JPH0565622A - チタン又はチタン合金からなる基材の表面硬化法および表面硬化部材 - Google Patents

チタン又はチタン合金からなる基材の表面硬化法および表面硬化部材

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JPH0565622A
JPH0565622A JP2655391A JP2655391A JPH0565622A JP H0565622 A JPH0565622 A JP H0565622A JP 2655391 A JP2655391 A JP 2655391A JP 2655391 A JP2655391 A JP 2655391A JP H0565622 A JPH0565622 A JP H0565622A
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alloy
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nickel
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JP2655391A
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Takumi Shibuya
巧 渋谷
Satoshi Kano
智 狩野
Hiroo Ozeki
宏夫 大関
Junya Oe
潤也 大江
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Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明はチタン又はチタン合金の表面硬化法
および表面硬化部材を提供することを目的とする。 【構成】 チタン又はチタン合金の基材上にニッケル又
はニッケル合金の被覆層を形成し、加熱し溶融拡散反応
させて溶融拡散層を形成する。被覆層としては、ニッケ
ルろう、又は、粉末の塗布物、粉末の圧密体でも良い。
ニッケル合金を用いる場合は、窒素、炭素、ホウ素、ジ
ルコニウム、銅、タングステンを含むものを用いる。被
覆層としてNi-Cr合金を用いる場合は、Cr含有量を1
0〜50重量%とする。 【効果】 基材に含有される元素と被覆層に含有される
元素との溶融拡散反応により共晶合金化と化合物生成が
なされて硬い溶融拡散層が生成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チタン又はチタン合金
の表面硬化法および表面硬化部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車エンジンでは、高速回転化
に伴なってエンジンの構成部材の軽量化が要求されてい
る。例えばロッカアームを例にとると、従来のロッカア
ームは、必要箇所に浸炭処理を施した鉄系の合金から形
成されるのが一般的であったが、近年、前記軽量化の要
求に答えるべく、チタンあるいはチタン合金を用いてロ
ッカアームを製造することが考えられている。これは、
チタンが、鉄と同程度の強度を持ちながらその比重が鉄
とアルミニウムの中間程度であるので、ずみやかにロッ
カアームの軽量化が図れるからである。
【0003】ところで、ロッカアームをチタンあるいは
チタン合金で製造する場合であっても、バルブトップや
カムとの接触部は優れた耐摩耗性を有する必要があり、
この部分は硬化させる必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで現行で考えられ
るチタン表面の硬化法の1つとして、窒化があるが、窒
化ではチタン表面のごく一部分(例えば表面の数μm程
度)しか硬化することができず、ロッカアーム用には供
しえないものである。また、耐摩耗性の高い合金の盛金
による硬化法も知られているが、チタンの材料的な特性
上、溶接は難しく、この方法も採用しがたい問題があ
る。
【0005】なお、特開昭50−28443号公報で開
示されるように、Ti又はTi合金に金属または合金を被
覆した後に硬化処理する方法が知られている。ところ
が、この方法で得られる硬化層の厚さは、数十μm程度
であって、ロッカアームなどの耐摩耗性部品用の硬化法
としては、十分な厚さの硬化層が形成できない問題があ
る。
【0006】本発明は前記事情に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、比較的容易な処理によっ
