JPH06134876A - 繊維強化熱可塑性樹脂多孔質成形品の成形方法 - Google Patents

繊維強化熱可塑性樹脂多孔質成形品の成形方法

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JPH06134876A
JPH06134876A JP4149093A JP14909392A JPH06134876A JP H06134876 A JPH06134876 A JP H06134876A JP 4149093 A JP4149093 A JP 4149093A JP 14909392 A JP14909392 A JP 14909392A JP H06134876 A JPH06134876 A JP H06134876A
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JP
Japan
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thermoplastic resin
plate
porous molded
molding
nonwoven material
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JP4149093A
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English (en)
Inventor
Tadamichi Nozawa
忠道 野沢
Satoru Matoba
哲 的場
Takao Kimura
隆夫 木村
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Mitsubishi Petrochemical Co Ltd
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Mitsubishi Petrochemical Co Ltd
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 外観改良と機械的性質の向上を目的とした多
孔質成形品を提供する。 【構成】 強化繊維と熱可塑性樹脂からなる不織材料の
両面に板状体を重ね合わせ、熱可塑性樹脂を溶融させた
状態で加圧、解圧し、不織材料を強化繊維のスプリング
バックにより膨張させ、冷却成形し、板状体を取り外す
ことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形品の成形方
法。 【効果】 不織材料の加熱、加圧により、強化繊維と熱
可塑性樹脂の濡れ性を向上させ、均一な膨張において強
化繊維の交差点を熱可塑性樹脂で効率良く接着させるこ
とにより、機械的性質を改善した。また、板状体の積層
による不織材料表面部の拘束膨張により、成形品におけ
るシワ発生、強化繊維の露出を抑え外観改良を実施し
た。本発明の多孔質成形品は、機械的性質の向上と軽量
化メリットを生かし、木材代替等の用途に有益な結果が
得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂
の多孔質成形品の成形方法に関するものである。本発明
による多孔質成形品は、木材が従来から使用されていた
自動車部品、建築、土木等の産業用資材に広く使用する
ことができる。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境問題により、南洋材の伐
採が問題視されている。南洋材は、従来から合板に加工
され、バス、トラック等の車両部材、建築、土木等の産
業用資材に大量に使用されており、それに代わる素材の
開発が望まれている。木材代替品として、比較的長い強
化繊維と熱可塑性樹脂から構成されている繊維強化熱可
塑性樹脂成形品は、その特性として軽量かつ、比較的高
い強度、剛性を有していることから注目を集めている。
【0003】木材代替品の多くは板状体として使用され
るため、その曲げ強さ、曲げ剛性等の機械的性質と軽量
化が重要になる。材料力学的には、曲げ強さは板厚の2
乗、曲げ剛性は板厚の3乗に比例する。機械的性質の向
上と軽量化メリットを生かす方法として、抄造法(特公
昭52−12283号公報、特公昭55−9119号公
報)によるシート状成形素材を用いた多孔質成形品の製
造方法(特開昭60−179234号公報、特開昭62
−161529号公報)が提案されている。
【0004】このシート状成形素材は、抄造技術を応用
して、直径3〜30μm、長さ3〜50mmの強化繊維と
熱可塑性樹脂粉末を均一に分散して不織材料を製造し、
この不織材料を原料とし加熱、加圧を行いさらに冷却し
て製造される。多孔質成形品は、このシート状成形素材
が、成形前にマトリックスである熱可塑性樹脂の軟化点
または融点以上に加熱される際に生じるシート膨張を利
用して成形される。
【0005】抄造法で製造される不織材料は、強化繊維
がモノフィラメンント(単一の繊維)の状態で分散して
いるため、非常にかさ高いという性質を示す。不織材料
の厚みは、強化繊維の含有量とその形状、抄造条件によ
り異なるが、シート状成形素材として一般的に用いられ
る空隙を除去したシートに比べ10倍程度の厚みを有し
ている。シート状成形素材は、加熱により、熱可塑性樹
脂の強化繊維に対する結合力が弱まるため、強化繊維の
残留応力が解放され、元に戻ろうとするスプリングバッ
クにより膨張する。
【0006】この膨張したシート状成形素材を、成形型
内に挿入し、膨張したシート厚み以下で、かつ内包する
空隙を残す範囲にクリアランスを設定し、目的とする膨
張倍率を得る条件で加圧、冷却して成形することによ
り、多孔質成形品を製造する。多孔質成形品は、膨張に
より面積当りの強度、弾性率は低下するが、板厚の増加
により製品の曲げ強さ、曲げ剛性は改善される。
【0007】しかし、上記の方法で成形された多孔質成
形品では、以下に述べるように外観性状が低下し、機械
的性質の改善も十分とはいえない。従来の多孔質成形品
の成形方法の一例を図2に示した。シート状成形素材8
は、一般的には遠赤外線加熱炉9内で熱可塑性樹脂の軟
化点または融点以上に加熱される。シート状成形素材の
膨張は、最初に加熱されるシートの表面から始まり次第
に熱が板厚中心部におよぶにつれて全体的に膨張する。
しかし膨張によりシート内部には断熱空気層が形成され
るため、熱伝導率が低下する。このため、シート膨張の
度合は不均一になり易く、表面付近が大きくなり内部が
小さくなる(図の11、12)。また、シート状成形素
材10は、無負荷の状態で膨張するため、表面部に凹凸
13が生じる。表面部の凹凸は、シート状成形素材中の
強化繊維がランダム配向しており、スプリングバックが
シート内で不均一に発生するために生じる。さらに、シ
ート表面では、強化繊維がスプリングバックにより露出
14すると共に熱可塑性樹脂がシートの熱伝導率の低下
に伴う局部加熱により劣化を生じ、外観が著しく悪化す
る。
【0008】この膨張したシート状成形素材10の両面
に板状体2を重ね合わせ、冷却プレス盤6内に挿入し、
クリアランスを膨張したシートの厚み以下に設定し、目
的とする膨張倍率を得る条件で加圧、冷却して成形し、
板状体を取り外すことにより、多孔質成形品15を製造
する。
【0009】この従来の成形方法では、加熱されたシー
ト状成形素材中の熱可塑性樹脂の流動はあまり期待でき
ず、結果として、多孔質成形品の外観が膨張した加熱シ
ートの外観を受け継ぐため、シート表面の凹凸によるし
わ16、強化繊維の露出14、熱可塑性樹脂の熱劣化に
よる外観低下が生じる。さらにシート膨張は、表面付近
が大きくなり内部が小さくなるため、製品が曲げられる
場合に引張り、圧縮の荷重が加わる表面部が、機械的に
弱い構造になり機械的性質が低下する。外観と機械的性
質の低下は、シート状成形素材の加熱膨張の悪影響を受
けたものであるが、この傾向はシートの初期厚みが厚く
なるに従って増幅されるため、多孔質成形品の厚みは制
限され、用途が制約される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、外観改良と
機械的性質の向上を目的とした繊維強化熱可塑性樹脂多
孔質成形品の成形方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、抄造法による
強化繊維と熱可塑性樹脂からなる不織材料を、その熱可
塑性樹脂の融点または軟化点以上に加熱して熱可塑性樹
脂が溶融した状態で加圧した後、熱可塑性樹脂が溶融し
