JPH0582083A - 質量分離機構を備えたイオン源 - Google Patents

質量分離機構を備えたイオン源

Info

Publication number
JPH0582083A
JPH0582083A JP4059459A JP5945992A JPH0582083A JP H0582083 A JPH0582083 A JP H0582083A JP 4059459 A JP4059459 A JP 4059459A JP 5945992 A JP5945992 A JP 5945992A JP H0582083 A JPH0582083 A JP H0582083A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
ion
mass separation
ions
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP4059459A
Other languages
English (en)
Inventor
Masayasu Tanjiyou
正安 丹上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissin Electric Co Ltd filed Critical Nissin Electric Co Ltd
Priority to JP4059459A priority Critical patent/JPH0582083A/ja
Publication of JPH0582083A publication Critical patent/JPH0582083A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【目的】 広い断面積を持つ面イオンビ−ム型のイオン
源に於いて質量分離機構を設けて所望の質量のイオンビ
−ムだけを取り出すこと。 【構成】 イオン源出口のプラズマ電極、引出電極、加
速電極、接地電極のうちイオンの速度が低い段階である
引出電極に、電界磁界の作用で質量分離するウイ−ンフ
ィルタを通し穴ごとに設ける。さらに引出電極のすぐ後
方に通し穴の位置の合致したあまり電圧のかかっていな
い質量分離電極を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は質量分離機構を備えた
面イオン型のイオン源に関する。
【0002】
【従来の技術】イオン源は真空容器に導入されたガスを
何らかの手段で励起してプラズマとしイオンビ−ムとし
て外部へ取り出すものである。半導体、液晶用TFT、
太陽電池などへの不純物導入、あるいはイオンビ−ムに
よるエッチング、スパッタによる加工、さらにはイオン
によるデポジション、改質などの分野に於いて広く用い
られている。イオンビ−ムの種類、ビ−ムの直径、イオ
ンの運動エネルギ−、ビ−ム密度などは目的によって様
々である。イオンビ−ムの直径の狭いものも使われる。
これは物体の加工や処理のためというより、物性の測定
に用いられる事が多い。イオン源の中では多様なイオン
が生成するから所望のイオンのみを取り出そうとする場
合は質量分離しなければならない。イオンビ−ムが細い
場合質量分離機構を設けるのは比較的簡単である。これ
は扇形磁石によってイオンの経路を円弧状に彎曲させ、
スリットを通過させることにより、質量の違うイオンを
区別するものである。
【0003】ところが物質を加工したり改質したりとい
うように何らかの処理を施すための場合はイオンビ−ム
が広い方が良い。広い面積の対象物或は多くの対象物を
同時に効率良く処理することができるからである。この
ような面イオン型のイオン源の場合、イオンを質量分離
するのは容易ではない。もちろん前述のように扇形磁石
によって質量分離できるはずであるが、イオンビ−ムの
エネルギ−が高く、イオンビ−ムの直径が大きいから現
実には磁石による質量分離は殆どなされていない。
【0004】物質、目的によって相違するが、イオン源
から引出されたイオンビ−ムのエネルギ−は10keV
〜200keV程度あってかなり大きい。エネルギ−の
大きいビ−ムを曲げるには強い磁束密度が必要である。
さらに面イオンビ−ム型の場合イオンビ−ムの直径が大
きい。磁石の直径はイオンビ−ムの直径より当然大きく
なくてはならないからこのようなイオンビ−ムを曲げる
ためには強い磁束密度を持つ巨大な磁石が必要である。
またこの磁石はビ−ムの曲がりに沿う円弧状の形状を持
たなければならない。このような巨大で強力な磁石を製
