JPH0581333U - 鋼管杭の回転貫入用治具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 杭頭部に突出片等の取り付ける溶接作業を必
要とせず、また油圧を使用することもなく遠隔操作の可
能な回転貫入治具を提供する。 【構成】 鋼管杭１の内径よりやや小さい外径を有する
円筒状の下部ケーシングと、鋼管杭１の外径よりやや大
きい外径を有する円筒状の上部ケーシングと、その頂部
に設けられた掴み部とからなるケーシング11と、このケ
ーシングの中心部を縦に通る摺動軸12、13と、ケーシン
グ下部の切り欠き窓に嵌合されたクランプブロック15
と、摺動軸の上下動に対応してこのクランプブロックを
水平方向に前進後退させるスプリング17およびスライド
ブロック14と、摺動軸の降下状態を保持するストッパー
19とから構成する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、鋼管杭、特に回転貫入式鋼管杭の頭部に装着して使用する回転貫入 用治具に関する。

【０００２】

【従来の技術】

土木、建築関係の基礎杭として、プレストレストコンクリート杭、場所打ちコ ンクリート杭等と並んで鋼管杭もよく使用される。従来、鋼管杭はハンマーによ る打撃により土中に貫入させていたため、騒音、振動が激しいという欠点があっ たが、近年、これを改良し、回転貫入させるドリル鋼管杭が開発され、例えば特 開平1-94112 号公報、特開平1-146011号公報、特開平1-127718号公報等に公開さ れている。

【０００３】 また、このような回転貫入鋼管杭の頭部に装着して使用する回転貫入用治具と しては、実公昭61-3956 号公報、実開平1-16033 号公報、実開平3-86137 号公報 に開示されたもの等がある。 実開平1-16033 号公報の一実施例を図３に示す。この考案では、鋼管杭51頭部 内面の対称する位置に突出片52が設けられており、一方、回転貫入用治具60の上 部は円盤状の盤体62で、この下部に円柱状部材63が接続している。盤体62の部分 を鋼管杭51頭部に載置すると円柱状部材63は鋼管杭51内部に入り、この円柱状部 材63に延長して設けられたＬ字形の案内片64が前記鋼管杭頭部内面の突出片52に 係合するから、オーガーマシンで治具頂部の掴み部材61を掴むことにより、鋼管 杭51が回転貫入用治具60と一体となって回転し、地盤内に貫入させることができ る。

【０００４】 案内片64は、突出片52の幅を隔ててＬ字形、逆Ｌ字形の２片が向かい合ってい るので、杭を抜き取る場合等には逆方向にも回転可能である。 実開平3-86137 号公報の一実施例を図４に示す。この考案の回転貫入用治具70 は、上部は円盤状の盤体72で、この下部に円柱状部材73が接続しているのはさき の図３のものと同様であるが、円柱状部材73に複数箇所の切り欠き窓を設け、そ の内部に歯形クランプ74が配置されており、この図には現れない油圧シリンダー により治具の中心を通る操作用縦軸75を回転させることによって前記切り欠き窓 から歯形クランプ74が突出して鋼管杭の内面に圧接噛合することで治具の回転力 を鋼管杭に伝達するものである。従って、この考案においては、鋼管杭側には突 出片等を設ける必要がない。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

従来、例えば引用を省略したが前記実公昭61-3956 号公報の治具では杭を逆転 方向に回転させることができなかったのが実開平1-16033 号公報の治具では両方 向に回転可能となったものの、杭頭部に突出片を取り付ける溶接作業が必要であ った。実開平3-86137 号公報の治具では突出片を取り付ける溶接作業は不要とな ったが、油圧シリンダーで操作するため、作業現場に油圧源が必要であり、また オーガーマシンにこの治具を装着する際、油圧ホースのつなぎ込み作業を必要と し、遠隔操作や作業の自動化に対して障害となっていた。

【０００６】 本考案は、この点を解決し、両方向回転可能な長所は維持しつつ、油圧操作に よらないで杭をクランプできるようにした治具を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案は、鋼管杭を回転させながら基礎地盤中に貫入させる際に使用する治具 であって、鋼管杭の内径よりやや小さい外径を有する下部円筒状部材と鋼管杭の 外径よりやや大きい外径を有する上部円筒状部材とその頂部に設けられた掴み部 とから構成されるケーシングと、このケーシングの中心部を縦に通り上下に摺動 可能な摺動軸と、前記ケーシングの下部円筒状部材に設けられた切り欠き窓に嵌 合されたクランプブロックと、前記摺動軸の上下動に対応してこのクランプブロ ックを摺動軸の半径方向に前進後退させる開閉機構と、前記摺動軸の下方への移 動状態を保持する固定機構とからなることを特徴とする。

【０００８】

【作 用】

本考案によれば、杭頭部に回転貫入用治具を載置し、オーガーマシンの自重を 利用してケーシングの中心部を縦に通る摺動軸を下方に押してやることによって クランプブロックが半径方向に前進することで鋼管杭内面に圧接噛合し、かつ自 動的にストッパーが作動して、以後の圧接力はスプリングの作用により保持され るから、安定して杭の打設作業を行うことができ、杭は左右任意の方向に回転可 能である。

【０００９】

【実施例】

本考案の一実施例を、図１、図２により説明する。図１は、鋼管杭１の頭部に 本考案の回転貫入用治具を載置し、オーガーマシンに結合した状態の断面図、図 ２はそのＡ−Ａ視で、左側はオーガーマシンに結合した直後の時点を、右側はオ ーガーマシンの自重を利用して治具中心を通る摺動軸を下方に押した時点を示し ている。

