JPH06108154A - 焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法 - Google Patents

焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法

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JPH06108154A
JPH06108154A JP4262319A JP26231992A JPH06108154A JP H06108154 A JPH06108154 A JP H06108154A JP 4262319 A JP4262319 A JP 4262319A JP 26231992 A JP26231992 A JP 26231992A JP H06108154 A JPH06108154 A JP H06108154A
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克己 谷川
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 薄鋼板の製造過程における加熱による鋼板の
焼付硬化性の低下を防止するため、所定以上の周波数に
よる高周波誘導加熱を用いて優れた焼付硬化性を有する
薄鋼板の製造を目的とする。 【構成】 いわゆるIF鋼の成分を有する薄鋼板におい
て、所定のMn及びCrを添加した場合において、これ
らの量に応じて所定以上の周波数を有する交番磁場中で
の誘導加熱により薄鋼板の焼付硬化性を高めることがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は焼付硬化性に優れた薄鋼
板、即ち熱延鋼板、冷延鋼板及び各種の表面処理鋼板の
製造方法に関するものであり、例えば自動車用の外板パ
ネルに使用するのに好適な鋼板である。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境問題が重視され、自動車
の排気ガス排出量を低減するため、自動車の車体軽量化
による燃費向上が進められている。その対策として、自
動車用外板パネルでは、板厚の薄肉化により車体重量の
軽減が図られており、更に自動車用鋼板には耐デント性
(鋼板のへこみにくさ)が要求されている。このような
要求を克服するため、焼付硬化型鋼板が開発されてい
る。焼付硬化型鋼板とは、プレス成形時には軟質でプレ
ス成形しやすく、後工程である塗装焼付処理時に、鋼中
の固溶Cによる歪時効で降伏点が上昇して、耐デント性
が向上することを特徴とする鋼板である。
【0003】焼付硬化性を有する薄鋼板を製造するうえ
で問題となる点は、製造過程で鋼板を加熱すると、固溶
Cが結晶粒界に拡散して析出したり、あるいは転位に固
着して、焼付硬化性が低下することである。したがっ
て、鋼板の加熱に際し、焼付硬化性の低下を極力小さく
する必要がある。本発明では、高周波誘導加熱炉を用い
ることにより、上記の問題点が解決されることを見いだ
した。
【0004】高周波誘導加熱炉を用いて鋼板を加熱する
方法として例えば特公平2−37425号公報がある。
これは連続溶融亜鉛めっきラインにおいて亜鉛めっきを
施した後、高周波誘導加熱炉で鋼板を加熱して合金化を
行うことを開示している。しかし、これは合金化層の形
成を目的としたもので、高周波誘導加熱炉を用いること
により焼付硬化性に与える影響についてはなんら言及し
ていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した問
題、即ち製造過程における加熱による鋼板の焼付硬化性
の低下を高周波誘導加熱を用いることにより克服し、優
れた焼付硬化性を有する薄鋼板の製造方法に関するもの
である。尚、本明細書では、薄鋼板とは、熱延鋼板、冷
延鋼板および各種の表面処理鋼板を含む広い概念であ
り、表面処理鋼板とは、亜鉛めっき鋼板、錫めっき鋼板