作するのは容易でない。またこれをイオン源の出口に設
置するのも難しい。たとえ可能であっても極めて嵩高い
機構になってしまう。
【0005】これらの困難を克服したとしても、イオン
ビ−ム径が大きいから磁場で曲げられたイオンを選択的
に通すべきスリットの穴を大きくせざるを得ないので、
質量分離の分解能が低くなってしまう。そこで本発明者
は、ウイ−ンフイルタを用いてイオンビ−ムを質量分離
する事を考えた。特願平2−220573である。これ
はイオン源出口にあるプラズマ電極、引出電極、加速電
極、接地電極の4枚の電極の内、引出電極のイオン通し
穴のそれぞれにウイ−ンフイルタを設けたものである。
引出電極の通し穴の両側に永久磁石を埋め込み、これと
直角な位置に電極を設ける。電極に直流電圧を印加して
磁場と電場が直交するようにする。所望の質量を持つイ
オンのみがこの通し穴を直進するように設定しておく。
その他の質量のイオンはこの穴を通過する際に曲げられ
るのでこれの直下にある加速電極の通し穴を通過できな
い。
【0006】この機構はイオンを加速する前に質量分離
するので、強い磁場がいらないという長所がある。加速
前であるから、イオンエネルギ−は1keVより小さ
い。扇形磁石を用いないので、小型のものになる。ビ−
ムラインが直線になるので装置の設計、設置が容易にな
る、などの長所があった。
【0007】ところが4枚電極のこの質量分離機構には
次のような難点がある。ひとつは質量の異なるイオンを
排除するためにスリットに該当するものが加速電極であ
るため、ここに衝突した時にイオンはかなり高いエネル
ギ−を持つということである。たとえば、プラズマ電極
の電圧を10kV、引出電極の電圧を9.6kV、加速
電極の電圧を−0.5kVとする。加速電極に衝突する
イオンのエネルギ−は10.5keVとなる。所望の質
量を持たない過大過小の質量のイオンはここに衝突する
がエネルギ−が高いため多くの2次電子を発生する。こ
の2次電子の作用で、引出電極と加速電極の間で放電が
発生する。つまり2次電子が電圧の高い引出電極の方へ
引っ張られ加速されるから、これが雰囲気ガスを電離し
て放電が生じるのである。
【0008】もうひとつの欠点は分解能である。引出電
極と加速電極の間で加速されて加速電極のイオン通し穴
に入るわけであるが、この間で加速されるため、イオン
の飛行方向が軸線から外れていたものでも加速電極の引
力によって飛行方向が軸方向になり加速電極のイオン通
し穴を通ってしまう。つまり所定の質量でないイオンも
この加速電極通し穴を通過するということである。この
ため分解能が低くなってしまう。本発明は2次電子発生
を防ぎより高い分解能を有する質量分離機構を備えたイ
オン源を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のイオン源は先述
のプラズマ電極、引出電極、加速電極、接地電極と並ぶ
電極に加えて、引出電極のすぐ後方にこれと殆ど電位の
変わらない、小さい通し穴を有する質量分離電極を追加
したものである。つまり4枚電極であったものを5枚電
極にする。引出電極のすぐ後方にあるので、これが質量
分離のためのスリット板としての作用を持つようにな
る。
【0010】
【作用】引出電極のすぐ後方に対応する位置に多数の穴
を有する質量分離電極を設けている。所望の質量を持っ
たイオンはそのまま通し穴を通過してゆく。しかし、そ
うでない質量のイオンについては通し穴を通過できな
い。引出電極の通し穴がウイ−ンフイルタになっている
ので過大過小質量のイオンはここで曲げられて、質量分
離電極の板部に衝突し排除される。この点は同じなので
ある。しかし、引出電極と質量分離電極との間で殆ど電
位差がなくあまり加速されないのでこのイオンが板部に
当たって2次電子を出すという事がない。したがって放
電も起こらない。これは大きな利点である。
【0011】もうひとつの利点は分解能が向上するとい
うことである。引出電極の次に加速電極がある場合は、
この間で進行方向に加速されるから、引出電極のウイ−
ンフイルタを出た時に、軸方向から多少ずれた速度ベク
トルを有するイオンであっても加速電極の通し穴を通過
する事ができる。このため過大過小質量のイオンも加速
電極の通し穴を通ることができる。つまり分解能が低
い。本発明の場合は、引出電極と質量分離電極との間で
加速されず殆ど等速直線運動をするから、引出電極のウ
イ−ンフイルタを出た時に軸方向からずれた速度ベクト
ルを有するイオンはますます中心軸から外れてゆき、質
量分離電極の通し穴を通り抜けることができない。過大
