JPH0611652B2 - コバルト含有強磁性酸化鉄の製造方法 - Google Patents

コバルト含有強磁性酸化鉄の製造方法

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JPH0611652B2
JPH0611652B2 JP62333625A JP33362587A JPH0611652B2 JP H0611652 B2 JPH0611652 B2 JP H0611652B2 JP 62333625 A JP62333625 A JP 62333625A JP 33362587 A JP33362587 A JP 33362587A JP H0611652 B2 JPH0611652 B2 JP H0611652B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、磁気記録媒体用材料として有用な特に飽和磁
化量σs(emu/g)、保磁力分布、熱特性、経時安定性
等に優れたコバルト含有強磁性酸化鉄の製造方法に関す
る。
〔従来の技術〕
コバルト含有強磁性酸化鉄は高保持力を有し、これを用
いて製作した磁気テープは高密度記録ができ、高周波領
域での感度にすぐれていて、近年オーディオ、ビデオな
どの分野でさかんに利用されている。高保磁力のコバル
ト含有磁性酸化鉄を得るために、多くの方法が提案され
ており、例えば、(1)γ-Fe2O3を粉末コバルト塩を含む
液中で、特定のOH基濃度、高温、非酸化性雰囲気中で処
理する方法(特公昭52-24238)(2)コバルト化合物によ
って磁性酸化鉄を被覆した後、400℃程度の温度で熱
処理をおこなう方法(特公昭48-10994)、(3)磁性酸化
鉄粉末をコバルト塩の存在するアルカリ溶液中で120
〜200℃の温度で水熱反応処理する方法(特公昭48-4
4040)、(4)磁性酸化鉄粉末をコバルト塩の存在するア
ルカリ溶液中で沸点以下のできるだけ高い温度で処理し
た後、水洗、濾別し、次いで乾燥することなく水中に分
散させて加熱する方法(特開昭55-56016)などがある。
〔発明が解決しようとする問題点〕
ところが、前期(1)の方法では、エピタキシャルは反応
が急速に進み、保磁力分布が広くなり、前記(2)の方法
ではコバルトイオンが磁性酸化鉄の内部に拡散するた
め、熱特性、経時安定性などの点において満足できるも
のが得られず、また前記(3)、(4)の方法では磁性酸化鉄
の表面がアルカリによって一部溶解し、その表面が荒
れ、さらにエピタキシャル反応が急速に進み、保持力分
布が広くなる等の欠点がある。
このように、従来技術においては、高保持力のものが得
られてもその他の磁気特性が満足できないという問題が
あった。近年、オーディオ、ビデオテープの高級化が進
んできた中では、高保持力を有すると共に、他の磁気特
性においても優れていることが求められており、この両
方をバランスさせ、同時に満足させるようなコバルト含
有強磁性酸化鉄が強く望まれていた。
本発明者らは、かかる従来技術の問題点を解消する方法
として、特願昭61−112271号及び特願昭62−118686号を
もって、磁性酸化鉄粉末の表面にコバルトおよび第1鉄
を含む金属化合物を被着し、次いでこの粉末を濾別、水
洗後、酸性物質を添加してpH6.5〜9.5の分散スラ
リーとして加熱処理する方法を提案した。この方法によ
れば、高保持力を有すると共に飽和磁化量、保磁力分
布、熱特性、経時安定性及びその他の磁気特性にも優れ
る有用なコバルト含有強磁性酸化鉄が得られる。
本発明は、上記の濾別、水洗工程を省略することによ
り、前記特許出願の明細書に記載された上述の所望の効
果を挙げ得ると共に、より品質が安定し、製造ロット間
の磁気特性のバラツキが少なく一層飽和磁化量σsに優
れたコバルト含有磁性酸化鉄を工業的有利に製造する方
法を提供しようとするものである。
〔問題点を解決するための手段〕 本発明者らは、磁性酸化鉄表面に被着させたコバルト化
合物や第1鉄化合物の金属原子を、被着後の熱処理によ