た状態のままで加圧を除去して不織材料を強化繊維のス
プリングバックにより膨張させ、しかる後、不織材料の
膨張厚み以下で、かつ内包する空隙を残す範囲に加圧、
冷却して成形することを特徴とする繊維強化熱可塑性樹
脂多孔質成形品の成形方法である。
【0012】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂多孔質成形
品の成形方法の一例を図1に示した。抄造法により製造
された強化繊維と熱可塑性樹脂からなる不織材料1を、
好ましくはその両面に板状体2を重ね合わせて加熱プレ
ス盤3内に挿入し、熱可塑性樹脂が溶融するまで加熱す
る。熱可塑性樹脂が溶融するまで加熱した後、強化繊維
の間に熱可塑性樹脂の含浸を実施するため、繊維破損が
生じない圧力で加圧を行う(4)。その後、熱可塑性樹
脂が溶融した状態のままで加圧を除去し、両面の板状体
を重ね合わせたままで、不織材料を強化繊維のスプリン
グバックにより膨張させ(5)、しかる後、冷却プレス
盤6内に挿入し、クリアランスを膨張した不織材料の厚
み以下で、かつ内包する空隙を残す範囲に設定して、目
的とする膨張倍率を得る条件で加圧、冷却して成形し、
板状体を取り外すことにより、多孔質成形品7を製造す
る。
【0013】不織材料の原料となる強化繊維としては、
ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維のほかに無機繊維、有
機繊維が用いられる。強化繊維の形状は、直径が取り扱
いの容易さと経済的な観点により3μm以上で、十分な
強度を発現させるために30μm以下にすることが好ま
しく、繊維長は強度発現の観点から3mm以上で、均一な
分散が可能な50mm以下にすることが望ましい。また強
化繊維は、水中での良好な分散を目的として親水性を向
上するために水溶性高分子、湿潤剤で、強度発現を目的
として熱可塑性樹脂との接着性を向上するためにシラン
カプリング剤等で、表面処理を行うことが望ましい。
【0014】熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジェン−アクリ
ロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重
合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセター
ル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフ
タレート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポ
リフェニレンスルフィド等の樹脂であり、またこれらの
2種類またはそれ以上の混合物をも含み、これらに一般
的に用いられる可塑剤、熱安定剤、光安定剤、充填材、
染顔料、耐衝撃剤、増量材、核剤、加工助剤等を添加す
ることもできる。熱可塑性樹脂の形状は、ペレット、パ
ウダー、フレーク、繊維状のものを適宜選択して使用す
る。
【0015】強化繊維の含有量は、スプリングバックに
よる安定した膨張が生じる10体積%以上で、強化繊維
と熱可塑性樹脂との接着が可能で多孔質成形品としての
機械的性質を十分発現する40体積%以下とすることが
望ましい。
【0016】板状体としては、シート状成形素材の製造
工程において用いるものと同様のものを使用する。シー
ト状成形素材を製造する場合は、不織材料の両面に鏡板
と称する板状体を重ね合わせ、熱可塑性樹脂の融点また
は軟化点以上に加熱した後、加圧することにより強化繊
維の間に熱可塑性樹脂を含浸させると共に、板状体との
間の不織材料の表面に熱可塑性樹脂リッチな層を形成さ
せる。鏡板の材質は、加熱温度に耐えうるものであれば
良く金属、無機物、樹脂製のものが挙げられる。これら
の鏡板は、熱可塑性樹脂が溶融状態では融着してもよい
が、非溶融状態では接着しない性質を有する必要があ
り、シート状成形素材の離型性を考慮してテフロン樹脂
等のコーティングを施したり、シリコン等の離型剤処理
を行なう場合もある。なお、本発明において、この板状
体を改めて用いず、加熱および冷却のプレス盤にその機
能を代行させることも、勿論可能である。
【0017】本発明では、不織材料の熱可塑性樹脂が溶
融するまで加熱した後、強化繊維の間に熱可塑性樹脂の
