低い突堤を設けた
   ことを特徴とする培養容器。