っても磁性酸化鉄粒子内部に拡散しないように披着表面
に安定な結晶形で固定化することができれば、高保持力
を有すると共に、優れた諸特性をも有した被着型コバル
ト含有強磁性酸化鉄が得られるのではないかと考え、コ
バルト化合物や第1鉄化合物の金属原子を粒子の表面部
に固定するための製造方法について種々検討した。
即ち、従来技術によれば、コバルト化合物や第1鉄化合
物を被着した磁性粉末を、アルカリ性水溶液中や水中で
加熱するか、又は乾燥後乾式熱処理する方法等が用いら
れてきたが、これらの方法では、熱処理によって第1鉄
原子が磁性酸化鉄粒子内部へ拡散し、コバルト原子もそ
の影響を受けて若干内部へ拡散するため、保持力分布が
広くなったり、熱特性、経時安定性が低下したりするな
どの問題を招いているのではないかと推察し、コバルト
や第1鉄を含む金属化合物を被着処理し、次いでこの粉
末を濾別、水洗し、得られた湿ケーキに酸性物質を添加
し分散スラリーとして、このもののpHを中性付近の特定
の値にし、このスラリーを加熱処理することにより、コ
バルトや第1鉄などの金属原子を磁性酸化鉄粒子内部へ
拡散させることなくその表面部に固定化でき、優れた磁
気特性が有するコバルト含有強磁性酸化鉄を得ることが
できることを見出して、前記特許出願の製造方法を提案
した。
そして更に研究の結果、上述の濾別、水洗工程を省略し
て、イ前記の被着処理後スラリーロ該披着処理後スラリ
ーから沈降法により母液を除去した濃厚スラリーのハ該
濃厚スラリーを水系媒液により傾瀉洗浄法で一層母液を
除去した洗浄スラリーなどに対し、酸性物質を添加して
pHを一定値に調整し、このものについて前記特許出願の
明細書に記載された方法で同様に処理することにより、
被着物、特に第1鉄の酸化、被着表面の荒れ、変質など
を抑制し、且つ前記特出願の明細書に記載の効果をもた
らし得ることを究明した。
即ち、本発明は、磁性酸化鉄粉末を水系媒液中でコバル
ト塩および第1鉄塩含む金属塩並びにアルカリで処理し
て該粉末粒子の表面にコバルト及び第1鉄を含む金属化
合物を披着し、この粉末を濾別、水洗することなくして
得られた被着スラリーに酸性物質を添加しpHを6.5〜
11.5に調整して加熱処理することを特徴とするコバ
ルト含有強磁性酸化鉄の製造方法である。
この発明の一連の処理には、従来からの処理が部分的に
含まれてはいるが、磁性酸化鉄粉末にコバルトと第1鉄
化合物を被着させ、続いて酸性物質を添加してpHを調整
したうえ加熱処理するという点で全体的にみて独特の処
理なのである。
本発明方法においては、コバルト塩と共に第1鉄塩を用
いることが肝要であり、本発明目的の1つである飽和磁
化量の向上は、コバルト塩のみでは達成できず、第1鉄
塩との併用によってもたらされる。しかし、単に第1鉄
塩を併用しただけでは、飽和磁化量は向上しても、経時
安定性を悪化させることになり、従来技術においてこの
両者を同時に満足させることは困難であったが、本発明
方法によれば、第1鉄が粒子の表面部に偏在するため、
飽和磁化量は更に一段と向上すると同時に経時安定性を
も満足させることが可能となる。
本発明方法において、使用する磁性酸化鉄としては、γ
-Fe2O3、Fe3O4、γ-Fe2O3を部分還元して得られるベル
トライド化合物などの針状磁性酸化鉄粉末がある。コバ
ルト塩としては、例えば塩化コバルト、硫酸コバルト、
硝酸コバルトなどが挙げられ、第1鉄塩としては、例え
ば硫酸第1鉄、塩化第1鉄、硝酸第1鉄、炭酸第1鉄な
どが挙げられる。また、必要に応じ用いられる他の金属
塩としては、マンガン塩、亜鉛塩、クロム塩、ニッケル
塩などが適宜選ばれる。アルカリとしては、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア
などが適宜選ばれる。
そして、上記コバルト塩及び第1鉄塩の披着方法として
は、種々の方法を用いることができる。例えば、磁性酸
化鉄粉末を分散させたスラリーに、コバルト塩と第1鉄
塩並びにアルカリを添加する順序によっても、次のよう