等の表面処理を施した鋼板をいう。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、IF鋼(In
terstitial Free鋼)を使用した優れた
焼付硬化性を有する薄鋼板の製造方法に関するものであ
り、以下の要件で構成されるものである。
【0007】(1)下記の工程(下記の成分組成はwt
%である)を具えた焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方
法。 (a)C:0.01% 以下、 Si:1 %以下、
P:0.1%以下、S:0.01% 以下、 sol.Al:0.01 〜0.06
%、 N:0.004 % 以下、Mn:0.1〜2 % 、 Cr:(2-Mn)
/1.2 %以下、Nb、Tiの1種又は2種を、下式の範囲で
含有し、 0<(Nb/93)/(C/12)≦1 、 (48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+(48/12)C、 残部がFe及び不可避的不純物からなる薄鋼板を用意し、
(b)前記薄鋼板を、下式を満たす周波数f(Hz)の交番
磁場中で高周波誘導加熱する。 f≧1300×(Mn +1.2 ×Cr) +6500
【0008】(2)下記の工程(下記の成分組成はwt
%である)を具えた焼付硬化性に優れた冷延鋼板の製造
方法。 (a)C:0.01% 以下、 Si:1% 以下、
P:0.1%以下、S:0.01% 以下、 sol.Al:0.01 〜0.06
%、 N:0.004 % 以下、Mn:0.1〜2 % 、 Cr: ≦(2-
Mn)/1.2%以下、さらにNb、Tiの1種又は2種以上を、
それぞれ、下式の範囲で含有し、 0<(Nb/93)/(C/12)≦1 、 (48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+(48/12)C、 残部がFe及び不可避的不純物からなる冷延鋼板を用意
し、(b)前記冷延鋼板を焼鈍し、続いて、(c)下式
を満たす周波数f(Hz)の交番磁場中で、高周波誘導加熱
して、過時効処理を行なう。 f≧1300×(Mn +1.2 ×Cr) +6500
【0009】(3)下記の工程(下記の成分組成はwt
%である)を具えた焼付硬化性に優れた合金化溶融亜鉛
めっき鋼板の製造方法。 (a)C:0.01% 以下、 Si:0.4% 以下、
P:0.06% 以下、S:0.01% 以下、 sol.Al:0.01 〜0.
06 %、 N:0.004 % 以下、Mn:0.1〜2 % 、 Cr:
(2-Mn)/1.2 %以下、さらにNb、Tiの1種又は2種を下
式の範囲で含有し、 0<(Nb/93)/(C/12)≦1 、 (48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+(48/12)C、 残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板を用意し、
(b)前記鋼板に連続的に溶融亜鉛めっきを施した後、
下式の周波数f(Hz)の交番磁場中で前記鋼板を高周波誘
導加熱して合金化処理を行う。 f≧1300×(Mn +1.2 ×Cr) +6500
【0010】(4)下記の工程(下記の成分組成はwt
%である)を具えた焼付硬化性に優れた錫めっき鋼板の
製造方法。 (a)C:0.01% 以下、 Si:1% 以下、
P:0.1%以下、S:0.01% 以下、 sol.Al:0.01 〜0.06
%、 N:0.004 % 以下、Mn:0.1〜2 % 、 Cr:(2-
Mn)/1.2 % 以下、さらにNb、Tiの1種又は2種以上を下
式の範囲で含有し、 0<(Nb/93)/(C/12)≦1 、 (48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+(48/12)C、 残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板を用意し、
(b)前記鋼板に錫めっきを施した後、下式を満たす周
