JP4062811B2 - 可変容量型過給機のガスシール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は導入されるガスの流量を調整できるようにした可変容量型過給機のガスシール装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
複数のノズルベーンを組み込んで該ノズルベーン間のスロートを変えることによってタービンへ導入されるガス流量を調整するようにした可変容量型過給機は、従来より広く採用されており、その一例を示すと、図3に示す構成のものがある。すなわち、タービンハウジング1とコンプレッサハウジング2とを軸受ハウジング3を介して一体構造とし、タービンハウジング1内のタービンインペラ4とコンプレッサハウジング2内のコンプレッサインペラ5とを、軸受ハウジング3内に軸受6で回転自在に支承されたタービン軸7にて連結し、又、上記タービンハウジング1の反軸受ハウジング3側の内周部に、内周側にガス排出流路部9aを形成した環状のタービンシュラウド9をボルト8により取り付けて、該タービンシュラウド9の外周部とタービンハウジング1の軸受ハウジング3側の内周部との軸方向対向面部間に環状流路10を形成し、且つ上記タービンハウジング1の反軸受ハウジング3側の外側面部に、上記タービンシュラウド9のガス排出流路部9aと連通するようにしたガス出口11を有するカバー12をボルト13により取り付け、ガス入口14から導入されたガスを、タービンハウジング1に有するスクロール通路15から上記環状流路10を通してタービンインペラ4に導いた後、ガス排出流路部9a内を経てガス出口11から排出させるようにしてある構成において、上記スクロール通路15からタービンインペラ4の外周部に至る間の環状ガス流路10に、円周方向に多数のノズルベーン16を配置し、該各ノズルベーン16に一端を固定した操作軸17の他端を、タービンシュラウド9の外周位置を貫通させて、タービンシュラウド9とカバー12との間に形成したトルク伝達室18内に突出させ、リンク機構式の伝動機構19を介してアクチュエータに接続し、アクチュエータの作動で操作軸17を介して各ノズルベーン16の開閉角度が変えられるようにし、各ノズルベーン16の開閉角度をコントロールすることで各ノズルベーン16間のスロートを広狭調整することにより、ガスの流量を大流量から小流量に変えることができるようにしてある。
【0003】
又、環状流路10を形成するタービンハウジング1の環状流路形成面部に環状の凹部20を形成し、該凹部20内に、リング状のクリアランスコントロールプレート21を凹部20壁面に対し所要の間隙Sを介して配置し、該クリアランスコントロールプレート21の円周方向所要間隔位置を、タービンシュラウド9の外周部に取り付けた取付軸22によって位置固定させるようにし、クリアランスコントロールプレート21の前面を環状流路形成面としてノズルベーン16との間のクリアランスCを微小一定に保持させるようにしてある。
【0004】
上記クリアランスコントロールプレート21の背面側の間隙Sは、本来不要なものであるが、タービンハウジング1が冷態時と熱間時との間で熱変形を起すこと、及び組み立て部品に精度上ばらつきがあること等のために設けるようにしているが、この間隙Sからガスがリークすると、低速側の性能が大きく変化し、エンジン性能が不安定になる原因となる。特に、ガスリーク量が多い場合、ノズルベーン16の開度の小さい領域では、ノズルベーン16の上流と下流との圧力差によりノズルベーン16を閉じるようにする力が作用し、制御性に支障が生じることになる。
【0005】
そのため、図4に示す如く、環状の凹部20を大きく形成し、凹部20の内径側の周面部にシール用ピストンリング23を装着し、該シール用ピストンリング23の外周面に、クリアランスコントロールプレート21の背面に突設したガイド環部24を、軸方向へ摺動自在に嵌装させて、ガイド環部24とシール用ピストンリング23との係合によって、ガスリークを防止すると共に熱変形を吸収することができるようにしたものが提案されている(特開平1−130002号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特開平1−130002号公報に示されているものは、船舶に使用する大型の過給機を対象としているので、クリアランスコントロールプレート21の背面側のスペースにシール用ピストンリング23を組み付けることができるが、乗用車等で使用する小型の過給機では、スペース的に余裕がないので、ピストンリング方式を採用することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、小型の過給機に対しても採用することができて、安定したガスシールを行うことができるようなガスシール装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、タービンハウジングの反軸受ハウジング側内周部に、環状のタービンシュラウドを配置して、該タービンシュラウドの外周部とタービンハウジングの軸受ハウジング側内周部との軸方向対向面部間に環状流路を形成し、該環状流路に、上記タービンシュラウドの外周部を貫通させた操作軸の回転操作により開閉角度調整可能とした多数のノズルベーンを配列し、又、上記タービンハウジングの環状流路形成面部に環状の凹部を形成し、該凹部内に配置したリング状のクリアランスコントロールプレートを、タービンシュラウドに支持させた取付軸に固定して、該クリアランスコントロールプレートの前面とノズルベーンとの間のクリアランスを一定に保持させるようにしてある可変容量型過給機における上記クリアランスコントロールプレートの背面側とタービンハウジングの軸受ハウジング側内周面との間の隙間に、外周縁部を外側へ開くように折り曲げて片側ビード形状とした2枚の厚みの薄いガスケットを、互いの外周縁部が離反する向きとなるように重合接着して、外周縁部が上記取付軸の位置となるようにして配置し、上記隙間を通ってリークしようとするガスの圧力が両ガスケットの対向する外周縁部を押し広げるように作用して一方のガスケットの外周縁部をクリアランスコントロールプレートの背面に、又、他方のガスケットの外周縁部をタービンハウジングの凹部壁面にそれぞれ押接させるようにしてシールさせるようにした構成とする。
【0009】
ガスケットは片側ビード形状としてあることから、タービンハウジングの熱変形に弾性力より追従変位でき、且つこの際、ガス圧がガスケットの外周縁部を押し広げるよう作用するので、押し付け力が維持され、安定したシール性能が得られる。
【0010】
又、タービンシュラウドを、タービンハウジングに対し軸方向から嵌合させる構造としてタービンハウジングとの縁を切るようにして、該タービンシュラウドのガス排出流路部をタービンハウジングの外側面部のカバーに取り付け、且つ上記タービンシュラウドとタービンハウジングの軸方向嵌合部に、ピストンリング形状のシールリングを介在させて、該軸方向嵌合部に生じる隙間のガスリークを防止するようにした構成とすると、タービンハウジングの熱変形がタービンシュラウドに直接作用することがなくなり、更に、タービンハウジングとタービンシュラウドとの嵌合部からのガスのリークはシールリングにて抑えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1(イ)(ロ)は本発明の実施の一形態を示すもので、図3に示したと同様に、タービンハウジング1の反軸受ハウジング3側内周部に、環状のタービンシュラウド9を配置して、該タービンシュラウド9の外周部とタービンハウジング1の軸受ハウジング3側内周部との軸方向対向面部間に環状流路10を形成し、該環状流路10に、上記タービンシュラウド9の外周部を貫通させた操作軸17の回転操作により開閉角度調整可能とした多数のノズルベーン16を配列し、又、上記タービンハウジング1の環状流路形成面部に環状の凹部20を形成し、該凹部20内に、リング状のクリアランスコントロールプレート21を、タービンシュラウド9に支持させた取付軸22により固定配置して、該クリアランスコントロールプレート21の前面とノズルベーン16との間のクリアランスCを一定に保持させるようにしてある可変容量型過給機において、上記クリアランスコントロールプレート21の背面側の間隙Sに、図1(ロ)に拡大して示す如く、外周縁部25aを折り曲げて片側ビード形状とした厚みの薄い2枚のガスケット25を、互いの外周縁部25aが離反する向きとなるように重合接着して配置し、一方のガスケット25の外周縁部25aをクリアランスコントロールプレート21の背面に、又、他方のガスケット25の外周縁部25aをタービンハウジング1の凹部20壁面に、それぞれ押接させるようにした構成とする。なお、25bはクリアランスコントロールプレート21の取付軸22の位置を避けるようにガスケット25の外周縁部25aの所要位置に設けた切り欠きを示す。
