JPH06122198A - インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録装置

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JPH06122198A
JPH06122198A JP27297792A JP27297792A JPH06122198A JP H06122198 A JPH06122198 A JP H06122198A JP 27297792 A JP27297792 A JP 27297792A JP 27297792 A JP27297792 A JP 27297792A JP H06122198 A JPH06122198 A JP H06122198A
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JP
Japan
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ink
oxide film
recording
heater
pulse
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Application number
JP27297792A
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English (en)
Inventor
Kentaro Yano
健太郎 矢野
Naoji Otsuka
尚次 大塚
Atsushi Arai
篤 新井
Kiichiro Takahashi
喜一郎 高橋
Osamu Iwasaki
督 岩崎
Hitoshi Nishigori
均 錦織
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Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 必要最小限の投入エネルギーで記録ヘッドの
駆動を行い、高速化、高画質の維持、耐久劣化の促進を
低減し、ランニングコストの低下を実現することを目的
とする。 【構成】 キャビテーションを利用して効果的にヒータ
面上の酸化膜を剥離するには、リフィール時のインクの
慣性力を増加する手段と、発泡気泡が気相から液層に状
態変化する際の分子数を増加させておく手段がある。例
えば、予め設定されている印字ドット数(トータル64
0万ドット)を越えた時点で、発泡効率に優れるマルチ
パルス駆動で、且つインク粘度を低下させる目的で高周
波で全ノズル連続吐出を行い、キャビテーション力を増
大させ、酸化膜を効果的に剥離するよう制御を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はインクジェット記録装
置、特に高画像品位を長期にわかって維持し、高速かつ
低ランニングコストを実現することが可能なインクジェ
ット記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、パソコンやワープロ等のOA機器
の処理速度に関する技術革新が急ピッチで進んでいる。
該処理速度の急ピッチな技術革新に伴いこれらOA機器
で入力した情報をプリントアウトする記録装置に対して
の要求も、より高品位に、より高速に、且つより低ラン
ニングコストで、という方向に移行してきている。
【0003】記録装置の記録方式としては、例えばワイ
ヤードッド方式、熱転写方式、インクジェット方式等種
々の記録方式が開発されているが、なかでもインクジェ
ット記録方式は高速、高画質、低ランニングコストを実
現しうる記録技術であり、近年のニーズと合致し急速に
普及してきているのが現状である。
【0004】前記インクジェット記録装置においての記
録ヘッドの構成としては、インクが保持されているシー
トや液路に対応して配置されている電気・熱変換体に、
記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇
を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによ
って、電気・熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記
録ヘッドのノズル内の熱作用面に膜沸騰を生じさせて、
結果的にこの駆動信号に一対一で対応してノズル中のイ
ンク内に気泡を形成させるものである。この起動信号を
パルス形状とすると、即時適切に気泡の形成・収縮が行
われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成で
きる。このパルス形状の駆動信号としては米国特許第4
463359号明細書、同4345262号明細書に記
載されているようなものが適している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
インクジェット記録装置では、初期と比べ耐久枚数が進
んでくると画像品位が劣化してくる場合があった。これ
は記録を繰り返すに従ってインクに熱を供給するヒータ
部に酸化膜等の堆積物が付着し(以下単に酸化膜の堆積
物という)、投入エネルギーの変換効率が低下すること
に起因している。即ち記録ヘッドに投入したエネルギー
のうち吐出に使用されるエネルギーの比率が低下し、十
分な吐出エネルギーがインクに供給されないために発泡
が不安定になり画像の劣化が生じる。この対策として、
耐久後、ヒータ上に酸化膜が堆積しても十分なエネルギ
ーを供給できるように、投入エネルギーを更に多めに設
定しておくことが考えられるが、前記ヒータ上での酸化
膜の堆積の促進を助長し、結果的には画像の劣化速度を
促進させてしまう。
【0006】また、前記ヒータ上に酸化膜が堆積しイン
クへのエネルギー伝達効率が低下すると、エネルギー印
加時ヒータ表面部の温度が急激に上昇しヒータの断線な
どの故障を誘発する。従って、必要以上に投入エネルギ
ーを増加させることは弊害を招き必ずしも対策とはなら
なかった。
【0007】また、昨今のプリンターに対する高速化の
要求に応えながら更に高画質化を実現していくためには
インクジェット記録装置特有の蓄熱の問題も解決して行
かねばならず、投入エネルギーは可能な限り最小限に止
め、エネルギー変換効率を高めるよう構成、制御して行
かねばならないという課題があった。
【0008】この発明は、前記の課題を解決し、インク
の吐出ヒータ上に経時的に堆積してくる酸化膜等の堆積
物に起因するエネルギー変換効率の低下を低減すること
により、必要最小限の投入エネルギーで記録ヘッドの駆
動が行えるようにし、高速化、高画質の維持、更には耐
久劣化の促進を低減しランニングコストの低下を実現す
ることを可能としたインクジェット記録装置を提供する
ことを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】このため、この発明の請
求項1においては、インクを収容するインクタンクと、
前記インクタンクより供給されたインクを吐出させるイ
ンクジェット記録ヘッドと、を備えインク液滴を前記記
録ヘッドから記録シートへ吐出させて記録を行うインク
ジェット記録装置において、吐出用ヒータ上に堆積する
酸化膜等の異物を除去する酸化膜除去手段を具備してな
ることを特徴とするインクジェット記録装置により、前
記課題を解決し、前記目的を達成しようとするものであ
る。
【0010】また、この発明の請求項2においては、酸
化膜除去手段は、吐出ヒータ上でインクが液相から気相
に相転移する相転移分子数を制御する転移分子数制御手
段であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェ
ット記録装置により、前記課題を解決し、前記目的を達
成しようとするものである。
【0011】また、この発明の請求項3においては、酸
化膜除去手段は、記録インクの粘度を制御する粘度制御
手段を有することを特徴とする請求項1,2のいずれか
に記載のインクジェット記録装置により、前記課題を解
決し、前記目的を達成しようとするものである。
【0012】また、この発明の請求項4においては、転
移分子数制御手段は、吐出ヒータをマルチパルスで駆動
するマルチパルス制御手段と、吐出ヒータを駆動する電
圧を印字時の記録ヘッド駆動電圧以下で駆動する駆動電
圧制御手段のうち、少なくとも一方の手段を有すること
を特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置
により、前記課題を解決し、前記目的を達成しようとす
るものである。