波数f(Hz)の交番磁場中で高周波誘導加熱してリフロー
処理を行う。 f≧1300×(Mn +1.2 ×Cr) +6500
【0011】
【作用】本発明において最も重要な構成要件は上記成分
を有するIF鋼を、高周波誘導加熱炉を用いて適正な周
波数の交番磁場中で加熱することである。即ち、本発明
では、適当な量のMnおよびCrを含有する鋼板を、高
周波誘導加熱炉を使用して適当な周波数の交番磁場中で
加熱することにより、通常のガス加熱炉などを使用して
加熱した場合と比較して製品の焼付硬化性が向上するこ
とを見出した。
【0012】この新しい知見の概要をまず最初に述べ
る。薄鋼板を加熱処理すると焼付硬化性が低下する。こ
の原因は加熱により鋼中の固溶Cの拡散速度が速まり、
固溶Cが粒界に析出したり転位へ固着し、焼付硬化性に
寄与する固溶Cが減少するためである。
【0013】さらに、連続焼鈍ライン等連続熱処理ライ
ンにおけるラインの張力や鋼板を支持するロールによる
曲歪み等は固溶Cの析出や転位への固着を促進するた
め、連続式の設備で加熱処理する場合には焼付硬化性の
低下が特に顕著である。しかし、後述するように、所定
の周波数以上の高周波誘導加熱により、固溶Cの析出や
固着が抑制されて、焼付硬化性が向上する。
【0014】固溶Cの析出や固着が抑制される理由は明
らかではないが、高周波の交番磁場に起因する結晶の格
子振動によるものと推測される。すなわち、磁場中に強
磁性体を置くと弾性歪である磁歪が生じ、結晶格子を歪
ませることが知られており、この磁歪により高周波誘導
加熱における交番磁場中では、高周波による格子振動が
生じて、C原子の析出や固着を抑制するものと推定され
る。また他の原因として、鋼中に発生する渦電流により
Cの析出や固着を抑制する効果があるとも考えられる。
以上の説明から明らかなとおり薄鋼板の高周波加熱は、
全く独立に、又は連続焼鈍中に若しくはメッキライン中
に行っても同一の効果が得られる。
【0015】本発明の構成要件である、高周波誘導加熱
における交番磁場の周波数を限定する理由について以下
に述べる。以下においては連続焼鈍ラインにおける高周
波加熱について述べるが、前述の通り全く独立した高周
波誘導加熱を行っても同一の効果が得られる。
【0016】Si:0.2%、Mn:0.7%、P:
0.03%、S:0.004%、sol.Al:0.0
41%、N:0.002%、Nb:0.015%をベー
スとしてCが0.0022%、0.0034%、0.0
040%、の3水準を含有する鋼を、スラブ加熱温度1
250℃、仕上温度900℃、巻取温度650℃で熱間
圧延して、厚さ3.2mmの熱延板とし、酸洗後、冷間
圧延して0.8mmとし、連続焼鈍した。焼鈍は830
℃で60秒間行い、150℃まで冷却した後、高周波誘
導加熱により380℃に加熱して過時効処理をした。
【0017】図1は、焼付硬化性(BH性)と高周波誘
導加熱における交番磁場の周波数の関係を示した図であ
る。比較材として図1中の左端には、高周波誘導加熱の
代わりにガス加熱した場合のBHを併せて示した。な
お、BHはJIS5号試験片に2%の引張予歪を与え、
170℃で20分間の熱処理を行い、熱処理前後の降伏
応力の増加分により求めた。図1より、焼付硬化性が向
上するのは、7500Hz以上の高周波帯域に限られる
のがわかる。ガス加熱した場合と比較して、7500H
zより低周波ではBHが向上する効果はほとんど無い。
したがって交番磁場の周波数には下限が存在することが
わかる。また、C含有量が高いほどBH量の向上は大き
いが、有効周波数の下限はいずれも同じである事から、
C以外の因子により臨界周波数が決定されることが明ら
かである。
【0018】C:0.003%、Si:0.3%、P:
0.03%、S:0.006%、sol.Al:0.0
4%、N:0.002%、Ti:0.022%の含有す
る鋼について、Mnを0.4%、1.1%及び2.2%
含有した鋼を図1の場合と同様の条件で製造した。BH
と交番磁場の周波数との関係を図2に示す。
【0019】図2より、Mnの添加量が増大するにつ
れ、BHの向上する量は少なくなり、有効周波数帯域は