【0013】
その他の構成は図3に示したものと同じであり、同一部分には同一符号が付してある。
【0014】
クリアランスコントロールプレート21の背面と凹部20壁面との間の間隙Sは、タービンハウジング1の熱変形により広くなったり、狭くなったりするが、この間隙Sに2枚1組として配置してあるガスケット25は片側ビード形状となっていて、外周縁部25aが弾性変形できることから、上記熱変形に支障なく追従変形することができる。又、この際、間隙Sを通ってリークしようとするガスの圧力が両ガスケット25の対向する外周縁部25aを押し広げるように作用するので、外周縁部25aのクリアランスコントロールプレート21の前面に対する押し付け力と凹部20壁面に対する押し付け力が維持されることにより、安定したシール性能が得られる。なお、この押し付け力は機械的な押し付け力ではないので、クリアランスコントロールプレート21をノズルベーン16に接触させてしまうような必要はない。
【0015】
このように、上記クリアランスコントロールプレート21の背面側からのガスのリークを防止できることから、常にノズルベーン16に開方向の力を作用させることができるようになり、制御性を向上させることができる。
【0016】
上記において、2枚1組としたガスケット25は小さな間隙Sに設けることができることから、スペース的に余裕のない小さな過給機に対しても支障なく採用することができる。
【0017】
次に、図2は本発明の実施の他の形態を示すもので、タービンハウジング1の熱変形の影響がタービンシュラウド9側へ直接作用しないようにしたものである。すなわち、図1に示したものと同様な構成において、上記タービンシュラウド9を、タービンハウジング1に対し軸方向から嵌合させる構造として、該タービンシュラウド9の内周側のガス排出流路部9aを、タービンハウジング1の外側面部のカバー12に止めねじ26により一体的に取り付け、且つ上記タービンシュラウド9とタービンハウジング1の軸方向嵌合部に、ピストンリング形状のシールリング27を介在させたものである。
【0018】
図2の実施の形態の場合には、タービンシュラウド9とタービンハウジング1とは縁が切られていることから、タービンハウジング1に熱変形が発生しても、その影響がタービンシュラウド9に直接作用することがなくなる。したがって、タービンシュラウド9からノズルベーン16やクリアランスコントロールプレート21に対しても熱変形の影響が作用しなくなるので、上記間隙Sの変化も少なくなり、間隙Sのガスシール性能をより安定化させることができる。
【0019】
一方、タービンシュラウド9とタービンハウジング1との軸方向の嵌合部には隙間が生じることになって、ガスがリークしようとするが、ピストンリング形状のシールリング27の存在によりガスリークが防止される。したがって、ガス中のすす等の異物がトルク伝達室18に侵入するおそれはなく、異物の堆積により伝動機構19が作動不良を起してしまう等の心配もない。
【0020】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明の可変容量型過給機のガスシール装置によれば、タービンハウジングの反軸受ハウジング側内周部に、環状のタービンシュラウドを配置して、該タービンシュラウドの外周部とタービンハウジングの軸受ハウジング側内周部との軸方向対向面部間に環状流路を形成し、該環状流路に、上記タービンシュラウドの外周部を貫通させた操作軸の回転操作により開閉角度調整可能とした多数のノズルベーンを配列し、又、上記タービンハウジングの環状流路形成面部に環状の凹部を形成し、該凹部内に配置したリング状のクリアランスコントロールプレートを、タービンシュラウドに支持させた取付軸に固定して、該クリアランスコントロールプレートの前面とノズルベーンとの間のクリアランスを一定に保持させるようにしてある可変容量型過給機における上記クリアランスコントロールプレートの背面側とタービンハウジングの軸受ハウジング側内周面との間の隙間に、外周縁部を外側へ開くように折り曲げて片側ビード形状とした2枚の厚みの薄いガスケットを、互いの外周縁部が離反する向きとなるように重合接着して、外周縁部が上記取付軸の位置となるようにして配置し、上記隙