な各種の方法がある。
(1) コバルト塩と第1鉄塩を含んだ水溶液を添加した
後、アルカリ水溶液を添加する方法。
(2) アルカリ水溶液を添加した後、コバルト塩と第1
鉄塩化を含んだ水溶液を添加する方法。
(3) コバルト塩水溶液を添加してアルカリで水酸化コ
バルトを沈澱させた後、第1鉄塩水溶液を添加する方
法。
(4) アルカリ水溶液を添加した後、コバルト塩水溶液
を添加し、さらに第1鉄塩水溶液を添加する方法。
(5) 第1鉄塩水溶液を添加して、アルカリで水酸化第
1鉄を沈澱させた後、コバルト塩水溶液を添加する方
法。
(6) アルカリ水溶液を添加した後、第1鉄塩水溶液を
添加し、さらにコバルト塩水溶液を添加する方法。
また、コバルト塩と第1鉄塩と共に、その他の金属塩の
一部又は全部を同時に処理したり、順次処理したりする
等適宜の方法を採用することができる。
この被着処理は、非酸化性雰囲気中、すなわちコバル
ト、第1鉄、その他の金属原子が実質的に酸化されない
雰囲気中でおこなうのが望ましく、例えば反応液中に不
活性ガスをバブリングさせたり、反応容器内の空気が不
活性ガスで置換したりして反応させるのがよい。この処
理は、通常室温〜100℃、望ましくは室温〜50℃で
おこなわれ、この温度が低すぎると諸理時間が長くな
り、一方高すぎると第1鉄が磁性粉内部に拡散したり、
保磁力分布などが広くなったりして望ましくなく、系内
のOH基濃度は通常0.01〜3モル/であり、この濃
度が低すぎると所望の保磁力が得られず、一方高すぎる
と一旦被着したコバルト化合物が一部溶解して望ましく
ない。又、この被着処理時間は通常0.1〜10時間で
ある。コバルトの被着量は、磁性酸化鉄に対する重量基
準で0.5〜30%、好ましくは1〜10%であり、第
1鉄の場合は1〜30%、望ましくは2〜20%、その
他の場合は0〜10%程度である。
次いで、前述のコバルト及び第1鉄を含む金属化合物で
披着された磁性酸化鉄を含有する被着処理後スラリーに
対し、酸性物質を添加してpHを一定値に調整する。、こ
の披着処理後スラリーの遊離アルカリ濃度が例えば1〜
3モル/と高いとき、固形分含有量が例えば100g
/以下と低いときなどの場合は、pH調整に必要な酸性
物質の量が過度ち多くなったり、酸性物質液量が多くな
りすぎたりして好ましくないので沈降法により母液を分
離してからpH調整するのが奨められる。又、この母液分
離後のスラリーを水系媒液により傾瀉法で洗浄して一層
母液を除去してからpH調整するのもよい。水系媒液とし
ては、通常、工業用水、純水(イオン交換樹脂処理)、
これらに硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニ
ウム、塩化アンモニウム等の緩衝塩類を溶解したものな
どが用いられる。尚、工業用水、純水等は、予め例えば
不活性ガスでバブリングしてその酸化作用を抑制したも
のを使用するのが望ましい。
これらの操作のうち望ましいのは、適度の遊離アルカリ
濃度、固形分含有量のもとに被着処理がおこなわれ、こ
の被着処理後スラリーに対し酸性物質を添加してpH調整
したとき、或いは被着処理後スラリーから沈降法により
母液を分離したスラリー若しくはこのスラリーを水系媒
液により傾瀉法で洗浄したものに対し同様にしてpHを調
整したときである。これらの場合、被着処理された磁性
酸化鉄が大気に触れないので被着物、特に第1鉄の酸化
が抑制され、又、通常の濾過機での水洗のときにみられ
る洗浄ムラが回避でき、且つ過度の水洗による被着表面
の荒れ、変質が発生しない。従って本発明方法によれ
ば、得られた製品は、その品質が安定し、製造ロット間
における磁気特性のバラッキが少なく、より飽和磁化量
に優れたコバルト含有強磁性酸化鉄を製造することがで
きる。又、本発明方法によれば、製造工程が簡略化さ
れ、設備能力が向上するなど、工業的に有利な操業をす
ることができる。
尚、上述のpH調整は、その値が、通常6.5〜11.
5、望ましくは6.5〜10.0、より望ましくは7.
