JPH06148193A - 抗リン脂質抗体結合用担体及び該担体を用いた免疫学的測定法 - Google Patents

抗リン脂質抗体結合用担体及び該担体を用いた免疫学的測定法

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JPH06148193A
JPH06148193A JP29452292A JP29452292A JPH06148193A JP H06148193 A JPH06148193 A JP H06148193A JP 29452292 A JP29452292 A JP 29452292A JP 29452292 A JP29452292 A JP 29452292A JP H06148193 A JPH06148193 A JP H06148193A
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cardiolipin
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JP29452292A
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Tamio Kobayashi
民雄 小林
Katsuyuki Tamai
克之 玉井
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IGAKU SEIBUTSUGAKU KENKYUSHO K
Medical and Biological Laboratories Co Ltd
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IGAKU SEIBUTSUGAKU KENKYUSHO K
Medical and Biological Laboratories Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 保存性が向上された抗リン脂質抗体結合用担
体及びそれを用いる簡便で良好な精度及び感度の免疫学
的測定法を提供する。 【構成】 カルジオリピン50μg/ml及びコレステ
ロール200μg/mlのエタノール溶液をELISA
専用96ウエルマイクロプレート各々一ウエルにつき5
0μ1づつ添加し、ウエル中のエタノールを減圧または
自然乾燥させた後PBS(pH7.4)300μ1で3
回洗浄する。続いて10%の子牛血清(FCS)[γー
グロブリンを除いたもの]を含有するPBS300μ1
を各ウエルに加え、室温で2時間放置した後この溶液を
捨て、減圧または自然乾燥させて抗カリジオリピン抗体
結合用担体を得る。担体にコレステロールをさらに処理
させたことによって、長期保存下にもカルジオリピンを
変質させず、従ってカルジオリピンの保存性が向上され
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自己免疫疾患診断試薬
に関し、特に抗リン脂質抗体症候群に特異的に出現する
自己抗体である抗リン脂質抗体の検出において用いられ
る抗リン脂質抗体結合用担体及びそれを用いる抗リン脂
質抗体の免疫学的測定法に関する。
【0002】
【従来の技術】膠原病をはじめとする自己免疫疾患にお
いては、血清中に検出される自己抗体の測定が疾患の診
断、病型分類、治療方法の決定、予後の推定等に大変有
用であり、抗核抗体、抗ENA抗体等多様な抗体が測定
されている。近年このような自己抗体の一つとして生体
の重要な構成成分の一つであるリン脂質に対する抗体が
注目を集めている。抗カルジオリピン抗体もこのような
抗リン脂質抗体の一つである。
【0003】従来、全身性エリテマトーデス(SLE)
患者が妊娠した場合、自然流産や子宮内胎児死亡を起こ
し易いことが知られていたが、このような患者において
は、血清中に抗カリジオリピン抗体が高い頻度で存在す
ることが明らかとなった。また、心筋梗塞や、肺梗塞、
脳血栓などの血栓症および血漿板減少症と抗カルジオリ
ピン抗体の出現とがよく相関することが知られるように
なり、1986年、ヒューズ ハリス(Hughes,
Harris)らは、「抗カリジオリピン抗体症候群」
という疾患概念を提唱した。その後、他の陰性荷電を有
するリン脂質に対する抗体も同時に認められることか
ら、「抗リン脂質抗体症候群」と呼ばれるようになっ
た。
【0004】リン脂質に反応する抗体としては、抗カリ
ジオリピン抗体の他に、梅毒反応生物学的偽陽性(BF
P:Biologically false posi
tive serologic tests for
syphilis)やループス抗凝固因子(LAC:L
upus anticoagulant )などが知ら
れている。
【0005】従来、抗カリジオリピン抗体をはじめとす
る抗リン脂質抗体は、前述の梅毒反応に対する偽陽性
(BFP)や血液凝固能に対する阻害因子として間接的
に知られるにすぎなかったが、最近になって、ラジオイ
ムノアッセイ(RIA)(Harris E.N.,a
l:Anticardiolopin antibod
ies:Detection by radioimm
unoassay and association
with thrombosis in system
iclupus erythematosus.Lan
cet 2:1211〜1214 1983)や酵素免
疫測定法(ELISA)等による高感度な測定法(Ha
rris E.N.,al:Evaluation o
f theanti−cardiolipin ant
ibody test:report of an i
nternational heid worksho
p4 April 1986.Clin.Exp.Im
munol.68:215〜222,1987)が試み
られるようになってきた。
【0006】これらの測定法で抗リン脂質抗体を測定す
るには、例えば、適当な担体に抗原であるリン脂質を担