高周波側に移動する。さらに、Mnを2.2%添加する
と、周波数を上げてもBHの向上はわずかになる。これ
はMnとCとの相互作用に起因するものと考えられる。
Mnは固溶Cと相互作用を通じてMn−C双極子(dipo
le) を形成するため、固溶CがMn−C双極子として存
在すると、高周波の交番磁場が、固溶Cの析出や固着を
抑制する効果は減少するものと推定される。したがっ
て、Mn添加量が増大するに伴い、より高い周波数の交
番磁場を鋼板にかけなければBHの向上を図ることがで
きないのである。有効周波数の下限を設定するに当た
り、Mn添加量の範囲を限定し、Mnの添加量に応じて
周波数を限定する必要がある。
【0020】C:0.0028%、Si:0.3%、
P:0.05%、S:0.005%、sol.Al:
0.3%、N:0.0015%、Nb:0.01%、T
i:0.01%で種々のMn量を含有した鋼を、図1と
同様の製造条件で冷延鋼板とした。図3はこの結果であ
り、Mn量と周波数がΔBHに及ぼす結果を示したもの
である。ΔBHは、高周波誘導加熱した場合と通常のガ
ス加熱した場合のBH量との差を示している。
【0021】図3から、Mn添加量と有効周波数の範囲
がわかる。すなわち、Mn添加量が2%を超えるとMn
とCの相互作用が大き過ぎるため、いかなる周波数を用
いてもBHの向上は図れない。したがって、Mn添加量
の上限を2%以下に限定する。図3より、Mnは少なけ
れば少ないほど、BHの向上に効果があることがわかる
が、0.1%を下回ると熱間圧延時に割れを生じるおそ
れがあるため、下限を0.1%とする。有効周波数の下
限はMn添加量の増大に従って上昇し、Mnが1%増大
することにより1300Hz上昇する。したがって、加
熱時の周波数をMn添加量に応じて、1300×Mn+
6500Hz以上とする。
【0022】次に本発明においては、Mnと同様なCと
の相互作用を生ずるCr−C双極子を形成するCrの添
加量および交番磁場の周波数について述べる。C:0.
005%、Si:0.1%、Mn:0.6%、P:0.
02%、S:0.004%、sol.Al:0.035
%、N:0.0025%、Nb:0.007%、Ti:
0.025%の組成を有し、さらに、Crを0%、0.
5%、0.7%、1.0%、を含有する鋼について交番
磁場の周波数とBHの関係を図4に示す。
【0023】図4より、CrについてもMnと同様の効
果があることがわかる。図4から臨界周波数を読み取
り、Crとの関係を示したのが図5である。Cr添加量
の増大に伴い臨界周波数は上昇し、上昇量はCrが1%
増大するにつき1560Hzであるため、Crの効果は
Mnの1.2倍である。したがって、MnとCrを複合
添加した場合には、Cr添加量の上限を2.0%のMn
に相当する(2.0-Mn)/1.2% に限定する。また、交番磁場
の周波数は1300×(Mn+1.2 ×Cr)+6500Hz以上に限定す
る。
【0024】以上は連続焼鈍ラインでの高周波加熱に関
して交番磁場の周波数の影響を説明したが、高周波誘導
加熱は全く独立に行ってもよい。以上が請求項1及び2
に付いての作用である。
【0025】高周波誘導加熱を、溶融亜鉛めっき鋼板の
合金化において利用したのが請求項3の発明であり、錫
めっき鋼板のリフロー処理に利用したのが請求項4の発
明であり、同様な効果が得られ、いずれの場合もガス加
熱した場合に比較して焼付硬化性が向上する。合金化溶
融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、亜鉛めっきの下
地に熱延板、冷延板いずれを使用しても焼付硬化性の向
上を図ることができる。また、錫めっきにおけるリフロ
ー処理に高周波誘導加熱を使用すると焼付硬化性の向上
ばかりでなく、リフローによる固溶Cの転位への固着を
抑制し、降伏点伸びの回復が抑制される。
【0026】本発明では適正量のMnおよびCrを含有
し、適当な固溶C量を有する鋼板ならば、高周波誘導加
熱を用いて、MnおよびCr量に左右される所定の交番