0〜9.5、最も望ましくは7.0〜8.5になるよう
におこなう。pH6.5未満では被着したコバルト化合物
が溶出してくるため好ましくなく、又、pHが11.5を
越えると所望の効果が得られない。pH調整に用いる酸性
物質は、特に限定されるものではないが、例えば硫酸、
塩酸、硝酸、リン酸、弗酸、ホウ酸等の無機酸、蟻酸、
酢酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸等のカルボン酸、メ
タンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸、
スルフィン酸、各種酸性塩が挙げられる。又、その他の
一般に用いられる中和剤を用いてもよい。
本発明方法におけるpH調整をおこなうだけでも製品の飽
和磁化量や経時安定性は、pH調整をおこなわない場合に
比較して改良されたものとなるが、特に保持力の経時変
化を充分に改良するためには、引続きおこなう加熱処理
が必要となる。即ち、加熱処理を施すことにより、飽和
磁化量は加熱処理温度が高くなるにしたがってpH調整に
よる改良効果の程度がスライドしてより高くなる。又、
同様に保持力の経時変化は、加熱処理温度80℃以上で
pH調整による改良効果がより増幅されて顕著となる。し
かし、処理温度が160℃を超えると飽和磁化量や保持
力の経時変化はむしろ悪化を辿る傾向になり、pH調整に
よる効果が減少してゆく。このように処理温度80℃〜
160℃の範囲で特に保持力の経時変化の向上が顕著と
なり、しかも保持力分布が改善されるのは、コバルトの
存在をより表面層に維持し、且つこの表面付近の第1鉄
を磁性粉末内部に拡散させずに表面付近で固定化するた
めと推察される。これまでの技術が加熱処理により保持
力を向上させることのみに着目していたものであるのに
対し本発明は保持力を必要以上に向上させることが目的
ではなく、前記pH調整−加熱処理を施すことにより、そ
の保持力は比較すべきものに対し、むしろ低目傾向とな
る。このことは後記第1及び第2表に各実施例と対応す
る比較例とを対比してみれば理解できる。このように保
持力を必要以上に高くしないことが、飽和磁化量の向上
や保持力の経時変化の良化、保持力分布の改善等の諸特
性を引出すことになったと考えられ、前記推察を勘案し
て、本発明のpH調整−加熱処理が独特の処理であること
が判る。
加熱処理温度は、前記のように、通常160℃以下、望
ましくは80℃〜160℃、より望ましくは100℃〜
155℃、更に望ましくは沸点以上〜150℃、最も望
ましくは110℃〜145℃であり、処理時間は通常1
〜10時間である。尚、沸点以上では加圧系となり、通
常1.1〜10気圧程度となるので、密閉容器、例えば
オートクレーブ中で加熱処理する必要がある。又、この
加熱処理は、非酸化性雰囲気下でおこなうことが望まし
い。
前述の加熱処理をした磁性酸化鉄は、通常の濾過・水洗
・乾燥後、所望の特性を有するコバルト含有磁性酸化鉄
になるが、更に不活性雰囲気中、100℃〜200℃で
乾式加熱処理をすることにより、保持力やその他磁気特
性において改善された磁性粉末が得られる場合がある。
〔作用〕
本発明の作用機構は明らかではないが、それを推測する
ために、本発明方法で得られた磁性粉末とpH調整をしな
いこと以外は本発明方法と同様にして得られた磁性粉末
とを1Nの硫酸水溶液中でそれぞれ表面を少しづづ溶解
させ、溶出したコバルトイオン(Co2+)と第1鉄イオン
と定量分析して後記第1および第2表に示した。第1表
の実施例−1〜3と比較例1〜3および第2表中の実施
例−5と比較例−5とを対比しても明らかなように、同
一溶出コバルトイオン量に対する第1鉄イオン量の割合
が表面部において前者の方がきわめて大きく、後者は、
内部にまで均一に第1鉄原子が分布していることが判っ
た。
このことから、本発明によれば、表面部に第1鉄原子を
固定化させる作用が何らかの形で働いているものと思わ
れる。このような作用として、例えば、第1鉄原子をマ
