JPH0610403B2 - ラジアルタ−ビンの可変ノズル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はラジタルタービンの可変ノズルに関し、特にタ
ービンロータ入口部に沿つて複数のノズル翼を配置し、
これらの軸をリングを介して一斉回動させるようにした
ラジアルタービンの可変ノズルに関する。

〔従来の技術〕

最近では自動車エンジン等のターボチヤージャにこの種
の可変ノズル翼を設けたものが開発されてきており、以
て、低速から高速までの広い範囲にわたり排気エネルギ
の有効利用が図られている。

第５図はこのようなラジアルタービンの可変ノズルを示
すもので、本例は三菱重工技法VOL．20−No．５(1983-
9)の「トラック・バス用バリアブル・ジエオメトリ・タ
ーボ過給機付きエンジンの開発」に開示されたものであ
る。

ここで、１はノズルベーン、２はそのノズルベーン１の
端面に取り付けられたベーン回動軸であり、回動軸２に
より回動自在としたこのような複数のノズルベーン１が
タービンハウジング３で形成されたロータ入口部４に沿
つて周方向等間隔に配置されている。５はタービンロー
タである。

しかして回動軸２は片側のハウジング３に枢支されてお
り、この回動軸２の他端には図示しないレバが取り付け
られていて、このレバ端を摺動自在に保持するスライ
ダ，スライダとピンで連結されスライダと共に回動する
リング，リングを回動させる駆動装置（以上図示せず）
を介して回動軸２を同方向に一斉回動させ、以て、ノズ
ルベーン１の翼角を変化させて、ベーン１間のスロート
の面積を変化させるようにしている。

［発明が解決しようとする課題］ しかしながら、このような従来のラジアルタービンの可
変ノズルにあっては、通常の場合、ノズルベーン１およ
びタービンハウジング３が共に金属で形成されているた
め、エンジンの作動中はこれらがしばしば高温雰囲気中
にさらされることにより、熱膨張によってノズルベーン
１の端面１Ａとタービンハウジング３の壁面３Ａとが接
触して動作不能となる虞がある。

そこで、予めノズルベーン１とタービンハウジング３と
の間には、このような熱膨張を見越してしかも接触が発
生しないだけのすき間が得られるように構成されてい
た。しかして、本来、ベーンとベーンとの間を通るガス
流体がすき間が生ずることによりここから洩れ、タービ
ン入口に必要とする十分な流れが形成されず、タービン
効率を大幅に低下させる虞があつた。

本発明の目的は、このような従来の問題点に着目し、ノ
ズルベーンとタービンハウジングとの間のすき間をエン
ジンの運転中常に零化させることにより、タービン効率
の向上を図ることができ、ターボチャージャに適用した
場合はそのエンジンの加速性能および出力性能の向上に
も貢献することのできるラジアルタービンの可変ノズル
を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ かかる目的を達成するために、本発明は、タービンロー
タ入口部のハウジング壁面間にノズル部を形成し、該ノ
ズル部に複数の回動自在としたノズルベーンを配置した
ラジアルタービンの可変ノズルにおいて、前記ノズル部
の前記ノズルベーンの端面に対向するハウジング壁面に
形成された環状溝に前記タービンロータの軸方向に摺動
自在に嵌合された可動壁部材と、前記環状溝の底部に前
記タービンロータの軸方向に平行して設けられたピン孔
と、該ピン孔に摺動自在に保持されるピンと、該ピンを
前記可動壁部材に向けて偏倚させるばねと、前記環状溝
に前記ノズル部の上流側作動圧を導く手段と、前記ピン
孔に前記ノズル部の下流側作動圧を導く手段と、を具備
し、前記ピンを介して前記可動壁部材を、前記ノズル部
の上流側作動圧と前記ノズル部の下流側作動圧との差圧
および前記ばねのばね力の合力により前記ノズルベーン
の端面に押圧させるようにしたことを特徴とするもので
ある。

［作 用］ 本発明によれば、可動壁部材にはピンを介して作用する
ばね力と、環状溝に導かれるノズル部上流側の作動圧お
よびピン孔に導かれるノズル部下流側の作動圧とが押圧
力として作用するもので、これにより、過給時にはノズ
ル部上流側と下流側との作動圧の大きい差圧が環状溝側
のピンに作用することでばねによるピンの偏倚力が過大
になるのを抑制することができ、また、非過給時には上
記の差圧も小さくなることから、ばね力の方が大きく作
用して適切な偏倚力で可動壁部材をノズルベーンの端面
に向けて偏倚させることができる。