磁場の周波数で加熱することにより、焼付硬化性を向上
させることが可能であるが、特に優れたプレス成形性が
要求される冷延鋼板、及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板を
製造する場合には、以下に述べる条件で製造することが
望ましい。
【0027】熱間圧延の仕上温度はAr3 点を下回ると
熱延板の表層近傍の粒径が粗大化するため、プレス成形
性の指標であるr値が劣化するので、Ar3 点以上が望
ましい。熱間圧延の巻取温度が低すぎると、熱延板中に
固溶Nや固溶Cが残留して、冷間圧延後の再結晶焼鈍時
に好ましい集合組織の形成を阻害するので、560℃以
上が望ましい。
【0028】つぎに、冷間圧延は焼鈍後の集合組織を発
達させるため、冷圧率を70%以上で行うのが望まし
い。連続焼鈍ライン及び連続溶融亜鉛めっきラインでの
再結晶焼鈍は、焼鈍温度が高いほど焼付硬化性は向上す
るが、Ac3 点を越えて焼鈍すると変態集合組織となり
r値を著しく劣化させるので、Ac3 点以下で750℃
以上が望ましい。
【0029】つぎに、調質圧延は、プレス時にストレッ
チャストレインが発生するのを防止し、材質の常温時効
を抑制するため、0.8%以上の伸長率で行うのが望ま
しいが、伸長率が3%を越えると降伏強度の上昇や、延
性の劣化など、材質劣化が著しいので3%以下が望まし
い。
【0030】次に、主要な元素の限定理由について説明
する。 C:0.01%以下とする。Cは鋼板に焼付硬化性を与
えるうえで必須の元素である。しかし、多量の添加は常
温における材質の時効劣化が問題となるため上記範囲と
する。特に加工性が要求される場合には0.006%以
下が望ましい。
【0031】Si:1%以下とする。Siは、固溶強化
により鋼を高強度化するために添加するが、多量の添加
は熱延板の表面にスケール性欠陥を生じさせるので上記
範囲とする。合金化溶融亜鉛めっきを行う場合には、
0.4%を越える添加は亜鉛めっき層の密着性を著しく
損なうため、上限を0.4%とする(請求項3)。
【0032】P:0.1%以下とする。Pは、比較的プ
レス成形性を損なう事がなく、固溶強化により鋼板の高
強度化を図る上で最も有効な元素であるため添加する。
しかし、多量の添加は鋼板を硬質化させるので上限を
0.1%とする。合金化溶融亜鉛めっきを行う場合に
は、0.06%を越えた添加は合金化を遅滞させて焼き
むらの原因になるため、0.06%以下とする(請求項
3)。
【0033】S:0.01%以下とする。Sは、含有量
が高いと鋼板の延性を低下させるほか、Tiを添加する
場合にはTiSを形成してTiの歩留まりを下げたり、
Ti4 2 2 を形成して焼付硬化性を低下させるため
少ないほど望ましい。よって、上記範囲に限定する。
【0034】sol.Al:0.01〜0.06%とす
る。AlはMn、Tiの歩留りを確保しつつ溶鋼の脱酸
を行うため添加する。しかし、多量の添加は合金のコス
トを高めるばかりでなく、鋼中介在物を増加させて成形
性を損なうので、酸可溶のAl(sol.Al)のレベ
ルで上記範囲とする。
【0035】N:0.004%以下とする。Nは含有量
が高いと鋼板中に固溶Nとして残存し、常温における材
質の時効劣化を著しく促進するほか、鋼中の介在物を増
加させて材質を損なうので、少ない方が望ましい。した
がって上記範囲とする。
【0036】Nb:Nbは固溶Cを適度に固定して、優
れた焼付硬化性と常温における材質の非時効性を具備さ
せるため添加する。Nbは多量に添加すると焼付硬化性
が期待出来なくなるほか、延性を低下させるので、その
添加量を下記の範囲とする。 0<(Nb/93)/(C/12)≦1
【0037】Ti:Tiは固溶Cを固定する以外に、常
温時効性を劣化させるNをTiNとして析出固定して、
コイルの長手方向の材質変動の低減に効果があるので添
加する。しかし多量に添加すると焼付硬化性が期待でき
なくなるばかりか、スラブの表面性状を劣化させるの
で、その添加量を下記の範囲に限定する。 (48/14) N ≦Ti≦(48/14) N +(48/32) S +(48/12) C