グネタイト(FeO・Fe2O3)の結晶として、表面部に固定
される、ということも考えられる。
このように本発明で得られた被着型コバルト含有磁性酸
化鉄は、コバルト原子が表面に偏在し、しかも結晶とし
て安定化していることにより熱特性や経時安定性が優れ
たものとなり、又、表面部分の第1鉄(マグネタイト成
分)の量が多いため、飽和磁化量σs(emu/g)が高い
値になっているものと思われる。
又、pHを調整することの副次的な効果として、粉末粒子
表面に付着して粉末粒子同士を互いに凝集させていたア
ルカリ成分が取り除かれることにより、磁性粉末粒子同
士が互いに解離することや、通常の洗浄では除去できな
い微量の可溶性塩も減少して塗料化時やテープ化時に色
々な好結果をもたらすことなどが挙げられる。
〔実施例〕
次に、具体的な実施例により、本発明を説明する。
実施例−1 γ-Fe2O3(保持力:400Oe、平均長軸粒子径:0.4
μ、軸比:約8)100gを水に分散させたスラリー8
33ml中に、室温でN2ガスを吹き込みながら、0.85
モル/の硫酸コバルト水溶液70mlと0.90モル/
の硫酸第1鉄水溶液140mlとを加え、更に10モル
/の水酸化ナトリウム水溶液67mlを加えて室温で5
時間攪拌した。このように被着処理して得られたスラリ
ーのpHは13.4であった。
次いで、このスラリーに0.4N−硫酸水溶液を添加
し、pH=8.5に調整し、オートクレーブに入れて、N2
ガスで置換した後密閉し、130℃で6時間加熱処理し
た。処理後、濾過・水洗して湿ケーキとし、N2ガス中1
20℃で乾燥し、目的のコバルト含有強磁性酸化鉄粉末
(A)を得た。
実施例−2 0.4N−硫酸水溶液によるpH調整をpH=7.5とする
ことの外は実施例−1の場合と同様にしてコバルト含有
強磁性酸化鉄粉末(B)を得た。
実施例−3 pH調整は0.2N−塩酸水溶液を用いてpH=9.5とす
ることの外は実施例−1の場合と同様にしてコバルト含
有強磁性酸化粉末(C)を得た。
比較例−1 0.4N−硫酸水溶液によるpH調整におこなわないこと
の外は実施例−1の場合と同様にコバルト含有強磁性酸
化鉄粉末(D)を得た。
比較例−2 実施例−1と同様に被着処理したスラリーについて、
0.4N−硫酸水溶液によるpH調整及び加熱処理をおこ
なわないことの外は実施例−1の場合と同様にしてコバ
ルト含有強磁性酸化鉄粉末(E)を得た。
比較例−3 実施例−1と同様に披着処理したスラリーについて、
0.4N−硫酸水溶液でのpH調整に変えて、このものを
濾過し十分に水洗して得られた湿ケーキを水中に分散さ
せることによりpH=10.1のスラリーとした外は実施
例−1の場合と同様にしてコバルト含有強磁性酸化鉄粉
末(F)を得た。
上記サンプル(A)〜(F)について、通常の方法によ
り保持力及び飽和磁化量を測定し、又、下記計算式によ
り保持力の経時変化(ΔHc)を求め、これらの結果を第
1表に示す。
保持力の経時変化(ΔHc)=〔60℃の温度、80%の
湿度で14日間放置しした後と保持力(Hc)〕−当初の
保持力(Hc)〕 更に、下記の方法で熱特性を測定した結果を第1表に示
す。
熱特性:保持力の温度依存性に関するものであり、下記
式によって計算される。
又、磁性塗料作製時に用いられる脂肪酸と磁性粉末との
反応性を調べるため、下記方法で脂肪酸(ミリスチン
酸:C14)吸着量:脂肪酸吸着特性を測定し、その結果
を第1表に示す。
磁性粉末10gと溶剤(MEK:トルエン=1:1)3
0ml及びミリスチン酸4%(磁性粉末重量基準)とを混
合し、レッドデビル分散機(Red Devil shaker)で15
分間振とうした後、遠心分離により上澄液を分取し、定
量分析した。加えたミリスチン酸量と定量分析量とから
次式によりC14吸着量が計算される。
更にそれぞれのサンプルについて、下記の配合割合にし
たがって配合物を調製し、ボールミルで分散して磁性塗
料を製造した。