［実施例］ 以下に、図面に基づき本発明の実施例を説明する。

第１図は本発明の第１の実施例を示す。ここで、10はタ
ービンハウジング３におけるノズルベーン端面１Ａの対
向位置に周方向を連続させる形でノズル部13に沿って形
成した環状溝であり、11はこの環状溝10に受容され、端
面１Ａとは直角方向に摺動自在となした環状の可動壁部
材（以下で単に壁部材という）である。

なお、壁部材11は熱膨張の影響を考慮してセラミックス
で形成するのが好適である。

14は壁部材11の溝空間側に当接させた壁部材保持ピンで
あり、保持ピン14をピン孔15に摺動自在に嵌合わせ、そ
のピン14をばね16のばね力により壁部材11に向けて圧接
させ、以て壁部材11をノズルベーン１の端面１Ａに当接
させるようにする。17はばね16の端部を係止しているボ
ルトであり、ボルト17を孔15に螺締することによりばね
16のばね力を調整することができる。

なお、ここで、保持ピン14，ピン孔15，ばね16およびボ
ルト17を構成する位置は、ノズルベーン１が設けられて
いる位置の必ずしも全てに設ける必要はなく、環状をな
す壁部材11の周方向等分の位置に配設するようにしても
よい。また、保持ピン14は耐熱性に優れ、しかも熱膨張
率の低いセラミックスで形成するのが好適である。

また、本例では壁部材11の環状溝10空間側に突起部11Ａ
を形成すると共に、この突起部11Ａに保持ピン14を当接
するようになし、保持ピン14の径を十分大きくすること
により、突起部11Ａに当接する保持ピン14の端面14Ａが
突起部11Ａの当接端面に比して十分大きい面積が保たれ
るようにする。

さらにまた、本例ではノズルベーン１の入口側から環状
溝10の空間に作動圧を導くための圧力導通管20の外に、
保持ピン14を摺動自在に嵌合保持しているピン孔15の空
間と、ノズル部13より下流のシュラウド部３Ｂとの間に
圧力導通管33を設ける。なお、これらの圧力導通管20お
よび33を設ける位置は、タービンロータ５の周方向に適
当の間隔を置いて配設すればよく、ノズルベーン１の必
ずしも全ての設置位置に設ける必要はない。

このように構成したラジアルタービンの可変ノズルにお
いては、エンジンの運転状態に応じてガスの差圧とばね
のばね力との双方を組み合わせた力で壁部材11をノズル
ベーン１の端面１Ａに押圧させることができる。すなわ
ち、ノズル部13において、可変ノズルが絞られておら
ず、あるいはタービンロータ５への流入ガス流量が少な
いような非過給時の運転状態では、スクロール部21とノ
ズル部13との間の圧力差が大方零に近くなり、もし、ば
ね16や導通管33が設けていないとすると、上記の圧力差
のみで壁部材11をベーン端面１Ａに押圧させることが困
難となり、不安定な状態から壁部材11に振動が発生する
虞がある。

しかるに、本例ではばね16と導通管33を併用しているこ
とにより、このような状況下ではばね16のばね力で保持
ピン14を介して壁部材11をベーン端面１Ａに押圧させる
ことができる。

また、過給運転状態にあって上記の圧力差により壁部材
11がベーン１に向けて偏倚される場合は、低圧側となる
タービンシュラウド３Ｂ側の圧力を導入する導通管33に
より孔15の空間にスクロール部21におけるより低い静圧
が導かれることによつて、保持ピン14の両端部に働く差
圧によりばね16のばね力が減殺される方向に働く。

かくして、壁部材11に作用する力として差圧にさらにば
ね力が加重されて過大になり過ぎるのを防止することが
できる。

第２図は本発明のさらに第２の実施例を示す。本例は第
１実施例に対して、さらに連通孔34を設けるようにした
ものであり、この連通孔34はこの図に示すように壁部材
11に直接設けて、環状溝10の空間部とノズル部13との間
を連通させるようにしてもよいし、図示はしないが、ス
クロール部21より低い静圧が得られるハウジング３の側
から環状溝10の空間部に向けて直接連通孔を設けるよう
にしてもよい。

なお、本例のように連通孔34を設けることにより、第１
の実施例よりさらに一層微妙に偏倚力を調整することが
可能となる。ただし、本例の場合は連通孔34の孔の大き
さの設定にあたつて、ばね16のばね力との具合で好適な
寸法となるようにすることが必要なことはいうまでもな
い。

