JPH0578986A - ヌバツク調人工皮革 - Google Patents

ヌバツク調人工皮革

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JPH0578986A
JPH0578986A JP4028019A JP2801992A JPH0578986A JP H0578986 A JPH0578986 A JP H0578986A JP 4028019 A JP4028019 A JP 4028019A JP 2801992 A JP2801992 A JP 2801992A JP H0578986 A JPH0578986 A JP H0578986A
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artificial leather
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nubuck
fiber
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Masataka Ikeda
昌孝 池田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ヌバック調外観を有すると共に、柔軟性、耐
皺性及び耐摩耗に優れた人工皮革の提供 【構成】 メルトブロー法で得られた平均繊維径0.1
〜6.0μmの複数の極細繊維が相互に三次元的に絡み
合って構成された不織布層を少なくとも1表面(A)に
含んで成る繊維シートと、該繊維シートの組織間隙に含
浸付与されたゴム状弾性重合体から成る人工皮革であっ
て、前記繊維シートの表面(A)側の領域のゴム状弾性
重合体の重量分布量が裏面(B)側の領域に対して1.
2倍以上であり、且つ前記表面(A)側で極細繊維が立
毛している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、短く緻密な立毛を有す
る高級ヌバック調表面外観と、柔軟な風合、優れた耐皺
性及び耐摩耗性を有し、衣料用途に適したヌバック調人
工皮革に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、極細繊維の交絡不織布にゴム状弾
性重合体を介在せしめ、その表面を起毛して得られた人
工皮革がいくつか開発され好評を博している。近年、人
工皮革にも品種の多様化が求められ、毛足の長いスウェ
ード調のものに対し、毛足が短く緻密な立毛を有し、よ
り高級感のあるヌバック調の人工皮革が強く望まれてい
る。
【0003】本発明者らは、先に特開昭53−3186
6号公報および同53−65471号公報において、メ
ルトブロー法で得られた極細繊維を用いたヌバック調の
人工皮革を提案した。これらは良好な品質や特長を有す
るものであるが、風合をより柔軟にするため、例えば繊
維間隙に介在させるゴム状弾性重合体の充填量を減少さ
せると、表面立毛の毛足が長目となり荒れた表面になる
こと、耐皺性が低下すること、および表面の摩耗強度が
低下するなどの問題が発生することが見出された。
【0004】一方、特公昭48−32302号公報に
は、高分子配列体を主体とした不織布に、シートの厚み
方向に密度分布を生じるように不織布の片面から高分子
物質を含浸するか、不織布の両面から高分子物質を含浸
した後、得られたシートの中央部をスライスし、表面を
起毛する立毛シートの製造方法が開示されている。しか
しながら、この方法は主に含浸させる高分子物質の高粘
度溶液を用いたり、高分子物質の溶液をシートの片面の
みから含浸させる必要があるため、高分子物質のシート
の厚み方向の浸透深さをコントロールすることが難し
く、品質のバラツキを生じ易いことや、場合によっては