過小質量のイオンが排除されるということで分解能が高
くなる。
【0012】実際には、引出電極が厚いので通し穴が長
く、穴径に比べて穴長が大きいから、穴の出口でイオン
ビ−ムが収束するような電位勾配が生ずる。図2にこれ
を示す。点Q、Rが収束点である。収束するといっても
ビ−ムは進行しているので収束した後は発散する訳であ
る。また収束するのは同一の質量、同一のエネルギ−を
持ったイオンだけである。異なる質量のイオンはウイ−
ンフイルタのB、Eの作用のため出口に於いては異なる
地点Q、Rで収束する。そのため引出電極のすぐ近くに
小さい通し穴を設けた質量分離電極を設置するという事
は有効である。所望の質量を持つQ点で収束したイオン
は質量分離電極の穴を通過できるが過大又は過小質量の
R点で収束したイオンは次の電極の穴を通過できない。
離れた位置により大きい穴径の電極板を設けるのと等価
のように見えるがそうではない。引出電極の出口で収束
したイオンは発散しはじめるので遠くにある電極板(質
量分離電極がないとして)に到達した時は、同一地点に
異なる質量のイオンが飛来する可能性があるのである。
つまり質量分離がウイ−ンフイルタによって一旦なされ
ても、その後発散ビ−ムになるから、ビ−ムが混じりあ
ってしまうのである。引出電極から遠く離れた所にある
加速電極によってスリットの代用をさせるとすればビ−
ムの混合が起こって折角ウイ−ンフイルタによって質量
分離しても以後再び混じりあってしまうのである。
【0013】本発明ではそうでなく、収束したイオンビ
−ムを分離するため引出電極のすぐ後に質量分離のため
の電極を設けている。イオンは殆ど発散しないうちにこ
の電極に至るから、質量の異なるイオンビ−ムの到達位
置が異なる。適当なB、Eの決定を行うことにより、所
望の質量のイオンのみを通すことができる。
【0014】
【実施例】
[実施例1]図1は本発明の実施例に係る質量分離機構
を備えたイオン源の概略構成図である。図2は電極板の
部分の拡大縦断面図である。イオン源の出口に設置され
た多孔板電極は5枚ある。図1の上から順にプラズマ電
極1、引出電極2、質量分離電極3、加速電極4、接地
電極5である。いずれも多数のイオン通し穴を有する多
孔板である。イオン通し穴はイオンの進行方向に一致す
るように穿孔されている。イオン源はイオン源チャンバ
6の中にフィラメント7を設けたものである。イオン源
チャンバ6は真空に排気することができしかも原料ガス
入口8からイオン化すべきガスが導入できるようになっ
ている。チャンバ6の壁の外側にはカスプ磁場を作るた
めの磁石9、10が設けてある。これはバケット型イオ
ン源の例を示している。その他のイオン源に対しても本
発明を同様に適用することができる。
【0015】プラズマ電極1、引出電極2,質量分離電
極3、加速電極4、接地電極5のイオン通し穴11、1
2、13、14、15は軸方向に一致するが、直径やそ
の長さが相違する。特に質量分離電極3の穴Bは小さく
なっている。図2は電極の穴を縦に並べて書いている
が、これは電極の厚みを誇張して書いてある。また穴の
径も実際より大きく書いてある。プラズマ電極1、質量
分離電極3、加速電極4、接地電極5などは単純な金属
板に多くの孔を穿ったものである。引出電極2はウイ−
ンフイルタをそれぞれの通し穴12に設けているから複
雑な構造となっている。
【0016】電位の関係について説明する。フィラメン
ト7はフィラメント電源16によって加熱される。フィ
ラメント7を陰極、イオン源チャンバ6を陽極とするよ
うに、ア−ク電源17が両者に接続されている。チャン
バ6とフィラメント7の間にア−ク放電が起こる。これ
によってガスが励起されてプラズマ18になる。プラズ
マ電極11はプラズマの中から正イオンのみを取り出す
ものである。これは大地に対しては正の高電位である
が、チャンバ6よりは低い電圧になっている。
【0017】引出電極2は電源19によってプラズマ電
極1より低い電位になっている。これはウイ−ンフイル
タを穴ごとに内蔵しているから、2つの異なる電位を必
要とする。このために電源20、21がある。引出電極
2のすぐ後段の質量分離電極3は電源22によって引出
電極2より僅かに低い電位(或は同一電位)に保たれ
る。加速電極4はプラズマ電極11に対してイオンを加
速する方向に高い電圧がかかっているので加速電極とい
っている。これは電源23によるものである。実際には
加速電極4は大地に対して負に保たれる。これはタ−ゲ
ットにイオンが衝突することによって生じた電子がイオ
ン源チャンバの方へ逆流するのを防ぐためである。接地
