JPH0585915A - フツ素徐放性歯科用組成物 - Google Patents

フツ素徐放性歯科用組成物

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JPH0585915A
JPH0585915A JP3273395A JP27339591A JPH0585915A JP H0585915 A JPH0585915 A JP H0585915A JP 3273395 A JP3273395 A JP 3273395A JP 27339591 A JP27339591 A JP 27339591A JP H0585915 A JPH0585915 A JP H0585915A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 短期間で歯質の抗齲蝕性(耐酸性)を発現し
うる歯科用組成物を提供する。 【構成】 酸フルオライド基を有するビニルモノマー単
位を一構成単位とするポリマー、金属フッ化物、少なく
とも1個のオレフィン性2重結合を有する重合性単量体
および重合開始剤を主要構成要素とする歯科用組成物。 【効果】 本組成物は、齲蝕予防を目的とした裂溝封鎖
剤や矯正用接着剤、歯科用コーティング剤(マニキュ
ア)、歯科用セメントなどに好適に用いられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はフッ素を長期にわたり徐
放し、フッ素による歯質強化を目的とした歯科用組成物
に関する。
【0002】
【従来の技術】フッ素を歯質に作用させて歯質を強化
し、う蝕を予防しようという試みが数多く行われてい
る。例えば水道水へのフッ素化合物の添加や、歯面への
フッ素化合物の塗布、歯磨剤へのフッ素化合物の添加、
コンポジットレジンや歯科用セメント等の歯科材料への
フッ素化合物の配合等が挙げられる。
【0003】これらの中で歯科材料へのフッ素化合物の
配合の試みとしてフッ化ナトリウム等の金属フッ化物を
配合する試み(特開平2−258602)や、アクリル
酸またはメタクリル酸の酸フルオライド成分を有したポ
リマーを配合する試み(特開昭57−88106,特開
昭62−12706)がある。これらは一長一短があり
前者ではフッ素放出量は多いものの、短期間で多量のフ
ッ素が溶出してしまい、歯質の主成分であるヒドロキシ
アパタイトの多くは抗う蝕性(耐酸性)のあまり高くな
いCaF↓2 となり、しかも材料自体の機械的強度も低
下する等の欠点がある。後者では長期にわたり少量のフ
ッ素が徐々に放出されるため歯質は抗う蝕性(耐酸性)
の高いフルオロアパタイトに転化するもののフッ素徐放
量が低いため歯質が十分な抗う蝕性を獲得するまでに長
時間を要する。そのため材料が短期間で歯質から脱落し
たり、材料と歯質との接着が不十分な場合には歯質が強
化される前にう蝕が発生(再発)するといった問題があ
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは鋭意検討
を行った結果、金属フッ化物と酸フルオライド基を有し
たポリマーを同時に配合した組成物が短期間(1〜2週
間)に歯質を強化して抗う蝕性を発現できることを見い
だし、本発明に至った。すなわち本発明が解決しようと
する課題は短期間で歯質の抗う蝕性(耐酸性)を発現し
うる歯科用組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題は酸フルオライ
ド基を有するビニルモノマー単位を一構成単位とするポ
リマー、金属フッ化物、少なくとも1個のオレフィン性
2重結合を有する重合性単量体および重合開始剤を主要
構成要素とする歯科用組成物により解決される。
【0006】本発明において、酸フルオライド基を有す
るビニルモノマー単位を一構成単位とするポリマーが用
いられるが、かかるポリマーとしては特開昭57−88
106号に開示される(メタ)アクリル酸フルオライド
【0007】
【化1】
【0008】(式中、RはHまたはCH↓3 を表す)の
ホモポリマーおよび該(メタ)アクリル酸フルオライド
と(メタ)アクリル酸アルキル
【0009】
【化2】
【0010】(式中、RはHまたはCH↓3 を、R’は
C↓1 〜C↓8 のアルキル基を表す。メチル(メタ)ア
クリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メ
タ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等)
とのコポリマーを包含する。したがって、上記のポリマ
ーは繰り返し単位としてホモポリマーの場合は
【0011】
【化3】
【0012】またコポリマーの場合には
【0013】
【化4】
【0014】(RおよびR’は上記に同じ)を有する。
【0015】本発明の組成物において、上記ポリマーは
組成物中0.5〜50重量%(さらに好ましくは、2〜
20重量%)含有されることが好ましい。50重量%以