含浸斑を起すなどの問題がある。又この方法を極細繊維
シートに適用すると、メルトブロー法で得た極細繊維の
三次元交絡体は嵩密度が高いため、上記の問題が尚一層
顕著に現われてくる。更に上記方法は、スライス工程を
要するために生産性、コスト面での問題もある。しか
も、高分子配列体繊維を用いているため、海成分を抽出
して極細繊維化する必要があり、高密度の不織布とはな
らずこのため立毛密度におのずと限界があり、ヌバック
調表面は得られない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は前記し
た従来の技術の問題点を全て解決し、高級感のある超ヌ
バック調の表面効果(毛足は短いが緻密な立毛のため優
美なチョークマーク性を有する)を達成し、しかも柔軟
性、耐皺性、耐摩耗性に優れ、衣料用途に適した新規起
毛人工皮革を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の前述の目的は、
メルトブロー法で得られた平均繊維径0.1〜6.0μ
mの複数の極細繊維が相互に三次元的に絡み合って構成
された不織布層を少なくとも1表面(A)に含んで成る
繊維シートと、該繊維シートの組織間隙に含浸付与され
たゴム状弾性重合体から成り、前記繊維シートの表面
(A)側の領域のゴム状弾性重合体の重量分布量が裏面
(B)側の領域に対して1.2倍以上であり、且つ前記
表面(A)側で極細繊維が立毛していることを特徴とす
るヌバック調人工皮革によって達成される。
【0007】メルトブロー法は、Industrial
and EngineeringChemistry
48(8),1956、特開昭50−46972号公
報、特開昭53−34218などに開示されており、溶
融ポリマーを紡口から吐出させ、この溶融ポリマーを高
温高速のガス流でけん引細化して極細繊維をウェブ状に
直接得るプロセスのことである。メルトブロー法に使用
されるポリマーとしては、熱可塑性のあるものであれば
いかなるものも適用出来るが、その例としてポリエステ
ル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィ
ンなどが挙げられる。高い熱収縮性を有する繊維を得る
には、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート
が好ましい。メルトブロー法において、溶融ポリマーの
吐出量、ガス温度、ガス流速などを変化させることによ
り本発明の0.1〜6.0μmの平均繊維径をもった極
細繊維ウェブを得ることが出来る。また、メルトブロー
法により製造された繊維の直径は極めて小さいため、繊
維長を測定することは困難であるが、繊維の平均長は3
cm以上、通常10〜30cmのものである。
【0008】メルトブロー法で得られる極細繊維ウェブ
は、極細繊維が実質的に集束していないランダムウェブ
である。ブロー条件によっては、小さなロープ状繊維
(極細繊維が集束したもの)が発生することがあるが、
このロープ状繊維の発生量は極めて少ない。本発明は極
細繊維が実質的に集束していないランダム構造であるた
め、従来の高分子配列体を主体とした不織布(極細繊維
束を主体としたもの)に比べ、繊維密度の高い不織布が
得られる。このため、不織布表面を起毛した場合、従来
の繊維束状の荒目の立毛(スウェード調のもの)に対
し、本発明は実質的に集束していない極細単繊維状の立
毛が高密度に発生するため、立毛長を0.5mm以下と極
めて短くしても優美な表面効果(チョークマーク性)が
得られる。ここにヌバック調表面が得られる第1のポイ
ントがある。
【0009】また、メルトブロー極細繊維は、ほぼ正規
分布に近い繊維径分布を有している。例えば平均繊維径
2.0μmの繊維の標準偏差は1.6μm程度である。
このような繊維径分布を有する繊維の混在により尚一層