持させ、このリン脂質と被検体中の抗リン脂質抗体とを
反応させ、この反応物を、例えば放射性同位元素または
酵素等で標識した抗体等を用いて測定することにより、
目的とする抗リン脂質抗体を間接的に定量している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法において用いられる、リン脂質を担持させた担体
は、リン脂質が不安定であるために、そのままの状態で
は保存性が悪く、充分な反応性を維持することができな
かった。保存によりリン脂質は変化し、陽性検体に対し
ては定量値が低くなり、また陰性検体に対しては抗原抗
体反応によらない非特異反応が高くなり、陰性と陽性と
の区別さえも困難であった。従って、測定する直前に担
体にリン脂質を担持させる必要があった。しかし、測定
準備に時間を要し、その結果、判定が遅くなるととも
に、複数回の測定間に誤差を生ずる恐れもあった。ま
た、測定毎に担体を調整するため、担体自体の品質も一
定のものが得にくいといった問題もあった。極めて低温
である条件下に保存させて反応性を幾分維持させること
もできるが、完全なものではなかった。
【0008】本発明は、上記課題を解決し、保存性が向
上された抗リン脂質抗体結合用担体及びそれを用いる簡
便で良好な精度及び感度の免疫学的測定法を提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】本第1発明の抗
リン脂質抗体結合用担体は、ステロイドまたはその誘導
体とリン脂質とを処理させてなることを特徴とする。本
第2発明の抗リン脂質抗体の免疫学的測定法は、本第1
発明の抗リン脂質抗体結合用担体を用いることを特徴と
する。
【0010】1.抗リン脂質抗体結合用担体 1−1.ステロイドまたはその誘導体 「ステロイド」とは、シクロペンタノヒドロフェナント
レン環、即ち、下記一般式[1];
【0011】
【化1】
【0012】を有する化合物を意味する。上式中、環中
において1個以上の二重結合があってもよく、いずれの
炭素原子において置換基がいくつあってもよい。「その
誘導体」とは、上記一般式のステロイド分子内の小部分
の変化によって生成した化合物を意味し、置換反応、付
加反応または脱離反応等によって生じた生成物が含まれ
る。
【0013】例えば、コレステロール、エルゴステロー
ル、ジヒドロコレステロール、7ーオキシコレステロー
ル、7ーデヒドロコレステロール、テストステロン、コ
ルチコステロン、エストラジオール、プロゲステロン、
コーチゾン、ビタミンD、デオキシコール酸、胆汁酸か
らなる群から選ばれる少なくとも1種、特に、コレステ
ロールを含むことが好ましい。
【0014】添加濃度は、担体に対して50〜500μ
g/ml、好ましくは200μg/mlである。これよ
りも少ないと効果が得られなく、また、これよりも多い
と測定に影響を及ぼすため、実施不可能である。 1−2.リン脂質 本発明におけるリン脂質とは、そのホスホジエステル結
合の近位に電子供与性官能基を有するものであって、特
に下記一般式[2];
【0015】
【化2】
【0016】(式中、R1及びR2は同一または異なり、
炭素鎖中にアルキル基もしくはアルケニル基を有するア
シル基、アルキル基またはアルケニル基を示し、R3
水素原子またはー(CH2nーCHR4−R5を示し、R
4は水素原子、水酸基、カルボキシル基、ホルミル基、
メルカプト基もしくはハロゲン原子を示し、R5はアミ
ノ基、ヒドロキシアルキル基もしくは下記一般式
[3];
【0017】
【化3】
【0018】(式中、R1及びR2は前記と同意義)で表
される置換基を示し、またはR4とR5とで糖もしくは糖
アルコール残基を示し、nは0ないし3の整数を示す)
で表されるグリセロリン脂質が好ましい。このグリセロ
リン脂質は陰性荷電を有するものであり、このようなグ
リセロリン脂質として、具体的には、カルジオリピン、
ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、
ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジン酸が
例示される。
【0019】特に、カルジオリピンが好ましい。カルジ
オリピンは、通常牛などの哺乳動物の心臓、大腸菌など
の微生物から調製されるが、特に哺乳動物の心臓から得
られるものが好ましい。これらは、その由来、脂肪酸組
成、精製度などには限定されず、塩型であっても、遊離
型であってもよく、担体物質への結合に際して溶解すべ
き溶媒も限定されないが、精製度は試薬級以上のものが
好ましい。
【0020】添加濃度は、担体に対して、25〜200
μg/mlが適当である。リン脂質は単純に担体表面に
付着しただけでは抗リン脂質抗体との反応性を得ること
はできず、担体表面にミセルを形成することによって抗
原性を発揮していると思われるが、これよりも少ないと
適当なミセルとして担体表面に形成されないため、抗体
と反応することができない。また、これよりも多いと余
分なリン脂質が担体表面からはがれ、遊離したリン脂質
が抗体との結合を阻害するため、適当でない。
【0021】1−3.担体 本発明において使用される担体物質としては、リン脂質
を結合することができ、測定に際し、免疫反応(抗原抗
体反応)を阻害しないものであれば特に限定されない
が、BF分離(免疫反応において免疫複合体を形成した
標識体と遊離の標識体の分離をいう)が容易に行えるこ
とを考慮すると、反応液に不溶性の担体物質(固相)が
好ましい。
【0022】反応液に不溶性の担体物質の材質として
は、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン−
ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−無水マレイン酸
共重合体、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリアク
リルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、
ポリメチレンメタクリレートなどの合成有機高分子化合
物、デキストラン誘導体(セファデックスなど)、アガ
ロースゲル(セファロース、バイオゲルなど)、セルロ
ース(ペーパー・ディスク、濾紙など)などの多糖類、
ガラス、シリカゲル、シリコーンなどの無機高分子化合
物が挙げられ、これらはアミノ基、アミノアルキル基、
カルボキシル基、アシル基、水酸基などの官能基を導入
したものであってもよい。なお、担体物質の材質は、蛋
白質の結合能の低いものが好ましく、このような材質と
しては未処理のポリスチレン、ポリ塩化ビニルが例示さ
れる。
【0023】反応液に不溶性の担体物質の形状は、平板
状(マイクロタイタープレート、ディスクなど)、粒子
状(ビーズなど)、管状(試験管など)、繊維状、膜
状、微粒子状(ラテックス粒子など)、カプセル状、小
胞体状、リポソーム状(多層もしくは単層の脂質膜)な
どが例示され、測定法に応じた適宜な形状の担体を選択
することができる。
【0024】1−4.抗リン脂質抗体結合用担体の作成 本発明による抗リン脂質抗体結合用担体は、上記リン脂
質と上記ステロイドまたはその誘導体とを上記担体物質
に処理させたものである。ここで「処理」とは、抗リン
脂質抗体結合用担体に対し、これらの物質が作用し、物
理的もしくは化学的に結合しうる操作をいう。リン脂質
とステロイドまたはその誘導体とは、担体に対して同時
に処理させてもよくまたは各々別個に処理させてもよ
い。
【0025】リン脂質及びステロイドまたはその誘導体
と担体物質との処理方法は、物理的吸着法、イオン結合
法、共有結合法、包括法など公知の方法(例えば、「固
定化酵素」(千畑一郎編昭和50年3月20日、(株)
講談社発行)参照)を採用することができる。とりわ
け、物理的吸着法は簡便である点で好ましい。また、リ
ン脂質及びステロイドまたはその誘導体と担体物質との
処理は、直接行ってもよく、両物質の間に他の物質を介
して行ってもよい。
【0026】物理的吸着法によってリン脂質とステロイ
ドまたはその誘導体とを担体物質に結合させるには、通
常、リン脂質の有機溶媒(メタノール、エタノール、ク
ロロホルムなどリン脂質とステロイドまたはその誘導体
とを溶解できる有機溶媒)溶液とステロイドまたはその
誘導体の同様な有機溶剤溶液とを、各々別々にまたは同
時に担体物質に一定時間接触させ、溶液の有機溶媒を留
去する方法を用いることができる。溶媒の留去は減圧乾
燥、通風乾燥などの公知の方法によって行うことができ
る。
【0027】また、リン脂質とステロイドまたはその誘
導体との有機溶媒溶液から溶媒を留去することによって
リン脂質とステロイドまたはその誘導体とを担体物質以
外の物質の表面に各々別個または同時に一旦吸着させ、
これを緩衝液(例えば、ナトリウム系、カリウム系また
はナトリウム−カリウム系のリン酸緩衝食塩水)などに
懸濁した後、この懸濁液と担体物質を一定時間(例え
ば、数十分〜数時間)、反応を阻害しない温度条件下
(例えば、0〜50℃)で接触させ、次いで溶液を吸
引、傾寫、遠心分離などの方法によって除去し、さらに
必要に応じて乾燥(減圧乾燥、通風乾燥など)する方法
によってリン脂質とステロイドまたはその誘導体とを担
体物質に結合させることもできる。
【0028】その後、担体を緩衝液などで洗浄してもよ
い。コレステロールによってリン脂質の保存性が向上さ
れる理由は、まだ不明であるが、以下のような理由によ
るものと考えられる。即ち、リン脂質の脂肪酸側鎖は酸
化されやすく、酸化によって抗原性を発揮するべきミセ
ル形成が阻害されるが、コレステロール等のステロイド
またはその誘導体はリン脂質に替わって酸化される(還
元剤)ことによってリン脂質の酸化を防ぎ、抗原性の保
持に役立っている。
【0029】本発明において使用される抗リン脂質抗体
結合用担体は、リン脂質及びステロイドまたはその誘導
体によって処理されたうえに、さらに血清等で処理され
たものが好ましい。具体的には、この処理は、子牛血
清、好ましくはγーグロブリン分画を除いた子牛血清等
を含有する溶液を担体物質と一定時間(例えば、数十分
〜数時間、好ましくは2時間)、反応を阻害しない温度
条件下(例えば、0〜50℃、好ましくは室温)で接触
させることによって行うことができる。このような処理
を行うに際し、子牛血清等を溶解する溶媒は特に限定さ
れないが、通常は緩衝液(ナトリウム系、カリウム系ま
たはナトリウム−カリウム系のリン酸緩衝生理食塩水な
ど)などが使用される。また、このような処理を行う際
に糖類(シュークロースなどの少糖類、デキストリン、
サイクロデキストリン、デキストランなどの多糖類、単
糖類など)などを共存させることは、抗原性を発揮する
ミセル形成を促進するので、抗リン脂質抗体との反応性
が高まり、好ましい。
【0030】上記の処理によって、リン脂質が結合され
ていない担体物質表面上がブロッキングされるので、他
の血清中蛋白質の担体への非特異吸着及び後の工程にお
ける標識抗体の非特異吸着が防止されるため、測定精度
を向上させることができる。なお、本発明の抗リン脂質
抗体結合用担体は、免疫学的測定にだけでなく、抗リン
脂質抗体を選択的に吸着除去または分離精製するための
種々の用途に使用できる。例えば、血漿交換療法におい
て、抗リン脂質抗体の選択的な吸着体として使用できる
(例えば、特開平1−68273参照)。また、抗リン
脂質抗体を分離精製するためのアフィニティークロマト
グラフィー用吸着剤としても使用できる。
【0031】本発明の抗リン脂質抗体結合用担体によれ
ば、保存性が向上されたことによって、変性等の恐れも
なく、長期に渡って一定の品質のものを得ることができ
る。このため、簡便で良好な精度及び感度にて抗リン脂
質抗体を測定することが可能となる。
【0032】2.本発明の抗リン脂質抗体結合用担体を