(1) コバルト含有強磁性酸化鉄 100.0重量部 (2) 界面活性剤 3.8 〃 (3) 塩ビー酢ビ共重合体樹脂 8.0 〃 (4) ポリウレタン樹脂 35.5 〃 (5) メチルエチルケトン 108.1 〃 (6) トルエン 108.1 〃 (7) シクロヘキサノン 36.0 〃 次いで、各々の磁性塗料をポリエステルフィルムに通常
の方法により塗布、配向した後乾燥して約9μ厚の磁性
塗膜を有する磁気テープを作成した。それぞれのテープ
について通常の方法により保持力(Hc)、角形比(Br/
Bm)、配向性(OR)、反転磁界分布(SFD)を測定し
た。その結果を第1表に示す。
実施例−4 実施例−1で用いたものと同一のγ-Fe2O3粉末100g
を水に分散させたスラリー1.5中に室温でN2ガスを
吹き込みながら、0.85モル/の硫酸コバルト水溶
液70mlと0.90モル/と硫酸第1鉄水溶液140
mlとを加え、更に10モル/の水酸化ナトリウム水溶
液231mlを加えて室温で5時間攪拌した。このように
して得られたスラリーのpHは13.8であった。
次いで、このスラリーを静置し、上澄液を除去(全スラ
リー容量の半量)した後、0.4N−硫酸水溶液を添加
し、pH=8.0に調整し、オートクレーブ入れて、N2
スで置換した後密閉し、125℃で3時間加熱処理し
た。処理後、濾過・水洗して湿ケーキとし、N2ガス中1
00℃で乾燥し、目的のコバルト含有強磁性酸化鉄粉末
(G)を得た。
実施例−5 通常の開放容器を用いて加熱処理温度を90℃とするこ
との外は実施例−4の場合と同様にしてコバルト含有強
磁性酸化鉄粉末(H)を得た。
実施例−6 0.4N−硫酸水溶液によるpHをpH=9.5とし加熱処
理温度を145℃とすることの外は実施例−4の場合と
同様にしてコバルト含有強磁性酸化鉄粉末(I)を得
た。
比較例−4 0.4N−硫酸水溶液によるpH調整をおこなわないこと
の外は実施例−4の場合と同様にしてコバルト含有強磁
性酸化鉄粉末(J)を得た。
比較例−5 実施例−4と同様に被着処理したスラリーについて、
0.4N−硫酸水溶液によるpH調整及び加熱処理をおこ
なわないことの外は実施例−4の場合と同様にしてコバ
ルト含有強磁性酸化鉄粉末(K)を得た。
実施例−7 γ-Fe2O3粉末(保持力:410Oe、平均長軸粒子径:
0.35μ、軸比:約12)100gを水に分散させた
スラリー1中に、室温でN2ガスを吹き込みながら、1
0モル/の水酸化ナトリウム水溶液177mlを加え、
次いで0.90モル/の硫酸第1鉄水溶液147ml及
び0.85モル/の硫酸コバルト水溶液67mlを加え
た後、40℃に昇温し5時間攪拌した。このようにして
得られたスラリーのpHは14.0であった。
次いで、このスラリーを静置し、上澄液を除去した後、
N2ガスを吹込んで溶存酸素を脱気した処理水を加えて約
5倍に希釈した。この操作を更に2回繰り返して、pHが
11.9のスラリーとした後、0.2N−硫酸水溶液を
添加し、pH=8.0に調整し、オートクレープに入れて
N2ガスで置換した後密閉し、135℃で4時間加熱処理
した。処理後、濾過・水洗して湿ケーキとし、N2ガス中
120℃で乾燥し、目的のコバルト含有強磁性酸化鉄粉
末(L)を得た。
比較例−6 0.2N−硫酸水溶液によるpH調整をおこなわないこと
の外は実施例−7の場合と同様にしてコバルト含有強磁
性酸化鉄粉末(M)を得た。
実施例−8 実施例−7で用いたものと同一のγ-Fe2O3100gを水
に分散させたスラリー833ml中に室温でN2ガスを吹き
込みながら、10モル/の水酸化ナトリウム水溶液4
6mlを加え、更に0.85モル/の硫酸コバルト水溶
液63mlと0.90モル/の硫酸第1鉄水溶液135
mlとを加えて室温で5時間攪拌した。このようにして得
られたスラリーのpHは12.7であった。
次いで、このスラリーに0.4N−硫酸水溶液を添加
し、pH=8.5に調整し、オートクレープに入れてN2
スで置換した後密閉し、140℃で6時間加熱処理し
た。処理後、濾過・水洗して湿ケーキとし、N2ガス中1
