JPH058362Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は無段変速機等のＶ溝プーリ間に掛け渡
して用いる伝動ベルトに関するものである。

（従来の技術） この種伝動ベルトは、多数の平行ピンを隣り合
うもの同士リンクプレートにより相互に連結して
なる無終端リンク連結体を具え、これに長手方向
へ順次Ｖ形ブロツクを嵌合し、これらＶ形ブロツ
クをプーリＶ溝に摩擦係合させて動力伝達を行う
よう構成するのが普通である。

実用に当たつては、この伝動ベルトをＶ形ブロ
ツクがプーリＶ溝側壁と摩擦係合するようＶ溝プ
ーリ間に掛け渡す。駆動側Ｖ溝プーリの動力はそ
のＶ溝側壁と摩擦係合するＶ形ブロツクを経て無
終端リンク連結体に伝わり、その後被動側Ｖ溝プ
ーリのＶ溝側壁と摩擦係合するＶ形ブロツクを経
て被動側Ｖ溝プーリに至り、両プーリ間で動力の
受渡しが可能である。

ところで、このようなベルトの実用中プーリＶ
溝内に巻込まれている伝動ベルトは、リンクプレ
ートが直線状態を保つため多角形巻付け状態とな
り、振動を発生する。この振動を少なくするため
には、リンクプレートの全長を短くしてピン配列
ピツチを小さくすることが考えられるが、強度上
及び製作上の都合からこれにも限界があり、抜本
策とはなり得ない。

そこで本願出願人は先に特願昭61−100394号に
より、前記の無終端リンク連結体を複数本、相隣
れるもの同士が相互にピン配列ピツチの半分だけ
位相ずれするよう並設し、これら無終端リンク連
結体に共通なＶ形ブロツクを長手方向へ順次嵌合
して設け、これによりピン配列ピツチを実質上半
減させた伝動ベルトを提案済みである。

しかしこの伝動ベルトは、隣り合うリング連結
体が長手方向に相対位置ずれすると、両者の位相
ずれがピン配列ピツチの半分でなくなり、伝動ベ
ルトのピン配列ピツチを実質上半減させるという
上記の効果を達成し得ないばかりか、伝動ベルト
のピン配列ピツチが一定でなくなつて前記振動の
問題を一層大きくする懸念もある。加えてこの場
合、本来負荷を受けないリンクプレートにＶ形ブ
ロツクからの力が加わり、当該リンクプレートが
Ｖ形ブロツクとの接触点において早期摩耗する問
題も新たに生ずる。

そこで本願出願人は先に特願昭和61−171181号
に、ピンの端面中心にロツドを突設し、このロツ
ドを別の隣接する無終端リンク連結体のリンクプ
レートに貫入させることにより、隣り合う無終端
リンク連結体が長手方向に相対位置ずれするのを
防止する技術を開示している。

（考案が解決しようとする問題点） しかし、第７図に示す如くピンａ及びリンクプ
レートｂよりなる無終端リンク連接体と、ピンｃ
及びリンクプレートｄよりなる無終端リンク連結
体と、これら無終端リンク連接体に共通なＶ形ブ
ロツクｅとで構成した伝動ベルトが半径Ｒの円弧
状にＶ溝プーリへ巻込まれている場合につき説明
すると、前記のロツドを突設したピンｂ，ｄの中
心は、該ロツドを貫入したりリンクプレートｃ，
ａに対しｘだけ径方向に変位する。ちなみに、伝
動ベルトのＶ溝プーリへ巻込まれていない直線部
分において上記の変位ｘは０である。

この事実に鑑み前記先願の対策では、ロツドと
貫入孔との間に変位Ｘ分のクリアランスが不可欠
である。このクリアランスは隣り合う無終端リン
ク連結体の長手方向相対位置決めを不確実にし
て、クリアランス分だけこれらリンク連結体が長
手方向相対位置ずれするのを禁じ得ない。従つ
て、この相対位置ずれに関する前記の問題を完全
には解消し得ない。