得られる立毛層の毛羽密度が高まり、好ましい表面効果
を強めていると考えられる。メルトブロー法により得ら
れたウェブは一般に高い熱収縮性を有している。特にメ
ルトブローポリエチレンテレフタレート繊維ウェブの場
合の沸水面積収縮率は20〜80%であり、この収縮に
より立毛層の立毛密度を更に高めることが可能であり、
このことはヌバック調表面を得る上で好ましい。
【0010】本発明のヌバック調人工皮革において、極
細繊維の平均繊維径は0.1〜6.0μmであることが
必要である。平均繊維径が6.0μmを超えると得られ
る人工皮革は、長目の立毛を有するスウェード調のもの
には使用可能であるが、特に立毛長を0.5mm以下にし
た場合、立毛層のチョークマーク性が著しく劣り、ま
た、表面感触が荒くなり、本発明でいうヌバック調の表
面は得られない。一方、平均繊維径が0.1μm以下で
あると、得られる立毛の強度が劣り、また染色性が著し
く不良となり実用上不適である。即ち、0.1〜6.0
μmの平均繊維長においてはじめて、0.5mm以下の短
い立毛長にしても優美な表面効果(チョークマーク性)
や表面感触が達成され、高級ヌバック皮表面が達成され
るのであり、この点に本発明の第2のポイントがある。
【0011】平均繊維径の測定は下記の方法によって行
う。不織布のウェブ又は人工皮革のサンプルの任意の1
0箇所を、電子顕微鏡(日本電子製、JSM−T30
0)を用いて、倍率1000倍(平均繊維径が1μ未満
の場合は2000倍)で10枚の写真撮影を行う。1枚
の写真につき任意の20本の繊維の直径を測定し、これ
を10枚の写真について行う。合計200本の繊維径測
定値を求め平均値を計算し平均繊維径とする。
【0012】メルトブロー法で得られた極細繊維を移動
するネットコンベア上に集積して形成されたウェブで
は、繊維の二次元的な絡みは認められるが、しかし、ウ
ェブの厚み方向の繊維交絡の程度が低く、いわゆる三次
的交絡はしていない。メルトブローウェブの繊維交絡程
度を高め、極細繊維相互の三次的交絡を行うことによ
り、極細繊維不織布の強力が高まり、不織布がより柔軟
化し、更に表面を起毛した場合に立毛密度が高まる。
【0013】極細繊維を相互に三次元的に絡ませるに
は、高速液体流をメルトブローウェブ表面に噴き当てる
方法や、ニードルパンチ法などがある。高速液体流を形
成するには、0.1〜0.3mmφのオリフィスから5〜
100kg/cm2 、好ましくは10〜60kg/cm2 の圧力
で水を噴射して水の柱状流を形成する。この液体流処理
はウェブ表面に均一に隈なく噴き当てるのが表面の平滑
性を高めるために好ましい。この液体流処理時、噴き当
て面の反対面に液体を排水する目的で、−50〜−25
0mmHgの減圧度で吸引処理を施すと、より効率的に繊維
の交絡が進み、更には表面に液体流路跡がほとんど残ら
ないので好ましい。直進流処理後に散水流処理を行う
と、直進流の流路跡を散水流で消去して表面平滑性を高
めることができるので尚一層好ましい。散水流は、散水
型ノズルを用いること、または、直進流を一たん金網な
どに噴き当てることにより液体流を散水化するなどの方
法が用いられる。
【0014】ニードルパンチ法として、極細繊維ウェブ
を、通常のバーブを有するニードルのみで処理すること
は、得られるウェブに針穴があきしかも繊維の交絡が効
率的に行なわれないため好ましくない。このため細いニ
ードルを用いるか、バーブの無いニードルを用いること
が好ましい。しかしながら、ニードルのみで繊維交絡を
充分行おうとするとどうしても得られるウェブに針穴が
残り、繊維の切断も著しく、得られるウェブ強度が低下
してしまう欠点がある。この点から、前述の高速液体流
処理による繊維交絡が好ましい。また、初めにニードル
パンチを予備繊維交絡工程として行い、次いで本格的繊
維交絡を高速液体流で行うという二段階処理を行うと、