てチタン又はチタン合金の表面に厚さ数mmの厚い硬化さ
れた層を形成することができ、チタン又はチタン合金製
の耐摩耗性の高い硬化部材を得ることができるととも
に、硬化された厚い層を有するチタン又はチタン合金製
の表面硬化部材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は
前記課題を解決するために、チタン又はチタン合金から
なる基材の表面に、ニッケル又はニッケル合金からなる
被覆層を形成し、次いで前記被覆層と基材の少なくとも
境界部分を共晶点以上の温度に加熱して溶融拡散させ、
溶融拡散により被覆層の少なくとも一部と基材表面部と
を合金化するものである。
【0008】請求項2に記載の発明は前記課題を解決す
るために、被覆層として、Ni-25Cr合金を用いるも
のである。
【0009】請求項3に記載の発明は前記課題を解決す
るために、被覆層として、ニッケル又はニッケル合金の
粉末の塗布物あるいは前記粉末の圧密体を用いるもので
ある。
【0010】請求項4に記載の発明は前記課題を解決す
るために、チタン又はチタン合金からなる基材と、この
基材上に形成された溶融拡散層とを具備し、前記溶融拡
散層に、ニッケル又はニッケル合金の構成成分とチタン
又はチタン合金の構成成分とを具備させたものである。
【0011】請求項5に記載の発明は前記課題を解決す
るために、チタン又はチタン合金からなる基材と、この
基材上に形成された溶融拡散層と、この溶融拡散層上の
被覆層とを具備してなり、前記被覆層を、ニッケル又は
ニッケル合金から構成し、前記溶融拡散層を、基材の構
成元素と被覆層の構成元素とを具備させたものである。
【0012】請求項6に記載の発明は前記課題を解決す
るために、請求項4又は5に記載のニッケル合金を、炭
素、窒素、ホウ素、ジルコニウム、銅、タングステン、
モリブデンの中から選択される少なくとも1種以上の元
素を含有させてなるものである。
【0013】請求項7に記載の発明は前記課題を解決す
るために、請求項4又は5に記載の溶融拡散層に、ニッ
ケルとチタンとの化合物、又は、ニッケル合金の構成元
素とチタンの化合物を混在させてなるものである。
【0014】請求項8に記載の発明は前記課題を解決す
るために、チタンまたはチタン合金の基材上にCrを1
0〜50重量%含有するニッケル合金の溶融拡散層を形
成してなるものである。
【0015】
【作用】本発明によれば、チタン又はチタン合金からな
る基材の表面に、ニッケル又はニッケル合金からなる溶
融拡散層を形成するので、チタン又はチタン合金の構成
元素とニッケル又はニッケル合金の構成元素とが溶融拡
散反応して共晶合金化による硬化、並びに、化合物によ
る析出硬化が生じ、これらにより硬化された溶融拡散層
が基材表面を硬化する。また、基材表面側に被覆層の構
成元素が拡散するとともに、被覆層側にも基材構成元素
が拡散するので、基材と溶融拡散層の境界部分は硬さの
勾配がゆるやかに変化するようになる。
【0016】溶融拡散層は耐摩耗性に優れるので、本発
明により得られる表面硬化部材はロッカアームなどのよ
うに耐摩耗性が要求される機械部品用として好適であ
る。また、本発明の基材は、あくまでチタン又はチタン
合金であるので、本発明の表面硬化部材を用いて得られ
る機械部品は、従来の鉄系材料に比較して軽量で同程度
の強度を有し、耐摩耗性も優秀である。
【0017】更に、基材の構成元素と被覆層の構成元素
の溶融拡散反応によれば、拡散原子の相互拡散速度を高
めることができるので、厚い溶融拡散層が得られる。こ
の厚い溶融拡散層が基材上に形成されていると、基材の
塑性加工が可能になり、基材表面の切削加工が可能にな
る。
【0018】被覆層として粉末の塗布物あるいは圧密体
を用いることで被覆層の厚さを自由に制御することがで
き、所望の厚さの硬化層が形成される。
【0019】以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0020】図1は本発明方法を適用して得られたロッ
カアームを示している。この例のロッカアーム1は、軸
受部2とその両側に延設されたアーム部3,4とを具備
してなり、アーム部3の先端にはカムに摺接する第1接
触部5が、また、アーム部4の先端にはバルブ軸に摺接
する第2接触部6が各々形成されている。
【0021】前記ロッカアーム1は、チタン又はチタン
合金からなり、その接触部5,6には本発明方法に係る