（問題点を解決するための手段） 本考案は伝動ベルトのＶ溝プーリ巻込状態で、
隣り合う無終端リンク連結体のリンクプレート間
に第７図の如く交差し合う箇所ｆが存在し、この
交差箇所において隣り合う無終端リンク連結体の
リンクプレートが前記の相対変位を生じないとの
観点から、 隣接する無終端リンク連結体の隣り合つたリン
クプレート間を、プーリＶ溝への巻込状態で交差
し合う箇所において相対傾動可能に係合させたも
のである。

（作用） Ｖ溝プーリ間に掛け渡しての伝動ベルトの実用
中、駆動側プーリの動力はそのＶ溝に摩擦係合し
たＶ形ブロツクから全ての無終端リンク連結体に
至り、その後被動側プーリのＶ溝に摩擦係合した
Ｖ形ブロツクを経て当該プーリに達し、両プーリ
間で動力の受渡しを可能にする。

ところで、相隣れる無終端リンク連接体がピン
配列ピツチの半分だけ位相ずれしているため、伝
動ベルトの実質的なピン配列ピツチが半減するこ
ととなり、伝動ベルトのプーリ巻付き形状を一層
円に近付けることができて振動を抑制し得る。

そして、隣接する無終端リンク連結体の隣り合
つたリンクプレート間が係合されているため、こ
れら無終端リンク連結体の長手方向相対位置ずれ
を生ずることはなく、これらの間の位相ずれをピ
ン配列ピツチの半分に保つことができ、上記の振
動抑制効果を損なわない。

又上記の係合を、プーリＶ溝への伝動ベルト巻
込状態で交差し合うリンクプレートの箇所におい
て行わせ、更にこの係合がリンクプレート間の相
対傾動を許容するものであるため、当該係合部に
クリアランスを設定しなくても、伝動ベルトをプ
ーリＶ溝に巻込ませることができる。従つて、こ
のクリアランスにともなう無終端リンク連結体の
長手方向相対位置ずれをも阻止することができ、
終端リンク連結体間の位相ずれをピン配列ピツチ
の半分に保つという前記の作用を完璧に奏し得る
こととなる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づき詳細に説
明する。

第１図乃至第３図は本考案伝動ベルトの一実施
例で、図中１，２は複数本（この例では２本）の
無終端リンク連結体を示す。これら無終端リンク
連結体１，２は夫々、ピン３，４を等ピツチに配
して平行に具え、これらピンを隣り合うもの同士
リンクプレート５，６により相互に連結して構成
する。かかる同様な２本の無終端リンク連結体
１，２を第１図に明示する如くピン配列ピツチの
半分だけ位相がずれるよう並置し、これらリンク
連結体に共通なＶ形ブロツク７を順次長手方向に
嵌合する。

リンクプレート５，６は基本的には板材を打抜
いて造つた単純な平板状とするが、両リンク連結
体の接し合うリンクプレートについては特に、上
記の打抜き時第４図ａ，ｂ及び第５図ａ，ｂの如
く透孔５ａ及び突起６ａを形成する。透孔５ａは
第４図ａ，ｂに示すように、リンクプレート５の
ピン挿通孔５ｂ間において第７図中ｆ点に相当す
る２箇所に夫々配置し、突起６ａは第５図ａ，ｂ
に示すように、リンクプレート６のピン挿通孔６
ｂ間において第７図中ｆ点に相当する２箇所のベ
ルト走行方向進み側又はベルト走行方向遅れ側の
一方のみ配置する。従つて、両リンク連結体１，
２を相互に並置する時第１図及び第２図の如く突
起６ａが対応する透孔５ａ内に侵入して、隣り合
つたリンクプレート５，６間を接触面内で相対傾
動可能に係合させる。