用いた免疫学的測定法(以下、本発明方法と呼ぶ) 2−1.抗リン脂質抗体症候群 本発明方法は、抗リン脂質抗体症候群の診断の目的に使
用することができる。ここで抗リン脂質抗体症候群とは
自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス(SLE)、習
慣性流産など)のうち、その患者の体液中に抗リン脂質
抗体が出現する疾患をいう。
【0033】本発明の免疫学的測定法は、保存性のよい
抗リン脂質抗体結合用担体を用いることによって、簡便
に良好な精度及び感度で測定できるところに特徴を有す
るものである。 2−2.本発明方法の適用方法 本発明の免疫学的測定法とは、抗リン脂質抗体の測定を
目的とし、上記の抗リン脂質抗体結合用担体を用い、抗
原抗体反応に基づく方法であれば、その操作方法、標識
物質(マーカー)、被標識物質、担体、BF分離法など
の種類は問わない。免疫学的測定法して知られている公
知の方法から本発明の目的に適合する方法を適宜選択す
ることができる。
【0034】公知の免疫学的測定法としては以下の方法
が知られている。抗原抗体反応の反応様式による分類と
して、競合反応法と非競合反応法(イムノメトリックア
ッセイ)が知られているが、本発明においては非競合反
応法が好ましい。
【0035】検出方法による分類として、抗原抗体反応
の結果を直接検出する非標識法(ネフェロメトリーな
ど)と、なんらかのマーカーを使用して検出する標識法
が知られているが、本発明ではいずれの方法によっても
よい。測定感度などを考慮すると、特に標識法が好まし
い。なお、標識法において使用される標識物質(マーカ
ー)については後に説明する。
【0036】BF分離を行う必要のあるヘテロジニアス
法と必要のないホモジニアス法が知られており、本発明
にはいずれの方法を適用してもよい。反応相による分類
として、全反応が液相で行われる液相法と免疫反応の相
手を固相化して反応を行う固相法が知られているが、本
発明においては前記の担体物質として反応液可溶性の物
質を使用する場合が液相法に相当し、反応液不溶性の物
質を使用する場合が固相法に相当する。
【0037】以上、公知の免疫学的測定と本発明との関
係を説明したが、一般的方法ついては以下の文献に詳細
に記載されている。 入江 寛編「続 ラジオイムノアッセイ」((株)講
談社、昭和54年5月1日発行) 石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)((株)
医学書院、1982年12月15日発行) 臨床病理 臨時増刊 特集第53号「臨床検査のため
のイムノアッセイ−技術と応用−」(臨床病理刊行会、
1983年発行) 「バイオテクノロジー事典」((株)シーエムシー、
1986年10月9日発行) 「メソッズ・イン・エンザイモロジー[Method
s in ENZYMOLOGY]」Vol.70
(イムノケミカル・テクニックス(第A部)[Immu
nochemical techniques(Par
t A)]) 「メソッズ・イン・エンザイモロジー[Method
s in ENZYMOLOGY]」Vol.73
(イムノケミカル・テクニックス(第B部)[Immu
nochemical techniques(Par
t B)]) 「メソッズ・イン・エンザイモロジー[Method
s in ENZYMOLOGY]」Vol.74
(イムノケミカル・テクニックス(第C部)[Immu
nochemical techniques(Par
t C)]) 「メソッズ・イン・エンザイモロジー[Method
s in ENZYMOLOGY]」Vol.84
(イムノケミカル・テクニックス(第D部:セレクテッ
ド・イムノアッセイ)[Immunochemical
techniques(Part D:Select
ed Immunoassay)]) 「メソッズ・イン・エンザイモロジー[Method
s in ENZYMOLOGY]」Vol.92
(イムノケミカル・テクニックス(第E部:モノクロー
ナル・アンチボディズ・アンド・ジェネラル・イムノア
ッセイ・メソッズ)[Immunochemical
techniques(Part E:Monoclo
nal Antibodies and Genera
l Immunoassay Methods)]) [〜はアカデミックスプレス社発行] 2ー3.被検液 本発明方法によって抗リン脂質抗体の存在またはその含
有量を測定する対象である被検液とは、ヒトを含む動物
の体液である。ここで体液とは、血液、血清、腹水、リ
ンパ液、関節内液もしくはこれらから得られた分画成
分、またはその他の生体由来の液性成分をいう。
【0038】また、被検液を希釈液で適当な抗体価とな
るように希釈してもよい。このような希釈液としては、
例えばナトリウム系、カリウム系またはナトリウム−カ
リウム系のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、グッドの
緩衝液(例えば、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン
−N´−2−エタンスルホン酸(HEPES)−N´−
トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタン
スルホン酸(TES)、3−(N−モルホリノ)プロパ
ンスルホン酸(MOPS)などの緩衝剤を含む緩衝
液)、グリシン緩衝食塩水、ベロナール緩衝食塩水など
の緩衝液が好ましい。
【0039】本発明において、被検液には、後に2ー4
にて説明する第1の抗原抗体反応工程でリン脂質と抗リ
ン脂質抗体との反応性を増大させるために、後に2ー5
にて説明する反応促進用物質を導入させておいてもよ
い。 2ー4.第1の抗原抗体反応工程 本発明において「第1の抗原抗体反応工程」とは、抗リ
ン脂質抗体結合用担体と被検液とを接触させて、被検液
中の抗リン脂質抗体と担体上のリン脂質との免疫複合体
を形成させる工程をいう。
【0040】この工程は、被検液として抗リン脂質抗体