【0038】
【実施例】本発明の製造方法について実施例を以下に説
明する。 (実施例1)本実施例においては高周波誘導加熱を連続
焼鈍ラインで行った場合を説明する(請求項2の実施
例)。表1に示す化学成分を有する1〜40の鋼を連続
鋳造によりスラブとなし、熱間圧延を行った。熱間圧延
条件はスラブ加熱温度1200℃、仕上温度900℃、
巻取温度680℃で、板厚2.8mmの熱延板とした。
こうして得られた熱延板を、酸洗後冷間圧延して板厚
0.8mmの冷圧板とし、引き続き連続焼鈍を行った。
連続焼鈍は820℃で30秒行い、120℃に冷却後、
高周波誘導加熱により350℃に加熱して過時効処理を
した。調質圧延は伸長率1.2%で行った。
【0039】表2に、高周波誘導加熱の交番磁場の周波
数と、これらの鋼板の特性と50℃で14日間促進時効
した後の降伏点伸びを示す。表中のΔBHは、過時効処
理をガス加熱炉を用いて行った鋼板のBH量との差であ
る。50℃で14日間の促進時効は常温(25℃)で6
ケ月間の時効と等価である。したがって、降伏点伸びが
0.2%以下ならば常温非時効である。表2から比較鋼
のΔBHは約5N/mm2 以下であるが、発明鋼のΔB
Hは10N/mm2 以上であり、その効果は明らかであ
る。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】(実施例2)本実施例においては、実施例
1の場合と同様連続焼鈍中における高周波誘導加熱の効
果を示す。表1の1、6、19、21、37、40の鋼
を連続鋳造によりスラブとなし、熱延圧延を行った。熱
間圧延条件は、スラブ加熱温度1200℃、仕上温度8
90℃、巻取温度630℃で、板厚2.8mmの熱延板
とした。こうして得られた熱延板を酸洗後、冷間圧延し
て板厚0.8mmの冷延板として、連続焼鈍した。連続
焼鈍は840℃で60秒間行い、180℃に冷却後、高
周波誘導加熱により種々の周波数の交番磁場中で加熱し
て、360℃で過時効処理を行った。また調質圧延は伸
長率1.4%で行った。表3に高周波誘導加熱の交番磁
場の周波数、BHおよびΔBHを示す。本実施例から本
発明における周波数の下限値以上で加熱した場合と、そ
れ以下の周波数で加熱した場合との差はBH量及びΔB
H量に顕著に現れている。即ち、比較鋼においては特に
ΔBH量は約10N/mm2 以下であるのに対して、本
発明鋼においては10N/mm2 以上である。
【0043】
【表3】
【0044】(実施例3)本実施例においては高周波誘
導加熱を連続溶融亜鉛めっきラインにおいて行った場合
の効果を示す。表1に示す化学組成を有する1〜40の
鋼を連続鋳造によりスラブとなし、熱間圧延を行った。
熱間圧延条件はスラブ加熱温度1200℃、仕上温度9
00℃、巻取温度680℃で、板厚3.6mmの熱延板
とした。かくして得られた熱延板を酸洗後、冷間圧延し
て板厚0.7mmの冷延板とし、続いて連続溶融亜鉛め
っきラインにおいて焼鈍および合金化溶融亜鉛めっきを
施した。焼鈍は820℃で30秒行い、板温475℃で
浴温455℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、続いて高周
波誘導加熱炉を用いて誘導を加熱し、500℃で合金化
を行った。めっき目付量は、両面で60g/mm2 であ
る。引き続き調質圧延は伸長率0.8%で行った。
【0045】表4に高周波誘導加熱における交番磁場の
周波数、これらの鋼板の材料特性、めっき密着性、50
℃で14日間促進時効した後の降伏点伸びを示す。また
鋼2、18、27については600℃で巻取った熱延板
を酸洗して、合金化溶融亜鉛めっきした結果も併せて示
す。表中のΔBHは、合金化溶融亜鉛めっき処理を、ガ
ス加熱炉を用いて同様の熱サイクルで行った場合のBH
量との差である。めっき密着性は、ドロービード試験に
よりめっき剥離量を測定して評価し、1〜5の5段階で
評点づけした。連続溶融亜鉛めっきを行った溶融亜鉛め
っきラインにおいて、合金化溶融亜鉛めっきを行った場