上含有させると、組成物の粘度が高くなり歯面への適用
性の点で不利となる。
【0016】本発明の組成物に含まれる金属フッ化物
は、常温常圧において固体であり、水に溶解してフッ素
イオンを生成するものであればいずれでもよい。具体例
としてLiF,NaF,KF,SnF↓2 ,ZnF↓2
,BaF↓2 ,AlF↓3 ,AgF,SbF↓3 ,M
nF↓2 ,CoF↓2 ,TlF,CdF↓2 ,BeF,
BiF↓3 ,CsF,フッ化スズ酸塩Mx[SnF↓4
],Mx[SnF↓6 ],フルオロケイ酸塩Mx[S
iF↓6 ](Mは1価または2価の金属,X=1または
2)、フルオロホウ酸塩M[BF↓4 ](Mは1価の金
属)等が例示される。この中でも水への溶解性や安全性
(毒性)の点でNaFが好ましく用いられる。金属フッ
化物は組成物中0.1〜20重量%の範囲で加えられる
が、耐酸性の高いフルオロアパタイト生成の上で1〜1
0重量%加えるのが好ましい。
【0017】本発明に用いられる重合性単量体としては
α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、ウレタン
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン
酸、マレイン酸、イタコン酸等の1価または2価アルコ
ールとのエステル類さらに、N−イソブチルアクリルア
ミドのような(メタ)アクリルアミド類、酢酸ビニルな
どのようなカルボン酸のビニルエステル類、ブチルビニ
ルエーテルのようなビニルエーテル類、N−ビニルピロ
リドンのようなモノ−N−ビニル化合物、スチレン誘導
体などが挙げられるが特に下記のような一官能性、多官
能性の(メタ)アクリル酸エステル類およびウレタン
(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0018】(i)一官能性 (メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−も
しくはi−プロピル、(メタ)アクリル酸n−もしくは
i−もしくはt−ブチル、2−ヒドロキシエチルメタア
クリレート(HEMA)など。
【0019】(ii)二官能性 一般式
【0020】
【化5】
【0021】[ここでnは3〜20の整数、Rは水素ま
たはメチル基を表す。]で示される化合物。例えばプロ
パンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オ
クタンジオール、デカンジオール、エイコサンジオール
などのジ(メタ)アクリレート類。
【0022】一般式が
【0023】
【化6】
【0024】[ここでnは1〜14の整数、Rは水素ま
たはメチル基を表す。]で示される化合物。例えば、エ
チレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレ
ングリコール、テトラエチレングリコール、ドデカエチ
レングリコール、テトラデカエチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラデ
カプロピレングリコールなどのジ(メタ)アクリレート
類の他、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキ
シ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン
(Bis−GMA)、ビスフェノールAジメタクリレー
ト、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
2,2'−ジ(4−メタクリロキシポリエトキシフェニ
ル)プロパン(1分子中にエトキシ基2〜10)、1,
2−ビス(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポ
キシ)ブタンなど。
【0025】(iii)三官能性以上 トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペ
ンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなど。
【0026】(iv)ウレタン(メタ)アクリレート系 ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート単量体2
モルとジイソシアネート1モルの反応生成物、両末端N
COのウレタンプレポリマーとヒドロキシル基を有する
(メタ)アクリレート単量体の反応生成物などが挙げら
れ、かかる反応生成物の構造は、下記に示すものが挙げ
られる。
【0027】
【化7】
【0028】[ここでR↓1 は水素またはメチル基、R
↓2 はアルキレン基、R↓3 は有機残基である。]
【0029】具体的なものとして特公昭51−3696
0号に記載されている2,2,4−トリメチルヘキサメ
チレンジイソシアネートとメタクリル酸オキシプロピル