【0013】また、この発明の請求項5においては、前
記記録ヘッドは、インクを吐出する複数の吐出部と、対
応する吐出部毎に設けられ、インクに熱による状態変化
を生起させ該状態変化に基づいてインクを前記吐出部か
ら吐出させて飛翔的液滴を形成する熱エネルギー発生手
段とを有することを特徴とする請求項1ないし4のいず
れかに記載のインクジェット記録装置により、前記課題
を解決し、前記目的を達成しようとするものである。
【0014】
【作用】この発明の請求項1におけるインクジェット記
録装置は、インクタンクにインクを収容し、インクジェ
ット記録ヘッドで前記インクを記録シートへ吐出させて
記録を行う。そしてまた、酸化膜除去手段により、吐出
用ヒータ上に堆積する酸化膜等の異物を除去する。
【0015】また、この発明の請求項2におけるインク
ジェット記録装置は、請求項1において、酸化膜除去手
段である転移分子数制御手段により吐出ヒータ上でイン
クが液相から気相に相転移する相転移分子数を制御す
る。
【0016】また、この発明の請求項3におけるインク
ジェット記録装置は、請求項1,2のいずれかにおい
て、酸化膜除去手段が有する粘度制御手段により、記録
インクの粘度を制御する。
【0017】また、この発明の請求項4におけるインク
ジェット記録装置は、請求項2において、転移分子数制
御手段が有するマルチパルス制御手段により吐出ヒータ
をマルチパルスで駆動するか、及び/又は駆動電圧制御
手段により吐出ヒータを駆動する電圧を印字時の記録ヘ
ッド駆動電圧以下で駆動する。
【0018】また、この発明の請求項5におけるインク
ジェット記録装置は、請求項1ないし4のいずれかにお
いて、複数のインク吐出部からインクを吐出し、対応す
るインク吐出部毎に設けられた熱エネルギー発生手段に
よりインクに熱による状態変化を生起させ該状態変化に
基づいてインクを前記吐出部から吐出させて飛翔的液滴
を形成する。
【0019】
【実施例】以下、この発明のインクジェット記録装置に
係る実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。先ず、
この発明が実施又は適用されるインクジェット記録装置
の各部の構成を図7ないし図12を用いて説明する。
【0020】図7ないし図12は、この発明が実施もし
くは適用される好適なインクジェットユニットIJU,
インクジェットヘッドIJH,インクタンクIT,イン
クジェットカートリッジIJC,インクジェット記録装
置本体IJRA,キャリッジHCの夫々及び夫々の関係
を説明するための説明図である。以下これらの図面を用
いて各部構成の説明を行う。
【0021】先ず、インクジェットユニットIJUの構
成を説明する。インクジェットユニットIJUは、電気
信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じせしめるため
の熱エネルギーを生成する電気熱変換体を用いて記録を
行う方式のユニットである。
【0022】図7において、100はSi基板上に複数
の列状に配設された電気熱変換体(吐出ヒータ)と、こ
れに電力を供給するAl等の電気配線とが成膜技術によ
り形成されて成るヒータボードである。200はヒータ
ボード100に対する配線基板であり、ヒータボード1
00の配線に対応する配線(例えばワイヤボンディング
により接続される)と、この配線の端部に位置し本体装
置からの電気信号を受けるパッド201とを有してい
る。
【0023】1300は複数のインク流路を夫々区分す
るための隔壁や供給液室等を設けた溝付天板で、インク
タンクから供給されるインクを受けて供給液室へ導入す
るインク受け口1500と、吐出口を複数有するオリフ
ィスプレート400を一体成型したものである。これら
の一体成型材料としてはポリサルフォンが好ましいが、
他の成型用樹脂材料でも良い。
【0024】300は配線基板200の裏面を平面で支
持する例えば金属製の支持体で、インクジェットユニッ
トの底板となる。500は押えばねであり、M字形状で
そのM字の中央で共通液室を押圧すると共に前だれ部5
01で液路の一部を線圧で押圧する。ヒータボード10
0および天板1300を押えばねの足部が支持体300
の穴3121を通って支持体300の裏面側に係合する
ことで、これらを挟み込んだ状態で両者を係合させるこ
とにより、押えばね500とその前だれ部501の付勢
力によってヒータボード100と天板1300とを圧着
固定する。又、支持体300は、インクタンクITの2
つの位置決め凸起1012及び位置決め且つ熱融着保持
用凸起1800,1801に係合する位置決め用穴31
2,1900,2000を有する他、装置本体IJRA
のキャリッジHCに対する位置決め用の突起2500,
2600を裏面側に有している。加えて支持体300は
インクタンクからのインク供給を可能とするインク供給
管2200(後述)を貫通可能にする穴320をも有し
ている。支持体300に対する配線基板200の取付
は、接着剤等で貼着して行われる。
【0025】尚、支持体300の凹部2400は、それ
ぞれ位置決め用突起2500,2600の近傍に設けら
れており、組立てられたインクジェットカートリッジI
JC(図8)において、その周囲の3辺を平行溝300
0,3001の複数で形成されたヘッド先端域の延長点
にあって、ゴミやインク等の不要物が突起2500,2
600に至ることがないように位置しているこの平行溝
3000が形成されている。蓋部材800は、図8でわ
かるように、インクジェットカートリッジIJCの外壁
を形成すると共に、インクジェットユニットIJUを収
納する空間部を形成している。
【0026】又、この平行溝3001が形成されている
インク供給部材600(図7)は、前述したインク供給
管2200に連続するインク導管1600を供給管22
00側が固定の片持ちばりとして形成し、インク導管の
固定側とインク供給管2200との毛管現象を確保する
ための封止ピン602が挿入されている。尚、601は
インクタンクITと供給管2200との結合シールを行
うパッキン、700は供給管のタンク側端部に設けられ
たフィルターである。
【0027】このインク供給部材600は、モールド成
型されているので、安価で位置精度が高く形成製造上の
精度低下を無くしているだけでなく、片持ちばりの導管
1600によって大量生産時においても導管1600の
上述インク受け口1500に対する圧接状態が安定化で
きる。本例では、この圧接状態下で封止用接着剤をイン
ク供給部材側から流し込むだけで、完全な連通状態を確
実に得ることができている。
【0028】尚、インク供給部材600の支持体300
に対する固定は、支持体300の穴1901,1902
に対するインク供給部材600の裏面側ピン(不図示)
を支持体300の穴1901,1902を介して貫通突
出せしめ、支持体300の裏面側に突出した部分を熱融
着することで簡単に行われる。尚、この熱融着された裏
面部のわずかな突出領域は、インクタンクITのインク
ジェットユニットIJU取付面側壁面のくぼみ(不図
示)内に収められるのでユニットIJUの位置決め面は
正確に得られる。
【0029】次に、インクタンクITの構成を説明す
る。図7において、インクタンクは、カートリッジ本体
1000と、インク吸収体900とインク吸収体900
をカートリッジ本体1000の上記ユニットIJU取付
面とは反対側の側面から挿入した後、これを封止する蓋
部材1100とで構成されている。900はインクを含
浸させるための吸収体であり、カートリッジ本体100
0内に配置される。1200は上記各部100ないし6
00からなるユニットIJUに対してインクを供給する
ための供給口であると共に、当該ユニットをカートリッ
ジ本体1000の部分1010に配置する前の工程で供
給口1200よりインクを注入することにより吸収体9
00のインク含浸を行うための注入口でもある。
【0030】この本例では、インクを供給可能な部分
は、大気連通口とこの供給口とになるが、インク吸収体
からのインク供給性を良好に行うための本体1000内
リブ2300と蓋部材1100の部分リブ2500,2
400とによって形成されたタンク内空気存在領域を、
大気連通口1401側から連続させてインク供給口12
00から最も遠い角部位置にわたって形成している構成
をとっているので、相対的に良好かつ均一な吸収体への
インク供給は、この供給口1200側から行われること
が重要である。この方法は実用上極めて有効である。こ
のリブ1000は、インクタンクの本体1000の後方
面において、キャリッジ移動方向に平行なリブを4本有
し、吸収体が後方面に密着することを防止している。ま
た、部分リブ2400,2500は、同様にリブ100