電極5は接地されている。接地電極からタ−ゲット(図
示せず)までは電界が存在しないので等速直進運動す
る。イオンが加速されるのは、引出電極2と加速電極4
の間である。特に強く加速されるのは、質量分離電極3
と加速電極4の間である。
【0018】電圧の分布に関する一例を示す。プラズマ
電極が10kVとすると、引出電極の電位は9.9〜
9.6kV、質量分離電極の電位は9.7〜8kV、加
速電極の電位は−0.5〜−1kV、接地電極は0Vで
ある。つまり質量分離電極3まではイオンのエネルギ−
が低く速度は遅いという事である。プラズマ電極の電位
が変わると、その他の質量分離電極の電位もそれに追随
して変わる。全ての電極のイオン通し穴の中心は中心線
mnの上にある。引出電極2は直交する電場Eと磁界B
とを用いたウイ−ンフイルタを備えているので,所望の
質量をもつイオンは直進イオンビ−ム25となるが、そ
れ以外の質量のイオンは彎曲イオンビ−ム26となり質
量分離電極3の板面に衝突する。
【0019】引出電極2はプラズマ電極1の後方にあっ
て、プラズマ電極1のイオン通し穴からイオンを引き出
す働きをする。この点は従来のものと同じである。本発
明に於いてはそれに加えて、質量分離のためのウイ−ン
フイルタを通し穴12ごとにひとつずつ設けてある。1
本のイオンビ−ムの途中にひとつのウイ−ンフイルタを
設けたものはよく知られているが、本発明のように面積
の大きい面ビ−ムのイオン源で多数のウイ−ンフイルタ
を並設したものは類例がない。引出電極2は電極板27
と磁石28を含む。
【0020】図2では磁石28を示しているが、これは
磁石と磁場の存在を明示するためであって実際には中心
線上に磁石28は存在しない。図3のように電極板27
は通し穴12の中心を結ぶ方向の中心線に沿って分割さ
れている。分割の方向をy軸にとる。これと直角な方向
をx軸とする。電極板27が2分割されて27a、27
bになっているがこれは、両者の間に電圧を印加して通
し穴12の中にx方向の電界Eを生ずるためである。こ
のような電界がなければウイ−ンフイルタができない。
【0021】電極板2が中央で割れており電極板27
a、27bとなっているために、永久磁石28は両方の
電極板27a、27bの中に2分割して埋め込まれてい
る。ひとつの通し穴の周囲に同じ方向に磁化方向を有す
る4つの永久磁石28が設置されている。これらはy方
向に磁束密度Bを生ずる。電極板27a、27b間の電
圧によって生じた電場(x方向)とともにこれがウイ−
ンフイルタを構成する。これと直角な(z方向)方向か
ら入射したイオンはB、Eの相拮抗する力を受ける。選
ばれた質量エネルギ−のイオンは一定の速度w0 を持つ
ので受ける力が均衡しここを直進する。これより遅い速
度(より重いイオン)のイオンは電界Eの方向に曲がる
し、速い速度(より軽い)のものは電界Eと反対の方向
に曲がるので、この彎曲ビ−ム26は質量分離電極3の
板面に当たり除去されるのである。
【0022】ウイ−ンフイルタをイオン加速前の段階に
設けたということが重要である。100eV〜数100
eVのエネルギ−しか持たないから、速度w0 が小さく
慣性が小さいので弱い電界Eによってもこれを曲げる事
ができる。つまり電圧を低くできるのである。穴径が小
さいから電場、磁場ともに小さくできる。ウイ−ンフイ
ルタの長さ、つまり通し穴の長さも短くすることができ
る。これは甚だ有利な点である。この例では全ての通し
穴での電界、磁界の方向を同一にするために隣接する電
極板27a、27bの間にも空隙を作り両者を電気的に
絶縁している。これらの空隙はそのまま空間としてもよ
いのであるが、真空であるとその間に放電が起こりやす
いので、絶縁物29、絶縁物30を充填してある。x方
向の電界の大きさは電源20、21によって適当に調整
することができる。
【0023】引出電極2の通し穴12は、質量分離電極
3の通し穴13より直径が大きく、通し穴12の下に通
し穴13が見えている。両者は同じ程度にしてもよい
が、通し穴13を小さくすると分解能を上げることがで
きる。このような幾何学的条件であると、所望の質量を
持つイオンであっても引出電極通し穴12の端近くを通
ったイオンは次の通し穴13を通過できないように見え
るが、そうではない。既に述べたように引出電極通し穴
12は長いので凸レンズのような収束作用があって、同
じ質量のイオンであれば出口の一箇所(穴の中心)に収
束させるのである。
【0024】[実施例2]図4は引出電極の他の実施例
を示す。通し穴12の配置が縦横に並んでいるのではな