硬化処理が施されている。ロッカアームを構成するチタ
ン合金として、Ti-6Al-4V合金、Ti-13V-11
Cr-3Al合金、Ti-5Al-2Cr-1-Fe合金、Ti-5
Al-3Mn合金などを例示することができるが、これ以
外のチタン合金を用いても良い。
【0022】前記接触部5,6の断面構造は、図2に示
すようにチタン又はチタン合金からなる基材7と、この
基材7の表面に被覆された溶融拡散層8とからなってい
る。この溶融拡散層8は、厚さ0.7〜1.0mm以上にも
達するものであるが、後述する被覆層の厚さと溶融拡散
の処理時間を調節すればより薄く形成できる。
【0023】溶融拡散層8を形成するには、図3に示す
基材7の表面に、図4に示すように被覆層9を形成す
る。この被覆層9を構成する金属として用いるのは、チ
タンとの間に、金属間化合物、炭化物、チッ化物、ホウ
化物などの化合物を生成する金属が好ましい。
【0024】具体的には、純ニッケル、Ni-7Cr-3B
-4Si-3Fe合金、Ni-15Cr-3B合金、Ni-25Cr
合金、Ni-0.5C-3Si-10Cr-2.5Fe-2B-0.1
Co合金(商品名:コルモノイNo4)、Ni-0.65C-1
2Cr-4.25Fe-4.0Si-2.5B合金(コルモノイN
o5)、Ni-1.5C-27Cr-8W-1.6Fe-1.55B-
0.5Co合金(コルモノイNo84)、50Ni-32Mo-
15Cr-3Si合金、商品名:トリバロイ700)、あ
るいは、JIS規定のNiろうである、BNi-2などを
例示することができるが、これらに限るものではない。
【0025】被覆層9を基材7上に形成する手段として
は、前記各組成の金属の箔を基材7上に、圧着、接着、
スポット溶接などの方法により接合して形成しても良い
し、前記組成の金属の粉体をバインダーに混合した塗布
物を塗布しても良い。また、前記組成の金属を基材7上
に電解メッキ、無電解メッキにより被覆しても良いし、
基材7上に前記金属の粉末をまぶした後に、液圧プレス
などの手法により圧密して被覆しても良く、所要の厚さ
の被覆層9を形成する手段ならば任意の手段を用いて良
い。これにより厚さ数mm程度の被覆層9を容易に形成す
ることができる。
【0026】被覆層9を形成したならば、真空炉などに
収納して、例えば1×10-4Torr以下の真空中で90
0〜1100℃に加熱する。真空中で処理するのは、チ
タンが化学的に活性であり、酸化反応あるいは還元反応
を防止するためである。また、加熱温度は被覆層9の構
成主要元素とチタンとの共晶点近傍の温度あるいはそれ
以上の温度が好ましい。従って前記のように900〜1
100℃の範囲が好ましいが、加熱温度は被覆層9の種
類によって前記の範囲内で適宜設定するものとする。
【0027】前記真空加熱処理によって被覆層9の一部
又は全部で溶融拡散が進行する。このような溶融拡散状
態で所定時間(数十分〜数十時間)保持することで被覆層
9を構成する元素と基材7を構成する元素が相互拡散
し、冷却後に図2に示す溶融拡散層8が生成する。
【0028】この溶融拡散層8の硬度は、Ti-6Al-4
V合金の基材7を用い、被覆層9としてNi-25Cr合
金を用い、1100℃で1時間加熱した場合に、ビッカ
ース硬さで650前後の硬度が得られる。
【0029】ここで前記溶融拡散処理を行うことで、ニ
ッケルとチタンとの共晶合金化、更には、炭素とケイ素
とホウ素と窒素とジルコニウムとクロムのいずれかから
選択される元素と、基材のチタンとの2元系あるいは3
元系の共晶合金化、並びに金属間化合物の生成が起こ
り、被覆層9よりも硬化が高められた溶融拡散層8が形
成される。溶融拡散反応で生成される金属間化合物とし
てNi3(Al+Ti)などのγ'相を例示することができ
る。また、被覆層9としてニッケル合金を用いる場合
は、炭素がカーバイド、ケイ素がシリサイド、ホウ素が
ボライド、窒素がチッ化物、ジルコニウムとニオブとク
ロムとが金属間化合物を生成して硬化に寄与する。な
お、前記被覆層9の溶融拡散を行なう場合、高周波加熱
などの手段を用い、基材7側の被覆層9の一部のみを溶
融拡散させても良いし、被覆層9の全体を溶融拡散させ
ても良い。
【0030】図5は溶融拡散層8の拡大構造を示すもの
である。溶融拡散層8は、基部層11と、この基部層1
1上の硬化層12とから構成される。即ち、被覆層9の
構成元素が基材7側に拡散して生成されたものが基部層
11であり、溶融拡散層8に基材7の構成元素が拡散し
て生成されたものが硬化層12である。