含浸を実施するため、繊維破損が生じない圧力で加圧を
行う。この工程で強化繊維と熱可塑性樹脂の濡れ性を向
上することにより、多孔質成形品を構成する強化繊維の
交差点が熱可塑性樹脂で効率よく接着されて、成形品の
良好な強度を発現させることができる。
【0018】つづいて、熱可塑性樹脂が溶融している状
態で、加圧を除去する。不織材料は、強化繊維のスプリ
ングバックにより膨張する。抄造法で製造される不織材
料は、強化繊維がモノフィラメンント(単一の繊維)の
状態で分散しているため、スプリングバックにより大き
く膨張する。また、不織材料は加熱、加圧により均一に
加熱されており、熱可塑性樹脂の劣化は発生せず、膨張
も均一なものとなる。不織材料中の熱可塑性樹脂は、加
圧時に板状体(またはプレス盤)との界面に浸み出す。
不織材料の表面が板状体(またはプレス盤)の表面に拘
束された状態で膨張するため、シート表面の凹凸が発生
せず、両者の界面は熱可塑性樹脂の量が多くなり、強化
繊維が樹脂で覆われた状態の樹脂リッチ層が形成され
る。本発明の多孔質成形品では、強化繊維の交差点が熱
可塑性樹脂で効率よく接着され、均一な膨張が実施され
ているため良好な機械的性質が得られる。また、表面が
樹脂リッチでしわ、強化繊維の露出がなく、良好な外観
が得られる。
【0019】本発明において、不織材料の加熱、加圧、
解圧、冷却工程を連続的に実施するダブルベルトコンベ
ア式連続プレスを使用することは、生産性の観点から非
常に有効である。その成形方法の一例を図3に示した。
ダブルベルトコンベア式連続プレス17は、一対の無端
ベルト18からなり、それぞれが回転ドラム19、20
により張設されている。回転ドラムの間には油圧ラム2
1に連続したローラーチェーン22、23、24が無端
ベルトと隣接するように順次設置されており、無端ベル
トの間隔と加圧力の制御が行われている。また、ローラ
ーチェーン22、23の内部には加熱盤25、ローラー
チェーン24の内部には冷却盤26が設置されている。
【0020】不織材料1を回転ドラム19に沿わせて挿
入する。無端ベルトはローラーチェーン23に達するま
で徐々に間隔が狭められており、不織材料はローラーチ
ェーン22により、熱可塑性樹脂が溶融するまで加熱さ
れる。さらに、ローラーチェーン23により、熱可塑性
樹脂が溶融した状態で、強化繊維の間に熱可塑性樹脂を
含浸させるために、繊維破損の生じない圧力で加圧され
る。この後無端ベルトは、ローラーチェーン23から回
転ドラム20に達するまで、不織材料のスプリングバッ
クによる膨張厚み以下で、間隔が広くなるように張設さ
れている。不織材料は、ローラーチェーン23を通過し
た直後から膨張する。途中、ローラーチェーン24によ
り冷却され、回転ドラム20のところで無端ベルトから
離れ、本発明の多孔質成形品7が連続的に成形される。
【0021】ダブルベルトコンベア式連続プレスを使用
した場合は、一対の無端ベルトが板状体の役割を果た
す。無端ベルトとしては、通常スチールベルト等の金属
ベルトが使用されるが、加熱温度に耐えうるものであれ
ば樹脂製でもよく、さらに多孔質成形品との離型性を考
慮してテフロン樹脂等のコーティングを施したり、シリ
コン等の離型剤処理を行ってもよい。
【0022】この方法においても、ローラーチェーン2
3の加圧時に不織材料中の熱可塑性樹脂が無端ベルトと
の界面に浸み出し、樹脂リッチ層が形成される。この
後、不織材料が無端ベルトに拘束された状態で均一膨張
するため、図1の成形方法と同様に良好な機械的性質と
外観を有する多孔質成形品が得られる。
【0023】本発明による多孔質成形品では、不織材料
の加熱、加圧により、強化繊維と熱可塑性樹脂の濡れ性
を向上させ、均一な膨張において強化繊維の交差点を熱
可塑性樹脂で効率よく接着させて、機械的性質を改善し
た。また、板状体の積層による不織材料表面部の拘束膨
張で外観改良を実施した。本発明では、多孔質成形品の
厚みの許容範囲も従来法に比べて広がり、機械的性質の
向上と軽量化メリットを生かした繊維強化熱可塑性樹脂
多孔質成形品の成形方法として有益な結果が得られる。
【0024】また本発明では、抄造法による不織材料か
らシート状成形素材を成形し、さらに、加熱、成形によ
り多孔質成形品を製造していた従来の方法に対して、不