症候群患者の体液、または既知濃度の抗リン脂質抗体を
含む標準試薬を、抗リン脂質抗体結合用担体と一定時間
(例えば、数十分〜数時間、好ましくは約1時間)、反
応を阻害しない温度条件下(例えば、0〜50℃、好ま
しくは室温)で接触させることによって行うことができ
る。反応性を増大させるために、好ましくは、この反応
は、後に2ー5にて説明する反応促進用物の存在下に行
なう。
【0041】その後、抗リン脂質抗体結合用担体を緩衝
液などで洗浄してもよい。 2−5.反応促進用物質 「反応促進用物質」とは、抗リン脂質抗体とリン脂質と
の反応性を促進させ、抗リン脂質抗体の測定感度を向上
させる物質を意味し、先に2ー4にて説明した第1の抗
原抗体反応において存在させることが、本発明において
必須ではないが、好ましい。これには、牛、馬、犬、
猫、山羊、羊、豚、鶏、兎、ラット、マウス、ヒトなど
の動物の血液から公知の方法によって製造される血清ま
たは血漿が挙げられる。その由来は、どの動物に由来す
るものであってもよい。特に健常な動物の血清または血
漿が好適である。これらは、未精製のものでも、精製度
の高いものでもよい。好ましくは、牛胎児血清、牛新生
児血清、牛血清アルブミン等が挙げられる。
【0042】上記の反応促進用物質の前記した抗原抗体
反応液中での濃度は、前記ような本発明の効果が向上さ
れる程度に高濃度であれば特に限定されない。血清もし
くは血漿を合計して、例えば血液から通常の方法によっ
て調製された血清もしくは血漿を10%程度、特に8%
で反応液中に存在させることが好ましい。
【0043】これらの性質から、担体に結合したリン脂
質と抗リン脂質抗体症候群に特異的に存在する抗リン脂
質抗体とを含有する反応系に上記反応促進用物質を添加
した場合には、先ず、反応促進用物質と担体に結合した
リン脂質とが反応して複合体を形成し、これに抗リン脂
質抗体症候群に特異的な抗リン脂質抗体が結合するもの
と考えられている。このため、リン脂質と抗リン脂質抗
体との反応性が促進される。
【0044】2ー6.第2の抗原抗体ー標識抗体反応工
程 本発明において「第2の抗原抗体ー標識抗体反応工程」
とは、第1の抗原抗体反応工程で形成された免疫複合体
と標識抗体とを反応させて該免疫複合体と標識抗体とか
らなるサンドイッチ状免疫複合体を形成させる工程をい
う。
【0045】この工程で使用される標識抗体は、抗体が
後で説明する検出工程の検出方法に対応する適当なマー
カーで標識されたものである。あるいは、プロテインA
等の免疫グロブリンGと特異的に結合する物質と酵素等
のマーカーを結合させたものも使用可能である。
【0046】ここで使用される抗体とは、測定すべき抗
リン脂質抗体と結合できる抗体またはそのフラグメント
であれば、その由来、製法には特に限定されない。通
常、体液中の抗リン脂質抗体のサブクラスはIgG、I
gM、IgAなどであるので、抗体は抗IgG抗体、抗
IgM抗体、抗IgA抗体などから目的に応じて適宜に
選択し得る。
【0047】このような抗体の調製は、動物の免疫原を
他の動物に投与して免疫し、その動物の血清から分離精
製する方法、またはその動物の抗体産生細胞(脾細胞、
リンパ節細胞、末梢血リンパ球など)をハイブリドーマ
法、トランスフォーメーション法(EBウイルスなどに
よる)など公知の方法(例えば、Eur.J. Imm
unol.,6,511(1976)など参照)で半永
久的に増殖可能とし、この細胞を試験管内(in vi
tro)もしくは試験管外(in vivo)で増殖さ
せた培養物から分離精製する方法によって行うことがで
きる。これらの抗体は市販されており、本発明方法には
このような当業者が容易に入手できる抗体を使用するこ
とができる。
【0048】また、抗体は抗体分子をそのまま使用して
もよく、蛋白分解酵素(例えば、パパイン、ペプシンな
ど)などで分解して抗体フラグメント(F(ab´)2
,Fab´など)として使用してもよい。 2ー6.標識物質 抗体を標識する標識物質(マーカー)は、検出工程に対
応するものであれば特に限定されない。例えば、放射性
同位元素(125 I、131 I、3 H、14Cなど)、酵素
(ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリ
ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、グルタミン
酸オキシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナ
ーゼ、リゾチーム、グルコアミラーゼ、アセチルコリン
エステラーゼ、マレイン酸デヒドロゲナーゼなど)、そ
の他の生体内リガンド・レセプター(ビオチン、アビジ
ン、ストレプトアビジンなど)、補酵素・補欠分子族
(FAD、FMN、ATPなど)、蛍光物質(フルオロ
セインイソチオシアネート(FITC)、ユーロピウ
ム、フィコエリトリンなど)、発光物質(ルミノール誘
導体など)、電子ユピン共鳴(ESR)用マーカー物質
(ピペリジン−1−N−オキシル化合物、ピロリジン−
1−N−オキシル化合物など)、リポソーム(酵素、蛍
光物質、発光物質などの標識物質を含有する)など公知
のマーカーで標識することができる(前記文献、、
参照)。
【0049】抗体をこれらのマーカーで標識する方法も
公知技術によって行うことができる。例えば、放射性同
位元素をマーカーとして使用する場合には、クロラミン
T法、ラクトペルオキシダーゼなどを用いる酵素法、ボ
ルトン−ハンター(Bolton −Hunter )
法などによって行うことができる(前記文献参照)。
また、例えば酵素をマーカーとして標識する場合は、マ
レイミド架橋法(例えば、サクシミジル 6−マレイミ
ドヘキサノエート(EMCS)を使用する。)、グルタ
ルアルデヒド架橋法、過ヨウ素酸架橋法(中根法)、イ
ソシアネート架橋法(例えば、イソシアネート類(トル
エンジイソシアネートなど)、イソチオシアネート類を
