JPH058332Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は内奥にアンダーカツトと称される拡
径部を有する拡径孔に装着される埋め込みねじ構
造に関する。

（従来技術） 被固定面、例えば、固化したコンクリート面
（以下コンクリート面という）に対し、アンカー
ボルトを植設して他の物品を取着することがよく
ある。

ここで、コンクリート面に植設されたアンカー
ボルトの引き抜き強度を向上するため、コンクリ
ートに対して内奥に拡径部を有する拡径孔を穿設
する穿孔装置が本出願人によつて開発され、ま
た、この種の拡径孔に植設するのに好適なアンカ
ーボルトも各種提案されている。

第５図は拡径孔に植設された従来のアンカーボ
ルトの正面図である。

第５図において、１はボルト本体で、該ボルト
本体１の下端部には下端にゆくに従つて拡がつた
テーパ状の拡径部分（下端拡径部ともいう）１ａ
を有し、その上端側に被固定物を固定するための
螺設部１ｂを有する。２は上記ボルト本体１側周
に外装されるスリーブで、該スリーブ２は、下端
に開放した軸方向のスリツト２ａで隔設形成され
たスカート片２ｃを有し、上記ボルト本体の拡径
部分１ａと当接する下端部２Ａと、その上方に位
置し上記ボルト本体１の螺設部１ｂの外周壁に略
密着して外装される円筒状の上端部２Ｂとからな
る。３は上記ボルト本体１の螺設部１ｂに螺合し
固着物（アンカーボルトで固着する対象物をい
う）を固着するためのナツトである。４はアンカ
ーボルトが植設される孔で、５は座金あるいは当
板である。このように構成されるアンカーボルト
は以下のように作用する。

ボルト本体１上方でスリーブ２の下端部２Ａを
セツトし、次にその上からスリーブの円筒状の上
端部２Ｂをセツトし、このセツトした状態で植設
すべき孔４にアンカーボルトを入れて、ボルト本
体１上部に座金あるいは当板５を介してナツト３
を螺合させる。この状態において、スリーブ２下
端部のスカート片２ｃは未だ拡径されていない。
そして、上記ナツト３をさらに締めると、スリー
ブ２はボルト本体１上を下方に移動し、これに伴
い該スリーブ下端部２Ａのスカート片２ｃは上記
ボルト本体１の下端拡径部１ａのテーパ面に沿つ
て拡径する。ナツトが所定量締められると、スリ
ーブ２のスカート片２ｃはボルト本体１によつて
上記孔４の内周壁に強固に押圧され、この結果ボ
ルト本体１は孔４に係止されることとなる。

（考案が解決しようとする課題） しかしながら、付近の路面を通過する車両より
の振動あるいは地震により、アンカーボルトの周
囲のコンクリートにクラツクが生じた場合、上記
構造では、ボルト本体の下端拡径部の外周壁とス
リーブの下端部の内周壁との間に隙間が発生する
ため、アンカーボルトの固定は不安定となる。

この考案は上述の点に鑑みてなされたものであ
り、作業性がよく、安定性が高く、周囲のコンク
リートにクラツクが生じた場合でも、確実に構造
物を固定できる埋め込みねじ構造を提供すること
を目的とする。

（課題を解決するための手段） 上記の目的を達成するために、本考案に係る埋
め込みねじ構造は、 両端部にねじ孔を設け、且つ外端面にドライバ
ー係合溝を形成したスリーブ本体と、一方の端面
より切り込んで他方の端部に薄肉連結部を残して
設けたスリツトにより複数個の展開片を形設し且
つ内側面がテーパ面に有すると共に下端面内側に
突起部を有する第１展開用スリーブと、該第１展
開用スリーブに内接して、一方の端面より切り込
んで他方の端部に薄肉連結部を残して設けたスリ
ツトにより複数個の展開片を形設し且つ外側面が
テーパ状を呈する第２展開用スリーブと、前記ス
リーブ本体と第２展開用スリーブの間には弾性体
を介装し、前記第１展開用スリーブおよび第２展
開用スリーブに挿通してスリーブ本体のねじ部に
螺合させ、第１展開用スリーブおよび第２展開用
スリーブの展開片を摺接展開させる張り出し顎を
有する張り出し顎付ボルトからなることを特徴と
する。