織材料から直接成形により多孔質成形品を製造すること
ができ、この場合工程短縮を図ることができる。
【0025】
【実施例】以下実施例を挙げて、本発明を詳細に説明す
る。 実施例1 強化繊維として直径10μm、長さ13mmのガラス繊維
と、熱可塑性樹脂として、直径3mmの球状ペレットを機
械粉砕し、その粉砕品をふるい分けにより70mesh(開
口径0.212mm)から10mesh(開口径1.7mm)ま
でに分級したポリプロピレン樹脂粉末を用いて、抄造法
によりガラス繊維含有量45重量%(22.3体積%)
とポリプロピレン樹脂55重量%(77.7体積%)の
組成で、目付け量が2100 g/m2 の不織材料を製造し
た。
【0026】この不織材料を600×2000mmに切断
して4枚重ね合わせ、さらにその両面に板状体としてス
テンレス鋼製鏡板を重ね合わせて、図1に示した成形方
法で板状の多孔質成形品を成形した。積層体を、210
℃に温度設定された加熱プレス盤内に挿入し、圧力2kg
f/cm2 の加圧下で不織材料の中心部温度が190℃以上
に昇温するまで、約7分間予熱した。この温度で、ポリ
プロピレン樹脂は十分溶融していた。つづいて、圧力5
kgf/cm2 で、1分間加圧し、さらに積層体を冷却プレス
盤に挿入し不織材料の厚みが12mmになるようにプレス
盤のクリアランスを設定して、約5分間冷却することに
より多孔質成形品を成形した。加熱加圧後の積層体は、
加熱盤から冷却盤に移動される短時間で、強化繊維のス
プリングバックにより直ちに膨張し始め、その膨張厚み
は約23mmであった。また、加熱加圧後の不織材料は、
不織材料中の熱可塑性樹脂が、加圧時に板状体との界面
に浸み出し、不織材料の表面が鏡板の表面に拘束された
状態で膨張していることが確認された。冷却後、鏡板を
取り外し板厚12mmの板状多孔質成形品を得た。
【0027】多孔質成形品は、表面が樹脂リッチでし
わ、強化繊維の露出がなく、良好な外観を呈していた。
また、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡観察により、多孔質
成形品内部の強化繊維の交差点が熱可塑性樹脂で効率よ
く接着され、均一な膨張が実施されていることが確認さ
れた。多孔質成形品から幅70mm、長さ200mmの試験
片を採取し、スパン150mmの3点曲げ試験を行った。
結果を、表1に示した。
【0028】参考例1 実施例1の不織材料を600×2000mmに切断して4
枚重ね合わせ、さらにその両面に板状体としてステンレ
ス鋼製鏡板を重ね合わせて、空隙を除去した板状成形品
を成形した。積層体を、210℃に温度設定された加熱
プレス盤内に挿入し、圧力2kgf/cm2 の加圧下で不織材
料の中心部温度が190℃以上に昇温するまで、約7分
間予熱した。つづいて、圧力5kgf/cm2 で、1分間加圧
し、さらに積層体を冷却プレス盤に挿入し、圧力5kgf/
cm2 で約5分間、加圧、冷却することにより板状成形品
を成形した。この場合は、プレス盤のクリアランス設定
は行わず、加熱加圧と同様に、不織材料が直接加圧され
た状態で冷却成形した。冷却後、鏡板を取り外し板厚
6.8mmの板状成形品を得た。
【0029】板状成形品は、表面が樹脂リッチでしわ、
強化繊維の露出がなく、良好な外観を呈していた。ま
た、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡観察により、成形品内
部の強化繊維が均一に分散しており、その間には熱可塑
性樹脂が十分含浸していることが確認された。成形品か
ら幅70mm、長さ200mmの試験片を採取し、スパン1
50mmの3点曲げ試験を行った。結果を、表1に示し
た。
【0030】比較例1 参考例1で成形された板状成形品を成形素材として、図
2に示した従来の方法により多孔質成形品を成形した。
参考例1の成形品を600×600mmに切断し、遠赤外
線加熱炉により表面温度が220℃に昇温するまで約7
分間加熱した。この際、成形素材は表面付近が大きく膨
張し、内部は十分加熱されていない状態であり、膨張後
の厚みは約15mmであった。また、表面部には凹凸が発
生し、ガラス繊維がスプリングバックにより露出し、ポ
リプロピレン樹脂が局部加熱により熱劣化していること
が確認された。加熱された成形素材の両面に板状体とし