0に対して対応する延長上にある蓋部材1100の内面
に設けられているが、リブ1000とは異なり分割され
た状態となっていて空気の存在空間を前者より増加させ
ている。
【0031】尚、部分リブ2500,2400は蓋部材
1000の全面積の半分以下の面に分散された形となっ
ている。これらのリブによってインク吸収体のタンク供
給口1200から最も遠い角部の領域のインクをより安
定させつつ確実に供給口1200側へ毛管力で導くこと
ができた。1401はカートリッジ内部を大気に連通す
るために蓋部材に設けた大気連通口である。1400は
大気連通口1401の内方に配置される口液材であり、
これにより大気連通口1401からのインク漏洩が防止
される。
【0032】前述したインクタンクITのインク収容空
間は長方体形状であり、その長辺を側面にもつ場合であ
るので上述したリブの配置構成は特に有効であるが、キ
ャリッジの移動方向に長辺を持つ場合又は立方体の場合
は、蓋部材1100の全体にリブを設けるようにするこ
とでインク吸収体900からのインク供給を安定化でき
る。
【0033】また、インクタンクITの上記ユニットI
JUの取付面の構成は図9によって示されている。オリ
フィスプレート400の突出口のほぼ中心を通って、タ
ンクITの底面もしくはキャリッジの表面の載置基準面
に平行な直線をL1とすると、支持体300の穴312
に係合する2つの位置決め凸起1012はこの直線L1
上にある。この凸起1012の高さは支持体300の厚
みよりわずかに低く、支持体300の位置決めを行う。
【0034】この図面上で直線L1の延長上には、キャ
リッジの位置決め用フック400(図10)の90°角
の係合面4002が係合する爪2100が位置してお
り、キャリッジに対する位置決めの作用力がこの直線L
1を含む上記基準面に平行な面領域で作用するように構
成されている。図9で後述するが、これらの関係は、イ
ンクタンクのみの位置決めの精度がヘッドの吐出口の位
置決め精度と同等となるので有効な構成となる。
【0035】又、支持体300(図7)のインクタンク
側面への固定用穴1900,2000にそれぞれ対応す
るインクタンクの突起1800,1801は前述の凸起
1012よりも長く、支持体300を貫通して突出した
部分を熱融着して支持体300をその側面に固定するた
めのものである。
【0036】上述の線L1(図9)に垂直でこの突起1
800を通る直線をL3、突起1801を通る直線をL
2としたとき、直線L3上には上記供給口1200のほ
ぼ中心が位置するので、供給部の口1200と供給管2
200との結合状態を安定化する作用をし、落下や衝撃
によってもこれらの結合状態への負荷を軽減できるので
好ましい構成である。
【0037】又、直線L2,L3は一致しておらず、ヘ
ッドIJHの吐出口側の凸起1012周辺に突起180
0,1801が存在しているので、さらにヘッドIJH
のタンクに対する位置決めの補強効果を生んでいる。
【0038】尚、L4で示される曲線は、インク供給部
材600の装着時の外壁位置である。突起1800,1
801はその曲線L4に沿っているので、ヘッドIJH
の先端側構成の重量に対しても充分な強度と位置精度を
与えている。尚、2700はインクタンクITの先端ツ
バで、キャリッジの前板4000の穴に挿入されて、イ
ンクタンクの変位が極端に悪くなるような異変時に対し
て設けられている。2101は、キャリッジHCとのさ
らなる位置決め部との係合部である。
【0039】インクタンクITは、ユニットIJUを装
着された後に蓋800(図7)で覆うことで、ユニット
IJUを下方開口を除いて包囲する形状となるが、イン
クジェットカートリッジIJUとしては、キャリッジH
Cに載置するための下方開口はキャリッジHCと近接す
るため、実質的な4方包囲空間を形成してしまう。
【0040】従って、この包囲空間内にあるヘッドIJ
Hからの発熱はこの空間内の保温空間として有効となる
ものの長期連続使用としては、わずかな昇温となる。こ
のため本例では、支持体の自然放熱を助けるためにカー
トリッジIJCの上方面に、この空間よりは小さい幅の
スリット1700(図9)を設けて、昇温を防止しつつ
もユニットIJU全体の温度分布の均一化を環境に左右
されないようにすることができた。
【0041】インクジェットカートリッジIJCとして
組立てられると、インクはカートリッジ内部より供給口
1200(図7)、支持体300に設けた穴320およ
び供給タンク600の中裏面側に設けた導入口を介して
供給タンク600内に供給され、その内部を通った後、
導出口より適宜の供給管および天板400のインク導入
口1500を介して供給液室内へと流入する。
【0042】以上におけるインク連通用の接続部には、
例えばシリコンゴムやプチルゴム等のパッキンが配設さ
れ、これによって封止が行われてインク供給路が確保さ
れる。
【0043】尚、本実施例においては天板1300は耐
インク性に優れたポリサルフオン、ポリエーテルサルフ
オン、ポリフエニレンオキサイド、ポリプロピレンなど
の樹脂を用い、オリフイスプレート部400と共に金型
内で一体に同時成型してある。
【0044】上述のように一体成型部品は、インク供給
部材600、天板・オリフイスプレート一体、インクタ
ンク本体1000としたので組立て精度が高水準になる
ばかりでなく、大量生産の品質向上に極めて有効であ
る。又部品点数の個数は従来に比較して減少できている
ので、優れた所望特性を確実に発揮できる。
【0045】次に、キャリッジHCに対するインクジェ
ットカートリッジIJUの取付を説明する。図10にお
いて、5000はプラテンローラで、記録媒体Pを紙面
下方から上方へ案内する。キャリッジHCは、プラテン
ローラ5000に沿って移動するもので、キャリッジの
前方プラテン側にインクジェットカートリッジIJUの
前面側に位置する前板4000(厚さ2mm)と、カート
リッジIJUの配線基板200のパッド201に対応す
るパッド2011を具備したフレキシブルシート400
5、及びこれを裏面側から各パッド2011に対して押
圧する弾性力を発生するためのゴムパッド4006を保
持する電気接続部用支持板4003と、インクジェット
カートリッジIJUを記録位置へ固定するための位置決
め用フック4001とが設けられている。
【0046】前板4000は位置決め用突出面410を
カートリッジの支持体300の前述した位置決め突起2
500,2600にそれぞれ対応して2個有し、カート
リッジの装着後はこの突出面4010に向う垂直な力を
受ける。このため、補強用のリブが前板のプラテンロー
ラ側に、その垂直な力の方向に向っているリブ(不図
示)を複数有している。このリブは、カートリッジIJ
U装着時の前面位置L5よりもわずかに(約0.1mm程
度)プラテンローラ側に突出しているヘッド保護用突出
部をも形成している。
【0047】電気接続部用支持板4003は、補強用リ
ブ4004を前記リブの方向ではなく垂直方向に複数有
し、プラテン側からフック4001側に向って側方への
突出割合が減じられている。これは、カートリッジ装着
時の位置を図のように傾斜させるための機能も果してい
る。
【0048】又、支持板4003は電気的接触状態を安
定化するため、プラテン側の位置決め面4008とフッ
ク側の位置決め面4007を有し、これらの間にパッド
コンタクト域を形成すると共にパッド2011対応のポ
ッチ付ゴムシート4006の変形量を一義的に規定す
る。
【0049】これらの位置決め面は、カートリッジIJ
Cが記録可能な位置に固定されると、配線基板300の
表面に当接した状態となる。本例では、さらに配線基板
300のパッド201を前述した線L1に関して対称と
なるように分布されているので、ゴムシート4006の
各ポーチの変形量を均一化してパッド2011,201
の当接圧をより安定化している。本例のパッド201の
分布は、上方,下方2列、縦2列である。
【0050】フック4001は、固定軸4009に係合
する長穴を有し、この長穴の移動空間を利用して図の位
置から反時計方向に回動した後、プラテンローラ500
0に沿って左方側へ移動することでキャリッジHCに対
するインクジェットカートリッジIJCの位置決めを行
う。このフック4001の移動はどのようなものでもよ
いが、レバー等で行える構成が好ましい。いずれにして
もこのフック4001の回動時にカートリッジIJCは
プラテンローラ側へ移動しつつ位置決め突起2500,
2600が前板の位置決め面4010に当接可能な位置
へ移動し、フック4001の左方側移動によって90°
のフック面4002がカートリッジIJCの爪2100
の90°面に密着しつつカートリッジIJCを位置決め