使用する。)、ペンゾキノン架橋法によって行うことが
できる(前記文献、参照)。
【0050】この工程を第1の抗原抗体反応工程と分離
して行う場合、第1の抗原抗体反応工程によって得られ
た免疫複合体が結合した抗リン脂質抗体結合用担体と標
識抗体を含有する溶液(緩衝液などの溶液)とを一定時
間(例えば、数十分〜数時間)、反応を阻害しない温度
条件下(例えば、0〜50℃)で接触させることによっ
て反応を行うことができる。
【0051】また、第1の抗原抗体反応工程と同時、ま
たは反応液を分離することなく引続き反応を行う場合に
は、第1の抗原抗体反応を行うとき、または反応終了
後、反応液中に標識抗体を存在させればよい。 2ー7.BF分離工程 本発明方法のBF分離工程は、第2の抗原抗体ー標識抗
体反応工程において形成されたサンドイッチ状免疫複合
体を含む相と担体に結合しなかった物質を含む相とを分
離する分離工程である。
【0052】本発明方法をホモジニアス法で行う場合は
この工程は必要ないが、ヘテロジニアス法で行う場合は
必須の工程である。この工程は、反応液不溶性の担体物
質を使用する場合は、吸引、傾寫、濾過、遠心分離など
公知の分離手段によって行うことができる。
【0053】上記の分離操作後、または同時に緩衝液
(PBSなど)で担体を洗浄してもよい。 2ー8.検出工程 本発明方法の「検出工程」とは、ヘテロジニアス法の場
合上記BF分離工程において分離されたサンドイッチ状
免疫複合体に含まれる標識物質の、または該複合体を形
成しなかった標識抗体の標識物質(マーカー)を検出す
る工程をいう。この検出は定量的であっても、定性的で
あってもよい。
【0054】検出工程は、使用するマーカーに対応する
ものであればよく、公知の方法によって行える(前記文
献〜参照)。例えば、放射性同位元素をマーカーと
して用いた場合にはシンチレーションカウンターによっ
て、酵素をマーカーとして用いた場合には使用する酵素
の活性測定に使用される公知の方法によって検出を行う
ことができる。
【0055】以下、ペルオキシダーゼをマーカーとして
用いた場合の酵素活性の測定について説明する。ペルオ
キシダーゼ活性の測定は、基質である過酸化水素が水に
分解される際の電子の授与を検出する各種の方法で行う
ことができる。すなわち、例えば色原体(Chromo
gen)の酸化に基づく吸光度の変化の測定、酸化還元
電位の変化の電極による測定など公知の方法を利用する
ことができる。特に、色原体を使用する方法が一般的で
ある。色原体としては、例えばテトラアルキルベンジジ
ン(3,3´,5,5´−テトラメチルベンジジン(T
MBZ)など)、o−フェニレンジアミン(OPD)、
2,2´−アジノジ(3−エチル)ベンゾチアゾリノン
−6−スルホン酸(ABTS)、ジアニシジン、ジカル
ボキシジン、ジアミノベンジジンなど公知の物質を使用
することができる(例えば、特公昭62−502653
(WO86/04610)参照)。
【0056】ペルオキシダーゼ活性の色原体を使用する
測定は、BF分離によって分離されたいずれかの相に過
酸化水素および色原体を含有する溶液(好ましくは、緩
衝液(クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、PBSなど)の
溶液)を添加して一定時間(例えば、数分〜数時間)、
常温下(例えば、室温下)で反応し、酵素反応停止液
(例えば、リン酸)によって反応を停止した後、吸光度
(TMBZの場合は450nmにおける吸光度)を測定
することによって行うことができる。なお、被検液中の
抗リン脂質抗体の定量は、既知濃度の抗リン脂質抗体を
含有し、例えば反応促進用物質を添加した標準試薬を使
用して測定した標準曲線(吸光度と抗体濃度(または抗
体価)との関係を示す)と、測定された吸光度を比較す
ることによって行うことができる。
【0057】本発明の免疫学的測定法によれば、抗リン
脂質抗体結合用担体の保存性が向上されているため、簡
便に良好な感度及び精度にて抗リン脂質抗体を測定する
ことが可能となる。
【0058】
【実施例】以上説明した本発明の構成・作用を一層明ら
かにするために、以下本発明の好適な実施例について説
明する。本実施例では、抗リン脂質抗体結合用担体とし
て抗カルジオリピン抗体結合用担体を作製し、抗リン脂
質抗体のうちの一つである抗カルジオリピン抗体を測定
した。
【0059】[1]酵素標識抗体の作製 (1ー1).免疫用抗原の調整 ヒト血清より公知の方法により精製されたヒトγ鎖を免
疫原として使用した。精製ヒトγ鎖の純度については、
公知のSDS−PAGE法により確認した。
【0060】(1ー2).抗体の作製 上記(1ー1)で精製された免疫原(タンパク濃度1m
g/ml)0.1mlと等量のフロイント完全アジュバ
ンドを混合乳化させた後、日本産ウサギ(メス3kg)
の皮下に1週毎に免疫を繰り返して行った。免疫開始よ
り6週間後に耳朶静脈より1羽当たり50mlの血清を
採取し、抗血清を得た。更にこの抗血清に等量の飽和硫
安を加え、IgGを含む画分を沈澱させ、抗血清量の半
量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)、
26mM塩化ナトリウムで溶解せしめた後、同緩衝液で
一晩透析を行った。同緩衝液で平衡化したDEAEセル
ロースカラム(抗血清10ml当たり30mlの容量を
使用した)に展開し、6倍カラム容量の同液で、同カラ
ムに未吸着画分であるIgGを分取した。このIgG画
分は更に、減圧下透析チューブ中で、タンパク濃度20
mg/mlに濃縮した。
【0061】(1ー3).酵素標識抗体の調製 上記(1ー2)で得たIgG画分を0.1M酢酸緩衝液
(pH4.2)に透析し、タンパク濃度をそれぞれ5m
g/ml、10mg/mlとなるように調製した後、総
タンパク量の3%のペプシンを加えて、37℃で一晩攪
拌して反応を行った。2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.