てステンレス鋼製鏡板を重ね合わせて、冷却プレス盤に
挿入し厚みが12mmになるようにプレス盤のクリアラン
スを設定して、約5分間冷却することにより多孔質成形
品を成形した。冷却後、鏡板を取り外し板厚12mmの板
状多孔質成形品を得た。
【0031】この多孔質成形品外観は、加熱された成形
素材の外観を受け継ぐため、表面凹凸によるしわ、強化
繊維の露出、熱可塑性樹脂の熱劣化による外観低下が生
じていた。また、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡観察によ
り、多孔質成形品内部の膨張状態は表面付近が非常に大
きく膨張し、中心部はもとの成形素材同様ほとんど膨張
していないことが確認された。この中心層は、成形素材
の初期厚みの約50%で、3.4mmの厚みを有してい
た。多孔質成形品から幅70mm、長さ200mmの試験片
を採取し、スパン150mmの3点曲げ試験を行った。結
果を、表1に示した。
【0032】実施例1の多孔質成形品は、ガラス繊維の
交差点がポリプロピレン樹脂で効率よく接着され、均一
な膨張が実施されているため良好な機械的性質が得られ
た。面積当りでの強度、弾性率は参考例1の空隙を有し
ない成形品に比べて低下しているが、製品としての曲げ
強さ(曲げ荷重)、曲げ剛性(弾性勾配)は改善されて
いる。この結果は、曲げ強さが製品板厚の2乗、曲げ剛
性が板厚の3乗に比例することによるもので、特に剛性
の向上が著しいことが確認された。
【0033】比較例1は、実施例1、参考例1に比べて
機械的性質が低下していることが確認された。比較例1
の多孔質成形品では、表面付近の膨張が非常に大きく、
中心部はほとんど膨張していない構造を示していた。そ
のため、製品が曲げられる場合に引張り、圧縮の荷重が
加わる表面部が、機械的に弱い構造になり機械的性質が
低下する。この方法の多孔質成形品で良好な機械的性質
を発現させるためには、シート状成形素材の加熱膨張の
悪影響を避ける必要があり、シート状成形素材の初期厚
みを約3mm以下にすることが望ましい。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂の機械
的性質の向上と軽量化メリットを生かす方法として、抄
造法による多孔質成形品の成形方法を提供するものであ
る。本発明により、多孔質成形品の機械的性質と外観が
改良され、成形品厚みの許容範囲も従来法に比べて広が
るため、木材代替品等の用途に有益な結果がもたらされ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る繊維強化熱可塑性樹脂多孔質成形
品の成形方法の一例を示す概略図。
【図2】従来の多孔質成形品の成形方法の一例を示す概
略図。
【図3】本発明において採用するダブルベルトコンベア
式連続プレスの一例を示す説明図。
【符号の説明】
1 不織材料 2 板状体 3 加熱プレス盤 4 熱可塑性樹脂が溶融した状態で加圧
された不織材料 5 強化繊維のスプリングバックにより
均一に膨張した不織材料 6 冷却プレス盤 7 本発明の多孔質成形品 8 シート状成形素材 9 遠赤外線加熱炉 10 加熱されたシート状成形素材 11 膨張の大きい部分 12 膨張の小さい部分 13 シート表面部の凹凸 14 強化繊維のスプリングバックによる
露出 15 多孔質成形品 16 成形品表面のしわ 17 ダブルベルトコンベア式連続プレス 18 無端ベルト 19、20 回転ドラム 21 油圧ラム 22、23、24 ローラーチェーン 25 加熱盤 26 冷却盤
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年11月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】この膨張したシート状成形素材10の両面
に板状体2を積層し、冷却プレス盤6内に挿入し、クリ
アランスを膨張したシートの厚み以下に設定し、目的と
する膨張倍率を得る条件で加圧、冷却して成形し、板状
体を取り外すことにより、多孔質成形品15を製造す
る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、抄造法による
強化繊維と熱可塑性樹脂からなる不織材料の両面に板状
体を積層し、その熱可塑性樹脂の融点または軟化点以上