面2500,4010同志の接触域を中心に水平面内で
旋回して最終的にパッド201,2011同志の接触が
始まる。
【0051】そしてフック4001が所定位置、すなわ
ち固定位置に保持されると、パッド201,2011同
志の完全接触状態と、位置決め面2500,4010同
志の完全面接触と、90度面4002と爪の90°面の
2面接触と、配線基板300と位置決め面4007,4
008との面接触とが同時に形成されてキャリッジに対
するカートリッジIJCの保持が完了する。
【0052】次にヒーターボードの説明をする。図11
は本実施例で使用しているヘッドのヒーターボード10
0の模式図を示している。ヘッドの温度を制御するため
の温調用(サブ)ヒーター8d、インクを吐出させるた
めの吐出用(メイン)ヒーター8cが配された吐出部列
8g、駆動素子8hが同図で示されるような位置関係で
同一基板上に形成されている。このように各素子を同一
基板上に配することでヘッド温度の検出、制御が効率よ
く行え、更にヘッドのコンパクト化、製造工程の簡略化
を計ることができる。また同図には、ヒーターボードが
インクで満たされる領域と、そうでない領域とに分離す
る天板の外周壁断面8fの位置関係を示す。この天板の
外周壁断面8fの吐出用ヒーター8d側が、共通液室と
して機能する。
【0053】なお、天板の外周壁断面8fの吐出部列8
g上に形成された溝部によって、液路が形成される。
【0054】次に制御構成の説明をする。上述した装置
構成の各部の記録制御を実行するための制御構成につい
て、図12に示すブロック図を参照して説明する。制御
回路を示す同図において、10は記録信号を入力するイ
ンターフェース、11はMPU、12はMPU11が実
行する制御プログラムを格納するプログラムROM、1
3は各種データ(上記記録信号やヘッドに供給される記
録データ等)を保存しておくダイナミック型のRAMで
ある。
【0055】14は記録ヘッド18に対する記録データ
の供給制御を行うゲートアレイであり、インターフェー
ス10,MPU11,RAM13間のデータの転送制御
も行う。20は記録ヘッド18を搬送するためのキャリ
アモータ、19は記録用紙搬送のための搬送モータであ
る。15はヘッドを駆動するヘッドドライバ、16,1
7はそれぞれ搬送モータ19,キャリアモータ20を駆
動するモータドライバである。
【0056】図13は、各部の詳細を示す回路図であ
る。ゲートアレイ14は、データラッチ141,セグメ
ント(SEG)シフトレジスタ142,マルチプレクサ
(MPX)143,コモン(COM)タイミング発生回
路144,デコーダ145を有する。記録ヘッド18
は、ダイオードマトリックス構成を取っており、コモン
信号COMとセグメント信号SEGが一致したところの
吐出用ヒータ(H1からH64)に駆動電流が流れ、こ
れによりインクが加熱され吐出する。
【0057】上記デコーダ145は、上記コモンタイミ
ング発生回路144が発生したタイミングをデコードし
て、コモン信号COM1〜8のいずれか1つを選択す
る。データラッチ141はRAM13から読み出された
記録データを8ビット単位でラッチし、この記録データ
をマルチプレクサ143はセグメントシフトレジスタ1
42に従い、セグメント信号SEG1〜8として出力す
る。マルチプレクサ143からの出力は、後述するよう
に1ビット単位、2ビット単位、または8ビット全てな
ど、シフトレジスタ142の内容によって種々変更する
ことができる。
【0058】次に上記制御構成の動作を説明する。図1
2において、インターフェース10に記録信号が入ると
ゲートアレイ14とMPU11との間で記録信号がプリ
ント用の記録データに変換される。そして、モータドラ
イバ16,17が駆動されるとともに、ヘッドドライバ
15に送られた記録データに従って記録ヘッドが駆動さ
れ、印字が行われる。
【0059】以上説明したような装置を用いて以下にこ
の発明での実施例を図面に基づいて説明する。先ず、こ
の発明の第1の実施例について説明する。図1は、この
発明に適用されるインクジェット記録装置IJRAの斜
視図である。図1において、駆動モータ5013の正逆
回転に連動して駆動力伝達ギア5011,5009を介
して回転するリードスクリュー5005の螺旋溝500
4に対して係合するキャリッジHCはピン(不図示)を
有し、矢印a,b方向に往復移動される。このキャリッ
ジHCには、インクジェットカートリッジIJCが搭載
されている。
【0060】5002は紙押え板であり、キャリッジ移
動方向にわたって紙をプラテン5000に対して押圧す
る。5007,5008はフォトカプラで、キャリッジ
のレバー5006のこの域での存在を確認して、モータ
5013の回転方向切換等を行うためのホームポジショ
ン検知手段である。5016は記録ヘッドの前面をキャ
ップするキャップ部材5022を支持する部材で、50
15はこのキャップ内を吸引する吸引手段でキャップ内
開口5023を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。
【0061】5017はクリーニングブレードで、50
19はこのブレードを前後方向に移動可能にする部材で
あり、本体支持板5018にこれらは支持されている。
ブレードは、この形態でなく周知のクリーニングブレー
ドが本例に適用できることはいうまでもない。
【0062】又、5012は、吸引回復の吸引を開始す
るためのレバーで、キャリッジと係合するカム5020
の移動に伴って移動し、駆動モータからの駆動力がクラ
ッチ切換等の公知の伝達手段で移動制御される。
【0063】これらのキャッピング,クリーニング,吸
引回復は、キャリッジがホームポジション側領域にきた
ときにリードスクリュー5005の作用によってそれら
の対応位置で所望の処理が行えるように構成されている
が、周知のタイミングで所望の作動を行うようにすれ
ば、本例には何れも適用できる。
【0064】本例でのインクジェットカートリッジIJ
Cは、図7の斜視図でわかるように、インクの収納割合
が大きくなっているもので、インクタンクITの前方面
よりもわずかにインクジェットユニットIJUの先端部
が突出した形状である。このインクジェットカートリッ
ジIJCは、インクジェット記録装置本体IJRAに載
置されているキャリッジHCの後述する位置決め手段、
及び電気的接点とによって固定支持されると共に、該キ
ャリッジHCに対して着脱可能なタイプである。
【0065】前記装置において、記録ヘッドの駆動を繰
り返していくと、吐出ヒータ上に酸化膜が堆積し前記の
ような不正発泡による画像品位の劣化や、過昇温による
ヒータの断線などの問題が生じるが、第1の実施例では
吐出ヒータ上に吐出を不安定にする程の酸化膜が堆積し
ないよう制御される。
【0066】経時的な酸化膜の堆積の過程、及び酸化膜
が過剰に堆積しないよう制御する構成を、以下実験結果
を交えながら説明する。
【0067】実験は解像度360dpi(dot/in
ch)、ノズル数64本、記録速度3000ドット/秒
・ノズル、80ng/dot、のインクジェット記録ヘ
ッドを、27.6V、4.8μsの方形波を印加して駆
動を行った。
【0068】図2は、上記条件で駆動を行った場合の吐
出ヒータのインク接触面の模写図である。図において、
8cは吐出ヒータ、101は該ヒータ上に堆積している
酸化膜である。図2中Aは初期のヒータ状態であり、B
は上記駆動条件で10万パルス印加時、C,D,E,F
はそれぞれ50万パルス、100万パルス、500万パ
ルス、1000万パルス印加時の吐出ヒータのインク接
触面である。酸化膜はヒータの4隅から堆積し始め(図
中B)、全体を薄く多い(図中C)、更に堆積層を進行
させていく(図中D)。酸化膜はある程度の厚みに達す
ると一部が剥がれ落ちながらも(図中E)更に厚みを増
加させていき、一定以上の厚みに達するとヒータ面が露
出するほどの剥がれを生じることはなくなり堆積層を増
長させていく。この時、酸化膜の堆積層が厚くなるに従
ってヒータ面上からインク液へのエネルギーの伝達効率
は低下し、予め設定されている投入エネルギーが小さい
場合にはインクの発泡が不安定になり画像品位の乱れを
生じ、予め設定されている投入エネルギーが大きい場合
にはエネルギーの伝達効率が悪いことに起因する過剰昇
温を招きヒータの断線を生じる。酸化膜によるブロック
によりエネルギーの印加中のヒータ表面の最高到達温度
は瞬間的には400℃を越える場合もある。
【0069】またマクロ的に観た昇温も、図2中Aの耐
久初期と比べ、1000万パルス印加時の図中Fでは、
約1.3倍の昇温温度に達していた。
【0070】上記において、投入エネルギーの変換効率
が低下していく過程が、経時的に記録ヘッドの蓄熱が増