（作用） 上記のように構成される本考案によると、コン
クリート面に穿設した拡径孔において、該拡径孔
部にまず張り出し顎付ボルトを挿入し、次に第１
展開用スリーブを上記張り出し顎付ボルトに軽く
載せ、打ち込み棒を使つて孔外部からの槌打によ
つて第１展開用スリーブを展開させ、次いで第２
展開用スリーブを上記第１展開用スリーブ上に軽
く載せ、打ち込み棒を使つて孔外部からの槌打に
よつて第２展開用スリーブを張り出し顎付ボルト
のテーパ面と第１展開用スリーブとの間で展開さ
せ、この後、孔内に弾性体とスリーブ本体を挿入
し、ドライバーを使つてスリーブ本体を張り出し
顎付ボルトにねじ込んで固定し、該スリーブ本体
の外端側の雌ねじを埋め込みねじとして構造物取
付け等に利用する。

（実施例） 以下に本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図は本考案の分解斜視図、第２図は本考案
の第１使態様の縦断面図、第３図は本考案の第２
使態様を示す縦断面図である。

第１図、第２図および第３図において、６はス
リーブ本体で、このスリーブ本体６は、中心孔両
端部に雌ねじ７，８を設け、且つ外端面にドライ
バー係合溝９を形成してなり、コンクリートに穿
設された拡径孔Ａに対して、緩挿可能な大きさの
ものである。

１０は皿ばね（弾性体とも言う）でスリーブ本
体６と後述する第２展開用スリーブとの間に介装
される。

１１は外側面がテーパ状を呈する筒状をなす第
２展開用スリーブで、この第２展開用スリーブ１
１はその下端面側から上端面近くまで薄肉連結部
１２を残して切り込んだ６個のスリツト１３によ
り、６個の展開片１４を形成している。

１５は上記第２展開用スリーブ１１に外接し
て、内側面の上端面側から下端面近くまでテーパ
状を呈し、下端面内側に突起部１６を有する第１
展開用スリーブで、この第１展開用スリーブ１５
はその下端面側から上端面近くまで薄肉連結部１
７を残して切り込んだ６個のスリツト１８によ
り、６個の展開片１９を形成している。

２０は上記第１展開用スリーブ１５および第２
展開用スリーブ１１に対し、その下端面側から挿
通してスリーブ本体６に連結される張り出し顎付
ボルトで、スリーブ本体６の内端側雌ねじ７に螺
合するボルト身部２１と、第２展開用スリーブ１
１の展開片１４の下端面が摺接してこれを展開さ
せるテーパ面２２を有する張り出し顎２３からな
る。なお、第２図における拡径孔Ａ表面よりボル
ト身部２１表面までの寸法d₁は拡径部Ｂ表面より
張り出し顎付ボルト２０のテーパ面２２までの寸
法d₂より小さく、第３図におけるそれらの寸法
d₁，d₂は同じである。第２図の第１展開用スリー
ブ１５の展開片１９の突起部１６を有する下端面
側の肉厚d₃および第２展開用スリーブ１１の展開
片１４の肉厚はそれぞれ上記寸法d₁と同等もしく
は小さく、且つ第１展開用スリーブ１５のテーパ
面を有する展開片の部分の肉厚と該テーパ面と相
対応するテーパ面を有する第２展開用スリーブ１
１の展開片の肉厚の合計寸法は上記寸法d₂に等し
い。第３図における第１展開用スリーブ１５の展
開片１９の上記寸法d₃は上記寸法d₁，d₂と等し
く、且つ第１展開用スリーブ１５のテーパ面を有
する展開片の部分の肉厚と該テーパ面と相対応す
るテーパ面を有する第２展開用スリーブ１１の展
開片の肉厚の合計寸法は上記寸法d₁，d₂より大き
い。