との反応生成物、特公昭55−33687号に記載され
ている両末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと
メタクリル酸−2−オキシエチルとの反応生成物が挙げ
られる。また、特開昭56−152408号に開示され
ているような四官能性のモノマーも用いられる。
【0030】これらのモノマーのなかから適宜選択され
て用いられるが、本発明においては酸フルオライド基を
有するビニルモノマーから構成されるポリマーが溶解状
態で歯面に適用されるのが好ましいため、上記のポリマ
ーが(メタ)アクリル系のものを用いるのがポリマーの
溶解性の点で好ましい。これら重合性単量体は組成物中
10〜99.3重量%の範囲で加えられる。
【0031】本発明に用いられる重合開始剤としては、
ベンゾイルパーオキサイド−芳香族第3級アミン系、ク
メンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物、トリブチ
ルポラン、芳香族スルフィン酸(またはその塩)−芳香
族第2級または第3級アミン−アシルパーオキサイド系
などの化学重合開始剤、更にカンファーキノン、カンフ
ァーキノン−第3級アミン系、カンファーキノン−過酸
化物、カンファーキノン−アルデヒド系、カンファーキ
ノン−メルカプタン系、アシルフォスフィンオキサイド
などの光重合開始剤を挙げることができる。また、紫外
線照射による光重合を行う場合にはベンゾインメチルエ
ーテル、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、2
−メチルチオキサントン、ジアセチル、ベンジル、アゾ
ビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスル
フイドなどが好適である。
【0032】これら重合開始剤は組成物中0.1〜10
重量%の範囲で加えられるが1〜5重量%加えられるの
が好ましい。
【0033】本発明の組成物には上述のポリマー、金属
フッ化物、重合性単量体および重合開始剤の他に目的に
応じて各種の充填剤が加えられてもよい。この充填剤は
有機物であっても無機物であってもよく、有機物として
はポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリ
ル酸エチルなどの他に、後述の無機充填剤をポリマーで
被覆した材料であってもよい。また無機物としては、二
酸化ケイ素(石英、ガラス、高分散性シリカ等)、アル
ミナ、各種ガラス類、セラミックス類、珪藻土、カオリ
ン、モンモリロナイト等の粘土鉱物、活性白土、合成ゼ
オライト、マイカ、弗化カルシウム、リン酸カルシウ
ム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン
などよりなる粉末状、繊維状、薄片状のものでありその
最大粒子径が100μ〜500μより小さいものが好ま
しい。さらに、無機充填剤を使用する場合には表面処理
して用いられることが望ましい。表面処理剤としてはγ
−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニル
トリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル
トリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランおよ
びビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン等のシラン化
合物が用いられ、シラン化は通常の方法により行われ
る。これらのフィラーはモノマーに対し0.1〜7倍重
量使用するのが好ましい。
【0034】本発明の組成物には所望により重合禁止
剤、着色剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
また本発明の組成物は必要に応じて2分割包装型であっ
てもよい。
【0035】
【実施例】以下実施例によりさらに詳しく本発明の内容
を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるも
のではない。
【0036】(実施例1)下記に示す組成物Aを人抜去
小臼歯頬側面エナメル質に塗布し、ライテルII(可視光
照射器、ウシオ電機)により30秒照射して硬化させ
た。これをリン酸バッファー(pH7、37℃)中に2
週間浸漬したのち組成物Aの硬化物を除去し、面積を規
定するため3mmφの穴の開いたテープを貼付した。6N
塩酸により面積の規定されたエナメル質を脱灰(溶解)
し、脱灰液のフッ素イオン濃度及びカルシウムイオン濃
度を各イオン電極(オリオンリサーチ社)により定量
し、エナメル質中に取り込まれたフッ素量を算出した。
結果を図1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】(実施例2)組成物Aを人抜去小臼歯頬側