加する過程であり且つ画像品位が低下していく過程であ
る。更には、不正発泡もしくは吐出ヒータが断線した時
点が記録ヘッドの寿命となる。
【0071】近年のホストの急激な処理能力の向上に対
応すべく記録装置を高速化、高画質化、高耐久化してい
くためには、上記酸化膜の堆積を極力低減する必要があ
る。
【0072】前記実験結果からも明らかなように、吐出
ヒータ上に堆積する酸化膜は通常の吐出による気泡の発
泡・消泡の衝撃で偶発的に剥がれ落ちる場合がある。酸
化膜が剥がれ落ちるメカニズムは、気泡消泡時の衝撃
(以下キャビテーションという)で酸化膜が気泡消泡時
に物理的衝撃力を受けて破壊され剥がれ落ちるものと想
定する。該キャビテーションのメカニズムを以下図面を
用いて説明する。
【0073】図6はキャビテーションのメカニズム説明
図である。図6において、8cは吐出ヒータである。吐
出ヒータ8cにエネルギーが印加されると吐出ヒータ面
近傍のインクが昇温し、相転移を起こして液体から気体
に状態変化を起こす。発泡開始点での発泡気体の圧力レ
ベルは10気圧を越える程に上昇しているが、エネルギ
ーの供給を停止し以後慣性力のみで最大発泡点まで到達
した時点では(図中Aの状態)、気体内圧力は1/10
0気圧以下にまで減圧されている。
【0074】そして気体内異常低圧から収縮力が生まれ
消泡に転じる(図中B)。気体の収縮に従ってインクの
リフィールを開始するが、一度インクが動き始めるとイ
ンクに慣性力が生じる。消泡の途中までは気泡内圧力が
大気圧に対して負圧状態であり気泡自体も収縮する方向
に収縮力は働くが、ある時点からはインクの慣性力によ
って押しつぶされながらの収縮となり気体内圧力は極め
て高圧状態になる。極限まで気体が圧縮されると(図中
Cの状態)、気体は気相では存在できなくなり液相に相
転移し、消泡過程が終了する(図中D)。
【0075】上記プロセスは極めて高速に進行し、前記
の記録ヘッドを前記の条件で駆動した場合、最大発泡点
から消泡完了までに要する時間はおよそ5μs程度であ
った。ここで、上記プロセスの最終行程である相転移
時、圧力レベルは極めて高圧な状態から瞬間的に常圧
(大気と解放されているインク圧)に変化する。この時
の、吐出ヒータ面上で起こる圧力変化に伴う衝撃力がキ
ャビテーションである。
【0076】よって、キャビテーションを利用して効果
的にヒータ面上の酸化膜を剥離するには、リフィール時
のインクの慣性力を増加する手段と、発泡気泡が気相か
ら液相に状態変化する際の分子数を増加させておく手段
がある。
【0077】本実施例では、予め設定されている印字ド
ット数(トータル640万ドット)を越えた時点で、発
泡効率に優れるマルチパルス駆動で、且つインク粘度を
低下させる目的で高周波で全ノズル連続吐出を行い、キ
ャビテーション力を増大させ、酸化膜を効果的に剥離す
るよう制御を行う。具体的には装置の電源on時、プレ
パルス幅1μs,メインパルス3.8μs,プレパルス
・メインパルス間オフタイム3μs(前記の通り印字時
は4.8μsのシングル方形波)、周波数3KHzでそ
れぞれ1000発の酸化膜除去予備吐出を行う。駆動パ
ルスをマルチパルス化する狙いは、発泡開始までの時間
を極力遅らせてヒータ面上のエネルギーを十分にインク
に伝達することにより液相から気相に状態変化する分子
数を増加させて、前記消泡時のキャビテーション力を増
大するものである。インクジェット記録ヘッドにおい
て、駆動パルスをマルチパルス化することで相転移分子
数を増大し吐出量を増加、変調する手段は公知の技術で
あるので詳細な説明は省略する。(概略の説明は以下で
記す。) 以上のように酸化膜剥離制御を行うことにより、酸化膜
の無節操な増長を防止し、投入エネルギーの経時的な変
換効率の低下を防止し、蓄熱を低減することで高速化を
実現し、画像品位の劣化を防ぎ、吐出ヒータの高寿命化
を実現できる。
【0078】次に前記構成よりなる記録装置を用いて記
録を行う場合の第1の実施例の動作について図3のフロ
ーチャートを用いて説明する。図3は記録装置に印字命
令が入力された時のサブルーチンである。図3におい
て、印字命令が入力されると、ステップ100で今まで
に印字が行われたトータルドット数が予め設定されてい
る酸化膜除去制御を行うドット数を越えているかどうか
が判断される。該設定ドット数以下であった場合には該
サブルーチンは終了しメインルーチンに帰還して印字処
理が行われる。設定ドット数以上で有った場合には、前
記のゲートアレイ14(G.A.14)に記録ヘッドを
駆動するパルス幅を設定する。
【0079】印字時のパルスは4.8μsであるが、こ
こでの設定値は前述の通り、酸化膜を効果的に剥離する
ためのパルスであるので、相転移分子数を増加させるた
めにプレパルス1μs,メインパルス3.8μs,プレ
パルス・メインパルス間オフタイム3μsが設定される
(ステップ110)。ゲートアレイ14にパルス幅が設
定されると予め設定されている周波数(3KHz)、発
数(1000発/ノズル)の酸化膜除去予備吐出が実行
される(ステップ120)。予備吐出位置に特定の限定
位置はないが、記録ヘッドのホームポジション周辺の吸
収体、もしくはキャップ内に吐出するのが一般的であ
る。予備吐出に関する動作は公知の技術であるので詳細
な説明は省略する。
【0080】酸化膜除去予備吐出終了後、印字ドット数
をリセットし(ステップ130)、本割り込みルーチン
は終了しメインルーチンに制限は戻され以後の動作が行
われる(ステップ140)。
【0081】図4は、10万ドット/ノズル印字毎に上
記制御を行った場合の吐出ヒータのインク接触面の模写
図である。図において8cは吐出ヒータ、101は該ヒ
ータ上に堆積している酸化膜である。図4中Aは初期の
ヒータ状態であり、Bは上記駆動条件で10万パルス印
加時、C,D,E,Fは夫々50万パルス、100万パ
ルス、500万パルス、1000万パルス印加時の吐出
ヒータのインク接触面である。前記図2の酸化膜剥離制
御を行わなかった場合の模写図と比較して、若干の部分
的なムラは存在するものの、酸化膜の堆積層厚みは明ら
かに低減されていることが確認できた。
【0082】図5は酸化膜剥離制御の有り無しと吐出量
の変化幅の関係を記した図である。図から明らかなよう
に、初期の吐出量は酸化膜剥離制御が盛り込まれている
方も盛り込まれていない方も80ng/ドットであった
ものが、1000万ドット/ノズル耐久後は、酸化膜剥
離制御が盛り込まれていない方の吐出量が65ng/ノ
ズルに低下しているのに対し、酸化膜剥離制御が盛り込
まれている方の吐出量は78ng/ノズルとほとんど変
化がない結果が得られた。
【0083】尚、本実施例では酸化膜除去手段は記録ヘ
ッドに付加されているすべてのノズルの吐出ドット数で
判断しているが、ノズル単位で制御を行ってもよい。
【0084】また、該トータルドット数は前記DRAM
13に格納されているデータであり、メイン電源がオフ
されるとリセットされてしまうが、EEPROM等不揮
発性メモリーを使用して制御を行ってもよい。
【0085】本実施例においては酸化膜剥離パルスをダ
ブルパルスとしているが、プレパルスを複数回印加する
マルチパルスを設定する制御であってもよい。
【0086】また、駆動周波数、駆動発数は記録ヘッド
の特性によって最適値を選択でき、本実施例の条件に拘
束されるものではない。
【0087】更に、第1の実施例では印字ドット数で酸
化膜剥離制御が行われたが、必ずしもこの限りではな
く、例えばタイマー管理が可能な記録装置であるなら
ば、時間管理で制御を行う方式であってもよく、電源投
入時などある決められた動作後に必ず実行される制御で
あってもよい。
【0088】前記の如く、耐久が進むにつれて吐出ヒー
タ上に堆積していく酸化膜を除去する酸化膜剥離手段を
設けたことにより、酸化膜の無節操な増長を防止し、投
入エネルギーの経時的な変換効率の低下を防止し、蓄熱
を低減することで高速化を実現し、画像品位の劣化を防
ぎ、吐出ヒータの高寿命化を実現したインクジェット記
録装置を提供できる。
【0089】次に第1の実施例のPWM制御について説
明する。図16を用いて第1の実施例の吐出量制御方法
を詳細に説明する。図16は本発明の第1の実施例にか
かる分割パルスを説明する図である。図16において、
VOPは駆動電圧、P1は複数の分割されたヒートパル
スの最初のパルス(以下、プレヒートパルスという)の
パルス幅、P2はインターパルタイム、P3は2番目の
パルス(以下、メインヒートパルスという)のパルス幅
である。T1,T2,T3はP1,P2,P3を決める
ための時間を示している。駆動電圧VOPは、この電圧
を印加される電気熱変換体がヒータボードと天板とによ