高速液体流処理の交絡効率が高まり、得られるウェブに
針穴も残らず平滑な表面が得られるのでより好ましい。
【0015】本発明のヌバック調人工皮革に用いられる
繊維シートは、メルトブロー法で得られた極細繊維が少
なくとも1表面を覆っている繊維シートであればいかな
るものでもよい。即ち、メルトブロー極細繊維のみの三
次元交絡体、または、この内層または裏面に織物、編
物、他の不織布などが繊維相互の絡み合いで一体化した
繊維シートなどを用いることができる。もちろん、メル
トブロー極細繊維交絡体と編織布および他の不織布が組
み合さって構成された交絡繊維シートであってもよい。
特に、編織布を内層または裏面層に用いたものは、引張
強度、引裂強度、縫目強度などの衣料特性が著しく高ま
るので好ましい。この様な積層状交絡構造繊維シート
は、メルトブローウェブと編織布、他の不織布などを積
層し、次いで交絡処理を行うことにより容易に得ること
が出来る。
【0016】本発明の交絡した繊維シートは、少なくと
も1表面がメルトブロー極細繊維が相互に三次元的に絡
み合っている不織布層を有している。この不織布層にお
いては、単繊維状に互に分離した極細繊維が互に絡み合
った構造を有しており、高分子相互配列体からなる繊維
から得られる様な繊維束の交絡構造体ではない。この様
な不織布構造のため、不織布層の繊維密度が高まり、表
面を起毛した場合に立毛密度が顕著に高まる。これによ
り従来にない優れた表面効果が達成される。
【0017】本発明のヌバック調人工皮革を得るために
は前述のようにして得られた繊維シートの、メルトブロ
ー法で得られた極細繊維の不織布層が少くとも配置され
ている表面(A)側のゴム状弾性重合体の重量分布量が
反対側の裏面(B)側に対して1.2倍以上になるよう
にゴム状弾性重合体を含浸付与させることが必要であ
る。このように繊維シートの表面(A)側により多くゴ
ム状弾性重合体を付与する方法としてはいくつかの方法
を用いることができるが、下記に示すように糊剤のマイ
グレーションを利用する方法が好適である。すなわち繊
維シートにゴム状弾性重合体を付与する前に糊剤溶液を
含浸させる。含浸する糊剤としては、ポリビニルアルコ
ール、カルボキシメチルセルロース(Na塩)、澱粉、
ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸(アンモニウム
塩)などの水溶液を用いることができる。しかし、マイ
グレーション(乾燥時に糊剤の移動がシートの厚み方向
で起って片寄った分布を起す現象)を安定にコントロー
ルし易い点でポリビニルアルコールが好ましい。
【0018】乾燥はシート表面に熱風を吹きつけるタイ
プの熱風乾燥機が好適に用いられる。このタイプの乾燥
機は、スリット状ノズルから熱風を吹き出し、これを被
乾燥物(繊維シート)の表裏両面に噴き当て、この熱風
を乾燥ボックス内で循環させ、一部熱風をボックス外に
排出することによって、ボックス内の温度や湿度をコン
トロールするものである。一般に繊維シートに糊剤水溶
液を含浸させ、熱風乾燥機で乾燥すると糊剤のマイグレ
ーションが自然に起る。このマイグレーション状態は、
シートの厚み方向にみて表面層と裏面層に糊剤が多く
(表面層と裏面層の糊剤分布量はほぼ同量)分布し、中
間層は極めて少量の糊剤が分布しているにすぎない。糊
剤の分布状態はシートの断面を顕微鏡で観察することに
よって判る。この様に糊剤が両表面にマイグレーション
した繊維シートに、ポリウレタンのようなゴム状弾性重
合体を溶液にして含浸し凝固すると、ゴム状弾性重合体
は糊剤分布の少ないシートの中間層に多く分布し、糊剤
分布の多いシートの表面、裏面には少量しか分布しない
という状態となる。
【0019】これに対して本発明のヌバック調人工皮革
を得るためには、糊剤が裏面(B)側に多く表面(A)