面エナメル質に塗布し、ライテルIIにて30秒光照射し
て硬化させた。これをリン酸バッファー(pH7、37
℃)中に2週間浸漬したのち組成物Aの硬化物を除去
し、さらに1規定NaOH水溶液に1日浸漬、攪拌し
た。その後実施例1と同様に6N塩酸によりエナメル質
を脱灰してフッ素量を算出した。Brudevoldら
によると1規定NaOH水溶液で1日処理することでフ
ルオロアパタイト以外のフッ素はエナメル質から溶出す
ることが確かめられており[F.Brudevold
etal,Archs.OralBiol.,20,3
33(1975)]、この方法によりエナメル質中のフ
ルオロアパタイトの量を算出した。結果を図2に示す。
図1に比べフッ素量の低下は少なく大部分フルオロアパ
タイトとしてフッ素が取り込まれていることがわかっ
た。
【0039】(実施例3)組成物Aを人抜去小臼歯頬側
面エナメル質に塗布し、ライテルIIにて30秒光照射し
て硬化させた。これをリン酸バッファー(pH7、37
℃)中に2週間浸漬したのち組成物Aの硬化物を除去
し、一定面積のエナメル質が露出するようにするため、
3mmφのウインドウを残して歯質表面を歯科用シーラン
トで被覆した。これを歯垢中のpHと同等の酢酸バッフ
ァー(pH4.6,37℃)に浸漬し、溶出したカルシ
ウムイオンをカルシウムイオン電極により定量した。結
果を図3に示す。
【0040】比較例、未処理エナメル質に較べカルシウ
ムイオンの溶出はかなり少なく、エナメル質の耐酸性が
向上していることが判った。
【0041】(実施例4)組成物Aを20mmφ×1.0
mmの円板状に硬化したのちこれを10mlのリン酸バッフ
ァー(pH7,37℃)中に浸漬し、溶出したフッ素イ
オンをフッ素イオン電極により定量した。結果を図4に
示す。
【0042】(実施例5〜7)組成物AにおけるNaF
の代わりに表1に示す金属フッ化物を用いて実施例2と
同様の試験を行った。結果を下表に示す。
【0043】
【表2】
【0044】いずれもフルオロアパタイトとして高いフ
ッ素取り込み量が認められた。
【0045】(比較例1、2)組成物Aの代わりに下記
に示す組成物B、組成物Cをそれぞれ用いて実施例1と
同様の試験を行った。結果を図1に示す。
【0046】
【表3】
【0047】(比較例3、4)組成物Aの代わりに組成
物B、組成物Cをそれぞれ用いて実施例2と同様の試験
を行った。結果を図2に示す。
【0048】(比較例5、6)組成物Aの代わりに組成
物B、組成物Cをそれぞれ用いて実施例3と同様の試験
を行った。結果を図3に示す。
【0049】(比較例7、8)組成物Aの代わりに組成
物B、組成物Cをそれぞれ用いて実施例4と同様の試験
を行った。結果を図4に示す。
【0050】(比較例9)組成物Aを作用させずに未処
理のままの抜去小臼歯を用いて、実施例2と同様にアル
カリ処理を行ったのち塩酸により脱灰しエナメル質中の
フッ素を定量した結果を図2に示す。
【0051】(比較例10)組成物Aを作用させずに未
処理のままの抜去小臼歯を用いて、実施例3と同様の実
験を行った。結果を図3に示す。
【0052】
【発明の効果】以上の結果からフッ素化合物として酸フ
ルオライド基含有のポリマー(40PMF)のみを用い
た場合にはフッ素徐放量が少ないためほとんどのフッ素
はフルオロアパタイトとして歯質に取り込まれるものの
短期間(2週間)では十分な耐酸性を獲得するまでには
至らない。一方フッ素化合物として金属フッ化物(Na
F)のみを用いた場合には初期のフッ素放出量が多いた
め短期間で多量のフッ素が歯質に取り込まれるものの耐
酸性の高いフルオロアパタイトとして取り込まれる量は
少なく歯質の耐酸性の向上は低い。これに対し酸フルオ
ライド基含有ポリマーと金属フッ化物を併用した場合に
は歯質へのフルオロアパタイトの取り込みも多く、耐酸
性が向上したことが判る。以上のような結果から本発明
の組成物はう蝕予防を目的とした裂溝封鎖材や、矯正用
接着材、歯科用コーティング材(マニキュア)、歯科用
セメント等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エナメル質中のフッ素濃度を示す図である。
【図2】エナメル質中にフルオロアパタイトとして取り
込まれたフッ素濃度を示す図である。
【図3】エナメル質から酢酸バッファー(pH4.6,
37℃)中へ溶出するカルシウムイオンの量を示す図で
ある。
【図4】円盤状硬化物からリン酸バッファー(pH7、
37℃)中へ溶出するフッ素イオンの量を示す図であ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸フルオライド基を有するビニルモノマ
    ー単位を一構成単位とするポリマー、金属フッ化物、少
    なくとも1個のオレフィン性2重結合を有する重合性単
    量体および重合開始剤を主要構成要素とする歯科用組成
    物。
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