00℃で乾燥し、目的のコバルト含有強磁性酸化鉄粉末
(N)を得た。
上記サンプル(G)〜(N)について、第1表の場合と
同様にして各種磁気特性を求めた結果を第2表に示す。
第1表および第2表の結果から、本発明によって得られ
るコバルト含有磁性酸化鉄粉末は、飽和磁化量が高く、
又、テープの角形比も高いことから、中低域の出力に優
れた磁性粉末であることがわかる。経時安定性や熱特性
にも優れており、このことから被着したコバルトが拡散
し難いもの(表面に固定されたもの)となっていること
が推察される。
又、磁性粉末のミリスチン酸吸着量が少なくなり(脂肪
酸吸着特性の向上)、更に、テープの反転磁界分布(S
FD)も小さく、磁性粉末としての優れた特性を有する
ことが判る。一般に、テープ製造時の種々のトラブル発
生の原因として、磁性粉末のミリスチン酸吸着量及びpH
値などが影響すると云われており、本発明による磁性粉
末は、これ等の面で有利であり、テープ製造安定性がよ
り優れたものである。尚、実施例1〜8においては磁性
酸化鉄粉末を代表してγ-Fe2O3を用いた場合について記
載したが、本発明によればγ-Fe2O3に替えてマグネタイ
ト、ベルトライド化合物を用いても、所望の効果を同様
の傾向をもってもたらすことができる。
〔発明の効果〕
本発明は、以上のように構成したことにより、得られた
コバルト含有強磁性酸化鉄は、従来品では不充分であっ
た磁気特性の経時安定性や熱特性が優れたものとなり、
また飽和磁化量も一段と高められ、更に保持力分布に優
れ、且つこれを用いてテープにしたときの角形比や反転
磁界分布も改善される。
尚、このコバルト含有強磁性酸化鉄は、ミリスチン酸吸
着量が少なく脂肪酸吸着特性が向上しておりテープ製造
安定性も改善されていること判る。
又、本発明によれば、得られた製品は、その品質が安定
し、製造ロット間の磁気特性のバラツキが少なく、且つ
製造工程の簡略化、設備能力の向上などに寄与して工業
的有利にコバルト含有強磁性酸化鉄を製造することがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮下 政秀 三重県四日市市石原町1番地 石原産業株 式会社四日市工場内 (72)発明者 太田 政司 三重県四日市市石原町1番地 石原産業株 式会社四日市工場内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁性酸化鉄粉末を水系媒液中でコバルト塩
    及び第1鉄塩を含む金属塩並びにアルカリで処理して該
    粉末粒子の表面にコバルト及び第1鉄を含む金属化合物
    を被着し、次いでこの粉末を濾別、水洗することなくし
    て得られた被着スラリーに酸性物質を添加しpHを6.5
    〜11.5に調整して加熱処理することを特徴とするコ
    バルト含有強磁性酸化鉄の製造方法。
  2. 【請求項2】被着スラリーが、コバルト及び第1鉄を含
    む金属化合物で被着された磁性酸化鉄粉末を有する水系
    媒液を沈降処理して上澄液を除去したスラリーである特
    許請求の範囲第1項記載のコバルト含有強磁性酸化鉄の
    製造方法。
  3. 【請求項3】コバルト及び第1鉄を含む金属化合物の被
    着を非酸化性雰囲気でおこなう特許請求の範囲第1項記
    載のコバルト含有強磁性酸化鉄の製造方法。
  4. 【請求項4】コバルト及び第1鉄を含む金属化合物の被
    着温度が50℃以下である特許請求の範囲第1項又は第3
    項記載のコバルト含有強磁性酸化鉄の製造方法。
  5. 【請求項5】加熱処理を加圧のもとにおこなう特許請求
    の範囲第1項記載のコバルト含有強磁性酸化鉄の製造方
    法。
  6. 【請求項6】加熱処理を非酸化性雰囲気でおこなう特許
    請求の範囲第1項又は第5項記載のコバルト含有強磁性
    酸化鉄の製造方法。
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