0)を適量加えて反応を停止させた後、0.2M塩化ナ
トリウムを含有する0.1Mリン酸緩衝液(pH6.
5)で平衡化したウルトロゲルAcA44(LKB社)
カラム(2.0×60cm)でゲル濾過を行い、F(a
b´)2分画それぞれ2.5mg及び15mgを得た。
【0062】スクシミジル4−(N−マレイミドメテ
ル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート[Suc
cimidy14−(N−maleimidometh
y1)−cyclohexan−1−carboxyl
ate:ジーベンケミカル(Zieben Chemi
cal Co.,Ltd.)]を用いたヒンジ法(J.
Immunoassay Vol.4,209,198
3)に従い、POX[Horseradish per
oxidase:シグマ社製]を、上記で得たウサギ抗
ヒトγ鎖のウサギIgG/Fab´にSH基を介して結合
させて、本発明に第2抗体として使用する目的の標識抗
体を得た。
【0063】[2]抗カルジオリピン抗体結合用担体の
作製 ウシ心臓由来のカルジオリピン(シグマ社製)50μg
/ml及びコレステロール(シグマ社製)200μg/
mlのエタノール溶液をELISA専用96ウエルマイ
クロプレート(例:NUNC社)各々一ウエルにつき5
0μ1づつ添加し、ウエル中のエタノールを減圧または
自然乾燥させた後PBS(pH7.4)300μ1で3
回洗浄する。続いて10%の子牛血清(FCS)[γー
グロブリンを除いたもの]を含有するPBS300μ1
を各ウエルに加え、室温で2時間放置した後この溶液を
捨て、減圧または自然乾燥させて抗カリジオリピン抗体
結合用担体を得る。
【0064】[3]酵素免疫測定法による被検体中の抗
カルジオリピン抗体の定量 (3ー1).被検体の調整 被検体の調整法は以下の通りである。被検体を10%の
ウシ血清を含むPBS(pH7.4)で101倍希釈
し、検体とする。被検体中の抗カルジオリピン抗体量が
多く、本測定系の検出限界を越える場合は、上記緩衝液
で検体を測定範囲内にはいるように希釈し、その希釈検
体の定量値に希釈倍数を乗じて被検体中の抗カリジオリ
ピン抗体の濃度とする。
【0065】(3ー2).抗カルジオリピン抗体結合用
担体と検体中の抗カルジオリピン抗体との反応 [2]で作製した固相化カルジオリピンと、(3ー1)
で調整した被検体中の抗カルジオリピン抗体を抗原抗体
反応により結合させる。具体的には、[2]で作製した
カルジオリピンを固相化したマイクロプレートに(3ー
1)で調整した被検体を1ウエルにつき100μ1ずつ
分注する。同時に抗カルジオリピン抗体陽性標準液6濃
度1ウエルに100μ1ずつ分注する。以上の反応系を
室温にて1時間静置する。反応終了後、PBSにて3回
洗浄し余分なPBSを除く。
【0066】(3ー3)固相化カルジオリピン−抗カル
ジオリピン抗体結合物へのペルオキシダーゼ標識抗ヒト
γ鎖・モノクローナル抗体の結合 上記(3ー2)でマイクロプレート上にカルジオリピン
を介して結合された検体の抗カルジオリピン抗体に、ペ
ルオキシダーゼを標識した抗ヒトγ鎖・モノクローナル
抗体を反応させる。即ち、(1ー3)にて調整したペル
オキシダーゼ標識抗ヒト・モノクローナル抗体を1%B
SA、0.15M NaC1を添加した10mMリン酸
ナトリウム緩衝液(pH8.0)にて250〜1,00
0倍に希釈し、(3ー2)で調整したマイクロプレート
に、1ウエルにつき100μ1ずつ分注し、室温にて1
時間静置後、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH
7.4)にて3回洗浄後、同緩衝液をよく取り除く。
【0067】(3ー4)発色反応 上記(3ー3)にて調整した各々マイクロプレート上の
カルジオリピン−抗カルジオリピン抗体−ペルオキシダ
ーゼ標識抗ヒトγ鎖・モノクローナル抗体結合物にペル
オキシダーゼの基質であるテトラメチルベンチジン溶液
を反応させ発色させる。即ち、テトラメチルベンチジン
(シグマ社)を0.1Mクエン酸リン酸ナトリウム緩衝
液(pH5.1)にて0.5mg/mlの濃度に溶解
し、(3ー3)にて調整したマイクロプレートへ1ウエ
ルにつき100μ1ずつ分注し、室温にて20〜30分
間静置後、1Nリン酸を1ウエルにつき100μlずつ
分注し、pHを下げることによりペルオキシダーゼの酵
素活性を停止させる。
【0068】(3ー5)被検体の定量 上記(3ー4)で呈色反応を行ったマイクロプレート中
の溶液の吸光度(波長450nm)をマイクロプレート
リーダー(例えば、東ソー社製MPR−A4)にて測定
する。抗カルジオリピン抗体陽性標準液6濃度から得た
吸光度より標準曲線を作製し、被検体の吸光度を抗カル
ジオリピン抗体の濃度に換算する。コレステロールを処
理させた抗カルジオリピン抗体結合用担体及びコレステ
ロールを処理させていない抗カルジオリピン抗体結合用
担体を用いたものについて、それぞれ標準液6濃度の吸
光度の結果を表1に示す。尚、保存データは、1週間保
存後の測定値である。
【0069】
【表1】