って構成されるインク液路内のインクに熱エネルギーを
発生させるために必要な電気エネルギーを示すものの一
つである。
【0090】その値は電気熱変換体の面積,抵抗値,膜
構造や記録ヘッドの液路構造によって決まる。分割パル
ス幅変調駆動法は、P1,P2,P3の幅で順次パルス
を与えるものであり、プレヒートパルスは、主に液路内
のインク温度を制御するためのパルスであり、本発明の
吐出量制御の重要な役割を荷っている。このプレヒート
パルス幅はその印加によって電気熱変換体が発生する熱
エネルギーによってインク中に発泡現象が生じないよう
な値に設定される。
【0091】インターパルタイムは、プレヒートパルス
とメインヒートパルスが相互干渉しないように一定時間
の間隔を設けるため、およびインク液路内インクの温度
分布を均一化するために設けられる。メインヒートパル
スは液路内のインク中に発泡を生ぜしめ、吐出口よりイ
ンクを吐出させるためのものであり、その幅P3は電気
熱変換体の面積,抵抗値,膜構造や記録ヘッドのインク
液路の構造によって決まる。
【0092】例えば、図14(A)および(B)に示す
ような構造の記録ヘッドにおけるプレヒートパルスの作
用について説明する。同図(A)および(B)は、本発
明を適用可能な記録ヘッドの一構成例を示すそれぞれイ
ンク液路に沿った概略縦断面図および概略正面図であ
る。同図において、電気熱変換体(吐出ヒータ)は上記
分割パルスの印加によって熱を発生する。この電気熱変
換体はこれに分割パルスを印加するための電極配線等と
ともにヒータボード上に配設される。ヒータボードはシ
リコンにより形成され、記録ヘッドの基板をなすアルミ
板によって支持される。天板には、インク液路等を構成
するための溝が形成されており、天板とヒータボード
(アルミ板)とが接合することによりインク液路や、こ
れにインクを供給する共通液室が構成される。また、天
板には吐出口が形成され、それぞれの吐出口にはインク
液路が連通している。
【0093】図14に示される記録ヘッドにおいて、駆
動電圧VOP=18.0(V),メインヒートパルス幅
P3=4.114〔μsec〕とし、プレヒートパルス
幅P1を0ないし3.000〔μsec〕の範囲で変化
させた場合、図15に示すような吐出量Vd〔ng/d
ot〕とプレヒートパルス幅P1〔μsec〕との関係
が得られる。
【0094】図15は吐出量のプレヒートパルス依存性
を示す線図であり、図において、VOはP1=0〔μs
ec〕のときの吐出量を示し、この値は図14に示すヘ
ッド構造によって定まる。因に、本実施例でのVOは環
境温度TR=25℃の場合でVO=18.0〔ng/d
ot〕であった。図15の曲線aに示されるように、プ
レヒートパルスの幅P1の増加に応じて、吐出量Vdは
パルス幅P1が0からP1LMTまで線形性を有して増
加し、パルス幅P1がP1LMTより大きい範囲ではそ
の変化が線形性を失い、パルス幅P1MAXで飽和し最
大となる。
【0095】このように、パルス幅P1の変化に対する
吐出量Vdの変化が線形性を示すパルス幅P1LMTま
での範囲は、パルス幅P1を変化させることによる吐出
量の制御を容易に行える範囲として有効である。
【0096】因に、曲線aに示す本実施例ではP1LM
T=1.87(μs)であり、このときの吐出量はVL
MT=24.0〔ng/dot〕であった。また、吐出
量Vdが飽和状態となるときのパルス幅P1MAXは、
P1MAX=2.1〔μs〕であり、このときの吐出量
VMAX=25.5〔ng/dot〕であった。
【0097】パルス幅がP1MAXより大きい場合、吐
出量VdはVMAXより小さくなる。この現象は上記範
囲のパルス幅を有するプレヒートパルスが印加されると
電気熱変換体上に微小な発泡(膜沸騰の直前状態)を生
じ、この気泡が消泡する前に次のメインヒートパルスが
印加され、上記微小気泡がメインヒートパルスによる発
泡を乱すことによって吐出量が小さくなる。
【0098】この領域をプレ発泡領域と呼びこの領域で
はプレヒートパルスを媒介にした吐出量制御は困難なも
のとなる。
【0099】図15に示すP1=0〜P1LMT〔μ
s〕の範囲の吐出量とパルス幅との関係を示す直線の傾
きをプレヒートパルス依存係数と定義すると、プレヒー
トパルス依存係数:
【0100】
【数1】
【0101】となる。この係数KPは温度によらずヘッ
ド構造・駆動条件・インク物性等によって定まる。すな
わち、図15中曲線b,cはそれぞれ他の記録ヘッドの
場合を示しており、記録ヘッドが異なると、その吐出特
性が変化することがわかる。
【0102】このように、記録ヘッドが異なるとプレヒ
ートパルスP1の上限値P1LMTが異なるため、後述
するように記録ヘッド毎の上限値P1LMTを定めて吐
出量制御を行う。
【0103】因に本実施例の曲線aで示される記録ヘッ
ドおよびインクにおいては、KP=3.209〔ng/
μsec・dot〕であった。
【0104】すなわち、インクジェット記録ヘッドの吐
出量を決定する別の要因として、記録ヘッドの温度(イ
ンク温度)がある。
【0105】図17は吐出量の温度依存性を示す線図で
ある。同図の曲線aに示すように、記録ヘッドの環境温
度TR(=ヘッド温度TH)の増加に対して吐出量Vd
は直線的に増加する。この直線の傾きを温度依存係数と
定義すると、温度依存係数:
【0106】
【数2】
【0107】となる。この係数KTは駆動条件にはよら
ず、ヘッドの構造・インク物性等によって定まる。図1
7においても他の記録ヘッドの場合を曲線b,cに示
す。因に本実施例の記録ヘッドにおいてはKT=0.3
〔ng/℃・dot〕であった。
【0108】以上、図15および図17に示す関係を用
いることによって本発明にかかる吐出量制御を行うこと
ができる。
【0109】上記例ではダブルパルスでのPWM駆動制
御の説明であったが、トリプルパルス等マルチパルスで
あってもよく、また、シングルパルスでメインパルス幅
を変調するメインパルスPWM駆動方式であってもよ
い。
【0110】次にこの発明の第2の実施例について説明
する。第2の実施例は吐出ヒータ上に堆積する酸化膜等
の異物を、効果的に且つ安価に除去する手段である。前
記第1の実施例では、予め設定されている印字ドット数
を超過する毎に、効果的な酸化膜剥離のためにマルチパ
ルスを印加することで相転移分子数を増加させ、気泡消
泡時のキャビテーション効果を高める制御であったが、
以下に詳細する第2の実施例のように記録ヘッドへの印
加電圧を低下させることでマルチパルスの代用を図って
もよい。
【0111】マルチパルス駆動時のパルスのON/OF
F制御間隔は数μs単位であるので、通常はソフトウェ
アー的に制御することは困難であり、ハードロジック的
に処理が行われる。現状では、インクジェット記録装置
においては、全ての製品が該記録ヘッドの制御手段とし
てマルチパルス制御を行っている訳ではない。
【0112】よって、マルチパルス駆動手段が標準の印
字制御手段に用いられていない場合には、本発明の酸化
膜除去手段のために新たにロジックを追加しなければな
らない。前記のとおり、マルチパルス駆動制御手段はハ
ードロジック的に制御されるために、例えば前記のゲー
トアレイ14に追加するためには数線ゲートのロジック
の追加となりコスト的に大きな付加となってしまうこと
がある。
【0113】ところで、シングル方形波の印加パルスに
対する発泡長は、印加電圧が低いほど大きな発泡長とな
ることが知られている。すなわち低電圧駆動である程相
転移分子数が多いことを意味する。これは、低電圧であ
るほど吐出ヒータの表面温度が低いのでインク分子が相
転移を始めるまでの時間が長くかかり、結果、広くイン
ク層に投入エネルギーが伝達され相転移分子数が多くな
るものと考えられる。
【0114】一方、印字を行うために投入できるエネル
ギー束は、高品位の画像を保証するためにある程度大き
な運動エネルギーをもってドットを吐出させられるエネ
ルギー束が必要であり、相転移分子数のみに着目して印
加電圧を大きく下げることはできない。
【0115】しかし、第2の実施例では画像を記録する
ためのエネルギー投入ではなく、キャビテーションを引
き起こすための発泡消泡制御であるので、吐出ドットの
運動エネルギーの大小に束縛されることなく、所望のキ
ャビテーション力を得ることのみに着目した駆動制御が
可能である。
【0116】よって、第2の実施例では、通常印加が行
われる駆動電圧の1/2の駆動電圧でシングル方形波を
印加することにより、相転移分子数を増やし、消泡時の
キャビテーション効果を高め、吐出ヒータ上に堆積した
酸化膜を効果的に除去する。印字に最適な印加電圧の1
/2の印加電圧では、パルス幅を制御しても通常吐出を