に加熱して熱可塑性樹脂が溶融した状態で加圧した後、
熱可塑性樹脂が溶融した状態のままで加圧を除去して不
織材料を強化繊維のスプリングバックにより膨張させ、
しかる後、不織材料の膨張厚み以下で、かつ内包する空
隙を残す範囲に加圧、冷却した後、板状体を取り外す
とを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂多孔質成形品の成
形方法である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂多孔質成形
品の成形方法の一例を図1に示した。抄造法により製造
された強化繊維と熱可塑性樹脂からなる不織材料1の両
面に板状体2を重ね合わせて加熱プレス盤3内に挿入
し、熱可塑性樹脂が溶融するまで加熱する。熱可塑性樹
脂が溶融するまで加熱した後、強化繊維の間に熱可塑性
樹脂の含浸を実施するため、繊維破損が生じない圧力で
加圧を行う(4)。その後、熱可塑性樹脂が溶融した状
態のままで加圧を除去し、両面の板状体を積層した後
不織材料を強化繊維のスプリングバックにより膨張させ
(5)、しかる後、冷却プレス盤6内に挿入し、クリア
ランスを膨張した不織材料の厚み以下で、かつ内包する
空隙を残す範囲に設定して、目的とする膨張倍率を得る
条件で加圧、冷却して成形し、板状体を取り外すことに
より、本発明の多孔質成形品7を製造する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】板状体としては、シート状成形素材の製造
工程において用いるものと同様のものを使用する。シー
ト状成形素材を製造する場合は、不織材料の両面に鏡板
と称する板状体を積層し、熱可塑性樹脂の融点または軟
化点以上に加熱した後、加圧することにより強化繊維の
間に熱可塑性樹脂を含浸させ、さらに冷却して強化繊維
と熱可塑性樹脂の良好な接着を発現させる。鏡板の材質
は、加熱温度に耐えうるものであれば良く金属、無機
物、樹脂製のものが挙げられる。これらの鏡板は、熱可
塑性樹脂が溶融状態では融着してもよいが、非溶融状態
では接着しない性質を有する必要があり、シート状成形
素材の離型性を考慮してテフロン樹脂等のコーティング
を施したり、シリコン等の離型剤処理を行なう場合もあ
る。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】つづいて、熱可塑性樹脂が溶融している状
態で、加圧を除去する。不織材料は、強化繊維のスプリ
ングバックにより膨張する。抄造法で製造される不織材
料は、強化繊維がモノフィラメンント(単一の繊維)の
状態で分散しているため、スプリングバックにより大き
く膨張する。また、不織材料は加熱、加圧により均一に
加熱されており、熱可塑性樹脂の劣化は発生せず、膨張
も均一なものとなる。不織材料中の熱可塑性樹脂は、加
圧時に板状体との界面に浸み出し、両者は強度に融着し
ている。不織材料の表面が板状体の表面に拘束された状
態で膨張するため、シート表面の凹凸が発生せず、両者
の界面は熱可塑性樹脂の量が多くなり、強化繊維が樹脂
で覆われた状態の樹脂リッチ層が形成される。本発明の
多孔質成形品では、強化繊維の交差点が熱可塑性樹脂で
効率よく接着され、均一な膨張が実施されているため良
好な機械的性質が得られる。また、表面が樹脂リッチで
しわ、強化繊維の露出がなく、良好な外観が得られる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】この方法においても、ローラーチェーン2
3の加圧時に不織材料中の熱可塑性樹脂が無端ベルトと
の界面に浸み出し、両者は強固に融着する。この後、不
織材料が無端ベルトに拘束された状態で均一膨張するた
め、図1の成形方法と同様に良好な機械的性質と外観を
有する多孔質成形品が得られる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正内容】
【0026】この不織材料を600×2000mmに切断
して4枚積層し、さらにその両面に板状体としてステン
レス鋼製鏡板を重ね合わせて、図1に示した成形方法で
板状の多孔質成形品を成形した。積層体を、210℃に
温度設定された加熱プレス盤内に挿入し、圧力2kgf/cm