側に少なく分布する様に乾燥させる。糊剤の分布比とし
ては裏面(B)側が表面(A)側より重量比で1.2以
上、好ましくは1.5以上となる様にするのが好まし
い。糊剤の分布比は、糊剤が付着したシートを中央でス
ライスして厚み方向に2等分し、それぞれのシートから
糊剤を抽出して重量を測定することにより求められる。
裏面(B)側に向けてマイグレーションを起させる乾燥
方法としては、裏面(B)側の乾燥速度を表面側のそれ
よりも大とすることにより達成される。熱風乾燥機を用
いた場合は、裏面(B)側の風量または温度または湿度
を表面(A)側のそれより大とする。裏面(B)側の風
量を表面(A)側のそれよりも大とする方法としては、
裏面(B)側の吹出ノズルからの熱風の吹出速度を表面
(A)側より大とする方法、裏面(B)側の吹出ノズル
の開口面積を表面(A)側より大とする方法、または多
数ある吹出ノズルのうち裏面(B)側の吹出ノズルの数
を表面(A)側の数より大とする方法等を用いることが
できる。勿論、表面(A)側には熱風送風を全くせずに
裏面(B)側のみに送風する方法も可能であり、この場
合が最も糊剤の裏面(B)側へのマイグレーションが顕
著となる。裏面(B)側と表面(A)側の熱風量(シー
ト面1m2 あたりの熱風の質量速度)比は1.5以上、
好適には2.0以上、更に好適には3.0以上とするこ
とが好ましい。裏面(B)側の温度を表面(A)側のそ
れよりも大とする方法としては、吹出ノズルから裏面
(B)側への熱風の温度を表面側より高くするのがよ
い。裏面(B)側への熱風の温度は表面(A)側へのそ
れよりも、少なくとも10℃以上、好適には30℃以
上、更に好適には50℃以上高くする。裏面(B)側の
湿度を表面(A)側のそれよりも高くする方法として
は、前記した熱風の風量、温度以外の要因として、裏面
(B)側の熱風の乾燥ボックス外への排気量を表面
(A)側より大とすることで達成される。これらの裏面
(B)側へのマイグレーション法のうち、熱風の風量に
よる方法が糊剤マイグレーション状態、乾燥効率及び生
産安定性(再現性、コスト)の面から最も好ましい。
【0020】繊維シートに糊剤を付着乾燥した後、ポリ
ウレタンなどのゴム状弾性体をこの繊維シートに含浸さ
せ、次に糊剤の溶媒(一般には水)で糊剤の大部分を抽
出除去する。その後、サンドペーパーなどでシート表面
を起毛する。この起毛前、または起毛後に、必要によ
り、繊維シートに染色、仕上工程を施し、本発明のヌバ
ック調人工皮革が得られる。
【0021】この様にして得られた本発明のヌバック調
人工皮革においては、ゴム状弾性重合体が糊剤分布量の
少ない表面(A)側に多く分布し、糊剤分布量のより多
い裏面(B)側にはゴム状弾性重合体がより少なく分布
する。このため、表面(A)側はゴム状弾性重合体のバ
インダー効果により、極めて緻密な立毛が形成され、そ
の表面タッチもしっとりしたものとなり、まさに高級天
然ヌバック皮に酷似した風合のものが得られる。しかも
表面の耐摩耗性も著しく向上したものとなる。この点に
本発明の第3のポイントがある。ゴム状弾性重合体の分
布量(重量)比は、表面(A)側が裏面側に対し1.2
以上であることが必要で、好適には1.5以上であるの
が好ましい。この比は、糊剤抽出除去後のシートを中央
でスライスして2枚のシートとし、それぞれのシートか
らゴム状弾性重合体をその溶媒で抽出することにより求
めることが出来る。このようにして得られた本発明のヌ
バック調人工皮革は立毛密度が高く、立毛長を0.5mm
以下と極めて短くしても優美なチョークマーク性が発現
し、表面感触も天然ヌバック皮に酷似した表面性と、コ
ート、ブレザー等の紳士衣料分野でも充分通用する高い
表面摩耗強度を有する人工皮革である。
【0022】又本発明のヌバック調人工皮革は柔軟であ
り、しかも耐皺性も良好であって衣料特性に優れてい