く、チドリになっている。つまり正三角形を多数並列さ
せた場合の頂点に穴を位置させている。さらに電極板間
の分割数を減じ、隣接する穴の電極板27cはひとつに
統合してある。こうすると電極板のくりかえしピッチが
2倍になり電極構造が単純化される。また穴の中心を通
る方向に電極板27c、27dが分割されているが、分
割部は単に空隙31となっている。左右の穴で電場の方
向が逆になるので磁石の方向も逆になっている。ここで
は長い永久磁石28を用いて隣接する通し穴に対して共
通に使っている。
【0025】[実施例3]図5は引出電極の第3の実施
例を示す。これは通し穴が縦横行列状に並んでいる。電
極板が中間で分割されていないので、電極板のピッチが
図3の穴のピッチの2倍になる。電界、磁界の方向は横
方向の穴について相反するようになっている。図4、図
5の場合、過大質量のイオンがE、Bによって曲げられ
る方向が穴によって異なる。過小質量のイオンについて
も同様である。しかしこれは差支えのないことである。
引出電極通し穴12と質量分離電極の通し穴13のひと
つずつが組になってそれぞれ単一のウイ−ンフイルタを
作っているからである。
【0026】[実施例4]これ迄に説明したものは、引
出電極2は2つの役割を持っていた。一つはウイ−ンフ
イルタ−を備える基体となるということである。もう一
つはプラズマ電極と引出電極との電位差によってイオン
を引き出すという作用である。図2に示した例では両電
極の電位差が0.1〜0.4kVある。一般にこの電圧
は0.1〜1kV程度である。この電位差でイオンビ−
ムを引き出している。ウイ−ンフイルタの電極板間の電
圧は40〜200V程度でありこの電圧と磁場の作用で
質量分離している。このような二つの役割を兼ねること
がもちろんできるのであるが、電界の方向が異なるから
イオンビ−ムの流れが意図した通りにならないというこ
とがある。前記の電位差はビ−ムの方向つまりz方向に
働く。しかしフィルタとしての電界はビ−ムと直角の方
向つまりこの例ではx方向に働く。フィルタのための電
界は通し穴12の外部まで遠く漏れるということはない
はずであるが、それでも穴の縁辺においては強い電界と
なる。これがz方向の引出電界に擾乱を加える。ために
イオンビ−ムがx方向に彎曲する可能性がある。
【0027】引出電極のウイ−ンフイルタは磁界と電界
による反対方向の力によってある一定の質量を持つイオ
ンビ−ムのみを直進させるものである。しかし永久磁石
の作る磁界と、電極板のつくる電界の大きさは同じ物理
法則に従うものではないから、その分布が異なってく
る。通し穴の中心ではE=w0 Bというように設定され
ていたとしても、その他の領域では、電界、磁界の強さ
の比は常にw0 ではない。また方向も異なる。電界は端
的にガウスの法則に従うが、磁界は磁石板の定理に従う
から、その方向性や強度の距離依存性が異なる。従って
通し穴の中心以外では電界と磁界の力の均衡が破れてお
り、電界が優勢であるところや磁界が優勢であるところ
などがどうしても発生してしまう。
【0028】このような訳で引出電極にz方向、x方向
の電界の両方を担わせると穴の中心から外れた軌跡を通
るイオンビ−ムに対してx方向の特異な電界がかかる可
能性がある。そうすると直進していたものが曲げられた
り、曲がっていたものが直進したりするので質量分離の
分解能が低下する。これを避けるためには、引出電極を
2つに分離した方が良い。図6と図7はこのような実施
例を示す。これは6枚電極構造のものである。引出電極
2が単なる引出前置電極51とフィルタ電極52に分離
されているのである。つまり6枚の電極は、チャンバに
近いほうから順に、プラズマ電極1、引出前置電極5
1、フィルタ電極52、質量分離電極3、加速電極4、
接地電極5である。電圧の配分について述べる。この例
では、プラズマ電極1は10kVにバイアスされてい
る。引出前置電極51はこれに対して−1kVとなって
いる。つまり大地に対しては9kVである。この例で
は、フィルタ電極52と質量分離電極3と引出前置電極
51は同電位になっている。つまりプラズマ電極1と引
出前置電極51の間では1kVの電位差により、z方向
に真っすぐに加速される。この点が、これ迄の実施例と
異なる点である。フィルタ電極52の電極板の間には+
200Vと−200Vの電圧が印加される。つまり40
0Vの電圧によって電極板の間に直流電界が生ずるので
ある。またこれより後方の質量分離電極3もこれらと同
電位であるから、フィルタ電極と質量分離電極3の間で
イオンが加速されない。こうすると質量分離の分解能を