実用に当たつては第３図に示す如く、Ｖ形ブロ
ツク７がプーリＶ溝８の両側壁に順次摩擦係合す
るようＶ溝プーリに巻き掛けし、これらＶ溝プー
リ間で伝動ベルトは動力の受渡しを行うことがで
きる。この動力伝達中も、透孔５ａ及びこれに貫
入する突起６ａは、これらを設けたリンクプレー
ト５，６間、従つてリンク連結体１，２間の長手
方向相対位置ずれを阻止し、リンク連結体１，２
の当初の位相ずれを保つことができる。この位相
ずれが前述したようにピン３，４の配列ピツチの
半分であることにより、伝動ベルトの実質的なピ
ン配列ピツチが確実に半減され、伝動ベルトのプ
ーリ巻付き形状を一層円に近付けることができて
振動を抑制し得る。

又透孔５ａ及び突起６ａをプーリＶ溝８への伝
動ベルト巻込状態で交差し合うリンクプレート
５，６の箇所（第７図中ｆ点）に配置したことに
より、更に透孔５ａ及び突起６ａの箇所におい
て、これらリンクプレート５，６を相対傾動可能
としたことにより、透孔５ａ及び突起６ａ間にク
リアランスを設定しなくても第６図に示す如く半
径R_Sの伝動ベルト巻込状態が可能となる。従つ
て、このクリアランスにともなう無終端リンク連
結体の長手方向相対位置ずれをも阻止することが
でき、リンク連結体間の位相ずれをピン配列ピツ
チの半分に保つという上記の作用を完璧に奏し得
る。なお、伝動ベルトのプーリ巻込状態で交差し
合うリンクプレート５，６の箇所は、巻掛け円弧
状が第６図に示す如くR_SからR_Lに増大する場合
も、逆に減少する場合も不変であり、伝動ベルト
の巻掛け円弧径が変化する無段変速機においても
上記の作用を得ることができる。

（考案の効果） かくして本考案伝動ベルトは上述の如く、隣接
する無終端リンク連結体１，２の隣り合つたリン
クプレート５，６間を、プーリＶ溝への巻込状態
で交差し合う箇所において相対傾動可能に係合５
ａ，６ａさせたから、この係合部にクリアランス
を設定しなくてもベルトをプーリに巻込ませるこ
とができ、当該クリアランスにともなうリンク連
結体１，２の長手方向相対位置ずれを生ずること
がない。このため、リンク連結体１，２間の位相
ずれを当初設定したピン配列ピツチの半分に正確
に保ことができ、当該位相ずれによる振動抑制効
果を完璧に奏し得る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案伝動ベルトの一実施例を示す一
部横断平面図、第２図は第１図の−断面図、
第３図は第２図の−断面図、第４図及び第５
図は夫々第１図乃至第３図の伝動ベルトにおける
両リンク連結体の隣り合つたリンクプレートを示
し、第４図ａ及び第５図ａは夫々の側面図、第４
図ｂ及び第５図ｂは夫々の一部切欠平面図、第６
図は第１図乃至第３図に示す伝動ベルトのプーリ
巻込状態を２種の巻付半径で示す略線図、第７図
は先願の伝動ベルトに係わる問題点を示す巻込状
態説明図である。 １，２……無終端リンク連結体、３，４……ピ
ン、５，６……リンクプレート、５ａ……透孔、
６ａ……突起、７……Ｖ形ブロツク。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 多数の平行ピンを隣り合うもの同士リンクプレ
   ートにより相互に連結してなる無終端リンク連結
   体を複数本、相隣れるもの同士が相互にピン配列
   ピツチの半分だけ位相ずれするように並置し、こ
   れら無終端リンク連結体に共通なＶ形ブロツクを
   長手方向へ順次嵌合して設け、これらＶ形ブロツ
   クをプーリＶ溝に摩擦係合させて動力伝達を行う
   ようにした伝動ベルトにおいて、 隣接する無終端リンク連結体の隣り合つたリン
   クプレート間を、前記プーリＶ溝への巻込状態で
   交差し合う箇所において相対傾動可能に係合させ
   たことを特徴とする伝動ベルト。