安定させることは困難であり、印字や予備吐出には妥当
な設定とは言い難いが、酸化膜除去手段としては十分な
効果が得られる。
【0117】以上のように制御を行うことにより、ハー
ドロジック的な負荷を低減し、安価で且つ確実に酸化膜
除去手段を提供できる。
【0118】吐出ヒータ面上で発泡を起こさせる発泡制
御手段以外の構成および作用は、前記実施例と同様であ
るので説明は省略する。
【0119】次にこの発明の第3の実施例について説明
する。第3の実施例は吐出ヒータ上に堆積する酸化膜等
の異物を効果的に除去する実施例である。前記各実施例
では、酸化膜除去効果を最大限に引き出すためには相転
移する分子の量を制御する手段であったが、第3の実施
例はインク粘度を低下させインクの慣性力を増大させる
ことで酸化膜除去効果を引き出す制御である。
【0120】前記の通り、酸化膜は酸化膜除去手段によ
る気泡消泡時の衝撃力によって剥離、除去されるが、該
衝撃力は前記の相転移に伴う急激な圧力変化のほかに、
リフィール時のインクの慣性力が消泡点に集中すること
による衝撃力も存在する。該衝撃力はインク粘度が低く
リフィールスピードが速いほど大きな慣性力を持ってお
り、衝撃力も大きい。
【0121】よって、前記実施例の相転移圧力変化に伴
う衝撃力に加え、上記インクの慣性力に伴う衝撃力を効
果的に向上させることで、更なる酸化膜除去効果の向上
が望める。
【0122】第3の実施例では図11に示したサブヒー
タ8dをインク粘度低減手段に用いる。即ち、酸化膜除
去制御手段において、吐出ヒータ上で発泡を生起する吐
出ヒータの駆動を実行するのに先だって、まずサブヒー
タ8dを駆動する。第3の実施例における該サブヒータ
8dの駆動電圧は吐出ヒータ駆動電圧同等である。駆動
時間(通電時間)は5秒とする。5秒間サブヒータで暖
められることにより、ヒータボード上のインクは十分に
暖められ粘度も低下する。この状態で酸化膜除去手段が
実行され、気泡消泡時の相転移圧力変化に伴う衝撃力に
加え、粘度低下に伴った十分に高速なインクのリフィー
ルにより、大きな慣性力を持って消泡点にインクが集中
し、大きな衝撃力が発生する。
【0123】以上のごとく制御を行うことにより、前記
第1,第2それぞれの実施例と比べ、更なる酸化膜除去
効果の向上が図れ、酸化膜の無節操な増長を効果的に防
止でき、投入エネルギーの経時的な変換効率の低下を防
止し、蓄熱を低減することが高速化を実現し、画像品位
の劣化を防ぎ、吐出ヒータの高寿命化を実現したインク
ジェット記録装置を提供できる。
【0124】尚、第3の実施例では消泡時のインクの慣
性力を増加させる手段として、サブヒータによる外部加
熱を行ったが、インクの温度を弊害なく上昇できる手段
であればサブヒータに限定されるものではない。一例を
あげれば、吐出ヒータに発泡しない程度の短パルスを
(本実施例でいえば1から2μs程度のパルスを)酸化
膜除去手段実施直線に印加し、インクを昇温させ気泡消
泡時の慣性力を増加させる手段であっても良い。
【0125】また、インクの温度を上昇させる上昇幅
は、環境温度等の外部環境に応じて最適値に制御する手
段であってもよい。
【0126】気泡消泡時の慣性力を制御する慣性力制御
手段以外の構成および作用は前記各実施例と同様である
ので説明は省略する。
【0127】本発明は、特にインクジェット記録装置の
中でも、インクの吐出を行わせるために利用されるエネ
ルギーとして熱エネルギーを発生する手段を備え、前記
熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式
の記録ヘッド、記録装置において、優れた効果をもたら
すものである。かかる方式によれば記録の高密度化、高
精細化が達成できるからである。
【0128】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書、同第4740
796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて
行なうものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド
型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である
が、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)
が保持されているシートや流路に対応して配置されてい
る電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越
える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号
を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギー
を発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させて、
結果的にこの駆動信号に一対一対応し液体(インク)内
の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、
収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出さ
せて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号を
パルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行な
われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出
が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号
としては、米国特許第4463359号明細書、同第4
345262号明細書に記載されているようなものが適
している。なお、前述熱作用面の温度上昇率に関する発
明の米国特許第4313244号明細書に記載されてい
る条件を採用すると、更に優れた記録を行なうことがで
きる。
【0129】記録ヘッドの構成としては、前述の各明細
書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体
の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の
ほかに熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を
開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許
第4459600号明細書を用いた構成も本発明に有効
である。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通す
るスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示す
る特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧
力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示す
る特開昭59−138461号公報に基づいた構成とし
ても本発明は有効である。
【0130】更に、実施例ではシリアルタイプのインク
ジェット記録装置を示したが、記録可能な最大幅に対応
した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドに対し
ても本発明は有効に適用できる。フルラインタイプの記
録ヘッドとしては、前述した明細書に開示されているよ
うな複数記録ヘッドの組み合わせによって、その長さを
満たす構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとし
ての構成のいずれでもよいが、本発明は、前述した効果
を一層有効に発揮することができる。
【0131】また、本発明のインクジェット記録装置の
構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手
段、予備的な補助手段を付加することは本発明の効果を
一層安定できるので好ましいものである。これらを具体
的に挙げれば、記録ヘッドに対しての、キャッピング手
段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱
変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの
組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行
なう予備吐出モードを行なうことも安定した記録を行な
うために有効である。
【0132】また、搭載される記録ヘッド、インクの種
類ないし個数についても、例えば単色のインクおよび1
個の記録ヘッドが設けられたもののほか、記録色や濃度
を異にする複数のインクに対応して複数のヘッドが設け
られるものであってもよく、任意の組み合わせにおいて
も有効である。記録装置の記録モードとしては黒色等の
記録モードだけでなく、異なる色の複色カラー、または
混色によるフルカラーの各記録モードにおいても本発明
は有効である。
【0133】以上、説明した本発明の実施例において
は、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以
下で凝固するインクであって、室温で軟化もしくは融解
するものや、あるいは、前述のインクジェットではイン
ク自体を30℃以上70℃以下の範囲で温度調整を行っ
てインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御す
るものが一般的であるから、使用記録信号付与時にイン
クが液状をなすものであればよい。加えて、熱エネルギ
ーによる昇温を防止するため、積極的にインクの固体状
態から液体状態への相変化のエネルギーとして使用せし
めるか、または、インクの蒸発防止を目的として放置状
態で固化するインクを用いるかして、いずれにしても熱
エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液
化してインク液状として吐出するものや記録媒体に到達
する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エ
ネルギーによって初めて液化する性質のインク使用も本
発明には適用可能である。本発明においては、前述した
各インクに対して最も有効なものは、前述した膜沸騰方
式を実行するものである。
【0134】また、本発明は電気を力に変換させてイン
クを吐出させるピエゾジェット方式等、記録媒体と非接
触に記録ヘッドを配設させ、インクを噴射させて記録す
る記録方式等のインクジェット方式において有効であ
る。
【0135】更に加えて、本発明の記録装置の形態とし
ては、前述のようなワードプロセットやコンピュータ等
の情報処理機器の出力端末として一体あるいは別体に設
けられるもののほかスキャナー等と組み合わせた複写装
置、さらには送信受信機能を有するファクシミリ装置の
形態をとるものであってもよい。
【0136】
【発明の効果】この発明は前記のように、ヒータ上に堆
積した酸化膜を除去する酸化膜除去手段を設けたことに
より、吐出ヒータ上に経時的に酸化膜が堆積していくこ
とがなくなり、必要最小限の投入エネルギーで記録ヘッ
ドの駆動が行なえるようになる。その結果、記録ヘッド
の蓄熱が低減されることによる高速化、エネルギー変換
効率の変動が低減することによる高画質の維持、さらに
は耐久劣化の促進を低減することによるランニングコス
トの低下等を可能としたインクジェット記録装置を提供
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の実施例であるインクジェッ
ト記録装置の斜視図
【図2】 この実施例における吐出ヒータのインク接触
面の模写図
【図3】 この実施例の印字命令が入力されたときのサ
ブルーチンを示すフローチャート
【図4】 この実施例の10万ドット/ノズル毎の吐出
ヒータのインク接触面を示す図
【図5】 酸化膜剥離制御の有無と吐出量の変化幅の関
係を示す図
【図6】 この実施例のキャビテーションのメカニズム
を示す図
【図7】 インクジェットカートリッジを分解した状態
を示す分解斜視図
【図8】 図7のインクジェットカートリッジ(IJ
C)の斜視図
【図9】 図7のインクタンクの取付面の構成を示す斜
視図
【図10】 図7のキャリッジに対しインクジェットカ
ートリッジの取付の状態を示す側断面図
【図11】 第1実施例のヘッドのヒータボードを示す
【図12】 本装置各部の記録制御をする制御構成図
【図13】 図12の各部の詳細を示す回路図
【図14】 この実施例を適用可能な記録ヘッドの一構
成を示すインク液路にそった断面図
【図15】 この実施例の吐出量のプレヒートパルス依
存性を示す線図
【図16】 第1の実施例における分解パルスを説明す
る図
【図17】 この実施例の記録ヘッドの吐出量の温度依
存性を示す線図
【符号の説明】
100 ヒータボード 200 配線基板 300 支持体 400 オリフィスプレート 600 インク供給部材 900 吸収体 1000 カートリッジ本体 5000 プラテンローラ IJU インクジェットユニット IJH インクジェットヘッド IT インクタンク IJC インクジェットカートリッジ IJRA インクジェット記録装置本体 HC キャリッジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 喜一郎 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 岩崎 督 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 錦織 均 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを収容するインクタンクと、前記
    インクタンクより供給されたインクを吐出させるインク
    ジェット記録ヘッドと、を備えインク液滴を前記記録ヘ
    ッドから記録シートへ吐出させて記録を行うインクジェ
    ット記録装置において、吐出用ヒータ上に堆積する酸化
    膜等の異物を除去する酸化膜除去手段を具備してなるこ
    とを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 【請求項2】 酸化膜除去手段は、吐出ヒータ上でイン
    クが液相から気相に相転移する相転移分子数を制御する
    転移分子数制御手段であることを特徴とする請求項1に
    記載のインクジェット記録装置。
  3. 【請求項3】 酸化膜除去手段は、記録インクの粘度を
    制御する粘度制御手段を有することを特徴とする請求項
    1,2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  4. 【請求項4】 転移分子数制御手段は、吐出ヒータをマ
    ルチパルスで駆動するマルチパルス制御手段と、吐出ヒ
    ータを駆動する電圧を印字時の記録ヘッド駆動電圧以下
    で駆動する駆動電圧制御手段のうち、少なくとも一方の
    手段を有することを特徴とする請求項2に記載のインク
    ジェット記録装置。
  5. 【請求項5】 前記記録ヘッドは、インクを吐出する複
    数の吐出部と、対応する吐出部毎に設けられ、インクに
    熱による状態変化を生起させ該状態変化に基づいてイン
    クを前記吐出部から吐出させて飛翔的液滴を形成する熱
    エネルギー発生手段とを有することを特徴とする請求項
    1ないし4のいずれかに記載のインクジェット記録装
    置。
JP27297792A 1992-10-12 1992-10-12 インクジェット記録装置 Pending JPH06122198A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6019456A (en) * 1996-10-01 2000-02-01 Fuji Xerox Co., Ltd. Liquid jet recorder
JP2003072077A (ja) * 2001-09-05 2003-03-12 Canon Inc インクジェット記録ヘッドの駆動方法
JP2007276460A (ja) * 2006-03-17 2007-10-25 Canon Inc 液体吐出装置および液体吐出ヘッドの駆動方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003072077A (ja) * 2001-09-05 2003-03-12 Canon Inc インクジェット記録ヘッドの駆動方法
JP2007276460A (ja) * 2006-03-17 2007-10-25 Canon Inc 液体吐出装置および液体吐出ヘッドの駆動方法

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Effective date: 20020709