【0031】溶融拡散層8は、チタン又はチタン合金の
基材7に被覆層9の構成元素が拡散して構成され、硬化
層12は、被覆層9の構成元素に基材7の構成元素が拡
散して構成されたものであるので、拡散元素の濃度勾配
が緩やかな場合は基部層11と硬化層12との境界部分
が明確ではないこともある。ここで硬化層12は基部層
11よりも硬くなる。即ち、硬さの分布に傾斜がつくわ
けであり、基材7側の基部層11から硬化層12側にか
けて順次硬度が向上するような構造になる。
【0032】このように硬度がなめらかに低下する構造
をもつ表面硬化部材は、使用に際し、仮に表面の最も硬
い部分が摩耗した場合でも徐々に耐摩耗性が低下するだ
けで、摩耗が急激に進んで周囲の部品とのバランスが崩
れる不具合が生じない。即ち、ロッカアーム1の場合を
例にとると、バルブトップとの接触面積が急激に摩耗す
ることがなく、バルブクリアランスが大きくなりすぎる
ことがなく、打音が発生するといった不具合は生じな
い。
【0033】これに対して通常の盛金による硬化法で
は、硬度が低下しないように基材と盛金との合金化を極
力抑えて行うのが通常であるが、本発明では逆に、積極
的に合金化を促進し、盛金よりも硬度を上げることがで
きるとともに、溶融拡散層8の硬度変化を滑らかに低下
させて基材7に連続させることができるようにしたもの
である。
【0034】一方、図6は本発明の硬化部材をリングギ
ヤ30に適用した実施例を示すものである。このリング
ギヤ30では外周のギヤ部が本発明方法で硬化されてい
る。リングギヤ30の全体の概略部分はチタン又はチタ
ン合金で鍛造などの通常の手段で作製し、この後に外周
のギヤ部全体に被覆層を形成して硬化させた後に、切削
加工あるいは研摩加工を行ってギヤ部を仕上げることで
リングギヤ30を得ることができる。
【0035】本発明に係る溶融拡散層8は数分の一〜数
mmと十分な厚さを有するので、切削加工や塑性加工が可
能になる。よって製造時に切削加工や塑性加工が必要な
機械部品をチタン又はチタン合金で製造することが可能
になる。
【0036】なお、前記の例ではロッカアーム1とリン
グギヤ30に本発明方法を適用した例について説明した
が、その他の耐摩耗性の要求される部材(バルブリテー
ナ、トランスミッションギア、デファレンシャルギア、
ディスクブレーキ、軸受など)に本発明を適用しても良
いのは勿論である。
【0037】
【実施例】チタンあるいはチタン合金製の基材を用い、
その基材の表面に金属箔圧着法により厚さ0.2mmの種
々の組成の被覆層を形成し、この被覆層付きの基材を真
空加熱炉に収納して真空加熱炉の内部を1×10-4Tor
rに真空引きした後に、900〜1100℃に1時間加
熱して溶融拡散処理を行った。
【0038】得られた溶融拡散層を有する基材を硬度H
RC−57のJIS規定のSUJリングあるいはステラ
イトリングに摺接させて摩耗速度(m/秒)と比摩耗量の
関係を測定した。この測定には、大越式摩耗試験機を用
いた。この大越式摩耗試験機は、株式会社:東京試験機
製作所製の迅速摩耗試験機であって、回転円盤を平面試
験片に押し付けて摩耗し、その時の摩耗痕の大きさで摩
耗量を測定する装置である。いま、回転円盤の外径を2
r、厚さをBとし、摩耗距離loだけ摩耗した時の最終
荷重をPo、摩耗痕の深さをboとすると、摩耗量(体
積)は、 Bbo3/12r mm3で示され、接触圧力
は、 Po/Bbo kg/mm2で示されるとと
もに、試験材料の摩耗特性を示す比摩耗量Wsは、
Bb3/8rPolo mm2/kgで示される。
【0039】また、回転円盤の寸法は、外径28mmの
円筒部材の外周部に厚さ3mmの外径30mmのフラン
ジ部を形成した回転円盤を用いるとともに、平面試験片
は、長さ40〜60mm、幅25mm、厚さ5〜10m
mのものを用い、回転軸の先端に前記回転円盤を装着
し、回転円盤のフランジ部を前記試験片に所要の圧力で
押し当てて回転軸を回転駆動し、フランジ部が試験片に
対して所定距離擦り合った後に試験を停止して摩耗痕を
測定し、計算により比摩耗量を算出した。
【0040】図7と図8と図9と図10に、チタン又は
チタン合金の基材にそれぞれの組成の被覆層を形成し、
それらの耐摩耗性について耐摩耗試験を行った結果を示
す。これらの図において相手材とは回転円盤の材料を示
す。本実施例では相手材としてステライトあるいはJI
S規定のSUJを使用した。
【0041】図7に示す#6はCo-3Ni-28Cr-4W
-1Cなる組成のステライト#6を示し、#1はCo-3