【００１０】 本考案の回転貫入用治具10は上下２段に径の異なる円筒状のケーシング11と、 その中心部を縦に通る上下の摺動軸12、13と、ケーシング下部の切り欠き窓に嵌 合されたクランプブロック15と、このクランプブロックと下部摺動軸13との間に 嵌入されたスライドブロック14と、下部摺動軸13上部に挿通されたスプリング押 さえ18と、スライドブロック14とこのスプリング押さえ18との間に嵌入されたス プリング17と、ケーシング11上部に、中心方向へ移動可能に設けられたストッパ ー19とから構成される。

【００１１】 ケーシング11は、上下２段に径の異なる円筒状で、下部は打設する鋼管杭１内 に余裕をもって挿入できる直径、上部は鋼管杭１の外径よりも若干大きい直径と し、異なる径により生じる段差部11a で鋼管杭１の頭部に載置される。この段差 部11a の外縁に、上部径を延長してガイド部11b が設けられ、鋼管杭１の頭部へ の載置作業を容易にしている。また、ケーシング11の頂部には、オーガーマシン のチャック２に対応する掴み部11c がある。この掴み部11c は、通常のオーガー スクリュー等と同様、チャック２に合わせた６角形等の断面を有し、さらに落下 防止のためピン21が水平方向に挿入されるが、本考案においては掴み部11c に設 けるピン孔はピンが上下動できるよう、長孔とする必要がある。

【００１２】 摺動軸12、13はこの実施例では上下２本に分割しているが、通しの１本の軸で もよい。その上部はケーシング頂部の掴み部11c よりも上方に突出しており、図 １右側に示すようにオーガーマシンの自重によりこれを押し下げると、摺動軸13 に設けられた段付き部によってスプリング押さえ18が下方に押され、スプリング 17が圧縮され、これを介して摺動軸に嵌められているスライドブロック14が押し 下げられる。これに上広がりの斜面を介して嵌合しているクランプブロック15は 、上下方向にはケーシング11の切り欠き窓に拘束されているので外方へ移動し、 先端縁部に取り付けられたクランプシュー16が鋼管１の内面に強く圧接噛合する のである。クランプシュー16は、摩擦係数が高く、かつ磨耗の少ない材質、例え ば表面を溝加工し、焼入れした鋼材などを使用するとよい。

【００１３】 摺動軸の上下動に対応してクランプブロックを摺動軸の半径方向に前進後退さ せる開閉機構としては、この機構に限らずリンク機構その他種々のものが考えら れる。 次に、この圧接噛合状態を杭の打設作業中安定して維持するため、摺動軸が押 し下げられた状態で固定することが望ましい。本考案では、スプリング押さえ18 が所定量だけ沈下したら、側方に後退していたストッパー19が補助スプリング19 a 等の作用によって中心に向かって前進し、スプリング押さえ18の上方空間に嵌 合するようにした。これによって、摺動軸そのものは常時押し下げられたままで なくてもスプリング17は圧縮状態に保持され、治具と杭との圧接噛合状態は安定 している。

【００１４】 打設が一時完了して回転貫入用治具10を鋼管杭１から開放するときは、再度オ ーガーマシンの自重により摺動軸12、13を押し下げ、その瞬間にストッパー19を 外側に引き出してやればスプリング17の圧縮力が開放されるから、クランプブロ ック15は後退する。この作動を確実にするためこの部分に補助スプリング等を設 けてもよい。

【００１５】 本考案は、以上のように構成したから、オーガーマシンのチャック部分にこ の回転貫入用治具を取り付け、ピン止めした後は、オーガーマシンを下降させて 自重をかける運転台からの操作のみで鋼管杭を掴んだり開放したりすることがで き、油圧ホースを繋ぎこむ作業等が不要となったばかりでなく、杭の掴み力はス プリングの圧縮力によっており、その圧縮量はストッパーによって確保されてい るので、オーガーマシンの押し下げ力が振動等により瞬間的に変動しても杭への トルク伝達は安定して支障なく行われる。杭の左右両方向の回転が可能であるこ とは、いうまでもない。

【００１６】

【考案の効果】

本考案によれば、杭頭部に突出片等を取り付ける溶接作業が不要であるばかり でなく、杭を左右両方向に回転可能で、かつ油圧を必要とせず、遠隔操作のみで 作業が可能となり、作業能率と安全性が向上した。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例の構成を示す断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ視である。

【図３】従来例を示す側面図である。

【図４】他の従来例を示す平面図である。

【符号の説明】

１ 鋼管杭 ２ オーガーマシンのチャック 10 回転貫入用治具 11 ケーシング 12、13 摺動軸 14 スライドブロック 15 クランプブロック 16 クランプシュー 17 スプリング 18 スプリング押さえ 19 ストッパー

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋼管杭を回転させながら基礎地盤中に貫
   入させる際に使用する治具であって、鋼管杭の内径より
   やや小さい外径を有する下部円筒状部材と鋼管杭の外径
   よりやや大きい外径を有する上部円筒状部材とその頂部
   に設けられた掴み部とから構成されるケーシングと、こ
   のケーシングの中心部を縦に通り上下に摺動可能な摺動
   軸と、前記ケーシングの下部円筒状部材に設けられた切
   り欠き窓に嵌合されたクランプブロックと、前記摺動軸
   の上下動に対応してこのクランプブロックを摺動軸の半
   径方向に前進後退させる開閉機構と、前記摺動軸の下方
   への移動状態を保持する固定機構とからなることを特徴
   とする鋼管杭の回転貫入用治具。