る。すなわち表面層にはゴム状弾性重合体の分布量が多
く、裏面側に少ないというゴム状弾性体のシート内分布
をコントロールすることにより人工皮革の表面効果を高
めることができ、このため、ゴム状弾性重合体のトータ
ルの充填量を少なくすることが可能となり、人工皮革の
よりドレープな風合が表面性を損うことなく得られた。
しかも驚ろくべきことに、ゴム状弾性重合体の充填量を
減少させても耐皺性の低下が少ない。
【0023】さらに本発明のヌバック調人工皮革はゴム
状弾性重合体の表裏分布量差を有しているため、表面は
ヌバック調表面であり、裏面はスウェード調表面である
というような表裏面の異なる新規な人工皮革として用い
ることができる。
【0024】
【実施例】以下に実施例をあげ本発明を更に具体的に説
明する。実施例1. ポリエチレンテレフタレートチップを押出機
に装入し、溶融後、1mmピッチで1500個一列に並ん
だ0.3mmφのオリフィスから0.15g/分/オリフ
ィスの吐出量で、高速スチーム流中に吐出した。前記ス
チームは温度360℃、圧力3.0kg/cm2 Gで、ポリ
マー吐出オリフィス近傍に開口したスリットより噴射さ
せた。生成した繊維群をオリフィス下60cmに位置した
移動する捕集面上に連続的に集積し、目付180g/m
2 のランダムウェブとして巻取った。
【0025】得られた極細繊維ウェブは、平均繊維径
1.5μmの極細繊維から形成され、ロープ状繊維が極
めて少ないものであった。上記のウェブをバーブのない
ニードルを用いてニードルパンチ(90パンチ/cm2
し、次いでこれを金網上に載せ、0.2mmφのオリフィ
スから30kg/cm 2 Gの圧力で噴出させた高速水流をウ
ェブ全面に隈なく噴射させ同時にウェブの下面に−15
0mmHgの吸引を施して極細繊維を互に交絡させた。次い
でこれに散水流を噴き当てて、高速流の跡を消し、表面
平滑な不織布を得た。
【0026】この不織布を4%のポリビニルアルコール
(PVA)水溶液中に浸漬し、ついで下記方法により乾
燥した。この乾燥には、ピンテンター型の熱風乾燥機を
用い、100℃の熱風をシートの片面裏面側のみとに吹
き当てた。不織布に対するPVAのトータル付着量は1
5%重量%であり、PVAの裏面側/表面側分布量比
は、5:1であった。次いでこの不織布をポリウレタン
のDMF溶液中に浸漬し、これを水溶液中で湿式凝固
後、温水でPVAを抽出除去した。この時、不織布は面
積で30%収縮した。また、ポリウレタンの付着量は繊
維重量に対し60%であった。得られたシートを中央で
スライスして2枚のシートとし、それぞれのシートから
ポリウレタンをDMF溶媒で抽出し、表面側/裏面側の
ポリウレタンの重量分布量比を求めたところ3.2であ
った。得られたシートの表面と裏面とを250メッシュ
のサンドペーパーでバフィングし、染色、ブラシ仕上を
行った。得られた起毛人工皮革の表面を顕微鏡で観察し
たところ、平均繊維径1.5μm、平均立毛長0.2mm
からなる極細毛羽が高密度に発生していた。この表面
は、短い毛羽にもかかわらず優美なチョークマーク性を
示し、しかもしっとりとした表面タッチを有し、それは
まさに高級天然ヌバック皮に酷似した表面品位のもので
あった。またこの人工皮革は、柔軟であり(カンチレバ
ー法による柔軟度40mm)、耐皺性も82%(針金法)
と良好であった。更に、この人工皮革の表面の耐摩耗性
はマーチンデール法で5万回以上の性能を示す極めて良
好なものであった。
【0027】比較のために、熱風乾燥機の熱風送風をシ
ートの両面側から同風量で行った他は全て前記と同様に
して得た起毛人工皮革は、表面層のポリウレタン付着量
が少なく、かつ繊維の固定が弱いため、長目(0.8m
m)の立毛で荒れた表面であった。しかも、マーチンデ
ール法により測定された耐摩耗性が2万回に過ぎず不満
足なものであった。