あげることができる。勿論質量分離電極3の通し穴の直
径を小さくすることによっても分解能を上げることがで
きる。
【0029】しかしそうではなくて、引出前置電極5
1、フィルタ電極52、質量分離電極3の間に電源をつ
なぎ、それぞれ小さい電位差を与えてもよい。もうひと
つこの実施例で注意すべきことは、通し穴54の形状で
ある。これまでのものは丸い通し穴であった。丸いもの
は加工が容易であるが、電界分布が生じて一様な電界を
形成しにくい。そこでここでは通し穴が角型になってい
る。このようにすれば通し穴の対辺平行であるから、一
様な強度の電界を形成することができる。このようにす
るとウイ−ンフイルタの質量分離の有効範囲が拡がるか
らより正確に質量分離することができる。フィルタ電極
52の通し穴54は行方向(y方向)に複数列ならんで
いる。しかし隣接する群の間では通し穴のピッチは半ピ
ッチずれている。またこの例では電極板53a、53b
が隣接する2行のウイ−ンフイルタについて共通となっ
ている。こうすると電極板53a、53bのピッチが2
倍になって電極板の製作設置が容易になる。しかしこの
ため隣接する行間では磁界電界の方向が逆転する。
【0030】永久磁石55はひとつのウイ−ンフイルタ
について4つのものが用いられている。異なる磁極が対
向するように電極板の両側に2つずつ計4つ設けられて
いる。しかし永久磁石55は隣り合うウイ−ンフイルタ
で半分ずつ共通に用いられている。であるらウイ−ンフ
イルタひとつあたりの永久磁石は2つである。この点は
図4の例と同様である。既に述べたようにこの実施例は
引出電極2が2つの異なる作用をするとビ−ムがx方向
の電界のために偏向する可能性がありこれを回避するた
めに考案されたものである。これは従って引出電極によ
って偏向されず対称性の良いビ−ムを作り出すことがで
きる。優れた質量分離機構である。
【0031】
【発明の効果】広いビ−ム面積を有する面ビ−ム型イオ
ン源は新しいものではあるが、これを質量分離するため
の適当な機構がこれまで存在しなかった。本発明は、イ
オン源の引出電極の中に電極、磁石を設けてウイ−ンフ
イルタとしているので面ビ−ムであっても質量分離する
ことができる。低速のイオンに対して質量分離するから
高電圧が不要であり、それとともに磁界も小さくするこ
とができる。さらに引出電極のすぐ後方に質量分離のた
めの多孔板電極を設けたので、特願平2−220573
に比べて2つの点で優れている。ひとつは加速されてか
ら電極板に当たって2次電子を多量に発生するという事
がなく電極間で放電が発生する惧れがないということで
ある。もうひとつは引出電極の出口で収束したビ−ムが
発散する間もなく質量分離電極に至るので、分解能が高
揚するということである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のイオン源の概略構成を示す縦断面図。
【図2】イオン源出口の電極板の構造を示す一部縦断面
図。
【図3】引出電極の一部の横断面図。
【図4】引出電極の他の実施例を示す一部の横断面図。
【図5】引出電極の第3の実施例を示す一部の横断面
図。
【図6】第4の実施例に係るイオン源出口の電極板の構
造を示す一部縦断面図。
【図7】図6の実施例のフィルタ電極の平面図。
【符号の説明】
1 プラズマ電極 2 引出電極 3 質量分離電極 4 加速電極 5 接地電極 6 イオン源チャンバ 7 フィラメント 8 ガス導入口 9 磁石 10 磁石 11 プラズマ電極通し穴 12 引出電極通し穴 13 質量分離電極通し穴 14 加速電極通し穴 15 接地電極通し穴 16 フィラメント電源 17 ア−ク電源 18 プラズマ 27 電極板 28 磁石 51 引出前置電極 52 フィルタ電極

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空に引くことができ原料ガスを導入し
    放電によってこれを励起しプラズマとするイオン源チャ
    ンバと、イオン源チャンバからイオンビ−ムを引き出し
    加速するためにイオン源チャンバの出口に設けられイオ
    ン通し穴が面と直角な方向に一致するように穿たれた多
    孔板電極板であるプラズマ電極、引出電極、質量分離電
    極、加速電極、接地電極とを含み、引出電極の全てのイ
    オン通し穴に、対向磁石と対向電極とよりなり静磁界と
    電界とが互いに直交しイオンビ−ムにも直交するように
    したウイ−ンフイルタを設け、質量分離電極は引出電極
    との間にイオンを加速する方向の小さな電圧が印加され