間を通ってリークしようとするガスの圧力が両ガスケットの対向する外周縁部を押し広げるように作用して一方のガスケットの外周縁部をクリアランスコントロールプレートの背面に、又、他方のガスケットの外周縁部をタービンハウジングの凹部壁面にそれぞれ押接させるようにしてシールさせるようにした構成としてあるので、タービンハウジングが熱変形を起しても、ガスケットは弾性変形により追従することができ、且つガス圧が両ガスケットの外周縁部を押し広げるよう作用することから、安定したシール性能を発揮することができ、しかもガスケットには厚みの薄いものを使用できることから、小型の過給機に支障なく採用でき、又、タービンシュラウドを、タービンハウジングに対し軸方向から嵌合させる構造としてタービンハウジングとの縁を切るようにして、該タービンシュラウドのガス排出流路部をタービンハウジングの外側面部のカバーに取り付け、且つ上記タービンシュラウドとタービンハウジングの軸方向嵌合部に、ピストンリング形状のシールリングを介在させて、該軸方向嵌合部に生じる隙間のガスリークを防止するようにした構成とすることにより、タービンハウジングの熱変形の影響をタービンシュラウドに直接作用させることがなくて有利であり、更に、タービンシュラウドとタービンハウジングとの嵌合部からのガスリークをシールリングで抑えることができる、という優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可変容量型過給機のガスシール装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は全体の概要図、(ロ)はガスケットの拡大図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示す概要図である。
【図3】従来の可変容量型過給機の一例を示す概要図である。
【図4】従来の可変容量型過給機の他の例を示す部分図である。
【符号の説明】
1 タービンハウジング
3 軸受ハウジング
9 タービンシュラウド
10 環状流路
12 カバー
16 ノズルベーン
17 操作軸
20 凹部
21 クリアランスコントロールプレート
22 取付軸
25 ガスケット
25a 外周縁部
27 シールリング
C クリアランス
S 隙間
Claims (2)
- タービンハウジングの反軸受ハウジング側内周部に、環状のタービンシュラウドを配置して、該タービンシュラウドの外周部とタービンハウジングの軸受ハウジング側内周部との軸方向対向面部間に環状流路を形成し、該環状流路に、上記タービンシュラウドの外周部を貫通させた操作軸の回転操作により開閉角度調整可能とした多数のノズルベーンを配列し、又、上記タービンハウジングの環状流路形成面部に環状の凹部を形成し、該凹部内に配置したリング状のクリアランスコントロールプレートを、タービンシュラウドに支持させた取付軸に固定して、該クリアランスコントロールプレートの前面とノズルベーンとの間のクリアランスを一定に保持させるようにしてある可変容量型過給機における上記クリアランスコントロールプレートの背面側とタービンハウジングの軸受ハウジング側内周面との間の隙間に、外周縁部を外側へ開くように折り曲げて片側ビード形状とした2枚の厚みの薄いガスケットを、互いの外周縁部が離反する向きとなるように重合接着して、外周縁部が上記取付軸の位置となるようにして配置し、上記隙間を通ってリークしようとするガスの圧力が両ガスケットの対向する外周縁部を押し広げるように作用して一方のガスケットの外周縁部をクリアランスコントロールプレートの背面に、又、他方のガスケットの外周縁部をタービンハウジングの凹部壁面にそれぞれ押接させるようにしてシールさせるようにした構成を有することを特徴とする可変容量型過給機のガスシール装置。
- タービンシュラウドを、タービンハウジングに対し軸方向から嵌合させる構造としてタービンハウジングとの縁を切るようにして、該タービンシュラウドのガス排出流路部をタービンハウジングの外側面部のカバーに取り付け、且つ上記タービンシュラウドとタービンハウジングの軸方向嵌合部に、ピストンリング形状のシールリングを介在させて、該軸方向嵌合部に生じる隙間のガスリークを防止するようにした請求項1記載の可変容量型過給機のガスシール装置。
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