2 の加圧下で不織材料の中心部温度が190℃以上に昇
温するまで、約7分間予熱した。この温度で、ポリプロ
ピレン樹脂は十分溶融していた。つづいて、圧力5kgf/
cm2 で、1分間加圧し、さらに積層体を冷却プレス盤に
挿入し不織材料の厚みが12mmになるようにプレス盤の
クリアランスを設定して、約5分間冷却することにより
多孔質成形品を成形した。加熱加圧後の積層体は、加熱
盤から冷却盤に移動される短時間で、強化繊維のスプリ
ングバックにより直ちに膨張し始め、その膨張厚みは約
23mmであった。また、加熱加圧後の不織材料と鏡板は
非常に強固に融着しており、不織材料中の熱可塑性樹脂
が、加圧時に板状体との界面に浸み出し、不織材料の表
面が鏡板の表面に拘束された状態で膨張していることが
確認された。冷却後、鏡板を取り外し板厚12mmの板状
多孔質成形品を得た。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正内容】
【0028】参考例1 実施例1の不織材料を600×2000mmに切断して4
積層し、さらにその両面に板状体としてステンレス鋼
製鏡板を重ね合わせて、空隙を除去した板状成形品を成
形した。積層体を、210℃に温度設定された加熱プレ
ス盤内に挿入し、圧力2kgf/cm2 の加圧下で不織材料の
中心部温度が190℃以上に昇温するまで、約7分間予
熱した。つづいて、圧力5kgf/cm2 で、1分間加圧し、
さらに積層体を冷却プレス盤に挿入し、圧力5kgf/cm2
で約5分間、加圧、冷却することにより板状成形品を成
形した。この場合は、プレス盤のクリアランス設定は行
わず、加熱加圧と同様に、不織材料が直接加圧された状
態で冷却成形した。冷却後、鏡板を取り外し板厚6.8
mmの板状成形品を得た。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正内容】
【0030】比較例1 参考例1で成形された板状成形品を成形素材として、図
2に示した従来の方法により多孔質成形品を成形した。
参考例1の成形品を600×600mmに切断し、遠赤外
線加熱炉により表面温度が220℃に昇温するまで約7
分間加熱した。この際、成形素材は表面付近が大きく膨
張し、内部は十分加熱されていない状態であり、膨張後
の厚みは約15mmであった。また、表面部には凹凸が発
生し、ガラス繊維がスプリングバックにより露出し、ポ
リプロピレン樹脂が局部加熱により熱劣化していること
が確認された。加熱された成形素材の両面に板状体とし
てステンレス鋼製鏡板を積層して、冷却プレス盤に挿入
し厚みが12mmになるようにプレス盤のクリアランスを
設定して、約5分間冷却することにより多孔質成形品を
成形した。冷却後、鏡板を取り外し板厚12mmの板状多
孔質成形品を得た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 隆夫 三重県四日市市東邦町1番地 三菱油化株 式会社四日市総合研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抄造法による強化繊維と熱可塑性樹脂か
    らなる不織材料を、その熱可塑性樹脂の融点または軟化
    点以上に加熱して熱可塑性樹脂が溶融した状態で加圧し
    た後、熱可塑性樹脂が溶融した状態のままで加圧を除去
    して不織材料を強化繊維のスプリングバックにより膨張
    させ、しかる後、不織材料の膨張厚み以下で、かつ内包
    する空隙を残す範囲に加圧、冷却して成形することを特
    徴とする繊維強化熱可塑性樹脂多孔質成形品の成形方
    法。
JP4149093A 1992-06-09 1992-06-09 繊維強化熱可塑性樹脂多孔質成形品の成形方法 Pending JPH06134876A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2017110533A1 (ja) 2015-12-25 2017-06-29 東レ株式会社 構造体の製造方法
JP2021020345A (ja) * 2019-07-25 2021-02-18 株式会社アーク 複合体の製造方法および複合体

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