    ているか又は同じ電圧であるものとし質量分離電極のイ
    オン通し穴はこれより後段の加速電極のイオン通し穴と
    同じ大きさかあるいはこれよりも小径のものとし、引出
    電極のイオン通し穴を通過したイオンのうち所望の質量
    のイオンのみがその後段にある質量分離電極のイオン通
    し穴を通過できるようにした事を特徴とする質量分離機
    構を備えたイオン源。
  2. 【請求項2】 真空に引くことができ原料ガスを導入し
    放電によってこれを励起しプラズマとするイオン源チャ
    ンバと、イオン源チャンバからイオンビ−ムを引き出し
    加速するためにイオン源チャンバの出口に設けられイオ
    ン通し穴が面と直角な方向に一致するように穿たれた多
    孔板電極板であるプラズマ電極、引出前置電極、フィル
    タ電極、質量分離電極、加速電極、接地電極とを含み、
    フィルタ電極の全てのイオン通し穴に、対向磁石と対向
    電極とよりなり静磁界と電界とが互いに直交しイオンビ
    −ムにも直交するようにしたウイ−ンフイルタを設け、
    質量分離電極はフィルタ電極との間にイオンを加速する
    方向の小さな電圧が印加されているか又は同じ電圧であ
    るものとし質量分離電極のイオン通し穴はこれより後段
    の加速電極のイオン通し穴と同じ大きさかあるいはこれ
    よりも小径のものとし、フィルタ電極のイオン通し穴を
    通過したイオンのうち所望の質量のイオンのみがその後
    段にある質量分離電極のイオン通し穴を通過できるよう
    にした事を特徴とする質量分離機構を備えたイオン源。
JP4059459A 1991-07-23 1992-02-12 質量分離機構を備えたイオン源 Pending JPH0582083A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4059459A JPH0582083A (ja) 1991-07-23 1992-02-12 質量分離機構を備えたイオン源

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3-207590 1991-07-23
JP20759091 1991-07-23
JP4059459A JPH0582083A (ja) 1991-07-23 1992-02-12 質量分離機構を備えたイオン源

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0582083A true JPH0582083A (ja) 1993-04-02

Family

ID=26400506

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4059459A Pending JPH0582083A (ja) 1991-07-23 1992-02-12 質量分離機構を備えたイオン源

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0582083A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6734446B1 (en) 1996-05-15 2004-05-11 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Apparatus and method for doping
JP2010123574A (ja) * 2008-11-19 2010-06-03 Korea Atom Energ Res Inst 多重電極を使用したビーム生成装置及び輸送装置
US8314009B2 (en) 2007-09-14 2012-11-20 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Method for manufacturing SOI substrate and method for manufacturing semiconductor device

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6734446B1 (en) 1996-05-15 2004-05-11 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Apparatus and method for doping