【0070】表1から明かなように、コレステロールを
添加したもの(実施例)は、いずれの条件(ー80℃、
+4℃、室温)においても製造直後とほぼ吸光度が1週
間後でも変化しておらず、従ってカルジオリピンの保存
性が向上されている。他方、コレステロールを添加させ
ていないもの(比較例)は、吸光度が低下しており、特
に通常の保存条件である室温下には著しい低下を示して
いる。従って、コレステロールを添加させたことによっ
て、担体に担持させたカルジオリピンの保存性を向上さ
せることができた。
【0071】この結果、常に一定の感度及び精度にて抗
カルジオリピン抗体を測定することが可能となった。さ
らに、本実施例の抗カルジオリピン抗体結合用担体によ
れば、保存性が向上されているので、変質の恐れもな
く、また、測定直前に調製する必要もなく、前もって大
量に調製しておくことができる。
【0072】上記実施例によれば、抗カルジオリピン抗
体結合用担体においてコレステロールをも処理させるこ
とによって、抗カルジオリピン抗体結合用担体における
カルジオリピンの保存性を向上させることができた。従
って、本発明の抗カルジオリピン抗体結合用担体を用い
て免疫学的測定を行なうことによって、簡便に良好な感
度及び精度にて抗カルジオリピン抗体を測定することが
できた。さらに、本発明の抗カルジオリピン抗体結合用
担体は、上記のように保存性が向上されているので、他
の必要な試薬[例えば、緩衝液、反応促進用物質を添加
した検体希釈液、標準試薬、標識抗体、標識物質を検出
するための試薬、即ち基質溶解液(または基質液)及び
基質(または発色剤)、反応停止剤等]とともにキット
として準備し、常に一定の品質のものを便利に使用する
ことができる。標準試薬としては、既知濃度の抗カルジ
オリピン抗体を含み、必要に応じ反応促進用物質を添加
した標準試薬が例示される。これは、通常抗カルジオリ
ピン抗体症候群の患者から分離された抗カルジオリピン
抗体を必要に応じて段階希釈したもので、前記「2ー
4.第1の抗原抗体反応工程」に説明した理由により、
反応促進用物質を添加したものが好ましい。標識物質を
検出するための試薬としては、例えば、キットが酵素免
疫学的測定法用のキットである場合には必要に応じて酵
素活性を測定するための試薬、すなわち酵素の基質とそ
の反応のインディケータ(例えば、前記「2ー8.検出
工程」の色原体)を添付することが好ましく、この場合
には酵素反応停止液(例えば、リン酸や硫酸等を含む溶
液)を添付することが好ましい。さらに、その構成試薬
の1つとして、高濃度の反応促進用物質を含むこともで
きる。
【0073】本発明のキットを用いることにより、抗カ
ルジオリピン抗体結合用担体の保存性が向上されている
ため、簡便に良好な感度及び精度にて抗カルジオリピン
抗体を測定することが可能となる。尚、上記実施例で
は、ステロイドまたはその誘導体としてコレステロール
を用いているが、他のステロイドまたはその誘導体を用
いても同様な効果を得ることができた。
【0074】また、上記実施例では、抗リン脂質抗体の
うちの抗カルジオリピン抗体を測定するために、抗リン
脂質抗体結合用担体として抗カルジオリピン結合用担体
を作製したが、いずれの抗リン脂質抗体についても上記
実施例と同様に担体を作製し、測定することができる。
【0075】さらに、本実施例の抗カルジオリピン抗体
結合用担体は、より保存性を高めるために、室温よりも
低温下に保存させることもできる。
【0076】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の抗リン脂
質抗体結合用担体によれば、保存性が向上され、長期に
渡って一定の品質であることができるという優れた効果
を奏する。従って、本発明の抗リン脂質抗体結合用担体
を用いることによって、簡便に良好な感度及び精度にて
抗リン脂質抗体を測定することができる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステロイドまたはその誘導体とリン脂質
    とを処理させてなることを特徴とする抗リン脂質抗体結
    合用担体。
  2. 【請求項2】 ステロイドまたはその誘導体が、コレス
    テロール、エルゴステロール、ジヒドロコレステロー
    ル、7ーオキシコレステロール、7ーデヒドロコレステ
    ロール、テストステロン、コルチコステロン、エストラ
    ジオール、プロゲステロン、コーチゾン、ビタミンD、
    デオキシコール酸、胆汁酸からなる群から選ばれる少な
    くとも1種である請求項1記載の抗リン脂質抗体結合用
    担体。
  3. 【請求項3】 リン脂質がカルジオリピンである請求項
    1または2記載の抗リン脂質抗体結合用担体。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3記載の抗リン脂質
    抗体結合用担体を用いることを特徴とする抗リン脂質抗
    体の免疫学的測定法。
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