次に、この考案の埋め込みねじ構造の施工手順
を第４図を参照しながら説明する。

第４図は第１使態様の施工手順を示している。
第２使態様の施工手順も、基本的には第１使態様
の施工手順と同様であり、第２使態様については
一部異なる点についてのみ説明する。

コンリート面に穿設された拡径部Ｂを有する拡
径孔Ａ内に、まず張り出し顎付ボルト２０を挿入
する。次いで、第１展開用スリーブ１５を拡径部
Ｂにおいて張り出し顎付ボルト２０のテーパ面２
２上に軽く載せる。次に、別に用意した略第１展
開用スリーブ１５と同一径をなす筒状の打ち込み
棒Ｃを孔内に挿入し、該打ち込み棒Ｃ下端面を第
１展開用スリーブ１５上端面に当てて打ち込み棒
Ｃを槌打すると、第１展開用スリーブ１５の各展
開片１９はその下端面側から張り出し顎付ボルト
２０のテーパ面２２上に摺接展開される。（第４
図ａ参照）第２使態様の場合は、上記せるよう
に、第１展開用スリーブ１５の各展開片１９の突
起部１６を有する下端面側の肉厚が、拡径部Ｂ表
面より張り出し顎付ボルト２０のテーパ面２２ま
での寸法に等しいので、第１展開用スリーブ１５
と拡径部Ｂ表面および張り出し顎付ボルト２０の
テーパ面２２との間に間隙は生じない。

次に第２展開用スリーブ１１を拡径孔Ａ内に挿
入する。第２展開用スリーブ１１は第１展開用ス
リーブ１５上に軽く載置されたような状態にあ
る。（第４図ｂ参照）この状態は第２使態様でも
同様であり、なお第１展開用スリーブ１５と拡径
部Ｂ表面および張り出し顎付ボルト２０のテーパ
面２２との間に間隙がない点については上記と同
様である。

次に、上記打ち込み棒Ｃを孔内に挿入し、該打
ち込み棒Ｃ下端面を第２展開用スリーブ１１上端
面に当てて打ち込み棒Ｃを槌打ちすると、第２展
開用スリーブ１１の各展開片１４はその下端面側
から張り出し顎付ボルト２０のテーパ面２２上に
摺接展開され、同時に該第２展開用スリーブ１１
に外接している上記第１展開用スリーブ１５は拡
径部Ｂ内で押し拡げられ、これら第１展開用スリ
ーブ１５と第２展開用スリーブ１１は拡径部Ｂと
張り出し顎付ボルト２０のテーパ面２２との間で
しつかりと圧着固定される。（第４図ｃ参照）第
２使態様の場合は、第２展開用スリーブ１１の上
端面が第１展開用スリーブ１５の上端面とある段
差を有した状態で槌打が終わる。

この後、皿ばね１０を第２展開用スリーブ１１
上端面まで挿入し、次いでスリーブ本体６を孔内
に挿入し、その内端側雌ねじ７と張り出し顎付ボ
ルト２０のボルト身部２１を螺合させ、適宜のド
ライバーを使用してその先端をドライバー係合溝
９に係合させてスリーブ本体６をねじ込むと、つ
いにはスリーブ本体６は皿ばね１０に当接してス
リーブ本体６は強固に拡径孔Ａ内に固定される。
（第４図ｄ参照）第２使態様についても同様の作
業が行われる。相違は、第２展開用スリーブ１１
の上端面が第１展開用スリーブ１５の上端面とあ
る段差を有している点である。