US7118996B1 (en) 1996-05-15 2006-10-10 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Apparatus and method for doping
US7315035B2 (en) 1996-05-15 2008-01-01 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Apparatus and method for doping
US7521699B2 (en) 1996-05-15 2009-04-21 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Apparatus and method for doping
US8003958B2 (en) 1996-05-15 2011-08-23 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Apparatus and method for doping
US8344336B2 (en) 1996-05-15 2013-01-01 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Apparatus and method for doping
US8314009B2 (en) 2007-09-14 2012-11-20 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Method for manufacturing SOI substrate and method for manufacturing semiconductor device
JP2010123574A (ja) * 2008-11-19 2010-06-03 Korea Atom Energ Res Inst 多重電極を使用したビーム生成装置及び輸送装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3713683B2 (ja) イオンビームの質量分離フィルタとその質量分離方法及びこれを使用するイオン源
US4862032A (en) End-Hall ion source
US5108535A (en) Dry etching apparatus
US7365341B2 (en) Gas cluster ion beam emitting apparatus and method for ionization of gas cluster
US7116054B2 (en) High-efficient ion source with improved magnetic field
JP3425154B2 (ja) イオン銃
US9721777B1 (en) Magnetically assisted electron impact ion source for mass spectrometry
EP0525927A1 (en) Ion source having a mass separation device
JP2002352765A (ja) イオン注入装置
EP0285630A1 (en) MASS SEPARATOR FOR A BEAM OF IONIZED AGGLOMERATES.
JP2002052314A (ja) プラズマ質量フィルタ
EP3293753A1 (en) Ion trajectory manipulation architecture in an ion pump
JPH0582083A (ja) 質量分離機構を備えたイオン源
US4649279A (en) Negative ion source
US20090134804A1 (en) Axial hall accelerator with solenoid field
JP4013377B2 (ja) 質量分離型イオン源
JP2940090B2 (ja) 質量分析装置を有するイオン源
JP3067784B2 (ja) 静電加速器
JPH10275566A (ja) イオン源
JP3448352B2 (ja) 半導体装置の製造方法
JP2003257360A (ja) 電子衝撃型イオン源
JP2769506B2 (ja) イオン源
JPH0750637B2 (ja) 高速原子線源
RU1766201C (ru) Источник ионов
JPH01225041A (ja) イオン源装置