Ni-30Cr-12W-2.5Cなる組成のステライト#1
を示し、Ti合はTi-6Al-4Vなる組成のチタン合金
を示す。図7から、Ti合金の基材にニッケルの被覆層
を形成して溶融拡散させた試料は、他の試料に比較して
摩耗速度が高い場合に特に耐摩耗性に優れていることが
判明した。
【0042】図8と図9に示す試料においては、チタン
基材にNi-50Co合金の被覆層を用いた試料と、チタ
ン合金基材にNi-50Co合金の被覆層を用いた試料の
いずれもが優秀な耐摩耗性を発揮した。図8と図9に示
す試料にあっては、摩耗速度が向上しても比摩耗量がほ
とんど増加しないので、優秀な高速耐摩耗性を有してい
ることが明らかである。更に、チタン製の基材を用いた
試料においてビッカース硬度で350〜384、チタン
合金製の基材を用いた試料においてビッカース硬度で5
95〜605の優秀な値が得られた。
【0043】図10に示すMBF20はNi-7Cr-4
Si-3Feなる組成の合金を示す。また、Ti-6Al-4
V合金の基材自体の比摩耗量は、図10では省略されて
いるが、摩耗速度が0.054m/秒においては9×10
-7(mm3/kg・mm)であり、摩耗速度が0.083m/秒にお
いては8.7×10-7であり、摩耗速度が0.119m/
秒においては10.6×10-7であった。
【0044】よって図10において、比摩耗量が10×
10-7以下の試料が特性優秀な試料であることが明らか
である。この特性優秀な試料とは、チタン又はチタン合
金の基材にニッケルの被覆層を形成して得られる試料
と、チタン又はチタン合金の基材にNi-25Cr合金の
被覆層を形成して得られる試料である。また、チタン合
金の基材を用い、被覆層としてNi-25Cr合金を用い
た試料にあっては、ビッカース硬度で643という優秀
な値が得られた。
【0045】図11は、Ti-6Al-4Vの基材にNi-C
r系合金の被覆層を形成した後に溶融拡散させて得られ
る試料において、被覆層となるNi-Cr系合金のCr含有
量と比摩耗量との関係を示したものである。図11から
明らかなように、Crの含有量が50重量%以上の場合
は未反応領域であり、Crの含有量が10重量%を越え
ると比摩耗量が著しく減少するので、このNi-Cr系合
金の被覆層を用いる場合はCr含有量を10重量%以上
であって50重量%以下とすることが好ましいことが判
明した。
【0046】図12はTiあるいはTi-6Al-4V合金
基材の表面にコルモノイNo4の箔を被覆してプレスし
た後に950℃で1時間溶融拡散処理を行なって得られ
た硬化部材において、表面からの深さに応じた硬度の測
定結果を示す。図12に示す結果から本発明による硬化
部材は、表面部分の硬度が最も高く、深くなるほど硬度
が低くなっていることが明らかになった。
【0047】図13はTi-6Al-4V合金基材の板材
の一辺側にこの部分を覆うようにJIS規定のろう材で
あるBNi-2を被覆し、これを1000℃で1時間溶融
拡散させて得られた硬化部材を示す。この硬化部材にお
いて、斜線部分が硬化層を示す。この硬化部材の冷間に
よる圧延加工性を測定したところ、硬化部材の厚tを厚
さ0.6tに減少させるまでの圧下率では硬化層にクラ
ックが生じなかったが、硬化部材の厚さを0.5t以下
になるように圧下すると硬化層および基材との界面にヘ
アークラックが発生した。よってこの硬化部材は圧下率
40%まで耐えることが判明した。なお、前記基材を構
成するTi合金自体の冷間圧延加工の限界が20〜30
%程度であることが一般に知られていることを考慮する
と、硬化層の方が冷間加工に強いことが判明した。
【発明の効果】本発明の表面硬化部材においては、チタ
ン又はチタン合金の基材上にニッケル又はニッケル合金
の溶融拡散層を形成し、共晶合金化、化合物による析出
硬化をさせているので、この溶融拡散層自体が硬化する
とともに、基材を硬化する。また、被覆層は数mmの厚さ
に容易に形成することができ、この厚い被覆層を溶融さ
せて溶融拡散層を形成するので、数mmに達する厚さの溶
融拡散層を容易に得ることができる。よって本発明方法
により得られる表面硬化部材は、切削加工と組成加工が
可能になり、ロッカアームやバルブリテーナ、各種のギ
アなどの耐摩耗性の要求される機械部品を提供すること
ができる。溶融拡散層と基材とは互いの構成元素が相互
に拡散しているので、境界部分の基材も強化される。こ
の結果、仮に溶融拡散層の部分が摩耗した場合であって
も、耐摩耗性の低下はゆるやかであり、急激に耐摩耗性