合においても、本発明における所定以上の交番周波数で
加熱した鋼板はBH及びΔBHを共に比較鋼に対して顕
著である。
【0046】
【表4】
【0047】(実施例4)表1中の2、6、19、2
1、37、40の鋼を連続鋳造によりスラブとなし、熱
間圧延を行った。熱間圧延条件はスラブ加熱温度120
0℃、仕上温度890℃、巻取温度630℃で、板厚
3.6mmの熱延板とした。得られた熱延板を酸洗後、
冷間圧延して板厚0.7mmの冷延板とし、続いて連続
溶融亜鉛めっきラインにおいて焼鈍および合金化溶融亜
鉛めっきを施した。焼鈍は840℃で60秒行い、板温
485℃で浴温470℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、
高周波誘導加熱炉を用いて種々の周波数の交番磁場中で
加熱して、480℃で溶融亜鉛めっき層の合金化処理を
行った。めっき目付量は両面で60g/mm2 である。
表5に高周波誘導加熱炉の交番磁場の周波数とBH量お
よびΔBH量を示す。本実施例においても本発明におい
て規定する所定の周波数以上で誘導加熱を行った場合に
はBHおよびΔBH量は所定以下の周波数で加熱した場
合と比較しその効果は顕著である。
【0048】
【表5】
【0049】(実施例5)表6に示す化学組成を有する
1〜4鋼を連続鋳造によりスラブとなし、熱間圧延を行
った。熱間圧延条件は、スラブ加熱温度1150℃、仕
上温度880℃、巻取温度600℃で、板厚2.4mm
の熱延板とした。引き続き酸洗後、冷間圧延して板厚
0.2mmの冷延板とし、連続焼鈍後、伸長率1.5%
で調質圧延を行った。焼鈍は760℃で30秒行い、錫
めっきを施した後、高周波誘導加熱により種々の周波数
の交番磁場中で加熱してリフロー処理をした。リフロー
処理の温度は250℃であった。表6に交番磁場の周波
数、BH、ΔBHおよびロックウェル硬さ(HR30
T)を示す。表6においても、本発明に限定する周波数
以上の高周波誘導加熱をした場合とそうでない場合を比
較すると、本発明における所定の周波数を適応した場合
にはBHおよびΔBH量の差は極めて顕著であり、発明
の効果は明らかである。
【0050】
【表6】
【0051】
【発明の効果】以上説明したように本発明の製造方法に
よれば、焼付硬化性に優れた薄鋼板又は表面処理鋼板を
製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高周波誘導加熱における交番周波数が焼付硬化
量BHに与える影響を示す図である。
【図2】種々のMn量を含むIF鋼における誘導加熱の
交番周波数と焼付硬化量BHとの関係を示す図である。
【図3】Mn添加量と臨界の高周波周波数との関係を示
す図である。
【図4】Cr添加量の異なるIF鋼における交番周波数
と焼付硬化量BHとの関係を示す図である。
【図5】Cr添加量と臨界の交番磁場の周波数との関係
を示す図である。
【手続補正書】
【提出日】平成4年11月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】C:0.0028%、Si:0.3%、
P:0.05%、S:0.005%、sol.Al:
0.03%、N:0.0015%、Nb:0.01%、
Ti:0.01%で種々のMn量を含有した鋼を、図1
と同様の製造条件で冷延鋼板とした。図3はこの結果で
あり、Mn量と周波数がΔBHに及ぼす結果を示したも
のである。ΔBHは、高周波誘導加熱した場合と通常の
ガス加熱した場合のBH量との差を示している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正内容】
【0041】
【表2】
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/18 C23C 2/06 2/28

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の工程(下記の成分組成はwt%で