こうして拡径孔Ａ内には埋め込みねじが設けら
れることになり、スリーブ本体６の外端側雌ねじ
８を使用して取付けボルトＤによりコンクリート
面に構造物Ｅを固定したりするのに利用する。
（第４図ｅ参照）第２使態様についても、同様の
作業が行われる。相違は、上記と同様第２展開用
スリーブ１１の上端面が第１展開用スリーブ１５
の上端面とある段差を有している点である。

（効果） 以上説明したように、本考案の埋込みねじ構造
によれば、スリーブ本体と展開用スリーブとを別
構成とし、展開用スリーブにスリツトによつて形
設した複数個の各展開片は展開片基部を連結する
薄肉連結部が湾曲して展開するから、各展開片の
展開に当たつての変形は全くなく、全体が一様に
壁面に圧着固定して埋込みねじとして安定し、し
かも展開用スリーブは第１および第２展開用スリ
ーブの２スリーブにより構成され、スリーブ本体
と第２展開用スリーブとの間には皿ばねが介装さ
れているので、ばね力により常に下方向の力が第
２展開用スリーブに掛かり、本考案のねじ構造が
植設された周囲のコンクリートにクラツクが生じ
た場合においても、第１使態様の場合において
は、第２展開用スリーブならびに該スリーブに外
接している第１展開用スリーブの両スリーブが張
り出し顎付ボルトのテーパ面に沿つて下方に移動
することでより内奥で圧接され、第２使態様の場
合は第２展開用スリーブが下方に移動することに
より第１展開用スリーブを押し拡げることによ
り、クラツクによるボルトのゆるみが防止され
る。

スリーブ本体は上記展開用スリーブが張り出し
顎付ボルト上に展開して孔内に固着後に、ドライ
バーを使用して張り出し顎付ボルトに対する螺合
締めつけだけでよく、強固な固定を可能とし、作
業性もよくて他方面に適用可能な優れた考案であ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の分解斜視図、第２図は第１
使態様を示す縦断面図、第３図は第２使態様を示
す縦断面図、第４図ａ〜ｅは第１使態様の施工手
順を示す説明図、第５図は拡径孔に植設された従
来のアンカーボルトの正面図である。 １……ボルト本体、１ａ……拡径部分（下端拡
径部）、１ｂ……螺設部、２……スリーブ、２Ａ
……下端部、２Ｂ……上端部、２ａ……スリツ
ト、２ｃ……スカート片、３……ナツト、４……
孔、５……座金（当板）、６……スリーブ本体、
７……雌ねじ、８……雌ねじ、９……ドライバー
係合溝、１０……皿ばね、１１……第２展開用ス
リーブ、１２……薄肉連結部、１３……スリツ
ト、１４……展開片、１５……第１展開用スリー
ブ、１６……突起部、１７……薄肉連結部、１８
……スリツト、１９……展開片、２０……張り出
し顎付ボルト、２１……ボルト身部、２２……テ
ーパ面、２３……張り出し顎。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 両端部にねじ孔を設け、且つ外端面にドライバ
   ー係合溝を形成したスリーブ本体と、一方の端面
   より切り込んで他方の端部の薄肉連結部を残して
   設けたスリツトにより複数個の展開片を形設し且
   つ内側面がテーパ面を有すると共に下端面内側に
   突起部を有する第１展開用スリーブと、該第１展
   開用スリーブに内接して、一方の端面より切り込
   んで他方の端部に薄肉連結部を残して設けたスリ
   ツトにより複数個の展開片を形設し且つ外側面が
   テーパ状を呈する第２展開用スリーブと、前記ス
   リーブ本体と第２展開用スリーブの間には弾性体
   を介装し、前記第１展開用スリーブおよび第２展
   開用スリーブに挿通してスリーブ本体のねじ部に
   螺合させ、第１展開用スリーブおよび第２展開用
   スリーブの展開片を摺接展開させる張り出し顎を
   有する張り出し顎付ボルトからなることを特徴と
   する埋め込みねじ構造。