【0028】実施例2.実施例1と同様にしてメルトブ
ローし、目付60g/m2 のランダムウェブを得た。こ
のウェブ2枚の間に、目付40g/m2 のトリコットを
はさみ込み、3層積層シートをした。この積層シートを
実施例1記載の方法により軽くニードルパンチし、次い
で高速水流で繊維交絡させ、一体化した不織布状物とし
た。
【0029】このシートに実施例1と同様の方法でポリ
ビニルアルコール水溶液を合浸乾燥した後、ポリウレタ
ン含浸処理を施して起毛人工皮革を得た。実施例1の同
様にして求めた表面側/裏面側のポリウレタンの重量分
布量比は2.8であった。この人工皮革表面は優美なヌ
バック調のものであり、摩耗強度、ドレープ性、衣料特
性に優れたものであった。また、裏面はセミスウェード
調のものとなり新規な高級人工皮革が得られた。
【0030】実施例3.実施例1と同様にしてメルトブ
ローし、目付80g/m2 のランダムウェブを得た。別
に、溶融紡糸法で得た0.1dのポリエチレンテレフタ
レートの極細フィラメントを3mmにカットし、抄造法で
シート化して目付90g/m2 の抄造シートとした。先
のメルトブローウェブとこの抄造シートの間に目付50
g/m2 の比較的目の荒い織物をはさみ込み3層積層シ
ートとした。このシートを実施例1記載の方法により高
速水流で繊維交絡させ、一体化した不織布状物とした。
【0031】このシートにポリビニルアルコール水溶液
を付着した後、熱風乾燥機を用い、限界水分率になるま
では裏面(抄造シート側)のみから送風し、その後平衡
含水率になるまでは両面から送風して乾燥した。熱風温
度は130℃であった。PVAの裏面側/表面側分布量
比は、3:1であった。その後は実施例1と同様に処理
して起毛人工皮革を得た。
【0032】この人工皮革の表面には短い(0.5mm)
立毛が高密度に発生し、チョークマーク性に優れたヌバ
ック調のものであった。裏面側は毛足が長く(1.0m
m)スウェード調のものとなった。また、ドレープ性や
衣料特性に優れたものであり、表面摩耗強度も良好なも
のであった。なお実施例3の人工皮革の表面側/裏面側
のポリウレタンの重量分布量比は1.5であった。
【0033】実施例4.ナイロン6をメルトブローし、
平均繊維径3μm、目付300g/mm2 のランダムウェ
ブを得た。これを高速水流で交絡した後、カルボキシメ
チルセルロース(Na塩)の水溶液を付着させ、ついで
熱風乾燥機で乾燥させた。乾燥条件としては、表面側の
熱風温度を50℃、裏面側を130℃とした。その後は
実施例1と同様に処理して起毛人工皮革を得た。この人
工皮革はヌバック調の良好な表面であり、表面摩耗性、
柔軟性ともに良好なものであった。なお実施例4の人工
皮革の表面側/裏面側のポリウレタンの重量分布量比は
2.3であった。
【0034】
【発明の効果】本発明の人工皮革は前述のように構成さ
れているのでヌバック調の表面効果を有すると共に、柔
軟性、耐皺性、耐摩耗性に優れ、各種衣料用途その他に
おいて高級な起毛人工皮革として広く用いることができ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メルトブロー法で得られた平均繊維径
    0.1〜6.0μmの複数の極細繊維が相互に三次元的
    に絡み合って構成された不織布層を少なくとも1表面
    (A)に含んで成る繊維シートと、該繊維シートの組織
    間隙に含浸付与されたゴム状弾性重合体から成り、前記
    繊維シートの表面(A)側の領域のゴム状弾性重合体の
    重量分布量が裏面(B)側の領域に対して1.2倍以上
    であり、且つ前記表面(A)側で極細繊維が立毛してい
    ることを特徴とするヌバック調人工皮革。
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