    ある)を具えた焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。 (a)C:0.01% 以下、 Si:1 %以下、
    P:0.1%以下、 S:0.01% 以下、 sol.Al:0.01 〜0.06 %、 N:0.00
    4 % 以下、 Mn:0.1〜2 % 、 Cr:(2-Mn)/1.2 %以下、 Nb、Tiの1種又は2種を、下式の範囲で含有し、 0<(Nb/93)/(C/12)≦1 、 (48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+(48/12)C、 残部がFe及び不可避的不純物からなる薄鋼板を用意し、
    (b)前記鋼板を、下式を満たす周波数f(Hz)の交番磁
    場中で高周波誘導加熱する。 f≧1300×(Mn +1.2 ×Cr) +6500
  2. 【請求項2】 下記の工程(下記の成分組成はwt%で
    ある)を具えた焼付硬化性に優れた冷延鋼板の製造方
    法。 (a)C:0.01% 以下、 Si:1% 以下、
    P:0.1%以下、 S:0.01% 以下、 sol.Al:0.01 〜0.06 %、 N:0.00
    4 % 以下、 Mn:0.1〜2 % 、 Cr: (2-Mn)/1.2%以下、 さらにNb、Tiの1種又は2種以上を、それぞれ、下式の
    範囲で含有し、 0<(Nb/93)/(C/12)≦1 、 (48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+(48/12)C、 残部がFe及び不可避的不純物からなる冷延鋼板を用意
    し、(b)前記冷延鋼板を連続焼鈍ラインで焼鈍し、
    (c)高周波誘導加熱を、下式を満たす周波数f(Hz)の
    交番磁場中で高周波誘導加熱して、過時効処理を行な
    う。 f≧1300×(Mn +1.2 ×Cr) +6500
  3. 【請求項3】 下記の工程(下記の成分組成はwt%で
    ある)を具えた焼付硬化性に優れた合金化溶融亜鉛めっ
    き鋼板の製造方法。 (a)C:0.01% 以下、 Si:0.4% 以下、
    P:0.06% 以下、 S:0.01% 以下、 sol.Al:0.01 〜0.06 %、 N:0.
    004 % 以下、 Mn:0.1〜2 % 、 Cr:(2-Mn)/1.2 %以下、 さらにNb、Tiの1種又は2種を下式の範囲で含有し、 0<(Nb/93)/(C/12)≦1 、 (48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+(48/12)C、 残部がFe及び不可避的不純物からなる薄鋼板を用意し、
    (b)前記鋼板に連続的に溶融亜鉛めっきを施した後、
    下式の周波数f(Hz)の交番磁場中で前記鋼板を高周波誘
    導加熱して合金化処理を行う。 f≧1300×(Mn +1.2 ×Cr) +6500
  4. 【請求項4】 下記の工程(下記の成分組成はwt%で
    ある)を具えた焼付硬化性に優れた錫めっき鋼板の製造
    方法。 (a)C:0.01% 以下、 Si:1% 以下、
    P:0.1%以下、 S:0.01% 以下、 sol.Al:0.01 〜0.06 %、 N:0.
    004 % 以下、 Mn:0.1〜2 % 、 Cr:(2-Mn)/1.2 % 以下 さらにNb、Tiの1種又は2種以上を下式の範囲で含有
    し、 0<(Nb/93)/(C/12)≦1 、 (48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+(48/12)C、 残部がFe及び不可避的不純物からなる冷延鋼板を用意
    し、(b)前記鋼板に錫めっきを施した後、(c)続い
    て下式を満たす周波数f(Hz)の交番磁場中で高周波誘導
    加熱してリフロー処理を行う。 f≧1300×(Mn +1.2 ×Cr) +6500
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