が低下することはない。よってロッカアームなどの摺動
部分においては、摩耗が進んでもバルブクリアランスが
急に大きくなることはなく、打音が生じることはない。
また、本発明の表面硬化部材は、内部がチタン又はチタ
ン合金製であるので、従来の鉄系材料よりも軽量で耐食
性に優れ、強度も高い特徴がある。更に、Crを10〜
50重量%含有させたニッケル合金の溶融拡散層を基材
上に形成したものにあっては、他の組成のものに対して
優れた耐摩耗性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る硬化部材を適用して得られ
るロッカアームの一例を示す側面図である。
【図2】図2は溶融拡散層を示す断面図である。
【図3】図3は基材の断面図である。
【図4】図4は基材上に被覆層を形成した状態を示す断
面図である。
【図5】図5は溶融拡散層の他の例を示す断面図であ
る。
【図6】図6は本発明に係る硬化部材を適用して得られ
たギヤの斜視図である。
【図7】図7は比摩耗量と摩耗速度との関係を示す第1
のグラフである。
【図8】図8は比摩耗量と摩耗速度との関係を示す第2
のグラフである。
【図9】図9は比摩耗量と摩耗速度との関係を示す第3
のグラフである。
【図10】図10は比摩耗量と摩耗速度との関係を示す
第4のグラフである。
【図11】図11はCu含有量と比摩耗量の関係を示す
グラフである。
【図12】図12は硬化層の硬度と深さの関係を示すグ
ラフである。
【図13】図13は圧延加工試験に供した硬化部材を示
す斜視図である。
【符号の説明】
1 ロッカアーム 3 アーム部 4 アーム部 5 接触部 6 接触部 7 基材 8 溶融拡散層 9 被覆層 11 基部層 12 硬化層
フロントページの続き (72)発明者 大江 潤也 埼玉県大宮市北袋町1丁目297番地 三菱 マテリアル株式会社商品開発センター内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン又はチタン合金からなる基材の表
    面に、ニッケル又はニッケル合金からなる被覆層を形成
    し、次いで前記被覆層と基材の少なくとも境界部分を共
    晶点以上の温度に加熱して溶融拡散させ、溶融拡散によ
    り被覆層の少なくとも一部と基材表面部とを合金化する
    ことを特徴とするチタン又はチタン合金からなる基材の
    表面硬化法。
  2. 【請求項2】 被覆層としてNi-25Cr合金を用いる
    ことを特徴とする請求項1記載の基材の表面硬化法。
  3. 【請求項3】 被覆層として、ニッケル又はニッケル合
    金の粉末の塗布物あるいは前記粉末の圧密体を用いるこ
    とを特徴とする請求項1記載の基材の表面硬化法。
  4. 【請求項4】 チタン又はチタン合金からなる基材と、
    この基材上に形成された溶融拡散層とを具備してなり、
    前記溶融拡散層が、ニッケル又はニッケル合金の構成元
    素とチタン又はチタン合金の構成元素とを含むことを特
    徴とする表面硬化部材。
  5. 【請求項5】 チタン又はチタン合金からなる基材と、
    この基材上に形成された溶融拡散層と、この溶融拡散層
    上の被覆層とを具備してなり、前記被覆層が、ニッケル
    又はニッケル合金からなり、前記溶融拡散層が、基材の
    構成元素と被覆層の構成元素とを含むことを特徴とする
    表面硬化部材。
  6. 【請求項6】 ニッケル合金が、炭素、窒素、ホウ素、
    ジルコニウム、銅、タングステン、モリブデンの中から
    選択される少なくとも1種以上の元素を含有してなるこ
    とを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の表面硬化
    部材。
  7. 【請求項7】溶融拡散層に、ニッケルとチタンとの化合
    物、又は、ニッケル合金の構成元素とチタンとの化合物
    が混在されてなることを特徴とする請求項4又は請求項
    5に記載の表面硬化部材。
  8. 【請求項8】チタンまたはチタン合金の基材上にCrを
    10〜50重量%含有するニッケル合金の溶融拡散層が
    形成されてなることを特徴とする表面硬化部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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