第３図の(A)は上述の各実施例に対し、その壁部材11の
内周面ならびに外周面と、これらの面に対応する環状溝
10側のそれぞれの面との間にシールリング30を設けるよ
うにしたものであり、31はそのリング溝である。また、
第３図の(B)は(A)のシールリング30やリング溝31に代え
て、ラビリンスシール32を設けた例である。

すなわち、このようなシール装置を設けることにより、
壁部材11に摺動性を保持させながら、環状溝10の空間と
ノズル部13との間にある程度の気密性を保持させること
ができる。

第４図は上述の実施例のようにして、壁部材11をベーン
１に押接させ、以て、ベーン１とハウジング３との間の
すき間を零化した場合の実験から得られたタービン温度
効率−空気流量の特性を示す。同一形態のタービンにお
いて、すき間を設計点で0.4 mmに設定した場合のタービ
ン温度効率特性曲線が破線で示されており、実線は本発
明によりすき間を零化した場合のその特性曲線を示す。
すなわち、本発明を適用することにより、すき間を設定
した場合は75％程度であったタービンの温度効率を85％
程度にまで向上させることができることを確認した。

［効 果］ 以上説明したように、本発明によれば、ノズル部の前記
ノズルベーンの端面に対向するハウジング壁面に形成さ
れた環状溝に前記タービンロータの軸方向に摺動自在に
嵌合された可動壁部材と、前記環状溝の底部に前記ター
ビンロータの軸方向に平行して設けられたピン孔と、該
ピン孔に摺動自在に保持されるピンと、該ピンを前記可
動壁部材に向けて偏倚させるばねと、前記環状溝に前記
ノズル部の上流側作動圧を導く手段と、前記ピン孔に前
記ノズル部の下流側作動圧を導く手段と、を具備し、前
記ピンを介して前記可動壁部材を、前記ノズル部の上流
側作動圧と前記ノズル部の下流側作動圧との差圧および
前記ばねのばね力の合力により前記ノズルベーンの端面
に押圧させるようにしたので、エンジンの運転中、ノズ
ルベーンとタービンハウジングの壁との間のすき間を常
時零化することができて、タービン効率を向上させるこ
とができ、特にターボチャージャに適用した場合は、そ
のエンジンの加速性能および出力性能の向上にも貢献す
る。

しかも、ばねのばね力とガスの作動圧とをエンジンの運
転状態に応じて適切に相互作用するようにしたことで、
ノズルベーンに作用する可動壁部材の押圧力を特に過大
になり過ぎないように適切に保つことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の第１実施例による構成を示す断面図、 第２図は本発明の第２実施例の構成を示す断面図、 第３図(A)，(B)は本発明の各実施例に適用可能な封止部
の構成例をそれぞれ示す断面図、 第４図は本発明と従来例とのタービン温度効率を比較し
て示す特性曲線図、 第５図は従来例の構成を示す断面図である。 １……ノズルベーン、 １Ａ……端面、 ２……回動軸、 ３……タービンハウジング、 ３Ａ……壁面、 ３Ｂ……シュラウド部、 ４……ロータ入口部、 ５……タービンロータ、 10……環状溝、 10Ａ……突出部、 11……可動壁部材、 11Ａ……突起部、 12……連通孔、 13……ノズル部、 14……保持ピン、 14Ａ……端面、 15……ピン孔、 16……ばね、 17……ボルト、 20……圧力導通管、 21……スクロール部、 30……シールリング、 31……リング溝、 32……ラビリンスシール、 33……圧力導通管、 34……連通孔。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】タービンロータ入口部のハウジング壁面間
   にノズル部を形成し、該ノズル部に複数の回動自在とし
   たノズルベーンを配置したラジアルタービンの可変ノズ
   ルにおいて、 前記ノズル部の前記ノズルベーンの端面に対向するハウ
   ジング壁面に形成された環状溝に前記タービンロータの
   軸方向に摺動自在に嵌合された可動壁部材と、 前記環状溝の底部に前記タービンロータの軸方向に平行
   して設けられたピン孔と、 該ピン孔に摺動自在に保持されるピンと、 該ピンを前記可動壁部材に向けて偏倚させるばねと、 前記環状溝に前記ノズル部の上流側作動圧を導く手段
   と、 前記ピン孔に前記ノズル部の下流側作動圧を導く手段
   と、 を具備し、前記ピンを介して前記可動壁部材を、前記ノ
   ズル部の上流側作動圧と前記ノズル部の下流側作動圧と
   の差圧および前記ばねのばね力の合力により前記ノズル
   ベーンの端面に押圧させるようにしたことを特徴とする
   ラジアルタービンの可変ノズル。